(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載された発光装置のような蛍光体層を有する発光装置においては、蛍光体層の外縁部近傍から取り出される光は、蛍光体層の中心近傍から取り出される光よりも蛍光体層中の光路長が大きいため、蛍光の割合が高い。そのため、蛍光体層の外縁部近傍から取り出される光の色が中心近傍から取り出される光の色と異なり、発光装置の発光に色むらが生じる場合がある。
【0006】
本発明の目的の一つは、LEDチップの上方に蛍光体層を有する、色むらが抑えられた発光装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一態様において、基板上にLEDチップを搭載する工程と、前記LEDチップを搭載する前又は後に、前記LEDチップを囲むダム材の第1の層を前記基板上に形成する工程と、前記第1の層を形成した後、前記LEDチップの上方に蛍光体層を設置する工程と、前記蛍光体層の外縁部の上面を覆うように、前記ダム材の非透光性を有する第2の層を前記第1の層上に形成する工程と、を含
み、前記第1の層及び前記第2の層は、スクリーン印刷により形成される、発光装置の製造方法を提供する。
【0013】
上記発光装置の製造方法において、前記蛍光体層の外縁部の上面の上に前記LEDチップから発せられる光を吸収する吸収層を形成し、前記第2の層は、前記吸収層を介して前記蛍光体層の外縁部の上面を覆うように形成されてもよい。
【0014】
上記発光装置の製造方法において、前記蛍光体層の外縁部の上面の上に前記LEDチップから発せられる光を反射する反射層を形成し、前記第2の層は、前記反射層を介して前記蛍光体層の外縁部の上面を覆うように形成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、LEDチップの上方に蛍光体層を有する、色むらが抑えられた発光装置及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。発光装置10は、基板11と、基板11上に搭載されたLEDチップ12と、LEDチップ12の上方の蛍光体層15と、LEDチップ12を囲むダム材13と、ダム材13とLEDチップ12との間に埋め込まれる封止材14と、を有する。発光装置10は、例えば、挟指向性LED光源として、車のヘッドライト及び照明用途に適用することができる。
【0019】
ダム材13は、第1の層13aと、第1の層13a上の第2の層13bを有する。第2の層13bは、非透光性を有し、蛍光体層15の外縁部の上面(基板11の反対側の面)を覆う。
【0020】
基板11は、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)や窒化アルミニウム等のセラミックからなる。
【0021】
LEDチップ12は、フェイスアップ型でもフェイスダウン型でもよい。LEDチップ12はn型半導体層とp型半導体層に挟まれた発光層を有し、n型半導体層とp型半導体層は、基板11上の図示しない導電パターンに接続される。LEDチップ12から発せられる光は、蛍光体層15側から取り出される。
【0022】
ダム材13の第1の層13a及び第2の層13bは、例えば、二酸化チタン等の光反射性粒子を含むシリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂等の樹脂からなる。第1の層13a及び第2の層13bは、白色を有し、LEDチップ12から発せられる光を反射する。
【0023】
封止材14は、LEDチップ12を封止する部材であり、例えば、シリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂等の樹脂や、ガラスからなる。また、封止材14は上記材料単体によって構成されていてもよいが、光を屈折、散乱させるようなフィラー、例えば、SiO
2、ZnO
2、サファイア等を含有していてもよいし、光を反射するようなフィラー、例えば、TiO
2、ZnO、BaSO
4、アルミナ等を含有していてもよい。また、封止材14よりも熱伝導性に優れるフィラー、例えば、GaN、AlN、MgO、BN等を含有していてもよい。さらに、上記フィラーのうち、一種類だけを封止材14中に含有させてもよいが、二種類以上を含有させることにより、好適な光取出性、及び放熱性を得ることもできる。
【0024】
蛍光体層15は板状の層であり、例えば、単結晶蛍光体、セラミックス蛍光体、蛍光体粒子を含む樹脂等の有機材料やガラス等の無機材料からなる。
【0025】
蛍光体層15に含まれる蛍光体は、LEDチップ12から発せられた光のエネルギーを吸収し、蛍光を発する。LEDチップ12から発せられて蛍光体層15を透過して外部へ射出される光の色と、蛍光体から発せられる蛍光の色との混色が発光装置10の発光色となる。例えば、LEDチップ12の発光色が青色であり、蛍光体の発光色が黄色である場合は、発光装置10の発光色は白色になる。
【0026】
仮に、蛍光体層15の外縁部近傍から直接光を取り出されるとすると、その光は、蛍光体層15の中心近傍から取り出される光よりも蛍光体層15中の光路長が大きいため、蛍光の割合が高い。そのため、蛍光体層15の外縁部近傍から取り出される光の色が中心近傍から取り出される光の色と異なり、発光装置10の発光に色むらが生じる場合がある。例えば、LEDチップ12の発光色が青色であり、蛍光体の発光色が黄色である場合は、蛍光体層15の外縁部近傍から取り出される光は、中心近傍から取り出される光よりも黄色が強くなる。
【0027】
しかし、本実施の形態においては、蛍光体層15の外縁部は、上面を第2の層13bに覆われ、側面を第1の層13aに覆われる。そのため、LEDチップ12から発せられて蛍光体層15の外縁部を通る光は、第2の層13b又は第1の層13aに反射され、直接外部に取り出されることはない。第2の層13b又は第1の層13a反射された光は、反射を繰り返すうちに強度が弱まるため、発光装置10の発光の色むらが抑えられる。
【0028】
なお、LEDチップ12から発せられる光の蛍光体層15の上面での反射を低減して光取出効率を向上させるために、蛍光体層15の上面に凹凸が設けられてもよい。また、蛍光体層15は、屈折率の異なる層を積層した多層構造を有してもよい。この場合、LEDチップ12から発せられる光の反射を低減するために、下側(LEDチップ12側)から上側に向けて屈折率が小さくなるように積層することが好ましい。また、各層の界面に凹凸が設けられてもよい。
