(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、高負荷運転時に、吸気量を十分に確保した状態で、排気ガスの流量を低減することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路の排気により吸気通路の吸気を過給する過給手段と、前記過給手段よりも下流側の前記排気通路に設けられ、排気中のNOxを浄化するNOx浄化触媒と、前記過給手段よりも上流側の前記吸気通路、及び、前記過給手段よりも下流側で前記NOx浄化触媒よりも上流側の前記排気通路を連通する低圧EGR通路と、前記排気通路との連通部位の近傍における前記低圧EGR通路に備えられ、前記低圧EGR通路の開閉を行って前記排気通路から前記吸気通路への排気ガスの流通を制御する低圧EGRバルブと、
前記過給手段よりも下流側の前記吸気通路、及び、前記過給手段よりも上流側の前記排気通路を連通する高圧EGR通路を備え、前記高圧EGR通路に前記排気通路の排気ガスの一部を導入して前記吸気通路に再循環させる高圧EGR手段と、前記低圧EGRバルブ
、前記高圧EGR手段の作動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段
には、低負荷、低回転の高圧EGR導入領域、高圧EGR導入領域よりも高負荷、高回転の低圧EGR導入領域、低圧EGR導入領域よりも高負荷、高回転のEGR非導入領域を有する制御マップが備えられ、前記制御手段は、前記EGR非導入領域の運転領域内で、更に、高負荷、高回転状態への移行時に、前記低圧EGRバルブが閉じられていたことを条件にして前記低圧EGRバルブを開いてから高負荷、高回転の運転領域に移行する一方、前記高圧EGR導入領域から、前記EGR非導入領域への移行時に、前記低圧EGRバルブが閉じられていたことを条件にして前記低圧EGRバルブを開いてから前記EGR非導入領域に移行することを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、内燃機関が高負荷状態となるEGR非導入運転領域の際に、排気通路の排気ガスの一部を低圧EGR通路に導入するので、NOx浄化触媒への排気ガスの流入量を抑制することができる。また、吸気量に影響を与えないため、燃焼室に供給される空気量が減ることがない。
そして、高圧EGR手段により排気ガスの再循環が実施される低負荷の運転領域から、内燃機関が高負荷状態となるEGR非導入運転領域への過渡時には、低圧EGRバルブを開いて排気ガスの再循環を一時的に経た後にEGRを非導入状態にすることができる。
【0009】
このため、高負荷運転時に、吸気量を十分に確保した状態で、排気ガスの流量を低減することができ、NOx浄化触媒の浄化性能を維持することができる。
【0010】
また、排気通路との連通部位の近傍に設けた低圧EGRバルブが閉じられてから所定時間が経過したことを条件にして低圧EGRバルブを開いて排気ガスの一部を低圧EGR通路に導入するので、排気ガスが新たに低圧EGR通路内へ侵入することが所定時間なく、その期間に低圧EGR通路内の排気ガス濃度は次第に低下する。そのため移行前の運転領域に拘わらず、高負荷運転時にEGR非導入運転領域へ移行する際に、排気通路の排気ガスの一部を低圧EGR通路に導入することができ、NOx浄化触媒への排気ガスの流入量を抑制することができる。
【0013】
また、
請求項2に係る本発明の内燃機関の排気浄化装置は、
請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記低圧EGRバルブが閉じられて排気ガスの再循環が実施されていない時に、前記低圧EGR通路に空気を導入する空気導入手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る本発明では、排気ガスの再循環が実施されていない時に、空気導入手段
により低圧EGR通路に空気を導入しておくことができ、排気通路の排気ガスの一部を低
圧EGR通路に導入する際に、低圧EGR通路の内部の空気が燃焼室に供給されるまでの
間、十分な量の空気が確保され、スモークの問題が生じることがない。
【0015】
また、
請求項3に係る本発明の内燃機関の排気浄化装置は、
