特許第5915654号(P5915654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5915654
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】円筒形電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20160422BHJP
   H01M 2/14 20060101ALI20160422BHJP
   H01M 2/18 20060101ALI20160422BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20160422BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20160422BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M2/14
   H01M2/18 Z
   H01M6/02 Z
   H01M4/02 Z
   H01M2/26 A
【請求項の数】39
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2013-524758(P2013-524758)
(86)(22)【出願日】2012年7月20日
(86)【国際出願番号】JP2012068521
(87)【国際公開番号】WO2013012084
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2014年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2011-158801(P2011-158801)
(32)【優先日】2011年7月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-172697(P2011-172697)
(32)【優先日】2011年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-172702(P2011-172702)
(32)【優先日】2011年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-173587(P2011-173587)
(32)【優先日】2011年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-173588(P2011-173588)
(32)【優先日】2011年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】金本 学
(72)【発明者】
【氏名】児玉 充浩
(72)【発明者】
【氏名】掛谷 忠司
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−327066(JP,A)
【文献】 実開昭61−202876(JP,U)
【文献】 特開2008−084851(JP,A)
【文献】 特開2003−151616(JP,A)
【文献】 特開2000−090903(JP,A)
【文献】 特開2008−108457(JP,A)
【文献】 米国特許第6117583(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00−10/39
H01M 2/14− 2/18
H01M 4/00− 4/84
H01M 2/26
H01M 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなす電池ケースと、
前記電池ケース内に配置され、正極、負極及びセパレータから構成されており、互いに対向する一対の外側面が平面状をなす電極群と、
前記電池ケースの内側周面と前記電極群の平面状をなす外側面との間に設けられたスペーサとを備える円筒形電池。
【請求項2】
請求項1記載の円筒形電池が、二次電池であり、
前記正極又は負極が、集電基材と活物質とを備える円筒形電池。
【請求項3】
前記スペーサが前記電極群を押圧するものである請求項1記載の円筒形電池。
【請求項4】
前記電極群が、正極板及び負極板をセパレータを介して積層した形状をなすものであり、
前記電極群が、その積層方向が前記電池ケースの中心軸方向と直交するように前記電池ケースに収容されており、
前記スペーサが、前記電極群をその積層方向から挟むように2つ以上設けられている請求項1記載の円筒形電池。
【請求項5】
前記スペーサが、前記電極群の積層方向最外側の面の全体に接触する請求項4記載の円筒形電池。
【請求項6】
前記スペーサが、前記電極群をその積層方向から挟むように2つ設けられており、
それら2つのスペーサと前記電池ケースとが、前記電池ケースと中心軸方向に沿った少なくとも4辺で接触する請求項4記載の円筒形電池。
【請求項7】
前記スペーサが、前記電極群をその積層方向から挟むように2つ設けられており、
それら2つのスペーサと前記電池ケースとが、前記電池ケースと中心軸方向に沿った少なくとも6辺で接触する請求項4記載の円筒形電池。
【請求項8】
前記電池ケースの内側周面に接触する前記スペーサの接触部が、前記電池ケースの内側周面の曲面に沿った曲面を有する請求項1記載の円筒形電池。
【請求項9】
前記スペーサが、前記電極群を前記電池ケースに溶接するための溶接棒が挿入される上下に連通した空間を形成するものである請求項1記載の円筒形電池。
【請求項10】
前記スペーサが、前記電池ケースの内側周面と前記一対の外側面それぞれとの間に設けられており、
前記各スペーサが、前記電極群に接触する接触面を一方面に有する平板状の電極接触部と、当該電極接触部の他方面から延出して前記電池ケースの内側周面に接触するケース接触部とを有する請求項1記載の円筒形電池。
【請求項11】
前記電極群に接触しない状態における前記電極接触部の接触面が、上面視において当該接触面の幅方向両端部がその幅方向中央部よりも一方面側前方に位置するように凹状に湾曲又は屈曲している請求項10記載の円筒形電池。
【請求項12】
前記スペーサが、前記電極接触部の幅方向両端部がその幅方向中央部よりも一方面側前方となるように反った形状とされることにより、前記接触面が凹状に湾曲又は屈曲している請求項10記載の円筒形電池。
【請求項13】
前記電池ケース内に前記電極群及び前記スペーサを配置した状態において、前記スペーサの電極接触部における他方面の幅方向両端部が、前記電池ケースの内側周面に接触している請求項10記載の円筒形電池。
【請求項14】
前記スペーサが前記電池ケースに配置される前の状態において、前記電極接触部の幅方向両端部がその幅方向中央部よりも他方面側に位置するように反った形状であり、
前記電池ケース内に前記電極群及び前記スペーサを配置した状態において、前記スペーサの電極接触部における他方面の幅方向両端部が、前記電池ケースの内側周面に接触する請求項10記載の円筒形電池。
【請求項15】
前記電極接触部における他方面の幅方向両端部に、前記電池ケースの内側周面に接触して前記接触面の幅方向両端部を前記電極群の側面に押圧させる押圧補強構造が形成されている請求項10記載の円筒形電池。
【請求項16】
前記ケース接触部が、前記電極接触部の他方面において中心軸方向に沿って並列に少なくとも2つ形成されている請求項10記載の円筒形電池。
【請求項17】
前記スペーサが、前記電極群を前記電池ケースの中心位置から偏心した位置に固定するものである請求項1記載の円筒形電池。
【請求項18】
横倒しにした状態において、前記電極群の重心位置が前記電池ケースの中心位置よりも鉛直下側に位置するものである請求項17記載の円筒形電池。
【請求項19】
前記スペーサが、前記電極群を挟むように設けられた一対のスペーサであり、
前記一対のスペーサが、前記電池ケースの中心軸方向から見て前記電極群に対して非対称形状である請求項17記載の円筒形電池。
【請求項20】
前記各スペーサの前記中心軸方向に直交する断面積が互いに異なる請求項19記載の円筒形電池。
【請求項21】
前記電極群の一方の電極の集電端子が前記電池ケースの底面に溶接されるものであり、
前記一対のスペーサのうち、前記中心軸方向に直交する断面積が大きいスペーサに前記集電端子を前記電池ケースに溶接するための溶接棒が挿入される溶接孔が形成されている請求項19記載の円筒形電池。
【請求項22】
前記各スペーサが、前記電極群の側面に接触する接触面を一方面に有する平板状の電極接触部と、前記電極接触部の他方面から延出して前記電池ケースの内側周面に接触するケース接触部とを有し、
前記各スペーサにおけるケース接触部の長さが互いに異なる請求項19記載の円筒形電池。
【請求項23】
前記正極の集電端子又は前記負極の集電端子が、前記スペーサにおける前記電池ケースの底面側とは反対側の上部において、前記電池ケースの内側周面に延びている請求項1記載の円筒形電池。
【請求項24】
前記正極の集電端子又は前記負極の集電端子が、前記スペーサの上部において前記電池ケースの内側周面に溶接されている請求項23記載の円筒形電池。
【請求項25】
前記正極の集電端子又は前記負極の集電端子が、前記スペーサの上面に沿って前記電池ケースの内側周面に延びている請求項23記載の円筒形電池。
【請求項26】
前記スペーサの上面に前記正極の集電端子又は前記負極の集電端子を前記電池ケースの内側周面にガイド溝が形成されている請求項25記載の円筒形電池。
【請求項27】
前記スペーサの上部において、一端が前記電極群の側面側に開口し、他端が前記電池ケースの内側周面側に開口する貫通孔が形成されており、
前記正極の集電端子又は前記負極の集電端子が、前記貫通孔を通って前記電池ケースに延びている請求項25記載の円筒形電池。
【請求項28】
前記スペーサが、前記電池ケースの内側周面と前記一対の外側面それぞれとの間に設けられた対をなすものであり、
前記対をなすスペーサの端部が互いに連続しており、折り曲げられることによって前記電極群を挟むように構成されている請求項1記載の円筒形電池。
【請求項29】
前記各スペーサが、前記電極群に接触する接触面を一方面に有する平板状の電極接触部と、前記電極接触部の他方面から延出して前記電池ケースの内側周面に接触するケース接触部とを有し、
前記電極接触部における前記電池ケースの中心軸方向に沿った方向の端部が連続している請求項28記載の円筒形電池。
【請求項30】
前記電池ケースの底部側において、前記スペーサと前記電池ケースの内側周面との間にすき間がある請求項1記載の円筒形電池。
【請求項31】
前記スペーサの上部に、前記電極群の上面に対向する突起片が設けられている請求項1記載の円筒形電池。
【請求項32】
前記スペーサの上部に、前記電極群の上角部を囲む囲み壁部が設けられている請求項1記載の円筒形電池。
【請求項33】
前記電極群が、四角柱状をなす正極と、当該正極の少なくとも4つの側周面にセパレータを介して対向して設けられた平板状をなす負極とを有する請求項1記載の円筒形電池。
【請求項34】
前記負極が、Uの字状に折り曲げられて形成された2枚の負極板から構成されており、一方の負極板が前記正極の一方の対をなす側周面及び底面に対向して設けられ、他方の負極板が前記正極の他方の対をなす側周面及び底面に対向して設けられている請求項33記載の円筒形電池。
【請求項35】
前記正極又は前記負極の一方の集電端子が、前記電池ケースの内面に溶接されることなく接触し、前記スペーサにより前記内面に押圧されている請求項1記載の円筒形電池。
【請求項36】
前記集電端子が、前記電池ケースの内側周面に接触している請求項35記載の円筒形電池。
【請求項37】
前記電池ケース内に配置されるとともに前記電極群に接触して設けられ、電解液を保持する保液部材を備え、
前記スペーサが、前記電極群及び前記保液部材を前記電池ケースに固定する請求項1記載の円筒形電池。
【請求項38】
前記保液部材が、前記スペーサ及び前記電極群との間に挟まれて固定される請求項37記載の円筒形電池。
【請求項39】
前記スペーサが、前記電極群をその積層方向から挟むように設けられており、
前記正極又は負極が、集電端子を有する1つの第1極板要素と、集電端子を有さない1つ以上の第2極板要素とを有し、それら極板要素を接触させて積層して構成される請求項1記載の円筒形電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の円筒形電池としては、特許文献1に示すように、円筒状をなす電池ケースに、帯状の正極板及び負極板を帯状のセパレータを介して渦巻状に巻回されてなる円柱状の電極群を収容したものがある。
【0003】
