特許第5916022号(P5916022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916022
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】慣性エネルギー蓄積装置
(51)【国際特許分類】
   F03G 3/08 20060101AFI20160422BHJP
   F03D 9/10 20160101ALI20160422BHJP
【FI】
   F03G3/08 A
   F03D9/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-557662(P2013-557662)
(86)(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公表番号】特表2014-510869(P2014-510869A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】NL2012050143
(87)【国際公開番号】WO2012121602
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年2月17日
(31)【優先権主張番号】2006355
(32)【優先日】2011年3月8日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】513221123
【氏名又は名称】エス4 エナジー ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】S4 ENERGY B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ド フリース, カール マリア
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−037352(JP,A)
【文献】 特開平02−017842(JP,A)
【文献】 特開昭56−153141(JP,A)
【文献】 特開平11−150911(JP,A)
【文献】 実開昭60−055265(JP,U)
【文献】 特開昭62−178777(JP,A)
【文献】 特開昭51−151466(JP,A)
【文献】 特開2004−096988(JP,A)
【文献】 米国特許第4208921(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 3/00− 3/08
F03D 9/00− 9/19
F16H 33/00−33/20
F16F 15/30
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ室(16)を画定するハウジング(12)と、下端面(26)および実質的に反対側の上端面(24)を有する少なくとも1つのロータ(18)とを備える、慣性エネルギーを蓄積するための装置であって、前記ロータ(18)が、前記ハウジング(12)に対して垂直回転軸(20)を中心に回転可能となるように、フリーギャップ(32)を残して前記ロータ室(16)内に取り付けられ、シール(36)が、前記フリーギャップ(32)中に設けられて、前記ロータ室(16)の上部(34)と前記ロータ室(16)の底部(38)とを切り離し、当該装置が、前記ロータ(18)のうち前記底部(38)内の少なくとも前記下端面(26)を、前記上部(34)内の前記実質的に反対側の上端面(24)に加えられる圧力と比較して、前記ロータ(18)の重量を少なくとも部分的に補償する上方への差圧力を発生させるガス圧力にさらすための手段(40)をさらに備え、当該装置に前記上部(34)内の圧力を下げるための手段(40)が設けられる、装置。
【請求項2】
前記ロータ(18)の少なくとも前記下端面(26)をさらすための前記手段(40)が、前記下端面(26)を1気圧未満のガス圧力にさらすようになされる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記上部(34)内の圧力を下げるための前記手段(40)が、少なくとも前記シール(36)に連結される吸引側を備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記ロータ室(16)の底に、隆起したプラットホーム(42)が設けられ、前記ロータ(18)の前記下端面(26)に、対応する凹所(44)が設けられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記隆起したプラットホーム(42)が円錐形状を有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記シール(36)が、前記隆起したプラットホーム(42)の外周面と前記ロータ(18)の前記対応する凹所(44)の内周面との間の前記フリーギャップ(32)中に設けられる、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記ロータ室(16)の前記底部(38)に連結され前記ロータ(18)の前記下端面(26)にガスを相対超過圧力で供給するためのガス供給導管(54)と、前記底部(38)に連結されガスを除去するための吸込み導管(56)と、をさらに備え、前記導管(54、56)が、前記ロータ(18)の前記下端面(26)にある小さな通路を通じて互いに流体連通する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
