(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5915445
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】蓄電装置及び蓄電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 2/04 20060101AFI20160422BHJP
H01M 2/02 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
H01M2/04 A
H01M2/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-176159(P2012-176159)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-35871(P2014-35871A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
(72)【発明者】
【氏名】松戸 覚央
【審査官】
瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−159536(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/089852(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/00− 2/08
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するケース本体と、前記開口部を閉塞する蓋とを備え、前記開口部を囲んだ前記ケース本体の周壁の開口端面に、前記蓋の内面が溶接され、前記ケース本体の収容空間に電極組立体が収容されている蓄電装置であって、
前記ケース本体の前記開口端面と前記蓋の前記内面とが溶接されて溶接部が形成され、
前記溶接部よりも前記ケース本体の内側寄りには、前記周壁の前記蓋側の面と、前記蓋の前記内面との間に間隙が形成されるとともに、
該間隙は前記溶接部に隣接し、かつ前記溶接部よりも前記ケース本体の収容空間側ほど広がっていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記周壁の前記蓋側の面には、前記溶接部から前記ケースの内側に向かうに従い前記蓋の前記内面から離れるテーパ部が形成されている請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓋は、該蓋の外周部に沿って形成され、かつ前記開口端面に支持される天板部と、該天板部に囲まれた内側に位置し、前記ケース本体の前記開口部から前記収容空間に挿入される挿入部とを有し、前記挿入部の外周面と前記ケース本体の前記周壁の内側面との間には隙間が形成されている請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記天板部の内面には、前記溶接部から前記ケース本体の内側に向かうに従い前記開口端面を含む前記周壁の前記蓋側の面から離れるテーパ部が形成されている請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記蓄電装置は二次電池である請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
開口部を有するケース本体と、前記開口部を閉塞する蓋とを備え、前記開口部を囲んだ前記ケース本体の周壁の開口端面に、前記蓋の内面が溶接され、前記ケース本体の収容空間に電極組立体が収容されている蓄電装置の製造方法であって、
前記ケース本体の前記開口端面に前記蓋の前記内面を前記ケース本体の軸線方向における断面において点接触状態にて支持させた状態で、前記開口端面を含む前記周壁の蓋側の面及び前記蓋の前記内面の少なくとも一方が、前記ケース本体の内側ほど他方から離れる形状を有する前記ケース本体及び前記蓋を用意し、
前記ケース本体内に前記電極組立体を収容するとともに、前記ケース本体の前記開口端面に前記蓋の前記内面を前記ケース本体の軸線方向における断面において点接触状態にて支持させた状態で、前記ケース本体の外周側から前記ケース本体と前記蓋を溶接することを特徴とする蓄電装置の製造方法。
【請求項7】
