(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1乃至
図4を参照して、本発明の実施形態による手洗い器付き小便器を説明する。
図1は本発明の実施形態による手洗い器付き小便器を示す斜視図であり、
図2は本発明の実施形態による手洗い器付き小便器を示す正面図であり、
図3は本発明の実施形態による手洗い器付き小便器の上面図であり、
図4は
図2のIV−IV線に沿って見た部分断面図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施形態による手洗い器付き小便器1は、小便器本体2と、この小便器本体2の上方に設けられた手洗い器本体4とを備えており、小便器本体2と手洗い器本体4は、一体で構成されている。
小便器本体2は、便器ボウル部8を洗浄する洗浄水を放射状に吐水するスプレッダ6と、スプレッダ6から吐水された洗浄水を受ける便器ボウル部8とを備えている。
【0015】
スプレッダ6は、便器ボウル部8の左右中心軸線上の便器ボウル部8の中央より上方の高さ位置に配置されている。スプレッダ6は、この上流側に設けられた便器給水流路10に接続され、この便器給水流路10は給水配管(図示せず)に接続されている。このスプレッダ6は、供給された洗浄水をスプレッダ6を中心とした放射状に高い瞬間流量で吐水するように形成されている。便器ボウル部8を確実に洗浄するために、スプレッダ6から吐水される洗浄水が、便器ボウル部8全体に十分に広がって拡散しつつ高い瞬間流量、及び一定の洗浄水量に設定されている。
【0016】
便器ボウル部8は、この側面に形成されたボウル部側面壁12と、このボウル部側面壁12上において洗浄水を前方に誘導する段差を形成する段部14と、このボウル部側面壁12の周囲を取り囲む外側壁面16とを備える。この便器ボウル部8のその底部には、洗浄水を排出する便器排水口18が形成され、便器排水口18は、この下流側に設けられた排水トラップ管路20に接続されている。この排水トラップ管路20は、下流側の横引配管22に連結されている。
ボウル部側面壁12は、小便器本体2の上部から底部まで延び、手洗い器本体4をその前面左右両側から後方にかけて覆うような壁形状に形成され、手洗い器本体4から下方に延びる流面を形成している。段部14は、スプレッダ6近傍から便器ボウル部8の底部前方まで下方に張り出して湾曲した弧状に延びている。
【0017】
図1乃至
図3に示すように、手洗い器本体4は、手洗い用の洗浄水を前方下方に向かって吐水できるように設けられている手洗吐水部24と、手洗吐水部24から吐水された洗浄水を受ける手洗ボウル部26とを備えている。
【0018】
手洗吐水部24は、後述する手洗吐水用赤外センサ40からの検知信号を後述する手洗吐水制御部56が受け、手洗吐水制御部56により洗浄水の吐水の制御がなされる。
図1乃至
図3に示すように、手洗ボウル部26は、ボウル形状(鉢形状)に形成され、手洗吐水部24の下方に配置されている。
図3に示すように、この手洗ボウル部26が形成されている領域は、平面視で、便器ボウル部8が形成されている領域の内側に配置されている。
手洗ボウル部26は、手洗ボウル部26の底部26aを備え、この底部26aには、6つの手洗排水口28が形成され、手洗排水口28が鉛直方向下方に延びて便器ボウル部8内側と連通し、手洗排水口28から排出された洗浄水を便器ボウル部8に供給するようになっている。
【0019】
図2に示すように、手洗い器付き小便器1には、さらに、壁面30の小便器本体2の上方の裏側に配置された光電センサ32と、この光電センサ32が検出した検出情報に基づいて、小便器本体2の洗浄作用を制御する制御手段である便器吐水制御部34と、この便器吐水制御部34からの制御信号に従って、洗浄水をスプレッダ6から便器ボウル部8に吐水させる吐水手段である便器吐水電磁弁36と、洗浄水(給水)を電気分解して生成した電解水を洗浄水中に注入する細菌抑制装置38とが設けられている。
【0020】
