(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バーナと、当該バーナの燃焼動作により生成した燃焼ガスの潜熱を回収する熱交換器を有する燃焼装置に備えられ、前記熱交換器で発生するドレンを中和して外部へ排出するための中和装置であって、
本体部と蓋部とを有し、
前記本体部は、少なくとも一部分が開放された箱体であり、内部にドレンを貯留するための貯留部が形成されており、
前記蓋部は、蓋部本体と環状壁部とを備え、前記本体部に取り付けられて前記本体部の開放された部分を閉塞するものであり、
前記環状壁部は、前記蓋部が前記本体部を閉塞した状態において、前記蓋部本体から前記貯留部内へと突出するものであり、
前記蓋部本体には、前記貯留部にドレンを導入するためのドレン導入孔が形成されており、前記ドレン導入孔と、前記環状壁部によって囲繞された空間であるトラップ用空間とが連通しており、
前記環状壁部の一端を前記貯留部に溜まったドレン等の液体に浸かった状態とすることにより、前記トラップ用空間が前記ドレン導入孔と連続する部分を除いて気密に封止された状態となり、
前記トラップ用空間の断面積は、前記ドレン導入孔の断面積よりも大きくなっていることを特徴とする中和装置。
前記貯留部に貯留したドレンの水位を検出可能な水位検出手段を有し、当該水位検出手段の少なくとも一部が前記トラップ用空間内に配されることを特徴とする請求項1に記載の中和装置。
前記水位検出手段が検知可能な最低水位は、前記蓋部が前記本体部を閉塞した状態における前記環状壁部の最下端部より高い位置となることを特徴とする請求項2に記載の中和装置。
前記環状壁部が前記貯留部内に配された状態において、環状壁部の外周面と、内部に前記環状壁部が配される貯留部の内周面とが接触又はわずかに隙間を空けて近接した状態となることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の中和装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、中和装置には、蓋部と本体部とによって形成されるものがある。このように本体部の開口部分を蓋部によって閉塞する中和装置では、本体部の開口部分の面積を広く形成することができる。そのため、中和装置の内部に中和剤を充填する作業等を実施する際の作業性を向上させることができる。
【0011】
このような中和装置では、別途形成された蓋部と本体部との間を封止した状態で使用する。そして、この種の中和装置では、内部空間を複数の空間に分割し、その空間のうちの一つに液溜りを形成して排水トラップを設けている。このように排水トラップを設ける場合、蓋部を本体部に取り付けた状態において、本体部の開口部分全体の周端だけでなく、液溜りを形成する空間の開口部分の周端もまた封止する必要がある。即ち、蓋部と本体部との接触部分のうち、内部空間と外部との境界となる部分と、内部空間を分割して形成される1つの空間と他の空間との境界となる部分とをそれぞれ封止する必要がある。
【0012】
詳説すると、蓋部を本体部に取り付けた状態では、中和装置の内部空間から外部への燃焼ガスやドレン等の漏れ出しを防止するために、本体部の開口部分全体の周端を封止した状態とする必要がある。
それに加えて、内部空間を分割して形成される空間のうちの1つに排水トラップを設ける場合、蓋部と本体部との間で形成される空間の一部を水封して排水トラップを形成するので、排水トラップを設ける空間は、液溜りが形成された状態では液体又は気体の導入口を除いて封止される必要がある。即ち、液溜りを形成した空間で導入口以外の部分が封止されていないとすると、液溜りを形成した空間から中和装置内部の他の空間へ液体や気体(ドレン等の液体や燃焼ガス)が漏れ出してしまうので、液溜りを形成した空間が排水トラップとして機能しなくなってしまう。また、液溜りを形成した空間から液体や気体(ドレン等の液体や燃焼ガス)が漏れ出してしまうと、これらが予期しない部分等から中和装置外部へと漏れ出してしまう可能性がある。このことは、上記したように、特に屋内設置型の燃焼装置において、居住空間である屋内へと燃焼ガスが排出されてしまうことに繋がるため好ましくない。
そのため、蓋部を本体部に取り付けた状態では、蓋部によって本体部の排水トラップを形成する空間を閉塞し、液体又は気体の導入口となる部分を除いて封止した状態にする必要がある。
【0013】
しかしながら、蓋部と本体部の間に介在するシール材等により、本体部の開口部分全体の周端と、排水トラップを形成する空間の開口部分の周端とをそれぞれ封止すると、中和装置の製造コストが嵩んでしまうという問題があった。
【0014】
具体的に説明すると、蓋部を本体部に取り付けた状態で使用する中和装置は、通常、リークテスト等によりその気密性を確認した後に出荷されている。ここで、中和装置の内部空間と外部との境界となる部分、即ち、本体部の開口部分全体の周端における気密性を確認する場合は、一般的な方法(例えば、内部空間に空気圧を加えるといった方法)で気密性を確認できるので、比較的容易に気密性の確認作業を実施できる。しかしながら、排水トラップを形成する空間の開口部分の周端における気密性を確認する場合、即ち、本体部の開口部分における所定の一部分のみの気密性を確認する場合、その気密性の確認作業が困難となる。このように気密性の確認作業が困難となると、それに伴って中和装置の製造における工数が増加してしまったり、確認作業のための専用の機器が必要となってしまうので、中和装置の製造コストが増加してしまうという問題である。
【0015】
そこで本発明は、上記した従来技術の問題に鑑み、蓋部と本体部を一体に取り付けて使用する中和装置において、より簡易な構造で内部空間に排水トラップを形成可能とすることによって低コストで製造可能であって、燃焼装置において好適に使用可能な中和装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、バーナと、当該バーナの燃焼動作により生成した燃焼ガスの潜熱を回収する熱交換器を有する燃焼装置に備えられ、前記熱交換器で発生するドレンを中和して外部へ排出するための中和装置であって、本体部と蓋部とを有し、前記本体部は、少なくとも一部分が開放された箱体であり、内部にドレンを貯留するための貯留部が形成されており、前記蓋部は、蓋部本体と環状壁部とを備え、前記本体部に取り付けられて前記本体部の開放された部分を閉塞するものであり、前記環状壁部は、前記蓋部が前記本体部を閉塞した状態において、前記蓋部本体から前記貯留部内へと突出するものであり、前記蓋部本体には、前記貯留部にドレンを導入するためのドレン導入孔が形成されており、前記ドレン導入孔と、前記環状壁部によって囲繞された空間であるトラップ用空間とが連通しており、前記環状壁部の一端を前記貯留部に溜まったドレン等の液体に浸かった状態とすることにより、前記トラップ用空間が前記ドレン導入孔と連続する部分を除いて気密に封止された状態となり、前記トラップ用空間の断面積は、前記ドレン導入孔の断面積よりも大きくなっていることを特徴とする中和装置である。
【0017】
本発明の中和装置は、蓋部と本体部を有しており、蓋部には環状壁部が形成され、本体部の内部にはドレンを貯留するための貯留部が形成されている。そして、蓋部が本体部に取り付けられると、環状壁部は蓋部本体から貯留部内へと突出した状態となり、環状壁部によって囲繞された空間であるトラップ用空間が貯留部内に位置することとなる。さらに、貯留部にドレンを導入するためのドレン導入孔と、トラップ用空間とは連通した状態となっている。これらのことから、環状壁部の一端を貯留部に溜まったドレン等の液体に浸かった状態とすると、トラップ用空間は、ドレン導入孔と連続する部分を除いて気密に封止された状態となる。
