(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5915544
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】シートバック用フレーム構造体
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
B60N2/68
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-556317(P2012-556317)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(86)【国際出願番号】JP2012082290
(87)【国際公開番号】WO2013094501
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-281087(P2011-281087)
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松本 賢
(72)【発明者】
【氏名】黒田 義人
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃司
【審査官】
永安 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−136610(JP,A)
【文献】
特開平5−168544(JP,A)
【文献】
特開2011−178300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトリトラクタとフレーム上部にシートベルトガイドを有するシートバックの内部に設けられるフレーム構造体であって、シートバックの下部のシート幅方向一端側に位置する第1支持点から上方のシートベルトガイド設置部に向けて斜行して延びる斜行フレームと、シートバックの下部のシート幅方向他端側に位置する第2支持点から上方に向けて延び上端が前記斜行フレームに接続された縦フレームとからなる構造に構成されており、前記斜行フレームが、シート前後方向に前側に位置する第1フレームと後側に位置する第2フレームとからなることを特徴とするシートバック用フレーム構造体。
【請求項2】
さらに、前記縦フレームから前記斜行フレームまで延びる補強フレームを有する、請求項1に記載のシートバック用フレーム構造体。
【請求項3】
前記第1フレームと第2フレームのそれぞれに対し、前記縦フレームから前記斜行フレームまで延びる補強フレームを有する、請求項1または2に記載のシートバック用フレーム構造体。
【請求項4】
前記第1フレーム、第2フレームおよび縦フレームのそれぞれの剛性は、前記補強フレームの剛性よりも高い、請求項3に記載のシートバック用フレーム構造体。
【請求項5】
前記第1フレーム、第2フレーム、縦フレームおよび補強フレームの剛性の中で第1フレームの剛性が最も高い、請求項3または4に記載のシートバック用フレーム構造体。
【請求項6】
前記第1フレームは、シート側方からみてシート前方向に凸状に湾曲している、請求項1〜5のいずれかに記載のシートバック用フレーム構造体。
【請求項7】
前記第1フレームと第2フレームは、延設方向中間位置よりも上方位置で一本の斜行フレームに合一している、請求項1〜6のいずれかに記載のシートバック用フレーム構造体。
【請求項8】
前記それぞれの補強フレームは、前記第1フレームおよび第2フレームに対しそれぞれの延設方向中間位置よりも上方位置で接続されている、請求項3に記載のシートバック用フレーム構造体。
【請求項9】
少なくとも一部が樹脂で構成されている、請求項1〜8のいずれかに記載のシートバック用フレーム構造体。
【請求項10】
少なくとも一部が繊維強化樹脂で構成されている、請求項1〜9のいずれかに記載のシートバック用フレーム構造体。
【請求項11】
斜行フレームの少なくとも一部が繊維強化樹脂で構成されている、請求項10に記載のシートバック用フレーム構造体。
【請求項12】
少なくとも一部の表面部に、一方向に配列された強化繊維を有する繊維強化樹脂製テープが貼設されている、請求項1〜11のいずれかに記載のシートバック用フレーム構造体。
【請求項13】