光電センサ32は、光を用いて使用者の人体及び物体の有無を検出するセンサである。光電センサ32は、使用者が放尿(排尿)する意図で(又は手及び小物等を洗う意図等で)小便器本体2の前方側正面近傍の位置に小便器本体2と向かい合うように対面の状態で、立っている状態を検知することができるように設定され、すなわち、使用者が放尿しようと小便器本体2の前に立ったときから検知状態が開始されるようになっている。
便器吐水制御部34は、建築物の壁面30の裏側に配置され、細菌抑制装置38、後述する手洗吐水制御部56、他の手洗い器付き小便器の便器吐水制御部等と接続しながら連動して制御できるようにされている。
便器吐水電磁弁36は、便器給水流路10に設けられ、便器吐水制御部34から送られる制御信号に基づいて開閉される。
【0021】
図2に示すように、手洗い器付き小便器1には、さらに、手洗吐水部24の内部の最前面に配置された手洗吐水用赤外センサ40と、電気温水器制御部42と、水石鹸吐水部44と水石鹸流路46を介して接続された水石鹸タンク48と、が設けられている。
【0022】
手洗吐水用赤外センサ40は、赤外線を検出するセンサであり、使用者の手、腕、手に持ったコップや洗浄用具等の器具を検出すると検出信号を後述する手洗吐水制御部56に送るようになっている。手洗吐水用赤外センサ40は、使用者が手等を手洗吐水用赤外センサ40の前方領域に差し出すときに、この手等が存在する場合に検知信号を手洗吐水制御部56に発信し、この手等が存在しなくなる場合に検知信号の送信を停止するようになっている。
電気温水器制御部42は、建物給水設備側の給水管50及び給湯管52と接続される電気温水器54と、手洗吐水用赤外センサ40が検出した検出情報に基づいて、手洗い器本体4の手洗洗浄作用を制御する制御手段である手洗吐水制御部56と、この手洗吐水制御部56からの制御信号に従って、電気温水器54と手洗い器給水流路41との間の弁体を開閉し、洗浄水を手洗吐水部24から吐水させる吐水手段である手洗吐水電磁弁58とを備えている。
手洗吐水制御部56は、便器吐水制御部34、手洗吐水用赤外センサ40、電気温水器54及び手洗吐水電磁弁58等に接続され、これらの装置と連動して所定の手洗い動作を行うように制御することができる。
手洗吐水電磁弁58は、手洗い器給水流路41と接続され、この上流側には電気温水器54を介して給湯管52と、給水管50と連通する流路が接続されている、この手洗吐水電磁弁58は、手洗吐水制御部56から送られる制御信号に基づいて開閉される。
【0023】
次に、本発明の実施形態による手洗い器付き小便器の動作を説明する。
先ず、本発明の実施形態による手洗い器付き小便器1による小便洗浄動作の流れのみを説明する。
通常、使用者が手洗い器付き小便器1の前に立つと、光電センサ32が使用者の存在を検知して検知信号を便器吐水制御部34に送り、検知状態を開始し、便器吐水制御部34は使用者の存在を認識する。使用者が手洗い器付き小便器1の便器ボウル部8に放尿を終え、放尿を済ませた使用者が手洗い器付き小便器1の前から立ち去るときに、光電センサ32が使用者の存在を検知している状態が終了する。光電センサ32が非検出状態となると、便器吐水制御部34は使用者が手洗い器付き小便器1から立ち去ったと認識して、便器吐水制御部34は小便洗浄動作を開始する。
便器吐水制御部34は、便器吐水電磁弁36に制御信号を送って便器吐水電磁弁36を開き、洗浄水をスプレッダ6から便器ボウル部8に吐水させる。吐水される洗浄水の水量は後述するように所定の流量に設定されている。スプレッダ6から吐水される洗浄水は、スプレッダ6から放射状方向に、便器ボウル部8のボウル部側面壁12及び段部14の面上に拡がるような向きに吐水され、便器ボウル部8の内面全体にわたって高い瞬間流量で流下しながら便器ボウル部8の良好な洗浄を行うことができる。洗浄水は、便器ボウル部8を流下し便器排水口18より排出され、この下流の排水トラップ管路20を通過し、横引配管22に流入し、さらに下流の排水配管(図示せず)に向かって流れる。
スプレッダ6からの所定の瞬間流量の吐水が一定時間継続されると、便器吐水制御部34は、便器吐水電磁弁36を閉止して、スプレッダ6からの吐水を終了させる。
【0024】
次に、本発明の実施形態による手洗い器付き小便器1による手洗洗浄動作の流れのみを説明する。