このように、本発明の中和装置では、蓋部を本体部に取り付けて貯留部にドレン等の液体を貯留するだけで、ドレン導入孔と連なるトラップ用空間がドレン導入孔と連続する部分を除いて気密に封止される。別言すると、蓋部の一部である環状壁部によってトラップ用空間が形成されており、この蓋部によって形成されたトラップ用空間の一端に位置する開放部分を本体部に貯留された液体で閉塞するだけで、中和装置の内部に排水トラップを形成することができる。このことから、本発明の中和装置では、蓋部と本体部との間で形成される空間の一部を水封して排水トラップを形成する従来の構造のように、蓋部と本体部の間をシール材等により封止することなく排水トラップを形成できる。したがって、本発明の中和装置では、蓋部と本体部全体との間の気密性、即ち、本体部の開口部分全体の周端部分における気密性のみを確認すればよく、排水トラップを形成する空間に対して個別に蓋部と本体部の間の気密性を確認する必要がない。このことにより、本発明の中和装置では、気密性の確認作業を簡易化できるため、中和装置の製造コストを低減できる。
【0018】
さらに本発明の中和装置では、トラップ用空間の断面積がドレン導入孔の断面積よりも大きくなっている。即ち、トラップ用空間の容積が大きく確保された状態となっている。このように、トラップ用空間の容積が大きいと、形成した排水トラップの急激な水位の変化を防止できる。
具体的に説明すると、燃焼装置で燃焼ガスがドレン排出系統へと流入してしまうとき、燃焼ガスは成り行きに任せて流入することとなるので、中和装置内へ流入される燃焼ガスの量は不定量となる。つまり、中和装置内へ流入される燃焼ガスの量、中和装置内へ燃焼ガスが流入するときの流入継続時間は、中和装置内へ燃焼ガスが流入される度に異なることとなる。
【0019】
ここで、トラップ用空間に排水トラップが形成された状態において、高流量の燃焼ガスが短時間だけ流入してしまった場合、即ち、単位時間当たりの流入量が比較的多い状態で燃焼ガスがトラップ用空間に流入し、その後すぐに燃焼ガスのトラップ用空間への流入が止まった場合について説明する。
この場合、トラップ用空間の容積が小さいと、排水トラップを形成する水面に対して燃焼ガスから瞬間的に強い圧力が加わるので、排水トラップを形成する水面が急激に押し下げられる。そして、このことにより、排水トラップを形成する空間に貯留されたドレン等の液体が他の空間へと押し出されてしまうため、排水トラップを形成する水面が急激に下がってしまう。
これに対して、本発明の中和装置では、トラップ用空間の容積が大きくなっているので、トラップ用空間へと流入した燃焼ガスがトラップ用空間内で広く拡散する。このことにより、排水トラップを形成する水面に対して加わる力が比較的弱くなる。つまり、トラップ用空間が、流入した燃焼ガスから排水トラップを形成する水面に対して加わる力を弱める干渉空間として作用するため、排水トラップを形成する水面が急激に下がってしまうことがない。
したがって、本発明の中和装置では、形成した排水トラップの水位が急激に変化することがなく、安定した状態で運用することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明は、前記貯留部に貯留したドレンの水位を検出可能な水位検出手段を有し、当該水位検出手段の少なくとも一部が前記トラップ用空間内に配されることを特徴とする請求項1に記載の中和装置である。
【0021】
かかる構成によると、環状壁部によって囲繞された空間であるトラップ用空間の内部に、水位検出手段の少なくとも一部が位置している。換言すると、水位検出手段の少なくとも一部が環状壁部によって囲まれた状態となっている。そして、このことにより、水位検出手段が周囲に位置する環状壁部によって防護された状態となる。したがって、本発明の中和装置では、組み立て作業等を実施する場合において、水位検出手段が意図せず他の部材に引っかかってしまうといった、水位検出手段に不意に力が加わってしまうことに起因する水位検出手段の破損を防止できる。
加えて、本発明の中和装置では、上記したように、形成した排水トラップの水位が急激に変化することがないので、トラップ用空間に水位検出手段を設けた場合であっても、トラップ用空間の水位を誤検知してしまうことがない。具体的に説明すると、例えば、排水トラップを形成する水面が一時的に急激に押し下げられてしまう場合、一時的に急激に下がってしまった水位を水位検出手段が検知することにより、貯留部内にドレン等の液体がなくなってしまったものと誤って判定してしまうおそれがある。これに対して、本発明の中和装置では、形成した排水トラップの水位が急激に変化することがなく、トラップ用空間の水位を誤検知してしまうことがない。
即ち、本発明の中和装置では、水位検出手段の検知精度を低下させることなく、水位検出手段の防護が可能となっている。
【0022】
本発明の中和装置は、前記水位検出手段が検知可能な最低水位は、前記蓋部が前記本体部を閉塞した状態における前記環状壁部の最下端部より高い位置となることが好ましい(請求項3)。
【0023】
請求項4に記載の発明は、前記本体部の内部に複数の前記貯留部が形成されるものであり、複数の貯留部の少なくとも1つの貯留部に中和剤が充填されるものであって、内部に前記環状壁部が配される貯留部と、内部に中和剤が充填される貯留部とが別途設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の中和装置である。
【0024】
かかる構成によると、内部に環状壁部が配される貯留部、即ち、排水トラップが形成される貯留部には、中和剤が充填されないので、これらがドレンの排出口等に詰まってしまったりすることがない。そのため、ドレンが円滑に排出されず、形成した排水トラップの水位が必要以上に高くなってしまうといった問題の発生を抑制できるため、形成した排水トラップの維持が容易となる。
【0025】
請求項5に記載の発明は、前記環状壁部が前記貯留部内に配された状態において、環状壁部の外周面と、内部に前記環状壁部が配される貯留部の内周面とが接触又はわずかに隙間を空けて近接した状態となることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の中和装置である。
【0026】
かかる構成によると、環状壁部によって囲繞された空間であるトラップ用空間の容積をより大きくできるので、好ましい。また、環状壁部の外周面と貯留部の内周面とを接触させる場合は、中和装置の剛性を向上させることができる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、内部に前記環状壁部が配される貯留部と、当該貯留部とドレンの流れ方向下流側で隣接する位置に設けられる貯留部との境界部分に仕切壁部が形成されるものであり、前記仕切壁部には、2つの貯留部を連通する連通孔部が設けられるものであって、前記環状壁部が前記貯留部内に配された状態において、当該連通孔部の少なくとも一部が前記環状壁部の下端より上側に位置していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の中和装置である。
【0028】
かかる構成によると、2つの貯留部を連通する連通孔部の少なくとも一部が環状壁部の下端より上側に位置しており、ドレンが流れ方向上流側の貯留部から下流側の貯留部へと流れるとき、高い位置で下流側の貯留部へ流れ込むことが可能となっている。このことにより、貯留部の底側(低い位置)に堆積した堆積物、即ち、経年使用することで貯留部に堆積するすすやゴミ、中和剤の粉等の堆積物がドレンの流れを阻害することがない。つまり、連通孔部を貯留部の底側(低い位置)にのみ形成した場合のように、堆積物によって連通孔部が完全に閉塞されてしまうおそれがない。このことから、堆積物による中和装置の内部流路のつまりをより確実に防止できる。
【0029】
なお、本発明の中和装置は、上記したように、蓋部の一部である環状壁部によってトラップ用空間が形成されている。そして、この蓋部によって形成されたトラップ用空間の一端に位置する開放部分を本体部に貯留された液体で閉塞することで、中和装置の内部に排水トラップを形成することができる。つまり、本発明の中和装置では、貯留部内に突出する環状壁部の内側に排水トラップが形成され、貯留部と他の貯留部との境界部分となる仕切壁部は環状壁部の外側に位置している。このことにより、従来の中和装置のような構成、即ち、貯留部と蓋部とで囲まれた空間に排水トラップを形成する構成とは異なり、仕切壁部の高い位置(環状壁部の下端より上部)に連通孔部を形成した場合であってもトラップ用空間を広く確保することができる。
