(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の座席を並設させて構成される車両に搭載されて、該座席の並設方向の一方側からの衝撃力の作用時に、衝撃力作用側から遠い離隔側座席に着座した乗員を保護可能であって、
前記離隔側座席の背もたれ部内に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて前記離隔側乗員の衝撃力作用側を覆うように展開膨張するエアバッグと、
前記背もたれ部内に収納されるとともに、展開膨張する前記エアバッグを駆動源として突出し、膨張完了時の前記エアバッグにおける衝撃力作用側を支持可能な支持部材と、
を備えるエアバッグ装置において、
前記支持部材が、支持部材本体と、該支持部材本体を前記背もたれ部側に取り付けるブラケット部と、を備える構成とされて、
前記支持部材本体は、元部側を、前記ブラケット部に対して回動可能に取り付けられ、元部より先端側となる部位を、前記エアバッグにおける膨張完了時の先端側から延びるテザーに連結されるとともに、前記ブラケット部に設けられるガイドに沿ってスライド移動可能な構成とされて、元部側を前記背もたれ部に沿うように上下方向に略沿ってスライド移動させつつ、先端側を前記背もたれ部から突出させるように、回動して、膨張完了時の前記エアバッグの衝撃力作用側を支持可能に、構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
前記支持部材が、突出完了の前記支持部材本体の先端近傍と、ガイドの元部端近傍と、を連結するように配置される補助リンク片を、備えていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
前記ガイドが、前記支持部材本体の元部側に対応させて、前記支持部材本体のスライド完了後の復帰を規制するストッパ機構を、備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のエアバッグ装置では、支持部材本体を、ブラケット部に取り付けられる元部側を回転中心として、先端を上方から下方に向けるように回転させつつ突出させる構成であり、支持部材の回転軌跡を越えて、大きな荷重の作用するエリアに、支持部材を配置させる点に、改善の余地があった。このような点を改善するために、単純に支持部材本体の長さ寸法を大きくすることも考慮できるが、支持部材本体は、背もたれ部内に収納させていることから、単純に支持部材本体を長くすれば、背もたれ部内にコンパクトに収納しがたい。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、コンパクトに収納させることができて、かつ、作動時に、大きな荷重の作用するエリアに配置可能な支持部材を備えるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、複数の座席を並設させて構成される車両に搭載されて、座席の並設方向の一方側からの衝撃力の作用時に、衝撃力作用側から遠い離隔側座席に着座した乗員を保護可能であって、
離隔側座席の背もたれ部内に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて離隔側乗員の衝撃力作用側を覆うように展開膨張するエアバッグと、
背もたれ部内に収納されるとともに、展開膨張するエアバッグを駆動源として突出し、膨張完了時のエアバッグにおける衝撃力作用側を支持可能な支持部材と、
を備えるエアバッグ装置において、
支持部材が、支持部材本体と、支持部材本体を背もたれ部側に取り付けるブラケット部と、を備える構成とされて、
支持部材本体は、元部側を、ブラケット部に対して回動可能に取り付けられ、元部より先端側となる部位を、エアバッグにおける膨張完了時の先端側から延びるテザーに連結されるとともに、ブラケット部に設けられるガイドに沿ってスライド移動可能な構成とされて、元部側を背もたれ部に沿うように上下方向に略沿ってスライド移動させつつ、先端側を背もたれ部から突出させるように、回動して、膨張完了時のエアバッグの衝撃力作用側を支持可能に、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアバッグ装置では、支持部材本体は、エアバッグの膨張完了時に、元部側をブラケット部に設けられるガイドに沿ってスライドしつつ、先端側を背もたれ部から突出させるように回動された状態で、エアバッグの衝撃力作用側を支持する構成である。