(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載の圧電振動デバイスでは、第2キャビティにおいて、導電性接合材をサーミスタ素子搭載パッドに塗布し、導電性接合材を介してサーミスタ素子をサーミスタ素子搭載パッド上に接合させている。導電性接合材をサーミスタ素子搭載パッドに塗布する際、塗布位置がずれるとサーミスタ素子搭載パッドへのサーミスタ素子の搭載位置がずれる。
【0006】
そこで、温度センサ部の搭載のズレを無くす圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、圧電振動片を搭載するベースと、圧電振動片を気密封止する蓋とが設けられた圧電振動デバイスにおいて、底部と、ベースの一主面の主面外周に沿って底部から上方に延出した第1壁部と、ベースの他主面の主面外周に沿って底部から下方に延出した第2壁部と、から構成され、前記底部と前記第1壁部とによって囲まれ、圧電振動片を搭載する第1キャビティと、前記底部と前記第2壁部とによって囲まれ、温度検出素子である温度センサ部を搭載する第2キャビティとが形成され、前記第2キャビティ内の底面には、少なくとも前記第2壁部の内壁面と交差する露出電極が、前記第2キャビティ内において露出して形成され、前記露出電極には、流動性を有する導電性接合材により前記温度センサ部を接合する一対の温度センサ用電極パッドが含まれ、前記温度センサ部が接合された前記温度センサ用電極パッドを含む前記露出電極上の全面に前記導電性接合材が形成され
、一対の前記温度センサ用電極パッドは、同一形状の矩形に成形され、前記第2キャビティ内における各前記温度センサ用電極パッドの相互に近い辺をそれぞれ近方端縁とし、前記第2キャビティ内における各前記温度センサ用電極パッドの相互に遠い辺をそれぞれ外方端縁とし、一対の前記温度センサ用電極パッドの外周は、前記近方端縁を含む第1辺と、前記外方端縁を含む第2辺と、前記第1辺と前記第2辺とを繋げる一対の側辺とから構成され、前記第1辺には、相互に近づく方向に突出する矩形の突起部が形成されていることを特徴とする。なお、ここでいう温度センサ部としてサーミスタ素子が挙げられるが、これに限定されるものではなく、例えば、サーミスタ素子が内蔵されたものやダイオード、トランジスタ等であってもよい。
【0008】
本発明によれば、温度センサ部の搭載のズレを無くすことが可能となる。すなわち、本発明によれば、前記第2キャビティ内の底面に、前記露出電極が、前記第2キャビティ内において露出して形成され、前記露出電極に一対の前記温度センサ用電極パッドが含まれ、前記温度センサ部が接合された前記温度センサ用電極パッドを含む前記露出電極上の全面に前記導電性接合材が形成されるので、前記導電性接合材の塗布位置に関係なく、前記温度センサ部を所望の位置に搭載することが可能となる。特に、本発明は、圧電振動デバイスの小型化に対応した前記第2キャビティに汎用のサーミスタ素子等の温度センサ部を搭載するのに好ましい。
また、前記導電性接合材を、前記温度センサ用電極パッドの前記突起部に集めることが可能となる。その結果、前記温度センサ用電極パッドに前記温度センサ部を搭載する際に、前記温度センサ部の前記温度センサ用電極パッドに接する面に前記導電性接合材を行き渡り易くすることが可能となる。また、前記温度センサ用電極パッドへの前記温度センサ部の搭載について中央位置に配する(センタリング機能を有する)ことが可能となる。
【0009】
前記構成において
、各前記温度センサ用電極パッドにおいて前記近方端縁から前記外方端縁までの距離をD1とし、前記外方端縁から直近の前記第2キャビティの内壁面までの距離をD2とし、前記第2キャビティ内において2.85≦D1/D2≦15.67が成り立ってもよい。
【0010】
本構成において、D1/D2=2.85、5.00、5.25、5.33、9.00、および15.67において、前記温度センサ用電極パッドへの前記温度センサ部の搭載のズレが無いのが確認できた。
【0011】
前記構成において
、前記露出電極には、一対の前記温度センサ用電極パッドの前記外方端縁から直近の前記第2キャビティの内壁面に向かって、一対の前記温度センサ用電極パッドから引き出された引出部が含まれ、各前記温度センサ用電極パッドにおいて前記外方端縁から直近の前記第2キャビティの内壁面までの距離をD2とし、前記引出部の幅長をW1とし、前記第2キャビティ内においてW1>D2が成り立ってもよい。
【0012】
前記第2キャビティ内においてW1>D2が成り立つことで、前記導電性接合材を介した前記温度センサ部の前記温度センサ用電極パッドへの接合時に、前記導電性接合材が前記露出電極上を流れ(拡がり)易くなる。その結果、前記温度センサ用電極パッドへの前記温度センサ部の接合力を高めることが可能となり、特に、前記温度センサ用電極パッドに接合された前記温度センサ部の側面に、前記導電性接合材が形成された形態(前記温度センサ部の側面にまで前記導電性接合材が及んだ形態)によれば、接合力がより強くなる。