【0030】
具体的に説明すると、従来のように貯留部と蓋部とで囲まれた空間に排水トラップを形成する構成では、中和装置の内部空間の一部である貯留部に液溜りを作ると共に、その貯留部の上部開口部分を蓋部で閉塞して排水トラップを形成している。ここで、排水トラップを形成する空間は、液溜りが形成された状態では液体又は気体の導入口を除いて封止される必要がある。しかしながら、貯留部と他の貯留部との境界となる仕切壁部の高い位置にドレンを流通させるための連通孔部を形成すると、連通孔部を形成した部分で外部と連通した状態となり、空間を封止できなくなってしまう。つまり、仕切壁部の高い位置に連通孔部を形成すると、排水トラップを形成するためには、高い位置にある連通孔部を閉塞できるように液溜りの水位を高くする必要がある。ところが、液溜りの水位を高くしてしまうと、蓋部裏面から液溜りの水面までの距離が短くなってしまう。すなわち、排水トラップを形成するための空間が狭くなってしまう。
【0031】
これに対して、本発明の中和装置では、蓋部の一部である環状壁部が貯留部内に突出しており、環状壁部の内側に排水トラップが形成されている。そして、貯留部と他の貯留部との境界部分となる仕切壁部はこの環状壁部の外側に位置している。このことにより、仕切壁部の高い位置にドレンを流通させるための連通孔部を設けた場合であっても、液溜りの水位を高くすることなく排水トラップを形成することができる。すなわち、排水トラップを形成するためには、連通孔部よりも低い位置にある環状壁部の下端を閉塞すればよく、連通孔部の高さまで水位を高くする必要がない。このことにより、仕切壁部の高い位置(環状壁部の下端より上部)に連通孔部を形成した場合であってもトラップ用空間を広く確保することができる。
【0032】
請求項7に記載の発明は、前記連通孔部の幅は、少なくとも1つの貯留部に充填される中和剤の最小粒径よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の中和装置である。
【0033】
かかる構成によると、貯留部に充填した貯留部が誤って連通孔部を通過してしまい、他の貯留部へと流れ込んでしまうことがない。すなわち、本来中和剤を充填しない貯留部に対して誤って中和剤が入り込んでしまうことがない。
【0034】
請求項8に記載の発明は、前記連通孔部が複数設けられることを特徴とする請求項6又は7に記載の中和装置である。
【0035】
かかる構成によると、仮にいずれか一つの連通孔部が何らかの原因により閉塞された状態となっても、他の連通孔部を介して貯留部から他の貯留部へとドレンを流すことができるので、中和装置の内部流路のつまりをさらに確実に防止できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の中和装置では、蓋部の一部である環状壁部によってトラップ用空間が形成されており、この蓋部によって形成されたトラップ用空間の一端に位置する開放部分を貯留された液体で閉塞するだけで、中和装置の内部に排水トラップを形成することができる。したがって、排水トラップを形成する空間に対して個別に気密性の確認作業を実施する必要がなく、気密性の確認作業を簡易化できるため、中和装置の製造コストを低減できるという効果がある。
また、本発明の中和装置では、トラップ用空間の断面積がドレン導入孔の断面積よりも大きくなっており、トラップ用空間の容積が大きくなっている。このことにより、形成した排水トラップの水位が急激に変化することがないので、燃焼装置に内蔵したときに燃焼装置の安定した運用が可能となるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態にかかる中和装置15、並びにこの中和装置15を内蔵する燃焼装置1について詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また以下の説明において、前後上下左右の位置関係については特に断りのない限り通常の設置状態を基準として説明する。
【0039】
燃焼装置1は、
図1に示すように、筺体2の内部に燃焼部3と、主に顕熱を回収する一次熱交換器4と、主に潜熱を回収する二次熱交換器5(熱交換器)とを備えた所謂潜熱回収式と称される燃焼装置である。また、この燃焼装置1には、図示しない制御装置が内蔵されており、この制御装置が燃焼装置1を構成する各機器を制御することで、種々の運転動作を実施可能となっている。
【0040】
燃焼部3は、所謂逆燃焼式と称されるものであり、灯油等の液体燃料を噴霧又は気化させて吐出し、図示しないバーナによって燃焼させることで、下方に向けて火炎を形成可能となっている。
【0041】
また、燃焼装置1では、燃焼部3が筺体2の上端よりに位置しており、燃焼部3の下方に一次熱交換器4が位置している。さらに、一次熱交換器4の下方に二次熱交換器5を収納する収納ケース7があり、収納ケース7の上側であって一次熱交換器4の側方に消音部8が位置している。また、消音部8の上方には排気部9が設けられており、排気部9は筺体2の天面から上方に突出している。
そして、燃焼部3の内部から一次熱交換器4、収納ケース7、消音部8、排気部9の各内部を連通する空間が形成され、燃焼部3で発生した燃焼ガスが流動可能となっている。
【0042】
したがって、この燃焼装置1を稼働すると、燃焼部3で発生した燃焼ガスが一次熱交換器4、収納ケース7、消音部8へと流れ、排気部9へと至る。そして、排気部9の上方に形成された排気口から外部へ放出される。その一方、外部から供給されてきた湯水が入水配管(図示せず)を介して二次熱交換器5へと供給される。そして湯水が二次熱交換器5を経て一次熱交換器4に流入する。このとき、二次熱交換器5及び一次熱交換器4で回収した燃焼ガスの熱によって湯水が加熱される。そして、加熱された湯水は一次熱交換器4の出水口から流出し、給湯先となるカランや浴槽等に向けて供給される。
【0043】
ここで前記したように、二次熱交換器5は燃焼ガスの主に潜熱を回収するので、二次熱交換器5では燃焼ガスの温度が一定値以下に低下する。そのことにより、燃焼ガスに含まれる水蒸気が液化してドレンが発生する。そして発生したドレンは、燃焼ガスに晒されることにより、燃焼により生成された窒素酸化物や硫黄酸化物が溶け込んで酸性を呈する。
【0044】
そこで、本実施形態の燃焼装置1は、発生したドレンを中和し、外部に排出するためのドレン排出系統6を備えた構成となっている。
【0045】
ドレン排出系統6は、ドレンの流れ方向上流側から順番に、収納ケース7の底部に形成された図示しないドレン排出部と、ドレンホース14と、中和装置15と、下流側配管部材16によって構成されている。
【0046】
そして、ドレン排出系統6では、ドレン排出部(図示せず)から排出されたドレンが、ドレンホース14を介して中和装置15に流入する。
【0047】
このとき、中和装置15の内部空間は、仕切り壁によって複数の空間に区切られており、少なくとも1つ以上の空間に中和剤が充填されている。そして、流入したドレンは、この複数の空間を順次流れていく。このとき、各空間では、空間内に流れ込んだドレンが一旦留まり、一定以上の水位になると空間外へと流出する。即ち、中和装置15内に流入したドレンは、中和装置15内のそれぞれの空間に、所定時間留まった後で流出することになる。したがって、中和剤が充填された空間をドレンが通過するとき、時間をかけてゆっくりと通過する。また、ドレンは、空間内に留まっている間に中和剤と反応することで中和される。
【0048】
つまり、中和装置15に流入したドレンは、中和装置15内に所定時間貯留され、貯留されている間に中和剤と反応して中和される。そして、中和されたドレンは、中和装置15の排出口まで流れていき、中和装置15の排出口から下流側配管部材16を介して筺体2の外部へ排出される。
【0049】
ここで本発明の特徴的構成部材たる、中和装置15について詳細に説明する。
【0050】
中和装置15は、
