特許第5915588号(P5915588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5915588
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】コイル及びコイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20160422BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20160422BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20160422BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20160422BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   H01F27/28 L
   H01F17/00 F
   H01F17/04 A
   H01F41/04 C
   H01F5/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-100451(P2013-100451)
(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公開番号】特開2014-220466(P2014-220466A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大野 博史
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−142403(JP,A)
【文献】 特表2012−524388(JP,A)
【文献】 特開平07−245217(JP,A)
【文献】 カナダ国特許出願公開第02758831(CA,A1)
【文献】 国際公開第2010/118762(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02419910(EP,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102460609(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0044035(US,A1)
【文献】 実開昭60−035516(JP,U)
【文献】 特開平06−276706(JP,A)
【文献】 特開昭58−192312(JP,A)
【文献】 特開2001−015367(JP,A)
【文献】 特開平11−297523(JP,A)
【文献】 特開昭58−186918(JP,A)
【文献】 実開昭56−119611(JP,U)
【文献】 特開2000−306749(JP,A)
【文献】 実開平01−067717(JP,U)
【文献】 特開昭53−040860(JP,A)
【文献】 特開平02−198113(JP,A)
【文献】 特開2002−075737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28
H01F 5/00
H01F 17/00
H01F 17/04
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に導線が螺旋状に巻回されたコイルであって、
帯板状をなし、前記軸方向に螺旋状に巻回された絶縁性板材を備え、前記絶縁性板材の少なくとも一方の面に前記導線としての導電性部材を付着させてなり、
前記絶縁性板材における前記導電性部材の付着面に前記絶縁性板材の延設方向に沿って延びる突起が形成され、前記突起の先端が前記絶縁性板材における当該突起が形成されている面とは反対側に当接することにより、内径側の導線としての第1導電性部材および外径側の導線としての第2導電性部材が区画形成されていることを特徴とするコイル。
【請求項2】
前記絶縁性板材および前記導線としての導電性部材における端部において締結用貫通孔を形成したことを特徴とする請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
軸方向に導線が螺旋状に巻回されたコイルの製造方法であって、
帯板状の絶縁性板材を螺旋状に巻回す成形工程と、
前記成形工程の後に、前記絶縁性板材の少なくとも一方の面に前記導線としてのめっき膜を付着させる付着工程と
を有することを特徴とするコイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル及びコイルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2等において、1本の平角線のエッジワイズ巻きによりコイルを形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3737461号公報
【特許文献2】特開2007−305803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、銅板よりなる線材をエッジワイズ巻きするときにおいては、銅板よりなる線材に絶縁被膜を設けたものを曲げる、もしくは、銅板よりなる線材を曲げた後に絶縁被膜を被覆している。そのため、銅板よりなる線材を巻く際において、図7に示すように、曲げることにより銅板よりなる線材100の内側が太ったり絶縁被膜が破れてしまったりすることがある。より詳しくは、銅板よりなる線材を薄くすると(W寸法を小さくすると)、断面積が小さくなるので断面積を稼ぐためにL寸法を大きくすることになる。この場合、曲げ加工の際の半径が大きくなり、外径側では引っ張り応力が加わる。その結果、外径側では絶縁被膜が破れる虞がある。また、内径側では圧縮応力が加わり、内径側において内径側端面には金型が位置して移動を規制していることにより銅板が厚さ方向に広がり(厚肉となり)内径側が太ることになる。
【0005】