【0013】
これに対して、前記第2キャビティ内においてW1≦D2が成り立つことで、前記導電性接合材を介した前記温度センサ部の前記温度センサ用電極パッドへの接合時に、前記導電性接合材が前記露出電極上を流れ(拡がり)難くなり、その結果、前記温度センサ用電極パッドへの前記温度センサ部の接合力を弱めることになる。これは、W1がD2に対して相対的に小さいと前記導電性接合材が前記温度センサ用電極パッド上に拡がり難くなることに関係する。
【0014】
前記構成において
、前記露出電極には、一対の前記温度センサ用電極パッドの前記外方端縁から直近の前記第2キャビティの内壁面に向かって、一対の前記温度センサ用電極パッドから引き出された引出部が含まれ
、前記引出部の幅長をW1とし、前記第1辺の辺長をW2とし、前記突起部の幅長をW3とし、W1<W3<W2が成り立ってもよい。
【0015】
本構成に示すように、W1<W3が成り立つことで、前記引出部への前記導電性接合材の流れ量よりも、前記突起部への前記導電性接合材の流れ量を多くすることが可能となり、前記温度センサ用電極パッドに留まる前記導電性接合材の量を確保することが可能となる。
また、W1<W2が成り立つことで、前記引出部への前記導電性接合材の流れ量を抑えて前記温度センサ用電極パッドに留まる前記導電性接合材の量を確保することが可能となる。
また、W3<W2が成り立つことで、異なる外形サイズの前記温度センサ部を搭載することが可能となり、汎用の圧電振動デバイスを構築することが可能となる。また、W3<W2が成り立つことによって、前記近方端縁(前記第1辺)において突出する前記突起部の基端点(具体的には角部となる点)付近に前記導電性接合材が留まり易くなる。つまり、前記導電性接合材を、前記温度センサ用電極パッドの前記突起部に集めることが可能となる。その結果、前記温度センサ用電極パッドに前記温度センサ部を搭載する際に、前記温度センサ部の前記温度センサ用電極パッドに接する面に前記導電性接合材を行き渡り易くすることが可能となる。また、前記温度センサ用電極パッドへの前記温度センサ部の搭載について中央位置に配する(センタリング機能を有する)ことが可能となる。このように、W3<W2が成り立つことによって、接合強度を高めながら、前記温度センサ部の搭載のズレを無くすことが可能となる。
【0016】
上記の通り、W1<W3<W2が成り立つことで、異なる外形サイズの前記温度センサ部に対して、前記温度センサ用電極パッドへの搭載を確実にすることが可能となる。
【0017】
前記構成において、前記第2キャビティ内に形成された前記露出電極は、切り欠き部を有し、前記切り欠き部は、前記外方端縁とされてもよい。
【0018】
この場合、前記切り欠き部により、前記温度センサ部を前記導電性接合材を介して前記温度センサ用電極パッドに接合する際に導電性接合材の流れ方向を規制することが可能となり、前記温度センサ部を前記温度センサ用電極パッドの所望の搭載位置に配することが可能となる。
【0019】
前記構成において、前記第2キャビティ内に形成された前記露出電極は、スリット部を有し、前記スリット部は、前記外方端縁とされてもよい。
【0020】
この場合、前記スリット部により、前記温度センサ部を前記導電性接合材を介して前記温度センサ用電極パッドに接合する際に導電性接合材の流れ方向を規制することが可能となり、前記温度センサ部を前記温度センサ用電極パッドの所望の搭載位置に配することが可能となる。
【0021】
前記構成において、前記温度センサ用電極パッドに接合された前記温度センサ部の側面に、前記導電性接合材が形成されてもよい。もしくは、前記構成において、前記温度センサ用電極パッドに接合された前記温度センサ部の側面にまで前記導電性接合材が及んでもよい。
【0022】
この場合、前記温度センサ部の側面に、前記導電性接合材が形成されるので(もしくは前記温度センサ部の側面にまで前記導電性接合材が及ぶので)、前記温度センサ部を前記温度センサ用電極パッドに接合する際の接合強度を高めることが可能となる。
【0023】
前記構成において、前記ベースは、直方体であり、一対の前記温度センサ用電極パッドは、当該ベースの短手方向に沿って配されてもよい。
【0024】
