(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定構造は、前記磁性棒の前記一端部を前記第1のブロック体に固定するネジと、前記第1のブロック体に形成され、前記ネジと螺合するネジ穴とで構成されている請求項8に記載の発電素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、磁歪棒を他の構成部材に確実に固定して、効率よく発電を行い得る発電素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は以下の(1)〜(13)の本発明により達成される。
(1) 磁歪材料で構成され、軸方向に磁力線を通過させる磁歪棒と、
該磁歪棒と併設され、磁性材料で構成された磁性棒と、
前記磁歪棒の一端部と前記磁性棒の一端部とを連結する第1の連結機構と、
前記磁歪棒の他端部と前記磁性棒の他端部とを連結する第2の連結機構と、
前記磁力線が軸方向に通過するように配置され、前記磁歪棒の伸縮により生じる前記磁力線の密度の変化に基づいて電圧が発生するコイルとを有し、
前記磁歪棒の前記一端部および前記他端部の少なくとも一方が、雄ネジ部で構成されていることを特徴とする発電素子。
【0008】
(2) 前記雄ネジ部の有効横断面積は、前記磁歪棒の前記一端部および前記他端部以外の部分の横断面積より大きい上記(1)に記載の発電素子。
【0009】
(3) 前記磁歪棒は、前記一端部および前記他端部以外の部分に、その周方向に沿って設けられた突出部を備える上記(1)または(2)に記載の発電素子。
【0010】
(4) 前記突出部は、前記磁歪棒の軸方向に沿って移動可能、かつ、前記磁歪棒の軸回りに回転可能に設けられている上記(3)に記載の発電素子。
【0011】
(5) 前記コイルは、前記磁歪棒の前記一端部および前記他端部以外の部分の外周側に、当該部分を囲むように配置されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の発電素子。
【0012】
(6) 前記磁歪棒の前記一端部に接触して設けられ、前記磁力線を発生する磁石と、
該磁石と、前記磁性棒の前記一端部とを接続し、磁性材料で構成された接続部とを有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の発電素子。
【0013】
(7) 前記接続部は、前記磁性棒と一体的に形成されている上記(6)に記載の発電素子。
【0014】
(8) 前記磁歪棒の前記一端部が、前記雄ネジ部で構成され、
前記第1の連結機構は、前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が形成された第1のブロック体と、前記磁性棒の前記一端部を前記第1のブロック体に固定する固定構造とを備える上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の発電素子。
【0015】
(9) 前記固定構造は、前記磁性棒の前記一端部を前記第1のブロック体に固定するネジと、前記第1のブロック体に形成され、前記ネジと螺合するネジ穴とで構成されている上記(8)に記載の発電素子。
【0016】
(10) 前記磁性棒の前記一端部も、雄ネジ部で構成され、
前記固定構造は、前記磁性棒の前記雄ネジ部と、該雄ネジ部と螺合する前記第1のブロック体に形成された前記第2の雌ネジ部とで構成されている上記(8)に記載の発電素子。
【0017】
(11) 前記磁歪棒の前記他端部が、前記雄ネジ部で構成され、
前記第2の連結機構は、前記磁性棒の前記他端部側に設けられ、前記雄ネジ部を挿通可能な貫通孔を備える磁性材料で構成された平板部と、前記貫通孔に挿通された前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が形成された第2のブロック体とを備える上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の発電素子。
【0018】
(12) 前記平板部は、前記磁性棒と一体的に形成されている上記(11)に記載の発電素子。
【0019】
