(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、特に受光レベルが低い場合、カレントミラーの動作速度が遅くなってしまう。
【0010】
具体的には、光受信器が不連続信号すなわちバースト光信号を受信する構成において、光信号が到着しない期間において受光強度がゼロ、すなわち受光素子の出力電流がゼロアンペアとなった状態で新たに光信号を受信する場合を考える。
【0011】
この場合、カレントミラー回路におけるダイオード接続されたトランジスタの導通電極間の電圧がゼロボルトの状態からトランジスタが導通し始めることから、このタイミングにおけるトランジスタは等価的に非常に大きな抵抗になる。
【0012】
そうすると、この等価抵抗と受光素子へのバイアス電圧供給ノードに接続するバイパスコンデンサとで形成されるローパスフィルタの時定数が大きくなり、バースト応答が遅くなってしまう。
【0013】
このような問題点を解決するために、上記トランジスタの導通電極間の電圧が下がらないように受光素子と並列にセンス抵抗を設け、無信号時にもバイアス電圧供給ノードから電流を引き抜くことにより、抵抗成分を低く抑える回路が考えられる(たとえば、米国特許出願公開第2010/0295538号明細書(特許文献2)参照)。
【0014】
しかしながら、上記のようにカレントミラー回路を用いる構成では、PNPトランジスタが用いられる場合、PNPトランジスタの温度電圧Vt/コレクタ電流Icで計算される等価抵抗が、応答速度すなわち時定数の要求を満たす値に設定される必要がある。そして、受光素子へのバイアス電圧の最適値のばらつき、カレントミラー回路のばらつき、および受光素子の温度特性を考慮すると、モニタ精度の劣化は大きくなる。
【0015】
また、非特許文献1に記載の技術では、特に受光レベルが低い場合、所望のモニタ速度を達成するようにセンス抵抗の値を設定すると、センス抵抗の両端電圧が小さくなり、モニタ精度に影響を与える可能性がある。
【0016】
具体的には、たとえば、ポイント・ツー・マルチポイント通信を行なう局側装置用の光受信器における、受光電流モニタ機能に対する要求を考える。
【0017】
たとえば10G−EPONでは、局側装置の受光レベルに関して、10.3125Gbpsの上り光信号は−6dBm〜−28dBmと規定され、また、GE−PONでは、1.25Gbpsの上り光信号は−10dBm〜−29.78dBmと規定されている。
【0018】
GE−PONおよび10G−EPONが同一システムにおいて共存する場合、−6dBmの高強度のバースト光信号の後に−29.78dBmの低強度のバースト光信号を受信し、この低強度のバースト光信号の受光強度をモニタするためには、当該モニタを行なうタイミングにおいて、受光素子の出力電流を示すセンス電圧が強信号受信時の約−24dB以下で安定している必要がある。
【0019】
ここで、10G−EPONを規定するIEEE802.3avでは、上り光信号の先頭における同期パターンの長さが1.2us(マイクロ秒)以下に規定されている。たとえば、同期パターンの長さ以内の600ns(ナノ秒)で上り光信号の受光レベルをモニタするには、センス電圧が強信号受信時の−24dBに600nsで安定する必要がある。
【0020】
この場合、時定数τに対する条件はexp(−600[ns]/τ)<1/250であり、τ<108[ns]となる。ここで、1/250は−24dBの真値であり、10
(-24/10)から得られる。
【0021】
一般に、受光素子へのバイアス電圧供給ノードに接続するバイパスコンデンサの容量は500pF程度に設定されることが多く、この場合、センス抵抗の値は200Ω程度に設定される必要がある。
【0022】
上記のように−29.78dBmの低強度のバースト光信号を受信する場合、受光素子がAPDであり、その電流増倍率が10であると仮定しても、受光素子の出力電流は高々10uA程度であり、センス抵抗の端子間電圧は2mV程度である。このため、差動増幅器のオフセット電圧のばらつき等によるモニタ精度の劣化が懸念される。
【0023】
すなわち、特許文献1、特許文献2および非特許文献1に記載のRSSI回路では、高精度な受光電流モニタを実現することは困難である。
【0024】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、受光素子の出力電流を良好に測定することが可能な光受信器および受光電流モニタ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる光受信器は、光信号を受信するための受光素子と、上記受光素子にバイアス電圧を供給し、かつ上記受光素子の出力電流の大きさを示すモニタ電圧を生成するためのバイアス電圧供給/モニタ回路と、定電流源とを備え、上記バイアス電圧供給/モニタ回路には、上記定電流源の出力電流から上記受光素子の出力電流を差し引いた残留電流が供給され、上記バイアス電圧供給/モニタ回路は、上記残留電流を上記モニタ電圧に変換する。
【0026】
このように、残留電流をモニタ用の電流として用いる構成により、受光素子の受光強度が小さく受光素子の出力電流が小さい場合でも、モニタ用の電流値は大幅には小さくならないため、モニタ回路における電圧変換用の抵抗のばらつき等によるモニタ電圧のばらつきが小さくなる。これにより、受光素子の出力電流が小さい場合でも、モニタ精度が劣化することを防ぐことができる。したがって、受光素子の出力電流を良好に測定することができる。また、残留電流をモニタ用の電流として用いる構成により、受光素子の出力電流はモニタ回路におけるモニタ電流に影響されないことから、光信号を電気信号に変換する主信号回路を良好に動作させることができる。
【0027】
好ましくは、上記バイアス電圧供給/モニタ回路は、上記定電流源および上記受光素子と電気的に接続された第1導通電極と、第2導通電極と、参照電圧を受ける制御電極とを有するトランジスタを含む。
【0028】
このように、バイアス電圧供給/モニタ回路においてトランジスタを用いる構成により、受光素子の受光強度が小さい場合において残留電流がほぼ定電流源の出力電流となり、受光素子および当該トランジスタの接続ノードから当該トランジスタへの入力抵抗が一定となるため、受光素子の受光強度が小さい場合において受光素子へのバイアス電圧が安定し、モニタ精度を高めることができる。また、バイアス電圧供給/モニタ回路の入力抵抗を小さくすることができるため、回路の時定数が小さくなり、モニタ回路の応答性を高めることができる。
【0029】
より好ましくは、上記トランジスタの上記第1導通電極への入力抵抗は、上記第1導通電極および上記第2導通電極間を流れる電流が大きくなるほど、小さくなる。
【0030】
このような構成により、受光素子の受光強度が小さい場合において受光素子および上記トランジスタの接続ノードから上記トランジスタへの入力抵抗が小さくなることから、回路の時定数が小さくなり、モニタ回路の応答性を高めることができる。また、定電流源の出力電流値を調整することで、上記入力抵抗の値を容易に制御することが可能となる。
【0031】
より好ましくは、上記トランジスタは、上記第1導通電極としてのエミッタと、上記第2導通電極としてのコレクタと、上記制御電極としてのベースとを有するPNPトランジスタである。
【0032】
このように、PNPトランジスタを用いる構成により、モニタ電圧をたとえばグランド基準の低電圧とすることができるため、レベルシフトを行なうための耐圧の大きい部品等を不要とすることができる。
【0033】
好ましくは、上記バイアス電圧供給/モニタ回路は、上記定電流源、上記受光素子および上記バイアス電圧供給/モニタ回路の接続ノードの電位の、上記受光素子の出力電流の大小に応じた変動を抑制するための電位変動抑制回路を含み、上記接続ノードの電圧が、上記バイアス電圧として上記受光素子に供給される。
【0034】
このような構成により、受光素子の受光強度の大小に関わらず受光素子へのバイアス電圧が安定し、モニタ精度を高めることができる。