すなわち、本発明のエアバッグ装置では、支持部材本体は、全体をスライド移動させることにより、移動完了時に、背もたれ部内への収納時における元部側の位置から離隔した位置に、配置されることから、長さ寸法を長くしなくとも、支持部材本体を、回転軌跡を越えて、大きな荷重の作用するエリアに配置させることができ、大きな荷重の作用するエリアを支持することができる。そのため、離隔側乗員の衝撃力作用側を、的確に支持することができ、離隔側乗員を、エアバッグを介して、的確に保護することができる。
【0008】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、支持部材をコンパクトに収納させることができて、かつ、作動時に、大きな荷重の作用するエリアに配置させることができる。
【0009】
また、本発明のエアバッグ装置において、支持部材に、突出完了の支持部材本体の先端近傍と、ガイドの元部端近傍と、を連結するように配置される補助リンク片を、配設させる構成とすれば、突出完了時に、支持部材本体と補助リンク片とによって囲まれる略三角形状の領域で、膨張完了時のエアバッグの衝撃力作用側を支持させることができる。そのため、補助リンク片を備えない場合と比較して、膨張完了時のエアバッグの衝撃力作用側を、広い領域で支持させることができ、離隔側乗員を、エアバッグを介して、一層、的確に保護することができて、好ましい。
【0010】
さらに、上記構成のエアバッグ装置において、ガイドに、支持部材本体の元部側に対応させて、支持部材本体のスライド完了後の復帰を規制するストッパ機構を配設させる構成とすれば、支持部材本体が、突出完了後に、作動前の状態に戻るように移動することを防止できて、好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、ガイドを、支持部材本体の元部側を上方に向かってスライド移動させるように構成し、支持部材本体を、スライド移動完了後に、水平方向に略沿って配置させて、離隔側乗員の肩部近傍の衝撃力作用側を支持させるように構成すれば、大きな荷重の作用する離隔側乗員の肩部付近を、エアバッグを介在させて、水平方向に略沿って配置される支持部材本体によって、前後に広いエリアで、的確に拘束することができ、離隔側乗員が衝撃力作用側に向かって移動することを、的確に抑制することができて、好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両の前後・上下・左右の方向と一致するものである。
【0014】
実施形態では、
図9に示すように、左右方向に沿って併設される運転席DSと助手席PSとを備える車両Vにおいて、左側LW(助手席PS側)から側面衝突された場合を、例に採り説明する。すなわち、実施形態では、右側RWに位置する運転席DSが、衝突側(衝撃力作用側)から遠い離隔側座席とされ、左側LWに位置する助手席PSが、衝突側(衝撃力作用側)に近い近接側座席とされて、運転席DSに着座した運転者DPを、離隔側乗員として保護するエアバッグ装置Mを、例に採り説明する。
【0015】
エアバッグ装置Mを搭載させる運転席DSは、
図1に示すように、座部1と、座部1の後端側から後上方に向かって延びる背もたれ部2と、背もたれ部2の上端から上方に突出するヘッドレスト7と、を備えている。
【0016】
背もたれ部2は、
図2,3に示すように、板金素材からなるシートフレーム3と、シートフレーム3の周囲を覆うように配置されるクッション6と、を備える構成である。シートフレーム3は、背もたれ部2の左右両縁側と上縁側とにかけて、前後方向側から見て略逆U字形状に、配置されるものであり、実施形態では、シートフレーム3において、衝撃力作用側となる左側LWに位置する左縦フレーム部4に、エアバッグ装置Mが取り付けられている。左縦フレーム部4は、
図3に示すように、略平板状として、運転席DS及び助手席PSの並設方向と略直交する方向、すなわち、前後方向に略沿って、配置されるもので、背もたれ部2の上下の略全域にわたって、配置されている。そして、実施形態の場合、エアバッグ装置Mは、