図2で示されるように、本体部23と蓋部24から形成される箱状の部材であり、内部に液体(ドレン)を貯留可能となっている。
【0051】
本体部23は、
図3で示されるように、上部が開放された箱体であり、より詳細には、略直方体箱状の中和空間形成部30と、この中和空間形成部30から側方に張り出すように設けられた補水用空間形成部31から形成されている。
【0052】
中和空間形成部30は、底面部35と、底面部35の縁部分から略垂直上方へ突出する側壁部36,37,38,39によって形成されている。そして底面部35の周囲よりも高くなった部分にドレン排出部42が設けられている。
【0053】
ドレン排出部42は、底面部35から略垂直下方へ突出する管状部分である。そして、ドレン排出部42は、下流側配管部材16(
図1参照)の内孔に挿入可能となっている。
【0054】
補水用空間形成部31は、中和空間形成部30と連続する小箱状の部分である。この補水用空間形成部31の内部には、略円筒状の有底空間である補水空間50が形成されている。
なお、この補水空間50は、中和装置15に対して注水動作を実施する際に注水口となる部分と連通する空間となる。
【0055】
次に、本体部23の内部について説明する。
本体部23の内部は、
図4で示されるように、中和空間形成部30の内部空間と、補水用空間形成部31の内部空間である補水空間50とが、円弧状に屈曲した補水空間仕切壁32を介して連続している。具体的には、補水空間仕切壁32には、上下方向に延びるスリットが複数設けられており、補水空間仕切壁32の湾曲部分の周方向に沿って並列している。そして、このスリットを介して中和空間形成部30の内部空間と、補水空間50とが連通している。
【0056】
また、中和空間形成部30の内部空間は、第1仕切壁45(仕切壁部)、第2仕切壁46、第3仕切壁47、第4仕切壁48によって区切られている。このことにより、本体部23の内部空間は、ドレンの流れ方向上流側から、第1貯留空間51(貯留部)、第2貯留空間52(貯留部)、第3貯留空間53(貯留部)、第4貯留空間54(貯留部)、第5貯留空間55(貯留部)に区切られている。
【0057】
第1貯留空間51は、平面視が略「L」字状となる第1仕切壁45と、側壁部37とによって囲まれて形成される平面断面形状が略長方形状となる空間である。
ここで、
図5で示されるように、第1仕切壁45のうち、側壁部37と対向する位置にあって第2貯留空間52に面した部分には、その下端部よりもやや上方に、第1貯留空間51と第2貯留空間52とを連通する連通孔57(連通孔部)が設けられている。具体的には、第1仕切壁45には2つの連通孔57が形成されており、これら2つの連通孔57は、上下方向の位置が略同じであり、左右方向(上下方向に直交する方向)に間隔を空けて並列している。即ち、第1仕切壁45には複数の連通孔57が設けられ、それらが列状に配されている。
【0058】
この連通孔57は、左右方向(上下方向に直交する方向)に沿って延びる長孔となっており、開口縁の上側部分は波形となっている。即ち、この連通孔57の内周面の上側部分には鋸歯状の段部が形成されている。別言すると、連通孔57の開口縁の上方部分では複数の突起部分が並列した状態となっており、これらの突起部分は、それぞれ断面形状が略三角形であって、下方に丸みを帯びて凸となっている。
【0059】
また、第2仕切壁46、第3仕切壁47、第4仕切壁48には、それぞれ所定の位置にスリットや貫通孔が形成されている。そのため、第2貯留空間52と第3貯留空間53、第3貯留空間53と第4貯留空間54、第4貯留空間54と第5貯留空間55は、これらスリットや貫通孔によって連通した状態となっている。
【0060】
また第5貯留空間55には、
図4で示されるように、排水用連通孔60が設けられている。この排水用連通孔60は、第5貯留空間55の底面を貫通するものであり、上記した本体部23のドレン排出部42(
図3参照)の内孔と連通する連通孔となっている。
【0061】
次に蓋部24について説明する。
蓋部24は、
図6、
図7で示されるように、略L字板状の蓋部本体26と、蓋部本体26の下面から略垂直下方(
図7では上方)へと突出する環状壁部27によって形成されている。
【0062】
蓋部本体26には、
図6で示されるように、ドレンホース14(
図1参照)を取付け可能なドレン導入管61と、湯水供給管62と、電極配置部63とが形成されている。また、蓋部本体26の縁部分には、縁部分に沿って設けられて蓋部本体26の下方を環状に取り囲む蓋側壁部64が設けられている。
【0063】
ドレン導入管61は、上下方向に沿って延びる円筒状の管体となっている。そして、
図8で示されるように、上端が蓋部本体26の天面より上方に位置しており、下端(基端)が蓋部本体26の天面より下方に位置している。具体的には、ドレン導入管61の周囲は下方に窪んだ状態となっており、この下方に窪んだ部分とドレン導入管61の外周面によって、ドレン導入管61を囲繞する環状溝部74が形成されている。そして、ドレン導入管61は、下方に窪んだ部分のうち最も低い部分から上方に突出している。そして、ドレン導入管61の内孔61aは、蓋部本体26を厚さ方向(上下方向)に貫通するドレン導入孔75と連通した状態となっている。
【0064】
ここで、蓋部本体26の下面側に注目すると、
図8、
図9で示されるように、環状溝部74が形成されている部分の裏側となる部分に、蓋部本体26の下面から略垂直下方(
図9では上方)へ向かって突出する、略トーラス状の円環突起76が形成された状態となっている。そして、この円環突起76の突出端に位置するドレン導入孔75の開口部分が、ドレンを中和装置15の内部に流入させるときの流入口となる。
【0065】
湯水供給管62は、
図6で示されるように、横倒した姿勢をとる管体であって、一方端では側方が開放されており、他方端では側方が閉塞されると共に蓋部本体26を厚さ方向(上下方向)に貫通する注水孔(
図6では図示せず)と連通した状態となっている。また、この湯水供給管62の一方端には、補水管20(
図1参照)を取付け可能となっている。
具体的に説明すると、本実施形態の燃焼装置1では、
図1で示されるように、外部給水源から燃焼装置1内へ延びた入水管の中途部分に補水電磁弁19が設けられており、補水電磁弁19から延びる補水管20(
図1参照)が中和装置15に接続された状態となる。このとき、補水管20の中和装置15側の端部は、中和装置15の湯水供給管62に接続された状態となる。即ち、湯水供給管62は、入水管から延びる配管(補水管20)の接続口となる部分である。
【0066】
電極配置部63には、
図6で示されるように、蓋部本体26を厚さ方向(上下方向)に貫通する電極取付孔77が複数設けられており、これら複数の電極取付孔77がそれぞれ間隔を空けて配されている。より具体的には、4つの電極取付孔77が行列状に配された状態となっている。そして、電極取付孔77には、それぞれ電極65(水位検出手段)が挿通されている。なお、電極取付孔77にそれぞれ挿通された4つの電極65は、中和装置15の内部に貯留されたドレン等の液体の水位を検出する水位検出手段として機能する(詳しくは後述する)。
【0067】
ここで、
図9で示されるように、4つの電極65はそれぞれ長さが異なっており、長い方から順にグランド電極65a、低水位側検知電極65b、高水位側検知電極65c、オーバーフロー電極65dとなっている。そして、この4つの電極65は、蓋部本体26の下方側における露出部分の長さ、即ち、蓋部本体26の下面からの突出長さが異なった状態となるように取り付けられている。
【0068】
環状壁部27は、
図7で示されるように、蓋部本体26の下面と略垂直に交わる4つの立壁部78が環状に連続して形成されている。より具体的には、前後方向で間隔を空けて対向する2つの立壁部78a、78cと、左右方向で間隔を空けて対向する2つの立壁部78b、78dとが、平面視が四角環状となるように連続して形成されている。つまり、4つの立壁部78は、いずれか1つの立壁部78(例えば立壁部78a)が他の3つの立壁部78(例えば立壁部78b,78c,78d)のうちの1つの立壁部78(例えば立壁部78c)と間隔を空けて対向しており、他の2つの立壁部(例えば立壁部78b,78d)と幅方向(高さ方向及び厚さ方向と直交する方向)の両端部分でそれぞれ略垂直に交わっている。このように、4つの立壁部78が連続することで、平面形状が略横長長方形状となる環状壁部27が形成されている。
