【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、慣性エネルギー蓄積装置は、ロータ室を画定するハウジングと、下端面および実質的に反対側の上端面を有する少なくとも1つのロータとを備え、ロータは、ロータがハウジングに対して垂直回転軸を中心に回転可能となるように、フリーギャップを残して回転チャンバ内に取り付けられ、シールは、ギャップ中に設けられて、ロータ室の上部とロータ室の底部とを切り離し、ロータのうち底部内の少なくとも下端面を、上部内の実質的に反対側の上端面に加えられる圧力と比較して、ロータの重量を少なくとも部分的に補償する上方への差圧力を発生させるガス圧力にさらすための手段をさらに備え、装置には、上部内の圧力を下げるための手段が設けられる。
【0010】
本発明による慣性エネルギー蓄積装置は、後述する必要な連結部を除いて環境に対して全体的に封止されるハウジングを有する。ハウジングの内壁はロータ室の境界を定める。このロータ室内にはロータが取り付けられる。ロータの外形は、上端面および上端面の反対側の下端面、ならびに上端面と下端面との間の直立壁によって画定される。ロータは、垂直回転軸を中心に回転することができる。通常は、回転シャフトが、ロータの両端面からハウジングの最上部および底部内に設けられた適切な軸受の中へ延びる。少なくとも使用中、ハウジングの内壁とロータの外周面との間にギャップが存在する。このギャップ中にはシールが存在しており、シールの位置について以下により詳細に論じる。このシールは、ロータ室の下方部分から上方部分を切り離す。ロータの上面は上部内に含まれ、底面は下方部分内に含まれる。装置には、上方部分内の圧力を、例えば100mbar未満、例えば50mbar、10mbarまたは5mbarに低下させるための手段(以後、真空手段または第2の手段とも称される)が設けられる。ロータを持ち上げるために、ロータ室の上方部分内の圧力に相対して超過圧力、例えば100mbarでロータの下端面にガスを噴出し、それによってロータの重量を補償し、したがって軸受にかかる荷重を軽減する手段(第1の手段とも称される)もある。上方部分内が低圧であるため、ロータ室内に入れられたガスとロータとの間の摩擦は小さい。PCT国際出願第PCT/NL2009/000248号の明細書による装置と比べると、摩擦損失は本質的に低減されるので、経済的に実施可能な態様で装置を運転することができる。
【0011】
好適には、第1の手段は、ロータの下端面に作用する絶対ガス圧力が大気圧未満、例えば100〜200mbarの範囲内になるように設計される。
【0012】
ロータは直円柱とすることができる。あるいは、ロータはテーパ形状を有することができ、好適には、ロータは上側を下にして取り付けられた円錐台であり、したがって直径の大きい方が頂部にある。この構成の効果は、装置が自己調整浮揚を有することである。ロータ室の底のガス圧力が(一時的に)上昇すると、ロータを上方へさらに持ち上げるが、同時に、シール内のガスの通路が増大し、それによって圧力降下を減少させ、したがって底と上面との間の差圧が減少し、その結果、浮揚が減じられ、ロータ浮揚がほとんど変化しないという、全体的な効果が得られる。同様に、ガス流の(一時的)減少が補償される。これにより、使用中、ロータは自動的に一定の浮揚レベルにとどまることができる。好適には、ロータの円周壁とロータの垂直回転軸との間の角度は、0.25〜10°の範囲内であり、より好ましくは最大で3°、例えば1°である。
【0013】
