特許第5915759号(P5915759)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5915759ワイヤーハーネス用保護材料及びワイヤーハーネス保護材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5915759
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス用保護材料及びワイヤーハーネス保護材
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20160422BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20160422BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20160422BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   H02G3/04
   H01B7/00 301
   B32B5/26
   B60R16/02 623U
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-535415(P2014-535415)
(86)(22)【出願日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】JP2013069758
(87)【国際公開番号】WO2014041895
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2014年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-200127(P2012-200127)
(32)【優先日】2012年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 成幸
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−058571(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/136199(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/008199(WO,A1)
【文献】 特表2009−503210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B32B 5/26
B60R 16/02
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネス用保護材料が所定の形状に成形されたワイヤーハーネス保護材により電線束の周囲が被覆されているワイヤーハーネスであり、
前記ワイヤーハーネス保護材の成形に用いられる前記ワイヤーハーネス用保護材料は、少なくとも2枚の不織布が積層された不織布積層体から構成され、
前記不織布積層体は、長繊維である主体繊維を主成分とし強度を付与するための基材不織布と、熱接着性を有するバインダー繊維を主成分とし熱成形性を付与するための熱接着性不織布を有しており、
前記ワイヤーハーネス保護材は、前記基材不織布が外側となるように配置されていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記基材不織布の主体繊維が、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、レーヨン繊維、アクリロニトリル繊維、セルロース繊維、ガラス繊維からなる群から選択されるいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネス。
【請求項3】
前記熱接着性不織布のバインダー繊維が、低融点ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維からなる群より選択されるいずれか1種の繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載のワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス用保護材料、ワイヤーハーネス保護材、及びワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や電化製品を中心に高性能化、高機能化が進められている。自動車や電化製品等の様々なエレクトロニクス設備を正確に作動させるため、自動車や電化製品等の内部配線には、複数の電線が使用されている。一般に、これら複数の電線は、ワイヤーハーネスの形態で使用される。
【0003】
ワイヤーハーネスは、複数の電線からなる電線束が予め配線に必要な形態に組み上げられている。例えばワイヤーハーネスは、必要な分岐が形成され、その端末へのコネクタ付け等を施した上で、テープ状、チューブ状又はシート状等の種々の形状からなるワイヤーハーネス保護材が電線束の外周に巻装されて形成されている。
【0004】