この場合、一対の前記温度センサ用電極パッドは、当該ベースの短手方向に沿って配されるので、当該ベースにかかる応力が、前記温度センサ用電極パッドを通して温度センサ部に伝わるのを抑制することが可能となる。すなわち、直方体からなる前記ベースでは、熱膨張等による曲げ応力がかかる。前記ベースの長辺方向に対する前記曲げ応力に対して、前記ベースの短辺方向に対する前記曲げ応力が少なく、前記曲げ応力が働いた場合、前記ベースの長辺の中央が最も撓む。本構成によれば、前記ベースの短辺方向に沿って一対の前記温度センサ用電極パッドを配するので、前記曲げ応力が前記温度センサ部に及ぶのを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、サーミスタ素子などの温度センサ部の搭載のズレを無くすことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態では、圧電振動デバイスとして温度センサ内蔵の水晶振動子(以下、水晶振動子という)に本発明を適用した場合を示す。
【0028】
本実施の形態にかかる水晶振動子1には、
図1に示すように、ATカット水晶からなる水晶振動片2(本発明でいう圧電振動片)と、温度検出素子である温度センサ部3と、水晶振動片2を一主面42(第1キャビティ46)に保持(搭載)し、温度センサ部3を他主面43(第2キャビティ47)に保持(搭載)するベース4と、ベース4に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋5と、が設けられている。
【0029】
この水晶振動子1では、ベース4と蓋5とからパッケージが構成され、ベース4と蓋5とが、接合材(図示省略)により接合されて、気密封止された内部空間11が形成される。この内部空間11では、水晶振動片2が、ベース4に導電性接着剤12を用いて電気機械的に接合されている。
【0030】
次に、この水晶振動子1の各構成について
図1〜3を用いて説明する。
【0031】
ベース4は、セラミックの直方体に第1キャビティ46と第2キャビティ47が形成されてなり、
図1〜3に示すように、底部41と、ベース4の一主面42の主面外周に沿って底部41から上方に延出した第1壁部44と、ベース4の他主面43の主面外周に沿って底部41から下方に延出した第2壁部45と、から構成された断面視H型状体に成形されている。このベース4は、セラミックの一枚板(底部に対応)の両主面(一主面42および他主面43)上にセラミックの輪状体(第1壁部44および第2壁部45に対応)を積層して断面視H型状体とし、一体焼成してなる。
【0032】
ベース4の第1壁部44の天面は、蓋5との接合面であり、この接合面には、蓋5と接合するためのベース接合層(図示省略)が設けられている。ベース接合層は、複数の層の積層構造からなり、WからなるW層と、NiからなるNi層と、AuからなるAu層とが、順に積層してなる。
【0033】
ベース4には、底部41と第1壁部44とによって囲まれ、水晶振動片2を搭載する第1キャビティ46が形成され、この第1キャビティ46は、
図1,2に示すように、平面視矩形状に形成されている。本実施例では、第1キャビティ46は、平面視長方形に形成されている。
【0034】
また、ベース4には、底部41と第2壁部45とによって囲まれ、温度センサ部3を搭載する第2キャビティ47が形成され、この第2キャビティ47は、
図1,3に示すように、平面視矩形状に形成されている。本実施の形態では、第2キャビティ47は、第1キャビティ46よりも小さい平面視長方形に形成されている。
【0035】
また、ベース4の四隅(平面視四隅)では、筺体側面にキャスタレーション48が形成されている。キャスタレーション48は、
図2,3に示すように、第1壁部44の天面から第2壁部45の天面に亘ってベース4の筐体側面に形成されている。
【0036】
また、ベース4には、水晶振動片2の励振電極24,25それぞれに電気機械的に接合する一対の振動片用電極パッド611,612と、温度センサ部3に電気機械的に接合する一対の温度センサ用電極パッド621,622と、外部部品や外部機器と電気的に接続する外部端子電極631,632,633,634と、振動片用電極パッド611,612と外部端子電極631,632とを電気的に接続させる振動片用配線パターン641,642と、温度センサ用電極パッド621,622と外部端子電極633,634とを電気的に接続させる温度センサ用配線パターン651,652と、が形成されている。これら振動片用電極パッド611,612と温度センサ用電極パッド621,622と外部端子電極631〜634と振動片用配線パターン641,642と温度センサ用配線パターン651,652とによりベース4の電極が構成される。ベース4の電極は、ベース接合層と同一材料による構成からなり、ベース接合層と同時に形成され、WやMo等のメタライズ材料(本実施の形態ではW)を印刷した後にベース4と一体的に焼成して形成される。このうち外部端子電極631〜634と振動片用電極パッド611,612については、メタライズ上部にNiメッキが形成され、その上部にAuメッキが形成されて構成される。なお、ここでいうメッキ形成の工法として、電解メッキ法や無電解メッキ法が挙げられる。
【0037】