ハウジングの内壁とロータの表面との間のギャップのシールにより、ロータ室の底部からロータ室の上部へのガスの流れを制限することができる。好適には、ギャップ中のシールは、供給されるかまたは吸い取られるガスの流れの方向に見られるように、圧力ヘッドの降下を引き起こす一連の突出部および/または溝を備えるラビリンスシールである。一般に、ギャップ中をガスが通過する横断面が交互に減少したり拡大したりする。ラビリンスに含まれている突出部は、少なくとも部分的に丸い先端部を有することが好ましい。突出部の丸い先端部は、突出部の高圧側から他方の側への比較的滑らかなガスの流れをもたらし、それによって、ロータの回転安定性に悪影響を及ぼすことになる乱流を減らす。好適には、突出部の先端部は翼の形をしている。ラビリンスはセミラビリンス(semi−labyrinth)であることがより好ましい。本出願の文脈では、この表現は、ハウジングおよびロータの一方には垂直方向に離間された一連の突出部(または凹所)、例えば回転軸と同心のリングなどが設けられ、他方は平坦であることを意味する。一般に、ラビリンスの突出部または凹所は、ハウジングと一体であろうとなかろうと、別個の要素から組み立てられようとなかろうと、本発明による装置の固定ハウジング内に設けられる。
【0014】
好ましい一実施形態では、真空手段の吸引側は、シールの位置で、例えば(セミ)ラビリンスの隣接する突出部相互間の凹所内でロータに連結される。この実施形態では、ロータ室の上方部分内の低圧が維持され、同時に、ロータを持ち上げるために下方部分に連続的に供給されるガスが除去されもする。
【0015】
固定ハウジングに設けられたシール、特にセミラビリンスシールの突出部の別の好ましい実施形態では、突出部の先端はロータの傾斜した直立壁に平行な線上に位置するのが有効である。言い換えると、同心突出部の内径は、ロータの直径の増大に比例して下方部分から上方部分にかけて増大する。
【0016】
別の好ましい実施形態では、ロータ室の底壁に、隆起した中心プラットホームが設けられ、ロータの下端面は、中心プラットホームと対をなす凹形状を有する。第1の手段は、ロータの下端面の凹所内のガス流を方向付ける。プラットホームは円錐台形状を有し、ロータの下端面は対をなす円錐凹所を含むことが好ましい。ロータの円錐形に凹設された下端面は、ラビリンスシールへのガスの安定した流れ、ならびにセルフセンタリング効果を確実にし、それによってロータの安定性を高める。円錐の角度は小さく、例えば2〜3°から20°の範囲内であることが有効である。
【0017】
この実施形態では、シールは、好ましくは、隆起したプラットホームの外周面と凹所の内周面との間のギャップ中に配置される。
【0018】
別の実施形態では、装置は、ロータ室の下部に連結されロータの底面にガスを相対超過圧力で供給するためのガス供給導管と、同様に下部に連結されガスを除去するための吸込み導管と、を備え、両導管は、ロータの下端面にある小ギャップを通じて互いに流体連通する。装置の別の実施形態では、装置は、中心ガス供給導管および外側の同心状の吸込み導管を備える。
【0019】
上部内の圧力を下げるための手段、典型的にはコンプレッサまたは真空ポンプの供給側は、ロータの下端面を相対超過圧力にさらすために下部に連結されることが好ましい。この実施形態では、本発明による装置は、吸引側および供給側を有するコンプレッサまたは真空ポンプを備え、供給側は、ロータの下端面にガスを供給するためにロータ室の下部に連結され、吸引側は、好ましくは少なくともシールのところでハウジングに連結され、上部が、比較的低い圧力に、例えば、例えば10mbar未満に維持されるようにする。通常の貯蔵期間中にコンプレッサによって消費されるエネルギーは、ロータ内に貯蔵されうるエネルギーのわずかな比率にしか相当しない。これにより、経済的に許容できるエネルギー損失で、ガスを循環させるとともに、ロータの下端面のところでガスを所望の圧力でハウジング内に再び供給することが可能になる。好適には、コンプレッサの吸引力は、コンプレッサがロータ室の上方部分内に存在する圧力よりも低い真空を適用できるようなものである。このような場合、ロータ室の上方部分と下方部分との間の密封効率は改善される。
【0020】
有利な一実施形態では、ラビリンスシールには、ハウジングもしくはロータと一体であろうとなかろうと、または別個の要素から製作されていようといなかろうと、ガス流動摩擦を低減するためのコーティングが設けられる。次いで、圧力降下の大部分は、ラビリンスシールの寸法および形状によって決定される。ラビリンスはハウジングの内壁に設けられるセミラビリンスであることが好ましい。セミラビリンスのコーティングに加えて、ロータは、例えば鋼鉄、プラスチックおよびカーボンで製作された外側の滑らかな殻を有することができる。
