(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
はんだ材を溶融させて電子部品をプリント基板にはんだ付けする際には、リフローはんだ装置等の加熱炉が使用される。このリフローはんだ装置とは、トンネル状のマッフル内に予備加熱ゾーン、本加熱ゾーン及び冷却ゾーンを有し、予備加熱ゾーン及び本加熱ゾーンには加熱用のヒータが設けられ、冷却ゾーンには水冷パイプや冷却ファン等で構成される冷却機が設けられるものである。例えば、ソルダペーストがはんだ付け部に印刷等で塗布されたプリント基板を各ゾーン内に搬入して、プリント基板のソルダペーストが溶融することで、電子部品がプリント基板へはんだ付けされる。
【0003】
このリフローはんだ装置に用いられるヒータには、赤外線ヒータと熱風吹き出しヒータとがある。赤外線ヒータは、当該赤外線ヒータに通電すると、赤外線を放出する。この放出された赤外線によってはんだ付け部に塗布されたソルダペーストが溶融してはんだ付けを行う。しかしながら、赤外線ヒータは、赤外線が直進性を有するために、電子部品の影となるはんだ付け部を十分に加熱することが困難であるという問題がある。
【0004】
一方、熱風吹き出しヒータは、ヒータで暖められた熱風がモータの駆動で回転するファンによってリフローはんだ装置の加熱ゾーン内で対流するために、その熱風が電子部品の影になるところや狭い隙間にも侵入して、プリント基板全体を均一に加熱することができるという特長を有しており、今日では多くのリフローはんだ装置に採用されているものである。
【0005】
リフローはんだ装置に設置される熱風吹き出しヒータとしては、開口面積が広い吹き出し口から熱風を吹き出すヒータと、多数の孔から熱風を吹き出すヒータがある。前者のヒータは、吹き出し口の開口面積が広いので熱風の流速が比較的遅くなり、プリント基板に熱風が衝突したときの加熱効率が低い。一方、後者のヒータは、孔であるので熱風の流速が前者のヒータより速くなり、かつ、その孔が多数あるので熱風の流量不足が生じない。このため、後者のヒータは加熱効率が高い。このことより、リフローはんだ装置には、多数の孔から熱風を吹き出すヒータを用いることが多い。以後の説明は断りがない限り複数の孔を有する熱風吹き出しヒータである。
【0006】
このようなリフローはんだ装置では、プリント基板を予備加熱、本加熱の順序で加熱を行う。予備加熱では、温度の低い熱風で加熱することにより、プリント基板をゆっくりと加熱することでプリント基板を熱に慣らすと共に、ソルダペースト中の溶剤を揮散させる。リフローはんだ装置での予備加熱は、温度が低く、本加熱よりも少ない熱風で加熱することが好ましい。
【0007】
プリント基板は、予備加熱で熱に慣らされ、ソルダペースト中の溶剤が揮散して、電子部品が或る程度強固に固着した後、リフローはんだ装置の本加熱で加熱される。この本加熱では、高温の熱風を吹き付けて、ソルダペースト中のはんだ粉末を溶融させることによりはんだ付けを行う。この本加熱でプリント基板に吹き付ける熱風の風量は、予備加熱での熱風の風量よりも多い方が昇温を早くすることができる。本加熱時では、高温での加熱時間が長くなるとプリント基板や電子部品を熱損傷させるため、短時間で加熱を行う。
【0008】
一般に、リフローはんだ装置では、予備加熱を行う予備加熱ゾーンと本加熱を行う本加熱ゾーンのプリント基板の搬送部の上下部にそれぞれ多数の熱風吹き出しヒータを設置する。例えば、予備加熱ゾーンが5ゾーンから構成されている場合であれば上下にそれぞれ5個ずつ、合計10個の熱風吹き出しヒータが設置され、本加熱ゾーンが3ゾーンで構成されている場合であれば上下にそれぞれ3個ずつ、合計6個の熱風吹き出しヒータが設置されるため、一つのリフローはんだ装置では上下8個ずつ、合計16個の熱風吹き出しヒータが設置されることになる。
【0009】
なお、このゾーン構成は、プリント基板にはんだ付けされる電子部品の種類に応じて、即ち、加熱対象物の温度プロファイルに応じて、使用されるヒータ数等が適宜選択される。
【0010】
予備加熱ゾーン及び本加熱ゾーンでは、それぞれの熱風吹き出しヒータから吹き出される熱風の流速と温度を制御手段で制御することで、プリント基板に適した所望の温度プロファイルを設定できる。温調器で熱風の温度を制御すると共に、ファンに取り付けられ、このファンを回転させるファンモータの出力(以下、ファンモータ出力という)を変化させることでマッフル内に吹き出る暖められた熱風の流速を制御する。因みに、このモータは、ファンモータの出力制御がしやすいインバータモータが一般的に用いられている。
【0011】
このような多数の孔から熱風を吹き出すヒータを有するリフローはんだ装置は、例えば、特許文献1に開示されている。この加熱炉は、熱風を噴出する複数の噴出口部と、複数の噴出口部から噴出されて被加熱物に当たって方向転換した熱風を強制的に回収する複数の回収口部とを備えるものである。この加熱炉によれば、被加熱物に当たって方向転換することにより冷やされた熱風を被加熱物の表面に滞留させずに効率良く除去して、被加熱物の表面での熱交換率(熱伝達率)を高くして被加熱物を均一に加熱するようにしたものである。
【0012】
一方、非特許文献1には非円形状である十字形噴流の衝突熱伝達について開示されている。この十字形噴流の衝突熱伝達では、等熱伝達率分布や赤外線映像による等温度線図から十字形状の噴出口からの噴流を解析したものである。この解析結果によれば、十字形噴流では当該十字形の凸部は平坦に、凹部は突出するように経時変化するスイッチング現象が生じていることを証明している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の一例であるリフローはんだ装置及びフローはんだ装置について説明する。
[第1の実施の形態]
<リフローはんだ装置100の構成例>