中心ガス供給導管(54)と、前記中心ガス供給導管(54)の周囲に同心状に配置された吸込み導管とを備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記上部(34)内の圧力を下げるための前記手段(40)が、前記底部(38)に連結される供給側を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば風力タービンなどのエネルギーを生成するユニットに付随しエネルギーの生成および/または消費の変動を吸収することを可能にする慣性エネルギー蓄積装置に関する。このタイプの装置は、制動出力および/または減速出力(retarding and/or slowing power)を取り戻し、次いで回復させるかまたは何か他の方法で使用するために使用されることもできる。装置は、回転速度を安定化するために使用されることもできる。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプのエネルギー貯蔵システムが知られている。1つのタイプは、はずみ車(flywheels)、すなわちエネルギーの入力により回転状態に設定される少なくとも1つの質量体(mass)をベースとしており、はずみ車は、エネルギーの入力が終わった後、慣性で回転し続けることになる。回転する質量体は、エネルギー貯蔵期間中にエネルギーを入力する手段を構成するモータに連結され、またはエネルギー回復期間中に発電機に連結される。はずみ車が重くなりかつはずみ車ができる限り低い摩擦ですぐに回転できるようになるほど、貯蔵されうるエネルギー量は大きくなる。したがって、はずみ車の軸受に関する問題、より一般的には、はずみ車の枢着方法に関する問題は決定的に重要である。
【0003】
はずみ車のいくつかのタイプでは、軸受は、電磁力を加えることによりはずみ車の重量を部分的に軽減される。
【0004】
別のタイプが、PCT国際出願第PCT/NL2009/000248号の明細書に記述されている。この慣性エネルギー蓄積装置は、フレームと、フレームに対して回転軸を中心に回転できるように取り付けられた少なくとも1つのはずみ車とを備えるとともに、はずみ車の少なくとも1つの面を、はずみ車の実質的に反対側の面に加えられる圧力と比較して、例えば、ガス圧力にさらされるはずみ車の面を取り囲むいわゆるガス流減速手段を用いて、はずみ車の重量を少なくとも部分的に補償する上方への差圧力を発生させるガス圧力にさらすための手段も備える。この装置では、はずみ車の軸受は、はずみ車の重量を少なくとも部分的に軽減され、したがって軸受の寿命を延ばすだけでなく、kWh当たりのコストも大きく低減されることが記述されている。これらのガス流減速手段は、漏れ空間中の圧力ヘッドの降下を作り出すことを可能にする。ガス流減速手段は通常、フレームと一体になった面とはずみ車との間に形成される。一実施形態では、これらのガス流減速手段はラビリンスシールを備える。この種のシールでは、ガス流路は、圧力ヘッドの降下(「ヘッドドロップ」)を発生させる一連の特別な特徴を備える。例えば、ガスが通過する横断面は交互に減少したり拡大したりしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
次に、上記PCT出願による装置のパイロット規模のモデルでは、総エネルギー損失が予想外に高く、その結果、はずみ車により例えば1つまたは複数の他の機器を充電するためのエネルギーを供給することができる時間周期が比較的短いことが明らかである。したがって、この装置は、経済的な実施可能性のある態様で運転されることができない。
【0006】
本発明は、ロータをベースとする慣性エネルギー蓄積装置のさらなる改善を対象とする。
【0007】
本発明の一般的目的は、かかる装置の効率を高めることである。
【0008】
本発明の別の目的は、かかる装置のエネルギー損失を減少させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、慣性エネルギー蓄積装置は、ロータ室を画定するハウジングと、下端面および実質的に反対側の上端面を有する少なくとも1つのロータとを備え、ロータは、ロータがハウジングに対して垂直回転軸を中心に回転可能となるように、フリーギャップを残して回転チャンバ内に取り付けられ、シールは、ギャップ中に設けられて、ロータ室の上部とロータ室の底部とを切り離し、ロータのうち底部内の少なくとも下端面を、上部内の実質的に反対側の上端面に加えられる圧力と比較して、ロータの重量を少なくとも部分的に補償する上方への差圧力を発生させるガス圧力にさらすための手段をさらに備え、装置には、上部内の圧力を下げるための手段が設けられる。
【0010】