しかしながら、帯状の正極板、負極板及びセパレータを渦巻き状に巻回するものでは、その巻き工程において正極板及び負極板の巻きずれが生じる。そうすると、円筒形電池において所望の電池容量を得ることができない、また、内部短絡を引き起こしてしまう等の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−185767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、電極群の巻き工程を不要にして電極群の巻きずれを考慮する必要の無い円筒形電池を提供するとともに、当該円筒形電池において、極板の活物質の脱落を抑制して充放電性能の劣化を防ぐことをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る円筒形電池は、円筒状をなす電池ケースと、前記電池ケース内に配置され、正極、負極及びセパレータから構成されており、互いに対向する一対の外側面が平面状をなす電極群と、前記電極群を固定するためのスペーサとを備え、前記スペーサが、前記電池ケースの内側周面と前記電極群の平面状をなす外側面との間に設けられていることを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、正極、負極及びセパレータからなり互いに対向する一対の外側面が平面状をなす電極群を電池ケース内に収容することから、電極群の巻きずれ及び巻きずれに付随する種々の問題の無い電池を提供することができる。また、円筒状の電池ケースであることから、内部圧力の上昇に対して強度的に強くすることができる。また、円筒形の電池ケースに対して例えば概略直方体形状等の互いに対向する一対の外側面が平面状をなす電極群を配置することから、電池ケース内の空間を大きくすることができ、電池内圧の上昇を防ぐことができるだけでなく、円筒形電池内の電解液量を多くすることもできる。
さらに、円筒形の電池ケースに互いに対向する一対の外側面が平面状をなす電極群を収容する場合には、電池ケースに対して電極群ががたついてしまい極板の活物質が脱落して充放電性能が劣化してしまう恐れがあるが、スペーサを電池ケースの内側周面と電極群の平面状をなす外側面との間に設けることによって、電池ケースに対する電極群のがたつきを防止することができ、極板の活物質の脱落を抑制して充放電性能の劣化を防ぐことができる。
【0008】
上記の円筒形電池が、二次電池であり、前記正極又は負極が、集電基材と活物質とを備えることが望ましい。集電基材を備えることで、充放電反応による極板体積の膨張収縮が起こっても、集電性能の低下を抑制することができる。
【0009】
前記スペーサが前記電極群を押圧するものであることが望ましい。このように電極群を押圧することによって、正極及び負極に押圧を加えることができ、充放電性能を向上させることができる。
【0010】
具体的には、前記電極群が、正極板及び負極板をセパレータを介して積層した形状をなすものであり、前記電極群が、その積層方向が前記電池ケースの中心軸方向と直交するように前記電池ケースに収容されており、前記スペーサが、前記電極群をその積層方向から挟むように2つ以上設けられていることが望ましい。このように電極群を積層方向から挟むように設けることで、正極板及び負極板に効果的に押圧を加えることができ、充放電性能を向上させることができる。
【0011】
電極群全体に押圧を加えることにより、電極群全体における充放電効率の低下を防ぐためには、前記スペーサが、前記電極群の積層方向最外側の面の略全体に接触することが望ましい。
【0012】
スペーサにより電極群を均一に押圧できるようにするためには、前記スペーサが、前記電池ケースと中心軸方向に沿った少なくとも4辺で接触する又は前記電池ケースと中心軸方向に沿った少なくとも6辺で接触することが望ましい。
【0013】
スペーサと電池ケースとの接触を確実にして、電極群を電池ケースにしっかりと押圧するためには、前記電池ケースの内側周面に接触する前記スペーサの接触部が、前記電池ケースの内側周面の曲面と略同一の曲面を有することが望ましい。
【0014】
スペーサを用いて電極群を電池ケースに対して位置決め固定した後に、電極群を電池ケースに溶接可能にするためには、前記スペーサが、前記電極群を前記電池ケースに溶接するための溶接スペースを形成することが望ましい。具体的には、前記スペーサが、前記電極群を前記電池ケースに溶接するための溶接棒が挿入される上下に連通した空間を形成するものであることが望ましい。前記電極群と前記ケースとの溶接箇所は前記空間に面している。
【0015】
前記スペーサが、前記電池ケースの内側周面と前記一対の外側面それぞれとの間に設けられており、前記各スペーサが、前記電極群に接触する接触面を一方面に有する平板状の電極接触部と、当該電極接触部の他方面から延出して前記電池ケースの内側周面に接触するケース接触部とを有することが望ましい。これならば電極接触部の他方面とケース接触部の側面と電池ケースの内面により上下に連通した空間を形成することができる。
【0016】
このとき、前記電極群に接触しない状態における前記電極接触部の接触面が、上面視において当該接触面の幅方向両端部がその幅方向中央部よりも一方面側前方に位置するように凹状に湾曲又は屈曲していることが望ましい。これならば、電極接触部の接触面が、上面視において当該接触面の幅方向両端部がその幅方向中央部よりも一方面側前方に位置するように凹状に湾曲又は屈曲しているので、電極群をスペーサで押さえた場合に、その幅方向両端部の弾性変形による復帰力が電極群の幅方向両端部に加わることになる。これにより、押圧が弱くなりがちな電極群の幅方向両端部を確実に押圧することができ、充放電効率を向上させることができる。
【0017】
前記スペーサが、前記電極接触部の幅方向両端部がその幅方向中央部よりも一方面側前方となるように反った形状とされることにより、前記接触面が凹状に湾曲又は屈曲していることが望ましい。これならば、上記の効果に加えて、スペーサの他方面が電池ケースの内側周面に沿うように湾曲又は屈曲することになり、電池ケース内にスペーサを挿入し易くすることができ、スペーサ挿入時の挿入不良を抑制することができる。
【0018】
前記電池ケース内に前記電極群及び前記スペーサを配置した状態において、前記スペーサの電極接触部における他方面の幅方向両端部が、前記電池ケースの内側周面に接触していることが望ましい。これならば、幅方向両端部が電池ケースの内側周面に接触することにより、電極群に作用する電極接触部の幅方向両端部の押圧が弱まることを防止するとともに、電池ケースから受ける反力により電極群に作用する押圧を強めることが可能となる。
【0019】
前記スペーサが前記電池ケースに配置される前の状態において、前記電極接触部の幅方向両端部がその幅方向中央部よりも他方面側に位置するように反った形状であり、前記電池ケース内に前記電極群及び前記スペーサを配置した状態において、前記スペーサの電極接触部における他方面の幅方向両端部が、前記電池ケースの内側周面に接触することが望ましい。これならば、電極群の厚みが作製上のばらつき等により薄くなった場合において、ケース接触部により電極接触部を十分に電極群に加圧できない場合であっても、他方面の幅方向両端部が電池ケースの内側周面に接触することから、電極接触部により電極群を確実に押圧でき、充放電効率を向上させることができる。つまり、他方面の幅方向両端部が電池ケースの内側周面に接触することにより、一方面の幅方向中央部が電極群側に押圧されることになり、当該一方面の幅方向中央部により確実に電極群を押圧することができる。
【0020】
前記電極接触部における他方面の幅方向両端部に、前記電池ケースの内側周面に接触して前記接触面の幅方向両端部を前記電極群の側面に押圧させる押圧補強構造が形成されていることが望ましい。これならば、電極接触部における他方面の幅方向両端部に、電池ケースの内側周面に接触して接触面の幅方向両端部を電極群の側面に押圧させる押圧補強構造が形成されているので、電極群の厚みが作製上のばらつき等により薄くなった場合において、ケース接触部により電極接触部を十分に電極群に加圧できない場合であっても、他方面の幅方向両端部にある押圧補強構造が電池ケースの内側周面に接触することから、電極接触部により電極群を確実に押圧でき、充放電効率を向上させることができる。
【0021】
前記ケース接触部が、前記電極接触部の他方面において中心軸方向に沿って並列に少なくとも2つ形成されていることが望ましい。具体的には、2つのケース接触部が、中心軸を挟むように対称に設けられていることが望ましい。これならば、電池ケースの内側周面に接触したケース接触部により電極接触部を電極群に均一な押圧を加えることができ、充放電効率を向上させることができる。また、幅方向の中央部から離れて形成されると、電極接触部及び電池ケースの間の空間を大きく取ることができるため、集電端子を電池ケースに溶接し易くするとともに、電解液を注液しやすくすることができる。
【0022】
前記スペーサが、前記電極群を前記電池ケースの中心位置から偏心した位置に固定するものであることが望ましい。これならば、円筒形電池を倒した状態において比重の大きい電極群の重心が電池ケースの中心位置よりも鉛直下側に位置することになり、電解液と電極群との接触面積を大きくすることができる。これにより、化成時における電極群内部への電解液の浸透を容易にすることができる。
【0023】
具体的には、横倒しにした状態において、前記電極群の重心位置が前記電池ケースの中心位置よりも鉛直下側に位置するものであることが望ましい。横倒しとは、重心が低くなった状態であり、円筒の側面の曲面部分が鉛直方向と垂直な平面と接していることである。
【0024】
前記スペーサが、前記電極群を挟むように設けられた一対のスペーサであれば、電池ケースに対して電極群を確実に押圧することができる。このとき、前記一対のスペーサが、前記電池ケースの中心軸方向から見て前記電極群に対して非対称形状であることが望ましい。このように一対のスペーサを非対称形状とすることで、電極群を電池ケースの中心位置に対して偏心した位置に固定することができる。
【0025】
前記各スペーサの前記中心軸方向に直交する断面積が互いに異なることが望ましい。このように各スペーサの断面積を互いに異ならせることによっても、電極群を電池ケースの中心位置に対して偏心した位置に固定することができる。
【0026】
前記電極群の一方の電極の集電端子が前記電池ケースの底面に溶接されるものの場合、一対のスペーサを配置することで、集電端子を電池ケースの底面に溶接しにくくなるという問題がある。このとき、前記一対のスペーサのうち、前記中心軸方向に直交する断面積が大きいスペーサに前記集電端子を前記電池ケースに溶接するための溶接棒が挿入される溶接孔が形成されていることが望ましい。これならば、断面積の大きいスペーサに溶接孔を形成することで、当該溶接孔を大きくすることができ、溶接作業を容易にすることができる。
【0027】
前記各スペーサが、前記電極群の側面に接触する接触面を一方面に有する平板状の電極接触部と、前記電極接触部の他方面から延出して前記電池ケースの内側周面に接触するケース接触部とを有し、前記各スペーサにおけるケース接触部の長さが互いに異なることが望ましい。これならば、電極群を電池ケースの中心位置に対して偏心した位置に固定することができる。また、電極接触部とケース接触部との間に形成される凹部が溶接スペースとなり、当該溶接スペースにより正極又は負極の集電端子を電池ケースの底面に溶接することができる。このとき、各スペーサのケース接触部の長さが互いに異なるので、一見して集電端子の位置の判定が容易となり、生産性を向上させることができる。
【0028】
前記正極の集電端子又は前記負極の集電端子が、前記スペーサにおける前記電池ケースの底面側とは反対側の上部において、前記電池ケースの内側周面に延びていることが望ましい。これならば、正極の集電端子又は負極板の集電端子が、スペーサの上部において電池ケースの内側周面に延びているので、集電端子を電池ケースの内側周面に溶接等により接続する作業を容易にすることができ、電池の生産性を向上させることができる。なお、電池ケースの内側周面に接続されない集電端子は、電池ケースの上部開口を封止する封口体に接続される。このように正極の集電端子及び負極の集電端子を、電池ケースの底面側に接続することが無く、円筒形電池の生産性を向上させることができる。
【0029】
具体的には、前記正極の集電端子又は前記負極の集電端子が、前記スペーサの上部において前記電池ケースの内側周面に溶接されていることが望ましい。これならばスペーサを配置した場合の溶接の困難性を解消することができ、本発明の効果を一層顕著にすることができ、溶接不良を解消して電池の高性能化が可能となる。
【0030】
前記正極の集電端子又は前記負極の集電端子が、前記スペーサの上面に沿って前記電池ケースの内側周面に延びていることが望ましい。これならば、集電端子がスペーサの上面にあることから、集電端子の溶接作業を一層容易にすることができる。
【0031】
前記スペーサの上面に前記正極の集電端子又は前記負極の集電端子を前記電池ケースの内側周面にガイドするためのガイド溝が形成されていることが望ましい。これならば、溶接作業中において、集電端子の位置ずれを防止することができる。また、スペーサの上面にガイド溝を形成するだけで良く、スペーサの加工も容易となる。
【0032】