図1は、第1の実施の形態に係るリフローはんだ装置100の構成例を示す正面断面図である。
図1に示すように、リフローはんだ装置100は、本体部101、プリント基板等の加熱対象物を搬送するコンベア102で構成される。
【0026】
本体部101には、予備加熱ゾーンA、本加熱ゾーンB及び冷却ゾーンCの3つのゾーンがある。リフローはんだ装置100ではんだ付けされるプリント基板は、コンベア102によって予備加熱ゾーンA、本加熱ゾーンB及び冷却ゾーンCの順番で搬送される。
【0027】
予備加熱ゾーンAは、プリント基板やこのプリント基板に実装された電子部品等をゆっくり加熱して熱に慣らすための領域であり、ソルダペースト中の溶剤を揮散させる領域である。予備加熱ゾーンAは、はんだの組成やプリント基板の種類等で異なるが、概ね鉛フリーペーストで150〜180度に設定される。本加熱ゾーンBは、予備加熱ゾーンAよりも温度が高く設定され(概ね鉛フリーペーストで240度)、ソルダペースト中のはんだ粉末を溶融させてはんだ付けを行う領域である。冷却ゾーンCは、はんだ付けされたプリント基板を冷却する領域である。
【0028】
予備加熱ゾーンAには、第1のヒータ部(以下、ヒータ部103という)が、コンベア102の上下に各3ゾーンずつ配置されると共に、各ヒータ部103にはノズル装置1が設けられている。
【0029】
本加熱ゾーンBには、第2のヒータ部(以下、ヒータ部104という)が、コンベア102の上下に各2ゾーンずつ配置されると共に、各ヒータ部104にはノズル装置1が設けられている。
【0030】
さらに、ヒータ部103,104は、図示しない電熱線ヒータ、ファン及びファンを回転させるファンモータ等から構成される。ヒータ部103,104は、例えば、電熱線ヒータで気体を加熱し、ファンモータを駆動してファンを回転させることで、加熱された気体をリフローはんだ装置100内に熱風として吹き出す。ヒータ部103,104から吹き出される熱風の流量は、ファンモータの回転速度によって制御される。通常、ヒータ部103の温度よりヒータ部104の温度を高く設定している。
【0031】
冷却ゾーンCには、冷却部105がコンベア102の上下に各1ゾーンずつ配置されると共に、各冷却部105にはノズル装置1が設けられている。
【0032】
冷却部105は、図示しない水冷パイプなどからなる冷却機構、ファン及びファンを回転させるファンモータ等から構成される。冷却部105は、例えば、水冷パイプのパイプ内に水を流動させてパイプを冷却し、そのパイプに気体を接触させることで当該気体を冷却する。そして、冷却部105は、ファンモータを駆動してファンを回転させて、パイプによって冷却された気体をリフローはんだ装置100内に冷風としてノズル装置1から吹き出して、はんだ付けされたプリント基板を冷却する。
【0033】
なお、予備加熱ゾーンA及び本加熱ゾーンBのそれぞれのゾーン数やヒータ部103,104のヒータ数やヒータの上下配置は、本例に限られることなく、適宜変更可能である。
【0034】
上述のノズル装置1は、気体(例えば、空気や窒素ガス等の不活性ガス)を流動させる後述する気体流動路と、この気体流動路の先端に設けられる吹き出し口とを備えた後述する吹き出しノズル2を備える。
【0035】
気体流動路は、ヒータ部103,104で加熱された気体や冷却部105で冷却された気体を流動する。吹き出し口は、気体流動路を流動した気体を吹き出して、プリント基板に当該気体を吹き付ける。吹き出し口の平面形状は、非円形かつ内側に突出した突部を有する形状になっている。また、吹き出し口の平面形状は、仮想円の内側に向かって突出した突部を有する形状になっている。
【0036】
次に、仮想円の内側に向かって突部を有する形状について説明する。
図2A、
図2Bは、突部201,203,205の形状例を示す説明図である。
図2Aに示すように、前述のノズル装置1が有する吹き出し口の平面形状は、仮想的な円である一点鎖線で示した仮想円200から当該仮想円200の内側に向かって斜線で示す突部201を有する。この突部201を形成すると、十字形状の開口部202が形成される。また、
図2Bに示すように、ノズル装置1が有する吹き出し口の平面形状は、一点鎖線で示した仮想円200から当該仮想円200の内側に向かって斜線部で示す突部203を有する。この突部203を形成すると、星形状の開口部204が形成される。
【0037】
このように、ノズル装置1が有する吹き出し口の平面形状が、仮想円の内側に向かって突部を有する形状になっていると、当該吹き出し口から吹き出される気体の吹出方向に対して垂直方向の気体の断面形状が突部によって時間的に変化する。
【0038】
気体の断面形状が時間的に変化するとは、例えば、
図3に示すように、吹き出し口210の断面形状を十字形状としたとき、当該十字形状の凸部は平坦に、凹部は突出するように気体211の形状が時間t1及び時間t2に示すような形状を交互に、かつ、減衰させながら経時的に変化することをいう(因みに、
図3に示す時間t0の気体211は、吹き出し口210から吹き出された直後の形状であり、当該吹き出し口210の形状と略同じ形状である。)。このような現象をスイッチング現象と称することがある。このスイッチング現象が生じると、スイッチング現象が生じない一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体に比べて熱量の保存性が向上する(言い換えると、吹き出し口210から吹き出された気体の熱量の減衰が緩和される)。これにより、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体の熱量より単位時間当たりに対象物に与える(又は対象物から奪う)気体の熱量が増加される。
【0039】