使用者が、手洗い器付き小便器1の前に立った状態において、手指及び小物等を手洗吐水用赤外センサ40の検出範囲に移動させると、手洗吐水用赤外センサ40が手等を検知して検知信号を手洗吐水制御部56に送り、手洗吐水制御部56が手洗洗浄動作を開始し、手洗吐水制御部56が手洗吐水電磁弁58を開いて、手洗吐水を開始する。吐水される洗浄水は低い瞬間流量でほぼ一定に設定されている。手洗吐水が開始されると、手洗吐水制御部56が、手洗吐水用赤外センサ40の検出情報或いは手洗吐水電磁弁58の開閉情報等にもとづいて手洗吐水開始時間、手洗吐水継続時間、手洗吐水量等をモニター(計測)して、これらの情報等を便器吐水制御部34に伝達する。
洗浄水は、手洗吐水部24から手洗ボウル部26に向かって吐水され、手洗ボウル部26内の洗浄水は、手洗排水口28を通って流下し、小便器本体2の便器ボウル部8に流入し、ボウル部側面壁12に沿って流下する。流下した洗浄水は、便器排水口18より排出されるが、便器排水口18から排水トラップ管路20に流入し、この排水トラップ管路20を通過した洗浄水は、横引配管22に流入し、さらに下流の排水配管(図示せず)に流出する。
手洗吐水用赤外センサ40が使用者の手等の存在を検出しなくなると、手洗吐水制御部56が手洗吐水電磁弁58を閉止して、手洗吐水部24からの吐水を停止させる。
【0025】
次に、
図5乃至
図7により、本発明の実施形態による手洗い器付き小便器1の小便洗浄動作及び手洗洗浄動作を合わせた一連の洗浄動作について説明する。
図5は、本発明の実施形態による手洗い器付き小便器1の一連の洗浄動作の流れを示すフローチャートである。ここで、
図5において、Sは各ステップを示している。
図6は、本発明の実施形態による手洗い器付き小便器1において、各洗浄パターンにおける手洗いと放尿のタイミングについて説明する図である。ここで、
図6において、手洗いセンサは手洗吐水用赤外センサ40を示し、対人センサは光電センサ32を示し、横軸は対人センサが人体を検知してからの時間(秒)及び時点を示す時刻t
A及びt
Bを示し、符号Aは光電センサ32が人体を検知している状態の開始を示し、符号Bは手洗吐水用赤外センサ40の手洗い検知状態の開始を示し、符号Cは手洗吐水用赤外センサ40の手洗い検知状態の終了を示し、及び符号Dは光電センサ32が人体を検知している状態の終了を示し、使用者の放尿行為がA、B、C及びDに対してどのタイミングで行われるかを示している。
図7の(a)は、一般的な小便器において、109名の使用者が放尿を行った場合の放尿前時間E(秒)、放尿時間F(秒)、放尿後時間G(秒)、及び、放尿前時間E(秒)と放尿時間F(秒)と放尿後時間G(秒)とを合計した便器前立ち時間E+F+G(秒)をそれぞれ測定した後に、それぞれ平均した実験結果を示す図であり、
図7の(b)は、
図7(a)の実験における、放尿前時間E(秒)、放尿時間F(秒)、放尿後時間G(秒)、及び、放尿前時間E(秒)と放尿時間F(秒)と放尿後時間G(秒)とを合計した便器前立ち時間E+F+G(秒)との関係を示すタイムチャートである。
【0026】
図5におけるS1において、使用者が手洗い器付き小便器1の前に立っていない場合は、光電センサ32は使用者の存在を検出(人体を検知)していないので、便器吐水制御部34は使用者の存在を認識しておらず、光電センサ32が使用者の存在を検知するまでS1の開始前に戻ってS1の検知判定を繰り返すようになっている。使用者が手洗い器付き小便器1の前に立つと、光電センサ32が使用者の存在を検知して検知信号を便器吐水制御部34に送り、便器吐水制御部34は使用者の存在を認識し、すなわち光電センサ32が人体を検知している状態が開始(
図6に符号Aで示されている)されたことを認識し、S2に進む。
【0027】
S2においては、手洗吐水制御部56及び便器吐水制御部34が手洗吐水用赤外センサ40が手等を検知する手検知センサ検知状態を計測している。使用者が、手洗い器付き小便器1の前に立った状態において、手等を手洗吐水用赤外センサ40の検出範囲に移動させると、手洗吐水用赤外センサ40が手等を検知(