【0035】
好ましくは、上記光受信器は、さらに、上記定電流源の出力電流に対応するミラー電流を出力するためのカレントミラー回路を備え、上記定電流源は、上記カレントミラー回路の参照電流出力側と電気的に接続されており、上記バイアス電圧供給/モニタ回路には、上記カレントミラー回路のミラー電流から上記受光素子の出力電流を差し引いた残留電流が供給される。
【0036】
このような構成により、受光素子の受光強度が大きいことにより定電流源の出力電流値を超えるような状況において、受光素子の出力電流を減少させることができるため、受光素子の過電流破壊を防ぐことができる。
【0037】
より好ましくは、上記バイアス電圧供給/モニタ回路は、上記定電流源および上記カレントミラー回路の接続ノードの電圧から上記バイアス電圧を生成する。
【0038】
このような構成により、バイアス電圧を供給するための電圧源を別途設ける必要がなくなり、回路構成の簡易化を図ることができる。
【0039】
好ましくは、上記光受信器は、さらに、上記定電流源、上記受光素子の第1端および上記バイアス電圧供給/モニタ回路の接続ノードと、固定電圧の供給される固定電圧ノードとの間に接続されたキャパシタを備え、上記受光素子の第2端は、上記受光素子の出力電流に基づいて、上記光信号を電気信号に変換した受信信号を生成するための受信信号生成部と電気的に接続される。
【0040】
このような構成により、受光素子のバイアス電圧供給経路における高周波ノイズを除去し、光信号から電気信号への変換および光信号のモニタを良好に行なうことができる。
【0041】
好ましくは、上記光受信器は、さらに、上記受光素子の出力電流を測定すべきタイミングを示すタイミング情報に従い、上記モニタ電圧を保持するとともに出力するためのサンプルホールド部とを備える。
【0042】
このような構成により、サンプルホールド部より後段の回路の動作を低速化することができるため、高精度な部品を使用することができる。たとえば、後段のA/Dコンバータの低速動作を可能とすることにより、A/Dコンバータとして高速動作を満足する部品を使用する必要がなくなり、部品選択の容易化を図ることができる。
【0043】
好ましくは、上記光受信器は、複数の宅側装置と、各上記宅側装置と共通の光通信回線を介して光信号を送受信するための局側装置とを備え、上記各宅側装置から上記局側装置への上記光信号が時分割多重される通信システムにおける上記局側装置に設けられる。
【0044】
このような受動的光ネットワークにおいて光受信器を用いることにより、各宅側装置から強度の異なるバースト光信号を連続して受信しても、受光素子の出力電流を高速かつ高精度に検出することができる。
【0045】
好ましくは、上記受光素子はバースト光信号を受信し、上記光受信器の時定数τが、以下の式を満足するように設定される。
exp(−t/τ)<1/R
但し、tは上記モニタ電圧が安定するまでの最大許容時間であり、Rは上記バースト光信号の強弱比である。
【0046】
このような構成により、受光素子の出力電流を電圧に変換する回路の時定数を十分短くすることができるため、受光素子の出力電流を良好に測定することができる。
【0047】
好ましくは、上記受光素子はバースト光信号を受信し、上記光受信器の時定数τが、以下の式を満足するように設定される。
1−exp(−k/τ)<err
exp(−t/τ)<(1+err)/R
但し、kは上記バースト光信号のプリアンブル部において同一論理レベルが連続する最長時間であり、errは最大許容誤差であり、tは上記モニタ電圧が安定するまでの最大許容時間であり、Rは上記バースト光信号の強弱比である。
【0048】
このような構成により、受光素子の出力電流を電圧に変換する回路の時定数を十分短くすることができるため、受光素子の出力電流を良好に測定することができる。また、時定数の最小値および許容誤差を考慮した適切な値の時定数を設定することができる。
【0049】
より好ましくは、tは600ナノ秒であり、Rは250である。
【0050】
このような構成により、GE−PONおよび10G−EPONが同一システムにおいて共存する通信システムにおいて、受光素子の出力電流を電圧に変換する回路の時定数を十分短く設定することができるため、上り光信号の受光強度を良好に測定することができる。
【0051】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる受光電流モニタ方法は、光信号を受信するための受光素子を備える光受信器における受光電流モニタ方法であって、定電流源の出力電流から上記受光素子の出力電流を差し引いた残留電流を生成するステップと、上記受光素子の出力電流の大きさを示すモニタ電圧を、上記残留電流を電圧に変換することにより生成するステップとを含む。
【0052】
このように、残留電流をモニタ用の電流として用いる構成により、受光素子の受光強度が小さく受光素子の出力電流が小さい場合でも、モニタ用の電流値は大幅には小さくならないため、モニタ回路における電圧変換用の抵抗のばらつき等によるモニタ電圧のばらつきが小さくなる。これにより、受光素子の出力電流が小さい場合でも、モニタ精度が劣化することを防ぐことができる。したがって、受光素子の出力電流を良好に測定することができる。また、残留電流をモニタ用の電流として用いる構成により、受光素子の出力電流はモニタ回路におけるモニタ電流に影響されないことから、光信号を電気信号に変換する主信号回路を良好に動作させることができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、受光素子の出力電流を良好に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0056】
図1は、本発明の実施の形態に係るPONシステムの構成を示す図である。
【0057】
図1を参照して、PONシステム501は、たとえば10G−EPONであり、宅側装置401A,401B,401C,401Dと、局側装置402と、スプリッタSP1,SP2とを備える。宅側装置401A,401B,401Cと局側装置402とは、スプリッタSP1およびSP2ならびに光ファイバOPTFを介して接続され、互いに光信号を送受信する。宅側装置401Dと局側装置402とは、スプリッタSP2および光ファイバOPTFを介して接続され、互いに光信号を送受信する。PONシステム501では、宅側装置401A,401B,401C,401Dから局側装置402への上り光信号が時分割多重される。
【0058】
図2は、本発明の実施の形態に係る局側装置の構成を示す図である。
【0059】
図2を参照して、局側装置402は、光モジュール301と、PON受信部302と、PON送信部303と、通信制御部304と、上位ネットワーク受信部305と、上位ネットワーク送信部306とを備える。光モジュール301は、光受信器101と、光送信器58と、合分波部50とを含む。光受信器101は、バイアス/電流モニタ部11と、レンズ51と、受光素子52と、前置増幅器53とを含む。光送信器58は、レンズ57と、発光素子56とを含む。PON受信部302は、後置増幅器54と、クロック/データ再生部59とを含む。なお、「バイアス/電流モニタ部」は、「バイアスおよび電流モニタ部」と表現することも可能である。また、「クロック/データ再生部」は、「クロックおよびデータ再生部」と表現することも可能である。
【0060】
上位ネットワーク502からのフレームは上位ネットワーク受信部305により受信され、通信制御部304へ送られる。通信制御部304は、PON送信部303を介して光モジュール301へフレームを出力する。光モジュール301の光送信器58において、発光素子56は、PON送信部303から受けた電気信号であるフレームを光信号に変換し、レンズ57および合分波部50を介して宅側装置へ送信する。
【0061】