一般に、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂短繊維を用いて作製された不織布は、例えば、フィルターやクッション材、車内シート材、車内天井材等のように、多くの工業用途、自動車用途等で利用されている。本出願人等は、不織布をワイヤーハーネス用保護材料として用いたワイヤーハーネス保護材及びワイヤーハーネスを先に提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−267412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の短繊維不織布を用いたワイヤーハーネス用保護材料は、軟化点の低いバインダー繊維を混合しているため、ワイヤーハーネス保護材とした場合に、高温で軟化・溶融し易くなり、ワイヤーハーネス保護材自体の引張強さが低下するという問題があった。
【0007】
また接着力を高めようとする、バインダー繊維の含有量を多くする必要があるが、バインダー繊維が多くなると、耐熱性が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、接着性、成形性が良好であり、ワイヤーハーネス保護材の引張強さが高温で低下し難く、耐熱性に優れたワイヤーハーネス用保護材料、ワイヤーハーネス保護材及びワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のワイヤーハーネス用保護材料は、
ワイヤーハーネス保護材の成形に用いられるワイヤーハーネス用保護材料であって、少なくとも2枚の不織布が積層された不織布積層体から構成され、
前記不織布積層体は、主体繊維を主成分とし強度を付与するための基材不織布と、熱接着性を有するバインダー繊維を主成分とし熱成形性を付与するための熱接着性不織布を有することを要旨とするものである。
【0010】
上記ワイヤーハーネス用保護材料において、前記基材不織布の主体繊維を短繊維とすることができる。
【0011】
上記ワイヤーハーネス用保護材料において、前記基材不織布の主体繊維を長繊維とすることができる。
【0012】
上記ワイヤーハーネス用保護材料において、前記基材不織布の主体繊維が、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、レーヨン繊維、アクリロニトリル繊維、セルロース繊維、ガラス繊維からなる群から選択されるいずれか1種であることが好ましい。
【0013】
上記ワイヤーハーネス用保護材料において、前記熱接着性不織布のバインダー繊維が、低融点ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維からなる群より選択されるいずれか1種の繊維であることが好ましい。
【0014】
本発明のワイヤーハーネス保護材は、上記のワイヤーハーネス用保護材料が所定の形状に成形されていることを要旨とするものである。
【0015】
本発明のワイヤーハーネスは、上記のワイヤーハーネス用保護材料が所定の形状に成形されたワイヤーハーネス保護材により電線束の周囲が被覆されているワイヤーハーネスであり、前記ワイヤーハーネス保護材の前記基材不織布が外側となるように配置されていることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のワイヤーハーネス用保護材料は、ワイヤーハーネス保護材の成形に用いられるワイヤーハーネス用保護材料であって、少なくとも2枚の不織布が積層された不織布積層体から構成され、前記不織布積層体は、主体繊維を主成分とし強度を付与するための基材不織布と、熱接着性を有するバインダー繊維を主成分とし熱成形性を付与するための熱接着性不織布を有することにより、バインダー繊維を含む不織布の単一層により構成した従来のワイヤーハーネス用保護材料と比較して、基材不織布により全体の強度、耐熱性を持たせ、熱接着性繊維により熱成形性を付与するように、各不織布層に機能を分けたことにより、全体としてバインダー繊維を減らすことが可能となり、接着性、成形性を低下させずに、耐熱性に優れたワイヤーハーネス保護材及びワイヤーハーネスを得ることができる。
【0017】
本発明のワイヤーハーネスは、上記のワイヤーハーネス保護材料から成形されたワイヤーハーネス保護材により、電線束の周囲が被覆されていて、ワイヤーハーネス保護材の外側に位置している基材不織布により、保護性能を発揮することができるとともに、内側の熱接着性不織布により、電線束との接着性やワイヤーハーネス保護材の良好な接着が得られる。また熱接着性不織布が外側に露出しない状態なので、加熱により溶融したバインダー繊維の樹脂により、表面がべたつくといった不具合もない。
【0018】
本発明のワイヤーハーネス保護材は、上記のワイヤーハーネス用保護材料が所定の形状に成形されているものであるから、上記のワイヤーハーネスを形成するのに用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明のワイヤーハーネス用保護材料の一例を示す断面図である。
図2図2は本発明のワイヤーハーネスの一例を示す断面図である。
図3図3は本発明のワイヤーハーネス保護材とワイヤーハーネスの他の例を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明のワイヤーハーネス用保護材料の一例を示す断面図である。図1に示すように、本発明のワイヤーハーネス用保護材料1は、ワイヤーハーネス保護材の成形に用いられるものであり、基材不織布2と熱接着性不織布3の2枚の不織布が積層された不織布積層体から構成されている。2枚の不織布2、3は、ニードルパンチ法により積層一体化されている。
【0021】
基材不織布2は、主体繊維を主成分としワイヤーハーネス保護材を形成した場合に、芯材として強度を付与するためのものである。主体繊維は、例えば、単繊維、長繊維のいずれを用いてもよい。また基材不織布2は、主体繊維を50質量%以上含有していればよく、バインダー繊維(詳細は後述する)等の他の繊維を混合してもよい。
【0022】