前記スペーサの上部において、一端が前記電極群の側面側に開口し、他端が前記電池ケースの内側周面側に開口する貫通孔が形成されており、前記正極の集電端子又は前記負極の集電端子が、前記貫通孔を通って前記電池ケースに延びていることが望ましい。これならば、集電端子を貫通孔に通すだけで、集電端子の位置決めを行うことができる。また、スペーサの上部に貫通孔を形成するだけで良く、スペーサの加工も容易となる。さらに、スペーサにおける前記電池ケースの内側周面側の開口が当該内側周面に接触するものであれば、貫通孔に通された集電端子は、スペーサと電池ケースの内側周面との間に挟まれるので、集電端子の位置決めをより一層確実にすることができる。
【0033】
前記スペーサが、前記電池ケースの内側周面と前記一対の外側面それぞれとの間に設けられた対をなすものであり、前記対をなすスペーサの端部が互いに連続しており、折り曲げられることによって前記電極群を挟むように構成されていることが望ましい。このように対をなすスペーサを一体化することによって、電池の組み立て時において、電極群を挟むようにスペーサを折り曲げるだけで電極群を固定することができ、電極群の積層ずれを抑制するとともに、電池の組み立て作業を容易にすることができる。また、電極群の積層ずれを抑制することができるため、電極群及びスペーサの電池ケースへの挿入を容易にすることができる。さらに、スペーサを一体化することで部品点数を削減することもできる。
【0034】
前記各スペーサが、前記電極群に接触する接触面を一方面に有する平板状の電極接触部と、前記電極接触部の他方面から延出して前記電池ケースの内側周面に接触するケース接触部とを有し、前記電極接触部における前記電池ケースの中心軸方向に沿った方向の端部が連続していることが望ましい。これならば、電極群を挟むように折り曲げられたスペーサを電池ケースに挿入する際に、当該スペーサの折り曲げ部分が、電池ケースの中心軸方向に沿った方向の端部に位置するため、電池ケースの内側周面に接触して挿入を妨げることを防止することができる。また、各スペーサが電池ケースの中心軸方向に沿った方向に長い長尺状をなすものの場合には、電池ケースの中心軸方向に沿った方向の端部が連続していることで、折り曲げ易いという効果も奏する。
【0035】
前記スペーサと前記電池ケースの内側周面との間にすき間があることが望ましい。このように、スペーサ及び電池ケースの内側周面の間にすき間を設けることによって、電極群への電解液の移動を容易にすることができる。電池ケースの上部には空間が形成されており、電解液の移動空間が大きく電解液の移動はスムーズである。一方、電池ケースの底面は電極群が接触して設けられることが多く、当該電池ケースの底部側においては、電解液の移動空間が小さく電解液の移動がスムーズではない。このため、電池ケースの底部側においてすき間を設けることが望ましい。
【0036】
前記スペーサの上部に、前記電極群の上面に対向する突起片が設けられていることが望ましい。これならば、電極群を構成する正極又は負極においてその上面に集電端子が溶接されている場合に、当該集電端子に突起片が接触するため、集電端子の位置ずれを防止できるとともに、集電端子の溶接箇所が破断して剥がれてしまうことを防止できる。
【0037】
前記スペーサの上部に、前記電極群の上角部を囲む囲み壁部が設けられていることが望ましい。これならば、電池ケースと当該電池ケースとは極性の異なる電極が接触してしまうことを防止することができる。また、電極群の上側に設けられた集電端子と、当該集電端子と極性の異なる電極との接触を防止することができる。さらに、電極群における正極及び負極のずれを防止することもできる。
【0038】
前記電極群が、概略四角柱状をなす正極と、当該正極の少なくとも4つの側周面にセパレータを介して対向して設けられた平板状をなす負極とを有することが望ましい。これならば、正極を概略四角柱状とすることで、円筒状をなす電池ケースに対する正極容量を大きくすることができる。また、正極の少なくとも4つの側周面に平板状をなす負極を設けることによって、放電性能を低下させることなく、高容量化を達成することができる。さらに、この構成であれば、正極及び負極の対向部分の面積を小さくできるため、セパレータの使用量を低減することもできる。
【0039】
前記負極が、概略Uの字状に折り曲げられて形成された2枚の負極板から構成されており、一方の負極板が前記正極板の一方の対をなす側周面及び底面に対向して設けられ、他方の負極板が前記正極板の他方の対をなす側周面及び底面に対向して設けられていることが望ましい。これならば、2枚の負極板を概略Uの字状に折り曲げて、正極を挟むように配置すればよいため、例えば正極の4つの側周面それぞれに負極を設けた場合に比べて部品点数を削減することができるとともに、電池の組み立てを容易にすることができる。
【0040】
前記正極又は前記負極の一方の集電端子が、前記電池ケースの内面に溶接されることなく接触し、前記スペーサにより前記内面に押圧されていることが望ましい。これならば、正極板又は前記負極板の一方の集電端子が、電池ケースの内面に溶接されることなく接触し、スペーサにより前記内面に押圧されているので、集電端子を電池ケースに溶接する作業を不要にし、スペーサを電池ケースに挿入するだけで、集電端子と電池ケースとを接触させることができるので、製造工数を削減することができる。また、集電端子がスペーサにより電池ケースに押圧されていることから、集電端子と電池ケースとの電気的な接続を良好に保つことができるとともに、集電端子と電池ケースとの間の抵抗を可及的に小さくすることができる。
【0041】
電極群をスペーサで固定した場合であっても、電極群が電池ケースに中心軸方向、つまり電池ケースの縦方向にずれることが考えられる。このように電池ケースの縦方向にずれた場合であっても電池ケースとの接触を保つことができ、電気的な接続を良好に保つためには、前記集電端子が、前記電池ケースの内側周面に接触していることが望ましい。
【0042】
前記電池ケース内に配置されるとともに前記電極群に接触して設けられ、電解液を保持する保液部材を備え、前記スペーサが、前記電極群及び前記保液部材を前記電池ケースに押圧することが望ましい。これならば、電解液を保持する保液部材を電極群に接触して設けていることから、当該保液部材から電極群に電解液を供給することができ、セパレータに保持される電解液を十分に保つことができるので、電極群の内部抵抗の上昇を抑制することができる。このとき、電極群内のセパレータを厚くする必要が無いため、電極群の放電性能が低下することはない。また、保液部材がスペーサにより押圧されるため、保液部材と電極群との接触を保つことができる。
【0043】
前記保液部材が、前記スペーサ及び前記電極群との間に挟まれて押圧されることが望ましい。これならば、保液部材を固定するとともに保液部材と電極群との接触を簡単且つ確実にするためには、前記保液部材が、前記スペーサ及び前記電極群との間に挟まれて押圧されることが望ましい。
【0044】
前記スペーサが、前記電極群をその積層方向から挟むように設けられており、前記正極又は負極が、集電端子を有する1つの第1極板要素と、集電端子を有さない1つ以上の第2極板要素とを有し、それら極板要素を接触させて積層して構成されることが望ましい。これならば、正極又は負極を第1極板要素及び第2極板要素に分割することで、集電端子が設けられる第1極板要素の厚みを可及的に薄くすることができ、第1極板要素において除去される活物質量を少なくすることができる。一方、第2極板要素においては活物質を除去する必要が無い。このように第1極板要素及び第2極板要素に分割することで、活物質のロスを少なくすることができ、電極全体としての活物質の充填性を向上させることができる。その上、集電端子は第1極板要素にのみ溶接すればよく、余分な集電端子を溶接する必要が無いため、生産性を向上させることもできる。加えて、スペーサが積層方向から電極群を挟むことから、電極群に押圧がかかるため、第1極板要素及び第2極板要素が互いに十分に押圧接触することになり、十分な導電性を取ることができる。なお、本発明は、負極及び正極の対向面積が小さい場合には厚形の電極板にする必要があるが、この場合に特に有効となる。
【発明の効果】
【0045】
このように構成した本発明によれば、電極群の巻き工程を不要にして電極群の巻きずれを考慮する必要の無い円筒形電池を提供するとともに、当該円筒形電池において、極板の活物質の脱落を抑制して充放電性能の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】第1実施形態の円筒形電池の縦断面図。
図2】第1実施形態の円筒形電池の横断面図。
図3】第1実施形態の電極群の分解図。
図4】第1実施形態の変形例におけるアルカリ蓄電池の横断面図。
図5】第1実施形態の変形例におけるアルカリ蓄電池の横断面図。
図6】第1実施形態における円筒形電池の製造方法を示す図。
図7】第1実施形態の円筒形電池の製造方法を示す図。
図8】第1実施形態の変形例におけるアルカリ蓄電池の横断面図。
図9】スペーサの変形例を示す斜視図及び側面図。
図10】スペーサの連結部にR形状部を設けた変形例を示す図。
図11】スペーサの変形例を示す図。
図12】第1実施形態の変形例におけるアルカリ蓄電池の横断面図。
図13】第2実施形態の円筒形電池の横断面図。
図14】第2実施形態の極板ユニットの縦断面図。
図15】第2実施形態の各スペーサの上面図、正面図、右側面図及び背面図。
図16】第2実施形態の各スペーサが電極群に接触しない状態を示す横断面図。
図17】第2実施形態のスペーサの変形例を示す横断面図。
図18】第3実施形態の各スペーサが電極群に接触しない状態を示す横断面図。
図19】第3実施形態のスペーサの変形例を示す横断面図。
図20】第4実施形態の円筒形電池の横断面図。
図21】第4実施形態の円筒形電池を平面上に横倒しした状態を示す模式図。
図22】第4実施形態の変形例におけるアルカリ蓄電池の横断面図。
図23】第4実施形態の変形例におけるアルカリ蓄電池の横断面図。
図24】第5実施形態の円筒形電池の縦断面図。
図25】第5実施形態の円筒形電池の横断面図。
図26】第5実施形態の極板ユニットの縦断面図。
図27】第5実施形態の電池ケース、電極群及びスペーサを示す分解した斜視図。
図28】第5実施形態のアルカリ蓄電池の縦断面図。
図29】第5実施形態のアルカリ蓄電池の縦断面図。
図30】第5実施形態の電池ケース、電極群及びスペーサを示す分解した斜視図。
図31】第5実施形態の電極群及びスペーサを示す斜視図。
図32】第6実施形態の負極板を示す平面図及び斜視図。
図33】第6実施形態の負極板の展開状態を示す平面図。
図34】第6実施形態の負極板の製造工程を示す図。
図35】第6実施形態の円筒形電池の縦断面図。
図36】第6実施形態の円筒形電池の横断面図。
図37】第6実施形態の底壁を除いた状態を示す底面図。
図38】第7実施形態の負極板を示す平面図、正面図及び斜視図。
図39】第7実施形態の負極板の展開状態を示す平面図。
図40】第7実施形態の円筒形電池の横断面図。
図41】第7実施形態の円筒形電池の変形例を示す横断面図。
図42】第7実施形態の負極板の製造工程を示す図。
図43】第7実施形態における負極板の変形例の展開状態を示す平面図。
図44】第8実施形態の円筒形電池の縦断面図。
図45】第8実施形態の円筒形電池の横断面図。
図46】第8実施形態の保液部材に収容された電極群の斜視図。
図47】第8実施形態の保液部材の変形例を示す横断面図。
図48】第9実施形態の円筒形電池の縦断面図。
図49】第9実施形態の円筒形電池の横断面図。
図50】第9実施形態の正極板の斜視図。
図51】第9実施形態の正極板の平面図。
図52】第9実施形態の正極板の変形例を示す断面図。
図53】第9実施形態の正極板の変形例を示す断面図。
図54】第10実施形態の正極を示す斜視図。
図55】第10実施形態のスペーサを示す斜視図。
図56】第10実施形態の電極群及びスペーサを電池ケースに収容した状態を示す図。
図57】第10実施形態のスペーサの部分拡大正面図。
図58】第10実施形態のスペーサの変形例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
<第1実施形態>
以下に本発明に係る円筒形電池の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0048】
第1実施形態に係る円筒形電池100は、例えばニッケル・カドミウム蓄電池やニッケル・水素蓄電池等のアルカリ蓄電池である。具体的にこのものは、例えば単3形の容量が1800mAh以下、又は単4形の容量が650mAh以下の低容量タイプとすることができるものであり、図1及び図2に示すように、有底円筒状をなす金属製の電池ケース2と、この電池ケース2内に配置され、正極板31、負極板32及びセパレータ33からなる概略直方体形状の電極群3とを有するものである。
【0049】
