特許第5916098号(P5916098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916098
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】植物病害防除資材及び植物病害防除方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 63/00 20060101AFI20160422BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   A01N63/00 F
   A01P3/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-39929(P2012-39929)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-173707(P2013-173707A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年10月31日
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-1234
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-1235
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-1236
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-1237
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-1238
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591151808
【氏名又は名称】株式会社環境総合テクノス
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 英治
(72)【発明者】
【氏名】酒井 研二
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 敏浩
(72)【発明者】
【氏名】牧 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】猿田 年保
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−189545(JP,A)
【文献】 特開平06−080531(JP,A)
【文献】 特開平05−051305(JP,A)
【文献】 特開2002−308714(JP,A)
【文献】 特開平08−175919(JP,A)
【文献】 特開2000−253870(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/108973(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0003199(US,A1)
【文献】 Kawai, Ayako et al.,Biological control of Verticillium black spot of Japanese radish using Bacillus spp. and genotypic differentiation of selected antifungal Bacillus strains with antibiotic marker,Research Bulletin of Obihiro Unversity. Natural Science,2006年,vol.27,pp.49-58
【文献】 久保村安衛ほか,白紋羽病菌に対する放線菌 Streptomyces hygroscopicus の拮抗作用,日本蚕糸学雑誌,1990年,vol.59 no.2,pp.149-150
【文献】 Cazorla, F. M. et al.,Isolation and characterization of antagonistic Bacillus subtilis strains from the avocado rhizoplane displaying biocontrol activity,Journal of Applied Microbiology,2007年,vol.103 no.5,pp.1950-1959
【文献】 Seto, Haruo et al.,The isolation and structures of hygrolidin amide and defumarylhygrolidin,The Journal of Antibiotics,1984年,vol.37 no.5,pp.610-613
【文献】 Imai, Shinsuke et al.,Isolation and structure of a new phenoxazine antibiotic, exfoliazone, produced by streptomyces exfoliatus,The Journal of Antibiotics,1990年,vol.43 no.12,pp.1606-1607
