【文献】
Robert Sobot, Shawn Stapleton, Marek Syrzycki,Tunable Center Frequency Continuous Time Bandpass ΔΣ Modulators for Wireless Transceivers,Vehicular Technology Conference, 2004. VTC2004-Fall.2004 IEEE 60th ,2004年 9月,vol.7,pp.4956-4960
【文献】
Sung-Rok Yoon, Sin-Chong Park,All-Digital Transmitter Architecture based on Bandpass Delta-Sigma Modulator,Communications and Information Technology, 2009. ISCIT 2009. 9th International Symposium on,2009年 9月,pp.703-706
【文献】
Tsai-Pi Hung, Jeremy Rode, Lawrence E. Larson, Peter M. Asbeck,Design of H-Bridge Class-D Power Amplifiers for Digital Pulse Modulation Transmitters,IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES,2007年12月,vol.55,no.12,pp.2845-2855
【文献】
J.C.Scheytt, P.Ostrovskyy, H.Gustat,RF Bandpass Delta-Sigma Modulators for highly-efficient Class-S transimitters in SiGe BiCMOS technology,Wireless Information Technology and Systems(ICWITS),2010 IEEE International Conference on,2010年 9月,pp.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
[1.システム構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る信号変換装置(信号変換部)70を備えたシステム1を示している。このシステム1は、信号変換装置70を備えたデジタル信号処理部21と、アナログフィルタ32と、を有している。
【0026】
デジタル信号処理部21は、アナログ信号であるRF(Radio Frequency)信号を表現するデジタル信号(1bitパルス列)を出力する。RF信号は、無線波として空間に放射されるべき信号であり、例えば、移動体通信のためのRF信号、テレビ/ラジオなどの放送サービスのためのRF信号である。
【0027】
デジタル信号処理部21から出力されたRF信号は、アナログフィルタ(バンドパスフィルタ又はローパスフィルタ)32に与えられる。1bitパルス列が表現するアナログ信号は、RF信号以外のノイズ成分も含んでいる。そのノイズ成分は、アナログフィルタによって除去される。
1bitパルス列は、アナログフィルタ32を通過するだけで、純粋なアナログ信号となる。
【0028】
このように、デジタル信号処理部21では、デジタル信号処理で1bitパルス列を生成することで、実質的に、RF信号を生成することができる。したがって、RF信号を表現している1bitパルス列を、RF信号を処理する回路(例えば、無線通信機、テレビ受信機などのRF信号受信機)に与えれば、その回路は、1bitパルス列をアナログ信号として処理することができる。なお、この場合、アナログフィルタ32は、RF信号を処理する回路に備わっていればよい。
【0029】
アナログフィルタ32として、バンドパスフィルタを用いるか、ローパスフィルタを用いるかは、RF信号の周波数によって、適宜決定される。
なお、信号変換装置70が、バンドパス型ΔΣ変調によって信号変換を行う場合には、アナログフィルタ32としてバンドパスフィルタが用いられ、ローパス型ΔΣ変調によって信号変換を行う場合には、アナログフィルタ32としてローパスフィルタが用いられる。
【0030】
デジタル信号処理部21とアナログフィルタ32との間の信号伝送路4は、回路基板に形成された信号配線であってもよいし、光ファイバー又は電気ケーブルなどの伝送線路であってもよい。また、信号伝送路4は、1bitパルス列を送信するための専用線である必要は無く、インターネットなどのパケット通信を行う通信ネットワークであってもよい。パケット通信を行う通信ネットワークを信号伝送路4として用いる場合、送信側(デジタル信号処理部21側)は、1bitパルス列を、ビット列に変換して、信号伝送路4に送信し、受信側(アナログフィルタ32側)が、受信したビット列を元の1bitパルス列に復元すればよい。
【0031】
デジタル信号処理部21は、信号伝送路4に対して、1bitパルス列を送信する送信機とみなすことができる。この場合、アナログフィルタ32を有する装置は、RF信号の受信機となる。
また、システム1全体が送信機1であってもよい。例えば、送信機1は、デジタル信号処理部21から出力された信号を増幅器にて増幅し、アンテナから出力するよう構成されていてもよい。この場合、アナログフィルタ32は、デジタル信号処理部21からアンテナの間に設けてもよいし、アンテナがアナログフィルタ32として機能してもよい。
【0032】
デジタル信号処理部21は、送信信号であるベースバンド信号(IQ信号)を出力するベースバンド部23と、ベースバンド信号を変調する変調器(直交変調器)24aと、処理部24bと、信号変換装置(信号変換部)70と、を備えている。
【0033】
ベースバンド部23は、IQベースバンド信号(I信号、Q信号それぞれ)をデジタルデータとして出力する。
変調器24aは、IQベースバンド信号を、中間周波数の信号に変換する。変調器24aは、デジタル信号処理で直交変調を行うデジタル直交変調器として構成されている。したがって、直交変調器24aからは、多ビットのデジタルデータ(離散値)によって表現されたデジタル信号形式の信号(デジタルIF信号)が出力される。
なお、変調波を生成する変調器24aとしては、直交変調器に限らず、変調波を生成するための他の方式の変調器であってもよい。
【0034】
変調器24aから出力されたIF信号は、デジタル信号処理部21における処理部24bに与えられる。処理部24bは、IF信号に対して、DPD(Digital Pre-distortion)、CFR(Crest Factor Reduction)、DUC(Digital Up Conversion)などの様々なデジタル信号処理を施す。処理部24bからは、デジタル信号処理によって生成されたRF信号が出力される。
【0035】
なお、信号変換部70には、上述の各種のデジタル処理によって生成されたデジタルRF信号が与えられればよく、処理部24bで行われる各種のデジタル処理は、直交変調器24aによる直交変調の前段において行ってもよい。
【0036】
処理部24bから出力されたデジタルRF信号は、信号変換部70に与えられる。本実施形態の信号変換部70は、バンドパス型ΔΣ変調器(変換器25)を有して構成されている。なお、変換器25は、ローパス型ΔΣ変調器であってもよいし、PWM変調器であってもよい。
【0037】