ベース4の電極のうち、振動片用電極パッド611,612は、第1キャビティ46内において、長辺方向の一端部であって、長辺方向の一端部における短辺方向の両端部に形成されている。
【0038】
温度センサ用電極パッド621,622は、第2キャビティ47内において、長辺方向の対向する両端部471,472に形成されている。
【0039】
水晶振動片2用の外部端子電極631,632は、ベース4の他主面43の四隅の一方の対角位置に形成され、温度センサ部3用の外部端子電極633,634は、ベース4の他主面43の四隅の他方の対角位置に形成されている。
【0040】
振動片用配線パターン641,642は、底部41の一主面(ベース4の一主面42)およびキャスタレーション48を通り、外部端子電極631,632と振動片用電極パッド611,612とを連結している。また、温度センサ用配線パターン651,652は、底部41の他主面(ベース4の他主面43)およびキャスタレーション48を通り、外部端子電極633,634と温度センサ用電極パッド621,622とを連結している。
【0041】
上記構成からなるベース4では、
図3に示すように、他主面43に第2キャビティ47が形成されている。この第2キャビティ47内には、少なくとも第2壁部45の内壁面474と交差する電極(以下、露出電極6という)が、第2キャビティ47内において露出して形成され、露出電極6には、流動性を有する導電性接合材(本実施の形態では半田13)により温度センサ部3を接合する一対の温度センサ用電極パッド621,622と、一対の温度センサ用電極パッド621,622から引き出された引出部661,662である温度センサ用配線パターン651,652とが含まれる。具体的には、第2キャビティ47の底面の長辺方向の対向する両端部471,472に一対の温度センサ用電極パッド621,622が形成され、温度センサ用電極パッド621,622(具体的には外方端縁73,74)から直近の第2キャビティ47の内壁面474に向かって、温度センサ用電極パッド621,622が引き出されている。また、
図1,3に示すように、第2キャビティ47内において、温度センサ部3が接合された温度センサ用電極パッド621,622を含む露出電極6上の全面に半田13が形成される。この時、温度センサ用電極パッド621,622に接合された温度センサ部3の側面31に(具体的には
図1に示すように側面31の高さ方向中間位置まで)、半田13が形成される(温度センサ部3の側面31にまで半田13が及ぶ)。なお、温度センサ部3と半田13との関係について、これは好適であって本実施の形態に限定されるものではなく、温度センサ部3とベース4との電気的接続が確保できれば、他の形態であってもよい。例えば、温度センサ部3の側面31だけではなく、温度センサ部3の上面にまで半田13が及んでもよい。また、温度センサ部3の下面にのみ半田13が形成されてもよい。
【0042】
なお、温度センサ部3が搭載されていない時、露出電極6には、温度センサ部3と接合するための接合部材(導電性接合材である半田13)は形成されていない。つまり、本実施の形態では、温度センサ部3を温度センサ用電極パッド621,622に接合する際に、導電性接合材である半田13を温度センサ用電極パッド621,622に塗布するものであり、ベース4単体の構成では、露出電極6には、温度センサ部3と接合するための接合部材は形成されない。
【0043】
温度センサ用電極パッド621,622は、同一形状の矩形(本実施の形態では平面視長方形)に成形され、第2キャビティ47内においてベース4の短手方向に沿って配される。これら温度センサ用電極パッド621,622において、温度センサ用電極パッド621,622の相互に対向する一番近い辺をそれぞれ近方端縁71,72とする。また、温度センサ用電極パッド621,622において、温度センサ用電極パッド621,622の相互に一番遠い辺をそれぞれ外方端縁73,74とする。
【0044】
一対の温度センサ用電極パッド621,622夫々の外周は、近方端縁71,72を含む第1辺623,624と、外方端縁73,74を含む第2辺625,626と、第1辺623,624と第2辺625,626とを繋げる一対の側辺627,628とから構成される。また、第1辺623,624(近方端縁71,72)には、相互に近づく方向に突出する矩形の突起部75,76が形成される。また、外方端縁73,74の中央から温度センサ用配線パターン651,652が引き出されている。
【0045】
上記の露出電極6に関して、各温度センサ用電極パッド621,622において近方端縁71,72から外方端縁73,74までの距離をD1とする。また、各温度センサ用電極パッド621,622において外方端縁73,74から直近の第2キャビティ47の内壁面474までの距離をD2とする。また、第2キャビティ47内において引出部661,662の幅長をW1とする。また、第2キャビティ47内において第1辺623,624の辺長をW2とする。また、第2キャビティ47内において突起部75,76の幅長をW3とする。