【文献】 Piego, Clara et al.,Screening for candidate bacterial biocontrol agents against soilborne fungal plant pathogens,Plant and Soil,2011年,vol.340 no.1-2,pp.505-520
【文献】 Madhaiyan, Munusamy et al.,Bacillus methylotrophicus sp. nov., a methanol-utilizing, plant-growth-promoting bacterium isolated from rice rhizosphere soil,International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology,2010年,vol.60 no.10,pp.2490-2495
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00−65/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白モンパ病菌及びフラン病菌に対する拮抗微生物を有効成分として含有する植物病害防除資材であって、
前記拮抗微生物が、バチルス・メチロトロフィカス(Bacillus methylotrophicus)KB-1株(NITE AP-1234)、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KB-B株(NITE AP-1235)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)KB-7株(NITE AP-1236)、ストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)KS-21株(NITE AP-1237)、ミレロジマ・エスピー(Millerozyma sp.)KC-10株(NITE AP-1238)から成る群より選択された一種以上の微生物である、植物病害防除資材。
【請求項2】
前記拮抗微生物を木質炭化物に担持させて成ることを特徴とする請求項1に記載の植物病害防除資材。
【請求項3】
更に、前記木質炭化物に菌根菌を担持させて成ることを特徴とする請求項2に記載の植物病害防除資材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の植物病害防除資材を、植物の白モンパ病の防除のために該植物が植栽される土壌に施用することを特徴とする植物病害防除方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の植物病害防除資材を、植物のフラン病の防除のために該植物の幹及び枝の少なくともいずれか一方に塗布することを特徴とする植物病害防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病害防除資材及び植物病害防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白モンパ病及びフラン病は、病原性菌類の感染によって発病する植物病害である。該植物病害は、サクラ等のバラ科樹木や果樹等の多様な樹木に甚大な被害を及ぼすものであるため、効果的な対策が望まれている。
【0003】
従来、こうした病原性菌類の感染による植物病害への対策としては、化学合成農薬の散布が中心的に行われてきた。しかしながら、近年、環境や健康への配慮から農薬散布に関する規制が厳しくなっており、特に食用農作物に関しては消費者の間で減農薬栽培や有機栽培が望まれる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-164008号公報
【特許文献2】特開平6-256125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、近年、化学合成農薬を使用せずに植物病害を防除する手法として、自然界に存在する微生物を利用した生物的防除法が注目されており、白モンパ病菌やフラン病菌に対して抑制効果を有する微生物を用いた病害防除用の資材もいくつか提案されている(例えば特許文献1、2等を参照)。
【0006】
しかしながら、これらの従来の微生物資材では必ずしも十分な病害防除効果が得られない場合があり、未だ白モンパ病菌やフラン病菌に対する有効な対策は確立されていないのが現状である。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、微生物を利用するものであって、白モンパ病やフラン病に対する優れた防除効果を発揮することのできる新たな植物病害防除資材、及びそれを用いた植物病害防除方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る植物病害防除資材は、白モンパ病菌及びフラン病菌に対する拮抗微生物を有効成分として含有する植物病害防除資材であって、