ΔΣ変調器25は、入力信号であるRF信号に対して、ΔΣ変調を行って1bitの量子化信号(1bitパルス列)を出力する。ΔΣ変調器25から出力された1bitパルス列は、デジタル信号であるが、アナログRF信号を表現したものとなっている。
ΔΣ変調器25から出力された1bitパルス列は、デジタル信号処理部21の出力信号として、デジタル信号処理部21から信号伝送路4へ出力される。
【0038】
[2.ΔΣ変調]
図2に示すように、ΔΣ変調器25は、ループフィルタ27と、量子化器28と、を備えている(非特許文献1参照)。
図2に示すΔΣ変調器25は、入力(本実施形態では、RF信号)Uが、ループフィルタ27に与えられる。ループフィルタ27の出力Yは、量子化器(1bit量子化器)28に与えられる。量子化器28の出力(量子化信号)Vは、ループフィルタ27への他の入力として与えられる。
【0039】
ΔΣ変調器25の特性は、信号伝達関数(STF;Signal Transfer Function)及び雑音伝達関数(NTF;Noise Transfer Function)によって表すことができる。
つまり、ΔΣ変調器25の入力をUとし、ΔΣ変調器25の出力をVとし、量子化雑音をEとしたときに、ΔΣ変調器25の特性を、z領域において表すと、次のとおりである。
【数1】
【0040】
したがって、所望のNTFとSTFとが与えられると、ループフィルタ27の伝達関数を得ることができる。
【0041】
図3は、1次ローパス型ΔΣ変調器125の線形z領域モデルのブロック図を示している。符号127がループフィルタの部分を示し、符号128が量子化器を示している。このΔΣ変調器125への入力をU(z)とし、出力をV(z)とし、量子化雑音をE(z)としたときに、ΔΣ変調器125の特性を、z領域において表すと、次のとおりである。
V(z)=U(z)+(1−z
−1)E(z)
【0042】
つまり、
図3に示す1次ローパス型ΔΣ変調器125において、信号伝達関数STF(z)=1であり、雑音伝達関数NTF(z)=1−z
−1である。
【0043】
非特許文献1によれば、ローパス型ΔΣ変調器に対して、以下の変換を行うことで、ローパス型ΔΣ変調器を、バンドパス型ΔΣ変調器に変換できる。
【数2】
【0044】
上記変換式に従って、ローパス型ΔΣ変調器125のz領域モデルにおけるzを、z’=−z
2に置き換えることでバンドパス型ΔΣ変調器が得られる。
【0045】
上記変換式を用いると、n次のローパス型ΔΣ変調器(nは1以上の整数)を、2n次のバンドパス型Σ変調器に変換できる。
【0046】
本発明者は、ローパス型ΔΣ変調器から、所望の周波数f
0(θ=θ
0)を、中心周波数f
0として持つバンドパス型ΔΣ変調器を得るための変換式を見出した。当該変換式は、例えば、次の式(3)に示す通りである。
【数3】
ここで、
θ
0=2π×(f
0/fs) fsはΔΣ変調器のサンプリング周波数。
【0047】
式(2)の変換式では、特定の周波数θ
0=π/2に関するものであったが、式(3)の変換式では、任意の周波数(θ
0)に一般化されている。
【0048】
図4は、
図3に示す1次ローパス型ΔΣ変調器125を、式(3)の変換式で変換して得られた2次バンドパス型ΔΣ変調器25を示している。
なお、
図3から
図4への変換では、表記の便宜上、式(3)において、a=cosθ
0とおいた下記の変換式を用いた。
【数4】
【0049】
なお、バンドパス型ΔΣ変調器への変換は、その他の高次ローパス型ΔΣ変調器(例えば、非特許文献1記載のCIFB構造、CRFF構造、CIFF構造など)に対しても適用できる。
【0050】
[3.信号特性と1bitパルス列波形との間の関係]
図5は、ΔΣ変調器(変換器)25から出力された1bitパルス列が表現するRF信号の信号特性と、その1ビットパルス列のアナログ波形と、の関係を検討するために用いた装置構成を示している。
図1に示す実際のバンドパス型ΔΣ変調器25は、量子化信号をパルスとして出力するため、フリップフロップなどのハードウェアを、少なくとも一部に有することになる。
【0051】
ただし、
図5のΔΣ変調器としては、ソフトウェアで構成したバンドパス型ΔΣ変調器25aを用いた。ソフトウェアで構成されたバンドパス型ΔΣ変調器25aから出力された量子化信号d
kは、パルスパターン生成器(PPG;Pulse Pattern Generator)25bに与えられる。パルスパターン生成器25bは、量子化信号d
kに基づき、理想的な波形(完全な矩形波)に対して任意の形状に歪んだ1bitパルス列S
out(t)を出力することができる。歪んだ1bitパルス列S
out(t)は、実際のバンドパス型ΔΣ変調器25から出力される1bitパルス列に相当する。
【0052】
また、パルスパターン生成器25bの出力回路は、理想的な波形とみなすことができる波形を生成できるように、十分な高速応答性能を有している。したがって、パルスパターン生成器25bは、理想的な波形の1bitパルス列S
out(t)を出力することもできる。
【0053】
パルスパターン生成器25bから出力された信号は、アナログバンドパスフィルタ32を通過し、測定器25cに与えられる。
【0054】
パルスパターン生成器25bの出力S
out(t)は、下記式(A)のように定義される。
【数5】
【0055】
式(A)の第1項であるS
idealは、量子化信号d
k(=±1)を理想的な矩形波で表現したものであり、式(B)のように定義される。量子化信号d
kは、パルスのHighレベルに対応した値として+1をとり、パルスのLowレベルに対応した値として−1をとる。U(t)は、単位ステップ関数である。
【数6】
【0056】
式(A)の第2項は、実際の波形に相当するS
out(t)と、理想的な波形S
idealとの差を示している。第2項におけるf(t−kt)は、下記式(C)のように定義される。Singは、符号関数である。
【数7】
【数8】
【0057】
式(C)において、(C−1)は、ある量子化信号の値d
kと時間的に一つ前の量子化信号の値d
k−1との差分を示す値の符号がプラスである場合、すなわち、量子化信号d
kが、パルスの立ち上がりとなる場合である。
(C−2)は、ある量子化信号の値d
kと時間的に一つ前の量子化信号の値d
k−1との差分を示す値の符号がマイナスである場合、すなわち、量子化信号d
kが、パルスの立ち下がりとなる場合である。
(C−3)は、ある量子化信号の値d
kと時間的に一つ前の量子化信号の値d
k−1との差分を示す値がゼロである場合、すなわち、パルスの値に変化がない場合である。
【0058】
f
rise(t)とf
fall(t)は、それぞれ、立ち上がり波形と立ち下がり波形である。立ち上がり波形f
rise(t)と立ち下がり波形f
fall(t)は、シミュレーションのため、任意の形状に設定される。
【0059】
さらに、f
rise(t)とf
fall(t)は、式(D)に示すように、対称成分f
sym(t)と非対称成分f
Asym(t)に分解することができる。
非対称成分f
Asym(t)は、式(D)より、下記式(E)によって求めることができる。
【数9】
【0060】
式(E)は、立ち上がり波形f
rise(t)と立ち下がり波形f
fall(t)とが、下記式F)の関係を有している場合に、非対称成分f
Asym(t)が無くなることを示している。
【数10】
【0061】
式(F)を満たす場合、立ち上がり波形f
rise(t)と立ち下がり波形f