(13) 前記磁性棒の前記他端部も、雄ネジ部で構成され、
前記平板部は、前記磁性棒の前記雄ネジ部を挿通可能な第2の貫通孔を備え、
さらに、前記第2の貫通孔に挿通された前記磁性棒の前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が形成された第3のブロック体を有する上記(11)に記載の発電素子。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、磁歪棒を他の構成部材に確実に固定することができるので、磁歪棒の伸縮を効率よく行うことができ、その結果、発電効率を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の発電素子を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の発電素子の第1実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の発電素子の第1実施形態を示す斜視図、
図2は、
図1に示す発電素子の分解斜視図、
図3は、
図1に示す発電素子の縦断面図(
図1中のA−A線断面図)である。
【0024】
なお、以下の説明では、
図1〜
図3中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。また、
図1〜
図3中の右側を「先端」と言い、左側を「基端」と言う。
【0025】
図1および
図2に示す発電素子1は、軸方向に磁力線を通過させる磁歪棒2と、磁歪棒2に併設された磁性棒3と、磁歪棒2の外周側に設けられたコイル5と、磁歪棒2の基端部(一端部)と磁性棒3の基端部(一端部)とを連結する第1の連結機構6と、磁歪棒2の先端部(他端部)と磁性棒3の先端部(他端部)とを連結する第2の連結機構7と、磁歪棒2にバイアス磁界を印加する磁界印加機構8とを有している。
【0026】
かかる発電素子1では、磁歪棒2の基端(一端)に対して先端(他端)を、その軸方向とほぼ垂直な方向に相対的に変位させて、すなわち、
図3に示すように上下方向に移動させて、磁歪棒2を伸縮させる。このとき、逆磁歪効果により磁歪棒2の透磁率が変化し、磁歪棒2を通過する磁力線の密度(コイル5の内腔部を貫く磁力線の密度)が変化することにより、コイル5に電圧が発生する。
【0027】
以下、各部の構成について説明する。
<<磁歪棒2>>
磁歪棒2は、磁歪材料で構成され、磁化が生じ易い方向(磁化容易方向)を軸方向として配置されている。本実施形態では、磁歪棒2は、長尺の円柱状をなしており、その軸方向に磁力線を通過させる。
【0028】
この磁歪棒2は、本体部21と、本体部21の基端に設けられた基端側雄ネジ部(一端部)22と、本体部21の先端に設けられた先端側雄ネジ部(他端部)23とを備えている。磁歪棒2は、基端側雄ネジ部22において第1の連結機構6に連結され、先端側雄ネジ部23において第2の連結機構7に連結されている。
【0029】
基端側雄ネジ部22の有効横断面積(有効径)は、本体部21の横断面積(直径)より大きく設定されている。これにより、磁歪棒2を伸縮させる際に、特に大きい負荷がかかる基端側雄ネジ部22と第1の連結機構6の第1のブロック体61との接合強度を高めることができる。一方、先端側雄ネジ部23の有効横断面積(有効径)は、本体部21の横断面積(直径)とほぼ等しく設定されている。
【0030】
また、磁歪棒2は、本体部21の基端部(基端側雄ネジ部22より先端側の部分)に、その周方向に沿ってかつ基端側雄ネジ部22に連続して設けられた環状のフランジ部24を備えている。このフランジ部24の先端面は、磁歪棒2の軸方向に対して傾斜する傾斜面を構成する。一方、磁歪棒2は、本体部21の先端部(先端側雄ネジ部23より基端側の部分)に、その周方向に沿って設けられた環状のフランジ部25を備えている。このフランジ部25の先端面は、磁歪棒2の軸方向に対してほぼ垂直をなす平面を構成し、基端面は、磁歪棒2の軸方向に対して傾斜する傾斜面を構成する。
【0031】
本体部21の平均横断面積は、0.2〜10.0mm
2程度であるのが好ましく、0.7〜7.0mm