図3に示すように、背もたれ部2におけるシートフレーム3の左縦フレーム部4とクッション6との間に形成される隙間に、収納されている。なお、背もたれ部2のクッション6の外表面側には、表皮(図符号省略)が、配置されているが、この表皮は、エアバッグ16の展開膨張時に、クッション6の一部の破断に伴って一部を破断させて、エアバッグ16と支持部材本体とを前方に突出させることとなる。
【0017】
エアバッグ装置Mは、運転席DSの衝撃力作用側である左側LWの側面側(左縦フレーム部4の左側面側)に配置されるもので、
図1〜3に示すように、運転席DSの背もたれ部2内に折り畳まれて収納されるエアバッグ16と、エアバッグ16に膨張用ガスを供給するインフレーター10と、背もたれ部2内に配置されてエアバッグ16の展開膨張により車両前方側へ突出する支持部材24と、を備えている。
【0018】
インフレーター10は、
図1〜3に示すように、略円柱状の本体11と、本体11の外周側を覆うように配置される取付ブラケット12と、を備えている。本体11は、長手方向を左縦フレーム部4に略沿わせるように配置されるもので、実施形態の場合、円柱状の大径部11aと、大径部11aの下端側に設けられてガス吐出口11cを有した小径部11bと、を備えるとともに、大径部11aの上端側に、図示しないエアバッグ作動回路と電気的に接続されるリード線11dを結線させて構成されている。取付ブラケット12は、本体11を保持可能な略円筒状の保持部12aと、保持部12aから右側に向かって突出する取付ボルト12bと、を備えている。取付ボルト12bは、保持部12aの軸方向に沿って、2箇所に形成されている。
【0019】
そして、実施形態の場合、インフレーター10は、エアバッグ16に形成される後述する取付孔18から取付ボルト12bを突出させ、リード線11dを外部に突出させるようにして、エアバッグ16内における膨張完了時の上後端側の領域に収納された状態で、エアバッグ16から突出している取付ボルト12bを、左縦フレーム部4から突出させてナット13止めすることにより、エアバッグ16とともに、左縦フレーム部4の左側面に取り付けられる構成である(
図3参照)。実施形態の場合、取付ボルト12bは、支持部材24を左縦フレーム部4に取り付けるブラケット部29の右側壁30を経て、左縦フレーム部4から突出される構成であり、インフレーター10は、エアバッグ16及び支持部材24とともに、左縦フレーム部4に取り付けられている。
【0020】
エアバッグ16は、上述したごとく、インフレーター10とともに、支持部材24を左縦フレーム部4に取り付けるブラケット部29の右側壁30を介して、左縦フレーム部4に取り付けられるもので、実施形態の場合、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体17と、支持部材24における支持部材本体25と連結されるテザー21と、を備えている。
【0021】
バッグ本体17は、
図8,9に示すように、膨張完了時に、運転席DSに着座した運転者DP(離隔側乗員)の左側LW(衝撃力作用側)を覆うように配置されるもので、膨張完了形状を、背もたれ部2から斜め前上方に突出するような略楕円板状として、膨張完了時の下端側を、左縦フレーム部4に取り付けられている。バッグ本体17は、
図4,5に示すように、外形形状を略同一とされて、膨張完了時に運転者DP側となる右側に配置される右側壁部17aと、左側に配置される左側壁部17bと、を有し、この右側壁部17aと左側壁部17bとの周縁相互を結合(縫着)させて、袋状とされている。実施形態の場合、バッグ本体17は、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布の表面にシリコン等のコーティング剤を塗布したコート布から、形成されている。また、右側壁部17aの下端近傍には、インフレーター10の取付ボルト12bを挿通させるための取付孔18が、前後2箇所に形成されている。また、バッグ本体17の内部には、膨張完了時の厚さを規制する帯状の厚さ規制部材19が、両縁側を、それぞれ、右側壁部17aと左側壁部17bとに結合(縫着)させるようにして、配置されている。厚さ規制部材19は、バッグ本体17と同様に、可撓性を有した織布から形成され、実施形態の場合、膨張完了時のバッグ本体17を側方から見て、バッグ本体17の外形形状と略相似形となる略楕円筒状として、上下の中央よりやや下方となる位置に配置され(
図4参照)、
図5に示すように、軸方向に沿った両縁側を、右側壁部17aと左側壁部17bとに縫着(結合)させて構成されている。