つまり、本実施の形態に係るリフローはんだ装置100は、ヒータ部103,104によって加熱された気体の場合には、単位時間当たりにプリント基板に与える気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体の熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになる。また、冷却部105によって冷却された気体の場合には、単位時間当たりにプリント基板から奪う気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体がプリント基板から奪う熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになる。
【0040】
従って、本実施の形態にかかるリフローはんだ装置100は、ヒータ部103,104で加熱した気体又は冷却部105で冷却した気体を例えばファンで吹き出しノズル2へ送り出す場合、吹き出しノズル2へ送り出すファンを回転させるファンモータの出力を小さくできる。この結果、従来のリフローはんだ装置に比べて消費電力を低減することができ、ファン及びファンモータの寿命が向上する。
【0041】
<ノズル装置1の構成例>
次に、ヒータ部103,104に設けられるノズル装置1の構成例について説明する。
図4は、ノズル装置1の構成例を示す斜視図であり、
図5は、その平面図であり、
図6は、その透視正面図である。
【0042】
図4,5,6に示すように、ノズル装置1は、吹き出しノズル2、ノズルカバー3、取付プレート4及び固定プレート5で構成される。吹き出しノズル2の先端には吹き出し口の一例である十字形状の孔(以下、十字孔22という)が設けられる。吹き出しノズル2は、前述のヒータ部103,104で加熱された気体を十字孔22を介して吹き出す。
【0043】
吹き出しノズル2にはノズルカバー3が覆われる。ノズルカバー3には吹き出しノズル用孔3a及び吸込口3bが互いに近接して設けられる。吹き出しノズル用孔3aは、吹き出しノズル2の先端に嵌合される。吸込口3bは、長円形状を有し、マッフル内に貯留する気体や、吹き出しノズル2から吹き出されてプリント基板等の対象物に衝突して反射した気体を吸い込む。このプリント基板に反射した気体は、十字孔22から吹き出す高温となった気体に干渉してしまうことがある。プリント基板に反射した気体は、プリント基板に熱を奪われて当該気体の温度が低下していて、十字孔22から吹き出す気体に干渉してしまうと、十字孔22から吹き出す気体の温度を下げてしまったり、十字孔22から吹き出す気体の吹出方向を乱してしまったりすることがある。そのため、吸込口3bを設けて、プリント基板に反射した気体を直ぐに吸込口3bに吸い込ませる。これにより、プリント基板に反射した気体は、十字孔22から吹き出す気体の妨げとならない。
【0044】
吹き出しノズル2及びノズルカバー3の下部には取付プレート4が設けられる。取付プレート4は、吹き出しノズル2及びノズルカバー3を取り付けるものである。取付プレート4にはその外周部にヒータ部取付孔4aが設けられる。ヒータ部取付孔4aは、ヒータ部103,104にネジなどで螺合して、ヒータ部103,104にノズル装置を取り付けるために設けられている。また、取付プレート4には、吸込口3bによって吸い込まれたマッフル内の気体をヒータ部103,104に還流する吸込口4cが両側に設けられる(
図11及び12参照)。
【0045】
取付プレート4の下部には固定プレート5が吹き出しノズル2を支持した状態で取り付けられる。固定プレート5は、吹き出しノズル2をノズルカバー3の吹き出しノズル用孔3aに固定する。ノズルカバー3と取付プレート4とは、ネジ止め等の周知の方法によって固定される。また、固定プレート5は、十字孔22に対応する位置に固定プレート孔5aを有する(
図11参照)。固定プレート孔5aは、ヒータ部103,104によって加熱された気体を通過させて吹き出しノズル2に供給する孔である。
【0046】
このように構成されたノズル装置1は、ヒータ部103,104によって加熱された気体を固定プレート5の固定プレート孔5aから吹き出しノズル2の十字孔22を介してリフローはんだ装置100のマッフル内に吹き出して、プリント基板に当該気体を吹き付けてプリント基板を所定の温度まで暖める。また、プリント基板に吹き付けられて反射した気体は、ノズルカバー3の吸込口3b及び取付プレート4の吸込口4cを介してヒータ部103,104に還流される。その還流された気体は、再度ヒータ部103,104で熱せられ、その熱せられた熱風が吹き出しノズル2からマッフル内に吹き出すという循環を繰り返す。
【0047】
一方、十字孔22の断面形状は、前述のように仮想円の内側に向かって突部を有する形状になっている。これにより、十字孔22から吹き出される気体の吹出方向に対して垂直方向の気体の断面形状が突部によって時間的に変化する。つまり、スイッチング現象が生じて、単位時間当たりにプリント基板に与える気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体の熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになる。
【0048】
従って、本実施の形態にかかるノズル装置1は、ヒータ部103,104で加熱した気体を例えばファンで吹き出しノズル2へ送り出す場合、吹き出しノズル2へ送り出すファンを回転させるファンモータの出力を小さくできる。この結果、ノズル装置1をリフローはんだ装置に取り付けると、従来のリフローはんだ装置に比べて消費電力を低減することができ、ファンモータの寿命が向上する。
【0049】