2程度であるのがより好ましい。また、本体部21の長さは、5〜40mm程度であるのが好ましく、10〜30mm程度であるのがより好ましい。
【0032】
また、基端側雄ネジ部22の有効横断面積は、本体部21の平均横断面積の1.5倍以上であるのが好ましく、2.0倍程度であるのがより好ましい。また、基端側雄ネジ部22の長さは、本体部21の平均横断面積の0.5倍以上であるのが好ましく、2倍程度であるのがより好ましい。これにより、基端側雄ネジ部22と第1のブロック体61との接合強度をより高めることができる。
【0033】
一方、先端側雄ネジ部23の有効横断面積は本体部21の平均横断面積の1.0倍以上であるのが好ましく、1.5倍程度であるのがより好ましい。また、先端側雄ネジ部23の長さは、本体部21の平均横断面積の0.5倍以上であるのが好ましく、2倍程度であるのがより好ましい。これにより、先端側雄ネジ部23と第2のブロック体72との接合強度をより高めることができる。
【0034】
さらに、フランジ部25の最大横断面積は、先端側雄ネジ部23の有効横断面積の1.5倍以上であるのが好ましく、2倍程度であるのがより好ましい。
【0035】
磁歪材料のヤング率は、40〜100GPa程度であるのが好ましく、50〜90GPa程度であるのがより好ましく、60〜80GPa程度であるのがさらに好ましい。かかるヤング率を有する磁歪材料で磁歪棒2を構成することにより、磁歪棒2をより大きく伸縮させることができる。このため、磁歪棒2の透磁率をより大きく変化させることができるので、発電素子1(コイル5)の発電効率をより向上させることができる。
【0036】
かかる磁歪材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄−ガリウム系合金、鉄−コバルト系合金、鉄−ニッケル系合金等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、鉄−ガリウム系合金(ヤング率:約70GPa)を主成分とする磁歪材料が好適に用いられる。
【0037】
鉄−ガリウム系合金(特に、ガリウムを15〜20wt%で含有する鉄−ガリウム系合金)を主成分とする磁歪材料は、前述したようなヤング率の範囲に設定し易い。また、かかる磁歪材料は、適度な延性を有し、また、例えば、切削加工、ワイヤー放電加工、レーザ加工等により、基端側雄ネジ部22および先端側雄ネジ部23を形成し易い。このため、磁歪棒2の加工コストの削減を図ることができる。
【0038】
なお、以上のような磁歪材料は、Y、Pr、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tmのような希土類金属のうちの少なくとも1種を含むのが好ましい。これにより、磁歪棒2の透磁率の変化をより大きくすることができる。
この磁歪棒2に対して、磁性棒3が併設されている。
【0039】
<<磁性棒3>>
磁性棒3は、磁性材料で構成され、その軸方向に、磁歪棒2を通過した磁力線が通過する。本実施形態では、磁性棒3は、ほぼ一定の厚さを有する長尺の平板状をなしている。
【0040】
この磁性棒3は、本体部31と、本体部31の基端に設けられ、本体部31より太幅の拡幅部(他端部)39とを備えている。磁性棒3は、拡幅部39において第1の連結機構6に連結され、先端において第2の連結機構7に連結されている。
【0041】
また、拡幅部39には、その厚さ方向に貫通して2つの貫通孔391、392が形成されている。貫通孔391、392には、後述する第1の連結機構6のネジ62、63が挿通される。
【0042】
磁性棒3の平均厚さは、磁性棒3の構成材料にもよるが、0.5〜3.0mm程度であるのが好ましく、0.8〜2.0mm程度であるのがより好ましい。磁性棒3の平均厚さを前記範囲とすることにより、発電素子1の大型化を防止しつつ、発電素子1に十分な機械的強度を付与することができる。
【0043】
磁性棒3を構成する磁性材料のヤング率と、磁歪棒2を構成する磁歪材料のヤング率とは、異なっていてもよいが、ほぼ等しいことが好ましい。これにより、磁歪棒2を、
図3に示すように、上下方向に円滑かつ確実に変位させることができる。具体的には、磁性材料のヤング率は、40〜100GPa程度であるのが好ましく、50〜90GPa程度であるのがより好ましく、60〜80GPa程度であるのがさらに好ましい。