可倒式のシートバックの内部に設けられる、請求項1〜12のいずれかに記載のシートバック用フレーム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートバック用フレーム構造体に関し、とくに、車両前方に向けて加わる荷重に対して高剛性であり、かつ軽量構造を達成可能なシートバック用フレーム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシートバックにおけるクッション体の内部には、シートバックに必要な強度や剛性を持たせるために、通常、シートバック用フレーム構造体が内包されている。シートバックの強度や剛性を向上するための改良は、従来から種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、補強リブが一体成形された中空状で面状の樹脂フレーム体と、第1、第2の金属フレーム体とを組み合わせて、フレーム構造体の強度、剛性を向上させるようにした構造が開示されている。特許文献2には、板状のフレーム骨格本体の両側部に、上下方向に延びる凸条補強部を形成した繊維強化樹脂製のフレーム構造体が開示されている。これらは、シートバック全体の固定強度の向上や、四角形状のシートバック用フレーム構造体の強度や剛性を向上させるようにしたものである。
【0004】
一方、シートバック用フレーム構造体には、車体フレームからではなく、シートフレームにシートベルトリトラクタおよびシートベルトガイド(あるいはシートベルトアンカと呼ぶ場合もある)が取り付けられたものもある。特許文献3には、そのようなシートフレーム構造体において、シートバックの枠状フレームへのシートベルトリトラクタの取付強度を向上するようにした構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−81676号公報
【特許文献2】特開2005−194号公報
【特許文献3】特開平10−129416号公報
【特許文献4】特開2000−6696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シートベルトリトラクタをシートフレームに取り付けたシートバック用フレーム構造体においては、シートベルトリトラクタとシートベルトガイドは、通常、シートバックの車両幅方向のいずれか一方寄りに、特にシートベルトガイドはフレーム上部の位置に設けられる。シートベルトはシートベルトリトラクタよりシートベルトガイドを介して斜めに襷がけするよう乗員を支持するため、車両衝突時などには乗員の前方移動により、フレーム構造体にはシートベルトガイドの設置部を起点とした前方あるいは前方斜め方向の荷重が加わることになる。そのため、シートバック用フレーム構造体はこれらの荷重による曲げ、さらには捩りの変形に対する剛性を高める必要がある。
【0007】
この剛性向上のために、特許文献1、2には枠状のフレーム構造体全体の強度、剛性を高める方法や、さらに特許文献4にはシートバックの後ろ側に抑止バーを設けてシートバックの前方方向への荷重に対して高い強度を発揮できるようにした構造が開示されている。しかし、これらの構造では剛性・強度向上する上で、フレーム構造体全体の重量の増加を逆に招いたり、期待したほどの軽量化を図ることができない場合がある。
【0008】
従来技術においては、上記のようなシートベルトガイドを介してシートバック用フレーム構造体に前方あるいは前方斜め方向にかかる荷重に特に着目してフレーム構造体の剛性向上を目指した提案は見当たらない。
【0009】
そこで本発明の課題は、とくにシートバック用フレーム構造体に前方あるいは前方斜め方向にかかる荷重に着目し、その荷重に対して効果的にフレーム構造体の剛性向上を達成できるとともに、容易にフレーム構造体を軽量化できるようにしたシートバック用フレーム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るシートバック用フレーム構造体は、シートベルトリトラクタとフレーム上部にシートベルトガイドを有するシートバックの内部に設けられるフレーム構造体であって、シートバックの下部のシート幅方向一端側に位置する第1支持点から上方のシートベルトガイド設置部に向けて斜行して延びる斜行フレームと、シートバックの下部のシート幅方向他端側に位置する第2支持点から上方に向けて延び上端が前記斜行フレームに接続された縦フレームとからなる構造に構成されて