そのため、銅板よりなる線材100を薄く幅広にすることは限度があった。また、銅板よりなる線材100を重なるようにして巻くときに、図8(a)に示すように銅板よりなる線材100の巻き太りにより隙間(空隙)Gaが発生してしまう。つまり、図8(b)に示すように銅板よりなる線材100を巻いて重ねた状態において巻き太りがまったく無ければ隙間Gaは発生しないが、図7を用いて説明したように巻き太りが発生すると軸方向の長さが同じターン数であっても不要に大きくなってしまっていた。
【0006】
本発明の目的は、軸方向の長さを小さくすることができるコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、軸方向に導線が螺旋状に巻回されたコイルであって、帯板状をなし、前記軸方向に螺旋状に巻回された絶縁性板材を備え、前記絶縁性板材の少なくとも一方の面に前記導線としての導電性部材を付着させてなることを要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、帯板状をなす絶縁性板材が軸方向に螺旋状に巻回され、この絶縁性板材の少なくとも一方の面に導線としての導電性部材を付着させているので、金属の板よりなる線材を曲げてコイルを構成する場合に比べて、軸方向の長さを同じターン数であっても小さくすることができる。
【0010】
また、請求項1に記載の発明は、前記絶縁性板材における前記導電性部材の付着面に前記絶縁性板材の延設方向に沿って延びる突起が形成され、前記突起の先端が前記絶縁性板材における当該突起が形成されている面とは反対側に当接することにより、内径側の導線としての第1導電性部材および外径側の導線としての第2導電性部材が区画形成されていると、ターン数を大きくすることができる。
【0011】
請求項2に記載のように、請求項1に記載のコイルにおいて、前記絶縁性板材および前記導線としての導電性部材における端部において締結用貫通孔を形成すると、形成した締結用貫通孔を用いて、端部において外部端子との接続を容易に行うことができる。
請求項3に記載の発明では、軸方向に導線が螺旋状に巻回されたコイルの製造方法であって、帯板状の絶縁性板材を螺旋状に巻回す成形工程と、前記成形工程の後に、前記絶縁性板材の少なくとも一方の面に前記導線としてのめっき膜を付着させる付着工程とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軸方向の長さを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は実施形態におけるコア付きコイルを模式的に示す斜視図、(b)はコア付きコイルを模式的に示す正面図。
図2】(a)はコイルを模式的に示す斜視図、(b)はコイルを模式的に示す正面図、(c)は(b)のA−A線での断面図。
図3】(a)は絶縁性板材を模式的に示す斜視図、(b)は絶縁性板材を模式的に示す正面図、(c)は(b)のA−A線での断面図、(d)はマスク領域を説明するための絶縁性板材の模式斜視図。
図4】(a)は別例の絶縁性板材を模式的に示す斜視図、(b)は絶縁性板材を模式的に示す正面図、(c)は(b)のA−A線での断面図。
図5】(a)は別例のコイルを模式的に示す正面図、(b)は(a)のA−A線での断面図。
図6】(a)は別例のコイルを模式的に示す一部正面図、(b)は(a)のA−A線での断面図。
図7】課題を説明するためのコイルを模式的に示す一部斜視図。
図8】(a),(b)は課題を説明するためのコイルを模式的に示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、コイル部品10は、コイル20とコア50よりなり、コア付きコイルとなっている。コア50としてE−E型コアを用いており、E−E型コアはE型コア51とE型コア52により構成されている。
【0015】
各E型コア51,52は、長方形の板状をなし水平方向に延設された本体部55と、本体部55の一方の面の中央部から突出する中央磁脚56と、本体部55の一方の面の端部から突設する両側磁脚57,58とからなる。中央磁脚56および両側磁脚57,58はその断面が長方形をなしている。
【0016】
各E型コア51,52における中央磁脚56の先端面同士が突き合わされる(両端面同士が対向配置される)。また、各E型コア51,52における両側磁脚57,58の先端面同士が突き合わされる(両端面同士が対向配置される)。E型コア51,52の中央磁脚56における周囲にコイル20が四角環状に巻回されて配置されている。
【0017】
図2に示すように、コイル20は、軸方向に導線(40)が螺旋状に巻回されたコイルである。導線(40)は銅よりなる。コイル20は絶縁性板材30を備えており、絶縁性板材30は、帯板状をなし、軸方向に螺旋状に巻回されている。
【0018】
図3(a),(b),(c)に示すように、絶縁性板材30は、断面長方形の板を軸方向に延びる状態で螺旋状に巻回したものである。絶縁性板材30は樹脂よりなり、押し出し成形により製作したものである。詳しくは、樹脂を板状に押し出しつつ軸方向に螺旋状に巻回したものである。この帯板状の絶縁性板材30の厚さは0.1mm程度である。
【0019】
図3に示す絶縁性板材30の両面(図面においては主表面30aおよびその裏面30bの両方の面)に対し、図2に示すように、導線としての導電性部材40が付着されている。導電性部材40は銅のめっき膜であり、導電性部材40の厚さは0.1mm程度である。巻回した絶縁性板材30において重なり部分における一方の面(主表面30a)に付着した導電性部材40と他方の面(裏面30b)に付着した導電性部材40とは接触して繋がっている。また、図3(d)に網点で示したように絶縁性板材30における両面(主表面30a、裏面30b)に対し側面については導電性部材40が付着されていない。
【0020】
なお、巻回した絶縁性板材30において重なり部分における一方の面(主表面30a)に付着した導電性部材40と他方の面(裏面30b)に付着した導電性部材40とは離間していてもよい。
【0021】
図3(a),(b),(c)に示すように、1軸上に四角環状に巻回した絶縁性板材30において一端が上方(外径側)に突出しており、接続端子部31となっている。同様に、絶縁性板材30において他端が上方(外径側)に突出しており、接続端子部32となっている。
【0022】