一方、宅側装置から局側装置へ送信された光信号は、合分波部50を介して光受信器101により受信される。光受信器101において、受光素子52は、合分波部50およびレンズ51を介して光ファイバOPTFと光学的に結合されている。受光素子52は、光ファイバOPTFから受けた光量に応じた電流を出力する。前置増幅器53は、受光素子52から受けた電流を増幅して電圧に変換し、PON受信部302へ出力する。
【0062】
PON受信部302において、後置増幅器54は、前置増幅器53から受けた電圧を、受信信号すなわち2値のレベルを有する電圧に変換してクロック/データ再生部59へ出力する。クロック/データ再生部59は、後置増幅器54から受けた受信信号に基づいて、クロックおよびデータを再生する。
【0063】
通信制御部304は、クロック/データ再生部59から受けたデータを復号化し、データフレームおよび制御フレームを復元する。通信制御部304は、復元したこれらのフレームに基づいて、上位ネットワーク送信部306を介して上位ネットワーク502へフレームを送信する。また、通信制御部304は、各宅側装置が送信した光信号が時間的に競合しないように、宅側装置からのバースト信号の開始タイミングおよび終了タイミング等を管理し、バースト信号を送信してもよい期間を示すウインドウを制御フレームに含めて宅側装置に通知する。宅側装置は、割り当てられたウインドウにおいてバースト信号を送信してくるため、通信制御部304は、管理しているタイミングに基づいて、バースト信号の測定タイミングを示すタイミング情報をバイアス/電流モニタ部11へ出力する。
【0064】
バイアス/電流モニタ部11は、通信制御部304から受けたタイミング情報の示すタイミングに従って受光素子52の出力電流を検出し、検出結果を示すモニタ信号を通信制御部304へ出力する。
【0065】
通信制御部304は、たとえば、バイアス/電流モニタ部11から受けたモニタ信号の示す受光素子52の出力電流レベルを記憶するとともに、局側装置402に接続された監視システム等の端末装置へ出力する。
【0066】
図3は、本発明の実施の形態に係る光受信器の構成を示す図である。
【0067】
図3を参照して、光受信器101は、バイアス/電流モニタ部11と、受光素子52と、キャパシタ25と、帰還抵抗55が設けられた前置増幅器53とを含む。受光素子52は、たとえばAPDである。
【0068】
バイアス/電流モニタ部11は、受光素子52にバイアス電圧Vbiasを供給し、かつ受光素子52の出力電流を測定する。そして、バイアス/電流モニタ部11は、測定した受光素子52の出力電流の大きさを示すモニタ電圧Vrssiを生成して通信制御部304へ出力する。
【0069】
キャパシタ25は、受光素子52のバイアス電圧印加側にバイパスコンデンサとして設けられる。キャパシタ25は、受光素子52の近傍に配置されることが好ましい。
【0070】
図4は、本発明の実施の形態に係る光受信器におけるバイアス/電流モニタ部の構成を示す図である。
【0071】
図4を参照して、バイアス/電流モニタ部11は、定電流源21と、バイアス電圧供給/モニタ回路22とを含む。バイアス電圧供給/モニタ回路22は、電位変動抑制回路23と、抵抗30とを含む。なお、「バイアス電圧供給/モニタ回路」は、「バイアス電圧供給およびモニタ回路」と表現することも可能である。
【0072】
定電流源21は、定電流Isを生成し、バイアス電圧供給/モニタ回路22および受光素子52へ出力する。定電流Isは、受光素子52の出力電流Iapdの最大値よりも十分に大きい。
【0073】
バイアス電圧供給/モニタ回路22は、受光素子52にバイアス電圧Vbiasを供給し、かつ受光素子52の出力電流Iapdの大きさを示すモニタ電圧Vrssiを生成する。
【0074】
バイアス電圧供給/モニタ回路22には、定電流源21の出力電流Isから受光素子52の出力電流Iapdを差し引いた残留電流Irssiが供給される。そして、バイアス電圧供給/モニタ回路22は、残留電流Irssiをモニタ電圧Vrssiに変換する。
【0075】
より詳細には、バイアス/電流モニタ部11では、定電流源21の出力ノード、バイアス電圧供給/モニタ回路22の電流入力ノード、および受光素子52のカソードが接続されている。これにより、バイアス/電流モニタ部11は、定電流源21の出力電流Isから受光素子52の出力電流Iapdを減算する機能を有し、減算後の残留電流Irssiを電流電圧変換したモニタ電圧Vrssiを出力する。
【0076】
抵抗30は、電位変動抑制回路23に接続された第1端と、接地電圧の供給される接地ノードに接続された第2端とを有する。残留電流Irssiは、抵抗30によって電圧に変換され、電位変動抑制回路23および抵抗30の第1端の接続ノードからモニタ電圧Vrssiとして出力される。
【0077】
また、バイアス/電流モニタ部11は、参照電圧Vrefを基準電圧として受光素子52へのバイアス電圧Vbiasを生成する。
【0078】
電位変動抑制回路23は、定電流源21、受光素子52およびバイアス電圧供給/モニタ回路22の接続ノードNbiasの電位の、受光素子52の出力電流Iapdの大小に応じた変動を抑制する。この接続ノードNbiasの電圧が、バイアス電圧Vbiasとして受光素子52に供給される。
【0079】
このように、残留電流Irssiをモニタ用の電流として用いる構成により、受光素子52の受光強度が小さく出力電流Iapdが小さい場合でも、モニタ用の電流である残留電流Irssiは大幅には小さくならないため、バイアス電圧供給/モニタ回路22における電圧変換用の抵抗30のばらつき等によるモニタ電圧Vrssiのばらつきが小さくなる。これにより、受光素子52の出力電流Iapdが小さい場合でも、モニタ精度が劣化することを防ぐことができる。
【0080】
また、残留電流Irssiをモニタ用の電流として用いる構成により、受光素子52の出力電流Iapdはバイアス電圧供給/モニタ回路22におけるモニタ用の電流に影響されないことから、光信号を電気信号に変換する前置増幅器53等の主信号回路を良好に動作させることができる。
【0081】
図5は、本発明の実施の形態に係る光受信器におけるバイアス電圧供給/モニタ回路の詳細な構成を示す図である。
【0082】
図5を参照して、電位変動抑制回路23は、定電流源21および受光素子52と電気的に接続された第1導通電極と、第2導通電極と、参照電圧Vrefを受ける制御電極とを有するトランジスタ31を含む。トランジスタ31の第1導通電極への入力抵抗は、上記第1導通電極および上記第2導通電極間を流れる電流が大きくなるほど、小さくなる。
【0083】
トランジスタ31は、たとえば、第1導通電極としてのエミッタと、第2導通電極としてのコレクタと、制御電極としてのベースとを有するPNPトランジスタである。なお、PNPトランジスタ31は、PチャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ等、他のP型トランジスタであってもよい。
【0084】
より詳細には、PNPトランジスタ31は、参照電圧Vrefを受けるベースと、定電流源21の出力電流Isを受けるエミッタと、抵抗30に接続されたコレクタとを有する。
【0085】
この回路では、バイアス電圧供給/モニタ回路22の電流入力ノードすなわちPNPトランジスタ31のエミッタの入力抵抗Rinが、以下の式(A1)で表される。
Rin=Vt/Ic・・・(A1)
【0086】
但し、VtはPNPトランジスタ31の温度電圧であり、Icは残留電流Irssiに相当するPNPトランジスタ31のコレクタ電流である。また、Vtは以下の式(A2)で表される。
Vt=k×T/q・・・(A2)
【0087】
但し、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度であり、qは素電荷である。
【0088】
式(A1)より、定電流源21の出力電流Isを設定することにより、入力抵抗Rinを制御できることが分かる。また、受光素子52の受光強度が小さいとき、コレクタ電流Icは定電流Isに漸近することから、入力抵抗Rinを小さくすることが可能となる。