本発明による慣性エネルギー蓄積装置は、後述する必要な連結部を除いて環境に対して全体的に封止されるハウジングを有する。ハウジングの内壁はロータ室の境界を定める。このロータ室内にはロータが取り付けられる。ロータの外形は、上端面および上端面の反対側の下端面、ならびに上端面と下端面との間の直立壁によって画定される。ロータは、垂直回転軸を中心に回転することができる。通常は、回転シャフトが、ロータの両端面からハウジングの最上部および底部内に設けられた適切な軸受の中へ延びる。少なくとも使用中、ハウジングの内壁とロータの外周面との間にギャップが存在する。このギャップ中にはシールが存在しており、シールの位置について以下により詳細に論じる。このシールは、ロータ室の下方部分から上方部分を切り離す。ロータの上面は上部内に含まれ、底面は下方部分内に含まれる。装置には、上方部分内の圧力を、例えば100mbar未満、例えば50mbar、10mbarまたは5mbarに低下させるための手段(以後、真空手段または第2の手段とも称される)が設けられる。ロータを持ち上げるために、ロータ室の上方部分内の圧力に相対して超過圧力、例えば100mbarでロータの下端面にガスを噴出し、それによってロータの重量を補償し、したがって軸受にかかる荷重を軽減する手段(第1の手段とも称される)もある。上方部分内が低圧であるため、ロータ室内に入れられたガスとロータとの間の摩擦は小さい。PCT国際出願第PCT/NL2009/000248号の明細書による装置と比べると、摩擦損失は本質的に低減されるので、経済的に実施可能な態様で装置を運転することができる。
【0011】
好適には、第1の手段は、ロータの下端面に作用する絶対ガス圧力が大気圧未満、例えば100〜200mbarの範囲内になるように設計される。
【0012】
ロータは直円柱とすることができる。あるいは、ロータはテーパ形状を有することができ、好適には、ロータは上側を下にして取り付けられた円錐台であり、したがって直径の大きい方が頂部にある。この構成の効果は、装置が自己調整浮揚を有することである。ロータ室の底のガス圧力が(一時的に)上昇すると、ロータを上方へさらに持ち上げるが、同時に、シール内のガスの通路が増大し、それによって圧力降下を減少させ、したがって底と上面との間の差圧が減少し、その結果、浮揚が減じられ、ロータ浮揚がほとんど変化しないという、全体的な効果が得られる。同様に、ガス流の(一時的)減少が補償される。これにより、使用中、ロータは自動的に一定の浮揚レベルにとどまることができる。好適には、ロータの円周壁とロータの垂直回転軸との間の角度は、0.25〜10°の範囲内であり、より好ましくは最大で3°、例えば1°である。
【0013】
ハウジングの内壁とロータの表面との間のギャップのシールにより、ロータ室の底部からロータ室の上部へのガスの流れを制限することができる。好適には、ギャップ中のシールは、供給されるかまたは吸い取られるガスの流れの方向に見られるように、圧力ヘッドの降下を引き起こす一連の突出部および/または溝を備えるラビリンスシールである。一般に、ギャップ中をガスが通過する横断面が交互に減少したり拡大したりする。ラビリンスに含まれている突出部は、少なくとも部分的に丸い先端部を有することが好ましい。突出部の丸い先端部は、突出部の高圧側から他方の側への比較的滑らかなガスの流れをもたらし、それによって、ロータの回転安定性に悪影響を及ぼすことになる乱流を減らす。好適には、突出部の先端部は翼の形をしている。ラビリンスはセミラビリンス(semi−labyrinth)であることがより好ましい。本出願の文脈では、この表現は、ハウジングおよびロータの一方には垂直方向に離間された一連の突出部(または凹所)、例えば回転軸と同心のリングなどが設けられ、他方は平坦であることを意味する。一般に、ラビリンスの突出部または凹所は、ハウジングと一体であろうとなかろうと、別個の要素から組み立てられようとなかろうと、本発明による装置の固定ハウジング内に設けられる。
【0014】
好ましい一実施形態では、真空手段の吸引側は、シールの位置で、例えば(セミ)ラビリンスの隣接する突出部相互間の凹所内でロータに連結される。この実施形態では、ロータ室の上方部分内の低圧が維持され、同時に、ロータを持ち上げるために下方部分に連続的に供給されるガスが除去されもする。
【0015】
固定ハウジングに設けられたシール、特にセミラビリンスシールの突出部の別の好ましい実施形態では、突出部の先端はロータの傾斜した直立壁に平行な線上に位置するのが有効である。言い換えると、同心突出部の内径は、ロータの直径の増大に比例して下方部分から上方部分にかけて増大する。
【0016】
別の好ましい実施形態では、ロータ室の底壁に、隆起した中心プラットホームが設けられ、ロータの下端面は、中心プラットホームと対をなす凹形状を有する。第1の手段は、ロータの下端面の凹所内のガス流を方向付ける。プラットホームは円錐台形状を有し、ロータの下端面は対をなす円錐凹所を含むことが好ましい。ロータの円錐形に凹設された下端面は、ラビリンスシールへのガスの安定した流れ、ならびにセルフセンタリング効果を確実にし、それによってロータの安定性を高める。円錐の角度は小さく、例えば2〜3°から20°の範囲内であることが有効である。