図2に示すように、絶縁性板材30の一方の接続端子部31にも導線としての導電性部材40が付着されている。同様に、絶縁性板材30の他方の接続端子部32にも導線としての導電性部材40が付着されている。これにより、コイル20において線材の一端が上方(外径側)に突出しており、接続端子(25)として用いられる。同様に、コイルの他端が上方(外径側)に突出しており、接続端子(26)として用いられる。
【0023】
次に、コイル部品10の製造方法について説明する。
まず、コイル20の成形方法について述べる。
図3(a),(b),(c)に示すように、樹脂製の絶縁性板材30を軸上に四角環状に巻回したものを成形する。このように、樹脂の絶縁物で先にコイルの形状を作る。そして、そこに導電性物質(導電性部材)を付着させて、図2に示す導電性のコイル20を作る。付着方法には、めっきを用いる。めっきの場合、絶縁性板材30をめっき液に漬けると良い。
【0024】
この際、図3(d)において網点で示した領域、即ち、絶縁性板材30の内側の側面および外側の側面はマスクされる。即ち、絶縁性板材30の内側の側面および外側の側面をマスキングテープ等によりマスクして導電性物質(導電性部材)が付着しないようにする。あるいは、図3(d)において網点で示した領域に着いた銅めっき膜を取り除くようにしてもよい。その後、必要に応じて絶縁被膜で被覆する。
【0025】
図7,8を用いて説明したように従来のコイルでは銅板よりなる線材を薄くするとともにL寸法を大きくすると絶縁被膜が破れる虞があったり、銅板の内径側が太ることにより銅板を薄くして幅広にすることは限度があったり、巻き太りにより軸方向の長さが不要に大きくなってしまっていた。
【0026】
これに対し本実施形態では、軸方向に螺旋状に巻回された絶縁性板材30に導線としての導電性部材40を付着させることにより、導通部の薄型幅広化、曲げ太り軽減を図ることができる。また、製作コストを低減することができる(金属製線材の成形よりも樹脂製絶縁性部材の成形のほうが容易である)。さらに、コイルの形状についての自由度がアップする。
【0027】
引き続き、このようして製造したコイル20に対し、図1に示すように、コイル20にE型コア51,52の中央磁脚56を挿入してE型コア51,52における中央磁脚56および両側磁脚57,58の先端面同士を接近して対向配置させる。その結果、図1に示すコイル部品10が製造される。
【0028】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)軸方向に導線が螺旋状に巻回されたコイル20の構成として、帯板状をなし、軸方向に螺旋状に巻回された絶縁性板材30を備え、絶縁性板材30の両面(主表面30aおよび裏面30bの両面)に導線としての導電性部材40を付着させた。よって、金属の板よりなる線材を曲げてコイルを構成する場合に比べて、軸方向の長さを同じターン数であっても小さくすることができる。
【0029】
(2)導電性部材40は、めっき膜であるので、製造が容易となる。
なお、本実施形態ではコイルは線材を軸方向に螺旋状に巻回したスパイラル形状であったが、線材を同一平面に渦巻き状に形成した、いわゆる平面コイルであると、コイルが径方向に巻回される。この平面コイルにおいては、ターン数(巻数)が多いと径方向に大型化するのでターン数(巻数)が限られるとともにターン数(巻数)を多くするためには積層せざるをえない。しかし、積層すると製造が複雑になる。また、コア形状も限られることになる。これに対し本実施形態では、大型化を招くことなくターン数(巻数)を多くすることができるとともに容易に製造することができ、さらに、コアの形状の自由度も高くできる。
【0030】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
図4に示すように、絶縁性板材30における導電性部材の付着面に絶縁性板材30の延設方向に沿って延びる突起35を形成し、図5に示すように当該突起35により、内径側の導線としての第1導電性部材45および外径側の導線としての第2導電性部材46を区画形成してもよい。そして、外部において、内径側の導線としての第1導電性部材45の一端と外径側の導線としての第2導電性部材46の一端とを電気的に接続する。これにより、ターン数(巻数)を大きくすることができる。具体的にはターン数を2倍にすることができる。
【0031】
このようにして、絶縁性板材30に突起35を設けることで容易にターン数を増やすことができる。
図6に示すように、絶縁性板材30は先端部が引出し部となるが、当該部位に貫通孔37を形成し、この部位の表面に導電性部材40を付着させる。即ち、絶縁性板材および導線としての導電性部材における端部25,26において締結用貫通孔90を形成してもよい。締結用貫通孔90は、ねじが通る貫通孔である。この場合、形成した締結用貫通孔90を用いて、端部において外部端子との接続を容易に行うことができる。つまり、引出部にて絶縁性板材30に貫通孔37を設けることで締結用貫通孔90を設けて締結部位を確保することが可能となる。
【0032】
・絶縁性板材30の両面(主表面30aおよび裏面30bの両方の面)に導線としての導電性部材40を付着したが、一方の面のみ、即ち、絶縁性板材30の主表面30aのみに付着させても、あるいは、裏面30bのみに付着させてもよい。要は、絶縁性板材の少なくとも一方の面に導線としての導電性部材を付着させればよい。
【0033】
・導電性部材40は、銅以外にも、例えばアルミ等であってもよい。
・導電性部材40は、銅めっき膜ではなく、他にも例えばニッケルめっき膜、アルミめっき膜等でもよい。
【0034】
・導電性部材40は、めっき膜以外にも、金属箔、例えば銅箔であってもよい。具体的には、例えば絶縁性板材30を押し出しながらその表面に金属箔を張り付ければよい。
・樹脂性の絶縁性板材30を用いたが、これに代わりセラミック製の絶縁性板材を用いてもよい。
【0035】
図1ではコアを用いていたが、コアはなくてもよい。
・トランスに適用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
20…コイル、25…端部、26…端部、30…絶縁性板材、40…導電性部材、45…第1導電性部材、46…第2導電性部材、90…締結用貫通孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8