fall(t)とは、時間軸に対して線対称となる。つまり、式(F)を満たすパルス波形をアイパターンで示した場合、そのアイパターンは時間軸に対して線対称となる。
【0062】
図6は、式(F)を満たすパルス波形(対称波形)を示している。
図6(a)は、対称波形S
out(t)のアイパターンを示している。このアイパターンは、時間軸に対して線対称となっている。なお、時間軸は、パルスのLowレベル(−1)とHighレベル(+1)の中間(0)にあるものとする(以下、同様)。
また、
図6(b)は、対称波形S
out(t)の時間軸波形を示し、
図6(c)は、対称波形についての理想的な波形S
Ideal(t)を示し、
図6(d)は、対称波形における立ち上がり波形f
rise(t)と立ち下がり波形f
fall(t)における対称成分f
sym(t)を示し、
図6(e)は、対称波形における立ち上がり波形f
rise(t)と立ち下がり波形f
fall(t)における非対称成分f
Asym(t)を示している。
【0063】
図6に示すように、対称波形は、理想的な波形S
Ideal(t)に対して歪んでおり、歪成分を有する。具体的には、パルスの立ち上がり波形f
rise(t)に歪成分(第1の歪成分)を有するとともに、パルスの立ち下がり波形f
fall(t)に歪成分(第2の歪成分)を有する。
【0064】
式(F)を満たす場合、歪成分は、対称成分f
sym(t)を有しているが(
図6(d)参照)、非対称成分f
Asym(t)は有していない(
図6(e)参照)。
【0065】
対称波形において、立ち上がり波形f
rise(t)と立ち下がり波形f
fall(t)とを、アイパターンのように、立ち上がり開始時点と立ち下がり開始時点とを時間軸上で一致させて重ねた場合、立ち上がり波形f
rise(t)と立ち下がり波形f
fall(t)とは、遷移時間(立ち上がり時間、立ち下がり時間)が同一であるため、時間軸に対して線対称となる。
換言すると、立ち上がり波形f
rise(t)における歪成分(第1歪成分)と、立ち下がり波形f
fall(t)における歪成分(第2歪成分)とは、時間軸に対して線対称となっており、非対称成分f
Asym(t)はゼロとなる。
【0066】
図7は、式(F)を満たさないパルス波形(非対称波形)を示している。
図7(a)は、非対称波形S
out(t)のアイパターンを示している。このアイパターンは、時間軸に対して非対称となっている。具体的には、
図7に示す非対称波形は、パルスの立ち上がり時間よりも、パルスの立ち下がり時間の方が長い波形となっている。
【0067】
図7(b)は、非対称波形S
out(t)の時間軸波形を示し、
図6(c)は、対称波形についての理想的な波形S
Ideal(t)を示し、
図6(d)は、非対称波形における立ち上がり波形f
rise(t)と立ち下がり波形f
fall(t)における対称成分f
sym(t)を示し、
図6(e)は、非対称波形における立ち上がり波形f
rise(t)と立ち下がり波形f
fall(t)における非対称成分f
Asym(t)を示している。
【0068】
図7に示すように、非対称波形も、理想的な波形S
Ideal(t)に対して歪んでおり、歪成分を有する。具体的には、パルスの立ち上がり波形f
rise(t)に歪成分(第1の歪成分)を有するとともに、パルスの立ち下がり波形f
fall(t)に歪成分(第2の歪成分)を有する。
【0069】
式(F)を満たさない場合、歪成分は、対称成分f
sym(t)とともに、非対称成分f
Asym(t)を有する(
図7(d)、
図7(e)参照)。
【0070】
[3.2 非対称成分f
Asym(t)の信号特性への影響]
パルスの波形が、アナログ信号としての信号特性(ACLR)へ与える影響を調べるため、シミュレーションを行った。その結果を、以下に示す。
このシミュレーションでは、ΔΣ変調器25として、6次のCRFB構造のバンドパス型ΔΣ変調器を用いた。バンドパス型ΔΣ変調器25に入力される試験信号は、LTE(Long Term Evolution)のRF信号であり、搬送波周波数800MHz、帯域5MHz、4キャリアである。つまり、RF信号としての全帯域は、20MHzである。
【表1】
【0071】
シミュレーションでは、パルス波形として、遷移時間(立ち上がり時間α及び立ち下り時間βがゼロである理想波形”Ideal”、立ち上がり波形及び立ち下がり波形が指数関数である波形”exp(x)”、立ち上がり波形及び立下り波形が双曲線正接関数である波形”tanh(x)”を用いた。
【0072】
exp(x)及びtanh(x)については、立ち上がり波形と立下り波形とが、時間軸に対して線対称である対称波形(Symm.)と、時間軸に対して非線対称である非対称波形(Asymm.)を用いた。
【0073】
線対称である波形については、立ち上がり時間α及び立ち下り時間βを同一にし(α=β)、α=β=0.2の場合、及び、α=β=0.4の場合の2つのケースについてシミュレーションを行った。
非線対称である波形については、立ち上がり時間α及び立ち下り時間βを異ならせ(α≠β)、α=0.2,β=0.4の場合、及び、α=0.4,β=0.2の場合の2つのケースについてシミュレーションを行った。
【0074】
図8において、シミュレーションパラメータ(波形と遷移時間α,β)の定義を、
図8に示す。
図8において、exp(x)の立ち上がり波形及び立ち下がり波形は、実線で示し、tanh(x)の立ち上がり波形及び立ち下がり波形は、点線で示した。
遷移時間α,βは、単位区間(UI;unit interval)に対する割合で表される。単位区間は、一つの量子化信号に対応する1パルスの区間であり、その長さは、1/fsである。
立ち上がり時間は、パルスのLowレベル(−1)からHighレベル(+1)に至るまでの時間であり、立ち下り時間は、パルスのHighレベル(+1)からLowレベル(−1)に至るまでの時間である。
【0075】
表1のシミュレーション結果において、ACLR1は、隣接チャネル漏洩電力比を示し、ACLR2は、次隣接チャネル漏洩電力比を示す。ACLR1’,ACLR2’は、それぞれ、非対称波形(Asymm.)から、非対称成分f
Asym(t)を除去した場合の隣接チャネル漏洩電力比及び次隣接チャネル漏洩電力比である。
【0076】
表1のシミュレーション結果によれば、対称波形(Symm.)については、理想波形ではないexp(x),tanh(x)についても、理想波形と同様のACLR1,ACRL2が得られた。また、対称波形(Symm.)において、遷移時間α、βの違いは、ACLR1,ACRL2に影響がなかった。
したがって、遷移時間α,βの長短は、信号特性ACLR1,2)にとって重要ではないと考えられる。すなわち、パルス波形が理想波形から歪んでいても、対称波形である限りは、ACLR1,ACRL2は低下しないため、パルス波形に歪成分が含まれること自体は、信号特性に悪影響を与えないと考えられる。
【0077】
一方、非対称波形(Asymm.)については、いずれも、対称波形(Symm.)の場合よりも、ACLR1,ACLR2が低下した。しかし、それぞれの非対称波形(Asymm.)から、非対称成分f
Asym(t)を除去した場合、ACLR1’,ACLR2’は、対称波形(Symm.)のACLR1,ACLR2と同じになった。
したがって、ACLR1,ACLR2の劣化は、非対称成分f
Asym(t)が原因であることがわかる。
【0078】
図9は、パルス波形”exp(x)”を対称波形(Symm.)とした場合のパワースペクトラムを示し、