【0022】
テザー21は、
図4に示すように、膨張完了時のバッグ本体17において、衝撃力作用側(左側LW)となる左側壁部17bの外表面側に配置されるもので、元部21a側を、バッグ本体17における膨張完了時の先端側となる前縁17c側に、連結されている。詳細には、テザー21の元部21aは、バッグ本体17の前縁17c側において上下の中央付近となる位置に、連結されている。テザー21の先端21b側は、後述するごとく、支持部材本体25の先端25b側に、連結されている。実施形態の場合、テザー21は、可撓性を有した帯状の織布から形成されており、テザー21の元部21a側は、右側壁部17aと左側壁部17bとの周縁相互を縫合糸を用いて縫着させてバッグ本体17を製造する際に、共縫いされて、バッグ本体17に連結されている。このテザー21は、バッグ本体17の展開膨張時に、背もたれ部2から前方に突出するように膨張するバッグ本体17の膨張に伴って、待機位置P1に配置される支持部材本体25を、先端25b側を前方に向けるように前方に向かって回転させて突出させ、かつ、ガイド溝32に沿って上方にスライド移動させて、支持位置P2に配置させるために、配設されるものである。そして、実施形態の場合、テザー21は、バッグ本体17の膨張完了時であって支持部材本体25の支持位置P2への配置後に、側方から見て、バッグ本体17に連結される元部21a側を、支持部材本体25に連結される先端21bよりも僅かに上方に位置させるように、僅かに後下がりに傾斜して、略水平方向に沿うようにして、配置されることとなる(
図8参照)。
【0023】
支持部材24は、
図1〜3に示すように、背もたれ部2内に収納されて、展開膨張するエアバッグ16を駆動源として突出する支持部材本体25と、支持部材本体25を背もたれ部2に取り付けるブラケット部29とを、備える構成とされている(
図6参照)。
【0024】
ブラケット部29は、前方を開口させた断面略コ字形状とされるとともに、左縦フレーム部4(背もたれ部2)に略沿って配置される長尺状とされるもので、右側壁30に、インフレーター10の取付ボルト12bを挿通可能な挿通孔30aを有し、内部に折り畳まれたエアバッグ16とインフレーター10とを挿入させるようにして、右側壁30から突出させたインフレーター10の取付ボルト12bと、ナット13と、を利用して、左縦フレーム部4に取り付けられる構成である。
【0025】
ブラケット部29の左側壁31には、支持部材本体25の元部25a側をスライド移動可能なガイドとしてのガイド溝32が、形成されている。ガイド溝32は、
図6に示すように、左側壁31の長手方向に沿って、すなわち、左縦フレーム部4及び背もたれ部2に略沿うように上下方向に略沿った直線状に形成されるもので、支持部材本体25から突出するように形成されるガイドピン26を挿通可能に、構成されている。実施形態の場合、ガイド溝32は、左側壁31の前縁及び左縦フレーム部4に対して、上端を前方に向けるように(鉛直方向に対する傾斜角度を小さくするように)傾斜して、配置されている。ガイド溝32の上端32a側には、支持部材本体25の元部25a側に配置されるガイドピン26に対応させて構成されて、支持部材本体25のスライド完了後の復帰を規制するストッパ機構としての係止孔部33が、形成されている(
図6,7参照)。この係止孔部33は、ガイド溝32の上端32aに連通されるとともに、ガイド溝32の上端32aから前方に向かって突出するように、形成されている。この係止孔部33は、ガイドピン26を挿入可能として、周縁でガイドピン26を係止させる構成とされるもので、
図7に示すように、ガイドピン26の戻りを防止するように、ガイド溝32との交差部位となる前下縁33a側を僅かに後上方に突出させるように、構成されている。
【0026】
支持部材本体25は、展開膨張するエアバッグ16を駆動源として、エアバッグ16の展開膨張時に前方に突出して、バッグ本体17の衝撃力作用側(左側LW)を支持可能な構成とされるもので、長尺の略平板状として、板金素材から、形成されている。支持部材本体25は、元部25a側を、ブラケット部29の左側壁31に、取り付けられている。詳細には、支持部材本体25は、元部25a側において右側に突出するように形成される丸棒状のガイドピン26を、ガイド溝32に挿通させ、ガイド溝32からの抜けを防止されるようにして、左側壁31の外表面側に回動自在に取り付けられている。そして、支持部材本体25は、待機位置P1においては、