さらに、ノズル装置1は、吸込口3bが十字孔22から吹き出されてプリント基板に衝突して反射した気体を吸い込むので、プリント基板に反射した気体は、十字孔22から吹き出す気体の妨げとなることを防止できる。この結果、ノズル装置1は、プリント基板に反射した気体が、十字孔22から吹き出す気体がプリント基板に反射した気体に干渉されず、当該気体の温度を下げてしまったり、当該気体の吹出方向を乱してしまったりすることを防止できる。
【0050】
なお、本例のノズル装置1はヒータ部103,104について説明したが、ノズル装置1が冷却部105に設けられた場合には、単位時間当たりにプリント基板から奪う気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体がプリント基板から奪う熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになる。これにより、吹き出しノズル2へ送り出すファンを回転させるファンモータの出力を小さくできる。この結果、従来のリフローはんだ装置に比べて消費電力を低減することができ、ファン及びファンモータの寿命が向上する。
【0051】
<吹き出しノズル2の構成例>
次に、吹き出しノズル2の構成例について説明する。
図7は、吹き出しノズル2の構成例を示す斜視図である。
図7に示すように、吹き出しノズル2は、ノズル本体部21及び十字孔22で構成される。ノズル本体部21は、下端部に凸部21aを有し、アルミニウムや銅等の熱伝導率の良好な金属材料で形成される。この凸部21aは、
図11で後述する取付プレート4のノズル取付孔4bに嵌合するためのものである。また、ノズル本体部21には気体流動路24が設けられる(
図10参照)。気体流動路24は、ヒータ部103,104で加熱された気体や冷却部105によって冷却された気体をノズル先端にある十字孔22まで流動する。
【0052】
十字孔22は、本実施の形態ではノズル本体部21に2つ設けられる。十字孔22は、当該十字孔22から吹き出す気体の吹出方向に対して垂直方向の気体の断面形状を時間的に変化させる機能を有するものである。
【0053】
図8は、吹き出しノズル2の構成例を示す平面図であり、
図9は、その底面図であり、
図10は、その断面斜視図である。
図8及び9に示すように、気体を吹き出す十字孔22の先端(以下、十字孔上部22aという)より気体が供給される十字孔22の後端(以下、十字孔下部22bという)の方が十字形状の大きさが大きくなっている。つまり、
図10に示すように、気体が供給される十字孔下部22bから、気体が吹き出す十字孔上部22aまで十字孔22が傾斜している。また、ノズル本体部21の内部にある気体流動路24は、十字形状になっている。
【0054】
このように構成された吹き出しノズル2は、ヒータ部103,104によって加熱された気体や冷却部105によって冷却された気体を固定プレート5の固定プレート孔5aから吹き出しノズル2の気体流動路24及び十字孔22を介してリフローはんだ装置100のマッフル内に吹き出してプリント基板に当該気体を吹き付ける。十字孔22の断面形状は、前述のように仮想円の内側に向かって突部を有する形状になっている。これにより、十字孔22から吹き出される気体の吹出方向に対して垂直方向の気体の断面形状が突部によって時間的に変化する(スイッチング現象)。つまり、ヒータ部103,104によって加熱された気体の場合には、単位時間当たりにプリント基板に与える気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体の熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになる。また、冷却部105によって冷却された気体の場合には、単位時間当たりにプリント基板から奪う気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体がプリント基板から奪う熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになる。
【0055】
従って、本実施の形態に係る吹き出しノズル2は、ヒータ部103,104で加熱した気体又は冷却部105で冷却した気体を例えばファンで当該吹き出しノズル2へ送り出す場合、当該吹き出しノズル2へ送り出すファンを回転させるファンモータの出力を小さくできる。この結果、吹き出しノズル2をリフローはんだ装置に取り付けると、従来のリフローはんだ装置に比べて消費電力を低減することができ、ファン及びファンモータの寿命が向上する。
【0056】
<ノズル装置1の組立例>
次に、ヒータ部103,104に取り付けられるノズル装置1の組立例について説明する。
図11は、ノズル装置1の組立例を示す分解斜視図である。
図12は、ノズル装置1の組立後を示す要部断面図である。
図11に示すように、ノズル装置1は、吹き出しノズル2、ノズルカバー3、取付プレート4及び固定プレート5から構成される。
【0057】
吹き出しノズル2は、ノズル本体部21に十字孔22が設けられる。十字孔22は、ノズル本体部21を金型鋳造法等で作製してからドリル等で穿設することで形成してもよいし、ノズル本体部21及び十字孔22を同時に金型鋳造法等で作製してもよい。
図11では、図面を見易くするために一部の吹き出しノズル2を省略している。
【0058】
ノズルカバー3には、吹き出しノズル用孔3a及び吸込口3bが穿設される。吹き出しノズル用孔3aは、
図8に示した十字孔上部22aを囲うように嵌合するために、十字孔上部22aよりも一回り大きな径を有する。吸込口3bは、長円形状を有し、吹き出しノズル2の近傍に位置させるために、吹き出しノズル用孔3aの近傍に穿設される。吹き出しノズル用孔3a及び吸込口3bは、ノズルカバー3にドリル等で穿設することで形成してもよいし、ノズルカバー3にプレス金型でパンチングして穿設することで形成してもよい。
【0059】