【0029】
図2は、発光装置10の変形例を表す垂直断面図である。
図2に示されるように、発光装置10は、LEDチップ12と蛍光体層15との間に封止材16を有してもよい。封止材16の材料と封止材14の材料は同じでもよいし、異なってもよい。
【0030】
発光装置10の光取出効率を向上させるためには、LEDチップ12上の封止材16は、LEDチップ12から発せられる光の反射を低減するために屈折率が高いことが好ましく、LEDチップ12の側方の封止材14は、LEDチップ12から発せられる光の反射を増加するために屈折率が低いことが好ましい。このため、封止材16の材料と封止材14の材料が異なる場合、封止材16の屈折率は封止材14の屈折率よりも高いことが好ましい。
【0031】
以下に、発光装置10の製造方法の一例を示す。
【0032】
図3(a)〜(d)は、第1の実施の形態に係る発光装置10の製造工程を表す垂直断面図である。
【0033】
まず、
図3(a)に示される様に、基板11上にLEDチップ12を搭載し、ダム材13の第1の層13aを形成する。LEDチップ12の搭載と第1の層13aの形成とは、どちらが先でもよい。
【0034】
第1の層13aは、例えば、スクリーン印刷や、ディスペンサによる吐出により樹脂を設置した後、その樹脂を加熱して硬化させることにより形成される。特に、寸法精度にすぐれるスクリーン印刷を用いることが好ましい。
【0035】
次に、
図3(b)に示される様に、基板11上のダム材13とLEDチップ12の間に封止材14を形成する。封止材14は、例えば、ディスペンサにより液状の樹脂を吐出し、その樹脂を加熱して硬化させることにより形成される。
【0036】
次に、
図3(c)に示される様に、LEDチップ12の上方に蛍光体層15を設置する。このとき、第1の層13aの高さがLEDチップ12の高さよりも高い場合は、
図3(c)に示される様に、蛍光体層15は、外縁部の下面と側面が第1の層13aに接するように設置される。一方、第1の層13aの高さがLEDチップ12の高さよりも低い場合は、蛍光体層15は第1の層13aに接しない。この場合、次の工程で形成される第2の層13bが蛍光体層15の側面、並びに外縁部の上面及び下面を覆うように形成される。
【0037】
次に、
図3(d)に示される様に、蛍光体層15の外縁部の上面を覆うように、ダム材13の第2の層13bを第1の層13a上に形成する。ここで、蛍光体層15の外縁部の上面を適切に覆うことが求められるため、第2の層13bは寸法精度に優れるスクリーン印刷により形成されることが好ましい。
【0038】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、ダム材の構成において第1の実施の形態と異なる。第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
【0039】
図4は、第2の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。発光装置20は、基板11と、基板11上に搭載されたLEDチップ12と、LEDチップ12の上方の蛍光体層15と、LEDチップ12を囲むダム材23と、ダム材23とLEDチップ12との間に埋め込まれる封止材14と、を有する。
【0040】
ダム材23は、第1の層23aと、第1の層23a上の第2の層23bを有する。第2の層23bは、非透光性を有し、蛍光体層15の外縁部の上面を覆う。
【0041】
ダム材23の第1の層23aは、第1の実施の形態の第1の層13aと同様の材料からなる。
【0042】
ダム材23の第2の層23bは、例えば、カーボンブラック、グラファイト、Fe、又は(Cu、Cr、Zn)の複合酸化物等の光吸収性粒子を含むシリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂等の樹脂からなる。第2の層23bは、黒色を有し、LEDチップ12から発せられる光を吸収する。
【0043】
本実施の形態においては、蛍光体層15の外縁部は、上面を第2の層23bに覆われる。そのため、LEDチップ12から発せられて蛍光体層15の外縁部を通る光は、第2の層23bに吸収され、直接外部に取り出されることはない。このため、発光装置20の発光の色むらが抑えられる。
【0044】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、蛍光体層の外縁部に被覆層が形成される点において第1の実施の形態と異なる。第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
【0045】
図5は、第3の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。発光装置30は、基板11と、基板11上に搭載されたLEDチップ12と、LEDチップ12の上方の蛍光体層15と、LEDチップ12を囲むダム材13と、ダム材13とLEDチップ12との間に埋め込まれる封止材14と、蛍光体層15の上面と第2の層13bとの間に設けられた被覆層31と、を有する。
【0046】
ダム材13は、第1の実施の形態のものと同様である。
【0047】
被覆層31は、蛍光体層15の外縁部の上面を覆う層であり、LEDチップ12から発せられる光を吸収する吸収層、又はLEDチップ12から発せられる光を反射する反射層である。
【0048】
被覆層31が吸収層である場合は、例えば、カーボンブラック、グラファイト、Fe、又は(Cu、Cr、Zn)の複合酸化物等の黒色塗料からなる。被覆層31が反射層である場合は、例えば、Ti、Al、Ag等の金属ペーストや、TiO
2、ZnO、Al
2O
3、BaSO
4等の白色塗料からなる。
【0049】
本実施の形態においては、蛍光体層15の外縁部は、上面を被覆層31に覆われる。そのため、LEDチップ12から発せられて蛍光体層15の外縁部を通る光は、被覆層31に吸収又は反射され、直接外部に取り出されることはない。このため、発光装置30の発光の色むらが抑えられる。
【0050】
(実施の形態の効果)
上記第1〜3の実施の形態によれば、LEDチップから発せられた光が蛍光体層の外縁部から直接取り出されることを防ぎ、発光装置の発光の色むらを抑えることができる。
【0051】
本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0052】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。