おり、前記斜行フレームが、シート前後方向に前側に位置する第1フレームと後側に位置する第2フレームとからなることを特徴とするものからなる。本発明におけるシートバック用フレーム構造体は、シートバックの内部に設けられてシートバックにかかる荷重を受け止める役目を果たすシートバックの主剛性を担うものである。したがって、シートバックとして、通常設けられるクッション体のための枠体等を有する場合にあっても、その枠体等は本発明に係るシートバック用フレーム構造体とは別物であり、その枠体等の有無にかかわらず、本発明の要件を満たす限り本発明の範囲に含まれる。
【0011】
このような本発明に係るシートベルトリトラクタを有するシートバック用フレーム構造体においては、フレーム構造体の上部にシートベルトガイドを有するので、例えば、衝突時の衝撃によって乗員が慣性により前方に移動しようとする際に、シートベルトからシートベルトガイドを介して、フレーム構造体に前方あるいは前方斜め方向に荷重がかかる。フレーム構造体は、シートバックの下部のシート幅方向一端側に位置する第1支持点から上方のシートベルトガイドの設置部に向けて斜行して延びる斜行フレームを有するので、この前方あるいは前方斜めにかかる荷重を効率よく受け止められる。従って、斜行フレームの存在によってフレーム構造体の剛性が効果的に高められる。そして、この斜行フレームと、第2支持点から上方に向けて延びる縦フレームのみで構成されているので、フレーム構造体全体としての剛性が、実質的に最も少ないフレーム部材数にて、効率よく高められる。したがって、シートバック用フレーム構造体は斜行フレームの存在によって、シートベルトガイド設置部に加わる前方あるいは前方斜めの荷重を高い剛性をもって効果的に受け止めることができるようになり、同時にそれを少ないフレーム部材数にて達成できるためフレーム構造体を軽量化することも容易に実現可能となる。
【0012】
本発明に係るシートバック用フレーム構造体においては、さらに、上記縦フレームから上記斜行フレームまで延びる補強フレームを有する構造とすることもできる。このような補強フレームを設けることにより、フレーム構造体全体としての剛性を一層高めることが可能になり、しかも、斜行フレーム自体の剛性も一層高めることが可能になる。
【0013】
また、上記斜行フレームとしては、1本のフレーム部材から構成することも
可能であるが、
本発明では、シート前後方向に前側に位置する第1フレームと後側に位置する第2フレームとから構成されている。このように斜行フレームを前後2本のフレーム部材から構成すると、斜行フレーム全体としての剛性を構造的に高く保ちつつ斜行フレーム全体としての重量を軽減することが可能になるとともに、各フレーム部材の主機能を分離することが可能になる。例えば、前側に位置する第1フレームは前方斜め方向の荷重によるフレーム構造体の曲げに対して剛性の寄与度が大きいため、剛性を高く設定しておくことにより、前方あるいは前方斜めの荷重がかかる際にフレーム構造体の曲げ変形を効率よく抑えることができるようになる。
【0014】
また、上記第1フレームと第2フレームのそれぞれに対し、上記縦フレームから上記斜行フレームまで延びる補強フレームを有する構造を採用することもできる。このように構成すれば、第1フレームと第2フレームの両方の剛性を向上でき、シートバック用フレーム構造体全体としての剛性を極めて高くすることができる。
【0015】
この場合、上記第1フレーム、第2フレームおよび縦フレームのそれぞれの剛性は、上記補強フレームの剛性よりも高いことが好ましい。補強フレームは主として第1フレームと第2フレームの剛性を向上するためのものであるから、補強フレームをあまり高剛性にするとその重量が大きくなるおそれがあり、全体の軽量化の点から、剛性が高すぎることは好ましくない。全体として必要な剛性は、主として、上記第1フレーム、第2フレームと、縦フレームとによる構造によって達成される。
【0016】
また、構造体全体としての軽量化をはかりつつ、前述の斜めにかかる荷重に対するフレーム剛性を効率よく高めるためには、その荷重を主として受け止める第1フレームの剛性を、上記第1フレーム、第2フレーム、縦フレームおよび補強フレームの剛性の中で最も高く設定しておくことが好ましい。
【0017】
また、上記第1フレームに上記荷重をより効果的に受け止める剛性を持たせるために、該第1フレームは、例えば、シート側方からみてシート前方向に凸状に湾曲している構造とすることができる。凸状に湾曲させることで第1フレームのシート前後方向の見かけの断面寸法を大きくすることができるため、重量をとくに増大させることなく効率よくその剛性を増大させる構造である。