図10は、パルス波形”exp(x)”を非対称波形(Asymm.)とした場合のパワースペクトラムを示している。
【0079】
図9(a)は、α=β=0.2の1bitパルス列Sout(t)のパワースペクトルを示し、
図9(b)は、α=β=0(理想波形)の1bitパルス列Sout(t)のパワースペクトルを示している。
図9によれば、α=β=0.2の場合も、α=β=0(理想波形)の場合も、パワースペクトラムはほぼ同じである。つまり、α=β=0.2にしても、α=β=0(理想波形)からの劣化は認められない。
【0080】
図10(a)は、α=0.2,β=0.3であるパルス波形”exp(x)”のパワースペクトラムを示し、
図10(b)は、α=0.2,β=0.3であるパルス波形”exp(x)”から、非対称成分を除去した場合のパワースペクトラムを示している。
【0081】
非対称成分を除去する前(
図10(a)のパワースペクトラム)では、RF信号の帯域(790MHz〜810MHz)外では、漏洩電力が認められる。一方、非対称成分を除去すると(
図10(b)のパワースペクトラム)では、帯域外の漏洩電力が低下しており、
図9(b)と同様のパワースペクトルが得られている。
【0082】
なお、tahn(x)についても、
図9及び
図10と同様の測定結果が得られた。
また、exp(x)及びtahn(x)以外の他の波形についても確認したところ、同様の結果が得られた。
【0083】
シミュレーション結果によると、完全な矩形波である理想波形であれば、ACLR1,ACLR2は良好な値が得られる。しかし、より完全な矩形波を生成しようとすると、装置のコスト高を招く。また、矩形波は、多くの高調波成分を有するため好ましくなく、消費電力も増大させる。
したがって、実際の信号変換部70(ΔΣ変調器25)としては、完全な矩形波である理想波形ではなく、歪成分を有するパルス波形を出力するものとして構成できれば、好適である。
【0084】
この点に関し、シミュレーション結果によれば、パルス波形が、歪成分を有していても、時間軸に対して線対称であれば、つまり、非対称成分がなければ、信号特性の劣化を生じさせない。
したがって、信号変換部70(ΔΣ変調器25)としては、歪成分を有するパルス波形を出力するものとして構成できる。この場合、信号変換部70(ΔΣ変調器25)パルス波形が、歪成分を有していても、立ち上がり波形及び立ち下がり波形の歪成分が、時間軸に対して実質的に線対称であれば、つまり、実質的に非対称成分がなければ、信号特性の劣化を抑えることができる。
【0085】
なお、歪成分が、時間軸に対して実質的に線対称であるとは、完全に線対称である必要はない、という意味である。例えば、ACLR(隣接チャネル漏洩電力比)が45[dB]以上となるように歪成分に線対称性があればよい。より好ましくは、46[dB]以上となるように、さらに好ましくは、48[dB]以上となるように、さらに好ましくは、50[dB]以上となるように、さらに好ましくは55[dB]以上となるように、さらに好ましくは60[dB]以上となるように、歪成分に線対称性があればよい。
【0086】
また、歪成分の対称性は、単位区間(UI)分の個々のパルスに着目して考える必要はなく、多数の単位区間(UI)における歪成分の平均で考えれば足りる。
【0087】
図11は、
図1のΔΣ変調器25から出力された1bitパルス列を実測した結果を示している。
図11(a)は実測したアイパターンであり、
図11(b)は実測したパワースペクトラムである。実測したパルス波形(
図11(a)のアイパターン)には、非対称成分が含まれており、ACLRは46.1[dB]であった。
【0088】
図11(a)のアイパターンの軌道を数値化して、立ち上がり波形f
rise(t)と立ち下がり波形f
fall(t)とを抽出した。抽出した立ち上がり波形f
rise(t)と立ち下がり波形f
fall(t)とから、式(E)に基づいて、非対称成分f
Asym(t)を算出した。
実測したパルス波形から、算出した非対称成分f
Asym(t)を取り除いて、ACLRを再計算すると、ACLRは、52.3[dB]に改善した。
【0089】
[4.歪成分の抑制]
図12は、本発明の第2の実施形態に係るシステム1を示すブロック図である。本実施形態では、信号変換部70(ΔΣ変調器25)単独では、立ち上がり波形f
rise及び立ち下がり波形f
fallの歪成分を、時間軸に対して実質的に線対称にできない場合において、歪成分の非対称性を抑制するための構成を示している。
【0090】
図12では、信号変換装置(信号変換部)70は、ΔΣ変調器25のほか、符号化部71及び終端抵抗72を有している。符号化部71は、ΔΣ変調器(変換器)25から出力された1bitパルス列の符号化を行うものであり、デジタル信号処理部21の一部として構成されている。終端抵抗(例えば、50Ωの抵抗)72は、符号化部71の出力側を終端させるものである。アナログフィルタ32は、終端抵抗72を介して、符号化部71に接続されている。
【0091】
符号化部71及び終端抵抗72は、いずれも、歪成分及び歪成分の非対称性を抑制する抑制部として機能する。なお、符号化部71及び終端抵抗72のうち、いずれか一方を省略してもよい。符号化部71を省略した場合、終端抵抗72は、ΔΣ変調器25の出力側を終端させるように設けられ、アナログフィルタ32は、終端抵抗72を介して、ΔΣ変調器25に接続される。
【0092】
符号化部71は、ΔΣ変調器25から出力された1bitパルス列に対して、符号化を行う。符号化部71は、ΔΣ変調器25から出力された1bitパルス列において、High(1)が連続して生じることによる遷移時間のゆらぎを防止するものである。
ΔΣ変調器25がパルス出力のために有する回路(フリップフロップなど)において、Highを出力するためのスイッチング素子(MOS−FETなど)は、High(1)が連続している間、常時、ONとなり、当該スイッチング素子を流れる電流によって温度が上昇する。このような状態で、当該スイッチング素子がOFFとなっても、High(1)からLow(−1)に遷移しようとしても、遷移に時間がかかり、立ち下がり遅延時間βが長くなる。その結果、立ち下がり時間βが、立ち上がり時間αよりも長くなり、非対称成分が生じる。
【0093】
そこで、
図12に示す符号化部71は、1bitパルス列において連続するHigh(1)を防止する伝送路符号による符号化を行う。
符号化部71は、マンチェスタ符号又はRZ(Return Zero)符号による符号化を行う。本発明者は、これら2つの符号化であれば、1bitパルス列が表現するRF信号の周波数が変換されるだけで、1bitパルス列が表現するRF信号のスペクトラムの保存が可能であること実験的に見出した。
【0094】
マンチェスタ符号による符号化では、
図13(a)に示すように、0(Low)が”01”に、1(High)が”10”に変換される。マンチェスタ符号によって符号化することで、ΔΣ変調器25の出力(1bitパルス列)に1(High)が連続しても、マンチェスタ符号では、1(High)と0(Low)の繰り返しとなる。
【0095】
したがって、ΔΣ変調器25の出力(1bitパルス列)に1(High)が連続しても、符号化部71の出力(1bitパルス列)には、連続する1(High)の発生が抑えられる。
その結果、ΔΣ変調器25では、連続する1(High)によるフリップフロップの発熱というΔΣ変調器25内の内部要因によって、歪成分に非対称性が生じても、符号化部71から出力される1bitパルス列では、連続する1(High)が抑えられているため、歪成分の非対称性も抑えられる。