【0021】
本発明による装置のさらに別の実施形態では、装置は、ロータに対する所定の持ち上げ条件、特にロータの2つの反対面間の所定の圧力差および/または転がり軸受や滑り軸受などの軸受にかかる所定の荷重を維持する目的で、コンプレッサの流量を制御するための制御手段を備える。したがって、軸受の過負荷およびロータの不安定化が効果的に防止されうる。
【0022】
装置は、ガスを冷却するためにガス吸引側とガス供給側との間に熱交換器を備えることができる。使用中、ガスは、ガスとロータとの間の圧縮および/または摩擦のせいで温度が上昇する。装置の熱的損傷を防止するために、熱交換器は、ロータと接触していないときにガスを冷却する。
【0023】
吸い込まれかつ/または供給されるガスは、主に空気、水素またはヘリウムで構成されることが好ましい。というのはこれらのガスの摩擦係数および粘度が低いからである。一般に、ヘリウムは、ヘリウムが安定しておりかつヘリウムの摩擦係数が低いという理由で好ましい。
【0024】
一般に、ロータは、軸受内に取り付けられたシャフトに固着される。ピニオンが回転に関してロータに連結されるが、ロータから軸方向に切り離される。したがって、ロータシャフトにより、ロータはロータおよびシャフトの共通軸線を中心に回転することが可能になる。ピニオンは、ロータの外部の機器への連結を可能にする。ピニオンとロータとの間の軸線方向の切り離しにより、存在するかもしれない高い軸方向応力および/または半径方向応力がギヤセットに伝達されるのを防止する。ピニオンは、動力源および/またはエネルギーを消費する外部機器に連結されるべきロータの回転を可能にする。連結は、特に複数のロータが互いに連結される場合に間接的な連結とすることができる。
【0025】
ロータは、質量体が外壁および外面の中に集中している中空円錐体とすることができる。これは、特に産業用途に適用可能である。好ましい一実施形態では、例えば比較的小さい国内用途の場合、ロータは、例えば鉄筋コンクリートまたは金属から製作された固体である。必要なら、ロータは、交差したスポークのような強化要素によって強化されうる。
【0026】
有利な一実施形態によれば、複数のロータが、例えば適切なギヤセットおよび伝達歯車を使用して、互いにマトリックスを形成するように接合されるので、すべて同じモータおよび/または同じ機器に直接的にまたはその他の方法で連結されることができる。それぞれのロータにはロータ自体のピニオンおよび軸受が設けられる。その場合、ロータは、中心ロータおよび複数の周囲ロータと共に、同心リングのラインに沿って組み立てられることが好ましい。別の構成では、複数のピニオンが、2つの接触点によってそれぞれ互いに連結される。この構成は、伝達歯車のうちの少なくともいくつかが重ねられることを伴う。具体的には、一方が外歯付きであり他方が内歯付きであり外歯付きの方を取り囲む、2つの同心歯車で構成された複数対の伝達歯車が使用されることが好ましい。各対は、好ましくは3つのピニオンを2つの接触点でそれぞれ駆動し、一方の接触点が対の内歯車とのものであり、他方の接触点が対の外歯車とのものである。このタイプの構成は、ロータ相互間のエネルギー伝達のはるかに高い安定性を与える。機械的応力は低くなり、ピニオン相互間のエネルギー分布がより良くなる。
【0027】
本発明による装置の特定の使用は、エネルギー、特に電気エネルギーを特に風力タービンを使用して生成するユニットに付随しエネルギーの生成および/または消費の変動を吸収することを対象とする。
【0028】
一般に、本発明による装置は、ロータを充電するために、風力タービンまたは太陽エネルギーによって電力供給されるモータなどの動力源に連結される。放電は通常、ロータの回転速度を電気に変換するために、発電機を通じて行われる。
【0029】
本発明のいくつかの態様を添付図面でさらに説明する。