【0069】
ここで、4つの立壁部78は、いずれも蓋部本体26の下面と一体に形成されており、いずれの立壁部78(例えば立壁部78a)も他の立壁部78(例えば立壁部78b,78d)と隙間なく連続している。そのため、環状壁部27によって囲まれた空間であるトラップ用空間79は、
図7、
図8で示されるように、環状壁部27の下端部分(
図7では上端部分)と、ドレン導入孔75(
図8参照)と連続する部分が開放され、その他の部分が気密及び液密に閉塞された状態となっている。
【0070】
このトラップ用空間79は、
図7、
図8で示されるように、ドレン導入孔75下方に形成された(
図8参照)略直方体状の空間となっている。そして、このトラップ用空間79の平面の断面積は、ドレン導入孔75の断面積よりも大きくなっている。即ち、トラップ用空間79は、ドレン導入孔75下方に位置し、平面的に広範囲に広がるように設けられる空間となっている。また、トラップ用空間79は、
図8、
図9で示されるように、円環突起76と、4つの電極65の蓋部本体26の下面から下方に突出した部分とを内部に収容している。
【0071】
次に、中和装置15の組み立て構成について説明する。
【0072】
本実施形態の中和装置15は、燃焼装置1に内蔵して使用する際、
図2で示されるように、本体部23と蓋部24とを一体に取り付けた状態で使用する。
【0073】
より具体的には、
図10で示されるように、本体部23と蓋部24とが分離した状態において、本体部23の内部空間に所定量の中和剤(図示せず)を充填する。なお、このとき、本体部23の上側部分が広く開放されており、本体部23の内部空間が露出しているので、本体部23の内部空間への中和剤の充填作業を容易に実施可能となっている。
【0074】
また、本実施形態では、第2貯留空間52、第3貯留空間53を中和剤を充填するための空間として使用し、第1貯留空間51には中和剤を充填せずに使用する。即ち、本実施形態の本体部23は、分割された内部空間のうちの所定の空間のみに中和剤が充填されるものである。別言すると、本体部23は、ドレン等の液体を一時的に貯留する空間として、中和剤が充填される空間と、中和剤が充填されない空間のそれぞれが別途設けられた構成となっている。
【0075】
そして、蓋部24を本体部23の上方に配し、これらを相対的に近づけていくことで、
図2で示されるように、本体部23の上側開放部分、即ち、本体部23の内部空間の開口部分を蓋部24によって閉塞した状態とする。この状態で、図示しないビス等の締結要素により蓋部24と本体部23とを一体に固定する。
なお、本明細書において「締結要素」とは、ネジ、釘、鋲等の上位概念であるものとして説明する。
【0076】
ここで、
図10で示されるように、環状壁部27の外周面は、第1貯留空間51の内周面に沿う形状となっている。そして、環状壁部27全体の前後方向の長さは第1貯留空間51の前後方向の長さより短く、環状壁部27全体の左右方向の長さは第1貯留空間51の左右方向の長さより短くなっている。このため、環状壁部27は第1貯留空間51に挿通可能となっている。
【0077】
そして、本体部23に蓋部24が取り付けられた状態では、
図10、
図11で示されるように、環状壁部27が第1貯留空間51内に挿通された状態となっている。
【0078】
環状壁部27が第1貯留空間51内に挿通されると、
図11で示されるように、環状壁部27の外周面と第1貯留空間51の内周面とが隙間なく密着(又はわずかな隙間を介して近接)した状態となる。つまり、環状壁部27と、第1貯留空間51の縁部分となる第1仕切壁45、側壁部36、側壁部37(
図11では図示せず
図10参照)とが隙間なく密着(又はわずかな隙間を介して近接)した状態となる。
【0079】
さらに、本体部23に蓋部24が取り付けられた状態では、環状壁部27の下端部分が連通孔57よりも上側に位置している。より詳細には、環状壁部27は、上記したように、蓋部本体26の下面から略垂直下方へ突出しており、本体部23に蓋部24が取り付けられた状態では、第1貯留空間51の内部へ向かって突出した状態となる。このとき、環状壁部27の突出端、即ち、環状壁部27の下端部分は、連通孔57の上端よりもやや上側に位置している。別言すると、環状壁部27は、本体部23に蓋部24が取り付けられた状態において、蓋部24の下面から連通孔57の上端よりもやや上側まで延びた状態となっている。
【0080】
このことから、蓋部24に形成されたドレン導入孔75と、環状壁部27の下端とは、上下方向で離れた位置に配された状態となっている。即ち、ドレン導入孔75は、第1貯留空間51の上端近傍の位置に配されており、環状壁部27の下端は、第1貯留空間51の下端と近接する位置に配されている。
【0081】
また、このように環状壁部27が第1貯留空間51内に配されることにより、環状壁部27に囲繞された空間であるトラップ用空間79もまた、第1貯留空間51内に配される。具体的には、環状壁部27全体の外形は、第1貯留空間51全体から下側の一部分を除いた部分の形状と相似形となっており、環状壁部27全体の外形が第1貯留空間51全体から下側の一部分を除いた部分の形状よりも一回り小さいため、環状壁部27は第1貯留空間51上側に丁度(略丁度)嵌り込んだ状態となっている。そして、トラップ用空間79は、第1貯留空間51の全体から下側の一部分を除いた部分の内側に位置している。
【0082】
ここで環状壁部27は、上記したように、蓋部本体26の裏面側(下面側)に形成されるものであり、ドレン導入管61の裏面側となる部分と電極配置部63の裏面側となる部分とが環状壁部27の内側に位置している。そのため、トラップ用空間79の内部には、電極配置部63に取り付けられた4つの電極65(
図9参照)が位置するものであり、より詳細には、4つの電極65の蓋部本体26の下面から突出した部分がトラップ用空間79の内部に含まれた状態となっている。
【0083】
ここで、4つの電極65の下端部分は、いずれも環状壁部27の下端よりも上側に位置している(
図11では2つの電極65のみ図示し、他の2つの電極65の図示を省略する)。より具体的には、4つの電極65のうちで最も長いグランド電極65aの下端が環状壁部27の下端よりもやや上側に位置した状態となっている。
【0084】
次に、本実施形態の中和装置15の内部に形成される排水トラップについて説明する。
【0085】
本実施形態の中和装置15を燃焼装置1に内蔵して使用するとき、上記したように、収納ケース7と中和装置15の間にはドレンホース14が介在しており(
図1参照)、このドレンホース14によって収納ケース7と中和装置15とが連通した状態となっている。詳細に説明すると、ドレンホース14の一端が収納ケース7に取り付けられ、他端が中和装置15のドレン導入管61(
図2参照)に取り付けられた状態となっている。そして、収納ケース7から排出されたドレンがドレンホース14内を流れ、ドレン導入管61の内孔を通過し、中和装置15内へと流入する構造となっている。
ここで、燃焼装置1によって湯水等を加熱するとき、燃焼ガスは二次熱交換器5を収納する収納ケース7を通過する。このとき、この燃焼ガスが収納ケース7からドレンホース14へと流入してしまう場合がある。
【0086】
そこで、本実施形態の中和装置15では、燃焼ガスがドレンホース14内を流れ、中和装置15の内部へ流入してしまっても、中和装置15の内部に流入した燃焼ガスがドレン排出系統6におけるドレンの流れ方向下流側、即ち、下流側配管部材16(
図1参照)側へと流れないように中和装置15に排水トラップを形成可能となっている。
【0087】
本実施形態の燃焼装置1では、運用開始時のように中和装置15の内部に十分な量のドレンが貯留されてない場合、図示しない給水源から供給された湯水を中和装置15の内部へ注水する注水動作を実施して排水トラップを形成し、その後に運転を開始する構成となっている。ここで、この注水動作、並びに、注水動作によって形成される排水トラップにつき、以下で詳細に説明する。
