特許第5916093号(P5916093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916093
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20160422BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60K35/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-20802(P2012-20802)
(22)【出願日】2012年2月2日
(65)【公開番号】特開2013-160841(P2013-160841A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 康裕
(72)【発明者】
【氏名】杉山 友博
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−224919(JP,A)
【文献】 特開平09−311290(JP,A)
【文献】 特開2002−331855(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0086329(US,A1)
【文献】 特開平09−315182(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/117496(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 − 27/02
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を照射する照射装置と、前記表示光を反射することにより虚像を表示するコンバイナと、前記コンバイナの下端側に設けられ、当該コンバイナを回転変位させて角度調整する回転変位手段と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記コンバイナの反射面上に当該コンバイナの回転中心軸が設定されており、前記コンバイナの下端の移動軌跡が前記回転中心軸を中心とした円弧となり、
前記回転変位手段が、
前記コンバイナの下方に配置され、前記回転中心軸を中心とした円弧に沿って複数の歯が設けられたラックと、
前記コンバイナに回転自在に支持され、前記ラックと噛み合うピニオンと、
前記ピニオンを回転させる駆動手段と、を備えている
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記回転変位手段が、前記コンバイナに回転自在に支持され、前記ピニオンとの間に前記ラックを挟むローラをさらに備えている
ことを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のインストルメントパネル等に取り付けられて、車両情報やナビゲーション情報などを表示するヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバイナを回転変位させて角度調整する回転変位手段を備えたヘッドアップディスプレイ装置としては種々のものが提案されている。一従来例として、図5,6に示されたヘッドアップディスプレイ装置について説明する。図5は、従来のヘッドアップディスプレイ装置の概略構成を示す断面図であり、図6は、図5に示されたコンバイナを回転変位させた状態を示す断面図である。
【0003】
図5,6に示すヘッドアップディスプレイ装置201は、自動車のインストルメントパネルに取り付けられて、車両情報やナビゲーション情報などを表示するものであり、表示光を照射する照射装置202と、表示光を反射することにより虚像を表示するコンバイナ203と、コンバイナ203の下端側に設けられ、当該コンバイナ203を回転変位させて角度調整する回転変位手段204と、照射装置202や回転変位手段204を収容したハウジング209と、を備えている。
【0004】
上記照射装置202から照射された表示光は、ハウジング209の開口部291を通ってコンバイナ203に反射し、ドライバーの目に届く。また、図5,6中のEは、ドライバーの目の位置を表しており、L11,L12は、照射装置202から照射された表示光の道筋を表している。
【0005】
上記コンバイナ203は、半透過性の反射部材であり、板状に形成されている。コンバイナ203は、開口部292を通されてハウジング209外に位置付けられている。
【0006】
上記回転変位手段204は、モータ、ピニオン軸、複数のピニオン等で構成されており、図6に示すように、回転中心軸205を中心としてコンバイナ203を回転変位させる。すなわち、コンバイナ203は、その下端に配置された回転中心軸205を中心として回転変位する。
【0007】
このような回転変位手段204を備えたヘッドアップディスプレイ装置201においては、ドライバーの目の位置Eが低い場合は、図5に示すようにコンバイナ203をドライバー側に傾けるようにし、ドライバーの目の位置Eが高い場合は、図6に示すようにコンバイナ203をドライバーから離れた側に傾けるようにして、表示光がドライバーの視点に届くように角度調整を行う(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−206047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来のヘッドアップディスプレイ装置201においては、以下に示す問題があった。すなわち、ヘッドアップディスプレイ装置201においては、回転中心軸205がコンバイナ203の下端に配置されているので、ドライバーの最適な目の位置にコンバイナ203を回転させると、図6に示すように、表示光の反射位置が前後方向及び上下方向の双方において変化し(前後方向の変化量をDで示し、上下方向の変化量をHで示す。)、虚像に歪みが生じてしまうという問題があった。
【0010】
なお、特開2005−297619号公報には、反射ミラーの背面側かつ上下方向中央部に回転軸部材を配置する技術が開示されている。この技術を上記ヘッドアップディスプレイ装置201に適用しようとした場合、コンバイナ203の角度を変更することによる虚像の歪みは低減できるものの、前記回転軸部材がドライバーの前方視界を遮ることとなるので好ましくない。
【0011】
したがって、本発明は、コンバイナの角度を変更しても表示される虚像に歪みが生じ難いヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、表示光を照射する照射装置と、前記表示光を反射することにより虚像を表示するコンバイナと、前記コンバイナの下端側に設けられ、当該コンバイナを回転変位させて角度調整する回転変位手段と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置において、前記コンバイナの反射面上に当該コンバイナの回転中心軸が設定されており、前記コンバイナの下端の移動軌跡が前記回転中心軸を中心とした円弧となり、前記回転変位手段が、前記コンバイナの下方に配置され、前記回転中心軸を中心とした円弧に沿って複数の歯が設けられたラックと、前記コンバイナに回転自在に支持され、前記ラックと噛み合うピニオンと、前記ピニオンを回転させる駆動手段と、を備えていることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置である。