図6の符号B)して検知信号を手洗吐水制御部56に送り、手洗吐水制御部56が、手洗吐水電磁弁58を開いて、手洗吐水を開始する手洗洗浄動作を開始させる。
この際、手洗吐水制御部56及び便器吐水制御部34が、手洗吐水用赤外センサ40が手洗い等を検知した状態を開始(
図6の符号B)した時刻を計測し、さらに、手洗吐水用赤外センサ40が手洗い等を検知した状態の継続時間及び終了時刻(
図6の符号C)を計測する。このとき、手洗吐水制御部56は、手洗吐水が開始されてから手洗吐水が終了(
図6の符号C)されるまでの手洗吐水量をモニター計測及び/或いは流量と開弁時間によって計算し、この手洗吐水量の情報を便器吐水制御部34に伝達する。このモニター計測或いは流量計算等は、便器吐水制御部34によって全部又は一部が行われてもよい。手洗吐水部24が吐水を終了するときには、手洗吐水制御部56は、この手洗吐水量のモニター等を終了する。このS2は、手洗吐水用赤外センサ40が手等を検知する検知状態が、光電センサ32が人体を検知している状態より先に発生する場合には、S1よりも先に、このS2の手洗吐水制御部56及び便器吐水制御部34が手洗吐水用赤外センサ40が手等を検知する検知状態の計測が開始されてもよい。
【0028】
S3においては、便器吐水制御部34が、光電センサ32が人体を検知している状態を開始(
図6の符号A)してから、人体を検知している状態を継続しているか否かの判定を行っている。便器吐水制御部34は使用者の存在を継続して認識しており、光電センサ32が使用者の存在を検知しなくなるまでS3の開始前に戻ってS3の検知判定を繰り返すようになっている。使用者が手洗い器付き小便器1から立ち去ると、光電センサ32が使用者の存在を検知しなくなり検知信号を便器吐水制御部34に送らなくなる。従って、便器吐水制御部34は光電センサ32が人体を検知している状態を終了(
図6の符号D)したことすなわち使用者が立ち去ったことを認識し、S4に進む。
【0029】
S4においては、便器吐水制御部34が、光電センサ32が人体を検知している状態を継続していた人体検知時間T1から、手洗吐水用赤外センサ40が手洗いを検知している状態を継続していた手検知センサ検知時間T2を差し引いた第1差引き時間T3(=T1−T2)が、第1所定時間T4より大きいか否かの判定を行っている。
ここで、人体検知時間T1は、光電センサ32が人体を検知している状態を開始(
図6の符号A)した後、人体を検知している状態を終了(
図6の符号D)するまでの時間であり、手検知センサ検知時間T2は、手洗吐水用赤外センサ40が手洗いを検知している状態を開始(
図6の符号B)した後、手洗いを検知している状態を終了(
図6の符号C)するまでの時間である。
光電センサ32が人体を検知している状態を継続していた人体検知時間T1から、手洗吐水用赤外センサ40が手洗いを検知している状態を継続していた手検知センサ検知時間T2を差し引いた第1差引き時間T3は、使用者が小便器本体2の対面に直立姿勢でいるであろう想定時間のうち、使用者が手洗いを行っている時間を除いた時間であり、使用者が放尿をする場合には放尿のために必要と想定される時間を含み、使用者が放尿をしないで立ち去る場合には放尿のために必要と想定される時間に満たない時間である。
第1所定時間T4は、光電センサ32が人体を検知している状態を継続していた人体検知時間T1から、手洗吐水用赤外センサ40が手洗いを検知している状態を継続していた手検知センサ検知時間T2を差し引いた第1差引き時間T3が、第1所定時間T4より大きい場合には、便器吐水制御部34が使用者が放尿を行ったと判断し、前記第1差引き時間T3が、第1所定時間T4以下である場合には、便器吐水制御部34が使用者が放尿を行っていないと判断する、判定基準として設定されている。
この第1所定時間T4は、多数の使用者が一般的に放尿行為の前に必要とするであろう放尿前時間E(いわゆる放尿ためらい時間など)を基準として設定される。
【0030】