請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記空気導入手段は、前記吸気通路の吸気の一部を前記低圧EGR通路に導入する手段であることを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る本発明では、空気導入手段により、吸気通路の吸気の一部が低圧EGR通路に導入されるので、排気通路の排気ガスの一部を低圧EGR通路に導入した際に、エアクリーナを通過した吸気を燃焼室に供給することができる。
【0017】
また、
請求項4に係る本発明の内燃機関の排気浄化装置は、
請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記空気導入手段は、前記吸気通路に設けられたエアフローセンサの上流側より吸気の一部を前記低圧EGR通路に導入することを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る本発明では、エアフローセンサの上流側より吸気の一部を低圧EGR通路に導入するので、エアフローセンサの検出値と実際の吸気量との間にずれが生じることがない。
【0019】
また、
請求項5に係る本発明の内燃機関の排気浄化装置は、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記空気導入手段は、前記低圧EGRバルブの近傍であって該低圧EGRバルブよりも前記吸気通路側の前記低圧EGR通路に空気を導入することを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る本発明では、低圧EGRバルブよりも吸気通路側の低圧EGR通路に空気を導入するので、低圧EGR通路の全体を掃気することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、高負荷運転時に、吸気量を十分に確保した状態で、排気ガスの流量を低減することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1、
図2に基づいて内燃機関の排気浄化装置の構成を説明する。
図1には本発明の第1実施例に係る内燃機関の排気浄化装置の系統を表す概略構成、
図2にはEGR領域を負荷とエンジン回転速度との関係で表すマップを示してある。
【0024】
図1に示すように、車両に搭載される内燃機関としての多気筒ディーゼルエンジン(エンジン)1の排気管2には排気浄化装置3が備えられている。エンジン1のシリンダブロック4のボア内にはピストン5が往復動自在に備えられ、ピストン5とシリンダヘッド6との間で燃焼室7が形成されている。ピストン5はコンロッド8を介してクランクシャフト9に接続され、ピストン5の往復運動によってクランクシャフト9が駆動される。
【0025】
シリンダヘッド6には吸気ポートを介して吸気マニホールド11を含む吸気管(吸気通路)12が接続されている。吸気ポートは吸気バルブにより開閉される。また、シリンダヘッド6には排気ポートを介して排気マニホールド13を含む排気管(排気通路)2が接続されている。排気ポートは排気バルブにより開閉される。
【0026】
シリンダヘッド6には各気筒の燃焼室7に燃料を直接噴射する電子制御式の燃料噴射弁10が設けられ、燃料噴射弁10には図示しないコモンレールから燃料が供給される。コモンレールでは燃料が所定の燃圧に調整され、燃料噴射弁10には所定の燃圧に制御された高圧燃料が供給される。
【0027】
吸気管12及び排気管2の途中部には過給機としてターボチャージャ15が設けられ、ターボチャージャ15は排気管14側にタービンが備えられ、タービンに連結されたコンプレッサが吸気管12側に備えられている。エンジン1の排気ガスが排気管14からターボチャージャ15に送られると、排気ガスの流れによりタービンが回転し、タービンの回転に伴ってコンプレッサが回転して吸気管12内の吸気が過給される。
【0028】
ターボチャージャ15の下流側の吸気管12にはインタークーラ16が配され、過給された吸気はインタークーラ16で冷却されて燃焼室7に送られる。インタークーラ16の下流側の吸気管12には、上流側から吸気管12を開閉するスロットルバルブ17、吸気の温度を検出する吸気温度センサ18、吸気マニホールド11内の圧力を検出するインマニ圧センサ19が備えられている。
【0029】
ターボチャージャ15の下流側の排気管2には、排気浄化装置3として、ディーゼル酸化触媒(酸化触媒)21及び排気浄化用のディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter:フィルタ)22を備えた浄化装置23が備えられている。酸化触媒21に排気ガスが流入すると、排気ガス中の一酸化窒素(NO)が酸化されて二酸化窒素(NO