前記ケース本体の前記周壁の前記蓋側の面及び前記蓋の前記内面のいずれか一方には、前記ケース本体の内面から外面に至るテーパ部が形成されている請求項6に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項8】
前記ケース本体の前記周壁の前記蓋側の面には、一部にテーパ部が形成されている請求項6に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項9】
前記蓋の前記内面は、該内面と反対側の前記蓋の外面と平行な平坦面状に形成され、前記ケース本体の前記周壁の前記蓋側の面には、前記ケース本体の内側に向かうに従い前記蓋の前記内面から離れるテーパ部が形成されている請求項6〜請求項8のうちいずれか一項に記載の蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース本体の周壁の開口端面に、蓋の内面が溶接され、ケース本体の収容空間に電極組立体が収容されている蓄電装置、及び該蓄電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、走行用モータへの供給電力を蓄える蓄電装置としての二次電池が搭載されている。二次電池としては、例えば、正極及び負極をセパレータを間に挟んだ状態で積層した電極組立体をケース内に収容して構成されたものがある。ケースは、特許文献1のように、ケース本体と蓋を溶接して形成されている。
【0003】
図7(a)に示すように、溶接前のケース本体81は上面に開口部を有する箱状に形成されるとともに、ケース本体81の外面81aには、ケース本体81の全周に亘って第1突出部82が形成されている。また、溶接前の蓋83は、ケース本体81の開口端面に当接支持される大きさに形成されるとともに、ケース本体81内に一部が挿入可能に形成されている。蓋83の外面83aには、蓋83の全周に亘って第2突出部84が形成されている。
【0004】
ケースを形成するときは、
図7(b)に示すように、蓋83の一部をケース本体81内に挿入するとともに、蓋83をケース本体81の開口端面に支持させ、ケース本体81の外面81aと、蓋83の外面83aとを面一にするとともに、第1突出部82と第2突出部84とから突出部85を形成する。そして、この突出部85にレーザビームを照射することで、突出部85を溶接部87(ドットハッチングで示す部位)の一部として、ケース本体81と蓋83が溶接されるとともに、ケースが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−146645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ケース本体81と蓋83の溶接時には、ケース本体81及び蓋83の溶融金属が高温に曝される。このため、溶接が行われている場所に多くのガスが取り込まれ、溶接部87にブローホール88が形成されてしまう。
【0007】
本発明は、溶接部にブローホールが発生することを抑制することができる蓄電装置及び蓄電装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、開口部を有するケース本体と、前記開口部を閉塞する蓋とを備え、前記開口部を囲んだ前記ケース本体の周壁の開口端面に、前記蓋の内面が溶接され、前記ケース本体の収容空間に電極組立体が収容されている蓄電装置であって、前記ケース本体の前記開口端面と前記蓋の前記内面とが溶接されて溶接部が形成され、前記溶接部よりも前記ケース本体の内側寄りには、前記周壁の前記蓋側の面と、前記蓋の前記内面との間に間隙が形成されるとともに、該間隙は
前記溶接部に隣接し、かつ前記溶接部よりも前記ケース本体の
収容空間側ほど広がってい
ることを要旨とする。
【0009】
これによれば、ケース本体の開口端面と、蓋の内面とを溶接する際、その溶接位置に気体が取り込まれても、その気体を間隙を通して収容空間に逃がすことができる。よって、溶接位置に気体が取り込まれたまま溶融金属が凝固することが防止され、溶接部にブローホールが形成されることを防止できる。
【0010】
また、前記周壁の前記蓋側の面には、前記溶接部から前記ケースの内側に向かうに従い前記蓋の前記内面から離れるテーパ部が形成されていてもよい。
これによれば、テーパ部によって間隙を確実に形成し、間隙を介して溶接位置からの気体を滞りなく収容空間に逃がすことができる。
【0011】
また、前記蓋は、該蓋の外周部に沿って形成され、かつ前記開口端面に支持される天板部と、該天板部に囲まれた内側に位置し、前記ケース本体の前記開口部から前記収容空間に挿入される挿入部とを有し、前記挿入部の外周面と前記ケース本体の前記周壁の内側面との間には隙間が形成されていてもよい。