第1差引き時間T3が、第1所定時間T4以下である場合には、放尿行為の前に必要とするであろう放尿前時間Eが経過していないため、例えば、使用者が、小便器本体2の対面に立ち、手洗いのみをして、放尿行為を行わずに立ち去ることが想定される。前記第1差引き時間T3が、第1所定時間T4以下である場合には、前記第1差引き時間T3が0の値である場合、すなわち、例えば、使用者が、小便器本体2の対面に立つと全く同時に手洗いのみをして、放尿行為を行わずに立ち去ることが想定される場合、さらに、前記第1差引き時間T3がマイナスの値である場合、すなわち、例えば、先ず使用者の手が手洗吐水用赤外センサ40によって検知され、続いて、使用者が小便器本体2の対面に立って光電センサ32によって検知され、その後、手洗いのみをして、放尿行為を行わずに立ち去ることが想定される場合などを含む。
前記第1差引き時間T3が、第1所定時間T4より大きい場合には、放尿行為の前に必要とするであろう放尿前時間Eが経過しているため、例えば、使用者が、小便器本体2の対面に立ち、放尿行為を行い、手洗いを行って立ち去ることが想定される。
なお、この第1所定時間T4は、
図7の(a)に示すように、放尿前時間Eは平均で9.7秒かかるという実験結果に基づいて0秒〜10秒の時間に設定され、例えば本実施形態では5秒の時間に設定されている。
【0031】
S4において、人体検知時間T1から、手検知センサ検知時間T2を差し引いた第1差引き時間T3が、第1所定時間T4より大きい場合には、便器吐水制御部34が、使用者の放尿が行われていると判断して、S5に進む。
S4において、人体検知時間T1から、手検知センサ検知時間T2を差し引いた第1差引き時間T3が、第1所定時間T4以下である場合には、便器吐水制御部34が使用者の放尿が行われなかったと判断して、S9に進む。
【0032】
S5においては、便器吐水制御部34が、手洗吐水用赤外センサ40が手洗いを検知している状態を開始(
図6の符号B)した時刻t
Bから、光電センサ32が人体を検知している状態を開始(
図6の符号A)した時刻t
Aを差し引いた第2差引き時間T5(=t
B−t
A)が、第2所定時間T6以上か否かの判定を行っている。 S5においては、この第2差引き時間T5が、第2所定時間T6以上である場合には、便器吐水制御部34が、手洗い吐水が、使用者が放尿を終了した後に行われたと判断し、S6に進む。
S5においては、この第2差引き時間T5が、第2所定時間T6より小さい場合には、便器吐水制御部34が、手洗い吐水が、使用者が放尿を終了する前に行われたと判断し、S8に進む。
【0033】
第2所定時間T6は、
図7の実験結果などから、使用者が放尿行為の前に必要とするであろう放尿前時間Eが経過する時間から、使用者が放尿行為をほぼ終えるのに必要とされるであろう放尿後時間Gが経過する時間まで、すなわち10秒〜50秒の時間に設定される。
従って、前記第2差引き時間T5が、第2所定時間T6より小さい場合には、使用者が放尿行為の前に必要とするであろう放尿前時間が経過する時間の前に手洗いを行っているため、例えば、使用者が、小便器本体2の対面に立ち、手洗いを先に行って、次に放尿行為を行い、立ち去る場合が想定される。
前記第2差引き時間T5が、第2所定時間T6以上である場合には、使用者が放尿行為を行うのに必要と想定される時間が経過した後に手洗いを行っていることになるので、例えば、使用者が、小便器本体2の対面に立ち、先に放尿行為を行い、次に手洗いを行って、立ち去る場合が想定される。
【0034】
S6においては、便器吐水制御部34が、使用者が手洗いをしない場合に便器ボウル部8を洗浄するために流す予定の予め一定に設定された予定洗浄水量から、手洗吐水用赤外センサ40からの検知信号により手洗吐水部24が吐水状態となっている間に吐水された洗浄水量(手洗吐水部24からの手洗吐水が開始(
図6の符号B)されてから手洗吐水が終了(
図6の符号C)されるまでに吐水された洗浄水量)を差し引いた洗浄水量を計算し、S7に進む。
スプレッダ6から吐水される予め一定に設定された予定洗浄水量は、2.0Lに設定されており、2.0Lから例えば0.5Lの手洗吐水部24から吐水された洗浄水量を差し引いた1.5Lの洗浄水量がスプレッダ6から吐水すべき洗浄水量として算出される。予定洗浄水量は、2.5Lに設定されてもよく、その場合には、例えば2.5Lから例えば0.5Lの手洗吐水部24から吐水された洗浄水量を差し引いた2.0Lの洗浄水量がスプレッダ6から吐水すべき洗浄水量として算出されるようにしてもよい。