【0089】
すなわち、PNPトランジスタ31を用いる構成により、受光素子52の受光強度が小さい場合でも、入力抵抗Rinが小さくなるようなコレクタ電流Icを流すことができるため、時定数τを十分に小さく設定することが可能となる。
【0090】
また、受光素子52の受光強度が小さい場合において残留電流Irssiが定電流源21の出力電流Isと略等しくなり、受光素子52およびPNPトランジスタ31の接続ノードNbiasからPNPトランジスタ31への入力抵抗Rinが一定となる。このため、受光素子52の受光強度が小さい場合においても受光素子52へのバイアス電圧Vbiasが安定し、モニタ精度を高めることができる。
【0091】
なお、受光素子52へのバイアス電圧Vbiasは、参照電圧VrefにPNPトランジスタ31のベース−エミッタ間電圧を加えた電圧となる。
【0092】
図6は、
図4に示す回路にノイズ除去用の回路および主信号系の回路を追加した構成を示す図である。
【0093】
図6を参照して、キャパシタ25は、定電流源21、受光素子52のカソードおよびバイアス電圧供給/モニタ回路22の接続ノードNbiasと、固定電圧たとえば接地電圧の供給される固定電圧ノードとの間に接続されている。すなわち、キャパシタ25は、受光素子52のカソードに接続された第1端と、接地ノードに接続された第2端とを有する。
【0094】
また、受光素子52のアノードは、前置増幅器53の入力ノードに接続されている。受信信号生成部28は、たとえば前置増幅器53、後置増幅器54および帰還抵抗55を含み、受光素子52のアノードと電気的に接続され、受光素子52の出力電流Iapdに基づいて、光信号を電気信号に変換した受信信号を生成する。
【0095】
ここで、GE−PONでは、プリアンブル部における8B10Bアイドルパターンの同一論理レベルが最長で5bitすなわち4ns連続する。また、プリアンブル長が最大で800nsである。
【0096】
また、10G−EPONでは、プリアンブル部における同期パターンの同一論理レベルが最長で6bitすなわち0.6ns連続する。また、プリアンブル長が最大で1.2usである。
【0097】
そして、ペイロード部におけるデータパターンは任意であることから、連続符号時間すなわち同一論理レベルが連続する時間が長くなる可能性がある。このため、プリアンブル部の同期パターン内にモニタ電圧が収束することがモニタ精度の向上につながる。また、実際のシステムでは、ベンダー間の相互接続性の観点から、同期パターン内でのモニタ電圧の収束が求められる場合がある。
【0098】
ここでは、同期パターンの長さ以内の600nsで上り光信号の受光レベルをモニタすることを目標とする。
【0099】
また、GE−PONおよび10G−EPONが同一システムにおいて共存する場合、前述のように、バースト信号の強弱比は約24dBとなる。
【0100】
ここで、光受信器101では、バイアス/電流モニタ部11における回路の時定数τが、たとえば以下の式(B1)を満足するように設定される。
exp(−t/τ)<1/R・・・(B1)
【0101】
但し、tはモニタ電圧Vrssiが安定するまでの最大許容時間であり、Rはバースト光信号の強弱比である。式(B1)において、たとえば、tは600ナノ秒であり、Rは250である。ここで、250は−24dBの真値であり、10
24/10から得られる。
【0102】
そして、バイアス電圧供給/モニタ回路22の入力抵抗をRinとし、キャパシタ25の容量をCapdとすると、τ=Rin×Capdであるから、τがこの条件を満足するように、RinおよびCapdを設定すればよい。
【0103】
また、たとえば、光受信器101では、バイアス/電流モニタ部11における回路の時定数τが、以下を満足するように設定される。
【0104】
宅側装置からのバースト信号のプリアンブル部における連続符号時間すなわちプリアンブル部において同一論理レベルが連続する最長時間をkとし、測定すべき電流値に対する誤差をerrとすると、
1−exp(−k/τ)<err・・・(C1)
【0105】
たとえば、式(C1)において、k/τ=1/5の場合、err=18%となる。
【0106】
このような構成により、バースト信号のプリアンブル部の同期用パターンにおいて、同一論理レベルの連続時間よりも時定数を十分長くすることができるため、受光素子52の出力電流を良好に測定することができる。
【0107】
また、たとえば、光受信器101では、バイアス/電流モニタ部11における回路の時定数τが、以下を満足するように設定される。
【0108】
すなわち、モニタ電圧Vrssiが安定するまでの最大許容時間をtとし、PONシステム501において想定される各バースト信号間の強弱比をRとすると、
exp(−t/τ)<(1+err)/R・・・(C2)
【0109】
たとえば、式(C2)において、τ/t=1/8、R=250の場合、err=8.4%となる。
【0110】
このような構成により、受光素子の出力電流を電圧に変換する回路の時定数を十分短くすることができるため、受光素子の出力電流を良好に測定することができる。また、時定数の最小値および許容誤差を考慮した適切な値の時定数を設定することができる。
【0111】
なお、式(C2)において、モニタ対象のバースト信号が光受信器101に与えられるタイミングによっては、右辺の値が(1+err)/Rより小さくなり、時定数τに対する要求が厳しくなる可能性がある。
【0112】
プリアンブル部における連続符号時間を4nsとし、許容最大誤差を20%とすると、時定数τは、式(C1)より、以下の式で表される。
1−exp(−4[ns]/τ)<0.2
τ>18[ns]
【0113】
また、時定数τは、式(C2)より、以下の式で表される。
exp(−600[ns]/τ)<(1+0.2)/250
τ<112.377・・・[ns]
【0114】
したがって、18ns<τ<約112nsとなる。そして、バイアス電圧供給/モニタ回路22の入力抵抗をRinとし、キャパシタ25の容量をCapdとすると、τ=Rin×Capdであるから、τがこの条件を満足するように、RinおよびCapdを設定すればよい。
【0115】
図7は、本発明の実施の形態に係る光受信器におけるバイアス/電流モニタ部の詳細な構成を示す図である。
【0116】
図7を参照して、バイアス/電流モニタ部11は、さらに、カレントミラー回路26を含む。
【0117】
カレントミラー回路26は、定電流源21の出力電流Isに対応するミラー電流を出力する。定電流源21は、カレントミラー回路26の低電位側かつ参照電流出力側と電気的に接続されている。バイアス電圧供給/モニタ回路22は、カレントミラー回路26の低電位側かつミラー電流出力側と電気的に接続されている。
【0118】
バイアス電圧供給/モニタ回路22には、カレントミラー回路26のミラー電流から受光素子52の出力電流Iapdを差し引いた残留電流Irssiが供給される。
【0119】
より詳細には、カレントミラー回路26は、PNPトランジスタ32,33を含む。なお、PNPトランジスタ32,33は、PチャネルMOSトランジスタ等、他のP型トランジスタであってもよい。
【0120】
PNPトランジスタ32は、電源電圧Vccの供給される電源ノードに接続されたエミッタと、定電流源21の入力ノードに接続されたベースおよびコレクタとを有する。PNPトランジスタ33は、電源電圧Vccの供給される電源ノードに接続されたエミッタと、PNPトランジスタ32のベースおよびコレクタに接続されたベースと、バイアス電圧供給/モニタ回路22、キャパシタ25および受光素子52に接続されたコレクタとを有する。
【0121】
この回路では、グランド基準の低電位側に設けられた定電流源21の出力電流Isを、PNPトランジスタ32,33で構成されるカレントミラー回路26でコピーすることにより、バイアス電圧供給/モニタ回路22に対する定電流源を実現する。すなわち、定電流源21をローサイドに設け、定電流源21の出力電流IsをPNPトランジスタ32,33を用いてミラーする。