【0046】
そして、本実施の形態では、第2キャビティ47内において2.85≦D1/D2≦15.67が成り立つ設定とされる。また、第2キャビティ47内においてW1>D2が成り立つ設定とされる。また、第2キャビティ47内においてW1<W3<W2が成り立つ設定とされる。
【0047】
また、第2キャビティ47内では、導通幅が広い温度センサ用電極パッド621,622から、導通幅が狭い温度センサ用配線パターン651,652が引き出され、この引出位置は、両端部471,472における第2キャビティ47の内壁面474の近傍とされる。つまり、第2キャビティ47内における露出電極6の平面視形状は、第2キャビティ47の内壁面474近傍に、第2キャビティ47の内壁面474と外方端縁73,74と引出部661,662とにより切り欠き部77を有する形状となり、切り欠き部77は、外方端縁73,74(具体的には外方端縁73,74の一部)とされる。
【0048】
蓋5は、金属材料からなり、
図1に示すように、平面視矩形状の直方体の一枚板に成形されている。この蓋5の下面には、ベース4に接合するための接合層やろう材が形成されている。この蓋5は、シーム溶接やビーム溶接等の手法や金属加熱溶融の手法によりベース4に接合されて、蓋5とベース4とによる水晶振動子1のパッケージが構成される。
【0049】
この蓋5は、3層の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されている。具体的に、ベース4との接続面となる蓋5の下面から、SnとCuとからなる鉛フリーの接合層、ニッケル層、およびコバール層が順に積層されている(図示省略)。また、接合層は、蓋5の下面外周に沿って形成され、ベース4の第1壁部44の接合面に対応している。
【0050】
蓋5の下面側が接合層及びニッケル層であるため、他の層に比べてセラミックからなるベース4との熱接合がし易い。また、これら接合層及びニッケル層上にコバール層が積層されているので、セラミックからなるベース4との熱膨張率を略同じにしてベース4と蓋5との熱変形を同等にすることが可能となる。この蓋5では、接合層、ニッケル層、およびコバール層が順に積層されているので、ベース4との接合の際に、接合層を不活性ガスまたは真空雰囲気の加熱炉で溶融させて内部空間11を気密封止させる。
【0051】
水晶振動片2は、ATカット水晶片の基板21からなり、その外形は、
図1,2に示すように、平面視略矩形状の(両主面22,23(一主面22、他主面23)が略矩形状に形成された)一枚板の直方体となっている。
【0052】
この水晶振動片2は、一枚板の基板21により構成され、励振を行う一対の励振電極24,25と、一対の励振電極24,25をベース4の振動片用電極パッド611,612に電気機械的に接合するための引出電極26,27と、が形成されている。なお、本実施の形態では、基板21を一枚板としているが、一対の励振電極24,25が形成された位置の厚みを薄くし、高周波化に対応させてもよい。
【0053】
一対の励振電極24,25は、基板21の両主面22,23であって基板21の平面視中央に対向して形成されている。これら一対の励振電極24,25は、例えば、基板21側からCr、Auの順に積層して形成されたCr−Au膜により構成される。引出電極26,27は、一対の励振電極24,25から基板21の一側辺を含むその近傍に引き出されている。引出電極26,27は、例えば、励振電極24,25と同様に、基板21側からCr、Auの順に積層して形成されたCr−Au膜により構成される。
【0054】
第2キャビティ47に配する温度センサ部3には、
図1,3に示すように温度検出素子であるサーミスタ素子が用いられ、温度センサ部3(サーミスタ素子)の筺体は直方体とされる。
【0055】
上記した構成からなる水晶振動子1では、
図1〜3に示すように、ベース4に水晶振動片2が導電性接着剤12によって接合される。この接合により、水晶振動片2の励振電極24,25が、引出電極26,27、導電性接着剤12を介してベース4の振動片用電極パッド611,612に電気機械的に接合され、ベース4に水晶振動片2が搭載される。その後に、水晶振動片2が搭載されたベース4の第2キャビティ47の温度センサ用電極パッド621,622に温度センサ部3が半田13により押圧しながら接合され、ベース4に温度センサ部3が搭載される。このベース4に温度センサ部3を搭載することで、