【0035】
S7においては、便器吐水制御部34が、節水洗浄パターンの制御方法により、S6において算出された洗浄水量を吐水させるように制御し、スプレッダ6がS6において算出された洗浄水量を便器ボウル部8に吐水して節水洗浄パターンの洗浄が行われる。
従って、S7に規定する節水洗浄パターンの洗浄においては、S4において使用者が放尿を行ったと判断され且つS5において使用者が放尿を終了した後に手洗い吐水が行われたと判断される場合に、手洗吐水部24から吐水された洗浄水が放尿後の便器ボウル部8の洗浄に寄与しているので、手洗吐水部24から吐水された洗浄水量分の洗浄水量を、光電センサ32の人体検知状態が終了(
図6の符号D)した後スプレッダ6から吐水する予定の洗浄水量から差し引いて節水化に寄与することができる。
S7においてスプレッダ6からの吐水が終了するとエンドに進み、便器吐水制御部34は、便器吐水電磁弁36を閉弁し、スプレッダ6からの吐水を停止させて、一連の洗浄動作を終了させる。
【0036】
S8においては、便器吐水制御部34が、予定洗浄パターンの制御方法により、光電センサ32が人体を検知している状態の終了(
図6の符号D)後に、スプレッダ6を、使用者が手洗いをしない場合に便器ボウル部8を洗浄するために流す予定の予め一定に設定された予定洗浄水量を吐水させるように制御する。
S8に規定する予定洗浄パターンの洗浄においては、S4において使用者が放尿を行ったと判断され且つS5において使用者が放尿を終了する前に手洗い吐水が行われたと判断する場合に、手洗吐水部24から吐水された洗浄水が放尿前に便器ボウル部8を流下しているので、手洗吐水部24からの洗浄水は放尿後の便器ボウル部8の洗浄に寄与することができない。使用者が放尿を終了する前に手洗い吐水が行われた場合に、便器吐水制御部34が、便器ボウル部8を洗浄するのに必要な予め一定に設定された予定洗浄水量を確保して、スプレッダ6から吐水させることにより、手洗吐水部24から吐水された洗浄水量を便器ボウル部8を洗浄するのに必要な洗浄水量から減じてしまい、便器ボウル部8の洗浄が不良となることを防ぐようになっている。
S8においてスプレッダ6からの吐水が終了するとエンドに進み、便器吐水制御部34は、便器吐水電磁弁36を閉弁し、スプレッダ6からの吐水を停止させて、一連の洗浄動作を終了させる。
【0037】
S9においては、S4において便器吐水制御部34が使用者の放尿が行われなかったと判断しているので、洗浄無しパターンの制御方法により、光電センサ32が人体を検知している状態の終了(
図6の符号D)後に、手洗吐水部24及びスプレッダ6の両方から洗浄水の吐水を行わないように制御する。このように使用者が放尿行為を行わず手洗いのみを行い立ち去って便器洗浄を行なう必要がない場合には、光電センサ32が人体を検知しなくなった後、便器吐水制御部34が、手洗吐水部24からの洗浄水の吐水及びスプレッダ6からの洗浄水の吐水とも行なわず、使用者が排泄行為を行わずに立ち去ったにも係わらず無駄に洗浄水を流してしまうことを防ぎ、洗浄水を節水することができる。S9においては手洗吐水部24からの洗浄水の吐水及びスプレッダ6からの洗浄水の吐水とも省略して行なわずエンドに進み、一連の洗浄動作を終了させる。
【0038】
このように、
図6に示すように、光電センサ32の検知状態、手洗吐水用赤外センサ40の検知状態、第1所定時間T4及び第2所定時間T6の概念を新たに組合せることにより、便器吐水制御部34を、節水洗浄パターンの制御方法、予定洗浄パターンの制御方法、洗浄無しパターンの制御方法により制御することが出来るようになり、節水化と便器洗浄性能の両面において優れた手洗い器付き小便器を提供できるようになっている。
【0039】
また、光電センサ32が人体を検知している状態を継続している間に、手洗吐水用赤外センサ40が複数回手洗い検知をした場合について説明する。
使用者が複数回手洗いを行う場合には、便器吐水制御部34は、それぞれの手洗い検知に対してS5の判定を行う。