【0122】
受光素子52の受光強度が大きく、受光素子52の出力電流Iapdのレベルが定電流源21の出力電流Isを超えようとする際、PNPトランジスタ33のコレクタ−エミッタ間電圧が増加することにより、接続ノードNbiasすなわち受光素子52のカソードの電圧が低下する。
【0123】
そして、接続ノードNbiasの電圧が受光素子52の閾値電圧すなわち順方向電圧まで低下することにより、出力電流Ipdの時間平均値が減少する。あるいは、受光素子52がAPDである場合には、受光素子52の電流増倍率が低下して出力電流Ipdが減少する。
【0124】
すなわち、
図7に示す回路では、受光素子52の過電流破壊を防止するリミット機能を実現することができる。
【0125】
図8は、本発明の実施の形態に係る光受信器におけるバイアス/電流モニタ部の詳細な構成を示す図である。
【0126】
図8を参照して、バイアス/電流モニタ部11は、
図7に示す構成と比べて、抵抗34をさらに含む。バイアス電圧供給/モニタ回路22は、抵抗34を介した定電流源21およびカレントミラー回路26の接続ノードの電圧からバイアス電圧Vbiasを生成する。
【0127】
より詳細には、PNPトランジスタ31は、カレントミラー回路26および受光素子52と電気的に接続されたエミッタと、コレクタと、定電流源21および抵抗34の接続ノードと電気的に接続されたベースとを有する。
【0128】
すなわち、バイアス電圧供給/モニタ回路22では、ローサイド電流源すなわち定電流源21と、カレントミラー用PNPトランジスタ32のコレクタとの間に適切な抵抗値の抵抗34を設け、抵抗34のローサイド側のノードすなわち抵抗34および定電流源21の接続ノードを、バイアス電圧供給/モニタ回路22に接続する。これにより、抵抗34および定電流源21の接続ノードにおける電圧が参照電圧Vrefとしてバイアス電圧供給/モニタ回路22に供給される。
【0129】
このような構成により、電源電圧Vccを基準として参照電圧Vrefを生成することができるため、参照電圧源を別途用意する必要がなくなる。
【0130】
なお、抵抗34の抵抗値が0Ωの場合でもバイアス電圧供給/モニタ回路22が動作する場合、具体的には、バイアス電圧供給/モニタ回路22におけるPNPトランジスタ31がオンする場合には、抵抗34を設けなくてもよい。この場合、定電流源21およびカレントミラー用PNPトランジスタ32の接続ノードがバイアス電圧供給/モニタ回路22に接続される。
【0131】
図9は、
図7に示す回路にサンプルホールド機能を追加した構成を示す図である。
【0132】
図9を参照して、光受信器101は、さらに、サンプルホールド部27を備える。
【0133】
サンプルホールド部27は、受光素子52の出力電流を測定すべきタイミングを示す通信制御部304からのタイミング情報に従い、バイアス電圧供給/モニタ回路22から出力されるモニタ電圧Vrssiを保持するとともに通信制御部304におけるADC(アナログ/デジタルコンバータ)へ出力する。
【0134】
このADCは、たとえばマイクロコンピュータに内蔵され、サンプルホールド部27から受けたモニタ電圧Vrssiのレベルをデジタル値に変換する。通信制御部304は、このデジタル値を用いて受光強度を算出する。
【0135】
このような構成により、サンプルホールド部27より後段の回路の動作を低速化することができる。また、通信制御部304からタイミング情報を取得してサンプルホールドを行なう構成により、バースト信号を検出すべきタイミングを把握し、適切なタイミングにおける測定結果を確実に得ることができる。
【0136】
次に、本願発明者による光受信器101の動作の検証内容を詳細に説明する。
【0137】
図10は、本発明の実施の形態に係る光受信器のシミュレーション回路を示す図である。
【0138】
図10を参照して、このシミュレーション回路では、バイアス/電流モニタ部11が、定電流源21と、バイアス電圧供給/モニタ回路22と、キャパシタC2と、抵抗34と、カレントミラー回路26とを含む。バイアス電圧供給/モニタ回路22は、電位変動抑制回路23と、抵抗30と、キャパシタC4とを含む。カレントミラー回路26は、いわゆるウィルソンカレントミラー回路であり、PNPトランジスタQ6〜Q9を含む。電位変動抑制回路23は、PNPトランジスタQ1,Q11を含む。このシミュレーション回路では、キャパシタ25の容量値は1000pFに設定している。定電流源21は、たとえば図示しないNPNトランジスタおよび差動増幅器を含む。
【0139】
カレントミラー回路26において、PNPトランジスタQ9は、電源電圧Vccの供給される電源ノードに接続されたエミッタと、コレクタと、ベースとを有する。PNPトランジスタQ8は、PNPトランジスタQ9のコレクタに接続されたエミッタと、互いに接続されたベースおよびコレクタとを有する。PNPトランジスタQ7は、電源電圧Vccの供給される電源ノードに接続されたエミッタと、PNPトランジスタQ9のベースに接続されたコレクタおよびベースとを有する。PNPトランジスタQ6は、PNPトランジスタQ7のベースおよびコレクタに接続されたエミッタと、PNPトランジスタQ8のベースおよびコレクタに接続されたベースと、コレクタとを有する。また、キャパシタC2の第1端は、電源電圧Vccの供給される電源ノードに接続されている。
【0140】
抵抗34は、PNPトランジスタQ8のベースおよびコレクタに接続された第1端と、PNPトランジスタQ1のベースおよび定電流源21の第1端に接続された第2端とを有する。バイアス電圧供給/モニタ回路22において、PNPトランジスタQ1は、抵抗34の第2端および定電流源21の第1端に接続されたベースと、キャパシタC2の第2端に接続されたエミッタと、抵抗30の第1端およびキャパシタC4の第1端に接続されたコレクタとを有する。PNPトランジスタQ11は、PNPトランジスタQ1のエミッタに接続されたベースと、PNPトランジスタQ6のコレクタ、キャパシタC25の第1端、および受光素子52のカソードに接続されたエミッタと、PNPトランジスタQ1のコレクタに接続されたコレクタとを有する。
【0141】
抵抗30の第2端、キャパシタC4の第2端、キャパシタ25の第2端および定電流源21の第2端は、接地ノードに接続されている。
【0142】
カレントミラー回路26、バイアス電圧供給/モニタ回路22、キャパシタ25および受光素子52の接続ノードNbiasにカレントミラー回路26から定電流Isが供給される。また、抵抗30を通して残留電流Irssiが流れる。また、接続ノードNbiasの電圧Vapdがバイアス電圧として受光素子52に供給される。
【0143】
図11は、
図10に示すシミュレーション回路におけるモニタ特性を示す図である。
図11において、横軸は受光素子52の出力電流Iapdであり、縦軸は(定電流Is−残留電流Irssi)である。
【0144】
図11を参照して、出力電流Iapdが1uA(マイクロアンペア)のとき、(定電流Is−残留電流Irssi)が1.02uAとなる。そして、出力電流Iapdの1uAからの増加に略比例して、(定電流Is−残留電流Irssi)が増加する。
【0145】
したがって、受光素子52の出力電流Iapdについて、理想的なモニタ特性が得られていることが分かる。
【0146】
図12は、
図10に示すシミュレーション回路における過渡応答を示す図である。
図12において、横軸は時間であり、縦軸は(定電流Is−残留電流Irssi)である。
【0147】
図12を参照して、0秒において受光素子52の出力電流Iapdを1mA(ミリアンペア)に設定し、1.0us秒において出力電流Iapdを4uA(グラフI1)、10uA(グラフI2)および100uA(グラフI3)にそれぞれ設定し、2.0us秒において出力電流Iapdをゼロアンペアに設定する。この1mAの出力電流Iapdが−6dBmの高強度のバースト光信号の受光強度に相当し、ゼロアンペアの出力電流Iapdがバースト光信号の間隔であるIBG(Inter Burst Gap)に相当する。