前記拮抗微生物が、バチルス・メチロトロフィカス(Bacillus methylotrophicus)KB-1株(NITE AP-1234)、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KB-B株(NITE AP-1235)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)KB-7株(NITE AP-1236)、ストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)KS-21株(NITE AP-1237)、ミレロジマ・エスピー(Millerozyma sp.)KC-10株(NITE AP-1238)から成る群より選択された一種以上の微生物であることを特徴としている。
【0009】
前記本発明に係る植物病害防除資材は、前記拮抗微生物を木質炭化物に担持させて成るものとすることが望ましい。
【0010】
また、前記本発明に係る植物病害防除資材は、更に前記木質炭化物に菌根菌を担持させて成るものとすることが望ましい。
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る植物病害防除方法の第一の態様のものは、前記の植物病害防除資材を、植物の白モンパ病の防除のために該植物が植栽される土壌に施用することを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る植物病害防除方法の第二の態様のものは、前記の植物病害防除資材を、植物のフラン病の防除のために該植物の幹及び枝の少なくともいずれか一方に塗布することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
上記の各菌株は、子嚢菌である白モンパ病菌及びフラン病菌に対し優れた拮抗活性を有している。そのため、これらの菌株を含む本発明に係る植物病害防除資材、及びそれを用いた植物病害防除方法によれば、従来既知の微生物では十分な防除を行うことが困難であった白モンパ病菌及びフラン病菌等の子嚢菌に起因する植物病害を効果的に防除することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明に係る植物病害防除資材は、バチルス・メチロトロフィカス(Bacillus methylotrophicus)KB-1株(NITE AP-1234)、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KB-B株(NITE AP-1235)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)KB-7株(NITE AP-1236)、ストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)KS-21株(NITE AP-1237)、ミレロジマ・エスピー(Millerozyma sp.)KC-10株(NITE AP-1238)から成る群より選ばれた一種以上の微生物を有効成分として含有するものである。
【0015】
上記5種類の菌株は、土壌より採取した微生物の中から、病原性菌類である白モンパ病菌(Rosellinia necatrix)及びフラン病菌(Valsa ceratosperma)の菌糸成長を顕著に抑制する作用を有するものとして選抜された菌株である(後述の[実施例1]、[実施例2]を参照)。
【0016】
前記5種類の菌株のうち細菌4菌株の16S rDNA(16S rRNA遺伝子)の部分塩基配列と酵母1菌株の26S rDNA−D1/D2塩基配列の解析結果は、配列表中にそれぞれ以下の配列番号で示した通りである。KB-1株:配列番号1、KB-B株:配列番号2、KB-7株:配列番号3、KS-21株:配列番号4、KC-10株:配列番号5
【0017】
上記の16S rDNAの塩基配列と26S rDNA−D1/D2塩基配列をデータベース(MicroSeqID:ABI社)と照合した結果、KB-1株はバチルス・メチロトロフィカス(Bacillus methylotrophicus)に属する微生物と推定された。同様にKB-B株はバチルス属(Bacillus sp.)に属する微生物と推定され、KB-7株はバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)に属する微生物と推定された。また、KS-21株はストレプトミセス属(Streptomyces sp.)に属する微生物と推定され、KC-10株はミレロジマ属(Millerozyma sp.)に属する微生物と推定された。
【0018】
これらの菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、それぞれ以下の受領番号が付与されている。
KB-1株:NITE AP-1234(受領日:2012年2月15日)
KB-B株:NITE AP-1235(受領日:2012年2月15日)
KB-7株:NITE AP-1236(受領日:2012年2月15日)
KS-21株:NITE AP-1237(受領日:2012年2月15日)
KC-10株:NITE AP-1238(受領日:2012年2月15日)