2)が生成される。また、排気ガス中の微粒子状物質(PM)がフィルタ22で捕集される。
【0030】
フィルタ22で捕集されたPMは、排気ガス中のNO
2によって酸化(燃焼)されCO
2として排出され、フィルタ22に残存するNO
2はN
2に分解されて排出される。即ち、浄化装置23では、排気ガスが浄化されてPM及びNOxの排出量を大幅に低減することができる。
【0031】
浄化装置23の下流側の排気管2には、排気浄化装置3として、NOxトラップ触媒24が備えられている。NOxトラップ触媒24は、酸化雰囲気においてNOxを一旦捕捉し、捕捉したNOxを、例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を含む還元雰囲気中で放出して窒素(N
2)等に還元する浄化装置である。つまり、酸化触媒21で生成されたNO
2、また、酸化触媒21で酸化されずに排気ガス中に残存するNOを一旦捕捉し、捕捉したNOxを放出して窒素(N
2)等に還元する。
【0032】
尚、NOxを一旦捕捉し還元雰囲気中でNOxを放出するNOxトラップ触媒24に代えて、他の反応等によりNOxを浄化する除去装置(触媒)を用いることが可能である。
【0033】
NOxトラップ触媒24の入口側には排気温度センサ25が設けられ、排気温度センサ25によってNOxトラップ触媒24の入口の排気ガスの温度、即ち、浄化装置23から排出される排気ガスの温度が検出される。NOxトラップ触媒24の入口側にはリニアA/Fセンサ26が設けられ、リニアA/Fセンサ26によって排気空燃比が検出される。
【0034】
ターボチャージャ15の上流側の排気管14には高圧EGR通路として高圧EGR管31の一端が接続され、高圧EGR管31の他端はスロットルバルブ17の下流側(ターボチャージャ15の下流側)の吸気管12に連通している。高圧EGR管31には高圧EGRクーラ32が設けられ、高圧EGR管31の吸気管12との接続部には高圧EGRバルブ33が設けられている。
【0035】
高圧EGRバルブ33を開くことで、ターボチャージャ15の上流側の排気管14を流れる排気ガスの一部が高圧EGR管31に導入され、高圧EGR管31に導入された排気ガスは高圧EGRクーラ32で冷却されてターボチャージャ15の下流側の吸気管12に供給される(高圧EGR手段)。
【0036】
浄化装置23の下流側でNOxトラップ触媒24の上流側(ターボチャージャ15の下流側)の排気管14には低圧EGR通路として低圧EGR管35の一端が接続され、低圧EGR管35の他端はターボチャージャ15の上流側の吸気管12に連通している。低圧EGR管35には低圧EGRクーラ36が設けられ、低圧EGR管35の排気管14との接続部の近傍には低圧EGRバルブ37が設けられている。
【0037】
低圧EGRバルブ37を開くことで、ターボチャージャ15の下流側の排気管14を流れる排気ガスの一部が低圧EGR管35に導入され、低圧EGR管35に導入された排気ガスは
低圧EGRクーラ36で冷却されてターボチャージャ15の上流側の吸気管12に供給される。
【0038】
高圧EGR手段及び低圧EGR手段により排気ガスの一部を吸気に還流させることで、エンジン1の燃焼室7内の燃焼温度を低下させ、NOxの排出量を低減させることができる。高圧EGR手段はターボチャージャ15の上流側の排気ガスの一部を循環させるため、ターボチャージャ15による過給が十分に必要となる運転状態(空気量を確保する必要がある運転状態)の場合、低圧EGR手段を用いてNOxの排出量を低減する。
【0039】
つまり、
図2に細幅ピッチの斜線で示すように、負荷(トルク)が小さくエンジン回転速度が低い領域で高圧EGR手段が用いられる高圧EGR領域とされ、
図2に太幅ピッチの斜線で示すように、負荷(トルク)が高圧EGR領域よりも大きくエンジン回転速度が高い領域で低圧EGR手段が用いられる低圧EGR領域(空気量を確保する必要がある運転領域)とされる。
【0040】
低圧EGR管35との接続部の上流側の吸気管12には低圧スロットルバルブ38が設けられ、低圧スロットルバルブ38の上流側の吸気管12にはエアクリーナ39が設けられている。エアクリーナ39を通過した吸気の流量はエアフローセンサ(温度センサ付き)30により検出される。
【0041】