【0148】
この場合、(定電流Is−残留電流Irssi)は、出力電流Iapdの値を変更してから280ns(ナノ秒)経過後にほぼ安定している。
【0149】
すなわち、IBGはたとえば10G−EPONでは0.2usと規定されており、十分な速度のバースト応答が得られていることが分かる。
【0150】
図13は、
図10に示すシミュレーション回路における周波数応答を示す図である。
図13において、横軸は周波数であり、縦軸は低周波でのモニタ電圧Vrssiに対する比である。
【0151】
図13を参照して、10MHzで3dBの減衰となっていることから、このシミュレーション回路では、受光素子52の出力電流Iapdに対するモニタ電圧Vrssの応答速度として10MHzの帯域が得られており、100ns程度が要求されるモニタ機能の時定数として十分な性能が得られていることが分かる。
【0152】
図14は、
図10に示すシミュレーション回路におけるリミット機能を示す図である。
図14において、横軸は受光素子52の出力電流Iapdであり、縦軸は受光素子52に供給されるバイアス電圧である電圧Vapdである。ここでは、定電流Isは2mAとする。
【0153】
図14を参照して、出力電流Iapdが2mAを超えると、カレントミラー回路26によるリミット機能が働き、電圧Vapdが26.7Vから低下する。
【0154】
図15は、
図10に示すシミュレーション回路に与えるバースト光信号の一例を示す図である。
【0155】
図15を参照して、
図10に示すシミュレーション回路に、まず、−6dBmの高強度のダミーのバースト光信号を2us間与え、0.2usのIBGの後、強度Powのテスト用のバースト光信号を2us間与え、さらに、0.2usのIBGの後、−6dBmの高強度のダミーのバースト光信号を2us間与える。
【0156】
本検証では、1回目のIBGの略中央のサンプリングタイミングS1から100ns間隔でモニタ電圧Vrssiのデジタル値を取得する。
【0157】
図16は、
図15に示すバースト光信号を与えた場合におけるテスト用のバースト光信号のモニタ結果を示す図である。
図16において、横軸はバーストタイミングすなわちサンプリングタイミングS1からの経過時間であり、縦軸はADC出力すなわちモニタ電圧Vrssiのデジタル値である。
【0158】
図17は、
図15に示すバースト光信号を与えた場合におけるテスト用のバースト光信号のモニタ結果を示す図である。
図17において、横軸はテスト用のバースト光信号の強度Powであり、縦軸はADC差分すなわちIBGにおけるA/Dコンバータの出力値と各バーストタイミングにおけるA/Dコンバータの出力値との差である。
【0159】
ここで、A/Dコンバータの出力値は、IBGすなわちバースト光信号が無入力の状態において残留電流が最大となることから最大となり、バースト光信号の強度が大きくなるほど小さくなる。
【0160】
図16を参照して、バーストタイミングが0.0usにおいては、略100ns前のタイミングt1までシミュレーション回路が受けていたダミーのバースト光信号の影響でモニタ電圧Vrssiがある程度のレベルを有しており、ADC出力が700となっている。その後、徐々にモニタ電圧Vrssiが小さくなり、ADC出力が大きくなる。
【0161】
そして、バーストタイミングが0.1usになるとテスト用のバースト光信号が入力され、当該バースト光信号の強度に応じた値にADC出力が収束していく。ADC出力は、−6dBmの強度に対応するPow7が元も小さい値となり、−10dBm、−14dBm、−20dBm、−24dBm、−30dBmおよび−33dBm、の強度にそれぞれ対応するPow6、Pow5、Pow4、Pow3、Pow2およびPow1がこの順番で大きくなっていく。
【0162】
図16に示すように、バーストタイミングが0.40us、すなわち
図15に示すサンプリングタイミングS5でADC出力が安定していることが分かる。
【0163】
図17を参照して、TG1は、連続的な光信号を入力した場合を示しており、光強度とADC差分とが線形関係にある。
【0164】
これに対して、バーストタイミングが0.0us、0.1us、0.2usおよび0.3usにそれぞれ対応するTG9、TG8、TG7およびTG6では、ダミーのバースト光信号の影響で光強度とADC差分とが線形関係にない。
【0165】
そして、バーストタイミングが0.4us、0.5us、0.6usおよび1.0usにそれぞれ対応するTG5、TG4、TG3およびTG2において、光強度とADC差分とがほぼ線形関係となっていることが分かる。
【0166】
以上より、バーストタイミングが0.40usのタイミング、すなわちテスト用のバースト光信号の終了タイミングt1から500nsでモニタ電圧Vrssiが安定していることが分かる。
【0167】
すなわち、IEEE802.3avで規定されたバースト光信号の同期パターンの長さに対して、600nsで、モニタ電圧Vrssiが強信号受信時の−24dBに安定する、という要求を十分に満たしている。
【0168】
図18は、本発明の実施の形態に係る受光電流モニタ方法の手順を示すフローチャートである。
【0169】
図18を参照して、まず、定電流Isをバイアス電圧供給/モニタ回路22および受光素子52に供給する(ステップS1)。
【0170】
そして、光信号が到着すると(ステップS2)、受光素子52は、当該光信号の強度に応じた受光電流Iapdを出力する(ステップS3)。
【0171】
ここで、カレントミラー回路26により、受光電流Iapdの上限は、定電流Isに制限される(ステップS4)。
【0172】
次に、バイアス/電流モニタ部11において、定電流Isから受光電流Iapdを差し引いた残留電流Irssiを生成する(ステップS5)。
【0173】
次に、受光素子52の出力電流Iapdの大きさを示すモニタ電圧Vrssiを、残留電流Irssiを電圧に変換することにより生成する。より詳細には、残留電流Irssiを抵抗30を通して流すことによりモニタ電圧Vrssiを生成する(ステップS6)。
【0174】
また、参照電圧Vrefおよび残留電流Irssiからバイアス電圧Vapdを生成し、受光素子52に供給する。たとえば、
図8に示すようにカレントミラー回路26および定電流源21を用いて電源電圧Vccを基準に参照電圧Vrefを生成し、参照電圧Vrefに残留電流Irssiによって決定される電圧を加算してバイアス電圧Vbiasを決定する(ステップS7)。
【0175】
[変形例]
図19は、本発明の実施の形態に係る光受信器におけるバイアス/電流モニタ部の変形例の構成を示す図である。
【0176】
図19を参照して、このバイアス/電流モニタ部11は、
図10に示す回路と比べて、キャパシタC2を含まず、バイアス電圧供給/モニタ回路22が、PNPトランジスタQ1,Q11の代わりにPチャネルMOSトランジスタM1を含む。
【0177】
バイアス電圧供給/モニタ回路22において、PチャネルMOSトランジスタM1は、抵抗34の第2端および定電流源21の第1端に接続されたゲートと、抵抗30の第1端およびキャパシタC4の第1端に接続されたドレインと、PNPトランジスタQ6のコレクタ、キャパシタC25の第1端および受光素子52のカソードに接続されたソースとを有する。
【0178】
このバイアス/電流モニタ部11において、
図10に示す回路と同様に、カレントミラー回路26、バイアス電圧供給/モニタ回路22、キャパシタ25および受光素子52の接続ノードNbiasにカレントミラー回路26から定電流Isが供給される。定電流Isから受光素子52の出力電流Iapdを差し引いた残留電流Irssiが抵抗30を通して流れる。そして、抵抗30によって残留電流Irssiがモニタ電圧Vrssiに変換される。また、接続ノードNbiasの電圧Vapdがバイアス電圧として受光素子52に供給される。