取付プレート4には、ヒータ部取付孔4a、ノズル取付孔4b及び吸込口4cが穿設される。ノズル取付孔4bは、吹き出しノズル2の後端にある凸部21aを当接させるために、凸部21aの外周よりも小さくなっている。また、吹き出しノズル2をノズル取付孔4bに対して圧入気味に挿入させると、ノズル装置1の組み立て時に、吹き出しノズル2を取付プレート4に仮固定できるので、後述する固定プレート5を取付プレート4に取り付ける際に作業が行いやすくなる。
【0060】
吸込口4cは、ノズルカバー3の吸込口3bから吸い込まれた気体をヒータ部103,104に還流させるためのものである。ヒータ部取付孔4a、ノズル取付孔4b及び吸込口4cは、前述のノズルカバー3と同様に、取付プレート4にドリルで穿設することで形成してもよいし、取付プレート4にプレス金型でパンチングして穿設することで形成してもよい。また、取付プレート4にはその外周に嵌合溝4dが設けられる。嵌合溝4dは、取付プレート4の上部を覆うノズルカバー3の外周部を嵌合するものである。嵌合溝4dにより、ノズルカバー3が取付プレート4からずれることなく組立可能になる。
【0061】
固定プレート5には固定プレート孔5aが穿設される。固定プレート孔5aは、ヒータ部103,104により加熱された気体を十字孔下部22bに供給して、十字孔22から熱風をリフローはんだ装置100のマッフル内に吹き出させるために設けられた、十字孔下部22bよりも大きな孔である。固定プレート孔5aは、前述のノズルカバー3及び取付プレート4と同様に、固定プレート5にドリルで穿設することで形成してもよいし、固定プレート5にプレス金型でパンチングして穿設することで形成してもよい。ノズルカバー3、取付プレート4及び固定プレート5の作製方法は、適宜変更可能である。なお、固定プレート孔5aの形状は、円形状に限定されず、十字孔下部22bの形状に合わせて十字形状等であってもよい。
【0062】
吹き出しノズル2、ノズルカバー3、取付プレート4及び固定プレート5が、上述のように形成されたことを前提にして、
図11に示すように、まず、取付プレート4のノズル取付孔4bに吹き出しノズル2を十字孔上部22a側から取り付ける。すると、ノズル取付孔4bの下部が吹き出しノズル2の後端にある凸部21aに当接して、吹き出しノズル2と取付プレート4とが嵌合する。
【0063】
次に、嵌合された吹き出しノズル2及び取付プレート4の下部に固定プレート5を取り付ける。このとき、固定プレート5の図示しないネジ孔にネジを螺合することで取付プレート4に固定プレート5が吹き出しノズル2を支持した状態で取り付けられて、吹き出しノズル2、取付プレート4及び固定プレート5が一体化される。
【0064】
最後に、一体化された吹き出しノズル2、取付プレート4及び固定プレート5の上部をノズルカバー3で覆う。
図12に示すように、取付プレート4には嵌合溝4dが設けられているので、この嵌合溝4dによってノズルカバー3の外周部が取付プレート4に嵌合することで、ノズルカバー3が取付プレート4からずれることがない。そして、ノズルカバー3と取付プレート4とは、ネジ止め等の周知の方法によって固定される。このような方法により、ノズル装置1が簡単に組み立てられる。
【0065】
因みに、吹き出しノズル2、取付プレート4及び固定プレート5とノズルカバー3とを、溶接により接合してもよい。また、ノズルカバー3に吹き出しノズル2を直接ネジ止めして、吹き出しノズル2をノズルカバーに固定させることで、取付プレート4を削除する構成であってもよい。ノズル装置1の組立方法は、本例に限定されず、適宜変更可能である。
【0066】
<ノズル装置1の特性例>
次に、ノズル装置1の特性例について説明する。
図13は、縦軸を熱伝達率とし、横軸をヒータ部や冷却部に設けられるファンを回転させるファンモータの出力としたときのノズル装置1の特性例を示す説明図である。
図13に示すように、本発明の吹き出し口が十字形状を有するノズル装置1の特性L1は、従来の吹き出し口が円形状を有するノズル装置の特性L2よりも急峻に立ち上がる。これは、本発明の特性L1の方が従来の特性L2よりも伝熱促進が向上したことを意味している。
【0067】
例えば、従来のノズル装置がファンモータの出力を100%にしてプリント基板に気体を吹き付けたときに、従来のノズル装置の熱伝達率は、約112W/(m
2K)となる。そして、熱伝達率が約112W/(m
2K)のときの本発明のノズル装置1の特性L1をみると、ファンモータの出力が約75%となっている。つまり、従来のノズル装置のファンモータの出力を100%にしていたものを本発明のノズル装置ではファンモータの出力を約75%にすればよいことになり、約25%の消費電力の削減になる。
【0068】
本発明のノズル装置1が上述のように熱伝達率が良好となる一つの理由は、ノズル装置1の吹き出し口が十字形状(十字孔22)を有するからである。十字形状の吹き出し口を介して吹き出しノズル2から噴出される気体は、その吹出方向に対して垂直方向の気体の断面形状を時間的に変化する(スイッチング現象)。このスイッチング現象により、単位時間当たりにプリント基板に与える気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体の熱量に比べて増加して、熱伝達特性が向上できる。
【0069】
このように、第1の実施の形態に係るリフローはんだ装置100によれば、ヒータ部103,104が気体を加熱し、かつ、冷却部105が気体を冷却し、吹き出しノズル2が、ヒータ部103,104によって加熱された気体又は冷却部105によって冷却された気体を、平面形状が非円形かつ内側に突出した突部を有する吹き出し口(十字孔22)から吹き出す。これを前提にして、吸込口3bは、十字孔22から吹き出されてプリント基板に衝突して反射した気体を吸い込む。これにより、プリント基板に反射した気体は、十字孔22から吹き出す気体の妨げを防止できるようになる。この結果、プリント基板に反射した気体は、十字孔22から吹き出す気体に干渉せず、当該気体の温度を下げてしまったり、当該気体の吹出方向を乱してしまったりすることを防止できる。