【0096】
RZ符号による符号化では、
図13(b)に示すように、0(Low)が”00”に、1(High)が”10”に変換される。RZ符号によって符号化することで、ΔΣ変調器25の出力(1bitパルス列)に1(High)が連続しても、RZ符号では、1(High)と0(Low)の繰り返しとなる。
したがって、マンチェスタ符号の場合と同様に、符号化部71から出力される1bitパルス列における歪成分の非対称性が抑えられる。
【0097】
終端抵抗72は、符号化部71(又はΔΣ変調器25)の出力を終端することで、アナログフィルタ32からの不要な多重反射波を防止するためのものである。符号化部71(又はΔΣ変調器25)が、アナログフィルタ32からの不要な多重反射を受けると、その分、符号化部71(又はΔΣ変調器25)の出力は、不規則に歪み、歪成分の非対称性が生じ易くなる。
【0098】
終端抵抗72を設けることで、不要な反射波が生じるのを抑えることができる。
したがって、アナログフィルタ32からの不要な反射という、ΔΣ変調器25外の外部要因によって発生するおそれのある歪成分の非対称性を抑制することができる。
なお、アナログフィルタ32による反射を防止するには、反射を生じないよう構成されたアナログフィルタ32を用いても良い。
【0099】
このようにして、歪成分の非対称性を抑制することで、パルス波形を、時間軸に対して実質的に線対称にすることができ、信号特性の劣化を防止できる。
なお、歪成分の非対称性を発生する要因がほかにもあれば、当該要因に対する対策を、適宜施せばよい。
【0100】
[5.反射波の抑制]
[5.1 減衰器による抑制]
図14は、本発明の第3の実施形態に係るシステム1を示すブロック図である。
本実施形態と、第1の実施形態との相違点は、処理部24、ΔΣ変調器25、及びアナログフィルタ32を制御する制御部35を備えている点、及び信号変換部70と、アナログフィルタ32との間に配置された減衰器36を備えている点である。
【0101】
ベースバンド部23からIQベースバンド信号が与えられる処理部24は、IQベースバンド信号に対してデジタル直交変調などの処理を行う。したがって、処理部24からは、多ビットのデジタルデータ(離散値)によって表現されたデジタル信号形式の信号が出力される。
なお、処理部24における変調は、直交変調に限らず、変調波を生成するための他の方式の変調であってもよい。
【0102】
処理部24は、直交変調のほか、DPD(Digital Pre-distortion)、CFR(Crest Factor Reduction)、DUC(Digital Up Conversion)などの様々なデジタル信号処理を施す。処理部24からは、上述のような各種のデジタル信号処理によって生成されたデジタルRF信号が出力される。
【0103】
制御部35は、処理部24を制御することによって、処理部24が出力するデジタルRF信号を任意の周波数に変更して、ΔΣ変調器25に与えたりすることができる。
【0104】
ΔΣ変調器25は、上述のように、処理部24から与えられるデジタルのRF信号に対して、ΔΣ変調を行って1bitの量子化信号(パルス信号)を生成する。ΔΣ変調器25による量子化信号は、入力されるRF信号の周波数帯域における量子化雑音がノイズシェイピングされている。
【0105】
バンドパス型ΔΣ変調器25は、ノイズシェイピングされる量子化雑音阻止帯域(バンドパス型ΔΣ変調器25の中心周波数)を変更可能に構成されている。
制御部35は、ΔΣ変調器25を制御することで、前記量子化雑音阻止帯域を調整することができる。制御部35は、バンドパス型ΔΣ変調器25の量子化雑音阻止帯域が、バンドパス型ΔΣ変調器25に入力されるRF信号の周波数帯域(RF信号の信号帯域)を含むように、バンドパス型ΔΣ変調器25を制御する。
【0106】
ΔΣ変調器25は、前述の式(3)に基づいて、zの値が変換可能となっている。つまり、ΔΣ変調器25は、量子化雑音阻止帯域の中心周波数を変更可能となっている。換言すると、量子化雑音阻止帯域が変更可能となっている。
【0107】
制御部35は、ΔΣ変調器25に入力されるRF信号の中心周波数(上述の搬送周波数f
0)に応じて、前述の式(3)に基づいてΔΣ変調器25のzを変換することにより、任意の周波数のRF信号に対して、バンドパスΔΣ変調が行える。
【0108】
このように、RF信号の搬送周波数f
0に応じて、上記変換式(3)におけるcosθ
0(係数a)を変更することで、サンプリング周波数fsを変更することなく、任意の周波数f
0に対応したバンドパスΔΣ変調が行える。cosθ
0を変更すると、式(1)に示すNTFの係数が変更されたことになるが、式の次数は維持される。このため、RF信号の搬送波周波数f
0に応じて、バンドパス型ΔΣ変調器25の構成を変化させても、式の複雑度(次数)は変化せず、したがって、バンドパス型ΔΣ変調器25における信号処理負荷も変化しない。
【0109】
このように本実施形態では、搬送波周波数f
0を変化させても、バンドパス型ΔΣ変調器25における信号処理負荷が変化しないため有利である。本実施形態において、バンドパス型ΔΣ変調器25における信号処理負荷は、ナイキストの定理により、信号帯域幅によって決定されるサンプリング周波数fsに依存するが、搬送波周波数f
0を変化させても信号帯域幅が変化するわけではないためサンプリング周波数fsを変更する必要はない。なお、ΔΣ変調器がローパス型である場合、、搬送波周波数f
0の変化に対応するには、サンプリング周波数fsを変更する必要があり、この点において、バンドパス型が有利である。
【0110】
また、式(3)を利用すると、ΔΣ変調器25を任意の周波数(f
0)に対応できるバンドパス型ΔΣ変調器として利用できるだけでなく、ローパス型ΔΣ変調器として利用することもできる。つまり、ΔΣ変調器25は、ローパス型とバンドパス型とに切り替え可能となっている。
【0111】
また、制御部35は、量子化信号に含まれる量子化雑音を除去しRF信号の周波数帯域の信号を取得するためのフィルタであるアナログフィルタ32の通過帯域を制御することができる。より具体的には、制御部35は、アナログフィルタ32の中心周波数を処理部24及びΔΣ変調器25において設定したRF信号の周波数とすることで、ΔΣ変調器25の量子化雑音阻止帯域を通過帯域となるように、アナログフィルタ32を制御する。
これにより、アナログフィルタ32は、量子化信号により表現されるRF信号の周波数帯域が通過帯域となるように設定される。アナログフィルタ32は、量子化信号の内のRF信号の周波数帯域内の信号を分離し、アナログのRF信号を出力することができる。
【0112】
なお、制御部35が各部の設定に必要な、RF信号の周波数等の情報は、必要に応じて外部からの命令によって与えてもよいし、図示しない記憶部等に予め格納しておいてもよい。
また、上記制御部35は、上述の第1の実施形態、及び第2の実施形態にて示したシステム1にも適用することができる。
【0113】
以上のように、制御部35は、システム1が出力するアナログのRF信号の周波数を制御し設定する。
【0114】
減衰器36は、ΔΣ変調器25とアナログフィルタ32とを接続する信号伝送路4に設けられており、信号伝送路4を伝送する信号を減衰する機能を有している。
【0115】