【0018】
また、上記第1フレームと第2フレームは、種々の形態を採り得る。例えば、第1フレームと第2フレームが、延設方向中間位置よりも上方位置で一本の斜行フレームに合一している構造を採ることができる。このようにすれば、上記荷重に起因するモーメントがより大きく作用する下部側で第1フレームと第2フレームとの2本のフレーム部材構成として剛性を高め、より小さなモーメントが作用する上部側では、第1フレームと第2フレームの合一構成として軽量化をはかることが可能になる。
【0019】
また、上記第1フレームおよび第2フレームのそれぞれに対して補強フレームが接続される形態においては、各補強フレームが、第1フレームおよび第2フレームに対しそれぞれの延設方向中間位置よりも上方位置で接続されている構造とすることもできる。このようにすることで第1フレームと第2フレームの変形を効果的に抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係るシートバック用フレーム構造体においては、軽量化の要請に応えるために、少なくとも一部が樹脂で構成されている構造、好ましくは全体が樹脂で構成されている構造を採用できる。本発明では、斜行フレームと縦フレームのみによる構造を採用しており、少ないフレーム部材数で効率よく剛性が高められているので、構成材料に金属ではなく樹脂を用いても、十分に必要な剛性を確保することが可能になり、樹脂の使用によって全体の軽量化を促進できる。
【0021】
とくに、本発明に係るシートバック用フレーム構造体においては、少なくとも一部が繊維強化樹脂で構成されていることが望ましい。繊維強化樹脂の採用により、シートバック用フレーム構造体全体の望ましい軽量化と高剛性化の両方を容易に達成できるようになる。中でも、前述の荷重を受け止める斜行フレームの少なくとも一部が繊維強化樹脂で構成されているが好ましい。
【0022】
また、繊維強化樹脂の採用する場合、フレーム部材の少なくとも一部を繊維強化樹脂で構成する構造はもちろんのこと、いずれかのフレーム部材の少なくとも一部の表面部に、一方向に配列された強化繊維を有する繊維強化樹脂製テープが貼設されている構造を採用することも可能である。繊維強化樹脂製テープを貼設する場合には、例えば各フレームの延設方向に強化繊維の繊維方向を一致させるように配置すれば、各フレームの曲げ剛性を効果的に高めることができる。または、延設方向に角度を有して配置した場合には各フレームの捩り剛性を高めることができる。これらの構造は、上記の方法を複数組み合わせることも可能である。要求仕様に応じて、これらのうち任意の構造を採用できる。
【0023】
なお、いずれかの部位に繊維強化樹脂の採用する場合、強化繊維の種類は特に限定されず、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の他、これら強化繊維の組み合わせも採用可能である。また、マトリックス樹脂としても特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、これらの組み合わせのいずれも採用可能である。
【0024】
さらに、本発明に係るシートバック用フレーム構造体は、シートベルトリトラクタとシートベルトガイドを有するシートバックの内部に設けられるフレーム構造体であれば特に限定されないが、例えば、可倒式のシートバックの内部に設けられるものに適用できる。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明に係るシートバック用フレーム構造体によれば、上部のシートベルトガイド設置部に対し斜行フレームと縦フレームとを有する構成により、とくにフレーム構造体に前方ないし前方斜めにかかる荷重に対して効果的にフレーム構造体の剛性を向上できるとともに、容易にフレーム構造体の軽量化をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の
基本形態を示す一実施態様に係るシートバック用フレーム構造体の概略斜視図である。
【
図2】本発明の
基本形態を示す別の実施態様に係るシートバック用フレーム構造体の概略斜視図である。
【
図3】本発明の
一実施態様に係るシートバック用フレーム構造体の概略斜視図である。
【