上記主体繊維の繊維径は、1〜40dtが好ましい。また上記バインダー繊維の繊維径は、1〜40dtが好ましい。
【0023】
基材不織布2の主体繊維の種類としては、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、レーヨン繊維、アクリロニトリル繊維、セルロース繊維、ガラス繊維等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、複数種類を混合してもいずれでもよい。
【0024】
基材不織布2の主体繊維として短繊維を用いる場合は、繊維長30〜120mmの繊維が好ましい。繊維の形状は特に限定されず、芯鞘型、円筒型、中空型、サイドバイサイド型や、通常の円形断面繊維以外に異形断面繊維を使用してもよい。
【0025】
基材不織布2は、目付100〜2500g/m、厚み0.1〜30mmのものを用いるのが好ましい。基材不織布2は、短繊維を用いた場合は、ニードルパンチ法等で製造することができる。また基材不織布2は、長繊維を用いた場合は、スパンボンド法等で製造することができる。
【0026】
主体繊維として長繊維不織布を用いた場合には、短繊維不織布と比較して、引張強さ等が大きくなるので、ワイヤーハーネス保護材に強固な物性を付与することができるという利点がある。尚、長繊維不織布は、バインダー繊維等の他の繊維と混綿することができないので、単層の不織布の構成では、成形性を付与することが不可能である。熱接着性不織布3と積層することで、熱成形性を持たせることができる。
【0027】
熱接着性不織布3は、熱接着性を有するバインダー繊維を主成分とし、ワイヤーハーネス用保護材料1に熱成形性を付与するためのものである。熱接着性不織布3はバインダー繊維が50質量%以上含有していればよく、上記主体繊維等で例示した他の繊維を含有していてもよい。熱接着性繊維のバインダー繊維は、熱成形性を付与するために、基材不織布2の主体繊維に対し、低融点(軟化点)の樹脂繊維を用いたものである。バインダー繊維の軟化点は、200℃以下であるのが好ましい。
【0028】
上記熱成形性とは、加熱により所定の形状に成形することが可能な熱可塑性を有しているという意味である。熱成形性を有する不織布を用いることで、ワイヤーハーネス用保護材料から所定の形状のワイヤーハーネス保護材に容易に形成することが可能である。
【0029】
上記バインダー繊維は、例えば低融点ポリエステル繊維又はポリオレフィン繊維が挙げられる。上記バインダー繊維は単独で使用しても混合して使用しても、いずれでもよい。
【0030】
上記バインダー繊維は、芯部分の繊維を鞘部分のバインダー層で被覆してなる芯鞘構造を有する繊維を用いてもよい。芯鞘構造のバインダー繊維は、バインダー層の樹脂に、芯部分の繊維よりも軟化温度の低い低融点樹脂を用いたものである。
【0031】
芯鞘構造のバインダー繊維は、例えば芯部分にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂繊維を用い、バインダー層の樹脂として、ポリエチレンイソフタレート(PEI)とPETとの共重合体を用いた低融点ポリエステル繊維、芯部分にPET繊維を用い、バインダー層の樹脂として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂等を用いたポリオレフィン繊維が挙げられる。
【0032】
熱接着性不織布3は、目付100〜2000g/m、厚み0.1〜30mmのものを用いるのが好ましい。また上記繊維は、繊維径1〜40dt、繊維長30〜120mmの単繊維を用いることができる。繊維形状は、円筒型、中空型、サイドバイサイド型、芯鞘型等が挙げられる。また繊維は繊維形状の異なる異型断面繊維を使用してもよい。
【0033】
上記2枚の不織布の積層は、ニードルパンチ法以外に、カレンダー法や超音波接着法等の手段を用いて積層してもよい。
【0034】
図2は本発明のワイヤーハーネスの一例を示す断面図である。図2に示すように、ワイヤーハーネス4は、複数の電線5を束にした電線束の周囲を、上記のワイヤーハーネス用保護材料から成形されたワイヤーハーネス保護材6により被覆されている。電線5は芯線51の周囲が絶縁体52により被覆されたものである。
【0035】
図2に示すワイヤーハーネス4は、下記の製造方法で得られる。ワイヤーハーネス用保護材料1を電線束の周囲に巻き回し、端部をオーバーラップさせて、端部が重なった状態とする。そして、その形状を保持した状態で、熱接着性不織布のバインダー樹脂の成形可能な温度まで全体を加熱する。所定の温度、時間を保持した後、冷却することで、所定の形状に固定される。
【0036】
図2に示すワイヤーハーネス4は、ワイヤーハーネス用保護材料1の熱接着性不織布3が内側(電線5側)となり、基材不織布2が外側となるように、電線束の周囲を覆っている。熱接着性不織布3が外側に露出していないので、熱接着性不織布3のバインダー繊維が加熱により溶融しても、外表面がべたつく等の不具合を避けることができる。
【0037】
図3は本発明のワイヤーハーネス保護材とワイヤーハーネスの他の例を示す外観斜視図である。図3に示すワイヤーハーネス4は、上記の不織布からなるワイヤーハーネス用保護材料1が、予め加熱プレス等の成形方法により、所定の形状に成形されたワイヤーハーネス保護材6を用いたものである。ワイヤーハーネス保護材6は、断面半円の凹溝状に成形され、両端部に平板状の接合部6a、6aが形成されている。ワイヤーハーネス保護材6は、基材不織布4が外側となり、熱接着性不織布3が内側となるように、ワイヤーハーネス用保護材料1を用いた。
【0038】