【0088】
水位検出手段(詳しくは後述する)によって、第1貯留空間51内の水位が排水トラップを形成するにたる水位でないことが確認されると、外部給水源から中和装置15へと湯水が流入される。即ち、
図1で示されるように、燃焼装置1内へ延びる入水管と、その入水管と連続する補水管20と、補水管20と連続する湯水供給管62を介して中和装置15内へ湯水が流入される。
【0089】
より具体的には、
図12(a)で示されるように、湯水供給管62を通過した湯水は、中和装置15の内部の補水空間50へと流入する。そして、補水空間50へと流入した湯水は、補水空間仕切壁32のスリット部分を通過して、第2貯留空間52へと流入する。
つまり、補水空間50は、注水動作において注水口となる部分と第2貯留空間52(中和空間形成部30の内部空間)とを分断するように設けられている。そして、注水口となる部分から流入された湯水は、補水空間50を通過して第2貯留空間52(中和空間形成部30の内部空間)へと流れ込む。
【0090】
そして、湯水が第2貯留空間52へ流入され続け、第2貯留空間52の水位が上昇していくと、
図12(b)で示されるように、第2貯留空間52の水位が第1仕切壁45に形成された連通孔57の高さに達する。すると、第2貯留空間52に貯留された湯水が連通孔57から第1貯留空間51へと流入する。
【0091】
さらに、湯水が第2貯留空間52へ流入され続けていくと、第2貯留空間52の水位と、第1貯留空間51の水位が同じ高さとなり、そのまま第2貯留空間52の水位と第1貯留空間51の水位とが共に上昇していく。そして、
図12(c)で示されるように、第1貯留空間51の水位が排水トラップを形成するにたる所定の高さ(高水位側検知電極65cの下端以上の高さ)となったことが確認されると、注水動作を終了する。
【0092】
このように、第1貯留空間51の水位が環状壁部27の下端よりも高い状態となると、環状壁部27の下方の開放された部分が第1貯留空間51に貯留された湯水によって閉塞された状態となる。即ち、環状壁部27に囲繞されたトラップ用空間79の下方開放部分が湯水で閉塞された状態となる。この状態では、トラップ用空間79は、蓋部本体26の下面と、蓋部本体26の下面と一体に形成された環状壁部27と、湯水とによって囲まれている。そのため、トラップ用空間79は、ドレン導入孔75と連続する部分を除いて気密に閉塞された状態となっている。したがって、仮にドレン導入孔75から第1貯留空間51内に燃焼ガスが流入しても、トラップ用空間79に滞留するので、中和装置15の内部空間における第1貯留空間51以外の部分や、中和装置15の外部等へ燃焼ガスが流出することがない。
【0093】
本実施形態の蓋部24は、蓋部本体26と環状壁部27を一体に形成しており、蓋部本体26と環状壁部27とが連続する部分は蓋部24は隙間なく連続している。そして、蓋部本体26と、環状壁部27と、第1貯留空間51に貯留された湯水によって排水トラップを形成する構造となっている。即ち、蓋部24の一部と貯留された湯水によって排水トラップを形成するため、本体部23と蓋部24との接合部分が排水トラップを形成する空間に面しない構造となっている。このような構造によると、本体部23と蓋部24との接合部分の気密性を確認しなくとも、排水トラップの気密性を確実に確保できるので、製造時にリークテスト等を実施する必要がなく、安価に製造可能となる。
【0094】
ところで、排水トラップが形成された後に燃焼装置1の運用が開始されると、中和装置15には発生したドレンが流入される。そして、中和装置15に流入したドレンは中和された後に中和装置15から排出される。即ち、燃焼装置1の運用が開始されると、ドレンの流入と排出が行われつつ、排水トラップを形成可能なように第1貯留空間51の水位が維持されることとなる。
【0095】
ここで、本実施形態の燃焼装置1では、水位検出手段によって第1貯留空間51の水位を検知可能となっている。そして、第1貯留空間51の水位が非常に低下したことが検知された際に注水動作を実施したり、第1貯留空間51の水位が非常に高くなってしまったことが検知されたとき、燃焼運転を停止する安全動作を実施したりする構成となっている。
【0096】
本実施形態の燃焼装置1の水位検出手段による第1貯留空間51の水位の検知動作につき、中和装置15の第1貯留空間51を簡略化して示した
図13の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0097】
第1貯留空間51の内部には、上記したように、長さの異なる4つの電極65、即ち、長い方から順にグランド電極65a、低水位側検知電極65b、高水位側検知電極65c、オーバーフロー電極65dが配されている。そして、グランド電極65aとその他の電極65(低水位側検知電極65b、高水位側検知電極65c、オーバーフロー電極65d)がドレン等の液体に浸った状態となることで、グランド電極65aとその他の電極65(低水位側検知電極65b、高水位側検知電極65c、オーバーフロー電極65d)とがドレン等の液体を介して通電する。そして、グランド電極65aと通電した電極65を特定することで、第1貯留空間51の水位を検知する。
【0098】
さらに具体的に説明すると、第1貯留空間51で水位が上昇していくと、
図13(a)で示されるように、最も長いグランド電極65aがドレン等の液体に浸った状態となる。そして、そのまま水位が上昇することにより、
図13(b)で示されるように、グランド電極65aと低水位側検知電極65bがドレン等の液体に浸った状態となる。このとき、グランド電極65aと低水位側検知電極65bが、このドレン等の液体を介して通電した状態となる。そして、そのことにより、第1貯留空間51の水位が低水位側検知電極65bの下端に至ったことが検知される。
以下同様に、第1貯留空間51でさらに水位が上昇していき、
図13(c)で示されるように、グランド電極65aと高水位側検知電極65cとがドレン等の液体に浸った状態となると、第1貯留空間51の水位が高水位側検知電極65cの下端に至ったことが検知される。
また、
図13(d)で示されるように、グランド電極65aとオーバーフロー電極65dとがドレン等の液体に浸った状態となると、第1貯留空間51の水位がオーバーフロー電極65dの下端に至ったことが検知される。
【0099】
なお、本実施形態の燃焼装置1では、運用開始後に第1貯留空間51の水位がオーバーフロー電極65dの下端に至ったことが検知されると、中和装置15内の水位が何らかの原因により高くなりすぎてしまっているものとして、燃焼装置1の運転を中止する安全動作を実施している。
また、第1貯留空間51で排水トラップが形成された後で水位が低下し、且つ、所定時間の経過及び/又は注水動作の実施により水位が上昇しないとき、安全動作を実施している。具体的には、第1貯留空間51の水位が高水位側検知電極65cの下端に達することで排水トラップが形成されたことが確認され、その後、第1貯留空間51の水位が高水位側検知電極65cの下端を下回ったことが検知された場合、水位が低下してしまったものと判定する。即ち、排水トラップの形成後、グランド電極65aと高水位側検知電極65cの間で通電が確認されなくなってしまった場合、水位が低下してしまったものと判定する。そして、水位が低下したことが判定された後、所定時間の経過後に注水動作を実施しても高水位側検知電極65cの下端まで水位が上昇しない場合、安全動作を実施している。
さらにまた、排水トラップが形成された後、水位が大きく低下してしまった場合も燃焼装置1の運転を中止する安全動作を実施している。即ち、排水トラップが形成された後、第1貯留空間51の水位が低水位側検知電極65bの下端を下回ったことが検知された場合、具体的には、グランド電極65aと低水位側検知電極65bの間で通電が確認されなくなってしまった場合、安全動作を実施している。