【0012】
これによれば、挿入部をケース本体内に挿入すると、挿入部の外周面とケース本体の周壁の内側面との間に隙間が形成される。よって、溶接位置から間隙を通って逃げてきた気体を、隙間を介して収容空間に逃がすことができる。
【0013】
また、前記天板部の内面には、前記溶接部から前記ケース本体の内側に向かうに従い前記開口端面を含む前記周壁の前記蓋側の面から離れるテーパ部が形成されていてもよい。
これによれば、プレスによって挿入部及び天板部を形成する場合、天板部のプレス形成と同時に、天板部にテーパ部を形成することができる。
【0014】
また、前記蓄電装置は二次電池である。
請求項6に記載の発明は、開口部を有するケース本体と、前記開口部を閉塞する蓋とを備え、前記開口部を囲んだ前記ケース本体の周壁の開口端面に、前記蓋の内面が溶接され、前記ケース本体の収容空間に電極組立体が収容されている蓄電装置の製造方法であって、前記ケース本体の前記開口端面に前記蓋の前記内面を
前記ケース本体の軸線方向における断面において点接触状態にて支持させた状態で、前記開口端面を含む前記周壁の蓋側の面及び前記蓋の前記内面の少なくとも一方が、前記ケース本体の内側ほど他方から離れる形状を有する前記ケース本体及び前記蓋を用意し、前記ケース本体内に前記電極組立体を収容するとともに、前記ケース本体の前記開口端面に前記蓋の前記内面を
前記ケース本体の軸線方向における断面において点接触状態にて支持させた状態で、前記ケース本体の外周側から前記ケース本体と前記蓋を溶接することを要旨とする。
【0015】
これによれば、ケース本体の開口端面と蓋の内面とを溶接する際、その溶接位置に気体が取り込まれても、その気体を、周壁の蓋側の面と、蓋の内面との間を通して収容空間に逃がすことができる。よって、溶接位置に気体が取り込まれたまま溶融金属が凝固することが防止され、溶接部にブローホールが形成されることを防止できる。
【0016】
また、前記ケース本体の前記周壁の前記蓋側の面及び前記蓋の前記内面のいずれか一方には、前記ケース本体の内面から外面に至るテーパ部が形成されていてもよい。
これによれば、テーパ部によって間隙を確実に形成し、間隙を介して溶接位置からの気体を滞りなく収容空間に逃がすことができる。
【0017】
また、前記ケース本体の前記周壁の前記蓋側の面には、一部にテーパ部が形成されていてもよい。
これによれば、ケース本体にテーパ部を形成するため、溶接位置から間隙を通って逃げてきた気体を、隙間を介して収容空間に逃がすことができる。
【0018】
また、前記蓋の前記内面は、該内面と反対側の前記蓋の外面と平行な平坦面状に形成され、前記ケース本体の前記周壁の前記蓋側の面には、前記ケース本体の内側に向かうに従い前記蓋の前記内面から離れるテーパ部が形成されていてもよい。
【0019】
これによれば、周壁の蓋側の面に形成されたテーパ部は、ケース本体を形成する材料を内側から外側に向けて切断する際に、剪断面に形成されるダレによって形成される。すなわち、材料からケース本体を形成するのと同時に、テーパ部を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、溶接部にブローホールが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】(a)は二次電池の外観を示す斜視図、(b)は蓋を挿入部から示す斜視図。
【
図4】(a)はケース材料の切断工程を模式的に示す平面図、(b)はケース材料の一部を切断した状態を模式的に示す図、(c)は剪断面を示す断面図。
【
図5】(a)はケース本体の開口端面に蓋を支持させた状態を示す部分断面図、(b)はケース本体と蓋の溶接工程を示す部分断面図。
【
図6】(a)は開口端面の別例を示す部分断面図、(b)は蓋の天板面の別例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1〜
図5にしたがって説明する。
図1及び
図2に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、その外郭を構成する金属製のケース11を備えている。ケース11は、一面に開口部11aを有する四角箱状のケース本体12と、開口部11aを閉塞しケース本体12に溶接される蓋13とを有している。また、ケース本体12の収容空間Sには電極組立体14が収容されている。電極組立体14とケース11(ケース本体12及び蓋13)との短絡を抑制するために、ケース11の内面と電極組立体14との間には絶縁シート27が設けられている。