車両には、制御手段として電子制御ユニット(ECU)41が備えられ、ECU41には入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶を行う記憶装置、中央処理装置及びタイマやカウンタ類が備えられている。ECU41には上述したセンサ類(吸気温度センサ18、インマニ圧センサ19、排気温度センサ25、リニアA/Fセンサ26、エアフローセンサ30等)からの情報が入力され、センサ類の情報に基づいて排気浄化装置3、高圧EGR手段及び低圧EGR手段を含むエンジン1の総合的な制御がECU41により行われる。
【0042】
上述した排気浄化装置を備えたエンジン1は、
図2に示すように、負荷(トルク)とエンジン回転速度の関係により、高圧EGR手段が用いられる高圧EGR領域、低圧EGR手段が用いられる低圧EGR領域、エンジン1が高負荷状態となるEGR非導入運転領域(図中網線で示してある)が設定されている。加速時等でエンジン1が高負荷状態となる領域は、EGR手段が用いられない領域であり、排気ガスの流量が増加してNOxトラップ触媒24の浄化効率が低下する虞がある。
【0043】
このため、エンジン1が高負荷状態となるEGR非導入運転領域の際に、低圧EGR管35にNOxトラップ触媒24の上流側の排気ガスの一部を導入し、NOxトラップ触媒24への排気ガスの流入量を抑制するようにしている。
【0044】
例えば、低圧EGR手段による排気ガスの再循環がなされていない運転領域(EGR非導入運転領域)から、当該状態より高負荷状態となるEGR非導入運転領域への過渡時には、つまり、
図2中矢印A、矢印Bで示すように、EGR非導入運転領域でのNOx量線(図中一点鎖線で示す)を跨ぐ状態で運転状態が変化した際には、低圧EGR管35にNOxトラップ触媒24の上流側の排気ガスの一部を導入する制御が実施され、その後所定の運転状態にされる。
【0045】
EGR非導入運転領域は、低圧EGRバルブ37が閉じられている領域であるので、低圧EGR管35にNOxトラップ触媒24の上流側の排気ガスの一部を導入する制御は、低圧EGRバルブ37が閉じられてから所定時間が経過したことを条件に実施されることになる。
【0046】
更に、高圧EGR手段により排気ガスの再循環が実施される高圧EGR領域から、EGR非導入運転領域への過渡時には、つまり、
図2中矢印Cで示すように、高圧EGR領域から負荷及びエンジン回転速度が増加するように運転状態が変化した際には、低圧EGR管35にNOxトラップ触媒24の上流側の排気ガスの一部を導入する制御が一時的に実施され、その後EGR非導入運転領域での運転状態にされる。
【0047】
高圧EGR領域は、低圧EGRバルブ37が閉じられている領域であるので、低圧EGR管35にNOxトラップ触媒24の上流側の排気ガスの一部を導入する制御は、低圧EGRバルブ37が閉じられてから所定時間が経過したことを条件に実施されることになる。
【0048】
このため、移行前の運転領域に拘わらず、高負荷運転時にEGR非導入運転領域へ移行する際に、排気管14の排気ガスの一部を低圧EGR管35に導入することができ、NOxトラップ触媒24への排気ガスの流入量を抑制することができる。このため、高負荷運転時に、吸気量を十分に確保した状態で、排気ガスの流量を低減し、排気ガス流量の増加によるNOxトラップ触媒24の浄化性能の低下を抑制することができる。
【0049】
図3から
図5に基づいて本実施例の排気浄化装置を備えたエンジン1のガスの流れを具体的に説明する。
【0050】
図3には高負荷運転に至る前(加速前)における系統内のガスの状況、
図4には加速開始時の系統内のガスの状況、
図5には加速中の系統内のガスの状況を示してある。
【0051】
図3に示すように、加速前の状況においては、燃焼室7に至る吸気管12には空気が存在し(図中白抜き状態)、燃焼室7からNOxトラップ触媒24の下流側に至るまでの排気管14にはNOx濃度が低い排気ガスが存在している(図中薄色の網目状態)。そして、低圧EGR管35には前回の再循環時の排気ガスが存在している(図中斜線状態)。
【0052】
図4に示すように、加速が開始されると、低圧EGRバルブ37が開いて排気ガスの一部が低圧EGR管35に流れ始め、NOxトラップ触媒24に流れる排気ガスが減少する。同時に、前回の再循環時の排気ガスが吸気管12に流入し、燃焼室7から浄化装置23に至る排気管14にNOx濃度が高い加速中の排気ガス(図中黒色状態)が存在する。低圧EGR手段の応答遅れの間、前回の再循環時の排気ガス(図中斜線状態)は燃焼室7まで到達せず、十分な空気量が確保された状態が保たれる。