ΔΣ変調器25が、1bitパルス列(1bitパルス列信号)である量子化信号を出力すると、アナログフィルタ32において当該量子化信号が反射し反射波が生じる場合がある。
すなわち、ΔΣ変調器25側から延びる信号伝送路4と、アナログフィルタ32との間でインピーダンス整合がとれていなければ量子化信号による反射波を生じさせる場合がある。量子化信号は、デジタル信号であるが、アナログ信号としての性質を両方有しているため、アナログフィルタ32に入力されたときにインピーダンス整合がとれていなければ、反射波を生じさせる。
このような不要な反射波が生じると、上述のように、この反射波の影響によって量子化信号に歪みを生じさせ、歪成分の非対称性を生じさせる等、信号特性に劣化を生じさせる。
【0116】
図14においては、反射波は、量子化雑音を除去するアナログフィルタ32によって生じる。量子化信号が信号伝送路4を介してアナログフィルタ32に到達すると、量子化信号に含まれるRF信号の周波数帯域部分は、アナログフィルタ32側で通過帯域に調整されているので通過するが、前記通過帯域外の部分に含まれる量子化雑音の部分は、アナログフィルタ32で反射され、信号源であるΔΣ変調器25側に反射波として戻ることとなる。つまり、アナログフィルタ32は、ΔΣ変調器25から出力された信号の反射波を生じさせる反射素子を構成している。
【0117】
ここで、アナログフィルタ32で反射する反射波は、信号伝送路4を通じてΔΣ変調器25と、アナログフィルタ32との間で多重反射する。
減衰器36は、上記のように信号伝送路4を通じて多重反射する反射波を減衰することができる。なお、減衰器36は、信号伝送路4に設けられているので、量子化信号をも減衰することとなるが、反射波は多重反射することで、量子化信号よりも減衰器36を通過する回数が多くなる。この結果、反射波は、量子化信号よりも大きく減衰され、量子化信号に対する反射波の影響を低減することができる。
【0118】
本実施形態によれば、減衰器36によって、アナログフィルタ32からΔΣ変調器25への信号反射を抑制することができるので、量子化信号の信号特性劣化を防止できる。このように、減衰器36は、ΔΣ変調器25から出力された信号の反射波を抑制する反射抑制部を構成している。
【0119】
なお、本実施形態では、ΔΣ変調器25から出力された信号の反射波を生じさせる反射素子として、アナログフィルタ32が設けられている場合を示したが、反射素子は、アナログフィルタ32に限らず、例えば、アンテナ等、所定のインピーダンスを有することでΔΣ変調器25から出力された信号の反射波を生じさせる素子を含む。
【0120】
次に、本発明者が、上記減衰器による反射波の抑制効果を検証するために行った試験について説明する。
図15は、減衰器による反射波の抑制の効果を検証した装置を示すブロック図であり、(a)は、実際のシステムを模した構成、(b)は、反射波の原因となるアナログフィルタ32を省略したときの電力を参照するための構成を示している。
【0121】
図15(a)に示す装置(以下、装置Aという)は、上記
図5と同様、ソフトウェアで構成したバンドパス型ΔΣ変調器25aと、パルスパターン発生器25bとを備えている。パルスパターン発生器25bは、ΔΣ変調器25の後段に接続されており、ΔΣ変調器25が出力する量子化信号の信号波形を適宜調整する。
また、装置Aは、このパルスパターン発生器25bが出力する調整後の量子化信号が与えられる減衰器36と、アナログフィルタ32と、測定器25cとを備えている。
図15(b)に示す装置(装置B)は、アナログフィルタ32を省略した点以外、装置Aと同様である。
【0122】
上記装置A,Bを用いて、減衰器に対して擬似的に量子化信号を与え、減衰器36の調整値と、量子化信号の出力電力との関係を検証した。
図16(a)は、検証試験において、測定器25cにより得られた測定結果の一例を示した図である。
図16(a)中、縦軸は電力、横軸は周波数であり、アナログフィルタ32の通過帯域周辺の周波数スペクトルを示している。
図16(a)に示すように、量子化信号のアナログフィルタ32の通過帯域には、周囲の雑音部分よりも高い電力で現れている信号成分が所定の帯域幅で含まれている。
【0123】
本試験では、装置Aを用い、信号成分の電力Poutと、信号成分の帯域に隣接する隣接帯域の電力ACP(Adjacent Channel Power)とを測定し、減衰器36の調整値に対する、これら電力の変化を検証した。また、反射波の影響がない場合のACPを測定するために、装置Bを用い、そのPoutと、ACPとを測定した。
【0124】
図16(b)は、減衰器36の調整値に対する電力の変化を示したグラフである。図中、横軸は、減衰器36の調整値を示しており、値が大きいほど設定減衰量が小さい。また、縦軸は、測定された電力の値を示している。
【0125】
図中、線
図M1は、Poutの測定結果を示している。図に示すように、Poutは、減衰器36の調整値に対して線形の関係にある。なお、Poutは、装置A及びBのいずれの装置を用いて測定しても、ほぼ同様の測定結果が得られることを確認した。
線
図M2は、装置Aを用いてACPを測定した測定結果を示しており、線
図M3は、装置Bを用いてACPを測定した測定結果を示している。なお、
図16(b)において、電力値−30dB以下は、測定器25cの測定可能な範囲外となっている。よって、線
図M3において電力値−30dBと示している部分は、電力値−30dB以下の値である。
【0126】
装置Bでは、アナログフィルタ32無しに減衰器36及び直接測定器25cがパルスパターン発生器25bに接続されているので、量子化信号の反射波はほとんど生じない。よって、線
図M3には、反射波の影響は、含まれていない。
線
図M2は、反射波の影響含まない線
図M3と比較して、測定した全域に亘って大きい値となっている。このことから、線
図M2で表されているACPは、アナログフィルタ32で反射した反射波の影響を含んでおり、これによって、ACPR(Adjacent Channel Power Ratio:PoutからACPを減算した値)が小さくなり、アナログフィルタ32が無い場合と比較して信号品質が劣化していることが確認できる。
【0127】
線
図M2は、当該線
図M2における減衰器36の調整値が0である点を通過し、かつPoutと平行な直線S1に対して、電力値がより小さく現れており、減衰器36の調整量が同一である場合のPoutと比較して、その減衰量が相対的に大きくなっている。
仮に、装置AのACPの値に反射波の影響が含まれていなければ、線
図M2は、直線S1及び線
図M1と平行となり、ACPが減衰器36の調整値に対して線形関係になると考えられる。しかし、装置AのACPの測定結果を表す線
図M2は、上述のように、直線S1に対して、より小さい電力値であり、減衰器36の調整量が同一場合のPoutと比較して、その減衰量が相対的に大きく現れている。この点から、減衰器36によって、アナログフィルタ32によって生じる反射波が、信号波よりも相対的に大きく減衰されていることが判る。これによって、減衰器36を有する装置Aは、反射波が抑制されることで、ACPRをより大きくすることができ、信号品質が改善される。
【0128】
このように、減衰器36を設けることで、反射波を抑制することができ、その影響を低減できることが確認できた。
【0129】
[5.2 フィルタによる抑制]
図17は、本発明の第4の実施形態に係るシステム1の要部を示すブロック図である。
本実施形態と、第3の実施形態との相違点は、減衰器36に代えて、分岐路40を設けた点である。