【0044】
かかる磁性材料としては、特に限定されないが、例えば、純鉄(例えば、JIS SUY)、軟鉄、炭素鋼、電磁鋼(ケイ素鋼)、高速度工具鋼、構造鋼(例えば、JIS SS400)、ステンレスマーマロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、磁歪棒2の本体部21の外周には、本体部21を囲むように、コイル5が配置されている。
【0046】
<<コイル5>>
コイル5は、線材を本体部21の外周に巻回することにより構成されている。これにより、コイル5は、磁歪棒2を通過している磁力線が、その軸方向に通過する(内腔部を貫く)ように配設されている。このコイル5には、磁歪棒2の透磁率の変化、すなわち、磁歪棒2を通過する磁力線の密度(磁束密度)の変化に基づいて、電圧が発生する。
【0047】
線材の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、銅製の基線に絶縁被膜を被覆した線材や、銅製の基線に融着機能を付加した絶縁被膜を被覆した線材等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
線材の巻き数は、線材の横断面積等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、100〜500程度であるのが好ましく、150〜450程度であるのがより好ましい。
【0049】
また、線材の横断面積は、5×10
−4〜0.126mm
2程度であるのが好ましく、2×10
−3〜0.03mm
2程度であるのがより好ましい。
【0050】
なお、線材の横断面形状は、例えば、三角形、正方形、長方形、六角形のような多角形、円形、楕円形等のいかなる形状であってもよい。
【0051】
磁歪棒2の基端側雄ネジ部22と磁性棒3の拡幅部39とは、第1の連結機構6により連結されている。
【0052】
<<第1の連結機構6>>
第1の連結機構6は、発電素子1を筐体等に固定するための固定部として機能する。第1の連結機構6を介して発電素子1を固定することにより、発電素子1は、その基端を固定端、先端を可動端として片持ち支持される。
【0053】
本実施形態では、第1の連結機構6は、直方体状の第1のブロック体61と、ネジ62、63とを備えている。第1のブロック体61には、先端面に開口する雌ネジ部611と、基端面に開口する磁石収納部612と、上面に開口する2つのネジ穴613、614が形成されている。雌ネジ部611には、磁歪棒2の基端側雄ネジ部22が螺合され、ネジ穴613、614には、ネジ62、63が螺合される。また、磁石収納部612には、後述する永久磁石81が収納される。
【0054】
雌ネジ部611および磁石収納部612は、第1のブロック体61の軸方向に沿って、かつ、同心的(同軸的)に形成されている。また、雌ネジ部611と磁石収納部612とは連通している。かかる構成により、雌ネジ部611に螺合された基端側雄ネジ部22の基端面に、磁石収納部612に収納された永久磁石81の先端面とを接触させることができる。
【0055】
また、ネジ62、63を、磁性棒3の拡幅部39に形成された貫通孔391、392に挿通し、ネジ穴613、614に螺合させる。これにより、磁性棒3が第1のブロック体61に固定される。すなわち、本実施形態では、ネジ62、63とネジ穴613、614とにより、磁性棒3の拡幅部(一端部)39を第1のブロック体61に固定する固定構造が構成されている。
【0056】
なお、例えば、ネジ穴613、614を第1のブロック体61の厚さ方向に貫通するよう形成し、ネジ62、63の全長を長く設計することにより、ネジ62、63の発電素子1から突出した部分を、発電素子1を筐体等に固定するために用いることができる。
【0057】