図4】本発明の
別の実施態様に係るシートバック用フレーム構造体の概略斜視図である。
【
図5】本発明のさらに別の実施態様に係るシートバック用フレーム構造体の概略斜視図である。
【
図6】本発明のさらに別の実施態様に係るシートバック用フレーム構造体の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の
基本形態を示す一実施態様に係るシートバック用フレーム構造体を示している。
図1に示すシートバック用フレーム構造体1はシートバック3(あるいはシートバック用クッション体)の内部に設けられるフレーム構造体として構成されている。このシートバック用フレーム構造体1の一部にシートベルトリトラクタ2が取り付けられ、シートベルトリトラクタ2によりシートベルトガイド5を介してシートベルト9が巻取りおよび巻出しが行われ乗員が支持される構造となっている。このシートバック用フレーム構造体1は、シートバック3の下部のシート幅方向X−Xの一端側に位置する第1支持点4から上方のシートベルトガイド5の設置部に向けて斜行して延びる斜行フレーム6と、シートバック3の下部のシート幅方向X−Xの他端側に位置する第2支持点7から上方に向けて延び上端が斜行フレーム6に接続された縦フレーム8とからなる構造に構成されている。第1支持点4には図示しないシートバック3のリクライニング機構が取付けられており、シートバックが第1支持点4と第2支持点7を結ぶシートバック回転軸10を中心に可倒式に傾斜角を変更および固定できるように構成されている。また、第2支持点7は回転軸10周りの回転移動のみ可能なようにフレーム構造体1を支持している。上記シートバック用フレーム構造体1は、好ましくはその全体が繊維強化樹脂、例えば炭素繊維強化樹脂からなり、全体が一体成形体として構成されている。
【0028】
このような本実施態様に係るシートバック用フレーム構造体1においては、上部のシートベルトガイド5の設置部からフレーム構造体1に車両衝突時にシートベルトによりシート前方あるいは前方斜めに荷重Fがかかる場合、第1支持点4では回転軸10まわりの回転移動がリクライニング機構により拘束されているため、フレーム構造体に車両前方方向の曲げ変形と同時に捩り変形を生じる。この変形は、第1支持点4から上方のシートベルトガイド5に向けて斜行して斜行フレーム6が延びるため、荷重Fを効果的に支持することができ、フレーム構造体1の剛性を効果的に高められる。また、縦フレーム8によって、荷重Fの前方方向成分の荷重を斜行フレーム6と共に支持することができる。さらに、斜行フレーム6と縦フレーム8とでフレーム構造体1が構成されているので、フレーム構造体1全体としての剛性が、少ないフレーム部材数にて、効率よく高められ、かつ、その少ないフレーム部材数の構成により、同時に、フレーム構造体1の軽量化が達成されている。
【0029】
このような本発明に係るシートバック用フレーム構造体は、さらに、以下のような種々の形態を採り得る。例えば
図2に示す
本発明の基本形態を示す別の実施態様では、シートバック用フレーム構造体11は、
図1に示した形態と同様に、斜行フレーム6と縦フレーム8が上部のシートベルトガイド設置部5aで接合された構造を有しているが、さらに、縦フレーム8から斜行フレーム6まで延びる補強フレーム12が設けられている。この補強フレーム12も繊維強化樹脂から構成でき、フレーム構造体11の全体を一体成形することが可能である。補強フレーム12の存在によって、斜行フレーム6、さらにはフレーム構造体11の全体の剛性がさらに高められる。
【0030】
図3に本発明の一実施態様に係るシートバック用フレーム構造体を示す。図3に示す実施態様では、シートバック用フレーム構造体21の斜行フレーム22は、シート前後方向に前側に位置する第1フレーム23と後側に位置する第2フレーム24の前後2本のフレーム部材から構成されており、縦フレーム8からは斜行フレーム22の第1フレーム23まで延びる補強フレーム25が設けられている。また、第1フレーム23は、シート側方からみてシート前方向に凸状に湾曲している構造に構成されている。このような構成においては、斜行フレーム22を互いに離間した第1フレーム23と第2フレーム24とから構成することにより、斜行フレーム22としての剛性を一層効率よく高めることが可能になる。また、そのうち斜め荷重による曲げ変形を支持する第1フレーム23をシート前方向に凸状に湾曲している構造に構成することにより、第1フレーム23の軽量化、ひいては斜行フレーム22の軽量化をはかりつつ、その剛性を効率よく増大させることが可能となる。