電池ケース2は、ニッケルめっきを施した有底円筒状をなすものであり、図1に示すように、上部開口は絶縁体4を介して封口体5により封止されている。また、封口体5の裏面には、正極板31の上端部に突出して設けられた集電端子311が例えば溶接により直接又は集電板(不図示)を介して接続されて、封口体5が正極端子となる。なお本実施形態では、後述するように、電池ケース2の底面2Bに電極群3の最外側に位置する負極板32の集電端子321が溶接される。
【0050】
電極群3は、正極板31及び負極板32を例えばポリオレフィン製の不織布からなるセパレータ33を介して積層した、互いに対向する一対の外側面が平面状をなすものである。具体的に本実施形態では、概略直方体形状をなすものである。なお、電極群3は、互いに対向する一対の外側面が平面状をなすものであれば、概略直方体形状に限られず、一対の外側面に直交する側面が段形状又は円弧状をなすものであっても良い。また、セパレータ33には例えば水酸化カリウム等の電解液が含侵される。
【0051】
正極板31は、発泡ニッケルからなる正極基板と、この正極基板の中空内に水酸化ニッケル活物質及び導電材のコバルト化合物の混合物を充填したものである。この正極板31は、混合物が充填された後に加圧成型される。また、正極基板の一部に集電端子311が設けられている。なお、水酸化ニッケル活物質は、ニッケル・カドミウム蓄電池の場合には例えば水酸化ニッケルであり、ニッケル・水素蓄電池の場合には例えば水酸化カルシウムを添加した水酸化ニッケルである。
【0052】
負極板32は、例えばニッケルめっきを施した平板状の穿孔鋼板からなる負極集電体と、この負極集電体上に塗布された負極活物質からなる。なお負極活物質としては、ニッケル・カドミウム蓄電池の場合には、例えば酸化カドミウム粉末と金属カドミウム粉末との混合物であり、ニッケル・水素蓄電池の場合には、例えば主にAB型(希土類系)又はAB型(Laves相)の水素吸蔵合金の粉末である。
【0053】
そして、本実施形態の電極群3は、図3に示すように、1つの正極板31を、セパレータを介して正極板31の互いに対向する2つの側面31a、31bを負極板32で挟むように積層したものであり、積層方向Lの最外側両面にはそれぞれ負極板32が位置するように構成されている。
【0054】
また、本実施形態の電極群3は、図1及び図2に示すように、その積層方向Lが電池ケース2の中心軸方向Cと直交するように、電池ケース2内に収容される。
【0055】
しかして本実施形態の円筒形電池100は、図1及び図2に示すように、電極群3を押圧するためのスペーサ6を有する。このスペーサ6は、電池ケース2の内側周面と電極群3の側面との間に介在して設けられ、電極群3を電池ケース2に固定する一対のスペーサ61、62である。この一対のスペーサ61、62は、電池ケース2の内側周面と電極群3の側面との間の空間に配置されて、電極群3をその積層方向Lから挟むように設けられている。
【0056】
一対のスペーサ61、62は、アクリル樹脂やポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂等の樹脂製又はステンレス鋼等の金属製で、互いに同一形状をなすものである。
【0057】
各スペーサ61、62は、中心軸方向Cに等断面形状をなすものであり、負極板32における積層方向Lの外側面32a、32b(図2参照)の略全体に接触した方が好ましい。また、各スペーサ61、62は、電池ケース2の内側周面に上下に亘って接触する。これにより、電極群3全体が一対のスペーサ61、62により均一に押圧されることになり充放電効率が向上する。なお、スペーサと極板との接触部は一部であってもよい。
【0058】
各スペーサ61、62において電池ケース2と接触する部分は、電池ケース2に加わる押圧力を分散させるために、電池ケース2の周方向所定範囲に亘って接触させるべく円弧形状とすることが考えられる。なお、電池ケース2の機械的強度が十分に確保できる場合には、図4に示すように、スペーサ61、62が角形状で電池ケース2と接触する部分が辺あっても良い。ここで、電池ケース2とスペーサ61、62とが少なくとも4辺で接触することが好ましい。図5に示すように4辺で接触する構造であれば、スペーサ61、62と電池ケース2との間の空間を大きくすることができ、電解液量の増大及び内圧上昇の低減に寄与する。さらに、電池ケース2とスペーサ61、62とが少なくとも6辺で接触することが好ましい。6辺で接触することにより、電池ケース2の形状をほぼ真円に保つことができる。電池ケース2の形状が変形し楕円になると、封口時の不良が起こる虞がある。ここでいう辺とは、中心軸方向に平行な辺である。なお、図4のスペーサ61、62は、断面において底辺が負極板32と接触する二等辺三角形である。このように電池ケース2と接触する部分が辺であれば、スペーサ61、62と電池ケース2との間の空間を大きくすることができ、電解液量の増大及び内圧上昇の低減に寄与する。
【0059】
そして各スペーサ61、62は、図1及び図2に示すように、電極群3の負極板32の集電端子321を電池ケース2の底面2Bに溶接するための溶接棒WRが挿入される上下(中心軸方向C)に連通した空間Sを形成する。この空間Sは、電池ケース2の底面2Bから電池ケース2の上部開口に亘って連通している。具体的にスペーサ61、62は、溶接棒WRが挿入される上下に連通した挿入孔6Hを有する。この挿入孔6Hの形状は、溶接棒WRを挿入して溶接が可能であれば良く、円形に限られず、多角形であっても良いし、楕円形であっても良い。
【0060】
なお本実施形態では、各負極板32それぞれを電池ケース2の底面2Bに溶接するものであり、各負極板32に接触するスペーサ61、62それぞれに挿入孔6Hが形成されている。挿入孔6Hを設ける位置は、スペーサ61、62で電極群3を固定した状態において、負極板32の集電端子321が挿入孔6H内となる位置であり、負極板32の集電端子321の位置により応じて決定される。
【0061】
次にこのように構成したアルカリ蓄電池100の製造方法について簡単に説明する。
【0062】
まず正極板31の互いに対向する2つの側面31a、31bにセパレータ33を設ける。なお、本実施形態では、セパレータ33が袋状であり、この袋状セパレータ33に正極板31を収容することで、正極板31の4つの側面にセパレータ33が設けられることになる。そして、負極板32を、正極板31の2つの側面31a、31bを挟むように積層する。そして、このように積層して構成された電極群3を積層方向Lから一対のスペーサ61、62で挟み込む。このように形成された構造体を電池ケース2内に配置する(図6参照)。なお、配置した状態で負極板32の集電端子321がスペーサ61、62の挿入孔6H内に位置するようにする。なお、電極群3を電池ケース2内に収容した後に、一対のスペーサ61、62を電極群3を挟むように収容しても良い。
【0063】
そして、電極群3が電池ケース2に固定された状態で、スペーサ61、62に設けられた挿入孔6Hに溶接棒WRを挿入して負極板32の集電端子321を電池ケース2の底面2Bに溶接して接続する(図7参照)。その後、電池ケース2内に電解液を注液する。そして正極板31の集電端子311を直接又は集電板(不図示)を介して封口体5の裏面に接続するとともに、当該封口体5を絶縁体4を介して電池ケース2の上部開口にかしめ等により固定する。
【0064】
<第1実施形態の効果>
このように構成した第1実施形態に係るアルカリ蓄電池100によれば、正極板31及び負極板32をセパレータ33を介して積層した電極群3を電池ケース2内に収容することから、電極群3の巻きずれ及び巻きずれに付随する種々の問題の無い電池を提供することができる。また、円筒状の電池ケース2であることから、内部圧力の上昇に対して強度的に強くすることができる。
【0065】
また、スペーサ61、62を用いて電極群3を電池ケース2内で押圧して固定しているので、電池ケース2に対する電極群3のがたつきを防止することができ、正極板31及び負極板32の活物質の脱落を抑制して充放電性能の劣化を防ぐだけでなく、充放電性能を向上させることができる。
【0066】
さらにスペーサ61、62に溶接棒挿入孔6Hを形成しているので、電池ケース2に電極群3及びスペーサ61、62を挿入した後に負極板32の集電端子321を溶接することができる。負極板32の集電端子321を溶接した後でスペーサ61、62を挿入する場合には、電極群3の位置がスペーサ61、62を挿入する前と後でずれる恐れがあり、溶接部位が断裂又は破損することが懸念されるが、本実施形態のようにスペーサ61、62を挿入後に溶接することにより、この問題が生じることが無い。
【0067】
<第1実施形態に関する変形例>
なお、本発明は前記第1実施形態に限られるものではない。例えば、前記実施形態ではスペーサ61、62に設けた挿入孔6Hによって溶接スペースを確保するものであったが、図8に示すように、スペーサ61、62に挿入孔6Hを設けることなくスペーサ61、62の外観形状により溶接スペースを形成しても良い。具体的には、側面に凹部6Sを有する中心軸方向Cに等断面形状をなすものとすることが考えられる。図8においては、電極群3の積層方向最外側の面に接触する電極接触部6Aと、電池ケース2の内側周面に接触する1又は複数のケース接触部6Bと、それらの間に形成された凹部6Sとを有するものである。このようなものであっても、スペーサ61、62を挿入した後にスペーサ61、62の凹部6Sにより形成される溶接スペースによって負極板32の集電端子321を電池ケース2の底面2Bに溶接することができる。
【0068】
また、スペーサ61、62は、中心軸方向Cに等断面形状をなすものの他、図9に示すように、中心軸方向Cに沿って間欠的に複数のケース接触部6Bを有し、側面視において概略くし歯形状をなすものであっても良い。このように構成することで、スペーサ61、62の材料の使用量を削減することができ、コストを削減にすることができる。また、電解液の注入が容易となる。
【0069】
さらに、図10に示すように、図8に示すスペーサ61、62(以下、第1のスペーサ)又は図9に示すスペーサ61、62(以下、第2のスペーサ)において、電極接触部6Aとケース接触部6Bとの連結部である角部の全部又は一部に、湾曲したR形状部R1、R2を形成することが望ましい。これにより、連結部の機械的強度を増すことができる。なお、第1のスペーサ61、62においては、電極接触部6Aとケース接触部6Bとから形成される長手方向に沿った2つの角部にR形状部R1を設ける。第2のスペーサ61、62においては、電極接触部6Aと各ケース接触部6Bとから形成される長手方向に沿った2つの角部R1及び短手方向に沿った少なくとも1つの角部にR形状部R2を設ける。
【0070】
また、図11に示すように、前記一対のスペーサ61、62の端部同士が互いに連続しており、その一体形成したスペーサ部材6Zを折り曲げることによって電極群3を挟むように構成しても良い。ここで、一対のスペーサ61、62において、電池ケース2の中心軸方向Cに沿った方向の端部が連続していることが望ましい。具体的には、電極群3の積層方向最外側の面に接触する電極接触部6Aと、電池ケース2の内側周面に接触する1又は複数のケース接触部6Bとを有するものであり、電極接触部6Aにおける電池ケース2の中心軸方向Cに沿った方向の端部が連続している構成が考えられる。
【0071】
このように一対のスペーサ61、62を一体化することによって、電池の組み立て時において、電極群3を挟むようにスペーサ61、62を折り曲げるだけで電極群3を固定することができ、電極群3の積層ずれを抑制するとともに、電池の組み立て作業を容易にすることができる。また、電極群3の積層ずれを抑制することができるため、電極群3及びスペーサ61、62の電池ケース2への挿入を容易にすることができる。さらに、スペーサ61、62を一体化することで部品点数を削減することもできる。また、電極群3を挟むように折り曲げられたスペーサ61、62を電池ケース2に挿入する際に、当該スペーサ61、62の折り曲げ部分が、電池ケース2の中心軸方向Cに沿った方向の端部に位置するため、電池ケース2の内側周面に接触して挿入を妨げることを防止することができる。また、各スペーサ61、62が電池ケース2の中心軸方向Cに沿った方向に長い長尺状をなすものの場合には、電池ケース2の中心軸方向Cに沿った方向の端部が連続していることで、折り曲げ易いという効果も奏する。
【0072】
また、前記実施形態では電極群の対向する2つの側面を1対のスペーサで挟むようにして電池ケースに固定するものであったが、電極群の対向する2つの側面を3つ以上のスペーサで挟むようにしても良いし、電極群の4つの側面と電池ケースの内側周面との間にそれぞれスペーサを設けるようにしても良い。あるいは、各スペーサが連結部により連結された一体をなすものであっても良い。
【0073】
また、図12に示すように、電極群3が、概略四角柱状をなす正極31と、当該正極31の少なくとも4つの外側面31a〜31dにセパレータ33を介して対向して設けられた平板状をなす負極32とを有するものであっても良い。
【0074】