【0023】
図1に示すように、電極組立体14は、複数の正極21と複数の負極22とが、電気伝導に係るイオン(リチウムイオン)が通過可能な多孔質膜で形成されたセパレータ(図示せず)を介して交互に積層されて構成されている。
【0024】
正極21の第1端部21cの一部には正極集電タブ31が設けられている。また、負極22の一端部22cの一部には負極集電タブ32が設けられている。正極21及び負極22は、正極集電タブ31が積層方向に沿って列状に配置され、且つ正極集電タブ31と重ならない位置にて負極集電タブ32が積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。そして、各正極集電タブ31は、電極組立体14における積層方向の一端から他端までの範囲内で集められた(束ねられた)状態で折り曲げられている。詳細には、各正極集電タブ31は、電極組立体14の積層方向の一端側に寄せて集められており、その集められた状態で、上記一端側とは反対側である積層方向の他端側に向けて折り返されている。そして、その各正極集電タブ31が重なっている箇所を溶接することによって各正極集電タブ31が電気的に接続されている。各負極集電タブ32についても同様である。
【0025】
二次電池10は、電極組立体14から電力を取り出すための正極端子41及び負極端子42を備えている。正極端子41及び負極端子42は、蓋13に所定の間隔をあけて並設された一対の開口孔13aからケース11の外部に露出されている。また、正極端子41及び負極端子42には、蓋13から絶縁するためのリング状の絶縁リング13bがそれぞれ取り付けられている。正極端子41は、正極集電タブ31と溶接されることで電気的に接続されており、負極端子42は、各負極集電タブ32と溶接されることで電気的に接続されている。これにより、電極組立体14の電力をケース11外に取り出すことができるとともに、電極組立体14に対して電力を供給することにより、電極組立体14を充電することが可能となっている。
【0026】
次に、ケース11について詳細に説明する。
図1及び
図3に示すように、ケース本体12は、矩形板状の底板15と、この底板15の側縁から立設された四角筒状の周壁16を備えている。なお、ケース11において、底板15に直交し、かつ底板15からの周壁16の立設方向をケース11の軸方向とする。
【0027】
ケース本体12において、底板15と周壁16により、ケース本体12内には、電極組立体14の収容空間Sが形成されるとともに、ケース本体12は一面に収容空間Sを外方に開放させる開口部11aを有している。周壁16において、開口部11aを四角環状に囲む先端面には、ケース本体12の開口端面12aが形成されている。蓋13が溶接される前の開口端面12aには、ケース本体12の内面から外面に向けて上り傾斜するテーパ状に形成されている。
【0028】
図4(c)に示すように、底板15の下面から開口端面12aの外縁までの高さを、ケース本体12の外面側高さH1とする。また、底板15の下面から開口端面12aの内縁までの高さを、ケース本体12の内面側高さH2とすると、外面側高さH1が内面側高さH2より高くなっている。そして、周壁16は、ケース本体12の内面から外面に向かって徐々に高さが高くなっており、開口端面12aもケース本体12の内面から外面に向かって徐々に上り傾斜してテーパ状に形成されている。
【0029】
図5(a)に示すように、周壁16の厚み方向において、開口端面12aの外縁と内縁を結ぶ直線を傾斜線Gとし、ケース11の軸方向に延びる直線を軸線Lとすると、傾斜線Gの軸線Lに対する傾斜角度は所定の角度範囲に収まるように設定されている。「所定の角度範囲」とは、ケース本体12と蓋13を溶接する際、傾斜角度が大きすぎると、ケース本体12と蓋13が溶接できなくなり、傾斜角度が小さすぎると、溶接部20から気体が逃げにくくなる。よって、傾斜角度は、ケース本体12と蓋13を溶接可能にしつつ、溶接時に気体が速やかに逃げることができる角度範囲に設定される。
【0030】