図3に示すワイヤーハーネス4は、2つのワイヤーハーネス保護材6、6を用いたものである。ワイヤーハーネス4は、複数の電線5から構成される電線束の周囲を覆うようにワイヤーハーネス保護材6、6を配置し、接合部6aどうしが接するようにする。その後、全体を加熱、加圧して、ワイヤーハーネス保護材6、6の熱接着性不織布どうしを接着させて一体化することができる。
【0039】
また図3に示すワイヤーハーネス4は、下記の方法で製造することも可能である。例えば、上下に二分割される上型と下型からなる所定の成形型を用い、各成形型にワイヤーハーネス用保護材料1を対向するように配置し、型締めして2枚の前記不織布1、1が電線束4を挟んでいる状態で所定の温度に加熱して成形を行う。成形の際、不織布1、1の電線束4の外側に突出している接合部6aの部分を接着させて一体化する。
【0040】
本発明のワイヤーハーネス用保護材料及びワイヤーハーネス保護材は、自動車用ワイヤーハーネス等の製造に用いることができ、特にエンジンルーム等のような耐熱性が要求される箇所で使用されるワイヤーハーネスとして好適に用いることができる。
【0041】
以下、本発明の実施例を示す。
〔実施例1−1〜1−4〕
表1に示すように、基材不織布として、PET短繊維単独あるいはバインダー繊維との混合繊維を用い表1に示す配合割合とし、熱接着性繊維として、PET短繊維とバインダー繊維の混合繊維を用い、基材不織布と熱接着性不織布を貼り合わせて、実施例1−1〜1−4の積層不織布からなるワイヤーハーネス用保護材料を得た。不織布の作製は、上記の混合繊維をニードルパンチ法により積層し、目付300g/m、厚み4mmとした。得られた積層不織布を用いて、引張強さ、高温引張強さ、剥離接着強さ、成形性について試験を行った。試験結果を表1に合わせて示す。尚、表1に示す各繊維の詳細と試験条件は、下記の通りである。
【0042】
〔不織布で使用した繊維について〕
(a)PET短繊維:ポリエチレンテレフタレート短繊維(6.6dt×51mm)
(b)バインダー繊維:バインダー層がポリエチレンイソフタレート(PEI)の共重合体で軟化点110℃、芯材がポリエチレンテレフタレート(PET)で、軟化点255℃の芯鞘型短繊維(6.6dt×51mm)である。
(c)PET長繊維:ポリエチレンテレフタレート長繊維(4.4dt)
【0043】
〔引張強さ〕
積層不織布をJIS K 6252に準拠して引張試験を行い、引張強さを測定した。
【0044】
〔高温引張強さ〕
80℃の高温環境下で上記引張強さと同様の条件で引張試験を行った。
【0045】
〔剥離接着強さ〕
積層不織布をJIS K 6854に準拠して試験片を作製し、T型剥離試験を行い、剥離接着強さを測定した。引張速度は、100mm/分で行った。
【0046】
〔成形性〕
2枚の積層不織布を、200℃で貼り合わせてシート状にプレスしてプレス成形品を作製した。このプレス成形品を目視で観察して、表面にシワ、剥離、ヤケ等の成形不良が確認できない場合、合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。
【0047】
〔比較例1〕
比較のため、実施例1−4の基材不織布のみの物性を実施例と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0048】
〔比較例2〕
比較のため、実施例1−4の熱接着性不織布のみの物性を実施例と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、基材不織布のみから構成した比較例1は、成形性が不十分であり、引張強さ、高温引張強さ、剥離接着強さのいずれも実施例1−1〜1−4と比較して大きく低下していた。また熱接着性不織布のみから構成した比較例2は高温引張強さが、初期の引張強さと比較して大きく低下しており、耐熱性が低い結果となっている。これに対し実施例1−1〜1−4は、いずれも高温接着強さが比較例1、2よりも良好であった。
【0051】
〔実施例2−1〜2−4〕
表2に示すように基材不織布として、PET長繊維不織布を用い、実施例1−1で用いた熱接着性不織布と同じ不織布を用いて、実施例1−1と同様にして積層不織布を作製した。実施例2−1〜2−4は、PET長繊維の目付(g/m)を、50、100、200、300と変化させている。実施例2−1〜2−4の積層不織布を用いて、表1の実施例1−1〜1−4と同様に、引張強さ、高温引張強さ、剥離接着強さ、成形性について試験を行った。試験結果を表2に合わせて示す。
【0052】
〔比較例3〕
比較のため、実施例2−1〜2−4で用いた基材不織布のみの物性を評価した。評価結果を表2に合わせて示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示すように、実施例2−1〜2〜4は、引張強さ、高温引張強さ、剥離接着強さのいずれも良好なものであった。特に基材不織布の目付が100(g/m)以上の実施例2−2〜2−4は、短繊維不織布を用いた実施例1−1と比較して5倍以上の引張強さを備えている。
【0055】
比較例3は、長繊維不織布のみから構成されているので、引張強さ、高温引張強さのいずれも良好であったが、接着性不織布を有していないので、2枚の不織布はほとんど接着していないので剥離接着強さが不良であった。これに対し実施例2−1〜2−4は、剥離接着強さが良好であった。
【0056】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0057】
例えば上記実施例のワイヤーハーネス保護材料は、2枚の不織布の積層体から構成したが、本発明ワイヤーハーネス用保護材料は、基材不織布又は熱接着性不織布を複数枚使用して、3枚以上の不織布の積層体から構成してもよい。
図1
図2
図3