【0130】
分岐路40は、ΔΣ変調器25と、アナログフィルタ32(反射素子)との間に接続されている。分岐路40は、アナログフィルタ32の通過帯域内の信号の通過を阻止するとともに通過帯域外の信号を通過させるアナログのバンドエリミネーションフィルタ41と、バンドエリミネーションフィルタ41を通過する通過帯域外の信号を終端させる終端抵抗42とを備えている。
【0131】
バンドエリミネーションフィルタ41も、アナログフィルタ32と同様、制御部35によって制御されている。制御部35は、バンドエリミネーションフィルタ41の通過阻止帯域を調整可能に制御することができる。
バンドエリミネーションフィルタ41は、アナログフィルタ32の通過帯域が、通過阻止帯域となるように、制御部35によって制御される。
【0132】
アナログフィルタ32は、上述のように、量子化信号の内、RF信号の周波数帯域内の信号を通過させることで、アナログのRF信号を分離する。
一方、バンドエリミネーションフィルタ41は、アナログフィルタ32の通過帯域の信号の通過を阻止する一方、前記通過帯域外の信号を通過させる。これにより、アナログフィルタ32によって反射しうるRF信号の周波数帯域外に含まれる量子化雑音は、反射することなく、バンドエリミネーションフィルタ41が接続された分岐路40に導かれる。
【0133】
バンドエリミネーションフィルタ41の後段に設けられた終端抵抗42は、ΔΣ変調器25から延びる信号伝送路4に対してインピーダンス整合がとれる抵抗値に設定されている。これによって、分岐路40は、信号伝送路4に対してインピーダンス整合をとることができる。
【0134】
このため、本実施形態では、ΔΣ変調器25から出力される量子化信号の内、RF信号の周波数帯域内の信号は、アナログフィルタ32に導かれ、RF信号の周波数帯域外の信号である量子化雑音等は、反射することなくバンドエリミネーションフィルタ41を通じて分岐路40に導かれる。分岐路40の先端には、終端抵抗42が設けられているので、分岐路40側に導かれたRF信号の周波数帯域外の信号は、終端抵抗42によって終端される。
【0135】
この結果、反射波となりうるRF信号の周波数帯域外の信号は、分岐路40側に導かれて終端されるので、RF信号を得つつも、不要な反射を抑制することができる。
このように、分岐路40は、ΔΣ変調器25から出力された信号の反射波を抑制する反射抑制部としての機能を有している。
【0136】
なお、上記実施形態では、RF信号の周波数帯域内の信号を分離するアナログフィルタとして、バンドパスフィルタであるアナログフィルタ32を用い、分岐路40側のフィルタとして、バンドエリミネーションフィルタ41を用いた場合を例示した。しかし、両フィルタは、量子化信号から、RF信号とそれ以外の信号とをそれぞれ分離して導くことができるフィルタを備えていればよい。したがって、バンドパスフィルタであるアナログフィルタ32に代えて、ローパスフィルタを用いることもできる。バンドパスフィルタを用いるか、ローパスフィルタを用いるかは、RF信号の周波数によって、適宜決定される。
【0137】
信号変換装置70がバンドパス型ΔΣ変調によって信号変換を行う場合には、
図17で示したように、RF信号を分離するためのアナログフィルタとしてアナログのバンドパスフィルタ32を用い、分岐路40に設けられるフィルタとしてバンドエリミネーションフィルタ41を用いる。
信号変換装置70がローパス型ΔΣ変調によって信号変換を行う場合には、
図18に示すように、RF信号を分離するためのアナログフィルタとしてローパスフィルタ43を用い、分岐路40側のフィルタとしてハイパスフィルタ44を用いる。
【0138】
図19は、本発明の第5の実施形態に係るシステム1の要部を示すブロック図である。
本実施形態と、第4の実施形態との相違点は、アナログフィルタ32及び分岐路40に代えて、フィルタ回路50を設けた点である。
【0139】
このフィルタ回路50は、橋絡T型バンドパスフィルタを構成しており、量子化信号により表現されるRF信号の周波数帯域を通過帯域として設定されている。つまり、フィルタ回路50は、上記各実施形態のアナログフィルタ32としての機能を有している。
また、本実施形態のフィルタ回路50は、反射抑制部としての機能を有している。フィルタ回路50は、信号伝送路4に繋がるとともに抵抗51a及び抵抗51bが直列に接続された第1経路51と、抵抗51aの前段から分岐して抵抗51bの後段に繋がって抵抗51a,51bを迂回している第2経路と、抵抗51aと抵抗51bとの間を接地する第3経路53とを備えている。
抵抗51a,51bは、それぞれ、信号伝送路4に対してインピーダンス整合がとれる値に設定されている。
第2経路52には、キャパシタンス52aとインダクタンス52bとが互いに直列に接続されている。また、第3経路53には、キャパシタンス53aとインダクタンス53bとが互いに並列に接続されている。
【0140】
なお、キャパシタンス52a、インダクタンス52b、キャパシタンス53a、及びインダクタンス53bは、下記式の関係を満たす。
キャパシタンス52aの容量 Cs=1/(Qω
0Z
0)
インダクタンス52bのインダクタンス Ls=(QZ
0)/ω
0
キャパシタンス53aの容量 Cp=Q/(ω
0Z
0)
インダクタンス53bのインダクタンス Lp=Z
0/(Qω
0)
なお、Z
0はインピーダンス、ω
0は中心角周波数、Qは定数である。
【0141】
フィルタ回路50は、フィルタ回路50が共振している場合においては、キャパシタンス52aとインダクタンス52bとが直列共振である第2経路52のインピーダンスが低く、この第2経路52を信号が通過する。このとき、キャパシタンス53aとインダクタンス53bとが並列共振であるためインピーダンスが高くなるので、信号が接地側に伝搬することはない。よって、フィルタ回路50は、フィルタ回路50を共振させうる信号については、第2経路52を通じて通過させる。
【0142】
一方、フィルタ回路50は、フィルタ回路50が共振していない場合においては、逆に、第2経路52のインピーダンスが高く、第3経路53のインピーダンスが低くなる。このため、信号は、第3経路53を通じて接地側に伝搬される。つまり、信号は、信号伝送路4に対してインピーダンス整合がとれる値に設定されている抵抗51aによって終端される。
【0143】
以上のようにして、フィルタ回路50は、フィルタ回路50が共振させうる周波数帯域の信号を通過させ、それ以外の信号を終端するバンドパスフィルタを構成している。
フィルタ回路50は、その通過帯域が制御部35によって制御可能とされており、RF信号の周波数帯域に設定される。フィルタ回路50は、上述のように、通過帯域外の信号を終端するので、RF信号の周波数帯域外に含まれる量子化雑音等の信号による、不要な信号反射を抑制することができる。
【0144】
このように、上記フィルタ回路50は、所定の信号帯域を通過帯域として有するアナログフィルタ(反射素子)としての機能と、ΔΣ変調器25から出力された信号の反射波を抑制する反射抑制部としての機能とを有している。つまり、反射抑制部、及び反射素子が、フィルタ回路50を構成している。
【0145】
なお、上記実施形態では、橋絡T型バンドパスフィルタとして構成されたフィルタ回路50を用いたが、例えば、定Kフィルタや、誘導M型フィルタを構成するフィルタ回路を用いてもよい。これらフィルタも橋絡T型フィルタと同様、通過帯域のみならず、通過帯域外についても、信号伝送路4に対してインピーダンス整合をとることができ、通過帯域外に含まれる信号による、不要な信号反射を抑制することができる。