つまり、本実施形態の燃焼装置1では、第1貯留空間51の水位が低水位側検知電極65bの下端付近の位置から高水位側検知電極65cの下端付近の位置までの間を維持するように、注水等を行う水位維持動作を実施しつつ運用している。そして、第1貯留空間51の水位が高くなりすぎてしまったり、低くなりすぎてしまったことが確認されると、運転を停止する安全動作を実施している。
【0100】
ところで、本実施形態の燃焼装置1では、上記したように、トラップ用空間79の平面の断面積がドレン導入孔75の断面積よりも大きく、トラップ用空間79は、平面的に広範囲に広がった状態となっている。このようにトラップ用空間79の容積を大きく確保できる構成によると、燃焼装置1を運用したとき、排水トラップを形成する第1貯留空間51の水位の急激な変化を防止できる。
【0101】
具体的に説明すると、燃焼装置1で燃焼ガスがドレン排出系統6へと流入してしまうとき、燃焼ガスは無作為に流入するので、中和装置15へ流入される燃焼ガスの量もまた不定量となる。つまり、中和装置15へ流入される燃焼ガスの量、中和装置15へ燃焼ガスが流入するときの流入継続時間は、中和装置15へ燃焼ガスが流入される度に異なることとなる。
【0102】
ここで、高流量の燃焼ガスが短時間だけ流入した場合、仮にトラップ用空間の容積が小さいと、排水トラップを形成する水面に対して燃焼ガスから瞬間的に強い圧力が加わってしまう。そして、このことにより、排水トラップを形成する水面が急激に押し下げられてしまう。これに対して、トラップ用空間79の容積が大きいと、トラップ用空間79へと流入した燃焼ガスがトラップ用空間79内で広く拡散する。このことにより、燃焼ガスから排水トラップを形成する水面に対して加わる力が比較的弱くなる。即ち、トラップ用空間79が、流入した燃焼ガスから排水トラップを形成する水面に対して加わる力を弱める干渉空間として作用するため、排水トラップを形成する水面が急激に下がってしまうことがない。
【0103】
本実施形態では、このように形成した排水トラップの水位が急激に変化することがないので、第1貯留空間51の水位維持動作を容易に実施可能となっている。また、排水トラップの水位が急激に変化することがないので、本実施形態のようにトラップ用空間79内に水位検知用の4つの電極65を配する構成であっても、水位検知手段が第1貯留空間51の水位を誤検知してしまうことがない。
即ち、仮にトラップ用空間の容積が小さく、排水トラップの水位が急激に変化してしまう構成とすると、一時的に急激に下がってしまった水位を水位検出手段が検知することにより、第1貯留空間51内にドレン等の液体がなくなってしまったものと判定してしまうおそれがある。このように誤った判定をしてしまうと、不必要な安全動作を実行してしまうことにつながるので、燃焼装置1を運用する上で好ましくない。
これに対して、本実施形態の燃焼装置1では、トラップ用空間79の容積を広く確保することが可能な構成であるので、排水トラップの水位が急激に変化してしまうことがない。そのため、水位検出手段が第1貯留空間51内の水位を誤検知することがない。
【0104】
さらにまた、本実施形態の燃焼装置1は、上記したように、灯油等の液体燃料を噴霧又は気化させて吐出し、それを燃焼して火炎を形成する構成となっている。このような構成によると、噴霧又は気化させて吐出した液体燃料の一部が燃焼されず、そのまま一次熱交換器4や二次熱交換器5に付着してしまうことが考えられる。また、本実施形態の燃焼装置1のように、逆燃式と称される形式によると、液体燃料の液滴が燃焼部3から下方に位置する二次熱交換器5側へ向けて滴下してしまうことが考えられる。そして、そのような二次熱交換器5に付着した液体燃料や、二次熱交換器5へ滴下した液体燃料が、ドレン排出系統6を介して中和装置15の内部へ入り込んでしまうおそれがある。
【0105】
ここで、本実施形態の中和装置15では、上記したように、トラップ用空間79の容積を大きく確保できる構成となっている。そのことにより、仮に中和装置15内に灯油等の液体燃料が入り込んでしまっても、水位検出手段の水位の検知動作に支障をきたすことのない構造となっている。このことにつき、以下で具体的に説明する。
【0106】
灯油等の液体燃料が中和装置15内に入り込んでしまうと、液体燃料は一般的に比重が軽いため、液体燃料が湯水やドレンに浮いてしまう状態となる。そして、貯留された湯水やドレンの上に液体燃料の層が形成されることとなる。ここで、仮にトラップ用空間の容積が小さい場合、わずかな液体燃料が流入してしまった場合であっても、形成される液体燃料の層が厚くなってしまう。これに対して、トラップ用空間79の容積が大きいと、排水トラップを形成する水面の面積も広くなるので、トラップ用空間79へと流入した液体燃料が広い水面の上を広がっていき、液体燃料の層が薄くなる。即ち、トラップ用空間79の容積が大きいと、液体燃料の単位量あたりの貯留高さが低くなるので、液体燃料の層を薄くすることができる。
【0107】
ところで、上記した4つの電極65は、グランド電極65aとその他の電極65(低水位側検知電極65b、高水位側検知電極65c、オーバーフロー電極65d)が液体燃料の層に浸った状態では通電しない。具体的には、例えば、グランド電極65aとオーバーフロー電極65dとが、湯水やドレン等の液体の層と液体燃料の層からなる第1貯留空間51の貯留水に浸った状態となったとする。このとき、オーバーフロー電極65dが水面上部に位置する液体燃料の層にしか接触しない状態であれば、グランド電極65aとオーバーフロー電極65dの間で通電が確認されない。そのため、第1貯留空間51の水位がオーバーフロー電極65dの下端に至ったことを検知することができない。
【0108】
しかしながら、形成された液体燃料の層が薄い場合、第1貯留空間51の水位がわずかに上昇するだけで、オーバーフロー電極65dの下側部分が液体燃料の層を突き抜ける。そして、グランド電極65aとオーバーフロー電極65dとが、湯水やドレン等の液体の層に共に浸った状態となる。このことにより、グランド電極65aとオーバーフロー電極65dとが通電する。即ち、形成された液体燃料の層が薄い場合は、通常予測される誤差程度だけ第1貯留空間51の水位が上昇すれば、水位検出手段は通常通りの検知動作を実施可能となる。
【0109】
これに対して、形成された液体燃料の層が厚い場合、第1貯留空間51の水位がわずかに上昇しただけでは、オーバーフロー電極65dの下側部分が液体燃料の層を突き抜けることはない。したがって、グランド電極65aとオーバーフロー電極65dとを通電させるためには、第1貯留空間51の水位を大きく上昇させる必要がある。しかしながら、オーバーフロー電極65dの下端と第1貯留空間51に貯留された貯留水とが接触した状態から、第1貯留空間51の水位を大きく上昇させると、中和装置15から貯留水が漏れ出してしまう。
【0110】
つまり、本実施形態の燃焼装置1では、液体燃料の層を除いた第1貯留空間51の水位を検知可能となっている。したがって、形成された液体燃料の層が薄く、実際の第1貯留空間51の水位と、液体燃料の層を除いた第1貯留空間51の水位との差が僅かであれば、通常の誤差の範囲内であり、支障なく検知動作を実施できる。しかしながら、形成された液体燃料の層が厚く、実際の第1貯留空間51の水位と、液体燃料の層を除いた第1貯留空間51の水位との差が大きくなってしまうと、水位の検知動作やそれに基いて実施する安全動作等の各種動作が正常に実施できなくなってしまう。
本実施形態の燃焼装置1では、トラップ用空間79の容積が大きくなっており、仮に灯油等の液体燃料が中和装置15内に入り込んでしまっても、第1貯留空間51に貯留された湯水やドレンの上に厚い液体燃料の層が形成されることがない。そのため、灯油等の液体燃料が入り込んでしまっても、水位検出手段の水位の検知動作に支障をきたすことがない。
【0111】
また、本実施形態の燃焼装置1では、トラップ用空間79の容積が大きくなっており、仮に灯油等の液体燃料が中和装置15内に入り込んでしまっても、トラップ用空間79の内側に比較的多くの液体燃料を留めておける構成となっている。さらに、本実施形態の燃焼装置1では、上記したように、排水トラップの水位が急激に変化してしまうことがない構成となっている。これらのことから、流入した液体燃料が第1貯留空間51側から第2貯留空間52側へと排出され難い構造となっている。即ち、本実施形態の燃焼装置1は、ドレン排出系統6から液体燃料が排出され難い構造となっている。
