【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、表編地と、裏編地と、表編地と裏編地間を連結する連結糸、とからなるスペーサファブリックを、少なくとも一対の複数の針を備える針床とキャリッジとを備える編機により編成する編成方法において、
表裏の一方が膨らみ、他方がフラットなスペーサファブリックを編成するために、
a: 表編地でも裏編地でも複数の編目毎に間隔を置いてかつ向かい合った編目にタックしないように、表編地の針に保持された編目と裏編地の針に保持された編目とに連結糸を交互にタックすることを、表編地と裏編地の各編目にタックするようにタックする編目を異ならせて繰り返すステップと、
b: 複数の編目毎に間隔を置いて、表編地のタックされた編目上に次の編目を形成するステップと、
c: 複数の編目毎に間隔を置いて、裏編地のタックされた編目上に次の編目を形成するステップとを行い、
表編地をフラットにし、裏編地を膨らませる個所では、ステップaの次に、ステップbから次の編目の形成を始めて、ステップcで次の編目の形成を終えるように、次の編目を形成する編目を異ならせながら、ステップbとステップcとを繰り返して、表編地と裏編地のタックされた各編目に次の編目を形成
することにより、表編地に最初に次の編目を形成すると共に、最初に次の編目を形成したタックと連結糸によりつながっている裏編地のタックに最後に次の編目を形成し、
裏編地をフラットにし、表編地を膨らませる個所では、ステップaの次に、ステップcから次の編目の形成を始めて、ステップbで次の編目の形成を終えるように、次の編目を形成する編目を異ならせながら、ステップbとステップcとを繰り返して、裏編地と表編地のタックされた各編目に次の編目を形成することにより、裏編地に最初に次の編目を形成すると共に、最初に次の編目を形成したタックと連結糸によりつながっている表編地のタックに最後に次の編目を形成することを特徴とする。
【0006】
この発明では、
・ 表編地でも裏編地でも複数の編目毎に間隔を置いてかつ向かい合った編目にタックしないように、表編地の針に保持された編目と裏編地の針に保持された編目とに連結糸を交互にタックすることを、表編地と裏編地の各編目にタックするようにタックする編目を異ならせて繰り返すことと、
・ 複数の編目毎に間隔を置いて、表編地のタックされた編目上に次の編目を形成すると共に、複数の編目毎に間隔を置いて、裏編地のタックされた編目上に次の編目を形成し、次の編目を形成する編目を異ならせながら表編地と裏編地のタックされた各編目に次の編目を形成することとを実行し、
・ タックされた編目に次の編目を形成する順序を利用して、スペーサファブリックの一方の編地を膨らませ、他方をフラットにする。
・ そして最初に次の編目を形成するタックと最後に次の編目を形成するタックとが連結糸によりつながっており、最初に次の編目を形成するタックの側で編地が相対的に縮んでフラットになり、最後に次の編目を形成するタックの側で編地が相対的に膨らむ。
【0007】
この発明では、表編地と裏編地との素材の違いに依存せずに、表裏の一方に膨らみのあるスペーサファブリックを編成できる。表裏の双方を膨らませる場合に比べ膨らみは約2倍になり、編目のループ長、コース数等を表裏の編地で異ならせる必要もない。膨らみは表編地と裏編地の所望の位置に形成でき、その反対側はフラットになるので、用途に応じた形状のスペーサファブリックが得られる。
【0008】
好ましくは、ステップbとステップcとで平編とリブ編みを行うことにより、リブ編み部で表編地と裏編地とを結合して、平編部で肉厚でリブ編み部で肉薄のスペーサファブリックを編成する。このようにすると膨らんだ部分とその周囲の肉薄の部分との対比により、スペーサファブリックに凹凸を与えることができる。
【0009】