【0019】
本発明に係る植物病害防除資材は、白モンパ病やフラン病などの子嚢菌に起因する植物病害の防除に好適に使用されるものであり、上記5種類の拮抗微生物のうちの1種類以上、望ましくは5種類全ての菌株を有効成分として含有する。
【0020】
前記植物病害防除資材は、前記拮抗微生物の菌株を所定の担体に保持させた固形(粒状や粉状など)の資材としてもよく、あるいは該拮抗微生物の菌株を所定の液体に分散させた液状又はペースト状の資材としてもよい。
【0021】
これらの拮抗微生物の菌株は、まず菌体を所定の液体培地(例えばPDB培地、YP培地、YG培地等)で培養して増殖させ、該菌体を含む培養液を所定の濃度に希釈することによって調製することができる。なお、複数種類の菌株を混合する場合には、各菌株を菌体密度が所定値(例えば107 CFU/mL)以上になるまで個別に培養し、その後、各培養液を所定の濃度(例えば105 CFU/mL)に希釈した上でそれらを混合するとよい。
【0022】
本発明の植物病害防除資材を固形資材とする場合、上記菌体を保持させる担体としては木炭等の木質炭化物を好適に用いることができる。該木質炭化物としては中性からアルカリ性のpH特性を有する粒径1〜10 mm程度のものを用いることが望ましい。前記のようなpH特性を有する木質炭化物を用いることにより、前記拮抗微生物を該木質炭化物上で効率よく増殖させて高密度に保持することができ、土壌に施用した際に該拮抗微生物の効果を安定して発揮させることが可能となる。また、木質炭化物の粒径を前記の範囲とすることにより、植物の発根を促進することができる。上記のようなpH特性を有する木質炭化物は、例えば、一般的な木材、間伐材、建築廃材、流木、又はヤシガラ等を400〜800℃程度で炭化処理することで得ることができる。
【0023】
また、上記固形の植物病害防除資材には、菌体を吸着させた前記木質炭化物の他に、各種の土壌改良資材を添加してもよい。前記土壌改良資材としては、例えば、日向土、赤玉土、鹿沼土、バーミキュライト、川砂、及び軽石より成る群のうちの一つ又は複数のものを用いることができる。こうした土壌改良資材を添加することにより、土壌の透水性又は保水性が改善され、その結果、植物の生育を促進して病害への抵抗力を高めることができる。
【0024】
また、上記固形資材には、更に菌根菌を含有させることが望ましい。該菌根菌としては、例えばグロマス・アグリゲイツム(Glomus aggregatum)等のVA菌根菌を好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。こうした菌根菌の添加により、植物の生育促進や耐病性の向上等の効果が得られる。菌根菌を添加する場合には、該菌根菌を予め適当な宿主植物(アルファルファ、トウモロコシ等)に感染させることにより該菌根菌の胞子を増殖させ、該宿主植物の根に対する共生率が所定の値以上(例えば30%以上)であることを確認した上で、その根系土壌を粉砕して前記拮抗微生物を吸着させた木質炭化物に添加する。
【0025】
一方、本発明に係る資材を液状又はペースト状の資材とする場合には、上記のようにして調製した拮抗微生物の培養液をそのまま資材として利用してもよく、あるいは遠心分離又は濾過によって該培養液から培地を除去し、得られた菌体を所定の液体に分散させるようにしてもよい。
【0026】
また、上記液状又はペースト状の植物病害防除資材にも、木質炭化物を含有させることが望ましい。この場合、木質炭化物としては、上記同様のpH特性を有するものであって、粒径1 mm以下の粉末状のものを用いることが望ましい。このように、液状又はペースト状の資材に木質炭化物を含有させることにより、植物の枝や幹への資材の付着性を向上させることができると共に、該資材の施用箇所に拮抗微生物をより安定に保持させることが可能となる。
【0027】
上記本発明に係る植物病害防除資材は、防除対象とする病害の病原体が生育する場所に適用することにより、その効果を発揮させることができる。
【0028】
例えば、白モンパ病のような主に植物体の地下部で発生する病害を防除しようとする場合には、本発明に係る植物病害防除資材を上記のような固形状の資材とし、該固形状資材を、対象とする植物が植栽された土壌に混合、埋設、又は散布することが望ましい。
【0029】
一方、フラン病のような主に植物体の地上部に発生する病害を防除しようとする場合には、本発明に係る植物病害防除資材を上記のような液状又はペースト状の資材とし、該液状又はペースト状の資材を、対象とする植物の枝又は幹に塗布することが望ましい。
【0030】
なお、本発明に係る植物病害防除資材の使用量は、防除対象とする病害の種類、使用場所、使用時期、被害の程度などに応じて適宜調整する。また、本発明に係る植物病害防除方法が適用対象とする植物は典型的にはリンゴやサクラなどのバラ科の植物であるが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
[白モンパ病菌の菌糸成長抑制効果]