図1,3に示すように、第2キャビティ47内において、温度センサ部3が接合された温度センサ用電極パッド621,622を含む露出電極6上の全面に半田13が形成される。つまり、温度センサ部3を一対の温度センサ用電極パッド621,622に接合した際に、露出電極6上の全面に半田13が形成される。この時、温度センサ用電極パッド621,622に接合された温度センサ部3の側面31に(具体的には側面31の高さ方向中間位置まで)、半田13が形成される。つまり、温度センサ部3を一対の温度センサ用電極パッド621,622に接合した際に、半田13が温度センサ部3の側面31に及ぶ。
【0056】
そして、水晶振動片2および温度センサ部3が搭載されたベース4に、蓋5が接合材を介して加熱溶融(具体的にはシーム溶接もしくは金属加熱溶融、ビーム溶接等)により電気機械的に接合され、水晶振動片2を気密封止した水晶振動子1が製造される。なお、本実施の形態では、導電性接着剤12による接合を行っているが、これに限定されるものではなく、FCB法(Flip Chip Bonding)による超音波接合を行ってもよい。また、導電性接着剤12として、メッキバンプなどの導電性バンプを用いることも可能である。
【0057】
本実施の形態にかかる水晶振動子1の具体的な実施例(第1実施例〜第3実施例)として以下の寸法がある。
【0058】
第1実施例では、水晶振動子1(ベース4と蓋5とから構成されたパッケージ)の平面サイズが2.5mm×2.0mmであり、D1が0.37〜0.47mm(センター値0.42mm)であり、D2が0.03〜0.13mm(センター値0.08mm)であり、W1が0.07〜0.17mm(センター値0.12mm)であり、W2が0.40〜0.50mm(センター値0.45mm)であり、W3が0.15〜0.25mm(センター値0.20mm)であり、D1/D2が2.85〜15.67(センター値5.25)であり、温度センサ部3のサイズが0.60×0.30×0.30(Length×Width×Height)である。
【0059】
第2実施例では、水晶振動子1(ベース4と蓋5とから構成されたパッケージ)の平面サイズが2.0mm×1.6mmであり、D1が0.32〜0.38mm(センター値0.35mm)であり、D2が0.04〜0.10mm(センター値0.07mm)であり、W1が0.09〜0.15mm(センター値0.12mm)であり、W2が0.42〜0.48mm(センター値0.45mm)であり、W3が0.17〜0.23mm(センター値0.20mm)であり、D1/D2が3.20〜9.50(センター値5.00)であり、温度センサ部3のサイズが0.60×0.30×0.15(Length×Width×Height(Max))である。
【0060】
第3実施例では、ベース4と蓋5とから構成されたパッケージの平面サイズが1.6mm×1.2mmであり、D1が0.29〜0.35mm(センター値0.32mm)であり、D2が0.03〜0.09mm(センター値0.06mm)であり、W1が0.07〜0.13mm(センター値0.10mm)であり、W2が0.32〜0.38mm(センター値0.35mm)であり、D1/D2が3.22〜11.67(センター値5.33)であり、温度センサ部3のサイズが0.4×0.2×0.1or0.2(Length×Width×Height(Max))である。なお、第3実施例では、温度センサ部3のサイズが0.60×0.30×0.15(Length×Width×Height(Max))であっても搭載可能である。
【0061】
上記の通り、本実施の形態では、2.85≦D1/D2≦15.67で効果を有するが、さらに良い効果を得るためには、第1実施例〜第3実施例に示すように、3.20≦D1/D2≦11.67に設定される必要がある。具体的には、第1実施例〜第3実施例に示すように一つの実施例としては、2.5mm×2.0mmのパッケージサイズに対して2.85≦D1/D2≦15.67に設定される必要があり、2.0mm×1.6mmのパッケージサイズに対して3.20≦D1/D2≦9.50に設定される必要があり、1.6mm×1.2mmのパッケージサイズに対して3.22≦D1/D2≦11.67に設定される必要がある。
【0062】
本実施の形態によれば、温度センサ部3であるサーミスタ素子の搭載のズレを無くすことができる。すなわち、本実施の形態によれば、第2キャビティ47内の底面473に、露出電極6が、第2キャビティ47内において露出して形成され、露出電極6に一対の温度センサ用電極パッド621,622が含まれ、温度センサ部3が接合された温度センサ用電極パッド621,622を含む露出電極6上の全面に半田13が形成されるので、半田13の塗布位置に関係なく、温度センサ部3を所望の位置に搭載することができる。特に、本実施の形態は、水晶振動子1を含む圧電振動デバイスの小型化に対応した第2キャビティ47に汎用のサーミスタ素子等の温度センサ部を搭載するのに好ましい。
【0063】
また、本実施の形態によれば、D1/D2=2.85、5.00、5.25、5.33、9.00、および15.67において、温度センサ用電極パッド621,622への温度センサ部3の搭載のズレが無いのが確認できた。