図2(b)に示すように、蓋13は、ケース本体12の開口端面12a全体及び開口部11a全体を覆う矩形状に形成されている。蓋13は、該蓋13の外周部に沿って形成され、かつケース本体12の開口端面12aに支持される天板部17を有するとともに、この天板部17に囲まれた内側に位置し、ケース本体12内に挿入される矩形板状の挿入部18を有する。天板部17は、蓋13の材料の外周部を厚み方向にプレスすることで形成されており、プレスされずに残った部位に挿入部18が形成されている。挿入部18は、天板部17より一回り小さく形成されている。また、天板部17の下面であり、挿入部18の外周面18aに直交し、かつ挿入部18の外周面18aに連続する端面は、挿入部18を取り囲む四角環状に形成されている。そして、この四角環状をなす天板部17の内面19は、蓋13をケース本体12の開口端面12aに支持させたとき、開口端面12aに支持される蓋13の内面を形成している。天板部17の内面19は、蓋13の外面19aと平行で、かつケース11の軸方向に直交する方向に沿って平坦面状に形成されている。また、蓋13の内面19において、挿入部18の外周面18aから、蓋13の外周面までの幅は、周壁16の厚みより若干長く設定されている。
【0031】
図3に示すように、ケース11は、ケース本体12の開口端面12aと、天板部17(蓋13)の内面19とが溶接部20によって接合されて形成されている。ケース11は、周壁16の外面と天板部17の外周面とが面一となる状態に接合されている。溶接部20は、ケース11の外面側にケース11の全周に亘って形成されている。なお、溶接部20は、レーザ溶接によって形成される。
【0032】
図5(b)に示すように、溶接部20は、周壁16の厚み全体のうちケース11の外面側の一部に形成され、挿入部18の外周面18aから蓋13の外周面までの幅全体のうちケース11の外面側の一部に形成されている。周壁16の厚み内において、溶接部20よりもケース本体12の内側寄りには、間隙Kが形成されている。この間隙Kは、周壁16の蓋13側の面と、天板部17の内面19とで挟まれる空間に形成されている。間隙Kが形成されることにより、溶接部20からケース本体12の内側に向かうに従い、蓋13の内面19から離れるテーパ部Tが形成されている。そして、間隙Kは、ケース11内面の全周に亘って形成されている。間隙Kの開口幅は、溶接部20よりもケース本体12の内側に向かうほど広くなっている。よって、ケース11の内面は間隙Kが形成されることで凹んでいる。また、溶接部20は、間隙Kを介してケース11内側の収容空間Sに連通している。さらに、挿入部18がケース本体12内に挿入された状態では、挿入部18の外周面18aと、周壁16の内側面16aとの間には隙間Rが形成されている。
【0033】
次に、ケース11の製造方法について説明する。
まず、ケース本体12を製造する。
図4(a)に示すように、ケース本体12は、軸方向への長さがケース本体12より長いケース材料50を、ケース本体12の軸方向長さと同じになるように第1切断工具53及び第2切断工具54で切断して形成される。なお、ケース材料50は、ケース本体12の底板15を形成する底板形成部51と、ケース本体12の周壁16を形成する周壁形成部52とから四角箱状に形成され、周壁形成部52は対向する一対の長側壁である第1壁部52aと、対向する一対の短側壁である第2壁部52bとから形成されている。
【0034】
ケース材料50内に、対向する第1壁部52a同士の間隔より僅かに短く形成された第1切断工具53を配置する。また、第1切断工具53は、ケース材料50の切断後に、周壁16の高さが、上述の外面側高さH1及び内面側高さH2が得られる高さに配置される。そして、第1切断工具53をケース材料50内から外に向けて移動させると、第1切断工具53によって一方の第2壁部52bが切断される。同様に他方の第2壁部52bも第1切断工具53によって切断する。
【0035】
続いて、一対の第1壁部52aを第2切断工具54によって切断する。第2切断工具54は、第1壁部52aの長さ方向全体に亘って第1壁部52aの内面に対向する大きさに形成されている。そして、第2切断工具54をケース材料50内から外に向けて第2切断工具54を移動させると、第2切断工具54によって一方の第1壁部52aが切断される。同様に他方の第1壁部52aも第2切断工具54によって切断する。その結果、ケース材料50が全周に亘って切断されてケース本体12が形成される。
【0036】
ケース材料50を内側から外側に向けて切断すると、
図4(c)に示すように、ケース材料50の剪断面は、ケース材料50の内側にダレDが形成されている。このため、ケース材料50を内側から外側に向けて第1及び第2切断工具53,54で切断することで、開口端面12aがテーパ状に形成されている。
【0037】
上記のようにケース本体12が形成されると、次に、ケース本体12内に電極組立体14を収容し、蓋13の挿入部18を収容空間Sに挿入するとともに、天板部17の内面19をケース本体12の開口端面12aに支持させる。