図6のAに示すように、ガイドピン26をガイド溝32の下端32b周縁に当接させつつ、長手方向をガイド溝32に略沿わせるようにして、背もたれ部2内に収納されている。そして、エアバッグ16の展開膨張時には、支持部材本体25は、先端25bを前方に向けるように回転しつつ、ガイドピン26をガイド溝32に対してスライドさせるようにして、元部25a側を上昇移動させつつ、前方に突出して、エアバッグ16の衝撃力作用側(左側LW)を支持する支持位置P2に配置される構成である(
図6のB参照)。実施形態では、支持位置P2に配置される支持部材本体25は、テザー21から直線的に連なるように配置されることとなる。また、支持部材本体25には、
図6に示すように、元部25aよりも先端側となる位置であって、実施形態の場合、先端25b近傍となる位置に、テザー21の先端21b側を挿通させて連結させる連結孔27を、備えている。
【0027】
この支持部材本体25は、エアバッグ16の展開膨張時、バッグ本体17の前方への突出に伴うテザー21の前上方への移動により、待機位置P1から、先端を前上方へ引っ張られるような態様となって、ガイドピン26を回転中心として先端25bを前方に向けるように回転しつつ、背もたれ部2から前方に突出することとなる。また、実施形態では、支持部材本体25は、前方への回転と同時に、ガイドピン26をガイド溝32に対してスライドさせつつ、上昇移動することとなる。ガイドピン26が、ガイド溝32の上端32aに到達し、ガイド溝32の上端32aに形成される係止孔部33に挿入されて、係止孔部33の周縁に係止されれば、支持部材本体25の前上方への移動が完了して、支持部材本体25が支持位置P2に配置されることとなる(
図6のB参照)。そして、この支持位置P2に配置された状態で、
図8,9に示すように、支持部材本体25が、膨張を完了させたバッグ本体17の衝撃力作用側(左側LW)を支持することとなる。実施形態の場合、支持部材本体25は、前上方への突出完了時(支持位置P2への配置時)に、
図8に示すように、テザー21から直線的に連なるように、水平方向に略沿って配置されている。詳細には、支持部材本体25は、突出完了時に、水平方向に略沿って、先端25bを僅かに上方に向けるように、テザー21に沿って、前後方向に対してわずかに傾斜して配置されるとともに、先端25bを運転者DPの肩部SPの近傍に位置させて、肩部SPの衝撃力作用側(左側LW)を支持可能に、構成されている(
図8参照)。
【0028】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、車両Vの左側LWから図示しない衝突物が衝突した側面衝突時に、エアバッグ作動回路からの作動信号を受けて、インフレーター10が作動されることとなり、バッグ本体17が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張して、背もたれ部2から前方に突出し、また、このバッグ本体17の前方への突出に伴って、待機位置P1において背もたれ部2内に収納されている支持部材本体25が、先端25bを前方に向けるように回転しつつ、ブラケット部29に対して上昇移動して、前上方に向かって突出されることとなる。そして、エアバッグ16が、
図9に示すように、運転者DPの左側LW(衝撃力作用側)を覆うように膨張を完了させることとなり、支持部材本体25が、
図8に示すように、膨張を完了させたエアバッグ16の左側LW(衝撃力作用側)となる支持位置P2に、配置されることとなる。
【0029】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、支持部材本体25は、エアバッグ16の膨張完了時に、元部25a側をブラケット部29に設けられるガイド溝32(ガイド)に沿ってスライドしつつ、先端25b側を背もたれ部から突出させるように回動された状態で、エアバッグ16の衝撃力作用側(左側LW)を支持する構成である。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、支持部材本体25は、全体をスライド移動させることにより、移動完了時に、背もたれ部内への収納時(待機位置P1への配置時)における元部25a側の位置(ガイド溝32の下端32b側)から上方に離隔した位置に、配置されることから、長さ寸法を長くしなくとも、支持部材本体25を、回転軌跡を越えて、大きな荷重の作用するエリア(実施形態の場合、離隔側乗員としての運転者DPの肩部SPの側方)に配置させることができ、大きな荷重の作用するエリアを支持することができる。そのため、離隔側乗員としての運転者DPの衝撃力作用側(左側LW)を、的確に支持することができ、離隔側乗員としての運転者DPを、エアバッグ16を介して、的確に保護することができる。