【0112】
ここで、仮にトラップ用空間の容積が小さく、トラップ用空間の内側に液体燃料が留まった状態、即ち、排水トラップを形成する水面に液体燃料が浮いた状態で排水トラップの水面が急激に押し下げられてしまった場合について説明する。この場合、排水トラップの水面に浮いた液体燃料もまた押し下げられてしまうので、液体燃料が第1貯留空間51の下端側に位置する連通孔57側へと押し下げられてしまうこととなる。このことにより、液体燃料が連通孔57から第2貯留空間52側へと排出されてしまう。
これに対して、本実施形態の燃焼装置1では、排水トラップの水位が急激に変化してしまうことがなく、排水トラップの水面に浮いた液体燃料は、連通孔57から離れた位置で貯留されることとなる。このことにより、液体燃料が第2貯留空間52側へと排出され難く、ドレン排出系統6から液体燃料が排出され難い構造となっている。このような構造の中和装置15によると、ドレン排出系統6から排出される液体による環境等への悪影響がない燃焼装置1を提供できるため、望ましい。
【0113】
上記した実施形態では、トラップ用空間79内に水位検知用の4つの電極65を配する構成について説明したが、本発明の中和装置はこれに限るものではない。例えば、水位検知用の電極65のうち、特定の電極65のみトラップ用空間79内に位置する構成であってもよい。例えば、第1貯留空間51の水位が非常に低下したことを検知するための低水位側検知電極65bと、第1貯留空間51の水位が非常に高くなってしまったことを検知するためのオーバーフロー電極65dのみがトラップ用空間79内に位置する構成であってもよい。即ち、安全動作に係る水位検知動作を実施するための電極65のみがトラップ用空間79内に位置する構成であってもよい。しかしながら、トラップ用空間79の容積を大きくするという観点から、トラップ用空間79の外縁は第1貯留空間51の内壁に沿うように設けられることが望ましく、それに伴ってすべての電極65がトラップ用空間79内に位置することが望ましい。
【0114】
上記した実施形態では、中和装置15に長さの異なる4つの電極65、即ち、長い方から順にグランド電極65a、低水位側検知電極65b、高水位側検知電極65c、オーバーフロー電極65dを設けた例について説明したが、本発明の中和装置はこれに限るものではない。グランド電極と低水位側検知電極とは、同じ長さであってもよい。即ち、最も長い電極と他の電極のうちの1つは同じ長さであっても構わない。
【0115】
上記した実施形態では、中和装置15の内部空間を区画するように形成された第1仕切壁45に対し、左右方向に沿って延びる連通孔57を形成する例を示したが(
図5参照)、本発明の中和装置はこれに限るものではない。例えば、
図14、
図15で示されるように、上下方向に沿って延びる縦長の連通孔156を並列して形成される連通孔群157(連通孔部)を設けてもよい。以下、連通孔群157を形成する場合の実施形態について詳細に説明する。
【0116】
本実施形態では、
図14、
図15で示されるように、複数(本実施形態では2つ)の連通孔群157が左右方向に間隔を空けて配されている。そして、これら2つの連通孔群157は上下方向の位置が同一となっている。すなわち、一方の連通孔群157の下端の高さと他方の連通孔群157の下端の高さとが同一となっており、一方の連通孔群157の上端の高さと他方の連通孔群157の上端の高さとが同一となっている。
【0117】
また、この連通孔群157は、左右方向に間隔を空けて並列する複数(本実施形態では4つ)の連通孔156によって形成されている。各連通孔156は、開口形状が略縦長長方形であり、上下方向に沿って延びている。この複数の連通孔156のそれぞれの下端はいずれも同一の高さとなっており、それぞれの上端もまた同一の高さとなっている。すなわち、連通孔群157は、同形の連通孔156が列状に配されて形成されている。
【0118】
この連通孔156の幅L1は、第2貯留空間52(
図4等参照)に充填される中和剤の最小粒径よりも小さくなっている。より具体的には、第2貯留空間52に充填する中和剤として最小粒径が6mmの炭酸カルシウムを採用する場合、連通孔156の幅L1は、4.0mm乃至5.0mmとしている。
【0119】
そして、各連通孔156は、
図15で示されるように、下端側の一部が環状壁部27の下端h1よりも下方に位置しており、上側の多くの部分が環状壁部27の下端h1よりも上方に位置している。つまり、連通孔156の大半の部分は、環状壁部27の下端h1よりも上方に位置している。
【0120】
このように、連通孔156の上端側の部分が高い位置、すなわち、環状壁部27の下端h1よりも高い位置に形成されると、連通孔156のつまりを確実に防止可能となる。
具体的に説明すると、
図16(a)で示されるように、連通孔156が上下方向に沿って延びている場合、ドレン導入管61から第1貯留空間51へと流入したドレンは、連通孔156の上側部分と下側部分のそれぞれから第2貯留空間52へと流入する。
ここで、中和装置115を経年使用すると、
図16(b)で示されるように、内部空間の底部分にすすやゴミ、中和剤の粉等の堆積物100が溜まってしまうことが考えられる。そして、中和装置115の内部に堆積物100が溜まってしまうと、連通孔156の底部分を閉塞してしまう。しかしながら、本実施形態では、連通孔156が上下方向に沿って延びており、連通孔156の上端が環状壁部27の下端h1よりも高い位置に形成されている。そのため、連通孔156の下方部分が堆積物100で閉塞されてしまっても、連通孔156の上方部分を介して第2貯留空間52へドレンを流入することができる。すなわち、連通孔156の下方が閉塞されただけでは、連通孔156の全体が詰まってしまうことのない構造となっている。
【0121】
また、本実施形態では、
図16で示されるように、環状壁部27に囲繞されたトラップ用空間79の下方開放部分を湯水で閉塞して排水トラップを形成している。したがって、排水トラップを形成するための水面D1が、連通孔156の上端h2より低い位置まで低下した場合であっても、排水トラップを形成した状態を維持できる。より具体的には、排水トラップを形成するための水面D1が環状壁部27の下端h1より高い位置であれば、排水トラップを形成した状態を維持できる。つまり、本実施形態によると、連通孔156の上端h2を環状壁部27の下端h1より高い位置に形成しても、排水トラップを形成可能な水位の下限(環状壁部27の下端h1)が変わることはない。別言すると、第1仕切壁45の高い位置に連通孔156を形成しても、排水トラップの最大高さ(蓋部の裏面から環状壁部27の下端h1までの長さ)が変化することはない。このことにより、本実施形態では、連通孔156を高い位置に形成しても、排水トラップの大きさが小さくなることはない。
【0122】
本実施形態では、仕切壁部に形成される連通孔部として、縦長の連通孔156を並列して形成される連通孔群157を形成した例を示したが、本発明の連通孔部はこれに限るものではない。例えば、
図17、
図18で示されるように、開口形状が円形の連通孔255を上下方向で間隔を空けて並列させることで連通孔列256を形成し、この連通孔列256を水平方向(左右方向)で間隔を空けて並列させることで連通孔群257(連通孔部)を形成してもよい。この場合、
図18で示されるように、連通孔列256のうちの少なくとも1つの連通孔255が環状壁部27の下端h1より高い位置に形成されることが望ましい。
つまり、仕切壁部に形成される連通孔部は、1つの連通孔でもよく、複数の連通孔によって形成される連通孔群であってもよい。また、連通孔群を形成する場合、同形の連通孔を並列させてもよく、異なる形状の連通孔を並列させてもよい(図示せず)。連通孔群を形成する連通孔の形状や位置は適宜変更してもよい。少なくとも1つの連通孔、又は少なくとも1つの連通孔の一部が環状壁部27の下端より上側に位置していればよい。