【0146】
図20は、本発明の第6の実施形態に係るシステム1の要部を示すブロック図である。
本実施形態と、第5の実施形態との相違点は、フィルタ回路50に代えて、位相変換フィルタを備えたフィルタ回路60を設けた点である。
【0147】
本実施形態のフィルタ回路60も、アナログフィルタ(反射素子)としての機能と、反射抑制部としての機能とを有しており、反射抑制部、及び反射素子によって構成されている。フィルタ回路60は、信号伝送路4に接続されている位相変換フィルタ61と、位相変換フィルタ61の前段から分岐した分岐路62に接続された反転増幅器63と、位相変換フィルタ61の出力及び反転増幅器63の出力を合成する合成器64とを備えている。
【0148】
本実施形態の位相変換フィルタ61は、下記式(G)で表される伝達関数H(s,ω,Q)となるように設定されたフィルタであり、周波数依存性はなく通過利得が1である全域通過型フィルタである。この位相変換フィルタ61は、入力信号を通過させる際、所定の周波数帯域を180度の位相差の信号に変換して通過させ、他の帯域を同相の信号として通過させることができる。
【0150】
なお、式(G)中、s(=jω)は複素周波数、ω
rは位相反転させる角周波数、Qは当該フィルタのクオリティファクタである。
【0151】
図21(a)は、位相変換フィルタ61における、入力信号の周波数に対する位相変化の特性を示したグラフである。図において、横軸は周波数、縦軸は位相を示している。
図に示すように、例えば、位相を反転させる所定の周波数が、横軸上の「1」であるとすると、この位相変換フィルタ61は、周波数「1」において位相が0度となっており、周波数「1」を帯域の境界として帯域内外で互いに180度の位相差を設けることができる。
【0152】
図21(b)は、位相変換フィルタ61を用いて、量子化信号を位相変換したときの一例を示すグラフである。図において、位相変換フィルタ61は、入力された量子化信号の内、中心周波数f
0で定まる変換帯域内の信号については、位相差が180度の信号となるように変換して通過させ、前記変換帯域外の信号については、同相で通過させる。
【0153】
位相変換フィルタ61の変換帯域(所定の信号帯域)は、調整することが可能である。位相変換フィルタ61は、制御部35によって制御されており、位相変換フィルタ61の変換帯域が、RF信号の周波数帯域を含む設定となるように、制御部35によって制御されている。
よって、位相変換フィルタ61から合成器64に向けて出力される量子化信号は、変換帯域以外の帯域の信号については元の信号に対して同相とされ、RF信号の周波数帯域を含む変換帯域の信号については、元の信号に対して位相差が180度である。
【0154】
図20に戻って、反転増幅器63は、位相変換フィルタ61の前段から得た量子化信号の位相を反転させ、量子化信号の反転信号を合成器64に与える。
このように、位相変換フィルタ61、及び反転増幅器63は、ΔΣ変調器25の出力から、位相変換した量子化信号(第1信号)、及び量子化信号の反転信号(第2信号)を生成する生成部を構成している。
【0155】
合成器64は、位相変換フィルタ61から出力される位相変換後の量子化信号と、反転増幅器63から出力される量子化信号の反転信号とを合成する。
このとき、位相変換フィルタ61により位相変換された量子化信号における、変換帯域の信号の元の信号に対する位相差が180度であるので、変換帯域の信号と、反転増幅器63からの量子化信号の反転信号とは、同位相となる。よって、変換帯域に含まれるRF信号の周波数帯域内の信号は、量子化信号の反転信号によって同位相合成される。
【0156】
一方、位相変換フィルタ61により位相変換された量子化信号における、変換帯域以外の帯域の信号については元の信号に対して同相であるので、反転増幅器63からの量子化信号の反転信号とは位相差が180度で逆位相となる。よって、変換帯域以外の帯域の信号は、量子化信号の反転信号によって相殺される。
【0157】
合成器64は、位相変換フィルタ61から出力される量子化信号と、反転増幅器63から出力される量子化信号とを合成することで、変換帯域以外の帯域の信号を相殺し、同位相合成されたRF信号の周波数帯域内の信号を出力する。
【0158】
上記構成によって、位相変換フィルタ61により位相変換された量子化信号、及び反転増幅器63からの量子化信号の反転信号は、互いに合成されることで、RF信号の周波数帯域内の信号が互いに打ち消されないようにしつつ、RF信号の周波数帯域外の信号を打ち消すことが可能な位相とされている。
この結果、反射波となりうるRF信号の周波数帯域外の信号を相殺でき、反射させずに打ち消すことができる。この結果、同位相合成されたRF信号の周波数帯域内の信号を得つつ、信号反射を抑制することができる。
【0159】
上記実施形態では、生成部としての位相変換フィルタ61及び反転増幅器63は、ΔΣ変調器25から出力された量子化信号から、位相変換した量子化信号(第1信号)を生成するとともに、量子化信号の反転信号(第2信号)を生成した場合を示したが、例えば、位相変換フィルタ61の前段又は後段に反転増幅器63を配置することで、合成器64が、位相変換フィルタ61により位相変換された量子化信号の反転信号(第1信号)と、ΔΣ変調器25から出力された量子化信号(第2信号)とを合成する構成としてもよい。この場合も、反射波となりうるRF信号の周波数帯域外の信号を相殺でき、信号反射を抑制することができる。
【0160】
以上のように、生成部としての位相変換フィルタ61及び反転増幅器63は、ΔΣ変調器25の出力である量子化信号から、量子化信号に対して逆相である反転信号を生成し、さらに、量子化信号及び前記反転信号の内の一方の信号から、RF信号の信号帯域内が前記一方の信号に対して逆相、前記信号帯域外が前記一方の信号に対して同相とされた信号を第1信号として生成し、前記出力信号及び前記反転信号の内の他方を第2信号として生成する。
【0161】
上記実施形態では、位相変換フィルタ61によって位相変換された量子化信号と、反転増幅器63による量子化信号の反転信号とを合成したが、例えば、
図22に示すように、デジタル信号処理部21が、量子化信号を差動信号として生成する場合、この差動信号を用いて合成してもよい。
【0162】
図23は、ΔΣ変調器25のパルス変換器を示したブロック図である。図に示すように、ΔΣ変調器25は、量子化器28の出力Vをパルス変換するためのパルス変換器29を備えている。パルス変換器29は、ポジティブ信号とネガティブ信号とからなる差動信号を量子化信号として生成する。
前記差動信号の内、ポジティブ信号は、位相変換フィルタ61に与えられる。ネガティブ信号は、信号の遅延調整を行う遅延調整部66(
図22)に与えられる。ポジティブ信号とネガティブ信号量子化信号とは、互いに逆相であるので、位相変換フィルタ61により位相変換されたポジティブ信号と、ネガティブ信号とを合成することで、反射波となりうるRF信号の周波数帯域外の信号を相殺でき、信号反射を抑制することができる。
【0163】
なお、
図22、
図23では、ポジティブ信号を位相変換フィルタ61に与える構成としたが、ネガティブ信号を位相変換フィルタ61に与え、ポジティブ信号を遅延調整部66に与える構成としてもよい。
【0164】
[6 付記]
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。