本実施形態では、後述するように、磁歪棒2の基端と磁性棒3の基端とを磁界印加機構8により接続するので、第1のブロック体61を非磁性材料で構成することができる。かかる非磁性材料としては、特に限定されないが、例えば、金属材料、半導体材料、セラミックス材料、樹脂材料等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、樹脂材料を用いる場合には、樹脂材料中にフィラーを添加することが好ましい。これらの中でも、金属材料を主成分とする非磁性材料を用いるのが好ましく、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、銅およびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種を主成分とする非磁性材料を用いるのがより好ましい。
【0058】
一方、磁歪棒2の先端側雄ネジ部23と磁性棒3の先端部とは、第2の連結機構7により連結されている。
【0059】
<<第2の連結機構7>>
第2の連結機構7は、磁歪棒2に対して外力や振動を付与する部位である。第2の連結機構7に対して、
図3の上または下への外力、または、上下方向の振動を付与すると、磁歪棒2は、その基端を固定端とし、先端が上下方向に往復動(先端が基端に対して相対的に変位)する。
【0060】
本実施形態では、第2の連結機構7は、磁性棒3の先端に連続して設けられ、磁歪棒2の先端側雄ネジ部23を挿通可能な貫通孔711が形成された平板部71と、貫通孔711に挿通された先端側雄ネジ部23と螺合する雌ネジ部721が形成された第2のブロック体72とで構成されている。
【0061】
平板部71は、磁性棒3の軸方向に対してほぼ垂直となるように配置され、磁性棒3と一体的に形成されている。また、貫通孔711は、平板部71の厚さ方向に貫通して形成されている。したがって、貫通孔711の軸方向と、磁歪棒2の軸方向とはほぼ平行となっている。また、第2のブロック体72は、円柱状をなしており、雌ネジ部721は、第2のブロック体72の軸方向に沿って形成され、その基端面に開口している。
【0062】
このような構成により、発電素子1を組み立てる際に、磁歪棒2の先端側雄ネジ部23を貫通孔711に挿通し、第2のブロック体72の雌ネジ部721に螺合させると、フランジ部25の先端面および第2のブロック体72の基端面がそれぞれ平板部71に当接する。さらに、フランジ部25と第2のブロック体72とが接近するように、先端側雄ネジ部23を雌ネジ部721へねじ込むと、先端側雄ネジ部23は、その軸方向に伸長されるようになる。この状態で、先端側雄ネジ部23には、引張応力が常時かかる状態となり、磁歪材料の逆磁歪効果により透磁率が増加し、磁力線がより効率よく通過し得るようになる。
【0063】
平板部71は、磁性材料を用いて、磁性棒3と一体的に形成されており、本実施形態では、
図3に示すように、磁歪棒2を通過した磁力線は、平板部71を介して磁性棒3に向かうよう構成されている。このため、第2のブロック体72は、磁性材料で構成してもよいが、前述したような非磁性材料で構成することもできる。
【0064】
磁歪棒2の基端側には、磁歪棒2にバイアス磁界を印加する磁界印加機構8が設けられている。
【0065】
<<磁界印加機構8>>
磁界印加機構8は、
図2および
図3に示すように、永久磁石81と、磁性棒3の基端に連続して設けられ、磁歪棒2の基端面との間に永久磁石81を保持する接続部82とで構成されている。
【0066】
永久磁石81は、円盤状(厚さの比較的薄い円柱状)をなしている。一方、接続部82は、平板状をなし、磁性棒3の軸方向に対してほぼ垂直となるように、磁性棒3と一体的に形成されている。永久磁石81が第1のブロック体61の磁石収納部612内に収納された状態で、磁歪棒2の基端面と接続部82とにより磁石収納部612に保持される。
【0067】
かかる構成により、永久磁石81と磁性棒3の拡幅部39とが接続部82を介して接続される。また、
図3に示すように、永久磁石81は、N極を磁歪棒2側に、S極を接続部82側にして配置されており、これにより、発電素子1には、反時計周りの磁界ループが形成されている。
【0068】
永久磁石81には、例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石や、それらを粉砕して樹脂材料やゴム材料に混練した複合素材を成形してなる磁石(ボンド磁石)等を用いることができる。また、接続部82は、磁性棒3と一体的に、磁性材料を用いて形成されている。