【0053】
これにより、加速時であっても、排気ガスの一部を低圧EGR管35に導入し、NOxトラップ触媒24に流れる排気ガスの流量を減少させてNOxトラップ触媒24の浄化性能の低下を抑制することができる。そして、加速開始時には、低圧EGR手段の応答遅れにより低圧EGR管35の排気ガスが燃焼室7に到達しないので、空気量が十分に確保され、スモークの問題は生じない。
【0054】
尚、加速開始時に排気管14に存在する排気ガスはNOx濃度が低い排気ガス(図中薄色の網目状態)であるため、排気ガスの流量を減少させずにNOxトラップ触媒24の浄化効率が低い状態であっても、大気に放出されるNOx量は少ない。このため、低圧EGR管35の接続位置に、加速開始後のNOx濃度が高い排気ガス(図中黒色状態)が至るタイミングに合わせて、低圧EGRバルブ37を開くようにすることも可能である。
【0055】
これにより、低圧EGR管35の排気ガス(図中斜線状態)が吸気管12に流入するタイミングが遅くなり、空気量が十分に確保される状態を長く維持することができ、スモークの問題に対して有利になる。
【0056】
図5に示すように、加速中は、NOx濃度が高い排気ガス(図中黒色状態)が低圧EGR管35に導入され、NOxトラップ触媒24に流れるNOx濃度が高い排気ガスの流量が減少している。燃焼室7には、吸気管12に吸入される空気、及び、低圧EGR管35から流入する排気ガスが導入されるため、排気ガスの一部を低圧EGR管35に導入しない状態と同じガス流量が確保される。
【0057】
従って、加速時であっても、NOxトラップ触媒24の浄化性能を維持することができる。そして、燃焼室7に供給される空気量が十分に確保され、スモークの問題が生じることがない。
【0058】
上述した実施例では、NOx浄化触媒として、NOxを吸蔵・放出するNOxトラップ触媒24を例に挙げて説明したが、尿素SCR(尿素水添加選択還元触媒)や固体SCR(アンモニア固体貯蔵・直接添加選択還元触媒)等、他のNOx浄化触媒を適用することも可能である。
【0059】
また、低圧EGRバルブ37の下流側の低圧EGR管35に流体貯蔵タンクを設置することも可能である。図示の実施例の場合、低圧EGRクーラ36が流体貯蔵タンクの役割を果たしている。流体貯蔵タンクを備えることにより、低圧EGR管35に導入させた排気ガスの一部が燃焼室7に到達するまでの時間を延長することができる。
【0060】
また、低圧EGRクーラ36の冷却水系統は、エンジン冷却水系統とは別の系統とし、専用の熱交換器で冷却水を冷却することが好ましい。これにより、低圧EGRクーラ36の冷却能力を高くすることができ、高負荷で低圧EGR管35に排気ガスの一部を導入し、コンプレッサ(ターボチャージャ15のコンプレッサ)の出口温度が高くなる状態になっても、コンプレッサに導入される低圧EGRガスの温度を低下させることができ、コンプレッサの出口温度が許容温度を超えることがない。
【0061】
また、DPF22の再生制御を実施するために、DPF22へのPMの堆積量を算出しているが、堆積量の積算に際し、エンジン回転速度、負荷に対するDPF22への流入PM量(排気ガス中のPM量)のマップ値を積算している。このマップとして、通常運転時とは別に、低圧EGR管35に排気ガスの一部を導入する制御を実施した際の専用のマップを適用する。全開加速状態が一定時間以上継続し、燃焼室7内に低圧EGR手段からの排気ガスが継続して導入される場合、DPF22へのPMの堆積が通常より早く進行することが予想されるため、専用のマップを適用することで、PMの堆積が早く進行する点を考慮した制御を実施することができる。
【0062】
また、全開加速状態が一定時間以上継続し、燃焼室7内に低圧EGR手段からの排気ガスが継続して導入される場合、運転条件に応じて追加の燃料を主燃料噴射の後に噴射する等でスモークの発生を抑制することができる。
【0063】
図6、
図7に基づいて他の実施例を説明する。
【0064】
図6には本発明の第2実施例に係る内燃機関の排気浄化装置の系統を表す概略構成、
図7には本発明の第3実施例に係る内燃機関の排気浄化装置の系統を表す概略構成を示してある。
図1に示した部材と同一部材には同一符号を付してある。以下には、異なる構成の部分を説明する。
【0066】