【0070】
また、本実施の形態に係るノズル装置1によれば、ヒータ部103,104で加熱された気体又は冷却部105で冷却された気体を、ファンで吹き出しノズル2へ送り出す。そして、吹き出しノズル2がファンによって送り出された気体を十字孔22から吹き出す。これを前提にして、十字孔22の平面形状は、非円形かつ内側に突出した突部を有する形状になっている。これにより、吹き出しノズル2の十字孔22から吹き出される気体の吹出方向に対して垂直方向の気体の断面形状が突部によって時間的に変化する(スイッチング現象)。このスイッチング現象により、ヒータ部103,104によって加熱された気体の場合には、単位時間当たりにプリント基板に与える気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体の熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになる。また、冷却部105によって冷却された気体の場合には、単位時間当たりにプリント基板から奪う気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体がプリント基板から奪う熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになる。
【0071】
この結果、ヒータ部103,104で加熱された気体又は冷却部105で冷却された気体をノズルへ送り出すファンを回転させるファンモータの出力を小さくできる。この結果、リフロー装置の消費電力を低減することができ、ファン及びファンモータの寿命が向上する。
【0072】
なお、本実施の形態では、ノズル本体部21には十字孔22を2つ設けたもので説明したが、十字孔22を1つだけ設けても良いし、又は3つ以上設けても構わない。ノズル本体部21の十字孔22が1つの場合には、当該十字孔22の設置位置の変更が容易になり、また、ノズル装置1に設ける十字孔22の個数を増加させることや減少させることが容易になることで、迅速な設計変更に対応できる。また、ノズル本体部21の十字孔22が3つ以上の場合には、部品点数が少なくなり、製造コストを低減できる。
【0073】
また、本実施の形態では、吹き出し口及び気体流動路の断面形状を十字形状で説明したが、楕円形状、星形状及び多角形状等で形成しても構わない。
【0074】
また、本実施の形態では、ノズル本体部21と十字孔22とが一体の吹き出しノズル2について説明したが、ノズル本体部21と十字孔22とが別体になっていても構わない。
【0075】
[第2の実施の形態]
本実施の形態では、前述の第1の実施の形態で説明したノズル装置1の吸込口3bの形状を変更したノズル装置1Aについて説明する。前述の第1の実施の形態と同じ名称及び符号のものは同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0076】
図14は、第2の実施の形態に係るノズル装置1Aの構成例を示す斜視図である。
図14に示すように、ノズル装置1Aは、吹き出しノズル2、ノズルカバー3Aで構成される。吹き出しノズル2は、前述の第1の実施の形態で説明したものと同じものである。
【0077】
ノズルカバー3Aには吹き出しノズル用孔3a及び吸込口3cが穿設される。吸込口3cは、円形状を有し、吹き出しノズル2の近傍に位置させるために、吹き出しノズル用孔3aの近傍に穿設される。そして、吸込口3cは、マッフル内に貯留する気体や、吹き出しノズル2から吹き出されてプリント基板等に衝突して反射した気体を吸い込む。
【0078】
本実施例の場合、隣接する3個の吹き出しノズル用孔3aを通る外接円の外心に吸込口3cを設けたものである。
【0079】
このように、第2の実施の形態に係るノズル装置1Aによれば、吹き出しノズル2は、その先端に十字孔22が設けられ、この十字孔22を介して気体を吹き出してプリント基板に気体を吹き付ける。吸込口3cは、円形状を有し、吹き出しノズル2の近傍に設けられ、吹き出しノズル2から吹き出されてプリント基板に衝突して反射した気体を吸い込む。
【0080】
これにより、吸込口3cが近接する3個の吹き出しノズル用孔3aからより離隔した位置に配されることになるので、吹き出す気体と吸い込む気体との干渉が少なくて済む。すなわち、吸込口3cは、プリント基板に反射した気体をより多く吸い込む。これにより、十字孔22から吹き出される気体がヒータ部によって加熱されたものである場合には、ノズル装置1Aは、プリント基板に反射した気体が十字孔22から吹き出される気体の温度を低下させることを防止する。また、十字孔22から吹き出される気体が冷却部によって冷却されたものである場合には、ノズル装置1Aは、プリント基板に反射した気体が十字孔22から吹き出される気体の温度を上昇させることを防止する。この結果、ユーザが設定した気体の温度と、プリント基板に吹き付ける実際の気体の温度との差を小さくすることができる。
【0081】
なお、上述の第1及び第2の実施の形態で、ノズルカバー3,3Aに吸込口3b,3cを多数設けたノズル装置1,1Aを説明したが、多数の吸込口を設けずに、取付プレート4のように両側や所定の箇所に大きな吸込口を設けるノズル装置であっても構わない。その吸込口の大きさは適宜変更可能である。
【0082】
[第3の実施の形態]
本実施の形態では、前述の第1の実施の形態で説明した吹き出しノズル2の形状を変更したものについて説明する。前述の第1の実施の形態と同じ名称及び符号のものは同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0083】
図15は、第3の実施の形態に係る吹き出しノズル2Bの構成例を示す断面斜視図である。