【0069】
このような発電素子1では、第1のブロック体61を、例えば筐体等に固定した状態(
図3参照)から、第2のブロック体72を下方に向かって変位(回動)させると、すなわち、磁歪棒2の基端に対して先端を下方に向かって変位させると、磁歪棒2が軸方向に圧縮されるように変形する。一方、第2のブロック体72を上方に向かって変位(回動)させると、すなわち、磁歪棒2の基端に対して先端を上方に向かって変位させると、磁歪棒2が軸方向に伸長されるように変形する。その結果、逆磁歪効果により磁歪棒2の透磁率が変化して、磁歪棒2を通過する磁力線の密度(コイル5の内腔部を軸方向に貫く磁力線の密度)が変化する。これにより、コイル5に電圧が発生する。
【0070】
特に、本実施形態では、磁歪棒2と第1のブロック体61および第2のブロック体72とが螺合により接続されている。このため、磁歪棒2が伸縮した際にも、これらの間に高い接合力が維持され、発電素子1では、効率のより発電が可能である。
【0071】
また、フランジ部25を設けることにより、先端側雄ネジ部23を第2のブロック体72の雌ネジ部721へねじ込む深さを調整することができる。その結果、先端側雄ネジ部23を常に伸長した状態とすることができるので、先端側雄ネジ部23での透磁率が向上する。これにより、磁歪棒2から磁性棒3に向かって磁力線を円滑に通過させることができる。したがって、発電素子1の発電効率の上昇を図ることができる。
【0072】
さらに、永久磁石81が磁歪棒2と接触し、かつ、磁歪棒2と同軸上に配置することができる。このため、永久磁石81が発生させる磁力線の発電素子1による利用効率を高めることができる。かかる観点からも、発電素子1の発電効率の上昇を図ることができる。
【0073】
<第2実施形態>
次に、本発明の発電素子の第2実施形態について説明する。
【0074】
図4は、本発明の発電素子の第2実施形態の先端側の部分を示す拡大図である。
なお、以下の説明では、
図4中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。また、
図4中の右側を「先端」と言い、左側を「基端」と言う。
【0075】
以下、第2実施形態の発電素子について、前記第1実施形態の発電素子との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0076】
第2実施形態の発電素子1では、磁歪棒2の周方向に沿って設けられた突出部の構成が異なり、それ以外は、前記第1実施形態の発電素子1と同様である。すなわち、
図4に示す発電素子1では、突出部が、フランジ部25に代えて、ナット26で構成されている。
【0077】
ナット26の内周面および磁歪棒2の外周面の一方には、ネジ山が形成され、他方にはネジ山に螺合するネジ溝が形成されている。これにより、ナット26は、磁歪棒2の軸方向に沿って移動可能、かつ、磁歪棒2の軸回りに回転可能となっている。
【0078】
かかる構成によれば、ナット26を磁歪棒2の軸方向に移動させることにより、磁歪棒2の先端側雄ネジ部23の伸長の程度を調整することができる。この場合、ナット26は、磁歪材料で構成する必要がないため、前記第1実施形態の磁歪棒2と比較して、磁歪棒2の構成を簡略化することができるため、高価な磁歪材料の使用量を削減して、磁歪棒2の作製コスト(発電素子1の製造コスト)の削減を図ることができる。
【0079】
かかる第2実施形態の発電素子1によっても、前記第1実施形態の発電素子1と同様の作用・効果を生じる。
【0080】
<第3実施形態>
次に、本発明の発電素子の第3実施形態について説明する。
【0081】
図5は、本発明の発電素子の第3実施形態を示す分解斜視図、
図6は、
図5に示す発電素子の縦断面図である。
【0082】
なお、以下の説明では、
図5および
図6中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。また、
図5および
図6中の右側を「先端」と言い、左側を「基端」と言う。
【0083】
以下、第3実施形態の発電素子について、前記第1および第2実施形態の発電素子との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0084】