図6に示すように、低圧EGR管35の排気管14との接続部の近傍には、外部空気導入管51が接続され、外部空気導入管51には開閉バルブ52が設けられている。開閉バルブ52を開くことにより低圧EGR管35の内部に空気を導入することができる。
【0067】
低圧EGR手段を使用した後、開閉バルブ52を開き、低圧EGR管35に空気を導入する。所定時間経過した後、開閉バルブ52を閉じることで低圧EGR管35の内部が空気で満たされる。少なくとも、低圧EGRバルブ37を開く時には開閉バルブ52は閉じておく。また、低圧スロットルバルブ38を絞ることで、外部空気導入管51に比べて吸気管12が相対的に低圧(負圧)になり、低圧EGR管35への空気の導入が容易になる。
【0068】
第2実施例では、加速前に、低圧EGR管35の内部を空気で満たすことができるので、加速開始時には、低圧EGR管35の内部の空気が吸気管12に供給され、空気を供給する時間を長くすることができる。このため、全開加速状態が長く継続する場合であっても、低圧EGR管35に導入した排気ガスが燃焼室7に到達する時間が延長され、スモークが悪化する問題が生じることがない。
【0069】
高圧EGR手段を用いている場合には、開閉バルブ52を開いて外部の空気を導入する。これにより、加速時に低圧EGRを用いる運転条件を回避することができる。
【0070】
また、開閉バルブ52を開いて外部の空気の導入中は、低圧EGR管35に導入される空気量が推定される。燃焼室7に供給される空気量は、エアフローセンサ30で計測された吸入空気量と、低圧EGR管35に導入された推定空気量との合計空気量とされる。これにより、低圧EGR管35内の空気を燃焼室7に導入する際、エアフローセンサ30が計測する空気量と、実際に燃焼室7に導入される空気量との間に誤差が生じない状態で制御を行うことができる。
【0072】
図7に示すように、低圧EGR管35の排気管14との接続部の近傍には、内部空気導入管55の一端が接続され、内部空気導入管55の他端はエアクリーナ39に連通している。内部空気導入管55の他端の近傍には流入開閉バルブ56が設けられている。流入開閉バルブ56を開くことにより低圧EGR管35の内部にエアクリーナ39の下流の空気を導入することができる。
【0073】
低圧EGR手段を使用した後、流入開閉バルブ56を開き、低圧EGR管35にエアクリーナ39を通過した空気を導入する。所定時間経過した後、流入開閉バルブ56を閉じることで低圧EGR管35の内部が清浄な空気で満たされる。少なくとも、低圧EGRバルブ37を開く時には流入開閉バルブ56は閉じておく。
【0074】
第3実施例では、第2実施例に加えて、低圧EGR管35にエアクリーナ39を通過した清浄な空気を導入することができる。エアフローセンサ30の上流側のエアクリーナ39の部位に内部空気導入管55の他端が連通しているので、低圧EGR管35に空気を導入する際に、エアフローセンサ30が計測する空気量と、燃焼室7に実際に導入される空気量との間に誤差が生じることがない。
【0075】
尚、第3実施例では、内部空気導入管55の他端をエアクリーナ39に連通し、連通部をエアフローセンサ30の上流側としたが、エアフローセンサ30の下流側に内部空気導入管55の他端を連通することも可能である。この時、低圧EGR管35に導入される空気量が推定される。燃焼室7に供給される空気量は、エアフローセンサ30で計測された吸入空気量から、低圧EGR管35に導入された推定空気量を減じた空気量とされる。高圧EGR手段からEGRが導入されていない場合(高圧EGRが導入されていない場合)、燃焼室7内に吸入される空気量は、吸気マニホールド11のインマニ圧センサ19で計測した空気量をそのまま用いる。
【0076】
低圧EGR管35に導入されて貯えられる空気量を推定するに際して、高圧EGR手段からEGRが導入されていない場合(高圧EGRが導入されていない場合)、エアフローセンサ30で計測された空気量と、インマニ圧センサ19で計測された空気量との差を用いる。この推定量をECU41で記憶し、低圧EGRバルブ37が開いている際には(低圧EGR管35内の空気を吸気管12に導入中は)、エアフローセンサ30で計測する空気量と、推定により求めた低圧EGR管35内の空気量を加えて、燃焼室7内に吸入される空気量とする。
【0077】
これにより、低圧EGR管35内の空気を燃焼室7に導入する際、エアフローセンサ30が計測する空気量と、実際に燃焼室7に導入される空気量との間に誤差が生じない状態で制御を行うことができる。