【0017】
この実施形態では、シールは、好ましくは、隆起したプラットホームの外周面と凹所の内周面との間のギャップ中に配置される。
【0018】
別の実施形態では、装置は、ロータ室の下部に連結されロータの底面にガスを相対超過圧力で供給するためのガス供給導管と、同様に下部に連結されガスを除去するための吸込み導管と、を備え、両導管は、ロータの下端面にある小ギャップを通じて互いに流体連通する。装置の別の実施形態では、装置は、中心ガス供給導管および外側の同心状の吸込み導管を備える。
【0019】
上部内の圧力を下げるための手段、典型的にはコンプレッサまたは真空ポンプの供給側は、ロータの下端面を相対超過圧力にさらすために下部に連結されることが好ましい。この実施形態では、本発明による装置は、吸引側および供給側を有するコンプレッサまたは真空ポンプを備え、供給側は、ロータの下端面にガスを供給するためにロータ室の下部に連結され、吸引側は、好ましくは少なくともシールのところでハウジングに連結され、上部が、比較的低い圧力に、例えば、例えば10mbar未満に維持されるようにする。通常の貯蔵期間中にコンプレッサによって消費されるエネルギーは、ロータ内に貯蔵されうるエネルギーのわずかな比率にしか相当しない。これにより、経済的に許容できるエネルギー損失で、ガスを循環させるとともに、ロータの下端面のところでガスを所望の圧力でハウジング内に再び供給することが可能になる。好適には、コンプレッサの吸引力は、コンプレッサがロータ室の上方部分内に存在する圧力よりも低い真空を適用できるようなものである。このような場合、ロータ室の上方部分と下方部分との間の密封効率は改善される。
【0020】
有利な一実施形態では、ラビリンスシールには、ハウジングもしくはロータと一体であろうとなかろうと、または別個の要素から製作されていようといなかろうと、ガス流動摩擦を低減するためのコーティングが設けられる。次いで、圧力降下の大部分は、ラビリンスシールの寸法および形状によって決定される。ラビリンスはハウジングの内壁に設けられるセミラビリンスであることが好ましい。セミラビリンスのコーティングに加えて、ロータは、例えば鋼鉄、プラスチックおよびカーボンで製作された外側の滑らかな殻を有することができる。
【0021】
本発明による装置のさらに別の実施形態では、装置は、ロータに対する所定の持ち上げ条件、特にロータの2つの反対面間の所定の圧力差および/または転がり軸受や滑り軸受などの軸受にかかる所定の荷重を維持する目的で、コンプレッサの流量を制御するための制御手段を備える。したがって、軸受の過負荷およびロータの不安定化が効果的に防止されうる。
【0022】
装置は、ガスを冷却するためにガス吸引側とガス供給側との間に熱交換器を備えることができる。使用中、ガスは、ガスとロータとの間の圧縮および/または摩擦のせいで温度が上昇する。装置の熱的損傷を防止するために、熱交換器は、ロータと接触していないときにガスを冷却する。
【0023】
吸い込まれかつ/または供給されるガスは、主に空気、水素またはヘリウムで構成されることが好ましい。というのはこれらのガスの摩擦係数および粘度が低いからである。一般に、ヘリウムは、ヘリウムが安定しておりかつヘリウムの摩擦係数が低いという理由で好ましい。
【0024】
一般に、ロータは、軸受内に取り付けられたシャフトに固着される。ピニオンが回転に関してロータに連結されるが、ロータから軸方向に切り離される。したがって、ロータシャフトにより、ロータはロータおよびシャフトの共通軸線を中心に回転することが可能になる。ピニオンは、ロータの外部の機器への連結を可能にする。ピニオンとロータとの間の軸線方向の切り離しにより、存在するかもしれない高い軸方向応力および/または半径方向応力がギヤセットに伝達されるのを防止する。ピニオンは、動力源および/またはエネルギーを消費する外部機器に連結されるべきロータの回転を可能にする。連結は、特に複数のロータが互いに連結される場合に間接的な連結とすることができる。
【0025】
ロータは、質量体が外壁および外面の中に集中している中空円錐体とすることができる。これは、特に産業用途に適用可能である。好ましい一実施形態では、例えば比較的小さい国内用途の場合、ロータは、例えば鉄筋コンクリートまたは金属から製作された固体である。必要なら、ロータは、交差したスポークのような強化要素によって強化されうる。
【0026】
有利な一実施形態によれば、複数のロータが、例えば適切なギヤセットおよび伝達歯車を使用して、互いにマトリックスを形成するように接合されるので、すべて同じモータおよび/または同じ機器に直接的にまたはその他の方法で連結されることができる。それぞれのロータにはロータ自体のピニオンおよび軸受が設けられる。その場合、ロータは、中心ロータおよび複数の周囲ロータと共に、同心リングのラインに沿って組み立てられることが好ましい。別の構成では、複数のピニオンが、2つの接触点によってそれぞれ互いに連結される。この構成は、伝達歯車のうちの少なくともいくつかが重ねられることを伴う。具体的には、一方が外歯付きであり他方が内歯付きであり外歯付きの方を取り囲む、2つの同心歯車で構成された複数対の伝達歯車が使用されることが好ましい。各対は、好ましくは3つのピニオンを2つの接触点でそれぞれ駆動し、一方の接触点が対の内歯車とのものであり、他方の接触点が対の外歯車とのものである。このタイプの構成は、ロータ相互間のエネルギー伝達のはるかに高い安定性を与える。機械的応力は低くなり、ピニオン相互間のエネルギー分布がより良くなる。