【0179】
なお、このバイアス/電流モニタ部11では、定電流源21を、たとえば図示しないNチャネルMOSトランジスタおよび差動増幅器によって実現することが可能である。
【0180】
その他の構成および動作は
図10に示す回路と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0181】
図20は、本発明の実施の形態に係る光受信器におけるバイアス/電流モニタ部の変形例の構成を示す図である。
【0182】
図20を参照して、このバイアス/電流モニタ部11は、差動増幅器41と、抵抗30,42,43と、キャパシタ44と、定電流源I21と、PNPトランジスタQ21とを含む。
【0183】
抵抗42の第1端および抵抗43の第1端は、電源電圧Vccの供給される電源ノードに接続されている。差動増幅器41は、抵抗42の第2端に接続された反転入力端子と、抵抗43の第2端および定電流源I21の第1端に接続された非反転入力端子と、出力端子とを有する。PNPトランジスタQ21は、抵抗42の第2端および差動増幅器41の反転入力端子に接続されたエミッタと、抵抗30の第1端およびキャパシタ44の第1端に接続されたコレクタと、差動増幅器41の出力端子に接続されたベースとを有する。キャパシタ25の第1端および受光素子52のカソードが、抵抗42の第2端、差動増幅器41の反転入力端子およびPNPトランジスタQ21のエミッタに接続されている。キャパシタ25の第2端、抵抗30の第2端、キャパシタ44の第2端、定電流源I21の第2端が、接地電圧の供給される接地ノードに接続されている。差動増幅器41の正側電源端子が電源電圧Vccの供給される電源ノードに接続され、負側電源端子が接地ノードに接続されている。
【0184】
この回路では、定電流源I21によって抵抗43の第2端の電圧Vbが一定レベルとなる。そして、差動増幅器41は、この電圧Vbを非反転入力端子において受けて、反転入力端子の電圧が電圧Vbと等しくなるように、PNPトランジスタQ21のベースへ電流を出力する。
【0185】
これにより、抵抗42、差動増幅器41、PNPトランジスタQ21、キャパシタ25および受光素子52の接続ノードNbiasすなわち受光素子52のカソードの電位の、受光素子52の出力電流Iapdの大小に応じた変動が抑制される。すなわち、受光素子52に供給されるバイアス電圧Vbiasが一定に保たれる。
【0186】
接続ノードNbiasの電圧が一定に保たれることにより、抵抗42を通して流れる電流が一定となり、接続ノードNbiasへ定電流Isが流れ、定電流Isから受光素子52の出力電流Iapdを差し引いた残留電流Irssiが抵抗30を通して流れる。そして、抵抗30によって残留電流Irssiがモニタ電圧Vrssiに変換される。
【0187】
すなわち、
図20に示す回路では、差動増幅器41と、抵抗42,43と、定電流源I21と、PNPトランジスタQ21とが電位変動抑制回路23および定電流源21に相当する。また、差動増幅器41と、抵抗30,42,43と、キャパシタ44と、定電流源I21と、PNPトランジスタQ21とがバイアス電圧供給/モニタ回路22に相当する。
【0188】
次に、本願発明者による
図20に示す回路を備えた光受信器101の動作の検証内容を詳細に説明する。
【0189】
なお、以下のシミュレーションでは、
図10に示す回路と同様に、キャパシタ25の容量値を1000pFに設定した。
【0190】
図21は、
図20に示すシミュレーション回路におけるバイアス電圧の特性を示す図である。
図21において、横軸は時間であり、縦軸は受光素子52に供給されるバイアス電圧である電圧Vapdである。
【0191】
図21を参照して、出力電流Iapdを4uA、10uAおよび100uAの各々に設定した場合における電圧Vapd(グラフV1〜V3)は、約29.94ボルトの電源電圧Vccに対して29.54ボルトとほぼ一定になっており、受光素子52の出力電流Iapdの大小に関わらず、バイアス電圧Vapdが一定に保たれていることが分かる。
【0192】
図22は、
図20に示すシミュレーション回路における過渡応答を示す図である。
図22において、横軸は時間であり、縦軸は(定電流Is−残留電流Irssi)である。
【0193】
図22を参照して、
図12に示す場合と同様に、0秒において受光素子52の出力電流Iapdを1mA(ミリアンペア)に設定し、1.0us秒において出力電流Iapdを4uA(グラフI11)、10uA(グラフI12)および100uA(グラフI13)にそれぞれ設定し、2.0us秒において出力電流Iapdをゼロアンペアに設定する。この1mAの出力電流Iapdが−6dBmの高強度のバースト光信号の受光強度に相当し、ゼロアンペアの出力電流Iapdがバースト光信号の間隔であるIBG(Inter Burst Gap)に相当する。
【0194】
この場合、(定電流Is−残留電流Irssi)は、出力電流Iapdの値を変更してから280ns(ナノ秒)経過後にほぼ安定している。
【0195】
すなわち、
図20に示す回路を備えた光受信器101においても、IBGが0.2usと規定された10G−EPONにおいて、十分な速度のバースト応答が得られていることが分かる。
【0196】
ところで、ポイント・ツー・マルチポイントの通信システムにおける局側装置は、複数のONUから送信される時分割多重されたレベルの異なるバースト光信号を受信する必要がある。
【0197】
当該バースト光信号の受光強度をモニタする場合、少なくともバースト光信号の終端までにモニタ用アナログ電圧を安定させる必要がある。
【0198】
IEEE802.3avで規定される10G−EPONの局側装置における光受信器のモニタ機能に対する要求は、バースト光信号の先頭の同期パターンの長さ1.2us以内にモニタを行なうこと、である。
【0199】
前述のように、同期パターンの長さ以内の600nsで上り光信号の受光レベルをモニタすることを目標とした場合、モニタ機能の時定数は100ns程度となる。
【0200】
しかしながら、受光素子へのバイアス電圧供給ノードにノイズ除去用のバイパスコンデンサが接続される条件下で、特許文献1、特許文献2および非特許文献1に記載のRSSI回路では、このような応答速度を確保しながら高精度なモニタを実現することは困難である。
【0201】
これに対して、本発明の実施の形態に係る光受信器では、バイアス電圧供給/モニタ回路22は、受光素子52にバイアス電圧Vbiasを供給し、かつ受光素子52の出力電流Iapdの大きさを示すモニタ電圧Vrssiを生成する。バイアス電圧供給/モニタ回路22には、定電流源21の出力電流Isから受光素子52の出力電流Iapdを差し引いた残留電流Irssiが供給される。そして、バイアス電圧供給/モニタ回路22は、残留電流Irssiをモニタ電圧Vrssiに変換する。
【0202】
このように、残留電流をモニタ用の電流として用いる構成により、受光素子52の受光強度が小さく受光素子52の出力電流が小さい場合でも、モニタ用の電流値は大幅には小さくならないため、モニタ回路における電圧変換用の抵抗のばらつき等によるモニタ電圧のばらつきが小さくなる。これにより、受光素子52の出力電流が小さい場合でも、モニタ精度が劣化することを防ぐことができる。
【0203】
したがって、本発明の実施の形態に係る光受信器では、受光素子の出力電流を良好に測定することができる。
【0204】
また、残留電流をモニタ用の電流として用いる構成により、受光素子52の出力電流はモニタ回路におけるモニタ電流に影響されないことから、光信号を電気信号に変換する主信号回路を良好に動作させることができる。
【0205】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器では、バイアス電圧供給/モニタ回路22は、定電流源21および受光素子52と電気的に接続された第1導通電極と、第2導通電極と、参照電圧Vrefを受ける制御電極とを有するトランジスタを含む。