【0030】
なお、エアバッグ16が衝撃力作用側(左側LW)に向かって移動する運転者DPを受け止めると、エアバッグ16を支持している支持部材本体25は、先端25bを左側に向けるように移動しようとするが、支持部材本体25の元部25a側の縁部25abが、ガイドピン26を超えて延びる領域を有しており(
図6のB参照)、この領域を、左側壁31に当接支持させて、さらなる左方への移動を抑制できることから、支持部材本体25によって、運転者DPを的確に支持させることができる。
【0031】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、支持部材24をコンパクトに収納させることができて、かつ、作動時に、大きな荷重の作用するエリアに配置させることができる。
【0032】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガイド溝32に、支持部材本体25の元部25aに配置されるガイドピン26に対応させて、支持部材本体25のスライド完了後の復帰を規制するストッパ機構としての係止孔部33を、配置させていることから、支持部材本体25が、突出完了後に、作動前の状態に戻るように移動することを防止できる。なお、このような点を考慮しなければ、ガイドにストッパ機構を配設させない構成としてもよい。
【0033】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、支持部材本体25は、突出時に、元部25a側を上方に向かってスライド移動させて、スライド移動完了後(支持位置P2への配置時)に、水平方向に略沿って配置されて、運転者DPの肩部SP近傍の衝撃力作用側(左側LW)を支持する構成である。そのため、大きな荷重の作用する運転者DP(離隔側乗員)の肩部SP付近を、エアバッグ16を介在させて、水平方向に略沿って配置される支持部材本体25によって、前後に広いエリアで、的確に拘束することができ、運転者DPが衝撃力作用側(左側LW)に向かって移動することを、的確に抑制することができる。
【0034】
また、支持部材40として、
図10に示す構成のものを使用してもよい。支持部材40は、支持部材本体25Aと、ブラケット部29Aと、突出完了時の支持部材本体25Aとブラケット部29Aとを連結するように配置される補助リンク片41と、を備える構成である。補助リンク片41は、元部41a側を、回動ピン42を用いて、ブラケット部29Aの左側壁31Aに対して回動自在に連結され、先端41b側を、回動ピン43を用いて、支持部材本体25Aに対して回動自在に連結される構成である。支持部材本体25Aとブラケット部29Aとは、補助リンク片41を連結させる以外は、上述の支持部材本体25及びブラケット部29と略同一の構成であり、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。
【0035】
補助リンク片41は、支持部材本体25Aと同様に、長尺の略平板状として、板金素材から、形成されるもので、元部41a側を、ブラケット部29Aの左側壁31Aにおいて、ガイド溝32Aの下端32b側(元部側)の前方となる位置に、連結させている。また、補助リンク片41の先端41b側は、支持部材本体25Aの先端25b近傍であって、バッグ本体17から延びるテザー21を連結させる連結孔27Aの元部側に隣接した位置に、連結されている。そして、このような構成の支持部材40は、待機位置P3においては、
図10のAに示すように、ガイドピン26Aをガイド溝32Aの下端32b周縁に当接させるようにして、支持部材本体25Aと補助リンク片41とを、それぞれ、長手方向をガイド溝32Aに略沿わせるようにして、運転席DSの背もたれ部2内に収納されている。
【0036】