【0038】
図5(a)に示すように、開口端面12aと天板部17の内面19は、ケース本体12及び蓋13の外面側で一部が当接している。そして、
図5(b)に示すように、ケース11の軸方向に直交する方向から、開口端面12aと天板部17の内面19の合わせ面に対し、レーザ照射装置60からレーザビームを照射してケース本体12と蓋13の外面側からレーザ溶接する。
【0039】
このとき、開口端面12aと天板部17の内面19同士が溶融金属となり高温に曝され、溶接位置の周囲から気体を吸収するが、溶接位置よりも収容空間S側に向けて広がる間隙Kが形成されているため、溶接位置に吸収された気体は、間隙Kを通って収容空間Sに抜けていく。そして、間隙Kは、収容空間S側ほど広くなっているため、気体が抜ける際にもスムーズに抜けていく。このため、溶接位置に気体が取り込まれることなく溶融金属が凝固して溶接部20が形成され、溶接部20にブローホールが形成されることが抑制される。
【0040】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ケース本体12における周壁16の開口端面12aと、天板部17の内面19を溶接して溶接部20が形成されたケース11において、溶接部20よりもケース本体12の内側寄りに、ケース本体12の内側ほど広がる間隙Kが形成されている。このため、ケース本体12の開口端面12aと天板部17の内面19を溶接する際、その溶接位置に気体が取り込まれても、その気体を間隙Kを通して収容空間Sに逃がすことができる。よって、溶接位置に気体が取り込まれたまま溶融金属が凝固することが防止され、溶接部20にブローホールが形成されることを抑制できる。その結果、ケース11においては、溶接部20の気密性の低下や強度低下が防止できる。
【0041】
(2)間隙Kは、溶接部20からケース本体12の内側に向かう程開口幅が広がっている。このため、溶接位置からの気体を滞りなく収容空間Sに逃がすことができる。
(3)開口端面12aは、ケース本体12の内面から外面に至るまで厚み方向全体に亘ってテーパ状に形成されている。このため、開口端面12aと天板部17の内面19を溶接すると、ケース本体12の内側ほど、開口端面12aが天板部17の内面19から離れ、溶接が不可能になる。よって、溶接部20はケース11の外面側だけに形成され、溶接部20がケース11内の電極組立体14に近付きすぎて電極組立体14が熱の影響を受けてしまうことを防止できる。
【0042】
(4)蓋13は、挿入部18と天板部17を備える。よって、挿入部18をケース本体12内に挿入すると、挿入部18の外周面18aがケース本体12の周壁16の内側面16aに当接して、ケース11の軸方向と直交する方向への蓋13の移動を規制することができ、蓋13を開口端面12a上に位置決めすることができる。その結果、溶接時の蓋13の移動が規制され、溶接を容易に行うことができる。また、挿入部18の外周面18aと、周壁16の内側面16aとの間には隙間Rが形成されている。このため、溶接部20の溶接位置から逃げてきた気体を、隙間Rから収容空間Sに逃がすことができる。
【0043】
(5)天板部17の内面19を開口端面12aに支持させることで、蓋13をケース本体12の高さ方向に位置決めすることができる。したがって、例えば、蓋13をケース本体12の内側に嵌め込んで溶接する場合と比べると、溶接時の蓋13の移動が規制され、溶接を容易に行うことができる。
【0044】
(6)溶接部20は、周壁16の厚みのうちケース11の外面側に形成されている。このため、間隙Kはケース11の内面から凹んで形成されている。したがって、ケース11内の容積は、収容空間Sと間隙Kの空間の和になり、ケース11内の容積が増え、電解液の揮発したガスを許容する容積を増やすことができる。
【0045】
(7)開口端面12aのテーパ部Tは、ケース材料50を内側から外側に向けて第1及び第2切断工具53,54で切断する際に、剪断面に形成されるダレDによって形成される。すなわち、ケース材料50からケース本体12を形成するのと同時に、開口端面12aにテーパ部Tを形成することができる。したがって、ブローホールの形成を防止する構成の一部を、ケース本体12の形成と共に作ることができる。
【0046】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、開口端面12aをケース本体12の内面から外面に至るまで厚み全体に亘ってテーパ状に形成し、溶接部20よりもケース本体12の内側寄りにテーパ部Tを形成したが、これに限らない。