【0064】
また、第2キャビティ47内においてW1>D2が成り立つ設定とされるので、半田13を介した温度センサ部3の温度センサ用電極パッド621,622への接合時に、半田13が露出電極6上を流れ(拡がり)易くなる。その結果、温度センサ用電極パッド621,622への温度センサ部3の接合力を高めることができ、特に、温度センサ用電極パッド621,622に接合された温度センサ部3の側面31に、半田13が形成された形態によれば、接合力がより強くなる。これに対して、第2キャビティ47内においてW1≦D2が成り立つ設定の場合、半田13を介した温度センサ部3の温度センサ用電極パッド621,622への接合時に、半田13が露出電極6上を流れ(拡がり)難くなり、その結果、温度センサ用電極パッド621,622への温度センサ部3の接合力を弱めることになる。これは、W1がD2に対して相対的に小さいと半田13が温度センサ用電極パッド621,622上に拡がり難くなることに関係する。
【0065】
また、本実施の形態に示すように、W1<W3が成り立つ設定とすることで、引出部661,662への半田13の流れ量よりも、突起部75,76への半田13の流れ量を多くすることができ、温度センサ用電極パッド621,622に留まる半田13の量を確保することができる。
また、W1<W2が成り立つ設定とすることで、引出部661,662への半田13の流れ量を抑えて温度センサ用電極パッド621,622に留まる半田13の量を確保することができる。
また、W3<W2が成り立つ設定とすることで、異なる外形サイズの温度センサ部3を搭載することができ、水晶振動子1を含む汎用の圧電振動デバイスを構築することができる。また、W3<W2が成り立つことによって、近方端縁71,72(第1辺623,624)において突出する突起部75,76の基端点(具体的には角部となる点)付近に半田13が留まり易くなる。つまり、半田13を、温度センサ用電極パッド621,622の突起部75,76に集めることができる。その結果、温度センサ用電極パッド621,622に温度センサ部3を搭載する際に、温度センサ部3の温度センサ用電極パッド621,622に接する面に半田13を行き渡り易くすることができる。また、温度センサ用電極パッド621,622への温度センサ部3の搭載について中央位置に配する(センタリング機能を有する)ことができる。このように、W3<W2が成り立つことによって、接合強度を高めながら、温度センサ部3の搭載のズレを無くすことができる。
【0066】
上記の通り、W1<W3<W2が成り立つことで、異なる外形サイズの温度センサ部3に対して、温度センサ用電極パッド621,622への搭載を確実にすることができる。
【0067】
また、ベース4は直方体であり、一対の温度センサ用電極パッド621,622は、ベース4の短手方向に沿って配されるので、ベース4にかかる応力が、温度センサ用電極パッド621,622を通して温度センサ部3に伝わるのを抑制することができる。すなわち、直方体からなるベース4では熱膨張等による曲げ応力がかかる。ベース4の長辺方向に対する曲げ応力に対して、ベース4の短辺方向に対する曲げ応力が少なく、曲げ応力が働いた場合、ベース4の長辺の中央が最も撓む。本実施の形態によれば、ベース4の短辺方向に沿って一対の温度センサ用電極パッド621,622を配するので、曲げ応力が温度センサ部3に及ぶのを抑制することができる。
【0068】
また、第2キャビティ47内に形成された露出電極6は、切り欠き部77を有し、切り欠き部77は、外方端縁73,74とされるので、切り欠き部77により、温度センサ部3を半田13を介して温度センサ用電極パッド621,622に接合する際に半田13の流れ方向を規制することができ、温度センサ部3を温度センサ用電極パッド621,622の所望の搭載位置に配することができる。
【0069】
また、外方端縁73,74の中央から振動片用配線パターン641,642が引き出されるので、半田の流れる方向に温度センサ部3が引っ張られても一対の温度センサ用電極パッド621,622上では、引っ張り応力が相殺されるので、温度センサ用電極パッド621,622上の所望の位置に温度センサ部3を配することができる。
【0070】
また、温度センサ用電極パッド621,622に接合された温度センサ部3の側面31に、半田13が形成されているので、温度センサ部3を温度センサ用電極パッド621,622に接合する際の接合強度を高めることができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、圧電振動デバイスとして水晶振動子を適用しているが、これに限定されるものではなく、圧電振動を行う圧電振動片の励振電極を気密封止する圧電振動デバイスであれば、他のデバイスであってもよく、例えば水晶発振器であってもよい。