図15に示すように、吹き出しノズル2Bは、ノズル本体部21B及び十字孔部材23Bで構成される。
【0084】
ノズル本体部21Bは、前述の十字孔が一体に形成されるノズル本体部21とは異なり、円柱状の気体流動路24Bの先端に十字孔部材23Bを嵌め込んだものである。ノズル本体部21Bは、アルミニウムや銅等の熱伝導率の良好な金属材料で形成され、プレス金型でパンチングして穿設することで気体流動路24Bを形成してもよいし、金型鋳造法等で作製してしてもよく、前述のノズル本体部21よりも容易に作製可能である。
【0085】
十字孔部材23Bは、プレート部材に十字孔22Bが穿設されたものである。十字孔22Bの平面形状は、非円形かつ内側に突出した突部を有する形状になっている。また、十字孔22Bは、例えば、プレス金型でパンチングして穿設される。また、十字孔部材23Bは、熱膨張係数の違いによる歪み等を防止するために、ノズル本体部21Bと同じ金属材料で形成されることが望ましい。
【0086】
吹き出しノズル2Bは、上述のように形成されたノズル本体部21Bの上部に十字孔部材23Bを嵌め込むことで組立可能である。そのため、当該吹き出しノズル2Bの製造コストを低減できる。これにより、吹き出しノズル2Bが搭載されるノズル装置やリフローはんだ装置のコストも低減できる。
【0087】
このように形成された吹き出しノズル2Bは、前述の吹き出しノズル2と同様の熱伝達率−ファンモータの出力特性を有する(
図13参照)。このような特性を有する理由は、十字孔22Bの平面形状は、非円形かつ内側に突出した突部を有する形状になっていて、十字孔22Bから吹き出される気体の吹出方向に対して垂直方向の気体の断面形状が突部によって時間的に変化し(スイッチング現象)、ヒータ部によって加熱された気体の場合には、単位時間当たりにプリント基板に与える気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体の熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになり、また、冷却部によって冷却された気体の場合には、単位時間当たりにプリント基板から奪う気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体がプリント基板から奪う熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになるからである。
【0088】
これにより、吹き出しノズル2Bは、ヒータ部で加熱された気体又は冷却部で冷却された気体をノズルへ送り出すファンを回転させるファンモータの出力を小さくできる。この結果、リフロー装置の消費電力を低減することができ、ファン及びファンモータの寿命が向上する。
【0089】
[第4の実施の形態]
本実施の形態では、前述の第1及び2の実施の形態で説明したノズル装置1,1Aを代替することができる十字孔プレート10について説明する。
【0090】
図16は、第4の実施の形態に係る十字孔プレート10の構成例を示す斜視図である。
図16に示すように、十字孔プレート10は、プレート本体部11、十字孔12、吸込口13及び取付孔14で構成される。十字孔プレート10は、前述の第1及び2の実施の形態で示したノズル装置1,1Aの代替するものであり、ノズル形状はなく、プレート形状にすることにより、製造コストの削減することができるものである。例えば、
図1に示したリフローはんだ装置100に取り付けられたノズル装置1の代わりに、十字孔プレート10が取付孔14を介して取り付けられる。
【0091】
プレート本体部11には十字孔12、吸込口13及び取付孔14が設けられる。
図1で示したヒータ部103,104によって加熱された気体や、冷却部105によって冷却された気体が、プレート本体部11に千鳥状に穿設された十字孔12から吹き出される。十字孔12から吹き出された気体にはスイッチング現象が生じ、単位時間当たりに対象物に与える(又は対象物から奪う)気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体の熱量に比べて増加する。
【0092】
十字孔12から吹き出されて熱量が増加された気体は、例えば、十字孔プレート10の直上又は直下に搬送されてきたプリント基板に衝突する。すると、その気体は、当該プリント基板によって反射されて、吸込口13によって吸い込まれる。これにより、プリント基板から反射された気体が、十字孔12から吹き出す気体の妨げとならない。因みに、吸込口13には、パーティクル等がプリヒータ部33内部に入り込まないように、網が設けられている。
【0093】
このように、第4の実施の形態に係る十字孔プレート10によれば、ノズル装置1,1Aの代わりに十字孔プレート10をリフローはんだ付け装置100に取り付けることにより、十字孔12から吹き出される気体にスイッチング現象が生じて、単位時間当たりに対象物に与える(又は対象物から奪う)気体の熱量を増加することができる。
【0094】
これにより、
図1で示したヒータ部103,104で加熱した気体又は冷却部105で冷却した気体を例えばファンで十字孔12へ送り出す場合、このファンを回転させるファンモータの出力を小さくできる。この結果、従来のリフローはんだ装置に比べて消費電力を低減することができ、ファン及びファンモータの寿命が向上する。また、第1乃至第3の実施の形態で説明した吹き出しノズル2,2Bに比べて、製造コストを削減することができる。
【0095】
[第5の実施の形態]
本実施の形態では、前述の第4の実施の形態で説明したノズル装置1を備えたフローはんだ装置30について説明する。前述の第1乃至4の実施の形態と同じ名称及び符号のものは同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0096】