例えば具体的には、第1回目の手洗い検知において、第1回目に手洗吐水用赤外センサ40が手洗いを検知している状態を開始した時刻t
B1から、光電センサ32が人体を検知している状態を開始した時刻t
Aを差し引いた第2差引き時間T5
1が、第2所定時間T6より小さい場合には、便器吐水制御部34が、使用者が放尿を終了する前に手洗い吐水が行われた場合と判断して、S5からS8に進ませる判断を行い、第1回目の手洗い検知において手洗吐水部24から吐水された洗浄水量分の洗浄水量をスプレッダ6から吐水する予定の洗浄水量から差し引かない判断を行う。次に、第2回目の手洗い検知において、第2回目に手洗吐水用赤外センサ40が手洗いを検知している状態を開始した時刻t
B2から、光電センサ32が人体を検知している状態を開始した時刻t
Aを差し引いた第2差引き時間T5
2が、第2所定時間T6以上である場合には、便器吐水制御部34が、使用者が放尿を終了した後に手洗い吐水が行われた場合が含まれると判断して、S5からS6及びS7に進ませる処理を行い、第2回目の手洗い検知において手洗吐水部24から吐水された洗浄水量分の洗浄水量をスプレッダ6から吐水する予定の洗浄水量から差し引くようになっている。
【0040】
次に、
図7の(a)及び(b)を参照して、使用者が一般的な小便器を使用して放尿を行った実験の結果について説明する。
図7の(a)及び(b)に示すように、本実験は、一般的な小便器において、人体の検知を行う赤外センサと、放尿を検知して放尿の開始及び終了を測定できるマイクロ波センサとを設けて行われ、
図7(b)中の人体検知は赤外センサにより行われる人体検知を示し、
図7(b)中の尿検知はマイクロ波センサにより行われる放尿の検知を示している。
【0041】
先ず、
図7の(a)及び(b)に示すように、放尿前時間E(秒)は、109名の使用者(被験者)が小便器の前に立って人体検知が開始されてから放尿を開始するまでにかかった時間の平均を示し、本実験結果から放尿前時間E(秒)内に放尿が終わる人はほとんどいない時間であることがわかっている。次に、放尿時間F(秒)は、109名の使用者が放尿を行う(放尿を開始してから終了する)のにかかった時間の平均を示している。
ここで、本実験に際し、放尿前時間E(秒)及び放尿時間F(秒)が経過するまでにかかる時間(すなわち、使用者が小便器の前に立ってから放尿を終了するまでにかかる時間)を、ヒストグラムを用いて分析を行った。この結果、109名の被験者のうちの108名の被験者が約24(秒)を中心に10秒〜50秒の間に分布し、被験者の放尿行為が終了する最短時間が約10秒であり、使用者の放尿行為が終了する最長時間が約50秒であるという結果が得られた。すなわち、小便器を使用するほとんどの被験者が、小便器本体の前に立ってから、10秒〜50秒の時間内には放尿行為を終えていることが確認できた。
この結果により、使用者が、一般的には、放尿を行うためには、約10秒間以上の時間にわたって小便器の前に立っている必要があることを確認し、さらに、約50秒間以内の時間にわたって小便器の前に立った状態で十分に放尿を終えることができることが分かった。また、使用者が放尿行為を行ったか否かの判断及び使用者が放尿行為を行ったタイミングについての判断に利用することができることが分かった。
【0042】
これらの結果に基づいて、本実施形態においては、第1所定時間T4については、使用者が放尿を行う場合には、放尿前時間E秒を超えて約10秒間以上の時間にわたって小便器の前に立っている必要があるという時間に基づいて設定することができることを確認できた。さらに、第2所定時間T6については、使用者が放尿を行う場合には、放尿時間が短いときでも放尿前時間E秒を超えて約10秒間以上の時間にわたって小便器の前に立っている時間が必要であり、且つ放尿時間が長いときでも小便器本体の前に立ってから10秒〜50秒の時間内には放尿行為を終えるという時間に基づいて設定することができることも確認でき、この第2所定時間T6に基づいて、使用者が放尿を行った場合に放尿前時間E中に手を洗ったのか又は放尿後時間G中に手を洗ったのかの判別をすることができることも確認できた。