【0072】
また、本実施の形態では、導電性接合材に半田13を用いているが、流動性を有するものであれば、導電性接着剤などの他の形態であってもよい。また、温度センサ部3と第2キャビティ47の底面473との間にアンダーフィル(液状硬化性樹脂)を介在させた状態で導電性接合材(半田13など)で温度センサ部3をベース4に接合してもよい。
【0073】
また、本実施の形態では、温度センサ部3が半田13により外部に露出した状態で温度センサ用電極パッド621,622に接合されているが、これに限定されるものではなく、温度センサ部3を温度センサ用電極パッド621,622に接合した後に、温度センサ部3の一部(例えば側面)や全体を樹脂で被覆してもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、振動片用電極パッド611,612に電気的に接続された外部端子電極631,632と、温度センサ用電極パッド621,622に電気的に接続された外部端子電極633,634とが、ベース4に形成されているが、これに限定されるものではなく、アースなど他の用途用の外部端子電極をベース4の他主面43(第2キャビティ47内を除く)に形成してもよい。また、アース用外部端子電極をベース4に形成し、金属製または金属で被覆された蓋5と温度センサ用電極パッド621,622とアース用外部端子電極とを共通接続させてもよい。
【0075】
また、本実施の形態でいう温度センサ部3としてサーミスタ素子が挙げられるが、これに限定されるものではなく、例えば、サーミスタ素子が内蔵されたものやダイオード、トランジスタ等であってもよい。
【0076】
また、本実施の形態では、第2キャビティ47内のみに形成された温度センサ用電極パッド621,622を用いているが、これに限定されるものではなく、
図4に示すように、温度センサ用電極パッド621,622が第2キャビティ47外まで広がった電極であってもよい。
【0077】
図4に示す形態では、温度センサ用電極パッド621,622に、切り欠き部77が形成されている。この切り欠き部77について、
図3に示す切り欠き部77と同様に、第2キャビティ47内における露出電極6の平面視形状は、第2キャビティ47の内壁面474近傍に、第2キャビティ47の内壁面474と外方端縁73,74と引出部661,662とにより切り欠き部77を有する形状となる。さらに、
図4に示す切り欠き部77は、上記構成に加えて、第2キャビティ47内および第2キャビティ47外において形成されたものであり、第2キャビティ47外において温度センサ用電極パッド621,622から温度センサ用配線パターン651,652が引き出される。このように、
図4に示す切り欠き部77は、2つの構成を有し、
図3に示す外方端縁73,74とされる位置に配される。つまり、
図4に示す形態であっても、第2キャビティ47内における温度センサ用電極パッド621,622の外方端縁73,74は、
図3に示す外方端縁73,74に対応する。
【0078】
また、本実施の形態では、
図3,4に示す切り欠き部77を構成として挙げているが、これに限定されるものではなく、切り欠き部77の代わりに
図5に示すスリット部78を適用してもよい。この場合であっても、
図3,4に示す切り欠き部77と同様の作用効果を有する。さらに、
図5に示すスリット部78では、
図3,4に示す切り欠き部77に比べて、切り欠き部77の導通ルートの他に、切り欠き部77の両外側に導通ルートを確保することができる。そのため、スリット部78によれば、3つの導通ルートが存在しているため、温度センサ用電極パッド621,622の両外側部分へも半田が行き渡りやすくなり、かつ、温度センサ用電極パッド621,622が一対で正対した位置関係に形成されているため、ベース4に温度センサ部3を搭載した時、温度センサ部3が回転し難くなる。
【0079】
また、本実施の形態では、
図3〜5に示すように、第2キャビティ47の平面視形状が、長方形とされているが、これに限定されるものではなく、
図6に示すように平面視十字形であってもよい。現在、温度センサ部3を、マウンタ(図示省略)を用いてベース4に搭載しており、
図6に示す形態によれば、マウンタによるベース4への温度センサ部3の搭載が行い易くなる。
【0080】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。すなわち、本発明は、上記の実施形態を例とした圧電振動デバイスである。
【0081】
また、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0082】
また、この出願は、2012年11月16日に日本で出願された特願2012−252500号に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。