【0047】
図6(a)に示すように、開口端面12aは、軸方向に直交する方向に沿って延びる平坦面状に形成するとともに、その平坦面部よりケース本体12の内側寄りをテーパ状に形成してもよい。このように構成すると、開口端面12aに天板部17の内面19を支持させると、開口端面12aと天板部17の内面19が面接触し、蓋13をケース本体12に安定した状態に支持することができる。また、開口端面12aと天板部17の内面19が面接触しているため、開口端面12aと天板部17の内面19を溶接しやすく、溶接部20を容易に形成することができる。そして、この場合は、周壁16の蓋13側の面のうち、溶接部20よりもケース本体12の内側寄りにテーパ部Tが形成される。
【0048】
○ 実施形態では、ケース本体12の開口端面12a全体をテーパ状に形成したが、これに限らない。
図6(b)に示すように、天板部17の内面19をテーパ状に形成してもよい。この場合、天板部17は、ケース11の軸方向に直交する方向に沿ってケース11の外面から内面に向かうに従い、周壁16の蓋13側の面から離れるようにテーパ状に形成する。このように構成した場合、天板部17の内面19は蓋13を形成する材料をプレスして形成されるが、天板部17のプレス形成と同時にテーパを形成することができる。
【0049】
○ 蓋13の天板部17をテーパ状に形成した場合、天板部17の幅方向全体に亘ってテーパ状に形成せずに、天板部17の外縁部は、ケース本体12の軸方向に直交する方向に延びる平坦面状に形成し、その平坦面状の部位よりケース本体12の内側寄りをテーパ状に形成してもよい。
【0050】
○ 実施形態では、ケース本体12の開口端面12aをテーパ状に形成したが、ケース本体12の開口端面12aと、蓋13における天板部17の内面19の両方をテーパ状に形成してもよい。例えば、ケース本体12の開口端面12aは、ケース本体12の内面から外面に至るまで厚み全体に亘ってテーパ状に形成する。一方、蓋13の天板部17は、ケース11の軸方向に直交する方向に沿ってケース11の外側から内側に向かうに従い開口端面12aから離れるようにテーパ状に形成する。そして、溶接部20が形成されると、溶接部20よりケース11の内側寄りには、周壁16の蓋13側の面と、天板部17の内面19とが互いに離れるように開口幅を広げる間隙Kが形成される。
【0051】
このように構成すると、間隙Kは、周壁16の蓋13側の面又は天板部17の内面19だけをテーパ状とした場合と比べると、間隙Kの容積が大きくなり、ケース11内の容積も増え、電解液の揮発したガスを許容する容積を増やすことができる。
【0052】
○ 実施形態では、ケース材料50を第1及び第2切断工具53,54で切断する際に形成されるダレDを利用して、周壁16をテーパ状に形成したが、これに限らない。第1及び第2切断工具53,54を用いてケース材料50を切断した後、開口端面12aを研削又はプレス加工等してテーパ状に形成してもよい。
【0053】
○ 実施形態では、間隙Kを溶接部20から収容空間Sに向かう程開口幅が広がるように形成したが、これに限らない。間隙Kは、溶接部20よりも収容空間S側の方が開口幅が広い部位が少なくとも一部にあればよく、開口幅が広がった部位よりもケース11の内側寄りで開口幅が狭くなっていたり、開口幅が一定になっていてもよい。すなわち、溶接部20からの気体の逃げ道が確保できるのであれば、間隙Kの開口幅の大きさは適宜変更してもよい。
【0054】
○ ケース11における周壁16の厚み全体に亘りテーパが形成されていることに限定されず、溶接部20よりもケース本体12の内側寄りを一定の開口幅の間隙Kとしてもよい。
【0055】
○ 蓋13において、挿入部18は無くてもよく、蓋13を平板状の天板部17だけで形成してもよい。この場合、天板部17の外側部であって、開口端面12aと対向する四角環状の領域に天板部17の内面19が形成される。
【0056】
○ ケース11の形状は、円柱状や、左右方向に扁平な楕円柱状に形成してもよい。
○ 本発明は、蓄電装置としてのニッケル水素二次電池や、電気二重層キャパシタとして具体化してもよい。
【符号の説明】
【0057】
K…間隙、R…隙間、S…収容空間、T…テーパ部、10…蓄電装置としての二次電池、11a…開口部、12…ケース本体、12a…開口端面、13…蓋、14…電極組立体、16…周壁、16a…内側面、17…天板部、18…挿入部、18a…外周面、19…内面、19a…外面、20…溶接部。