正極31は、概略四角柱状をなす単一部材から正極基材に正極活物質を充填したものであっても良いし、正極活物質を充填した平板状の正極基材を積層又は折り曲げることにより、概略四角柱状としたものであっても良い。また、正極31は、電池ケース2の中心軸方向Cに直交する断面が略正方形とすることが望ましい。なお、正極31の集電端子は正極基材を圧縮したもの又は正極基材に例えばニッケル鋼板等からなる集電端子を溶接したものであっても良い。
【0075】
また、負極32は、概略Uの字状に折り曲げられて形成された2枚の負極板から構成されており、一方の負極板が前記正極の一方の対をなす外側面3a、3b及び底面に対向して設けられ、他方の負極板が前記正極31の他方の対をなす外側面3c、3d及び底面に対向して設けられている。なお、負極32を、セパレータ33を介して正極31の4つの外側面31a〜31dに巻回して設けることにより、電池の組み立てを容易にすることもできる。
【0076】
このように正極31を概略四角柱状とすることで、円筒状の電池ケース2に対する正極容量を大きくすることができる。特に正極31の断面を略正方形としているので、電池ケース2に対する正極容量をより一層大きくすることができる。また、正極31の少なくとも4つの外側面31a〜31dに平板状をなす負極32を設けることによって、放電性能を低下させることなく、高容量化を達成することができる。さらに、この構成であれば、正極31及び負極32の対向部分の面積を小さくできるため、セパレータ33の使用量を低減することもできる。また、2枚の負極板を概略Uの字状に折り曲げて、正極31を挟むように配置すればよいため、例えば正極31の4つの外側面31a〜31dそれぞれに負極32を設けた場合に比べて部品点数を削減することができるとともに、電池の組み立てを容易にすることができる。
【0077】
その上、前記実施形態のスペーサは溶接スペースを形成するものであったが、電極群の負極板の集電端子を電池ケースに溶接した後にスペーサを配置するものであれば、スペーサが溶接スペースを形成するものである必要はない。
【0078】
また、正極板31を挟む負極板32は、独立した2枚の負極板であっても良いし、概略Uの字状に折り曲げられたものであり、その内部に正極板31を配置するように構成した1枚の負極板であっても良い。1枚の負極板で構成する場合には、集電端子を1つにすることができるので、1対のスペーサの一方に溶接棒の挿入孔を形成すればよい。これにより溶接作業を簡単化することができる。
【0079】
また、正極板の構成を、負極板32と同様に、平板状をなす正極集電体に正極活物質を塗布したものとし、複数枚の正極板及び複数枚の負極板をセパレータを介して交互に積層して構成しても良い。この場合でも、その積層方向が電池ケースの中心軸方向と直交するように電池ケース内に収容する。
【0080】
加えて、前記実施形態の電極群は、その積層方向が電池ケースの中心軸方向と直交するように、電池ケース内に配置されるものであったが、積層方向が電池ケースの中心軸方向と同一となるように配置するものであっても良い。
【0081】
<第2実施形態>
次に本発明に係る円筒形電池の第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、前記第1実施形態に対応する部材には同一の符号を付している。
【0082】
第2実施形態に係る円筒形電池100は、前記第1実施形態とは電極群の構成及び一対のスペーサ(第1のスペーサ及び第2のスペーサ)の構成が異なる。
【0083】
具体的に電極群3は、図13及び図14に示すように、1つの正極板31を、セパレータ33を介して正極板31の互いに対向する2つの側面31a、31bを負極板32で挟むように積層した1又は複数の極板ユニット3Uを用いて構成されている。具体的に負極板32は、概略U字状に折り曲げられてU字状極板とされたものであり、その互いに対向する平板部32m、32nが正極板31を挟むように、例えば概略Uの字状となるように折り曲げられている。このような極板ユニット3Uを積層してなる電極群3において、積層方向Lの最外側両面にはそれぞれ負極板32が位置する。また、隣接する極板ユニット3U同士は、負極板32の平板部32m、32nが面接触することにより電気的に導通する。これにより、1つの極板ユニット3Uから出る集電端子321を溶接することで、その他の極板ユニット3Uの負極板32が電池ケース2の底面2Bに電気的に接続されることになる。ここで1つの極板ユニット3Uの負極板32に形成される集電端子321は、負極板32の幅方向中央部から積層方向外側に延出しており(図13参照)、概略Uの字状をなす負極板32の底面部32o(平板部32mと平板部32nとの連結部)の一部が外側に折り曲げられることにより形成される。具体的には、底面部32oの一部に、所望の集電端子形状となるように切り込みを入れて、その切り込み内部を外側に折り曲げることにより集電端子321が形成される。
【0084】
第1のスペーサ61は、図15及び図16に示すように、電極群3の積層方向Lの最外面(具体的には負極板32の外側面32a)の略全体に接触する接触面を一方面61aに有する矩形平板状の電極接触部61Aと、この電極接触部61Aの他方面61bから延出して電池ケース2の内側周面2Aに接触するケース接触部61Bとを有するものであり、中心軸方向Cから見て概略T字形状の等断面形状をなすものである。電極接触部61Aは、電極群3の積層方向Lの最外面(外側面32a)に沿った形状をなすものである。また、ケース接触部61Bは、電極接触部61Aの幅方向中央部の上端から下端に亘って設けられた側面視概略矩形状をなすものであり、電池ケース2の内側周面2Aに上下に亘って接触する。
【0085】
第2のスペーサ62は、図15及び図16に示すように、電極群3の積層方向Lの最外面(具体的には負極板32の外側面32b)の略全体に接触する接触面を一方面62aに有する矩形平板状の電極接触部62Aと、この電極接触部62Aの他方面62bから延出して電池ケース2の内側周面2Aに接触するケース接触部62Bとを有する等断面形状をなすものである。電極接触部62Aは、電極群3の積層方向Lの最外面(外側面32b)に沿った形状をなすものである。また、ケース接触部62Bは、電極接触部62Aの幅方向中央部の上端から下端に亘って設けられた側面視概略矩形状をなすものであり、電池ケース2の内側周面2Aに上下に亘って接触する。このように第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62のケース接触部61B、62Bが内側周面2Aの上下に亘って接触しているので、電極群3全体が一対のスペーサ61、62により均一に押圧されることになり充放電効率が向上する。
【0086】
そして第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62は、図15及び図16に示すように、電極群3に接触しない状態(外力を受けない自然状態)における電極接触部61A、62Aの接触面61a、62aが、横断面視において当該接触面61a、62aの幅方向両端部がその幅方向中央部よりも一方面側前方に位置するように凹状に湾曲しているように構成されている。ここで接触面61a、62aの幅方向両端部は、電極群3の積層方向Lの最外面の幅方向両端部に接触する部分であり、接触面61a、62aの幅方向中央部は、電極群3の積層方向Lの最外面の幅方向中央部に接触する部分である。なお、本実施形態の各スペーサ61、62は、等断面形状を有するものであり、横断面視における形状と上面視における形状が同一である。
【0087】
具体的には各スペーサ61、62が、電極接触部61A、62Aの幅方向両端部がその幅方向中央部よりも一方面側前方となるように反った形状とされることにより、接触面61a、62aが凹状に湾曲する構成とされている。また、各スペーサ61、62において、電極接触部61A、62Aは、ケース接触部61B、62Bに対して左右対称形状である。このように電極接触部61A、62Aがケース接触部61B、62Bとは反対側(電極群3側)に反っていることから、スペーサ61、62を電池ケース2に挿入する際に、スペーサ61、62及び当該スペーサ61、62に挟まれた電極群3を電池ケース2内に挿入し易い。これにより、挿入不良を抑制することができる。
【0088】
そして、スペーサ61、62が電池ケース2に配置された状態において、ケース接触部61B、62Bが、電池ケース2の内側周面2Aに接触して電池ケース2から受ける反発力により、電極接触部61A、62Aを電極群3側に押圧する。また、このとき、電極接触部61A、62Aは、ケース接触部61B、62Bから受ける押圧力の他、電極接触部61A、62Aの幅方向両端部の弾性変形による復帰力によっても電極群3側に押圧する。このようにして、電極群3の幅方向中央部は、ケース接触部61B、62Bから受ける押圧力により確実に押圧されるとともに、電極群3の幅方向両端部は、ケース接触部61B、62Bから受ける押圧力の他に電極接触部61A、62Aの弾性復帰力により確実に押圧されることになる。
【0089】
<第2実施形態の効果>
このように構成した第1実施形態に係るアルカリ蓄電池100によれば、電極接触部61A、62Aの接触面61a、62aが、横断面視において当該接触面61a、62aの幅方向両端部がその幅方向中央部よりも一方面側前方に位置するように凹状に湾曲しているので、電極群3をスペーサ61、62で積層方向Lから押さえた場合に、その幅方向両端部の弾性変形による復帰力が電極群の幅方向両端部に加わることになる。これにより、押圧が弱くなりがちな電極群3の幅方向両端部を確実に押圧することができ、充放電効率を向上させることができる。
【0090】
<第2実施形態に関する変形例>
なお、本発明は前記第2実施形態に限られるものではない。例えば、前記第2実施形態では、接触面61a、62aを凹状に湾曲させたものであったが、図17(A)に示すように凹状に屈曲させたものであっても良い。この場合であっても、電極群3の幅方向中央部はケース接触部61B、62Bから作用力によって確実に押圧させることができるとともに、電極群3の幅方向両端部を確実に押圧させることができる。なお、図17(A)では、第1のスペーサ61について示している。
【0091】
また前記第2実施形態では、電極接触部61A、62Aが凹状に反った形状とされることにより、接触面61a、62aが凹状に湾曲したものとされているのが、図17(B)に示すように、電極接触部61A、62Aを反った形状とすることなく、接触面61a、62aを凹状に湾曲させたものとしても良い。この場合であっても、前記実施形態と同様の効果を奏する。なお、図17(B)では、第1のスペーサ61について示している。
【0092】
<第3実施形態>
次に本発明に係る円筒形電池の第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、前記第2実施形態に対応する部材には同一の符号を付している。
【0093】
第3実施形態に係る円筒形電池100は、前記第1実施形態とは一対のスペーサ61、62における電極接触部61A、62Aの構成が異なる。
【0094】
具体的に第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62は、図18に示すように、電池ケース2に配置される前の状態(外力を受けない自然状態)において、電極接触部61A、62Aの幅方向両端部がその幅方向中央部よりも他方面61b、62b側に位置するように反った形状である。つまり、電極接触部61A、62Aは、ケース接触部61B、62B側(反電極群側)に反った形状である。これにより、電極接触部61A、62Aの接触面61a、62aが、横断面視において当該接触面61a、62aの幅方向両端部がその幅方向中央部よりも一方面側後方に位置するように凸状に湾曲しているように構成されている。なお、本実施形態の各スペーサ61、62は、等断面形状を有するものであり、横断面視における形状と上面視における形状が同一である。そして、これらスペーサ61、62は、電池ケース2内に配置された状態において、各スペーサ61、62の電極接触部61A、62Aにおける他方面61b、62bの幅方向両端部が、電池ケース2の内側周面2Aに接触するように構成されている。
【0095】
<第3実施形態の効果>
このように構成した第3実施形態に係る円筒形電池100によれば、前記実施形態の効果に述べた一対のスペーサ61、62を設けることによる効果に加えて、電極群3の厚みが作製上のばらつき等により薄くなった場合において、ケース接触部61B、62Bにより電極接触部61A、62Aを十分に電極群3に加圧できない場合であっても、他方面61b、62bの幅方向両端部が電池ケース2の内側周面2Aに接触することから、電極接触部61A、62Aにより電極群3を確実に押圧でき、充放電効率を向上させることができる。つまり、他方面61b、62bの幅方向両端部が電池ケース2の内側周面2Aに接触することにより、一方面61a、62aの幅方向中央部が電極群3側に押圧されることになり、当該一方面61a、62aの幅方向中央部により確実に電極群を押圧することができる。
【0096】
<第3実施形態に関する変形例>