【0043】
次に、上述した本発明の実施形態による手洗い器付き小便器の作用効果を説明する。
上述した本発明の実施形態による手洗い器付き小便器1によれば、光電センサ32が人体を検知していた時間T1から、手洗吐水用赤外センサ40が手洗いを検知していた時間T2を差し引いた第1差引き時間T3が、第1所定時間T4より大きいか否かで、使用者が排泄行為を行ったか否かを検出することができ、この第1差引き時間T3が、第1所定時間T4より大きい場合には、使用者が排泄行為を行ったと判断して、光電センサ32が人体を検知している状態の終了後、スプレッダ6から、洗浄水の吐水を行い、この第1差引き時間T3が、第1所定時間T4以下の場合には、使用者が排泄行為を行わなかったと判断して、光電センサ32が人体を検知している状態の終了後、スプレッダ6から、洗浄水の吐水を行わないことにより節水化を達成することができる。
【0044】
また、本実施形態による手洗い器付き小便器1によれば、手洗吐水用赤外センサ40が手洗いの検知を開始した時刻t
Bから、光電センサ32が人体の検知を開始した時刻t
Aを差し引いた第2差引き時間T5が、第2所定時間T6より短い場合には、排泄が終了して光電センサ32が人体を検知している状態が終了した後、スプレッダ6が、予め一定に設定された予定洗浄水量を吐水することができ、便器ボウル部8が洗浄不良となることを防ぐことができる。
さらに、手洗吐水用赤外センサ40が手洗いの検知を開始した時刻t
Bから、光電センサ32が人体の検知を開始した時刻t
Aを差し引いた第2差引き時間T5が、第2所定時間T6以上である場合には、排泄が終了して光電センサ32が人体を検知している状態が終了した後、スプレッダ6が、予め一定に設定された予定洗浄水量から手洗吐水部から吐水された洗浄水量を差し引いた洗浄水量を吐水することができるので、スプレッダ6が、手洗吐水部24から吐水された洗浄水量に応じて、吐水する洗浄水量を減じることができ、節水化を達成することができる。よって、節水化と便器洗浄性能を両立することができる。
【0045】
また、本実施形態による手洗い器付き小便器1によれば、光電センサ32が人体を検知していた時間T1から、手洗吐水用赤外センサ40が手洗いを検知していた時間T2を差し引いた第1差引き時間T3が、0秒〜10秒の第1所定時間T4より大きいか否かで、使用者が排泄行為を行ったか否かを検出することができ、この第1差引き時間T3が、0秒〜10秒の第1所定時間T4より大きい場合には、使用者が排泄行為を行ったと判断して、光電センサ32が人体を検知している状態の終了後、スプレッダ6から、洗浄水の吐水を行い、この第1差引き時間T3が、0秒〜10秒の第1所定時間T4以下の場合には、使用者が排泄行為を行わなかったと判断して、光電センサ32が人体を検知している状態の終了後、スプレッダ6から、洗浄水の吐水を行わないことにより節水化を達成することができる。
【0046】
また、本実施形態による手洗い器付き小便器1によれば、手洗吐水用赤外センサ40が手洗いの検知を開始した時刻t
Bから、光電センサ32が人体の検知を開始した時刻t
Aを差し引いた第2差引き時間T5が、10秒〜50秒の第2所定時間T6より短い場合には、排泄が終了して光電センサ32が人体を検知している状態が終了した後、スプレッダ6が、予め一定に設定された予定洗浄水量を吐水することができ、便器ボウル部8が洗浄不良となることを防ぐことができる。
さらに、手洗吐水用赤外センサ40が手洗いの検知を開始した時刻t
Bから、光電センサ32が人体の検知を開始した時刻t
Aを差し引いた第2差引き時間T5が、10秒〜50秒の第2所定時間T6以上である場合には、排泄が終了して光電センサ32が人体を検知している状態が終了した後、スプレッダ6が、予め一定に設定された予定洗浄水量から手洗吐水部から吐水された洗浄水量を差し引いた洗浄水量を吐水することができるので、スプレッダ6が、手洗吐水部24から吐水された洗浄水量に応じて、吐水する洗浄水量を減じることができ、節水化を達成することができる。よって、節水化と便器洗浄性能を両立することができる。