【0027】
本発明による装置の特定の使用は、エネルギー、特に電気エネルギーを特に風力タービンを使用して生成するユニットに付随しエネルギーの生成および/または消費の変動を吸収することを対象とする。
【0028】
一般に、本発明による装置は、ロータを充電するために、風力タービンまたは太陽エネルギーによって電力供給されるモータなどの動力源に連結される。放電は通常、ロータの回転速度を電気に変換するために、発電機を通じて行われる。
【0029】
本発明のいくつかの態様を添付図面でさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による装置の一実施形態の概略図である。
図2】本発明による装置の別の実施形態の概略図である。
図3】本発明による装置のさらに別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1図3に示されている様々な実施形態の以下の詳細な考察では、類似部品は同じ参照番号で示されている。
【0032】
本発明による慣性エネルギー蓄積装置10はハウジング12を備える。ハウジング12は、図1に示されているように、最上部に蓋またはカバー14を有するトレイタイプのタンク13を備えることができる。ハウジング12は、全体的に16で示されているロータ室を画定する。ロータ室16内には、ハウジング12を貫通して延びる垂直回転シャフト20を有するはずみ車などのロータ18が、軸受22を使用して回転可能に取り付けられる。一般に、回転シャフト20の他端部は、ブラインド穴(図示せず)の中に、必要なら適切な軸受(やはり図示せず)を使用して取り付けられる。固体ロータ18は、上端面24および反対側の下端面26を有する。直立壁28は、2つの面24、26を連結するとともに、少なくとも使用中にフリー小ギャップ32を残してハウジング12の直立内壁30とほぼ平行である。使用中、ロータ室16内に2つの部分が区別される。上部34が下部38からシール36によって切り離される。ガスが、真空ポンプまたはコンプレッサ40によって所定の圧力(例えば100mbarの相対ゲージ圧)で下部38に供給され、下端面26に、この場合はシール36の上流側の凹設中心領域46に向けられる。上部34は、低圧、例えば5mbarに維持される。2つの部分間の圧力差により、ロータ18の重量は部分的に補償され、ロータ18は持ち上げられる。2つの部分34および38は気密密閉されないが、その代わりに、2つの部分34および38はシール36を介して互いに流体連通する。
【0033】
図1に示されている実施形態では、ハウジング12の底に円錐プラットホーム42が設けられ、円錐プラットホーム42の上面44には小凹所45がある。ロータ18の下端面26には、プラットホーム42と対をなす凹所46が設けられる。プラットホーム42の直立面48には複数の円周溝50が設けられ、円周溝50は、凹所46の対向平壁52と共に、先に定義されたセミラビリンスシール36をもたらす。凹所45は、コンプレッサ40のガス供給導管54に連結される。コンプレッサ40の吸引側は、吸込み導管56を介して溝50のうちの1つまたは複数に連結される。使用中、下部38に供給されたガスはコンプレッサによって吸い取られ、上部34内の真空が維持される。上部34内の真空は、ロータ18と上部内の媒体との間の摩擦の軽減に寄与する。図示されている実施形態では、凹所46内のガスの速度は、ロータ18の直立壁とハウジング12の直立壁との間のギャップ32中に存在する任意のガスに比べて比較的小さい。この構成は、総摩擦低減へのさらなる寄与を提供する。
【0034】
図2に示されている実施形態では、ロータ18は、平らな下端面26を有する逆円錐台である。この場合、シール36は、ハウジング12の内側直立壁に垂直方向に離間して取り付けられた一連の水平翼の形をした突出部または薄板60から組み立てられる。吸込み導管56は、62のところにあるハウジング12の下方縁部分と2つ以上の薄板60の間のシール36とに連結される。装置内では、ガス供給導管54およびガス吸込み導管56が小さいギャップまたは通路76を通じて流体連通する。
【0035】
図3の実施形態では、仕切り72を有する管70が垂直回転シャフト20を取り囲む。管70は下端面26内の環状凹所74の中に延びていて、真空上部34と下部38との間にシール36を形成する。仕切り72の自由端74は、フリー小ギャップまたは通路76を残して下端面26付近に配置される。ガス流が矢印で示されている。
【0036】
本発明による装置は、通常、ロータに対する所定の持ち上げ条件、特に上部内の10mbar未満の圧力および2つの反対端面間の所定の圧力差および/またははずみ車の軸受にかかる所定の垂直荷重を維持する目的で、コンプレッサの動作を調整するための圧力センサを使用する制御手段を備える。センサは、通常、上部および下部内に配置される。
図1
図2
図3