なお、本発明は前記第3実施形態に限られるものではない。例えば、前記第2実施形態では、電極接触部61A、62Aが凸状に反った形状とされることにより、接触面61a、62aが凸状に湾曲(他方面61b、62bが凹状に湾曲)したものとされているのが、図19(A)に示すように、電極接触部61A、62Aを反った形状とすることなく、接触面61a、62aを平坦面にするとともに他方面61b、62bを凹状に湾曲させたものとしても良い。この場合であっても、前記第2実施形態と同様の効果を奏する。なお、図19(A)では、第1のスペーサ61について示している。
【0097】
前記第3実施形態では、電極接触部61A、62Aを反った形状とすることで、電極接触部61A、62Aの他方面61b、62bの幅方向両端部が、電池ケース2の内側周面2Aに接触して接触面61a、62aの幅方向両端部を電極群3の側面に押圧させる押圧補強構造として機能するものであったが、その他、押圧補強構造として、図19(B)に示すように、他方面61b、62bの幅方向両端部に上下に亘って形成された突条8、又は幅方向両端部に部分的に形成された1又は複数の突起により構成しても良い。なお、図19(B)では、第1のスペーサ61について示している。
【0098】
<第4実施形態>
次に本発明に係る円筒形電池の第4実施形態について図面を参照して説明する。なお、前記各実施形態に対応する部材には同一の符号を付している。
【0099】
第4実施形態に係る円筒形電池100は、前記第1〜第3実施形態とは一対のスペーサ(第1のスペーサ及び第2のスペーサ)の構成が異なる。
【0100】
具体的に一対のスペーサ61、62は、電極群3を電池ケース2の中心位置H1から偏心した位置に固定するものである。つまり、図20に示すように、電池ケース2に固定された電極群3の平面視における(中心軸方向Cから見た)中心位置(重心位置)H2は、電池ケース2の中心位置H1と異なる位置となる。これにより、円筒形電池100全体の重心位置(不図示)は、電池ケース2の中心位置H1とは異なる位置となる。
【0101】
そして、一対のスペーサ61、62は、電池ケース2の中心軸方向Cから見て電極群3に対して非対称形状をなすものであり、各スペーサ61、62は、電極群3の積層方向Lの最外面に接触する平面状の電極接触面6xと、当該電極接触面6xの幅方向両端に連続して設けられて電池ケース2の内側周面2Aに接触する概略円弧状をなすケース接触面6yとを有する断面概略半円形状の等断面形状をなすものである。そして、ケース接触面6yは、電池ケース2の内側周面2Aに上下に亘って接触する。このように第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62のケース接触面6yが内側周面2Aの上下に亘って接触しているので、電極群3全体が一対のスペーサ61、62により均一に押圧されることになり充放電効率が向上する。
【0102】
また、第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62は互いに非対称形状であることから、中心軸方向Cに直交する断面において、電極接触面6x及びケース接触面6yにより囲まれる輪郭断面積は、第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62とで互いに異なる。本実施形態では、第2のスペーサ62の輪郭断面積が大きくなるように構成されている。つまり、電極群3の中心位置H2は、電池ケース2の中心位置H1に対して第1のスペーサ61側に偏心した位置となる。
【0103】
さらに、本実施形態では、輪郭断面積の大きい第2のスペーサ62に、負極板32の集電端子321を電池ケース2の底面2Bに溶接するための溶接棒が挿入される溶接孔62hが形成されている。なお、溶接孔62hは、図20のように円形状の他、楕円形状や矩形状等、溶接棒が挿入できる形状及び大きさであれば特に限定されない。
【0104】
上記の円筒形電池100を電槽化成する際には、図21に示すように、円筒形電池100を横倒しにして行う。横倒しにされた円筒形電池100は、その重心位置が電池ケース2の中心位置H1から偏心していることから転がり、比重の大きい電極群3の中心位置H2が前記中心位置H1の鉛直下側に位置した状態で止まる。これにより、電極群3と電解液との接触面積を大きくして、電極群3への電解液の浸透を促進することができる。
【0105】
<第4実施形態の効果>
このように構成した第4実施形態に係るアルカリ蓄電池100によれば、対のスペーサ61、62が電極群3を電池ケース2の中心位置H1から偏心した位置に固定するので、円筒形電池100を倒した状態において比重の大きい電極群3の中心位置H2が電池ケース2の中心位置H1よりも鉛直下側に位置することになり、電解液と電極群3との接触面積を大きくすることができる。これにより、電槽化成時における電極群3内部への電解液の浸透を容易にすることができる。
【0106】
<第4実施形態に関する変形例>
例えば、スペーサ形状は前記第4実施形態に限られず、図22に示すように、第2のスペーサ62が溶接孔62hを有さないものであっても良い。この場合には、負極板32の集電端子321は、スペーサ61、62を電池ケース2に配置する前に溶接するか、或いは、溶接することなく、第2のスペーサ62の下面により電池ケース2の底面2Bに押圧接触させることが考えられる。
【0107】
また、前記第4実施形態のスペーサ61、62は、平面状の電極接触面6x及び円弧状のケース接触面6yからなる断面概略半円形状をなすものであったが、その他、前記電極接触面6x及びケース接触面6yを有する形状であり、電極群3を電池ケース2の中心位置H1から偏心した位置に固定するものであれば種々の形状とすることができる。
【0108】
また、図23に示すように、各スペーサ61、62が、電極群3の積層方向Lの最外面(具体的には負極板32の外側面32a)の略全体に接触する接触面を一方面6aに有する平板状の電極接触部6Aと、この電極接触部6Aの他方面6bから延出して電池ケース2の内側周面2Aに接触するケース接触部6Bとを有するものとしても良い。そして、電極群3を電池ケース2の中心位置H1に対して偏心した位置に固定するために、各スペーサ61、62におけるケース接触部6Bの長さが互いに異なるように構成することが考えられる。このようにスペーサ61、62を構成することで、電極接触部6Aとケース接触部6Bとの間に形成される凹部が溶接スペースとなり、当該溶接スペースにより負極板32の集電端子321を電池ケース2の底面2Bに溶接することができる。このとき、各スペーサ61、62のケース接触部6Bの長さが互いに異なるので、例えばケース接触部6Bの長いスペーサ62側に集電端子321を延出させることで、一見して集電端子321の位置の判定が容易となり、生産性を向上させることもできる。
【0109】
さらに、前記第4実施形態では、複数(具体的には2つ)の極板ユニットのうち1つの極板ユニットのみ負極板の集電端子を有するように構成されているが、それぞれの極板ユニットが負極板の集電端子を有するように構成しても構わない。
【0110】
<第5実施形態>
次に本発明に係る円筒形電池の第5実施形態について図面を参照して説明する。なお、前記各実施形態に対応する部材には同一の符号を付している。
【0111】
第5実施形態に係る円筒形電池100は、前記第1〜第4実施形態とは電極群の構成及び一対のスペーサ(第1のスペーサ及び第2のスペーサ)の構成が異なる。
【0112】
具体的に電極群は、図24図26に示すように、1つの正極板31を、セパレータ33を介して正極板31の互いに対向する2つの側面31a、31bを負極板32で挟むように積層した1又は複数の極板ユニットを用いて構成されている。具体的に負極板32は、概略U字状に折り曲げられてU字状極板とされたものであり、その互いに対向する平板部32m、32nが正極板31を挟むように、例えば概略Uの字状となるように折り曲げられている。このような極板ユニットを1又は複数積層してなる電極群3において、積層方向Lの最外側両面にはそれぞれ負極板32が位置する。そして、最外に位置する1つの負極板32の上部(電池ケース2の底面2Bとは反対側の上部)には、集電端子321が溶接等により接続されている。
【0113】
一対のスペーサ61、62は、図25に示すように、電極群3の積層方向Lの最外面に接触する平面状の電極接触面6xと、当該電極接触面6xの幅方向両端に連続して設けられて電池ケース2の内側周面2Aに接触する概略円弧状をなすケース接触面6yとを有する断面概略半円形状の等断面形状をなすものである。そして、ケース接触面6yは、電池ケース2の内側周面2Aに上下に亘って接触する。このように第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62のケース接触面6yが内側周面2Aの上下に亘って接触しているので、電極群3全体が一対のスペーサ61、62により均一に押圧されることになり充放電効率が向上する。
【0114】
しかして、第5実施形態の円筒形電池100は、図24に示すように、負極板32の集電端子321が、一方のスペーサ(本実施形態ではスペーサ61)の上部において、電池ケース2の中心軸方向Cに直交する方向(本実施形態では積層方向L)に沿って電池ケース2の内側周面2Aに延びている。ここでスペーサ61の上部とは、電池ケース2の底面2B側とは反対側の部分、つまり、電池ケース2の上部開口側の部分である。
【0115】
具体的には、一方のスペーサ61の上部において、一端が電極群3の側面側に開口し、他端が電池ケース2の内側周面2A側に開口する貫通孔6Cが形成されている。この貫通孔6Cは、一方のスペーサ61において、負極板32の集電端子321に対応する部分に形成されており、一端が電極群3の側面に接触する電極接触面6xに開口し、他端が電池ケース2の内側周面2Aに接触するケース接触面6yに開口している。なお本実施形態の貫通孔6Cは、積層方向Lに沿って延びるように形成された概略等断面形状をなすものであり、断面概略矩形状をなし、その幅寸法が集電端子321の幅寸法よりも若干大きく、その高さ寸法は、集電端子321の厚み寸法よりも若干大きい。このように構成されたスペーサ61において、負極板32の集電端子321が当該貫通孔6Cを通って電池ケース2の内側周面2Aに延びている。
【0116】
そして、この貫通孔6Cに挿入された集電端子321は、スペーサ61の外側面から延出して、当該スペーサ61の外側面であるケース接触面6yと電池ケース2の内側周面2Aとの間からスペーサ61の上面6uよりも上側に延出する。このスペーサ61の上面6uよりも上側に延出した自由端部は、電池ケース2の内側周面2Aに溶接される。
【0117】
次にこのように構成した円筒形電池100の組み立てについて簡単に説明する。
【0118】
前記極板ユニットにより構成された電極群3を積層方向Lから一対のスペーサ61、62で挟み込む。このとき、一方のスペーサ61に形成された貫通孔6Cに負極板32の集電端子321を通す。このように形成された構造体を電池ケース2内に配置する(図27参照)。なお、配置した状態で負極板32の集電端子321が、スペーサ61の上面6uから上側に延出するようにする。
【0119】
そして、電極群3が電池ケース2に固定された状態で、負極板32の集電端子321を電池ケース2の内側周面2Aに溶接して接続する。その後、電池ケース2内に電解液を注液する。そして正極板31の集電端子311を直接又は集電板(不図示)を介して封口体5の裏面に接続するとともに、当該封口体5を絶縁体4を介して電池ケース2の上部開口にかしめ等により固定する。このように負極板32の集電端子321及び正極板31の集電端子311がともに電池ケース2の上部開口側に位置するため、溶接作業を容易に行うことができる。
【0120】
<第5実施形態の効果>
このように構成した第5実施形態に係るアルカリ蓄電池100によれば、負極板32の集電端子321が、スペーサ61、62の上部において電池ケース2の内側周面2Aに延びているので、集電端子321を電池ケース2の内側周面2Aに溶接等によって接続する作業の作業性を向上させることができ、電池の生産性を向上させることができる。なお、電池ケース2の内側周面2Aに接続されない集電端子311は、電池ケース2の上部開口を封止する封口体5に接続される。このように正極板31の集電端子311及び負極板32の集電端子321を、電池ケース2の底面2Bに接続する必要が無く、電池の生産性を向上させることができる。
【0121】
<第5実施形態に関する変形例>
なお、本発明は前記第5実施形態に限られるものではない。例えば、図28に示すように、負極板32の集電端子321が、一方のスペーサ61、62の上面6uに沿って電池ケース2の内側周面2Aに延びるように構成しても良い。
【0122】