第3実施形態の発電素子1では、以下の点が異なること以外は、前記第1実施形態の発電素子1と同様である。
【0085】
すなわち、磁歪棒2において、基端側雄ネジ部22と先端側雄ネジ部23とが、また、フランジ部24とフランジ部25とが同様の構成とされ、さらに、磁歪棒2の全体構成と磁性棒3の全体構成とが同様の構成とされている。すなわち、磁性棒3は、長尺の円柱状をなし、本体部31と、本体部31の基端に設けられた基端側雄ネジ部(一端部)32と、本体部31の先端に設けられた先端側雄ネジ部(他端部)33と、本体部31の基端部および先端部の周方向に沿ってそれぞれ設けられた環状のフランジ部34、35とを備えている。
【0086】
また、第1の連結機構6の第1のブロック体61には、磁歪棒2の基端側雄ネジ部22および磁性棒3の基端側雄ネジ部32がそれぞれ螺合可能な雌ネジ部611および第2の雌ネジ部615が、第1のブロック体61の軸方向(先端面から基端面)に貫通して形成されている。すなわち、本実施形態では、磁性棒3の基端側雄ネジ部32と第1のブロック体61の第2の雌ネジ部615とにより、磁性棒3の一端部を第1のブロック体61に固定する固定構造が構成されている。
【0087】
さらに、第2の連結機構7の平板部71は、磁性棒3とは別体とされ、平板部71には、貫通孔711の他に、磁性棒3の先端側雄ネジ部33を挿通可能な第2の貫通孔712が形成されている。また、本実施形態の発電素子1は、第2のブロック体72とは別に、平板部71の第2の貫通孔712に挿通された磁性棒3の先端側雄ネジ部33と螺合する雌ネジ部731が形成された円柱状の第3のブロック体73とを有している。この第3のブロック体73は、発電素子1を組み立てた状態で、例えば、接着剤等により構成される接着層74を介して第2のブロック体72に固定されている。
【0088】
また、磁界印加機構8の接続部82は、磁性棒3とは別体とされ、平板を屈曲させたような段差形状をなしている。この接続部82は、磁性材料で構成され、永久磁石81と磁性棒3の基端側雄ネジ部(一端部)32とを接続するように配置されている。なお、本実施形態では、接続部82は、好ましくは、永久磁石81とともに、例えば、接着剤等による接着により第1のブロック体61に対して固定されている。
【0089】
かかる第3実施形態の発電素子1によっても、前記第1および第2実施形態の発電素子1と同様の作用・効果を生じる。
【0090】
また、上記構成とすることにより、磁歪棒2と第1のブロック体61および第2のブロック体72との接合強度と、磁性棒3と第1のブロック体61および第3のブロック体73との接合強度とを同等にすることができる。これは、発電素子1全体の強度の向上および安定化に寄与する。
【0091】
なお、コイル5は、磁歪棒2の外周側に代えて、磁性棒3の外周側に設けてもよく、磁歪棒2の外周側および磁性棒3の外周側の双方に設けるようにしてもよい。また、磁性棒3を磁歪材料を用いて構成するようにしてもよい。
【0092】
以上のような発電素子は、送信器用電源、センサーネットワーク用電源、住宅照明用無線スイッチ、車両の各部の状態を監視するシステム(例えば、タイヤ空気圧センサー、シートベルト着装検知センサー)、住宅セキュリティー用システム(特に、窓やドアの操作検知を無線で知らせるシステム)等に用いることができる。
【0093】
以上、本発明の発電素子を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
例えば、前記第1〜第3実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。
【0094】
また、本発明の発電素子は、永久磁石を省略し、外部磁場(外部磁界)を用いて発電する構成とすることもできる。
【0095】
また、前記各実施形態において、磁歪棒および磁性棒は、いずれも、その横断面形状が円形状をなしているが、例えば、楕円形状、三角形状、長方形状、正方形状、六角形状のような多角形状であってもよい。
【0096】
また、コイルは、ボビンと、このボビンに巻回される線材とで構成するようにしてもよい。