【0206】
このように、バイアス電圧供給/モニタ回路22においてトランジスタを用いる構成により、受光素子52の受光強度が小さい場合において残留電流がほぼ定電流源の出力電流となり、受光素子52および当該トランジスタの接続ノードから当該トランジスタへの入力抵抗が一定となるため、受光素子52の受光強度が小さい場合において受光素子52へのバイアス電圧が安定し、モニタ精度を高めることができる。また、バイアス電圧供給/モニタ回路22の入力抵抗を小さくすることができるため、回路の時定数が小さくなり、モニタ回路の応答性を高めることができる。
【0207】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器では、バイアス電圧供給/モニタ回路22における上記トランジスタの第1導通電極への入力抵抗は、上記第1導通電極および上記第2導通電極間を流れる電流が大きくなるほど、小さくなる。
【0208】
このような構成により、受光素子52の受光強度が小さい場合において受光素子52および上記トランジスタの接続ノードから上記トランジスタへの入力抵抗が小さくなることから、回路の時定数が小さくなり、モニタ回路の応答性を高めることができる。また、定電流源の出力電流値を調整することで、上記入力抵抗の値を容易に制御することが可能となる。
【0209】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器では、バイアス電圧供給/モニタ回路22における上記トランジスタは、第1導通電極としてのエミッタと、第2導通電極としてのコレクタと、制御電極としてのベースとを有するPNPトランジスタ31である。
【0210】
このように、PNPトランジスタを用いる構成により、モニタ電圧をたとえばグランド基準の低電圧とすることができるため、レベルシフトを行なうための耐圧の大きい部品等を不要とすることができる。
【0211】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器では、電位変動抑制回路23は、定電流源21、受光素子52およびバイアス電圧供給/モニタ回路22の接続ノードNbiasの電位の、受光素子52の出力電流Iapdの大小に応じた変動を抑制する。そして、接続ノードNbiasの電圧が、バイアス電圧Vbiasとして受光素子52に供給される。
【0212】
このような構成により、受光素子52の受光強度の大小に関わらず受光素子52へのバイアス電圧が安定し、モニタ精度を高めることができる。
【0213】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器では、カレントミラー回路26は、定電流源21の出力電流Isに対応するミラー電流を出力する。定電流源21は、カレントミラー回路26の参照電流出力側と電気的に接続されている。そして、バイアス電圧供給/モニタ回路22には、カレントミラー回路26のミラー電流から受光素子52の出力電流Iapdを差し引いた残留電流Irssiが供給される。
【0214】
このような構成により、受光素子52の受光強度が大きいことにより定電流源の出力電流値を超えるような状況において、受光素子52の出力電流を減少させることができるため、受光素子52の過電流破壊を防ぐことができる。
【0215】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器では、バイアス電圧供給/モニタ回路22は、定電流源21およびカレントミラー回路26の接続ノードの電圧からバイアス電圧Vbiasを生成する。
【0216】
このような構成により、バイアス電圧を供給するための電圧源を別途設ける必要がなくなり、回路構成の簡易化を図ることができる。
【0217】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器では、キャパシタ25は、定電流源21、受光素子52のカソードおよびバイアス電圧供給/モニタ回路22の接続ノードNbiasと、固定電圧の供給される固定電圧ノードとの間に接続されている。受光素子52のアノードは、受光素子52の出力電流Iapdに基づいて、光信号を電気信号に変換した受信信号を生成する受信信号生成部28と電気的に接続されている。
【0218】
このような構成により、受光素子52のバイアス電圧供給経路における高周波ノイズを除去し、光信号から電気信号への変換および光信号のモニタを良好に行なうことができる。
【0219】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器では、サンプルホールド部27は、受光素子52の出力電流Iapdを測定すべきタイミングを示すタイミング情報に従い、モニタ電圧Vrssiを保持するとともに出力する。
【0220】
このような構成により、サンプルホールド部27より後段の回路の動作を低速化することができるため、高精度な部品を使用することができる。たとえば、後段のA/Dコンバータの低速動作を可能とすることにより、A/Dコンバータとして高速動作を満足する部品を使用する必要がなくなり、部品選択の容易化を図ることができる。
【0221】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器は、宅側装置401A,401B,401C,401Dと、宅側装置401A,401B,401C,401Dと共通の光通信回線を介して光信号を送受信するための局側装置402とを備え、宅側装置401A,401B,401C,401Dから局側装置402への光信号が時分割多重されるPONシステム501における局側装置402に設けられる。
【0222】
このような受動的光ネットワークにおいて光受信器を用いることにより、各宅側装置から強度の異なるバースト光信号を連続して受信しても、受光素子52の出力電流を高速かつ高精度に検出することができる。
【0223】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器では、時定数τが、以下の式(B1)を満足するように設定される。
exp(−t/τ)<1/R・・・(B1)
但し、tはモニタ電圧Vrssiが安定するまでの最大許容時間であり、Rはバースト光信号の強弱比である。
【0224】
このような構成により、受光素子52の出力電流を電圧に変換する回路の時定数を十分短くすることができるため、受光素子52の出力電流を良好に測定することができる。
【0225】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器では、時定数τが、以下の式を満足するように設定される。
1−exp(−k/τ)<err・・・(C1)
exp(−t/τ)<(1+err)/R・・・(C2)
但し、kはバースト光信号のプリアンブル部において同一論理レベルが連続する最長時間であり、errは最大許容誤差であり、tはモニタ電圧Vrssiが安定するまでの最大許容時間であり、Rはバースト光信号の強弱比である。
【0226】
このような構成により、受光素子の出力電流を電圧に変換する回路の時定数を十分短くすることができるため、受光素子の出力電流を良好に測定することができる。また、時定数の最小値および許容誤差を考慮した適切な値の時定数を設定することができる。
【0227】
また、本発明の実施の形態に係る光受信器では、式(B1)、式(C1)および式(C2)において、tは600ナノ秒であり、Rは250である。
【0228】
このような構成により、GE−PONおよび10G−EPONが同一システムにおいて共存する通信システムにおいて、受光素子52の出力電流を電圧に変換する回路の時定数を十分短く設定することができるため、上り光信号の受光強度を良好に測定することができる。
【0229】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。