【0031】
また、
図4に示す実施態様では、シートバック用フレーム構造体21の斜行フレーム22は、シート前後方向に前側に位置する第1フレーム23と後側に位置する第2フレーム24の前後2本のフレーム部材から構成されているが、縦フレーム8からは斜行フレーム22の第1フレーム23と第2フレーム24のそれぞれまで延びる補強フレーム25、26が設けられている。また、第1フレーム23は、シート側方からみてシート前方向に凸状に湾曲している構造に構成されている。このような構成においては、斜行フレーム22を互いに離間した第1フレーム23と第2フレーム24とから構成することにより、斜行フレーム22としての剛性を一層効率よく高めることが可能になる。また
図3に示した構造に比べ、第1フレーム23と第2フレーム24の両方に対してそれぞれ補強フレーム25、26を設けることにより、前述の如く、斜行フレーム全体としての剛性を構造的に高く保ちつつ斜行フレーム全体としての重量を軽減することが可能になるとともに、各フレーム部材の主機能を分離することが可能になる。また、図示例では、各補強フレーム25、26が、第1フレーム23および第2フレーム24に対しそれぞれの延設方向中間位置よりも上方位置で接続されている構造とされているので、第1フレーム23と第2フレーム24の変形をさらに効果的に抑制することができる。
【0032】
また、
図5に示す実施態様では、シートバック用フレーム構造体31の斜行フレーム32は、延設方向の中間位置まで第1フレーム33と第2フレーム34の前後2本のフレーム部材で構成されているが、その中間位置からは合一されて一本の上部フレーム35として構成されている。そして、図示例では、縦フレーム8から延びる補強フレーム36が、第1フレーム33と第2フレーム34の合一部またはその近傍部位に接続されている。このような構成においては、より高剛性が必要な箇所では第1フレーム33と第2フレーム34の2本のフレーム部材構成として高剛性構造を達成しつつ、より低い剛性で済むと考えられる斜行フレーム32の上部部分については合一された上部フレーム35として、軽量化をはかることが可能である。
【0033】
また、
図6に示す実施態様では、シートバック用フレーム構造体41は、
図3に示した形態と同様に、斜行フレーム42が、第1フレーム43と第2フレーム44の前後2本のフレーム部材から構成されており、縦フレーム8からは斜行フレーム42の第2フレーム44まで延びる補強フレーム45が設けられている。このフレーム構造体41の表面部に、一方向に配列された強化繊維を有する繊維強化樹脂製テープ46(一方向繊維強化樹脂製テープ)が貼設されている。繊維強化樹脂製テープ46を例えば各フレームの延設方向に繊維方向が沿うように貼設することにより、フレーム構造体41の剛性を効率よく容易に補強することが可能である。なお、
図6に示す実施態様では、フレームの全面を覆うように繊維強化樹脂製テープ46が貼設されているが、フレームの対象とする一部分に貼設する方法を採ることもできる。また、一方向繊維強化樹脂製テープの少なくとも一部がフレーム構造体41の樹脂層内に埋め込まれていてもよく、さらには、一方向繊維強化樹脂製テープ全体が樹脂層内に埋め込まれた形態、換言すれば、一方向繊維強化樹脂製テープの表面が樹脂層で被覆された形態であってもよい。
【0034】
このように、本発明においては、斜行フレームや補強フレーム、さらには各部の補強形態等について、各種の形態を採り得る。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、上部にシートベルトガイドを有するあらゆるシートバック用フレーム構造体に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1、11、21、31、41 シートバック用フレーム構造体
2 シートベルトリトラクタ
3 シートバック
4 第1支持点
5 シートベルトガイド
5a シートベルトガイド設置部
6、22、32、42 斜行フレーム
7 第2支持点
8 縦フレーム
9 シートベルト
10 回転軸
12、25、26、36、45 補強フレーム
23、33、43 第1フレーム
24、34、44 第2フレーム
35 上部フレーム
46 繊維強化樹脂製テープ