<フローはんだ装置30の構成例>
まずは、フローはんだ装置30の構成例について説明する。
図17は、第5の実施の形態に係るフローはんだ装置30の構成例を示す正面図である。
図17に示すように、フローはんだ装置30は、本体ケース31、搬送部32、プリヒータ部33、噴流はんだ槽34及び冷却部35で構成される。
【0097】
本体ケース31は、搬送部32、プリヒータ部33、噴流はんだ槽34及び冷却部35を覆い、外部からの埃等のパーティクルに図示しないプリント基板が汚染されないように保護するものである。
【0098】
搬送部32は、プリント基板を搬送するものである。搬送部32は、プリヒータ部33、噴流はんだ槽34及び冷却部35の順番でプリント基板を搬送して、フローはんだ装置30外に搬出する。
【0099】
プリヒータ部33は、プリント基板がフローはんだ装置30に投入される前の工程であるフラクサ工程でフラックスが塗布された当該プリント基板を熱風で乾燥させ、かつ、後述する噴流はんだ槽34によるはんだ付けを行う際、プリント基板にはんだを付着させる度合いであるはんだの付着力を向上させるために当該プリント基板を予備加熱するものである(プリヒータ部33については、
図18及び19で詳細に説明する)。
【0100】
プリヒータ部33には、第4の実施の形態で説明した十字孔プレート10が設けられる(
図16参照)。プリヒータ部33は、十字孔プレート10に穿設された十字孔12から熱風を吹き出す。十字孔12から吹き出される気体の吹出方向に対して垂直方向の気体の断面形状が突部によって時間的に変化すること(スイッチング現象)により、プリヒータ部33によって加熱された気体は、単位時間当たりにプリント基板に与える気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体の熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになる。
【0101】
また、プリヒータ部33は、第1乃至第4のヒータを備え、第1乃至第4のヒータがプリント基板の搬送方向に対して並んで設けられており、第1乃至第4のヒータのそれぞれが温度調節可能になっている。
【0102】
プリヒータ部33には噴流はんだ槽34が隣接して設けられる。噴流はんだ槽34は、プリヒータ部33で乾燥されたプリント基板にはんだを噴き付けて、プリント基板の所定の箇所にはんだを形成させる。
【0103】
噴流はんだ槽34には冷却部35が隣接して設けられる。冷却部35は、当該冷却部35を構成する図示しないファンによる送風をプリント基板に送り、プリヒータ部33及び噴流はんだ槽34にて加熱されたプリント基板を冷却するものである。プリント基板を冷却部35で冷却することで、プリント基板に付着させたはんだに生じるクラック等を防ぐことができる。
【0104】
冷却部35には、プリヒータ部33と同様に、十字孔12の吹き出し口を有する十字孔プレート10が設けられる。冷却部35は、十字孔プレート10の十字孔12から冷風を吹き出す。十字孔12から吹き出される気体の吹出方向に対して垂直方向の気体の断面形状が突部によって時間的に変化することにより、冷却部35によって加熱された気体は、単位時間当たりにプリント基板から奪う気体の熱量が、一般的な円形状の吹き出し口から吹き出される気体がプリント基板から奪う熱量に比べて増加して、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加できるようになる。
【0105】
<プリヒータ部33の構成例>
次に、プリヒータ部33の構成例について説明する。
図18は、フローはんだ装置30のプリヒータ部33の構成例を示す断面斜視図であり、
図19は、その正面断面図である。
図18及び19に示すように、プリヒータ部33は、十字孔プレート10、整流板331、ヒータ332、ファン333及びモータ334で構成される。
【0106】
プリヒータ部33の上方には十字孔プレート10が設けられる。十字孔プレート10の下部であってプリヒータ部33の内部には整流板331及びヒータ332が設けられる。整流板331は、十字孔12から吹き出される気体の流れを整流するものである。ヒータ332は、十字孔プレート10に設けられた吸込口13により吸い込まれた気体を加熱するものである。
【0107】
ヒータ332の直下にはファン333が設けられる。ファン333は、所謂シロッコファンであり、縦方向から吸い込んだ気体を横方向に吐き出すファンである。ファン333にはモータ334が設けられる。モータ334は、ファン333を軸支して当該ファン333を所望の回転数で回転させる動力源である。モータ334の回転数や、ヒータ332の加熱温度は、図示しない制御部によって制御され、これにより、プリヒータ部33に搬送されてくるプリント基板に吹き付ける気体の温度が制御される。
【0108】
このように、第5の実施の形態に係るフローはんだ装置30によれば、十字孔12の吹き出し口を有する十字孔プレート10により、プリント基板への熱交換率(熱伝達率)が増加するので、プリヒータ部33で加熱された気体又は冷却部35で冷却された気体をノズルへ送り出すファンを回転させるファンモータの出力を小さくできる。この結果、フローはんだ装置の消費電力を低減することができ、ファン及びファンモータの寿命が向上する。
【0109】
なお、本実施の形態では、十字孔プレート10が設けられるフローはんだ装置について説明したが、これに限定されず、十字孔プレート10の代わりに第1及び第2の実施の形態で説明したノズル装置1,1Aが設けられたフローはんだ装置でも上述の効果を得ることができる。
【0110】
また、本発明は、リフローはんだ装置やフローはんだ装置だけに限定されず、熱風によって加熱する加熱装置や、冷風によって冷却する冷却装置にも適用可能である。