また、集電端子321を一方のスペーサ61の上面6uに沿って設ける場合には、図29及び図30に示すように、負極板32の集電端子321を電池ケース2の内側周面2Aにガイドするためのガイド溝6Mを設けることが好ましい。このガイド溝6Mは、電極群3に接触する面(電極接触面6x)から電池ケース2の内側周面2Aに接触する面(ケース接触面6y)に亘って集電端子321の延出方向(図29では積層方向L)に沿って形成されており、ガイド溝6Mの幅は、前記集電端子321の幅寸法よりも若干大きく形成されている。なお、ガイド溝6Mの深さは、集電端子321の位置決めが可能な深さであれば良い。集電端子321は、ガイド溝6Mの少なくとも底面に接触することにより、電池ケース2の内側周面2Aにガイドされる。
【0123】
さらに、貫通孔6C又はガイド溝6Mを形成する他、図31に示すように、集電端子321が電池ケース2の内側周面2Aに延びる空間を確保するための切り欠き部6Kを形成したものであっても良い。なお、図31においては、集電端子321が負極板32の幅方向一端部に接続されており、これに対応して切り欠き部6Kもスペーサ61、62の幅方向一端部に形成されている。なお、前記実施形態等においても同様に、集電端子321が負極板32の幅方向一端部に接続された場合には、それに対応して、貫通孔6C又はガイド溝6Mがスペーサ61、62に形成される。
【0124】
また、前記実施形態のスペーサ61、62は、平面状の電極接触面6x及び円弧状のケース接触面6yからなる断面概略半円形状をなすものであったが、その他、前記電極接触面6x及びケース接触面6yを有する形状であり、電極群3を電池ケース2に固定するものであれば種々の形状とすることができる。
【0125】
また、前記実施形態では、負極板の集電端子を電池ケースの内側周面に溶接して接続しているが、スペーサの外側面と電池ケースの内側周面との間に挟むことによって溶接することなく電気的に接続しても良い。
【0126】
また、前記実施形態では、負極板の集電端子を負極板に溶接等により接続して設けているが、負極板の負極集電体と一体に形成することにより設けても良い。
【0127】
<第6実施形態>
次に本発明に係る円筒形電池の第6実施形態について図面を参照して説明する。なお、前記各実施形態に対応する部材には同一の符号を付している。
【0128】
第6実施形態に係る円筒形電池100は、前記第1実施形態等とは、負極板32の構成が異なり、また、当該負極板32の集電端子321と電池ケース2との電気的接続方法が異なる。
【0129】
具体的に負極板32は、図32及び図33に示すように、負極活物質を保持しない直線状の活物質非保持部(未塗工部)32Aと、この活物質非保持部32Aを挟んで両側に形成され、負極活物質を保持する活物質保持部(塗工部)32Bとを有する。活物質非保持部32Aは、負極集電体の中心線Hを含むように左右対称に形成されており、活物質保持部32Bは、活物質非保持部32Aに対して左右対称である(図33参照)。
【0130】
そして、負極板32は、図32に示すように、両側の活物質保持部32Bが向き合うように活物質非保持部32Aにおいて負極集電体が概略Uの字状に折り曲げられている。具体的には、活物質非保持部32A及び活物質保持部32Bの境界又は境界よりも若干内側を折り曲げ線として活物質非保持部32A及び活物質保持部32Bが互いに直角となるように折り曲げられている。
【0131】
さらに、負極板32は、活物質非保持部32Aの一部が外側に折り曲げられることにより、電池ケース2の内面に接触する集電端子321が形成される。具体的には、図33に示すように、活物質非保持部32Aの一部に、所望の集電端子形状となるように切れ込み32Cを入れて、その切れ込み32C内部を外側に折り曲げることにより集電端子321が形成される。
【0132】
この切れ込み32Cは、切れ込み始点a及び切れ込み終点bがともに活物質非保持部32Aの側辺部側に位置しており、その切れ込み始点a及び切れ込み終点bを結ぶ切れ込み線cが活物質非保持部32A内に形成されている。本実施形態では、所望の集電端子形状が矩形状をなすものであることから、切れ込み線cは、平面視において概略Uの字状をなすものである。
【0133】
そして、切れ込み32C内部に形成された集電端子321は、切れ込み32Cにより折り曲げられて、活物質非保持部32Aの側辺部から傾斜して外側に折り曲げられる。折り曲げられた状態において、活物質非保持部32Aの平面方向と集電端子321の平面方向とはほぼ同一方向であり、活物質非保持部32Aと集電端子321とは略同一平面内に位置する。これにより、負極板32を電池ケース2内に収容した状態で、活物質非保持部32Aを電池ケース2の底面2Bに接触させることができるとともに、集電端子321を電池ケース2の底面2Bに接触させることができる。また、平面状の活物質非保持部32Aを電池ケース2の底面2Bに接触させるように配置することができ、電池ケース2内のスペースを有効に利用することができる。
【0134】
ここで本実施形態では、集電端子321が活物質非保持部32Aの側辺部から傾斜して延びる構成として、切れ込み始点aにおける側辺からの距離と、切れ込み終点bにおける側辺からの距離とが互いに異なるようにされている。図33においては、切れ込み始点aの側辺からの距離が、切れ込み終点bの側辺からの距離よりも短くされており、これにより、切れ込み始点a及び切れ込み終点bとを結ぶ折り曲げ線dが側辺に対して傾斜することから、切れ込み内部を切れ込み始点a及び切れ込み終点bに基づいて、切れ込み32C内部を外側に折り曲げることにより、集電端子321が活物質非保持部32Aの側辺に対して傾斜して外側に延びる。
【0135】
このように構成した負極板32の製造方法は次の通りである。まず、図34に示すように、長尺形状をなす母材Xに対して、その長手方向に沿って中心部に直線状の未塗工領域X1を残して、その両側に負極活物質を塗工して塗工領域X2、X3を形成する。そして、負極板32の展開状態と同一形状となるように切断していく。なお、図7において点線が切断線を示している。その後、切断された負極板32の未塗工部32Aに切れ込み32Cを形成し、負極板32を概略Uの字状に折り曲げるとともに集電端子321を外側に折り曲げる。なお、切れ込み32Cは負極板32を切断する前に形成しても良い。
【0136】
しかして本実施形態の円筒形電池100では、図35図37に示すように、負極板32の集電端子321をスペーサ6により、電池ケース2の底面2B及び内側周面2Aの両方に押圧接触させている。
【0137】
具体的に、負極板32における活物質非保持部32Aの側辺部から傾斜して延びる集電端子321は、スペーサ61の外側面(図36においては、電極接触部6Aの外側角部6Ax)により電池ケース2の内側周面2Aに押圧されて接触する。また、この集電端子321は、スペーサ61の下面(図35及び図37においては電極接触部6Aの下面6Ay)により電池ケース2の底面2Bに押圧されて接触する。
【0138】
<第6実施形態の効果>
このように構成した第6実施形態に係るアルカリ蓄電池100によれば、負極板32の集電端子321が、電池ケース2の底面2B及び内側周面2Aに溶接されることなく接触し、スペーサ61により底面2B及び内側周面2Aに押圧されているので、集電端子321を電池ケース2に溶接する作業を不要にし、スペーサ61、62を電池ケース2に挿入するだけで、集電端子321と電池ケース2とを接触させることができるので、製造工数を削減することができる。また、集電端子321がスペーサ61により電池ケース2に押圧されていることから、集電端子321と電池ケース2との電気的な接続を良好に保つことができるとともに、集電端子321と電池ケース2との間の抵抗を可及的に小さくすることができる。
【0139】
<第6実施形態に関する変形例>
なお、本発明は前記第6実施形態に限られるものではない。例えば、前記第6実施形態では、負極板32の集電端子321を一体形成したものであったが、負極板32に別部品の集電端子を溶接して一体化するものであっても良い。
【0140】
<第7実施形態>
前記第6実施形態では、集電端子が折り曲げ部から外側に延びるように設けられているが、活物質保持部32B(平板部)から外側に延びるように設けても良い。
【0141】
具体的に負極板32は、図38に示すように、負極集電体に負極活物質を塗工して構成され、対向する2つの平板部32L、32M及び当該平板部32L、32Mを連結する折り曲げ部32Nを有する概略Uの字状をなすものである。そして、この2つの平板部32L、32Mの間にセパレータ33を介して正極板31が挟まれる。
【0142】
2つの平板部32L、32Mは、図38及び図39に示すように、中心軸方向Cに沿った側辺部(長手側辺部)が負極活物質が塗工されない活物質非保持部(未塗工部)32Zとされており、当該活物質非保持部32Zが集電端子321となる。つまり、2つの平板部32L、32Mの長手側辺部全体が集電端子321となり、2つの平板部32L、32Mの長手側辺部全体が、電池ケース2の内側周面に中心軸方向Cに沿って接触することになる。図40においては、一方の平板部32Lに形成された集電端子321は、当該平板部32Lに接触するスペーサ61により電池ケース2の内側周面2Aに押圧接触されるとともに、他方の平板部32Mに形成された集電端子321はスペーサ62に押圧されることなく電池ケース2の内側周面2Aに接触する。詳細には負極板32の集電端子321の長手側辺部を、スペーサ61により、中心軸方向C全体に亘って、電池ケース2の内側周面2Aに中心軸方向Cに沿って押圧接触させている。なお、図41に示すように、他方の平板部32Mに形成された集電端子321を、当該平板部32Mに接触するスペーサ62により電池ケース2の内側周面2Aに押圧接触しても良い。
【0143】
このように構成した負極板32の製造方法は次の通りである。まず、図42に示すように、長尺形状をなす母材Xに対して、その長手方向に沿って未塗工領域X1及び塗工領域X2をストライプ状に形成する。そして、負極板32の展開状態と同一形状となるように切断していく。なお、図42において太線が切断線を示している。そして、負極板32を概略Uの字状に折り曲げる。このように製造することから、折り曲げ部32Nの側辺部においても活物質非保持部32Zが形成される。なお、平板部32L、32Mの活物質非保持部32Zと折り曲げ部32Nの活物質非保持部32Zとの境界には、平板部32L、32Mの活物質非保持部32Zの変形を容易にするための切り込みを入れることが好ましい。
【0144】
<第7実施形態の効果>
このように構成した第7実施形態に係るアルカリ蓄電池100によれば、負極板32が、電池ケース2の内側周面2Aに接触していることから、電極群3が電池ケース2に中心軸方向Cにずれたとしても、電池ケース2との接触を保つことができ、電気的な接続を良好に保つことができる。
【0145】
なお、図43(A)に示すように、何れか一方の平板部32L又は32Mに集電端子321を設けるものであっても良い。これならば、基材の使用量を削減することができる。また、図43(B)に示すように、2つの平板部の集電端子321をそれぞれ異なる側辺部に形成するようにしても良い。
【0146】
<第8実施形態>
前記各実施形態の円筒形電池において、図44及び図45に示すように、電極群3のセパレータ33に電解液を供給すべく電解液を保持する保液部材7を有する。
【0147】
この保液部材7は、電池ケース2内において当該電池ケース2と電極群3との間に配置されるものであり、前記セパレータ33と同一材料(例えばポリオレフィン製の不織布)から形成されている。
【0148】
具体的に保液部材7は、図46に示すように、電極群3において電池ケース2の中心軸方向Cに平行な4つの側面3a〜3d全体を被覆するものであり、より詳細には、電極群3の4つの側面3a〜3d(図45参照)及び下面3e(図44参照)を覆う袋状をなすものである。
【0149】
ここで本実施形態のセパレータ33は正極板31を収容するものであり、電極群3の積層方向Lに平行な側面3c、3dにおいて、正極板31の短手側面を覆うように外面に位置している(図45参照)。このような電極群3を袋状の保液部材7に収容することで、セパレータ33及び保液部材7とは、正極板31の短手側面において互いに接触することになる。このように接触していることから保液部材7の電解液をセパレータ33に効率良く供給することができる。
【0150】
ここで本実施形態の電極群3は保液部材7に収容されていることから、スペーサ61、62は、保液部材7において電極群3の外側面3a、3bに接触する部分の略全体に接触することで、電極群3の外側面3a、3bを押圧する。これにより、保液部材7は、電極群3及びスペーサ61、62との間に挟まれて固定される。この構成により電極群3及び保液部材7を共通のスペーサ61、62により固定することができ、電池ケース2内の構成を簡単化することができる。
【0151】
<第8実施形態の効果>
このように構成した第8実施形態に係るアルカリ蓄電池100によれば、保液部材7を電極群3のセパレータ33に接触して設けていることから、当該保液部材7から電極群3のセパレータ33に電解液を供給することができ、セパレータ33に保持される電解液を十分に保つことができるので、電極群3の内部抵抗の上昇を抑制することができる。このとき、電極群3内のセパレータ33を厚くする必要が無いため、電極群3の放電性能が低下することはない。また、保液部材7が電極群3を収容する袋状をなすものであり、負極板32から負極活物質が脱落することを防止することもできる。特に負極板32における積層方向Lに平行な側面(短手側面)における負極活物質の脱落を防止することができる。