特に好ましくは、ステップbとステップcとで平編とリブ編みとを各々複数個所で行うことにより、表編地と裏編地とを前記複数個所で結合すると共に、複数のリブ編み部の位置をスペーサファブリックのウェール方向に対して斜めにかつ互いにクロスするように、ウェール方向に沿って移動させる。このようにすると膨らんだ個所の形が平行四辺形状のキルティング風の編地が得られる。
【0010】
また好ましくは、ステップbとステップcとで各々1目置きに次の編目を形成し、かつステップbとステップcとを繰り返す過程で、最初に形成される次の編目と向かい合う位置のタックされた編目に最後に次の編目を形成する。このようにすると、最後に次の編目を形成した側が膨らみ、その反対側で最初に次の編目を形成した側がフラットになる。
【0011】
この発明はまた、表編地と、裏編地と、表編地と裏編地間を連結する連結糸、とからなるスペーサファブリックにおいて、
表裏の一方が膨らみ、他方がフラットで、
表編地でも裏編地でも複数の編目毎に間隔を置いて、かつ向かい合った編目にタックしないように、表編地の編目と裏編地の編目とに連結糸が交互にタックされ、かつタックされる編目を異ならせて表編地と裏編地の各編目がタックされており、
複数の編目毎に間隔を置いて、表編地のタックされた編目上に次の編目が形成され、かつ次の編目を形成する編目を異ならせながら、表編地のタックされた各編目に複数のコースに渡って次の編目が形成されており、
複数の編目毎に間隔を置いて、裏編地のタックされた編目上に次の編目が形成され、かつ次の編目を形成する編目を異ならせながら、裏編地のタックされた各編目に複数のコースに渡って次の編目が形成されており、
表編地がフラットで、裏編地が膨らんでいる個所では、連結糸により連結されている表編地のタックと裏編地のタックの対で、表編地のタックから裏編地のタックへ連結糸が引き出されている対が有り、かつ表編地では次の編目間の間隔が裏編地よりも縮んでおり、
裏編地がフラットで、表編地が膨らんでいる個所では、連結糸により連結されている裏編地のタックと表編地のタックの対で、裏編地のタックから表編地のタックへ連結糸が引き出されている対が有り、かつ裏編地では次の編目間の間隔が表編地よりも縮んでいることを特徴とする。
【0012】
編成上、最後に次の編目が形成されるタックAから、連結糸が向かい合った反対側の編地の
、編成上最初に次の編目が形成されたタックBへ延びている。タックAに次の編目が形成される直前の状態では、タックBは既に針床の針から外されてタックAの側に引かれ、タックA,B間の渡糸の上に、タックの次に形成した編目間の渡糸が載り、タックAにテンションが加わり、タックBの目から連結糸がタックAの側へ引き出され、タックBの目が縮む。この状態で、タックA上に次の編目が形成され、タックAが針から外れると、タックBの属する編地が相対的に縮んでフラットになり、タックAの属する編地が相対的に膨らむ。なおタックBの属する編地では編目間の間隔が相対的に縮み、タックAの属する編地では編目間の間隔が相対的に延びている。
【0013】
この発明のスペーサファブリックでは、表編地と裏編地との素材の違いに依存せずに膨らみを設けることができ、表裏の双方を膨らませる場合に比べ膨らみは約2倍になり、膨らみは表編地と裏編地の所望の位置に形成でき、その反対側はフラットになる。このため、フラットな側が人の体に接するようにするとサポータ、靴のソール等に適している。また膨らみ側が体に接するようにすると、クッション、椅子の人が腰掛ける面、背をもたれさせる面、リュックサックの背当て等に適している。この発明のスペーサファブリックは、所望の位置を膨らませることができるので、用途に応じた形状にできる。なおこの明細書において、スペーサファブリックの編成方法に関する記載はそのままスペーサファブリックにも当てはまる。実施例では、表編地が膨らみ裏編地がフラットであるが、膨らんだ表編地とフラットな裏編地の部分と、逆にフラットな表編地と膨らんだ裏編地の部分とを備えているスペーサファブリックを編成しても良い。