【0014】
請求項に記載された発明は、請求項に記載された発明において、前記回転変位手段が、前記コンバイナに回転自在に支持され、前記ピニオンとの間に前記ラックを挟むローラをさらに備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項に記載された発明によれば、前記コンバイナの反射面上に当該コンバイナの回転中心軸が設定されており、前記コンバイナの下端の移動軌跡が前記回転中心軸を中心とした円弧となるので、コンバイナの角度を変更しても反射面上における表示光の反射位置がほとんど変化せず、表示される虚像の歪みを低減できる。よって、歪んだ虚像を誤認してしまうことや、歪んだ虚像を見ることによる疲労を防止でき、安全運転に寄与できる。また、歪みを補正した非球面コンバイナを必要とせず、コストダウンが図れる。加えて、回転変位手段がコンバイナの下端側に設けられているので、回転変位手段によってドライバーの前方視界を遮ることがなく、安全運転に寄与できる。
【0016】
請求項に記載された発明によれば、前記回転変位手段が、前記コンバイナに回転自在に支持され、前記ピニオンとの間に前記ラックを挟むローラをさらに備えているので、コンバイナが回転する際のラックとの摩擦力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置が自動車に搭載された状態を示す図である。
図2図1に示されたヘッドアップディスプレイ装置の主要部品の斜視図である。
図3図1に示されたヘッドアップディスプレイ装置の概略構成を示す断面図である。
図4図3に示されたコンバイナを回転変位させた状態を示す断面図である。
図5】従来のヘッドアップディスプレイ装置の概略構成を示す断面図である。
図6図5に示されたコンバイナを回転変位させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施の形態にかかる「ヘッドアップディスプレイ装置」を図1〜4を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置1は、自動車のインストルメントパネル10に取り付けられて、車両情報やナビゲーション情報などを表示するものである。このヘッドアップディスプレイ装置1は、図2,3に示すように、表示光を照射する照射装置2と、表示光を反射することにより虚像(前記各種情報)を表示するコンバイナ3と、コンバイナ3の下端側に設けられ、当該コンバイナ3を回転変位させて角度調整する回転変位手段4と、照射装置2や回転変位手段4を収容したハウジング9と、を備えている。
【0020】
上記照射装置2から照射された表示光は、ハウジング9の開口部91及びインストルメントパネル10の開口部10aを通ってコンバイナ3に反射し、ドライバーの目に届く。また、図3,4中のEは、ドライバーの目の位置を表しており、図1〜4中のL1,L2は、照射装置2から照射された表示光の道筋を表している。
【0021】
上記コンバイナ3は、ハウジング9外に位置付けられる板状の反射部30と、反射部30の下端に取り付けられたベース部31と、で構成されている。
【0022】
上記反射部30は、ハウジング9の開口部92及びインストルメントパネル10の開口部10aを通って、フロントガラスとドライバーとの間の位置に立設している。また、反射部30は、半透過性を有しており、ドライバーが当該反射部30を通して車両前方を目視することができるように形成されている。
【0023】
また、本発明のヘッドアップディスプレイ装置1は、ドライバーの前方視界を遮らないように、反射部30の左右両側、上側、裏側(フロントガラス側)に反射部30の保持部材や回転軸部材等を配置していない。すなわち、本発明では、ドライバーの前方視界を遮らないように、回転変位手段4をコンバイナ3の下端側に設けている。
【0024】
また、本発明のヘッドアップディスプレイ装置1は、コンバイナ3の回転中心軸Pが反射部30の反射面(ドライバー側の面)30a上に設定されており、コンバイナ3の下端の移動軌跡Nが回転中心軸Pを中心とした半径Rの円の円弧とされている。このような構成のヘッドアップディスプレイ装置1は、図4に示すようにコンバイナ3の角度を変更しても反射面30a上における表示光の反射位置がほとんど変化せず、表示される虚像の歪みを低減できる。よって、ドライバーが歪んだ虚像を誤認してしまうことや、歪んだ虚像を見ることにより疲労することを防止でき、安全運転に寄与できる。また、歪みを補正した非球面コンバイナを必要とせず、コストダウンが図れる。また、前記「回転中心軸P」とは、コンバイナ3が回転する際に中心となる直線である。
【0025】
上記回転変位手段4は、コンバイナ3の下方に配置され、回転中心軸Pを中心とした円弧に沿って複数の歯51が設けられたラック5と、ベース部31に回転自在に支持され、ラック5と噛み合うピニオン6と、ピニオン6を回転させる駆動手段7と、ベース部31に回転自在に支持され、ピニオン6との間にラック5を挟むとともにラック5の表面を転がるローラ8と、を備えている。また、前記駆動手段7は、モータ70と、モータ70の出力軸とピニオン6との間に架け渡されたピニオン軸71と、で構成されている。
【0026】
また、回転変位手段4は、図2に示すように、ラック5がコンバイナ3の左右両端位置に一対設けられ、各ラック5に対して1つずつピニオン6が設けられ、各ラック5に対して2つずつローラ8が設けられ、モータ70が共通で1つ設けられ、この1つのモータ70によって一対のピニオン6が回転される構成となっている。また、一対のラック5はハウジング9に固定されており、モータ70はベース部31に固定されている。
【0027】
また、本発明の回転変位手段4において、上記ローラ8は必須の構成ではないが、構成に含めることにより、コンバイナ3が回転する際のラック5との摩擦力を小さくすることができる。
【0028】
このような回転変位手段4を備えたヘッドアップディスプレイ装置1においては、ドライバーの目の位置Eが低い場合は、図4中に点線で示すようにコンバイナ3をドライバー側に傾けるようにし(その際の表示光の道筋を点線L1で示す。)、ドライバーの目の位置Eが高い場合は、図4中に実線で示すようにコンバイナ3をドライバーから離れた側に傾けるようにして(その際の表示光の道筋を二点鎖線L2で示す。)、表示光がドライバーの視点に届くように角度調整を行う。また、図4に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置1においては、コンバイナ3の角度を変更しても反射面30a上における表示光の反射位置がほぼ同じ位置となるので、表示される虚像の歪みを低減できる。
【0029】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ヘッドアップディスプレイ装置
2 照射装置
3 コンバイナ
4 回転変位手段
5 ラック
6 ピニオン
7 駆動手段
8 ローラ
30a 反射面
51 歯
P 回転中心軸
N 移動軌跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6