【0152】
また、スペーサ61、62を用いて電極群3及び保液部材7を固定しているので、電池ケース2に対する電極群3及び保液部材7のがたつきを防止して、正極板31及び負極板32の活物質の脱落を抑制して充放電性能の劣化を防ぎ、充放電性能を向上させることができるとともに、電極群3及び保液部材7の接触を確実にすることができる。
【0153】
<第8実施形態に関する変形例>
なお、本発明は前記第8実施形態に限られるものではない。例えば、前記第8実施形態では、保液部材7が袋状をなしており電極群3を収容するものであったが、保液部材7の形状はこれに限られない。例えば、保液部材7が、概略筒形状をなしており電極群3の4つの側面3a〜3dを覆うものであっても良い。
【0154】
また、図47に示すように、保液部材7をスペーサ61、62と電極群3との間に介在させることなく、電極群3の積層方向Lの外側面3a、3bではなく、積層方向Lに平行な側面3c、3dに接触するように保液部材7を設けても良い。このとき、保液部材7を電極群3及びスペーサ61、62と電池ケース2との間に形成される空間を充填するように設けても良い。
【0155】
さらに、前記第8実施形態ではセパレータ33と保液部材7とが同一材料から形成されるものであったが、互いに異なる材料から形成されるものであっても良い。
【0156】
<第9実施形態>
次に本発明に係る円筒形電池の第9実施形態について図面を参照して説明する。なお、前記各実施形態に対応する部材には同一の符号を付している。
【0157】
第9実施形態に係る円筒形電池100は、前記各実施形態とは正極板又は負極板の構成が異なる。以下においては、正極板の構成が異なる場合について説明する。
【0158】
具体的に正極板31は、図48図50に示すように、集電端子311を有する1つの第1極板要素31Aと、集電端子311を有さない1つ以上の第2極板要素31Bとを有し、それら極板要素31A、31Bを接触させて積層して構成された概略直状態形状をなすものである。
【0159】
この第1極板要素31A及び第2極板要素31Bは、例えば発泡ニッケル等の発泡性金属多孔体(正極基材)に正極活物質を充填して構成されており、第1極板要素31Aの正極基材及び第2極板要素31Bの正極基材は、平面視において略同一形状であり、また略同一厚みを有する。
【0160】
本実施形態の正極板31は、特に図50に示すように、1つの第1極板要素31Aと2つの第2極板要素31Bからなり、第1極板要素31Aの両面に1つずつ第2極板要素31Bを配置して積層して構成されている。つまり、第1極板要素31Aの両面に同数の第2極板要素31Bを積層して、第1極板要素31Aが正極板31において中心に位置するように積層される。このように第1極板要素31Aを正極板31の中心に配置することで各第2極板要素31Bの集電効率の向上を図っている。
【0161】
そして、第1極板要素31Aは、図50及び図51に示すように、その上端部における中央部分に集電端子311を溶接するための概略矩形状をなす活物質除去部31Axが形成されている。この活物質除去部31Axは、集電端子311の溶接部分よりも若干大きく、正極基材に充填された正極活物質を除去して形成される。そして、活物質除去部31Axの一部が、集電端子311の形状に合わせて圧縮されて、当該圧縮部分に集電端子311が溶接される。
【0162】
また、スペーサ61、62により電極群3が押圧されることにより、正極板31の第1極板要素31Aの正極基材又は正極活物質及び第2極板要素31Bの正極基材又は正極活物質が互いに押圧接触して、第1極板要素31A及び第2極板要素31Bの導電性が良好となる。そして、このように第1極板要素31A及び第2極板要素31Bが押圧接触することから、第1極板要素31Aの集電端子311により、第2極板要素31Bの集電を効率良く取ることが可能となる。
【0163】
<第9実施形態の効果>
このように構成した第9実施形態に係るアルカリ蓄電池100によれば、正極板31を第1極板要素31A及び第2極板要素31Bに分割することで、集電端子311が設けられる第1極板要素31Aの厚みを可及的に薄くすることができ、第1極板要素31Aにおいて除去される正極活物質量を少なくすることができる。一方、第2極板要素31Bにおいては正極活物質を除去する必要が無い。このように第1極板要素31A及び第2極板要素31Bに分割することで、正極活物質のロスを少なくすることができ、正極板全体としての正極活物質の充填性を向上させることができる。その上、集電端子311は第1極板要素31Aにのみ溶接すればよく、余分な集電端子を溶接する必要が無いため、生産性を向上させることもできる。加えて、スペーサ61、62が積層方向Lから電極群3を挟むことから、電極群3に押圧がかかるため、第1極板要素31A及び第2極板要素31Bが十分に押圧接触することになり、十分な導電性を取ることができる。
【0164】
発泡ニッケルを用いた正極板31において第1極板要素31A及び第2極板要素31Bに分割していることから、正極活物質が除去される第1極板要素31Aの厚みを薄くすることができ、活物質除去部31Axの体積を小さくすることができる。これにより、正極活物質のロスを小さくしながらも、圧縮される部分と圧縮されない部分との間に生じるせん断ひずみを緩和することができる。
【0165】
<第9実施形態に関する変形例>
例えば、前記第9実施形態では、1つの第1極板要素31Aに対して2つの第2極板要素31Bを積層した例を示したが、図52(A)に示すように、1つの第1極板要素31Aの両面にそれぞれ2つ以上の第2極板要素31Bを積層して構成しても良い。
【0166】
また、前記第9実施形態では、第1極板要素31A及び第2極板要素31Bが同じ厚みを有するものであったが、図52(B)に示すように、第1極板要素31A及び第2極板要素31Bの厚みが異なるものであっても良く、第2極板要素31B毎に厚みが異なるものであっても良い。
【0167】
さらに、図53に示すように、1つの第1極板要素31Aに対して2つ以上の第2極板要素31Bを積層して構成した正極板ユニット31Uを複数ユニット用いて、これら複数の正極板ユニット31Uを積層して構成しても良い。これならば、各ユニット31U毎に正極活物質のロスを可及的に少なくしつつも、正極板31全体としての集電効率を向上させることができる。
【0168】
また、前記第9実施形態では正極板について第1極板要素及び第2極板要素に分割した例を示したが、負極板において第1極板要素及び第2極板要素に分割しても良い。
【0169】
<第10実施形態>
次に本発明に係る円筒形電池の第10実施形態について図面を参照して説明する。なお、前記各実施形態に対応する部材には同一の符号を付している。
【0170】
第10実施形態に係る円筒形電池100は、前記各実施形態とは正極31の構成及びスペーサ6の構成が異なる。
【0171】
具体的に正極31は、図54に示すように、その上面に例えばニッケル鋼板等からなる集電端子311が溶接により設けられている。この集電端子311は、正極31の上面31eにおいて長手方向(幅方向)の一方に外側に延びている。また、集電端子311は、正極基材からの集電効率を向上させるために、正極31の上面31eの略全体に亘って設けられている。
【0172】
なお、この正極31は、概略直方体形状をなす正極基材に正極活物質を充填したものであっても良いし、平板状の正極基材に正極活物質を充填させたものを積層又は折り曲げたものであっても良い。
【0173】
そして、スペーサ6が、図55及び図56に示すように、電極群3の積層方向Lの最外面(具体的には負極板32)の略全体に接触する接触面を一方面6aに有する矩形平板状の電極接触部6Aと、この電極接触部6Aの他方面6bから延出して電池ケース2の内側周面2Aに接触する2つのケース接触部6Bとを有する等断面形状をなすものである。
【0174】
電極接触部6Aは、電極群3の積層方向Lの最外面に沿った形状をなすものである。この電極接触部6Aの上部には、電極群3の上面に対向する突起片6Tが形成されている。この突起片6Tは、電極接触部6Aの上端中央部において当該電極接触部6Aから略垂直に延びている(図56参照)。また、電極接触部6Aの上部の角部には、電極群3の上角部を囲む囲み壁部6Pが形成されている。この囲み壁部6Pは、電極群3の上面に対向する上壁6P1と、電極群3の左右側面に対向する側壁6P2とを有する(図56参照)。
【0175】
2つのケース接触部6Bは、電極接触部6Aの他方面6bにおいて中心軸方向Cに沿って互いに並列に形成されている。具体的には、電池ケース2に収容された状態において電池ケース2の中心軸を挟むように対称に形成されている。さらに、ケース接触部6Bにおける電池ケース2の内側周面2Aとの接触部分は、電池ケース2の内側周面2Aの曲面と略同一の曲面を有する。これにより、ケース接触部6Bと電池ケース2とが面接触するように構成している(図57参照)。
【0176】
このようなスペーサ6を用いて電極群3を挟むように電池ケース2に配置すると、図57に示すように、2つのスペーサ6の突起片6Tにより、正極板31の集電端子311が接触又は押圧される。なお、集電端子311において突起片6Tに接触する部分よりも自由端部側が折り曲げられて封口体5に溶接される。ここで、集電端子311の立ち上がり位置は、突起片6T近傍となる。また、2つのスペーサ6の囲み壁部6Pにより、正極板31及び負極板32の上角部が収容されることになる。
【0177】
<第10実施形態の効果>
このように構成した第10実施形態に係るアルカリ蓄電池100によれば、電極群3の上面に対向する突起片6Tが設けられているので、正極31の上面に溶接された集電端子311に突起片6Tが接触するため、集電端子311の位置ずれを防止できるとともに、集電端子311の溶接箇所が破断して剥がれてしまうことを防止できる。また、スペーサ6の上部に、電極群3の上角部を囲む囲み壁部6Pが設けられているので、電池ケース2と正極31とが接触してしまうことを防止することができる。また、正極31の集電端子311と負極32との接触を防止することができる。さらに、電極群3における正極31及び負極32のずれを防止することもできる。その上、囲み壁部6Pを設けることで、従来必須とされていた上部絶縁板を配置する必要が無くなり、製造工程を簡略化できるとともに材料コストを削減することができる。
【0178】
<第10実施形態に関する変形例>
なお、本発明は前記第10実施形態に限られるものではない。例えば、スペーサ6と電池ケース2の内側周面との間にすき間を形成するようにしても良い。具体的には、電池ケース2の底部側においてすき間を設けることが望ましい。スペーサ6の構成としては、図58に示すように、電極接触部6Aの底部の角に角丸加工を施してR部を形成し、ケース接触部の底部の角に角丸加工を施してR部を形成する。このように、スペーサ6及び電池ケース2の内側周面の間にすき間を設けることによって、電極群3への電解液の移動を容易にすることができる。その他、ケース接触部6Bにおいて電池ケース2の底面側に行くに従って高さ寸法が小さくなる構成も考えられる。
【0179】
また、電極群3への電解液の移動及び電極群3からのガスの放出をスムーズにするために、スペーサに厚み方向に貫通する1又は複数の孔を形成しても良い。前記第10実施形態の構成のスペーサにおいては、電極接触部6Aに孔を設けることが考えられる。
【0180】
さらに、電極群3への電解液の移動及び電極群3からのガスの放出をスムーズにするために、スペーサ6における電極接触部6Aの一方面6aに上下に開口する1又は複数の溝を形成すること、または、スペーサにおける電極接触部6aにエンボス加工を施すことが考えられる。
【0181】
その上、スペーサ6が導電性を有しており、電極群における最外側の電極と電池ケースとを電気的に接続する端子として作用するものであっても良い。
【0182】
本発明は、アルカリ蓄電池の他、リチウムイオン二次電池等の二次電池に適用することも可能であり、又は一次電池に適用しても良い。
【0183】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。また、前記各実施形態の構成を任意に組み合わせても良い。電池ケースとスペーサと電極群以外の部材を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明により、電池内部圧力の上昇に強いだけでなく、電極群の巻きずれを考慮する必要の無い電池にするとともに、電池ケースに対する電極群のがたつきを防止することができ、極板の活物質の脱落を抑制して充放電性能の劣化を防ぐことができる。
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