そして、この支持部材40では、エアバッグ16の展開膨張時、バッグ本体17の前方への突出に伴うテザー21の前上方への移動により、支持部材本体25Aが、待機位置P3から、先端25bを前上方へ引っ張られるような態様となって、ガイドピン26Aを回転中心として先端25bを前方に向けるように回転しつつ、背もたれ部2から前方に突出することとなる。また、実施形態では、支持部材本体25Aは、前方への回転と同時に、ガイドピン26Aをガイド溝32Aに対してスライドさせつつ、上昇移動することとなる。そして、この支持部材本体25Aの移動に伴って、補助リンク片41も背もたれ部2から前方に突出することとなり、ガイドピン26Aが、ガイド溝32Aの上端32aに到達し、係止孔部33Aに挿入されて、係止孔部33Aの周縁に係止されれば、支持部材本体25A及び補助リンク片41の前上方への移動が完了して、支持部材本体25Aと補助リンク片41とが支持位置P4に配置されることとなる。このような構成の支持部材40においても、支持部材本体25Aは、前上方への突出完了時(支持位置P4への配置時)に、テザー21から直線的に連なるように、水平方向に略沿って配置されることとなり(
図11参照)、補助リンク片41は、支持部材本体25Aの先端25b側とガイド溝32Aの下端32b(元部)側とを直線的に結ぶように、前上がりに傾斜して配置されている。
【0037】
上記のような構成の支持部材40を使用すれば、突出完了時(支持位置P4への配置時)に、支持部材本体25Aと補助リンク片41とが、交差し、左右の側方から見て略三角形状に配置されることから、支持部材本体25Aと補助リンク片41とによって囲まれる略三角形状の領域で、膨張完了時のエアバッグ16の衝撃力作用側(左側LW)を支持させることができる。そのため、補助リンク片を備えない場合と比較して、膨張完了時のエアバッグ16の衝撃力作用側(左側LW)を、広い領域で支持させることができ、離隔側乗員としての運転者DPを、エアバッグ16を介して、一層、的確に保護することができる。
【0038】
なお、上述した支持部材40では、エアバッグ16から延びるテザー21の先端21b側を、支持部材本体25A自体の先端25b側に連結させているが、テザーの先端側は、支持部材本体の先端側であれば、補助リンク片の先端となる位置に連結させても同様の作用が得られることから、補助リンク片の先端側に連結させる構成としてもよい。また、補助リンク片41と支持部材本体25Aとは、相互の先端41b,25b近傍(テザー21を連結させる連結孔27Aに隣接した位置)で、相互に連結されているが、補助リンク片と支持部材本体とに、それぞれ、相互の連結部位からさらに延びるような延設部24t(
図11の二点鎖線参照)を、配設させるように、構成してもよい。このような構成とすれば、支持性能は向上するが、支持部材本体及び補助リンク片の長さ寸法が大きくなり、背もたれ部内への収納性能が良好でなくなることから、背もたれ部内への収納性能を低下させない範囲で、延設部を設ける構成とすることが好ましい。
【0039】
また、実施形態では、支持部材24,40として、支持部材本体25,25Aを上方にスライド移動させる構成のものを使用しているが、支持部材本体のスライド方向は上方に限られるものではない。例えば、
図12に示すエアバッグ装置のように、エアバッグ45として、離隔側乗員としての運転者DPの胸部BPを保護するように背もたれ部2から前上方に向かって突出する胸部保護部46に加えて、運転者DPの腰部WPを保護するように背もたれ部2から前下方に向かって突出する腰部保護部47を、有する構成のものを使用してもよい。そして、このようなエアバッグ45を使用する場合、支持部材本体25U,25Dを、上下に2つ配設させ、上側の支持部材本体25Uを、胸部保護部46の左側を支持可能に上方にスライドさせる構成とし、下側の支持部材本体25Dを、腰部保護部47の左側を支持可能に下方にスライドさせるように構成してもよい。
【0040】
なお、実施形態では、助手席の側方(左側)からの側面衝突時に、離隔側座席としての運転席に着座した運転者を、離隔側乗員として保護するエアバッグ装置を例に採り説明したが、勿論、運転席の側方(右側)からの側面衝突時に、離隔側座席としての助手席に着座した乗員を、離隔側乗員として保護する装置に、本発明を適用してもよい。さらには、本発明のエアバッグ装置は、車両の前席に着座した乗員を保護する装置に限られるものではなく、車両の後席に着座した乗員を保護するように構成してもよく、また、前後方向に沿って並設される座席を備える車両にも、適用可能である。