野外に植生されたリンゴ及びヤマザクラの罹病木からそれぞれ白モンパ病菌を分離培養し、該白モンパ病菌を用いて上記5種類の菌株による拮抗作用の評価を行った。具体的には、ポテト・デキストロース寒天培地(PDA培地)上に前記白モンパ病菌と前記5種類の菌株とを3 cmの間隔を空けて接種し、28℃の温度条件下で対峙培養した。また、対照実験として上記PDA培地上に前記白モンパ病菌と標準菌株とを3 cmの間隔を空けて接種し、同様に対峙培養を行った。なお、前記標準菌株としては、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)NBRC15535菌株を使用した。
【0032】
表1〜4に培養開始後7日目と14日目における白モンパ病菌の菌糸成長量の測定結果を示す。なお、表1、2がリンゴ由来の白モンパ病菌に対する菌糸成長抑制効果の評価結果であり、表1が培養開始後7日目の結果を、表2が培養開始後14日目の結果を示している。また、表3、4がヤマザクラ由来の白モンパ病菌に対する菌糸成長抑制効果の評価結果であり、表3が培養開始後7日目の結果を、表4が培養開始後14日目の結果を示している。これらの表から明らかなように、本発明に係る5種類の菌株を接種した場合には、標準菌株を接種した場合に比べて白モンパ病菌の菌糸成長が著しく抑制されることが確認された。
【0033】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【実施例2】
【0034】
[フラン病菌の菌糸成長抑制効果]
野外に植生されたリンゴの罹病木からフラン病菌を分離培養し、該フラン病菌を用いて上記本発明に係る5種類の菌株による拮抗作用の評価を行った。具体的には、ポテト・デキストロース寒天培地(PDA培地)上に前記フラン病菌と前記5種類の菌株とを3 cmの間隔を空けて接種し、28℃の温度条件下で対峙培養した。また、対照実験として上記PDA培地上に前記フラン病菌と標準菌株とを3 cmの間隔を空けて接種し、同様に対峙培養を行った。なお、前記標準菌株としては、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)NBRC15535菌株を使用した。
【0035】
表5、6に培養開始後7日目と14日目におけるフラン病菌の菌糸成長量の測定結果を示す。なお、表5が培養開始後7日目の結果を、表6が培養開始後14日目の結果を示している。これらの表から明らかなように、本発明に係る5種類の菌株を接種した場合には、標準菌株を接種した場合に比べてフラン病菌の菌糸成長が著しく抑制されることが確認された。
【0036】
【表5】
【表6】
【実施例3】
【0037】
[植物病害防除資材(固形)の調製]
上記本発明に係る5種類の菌株を、それぞれイースト・グルコース・ペプトン・肉エキス液体培地に接種し、振とう培養法又は通気培養法によって28℃の温度条件下で10〜14日間培養することにより菌体を増殖させた。なお、前記イースト・グルコース・ペプトン・肉エキス液体培地の組成は次の通りである。
KH2PO4 0.5 g、K2HPO4 0.5 g、MgSO4・7H2O 0.15 g、NaCl 0.5 g、イースト抽出物 0.5 g、ペプトン 0.5 g、グルコース 0.5 g、肉エキス 10.0 g、pH6.8、蒸留水 1.0 L
その後、血球計算盤を用いて各培養液中の菌体数を計測し、培地1 mLあたりの菌体数がそれぞれ106 CFU以上であることを確認した上で、前記5種類の菌株の培養液を一つに混合した。得られた混合液は拮抗微生物の菌体液として4℃程度の低温条件下で保存した。
【0038】
次に、上記で調した拮抗微生物の菌体液を該菌体液の容量の2倍又は3倍の木質炭化物と混合し、該木質炭化物に菌体を吸着させた(後述の実施例5では木質炭化物を菌体液の3倍としたものを使用し、実施例7では2倍としたものを使用した)。なお、前記木質炭化物としては、スギ及びヒノキの間伐材をチップ化した上で連続炭化炉によって500℃で炭化させたものであって、篩により選別された粒径1〜5 mmのものを使用した。そして、前記拮抗微生物の菌体を吸着させた木質炭化物に、VA菌根菌資材(商品名:オーレスG-2、販売元:株式会社松本微生物研究所)、焼成赤玉土(細粒)、バーミキュライト(細粒)、貝化石資材(商品名:ハイミネコン、販売元:株式会社松本微生物研究所)、及び緩効性化成肥料(商品名:グリーンマップM、販売元:サングリーン株式会社)を配合することにより、固形の植物病害防除資材を調製した。なお、上記VA菌根菌資材は有効成分としてグロマス・アグリゲイツム(Glomus aggregatum)G-m菌株を含有している。
【0039】
木質炭化物を菌体液の2倍量とする場合の配合量は以下の通りである。
木質炭化物 15 L、菌体液 7.5 L、VA菌根菌資材 0.3 L、焼成赤玉土 10 L、バーミキュライト 3 L、貝化石資材 2 L、緩効性化成肥料 30 g
【実施例4】
【0040】
[植物病害防除資材(ペースト状)の調製]
本発明に係る5種類の菌株を、それぞれ上記と同様のイースト・グルコース・ペプトン・肉エキス液体培地に接種し、振とう培養法又は通気培養法によって28℃の温度条件下で10〜14日間培養することにより菌体を増殖させた。その後、血球計算盤を用いて各培養液中の菌体数がそれぞれ1 mLあたり106 CFU以上であることを確認した上で、それぞれ蒸留水により菌体密度が106 CFU/mLとなるように希釈し、その後、希釈した5種類の培養液を一つに混合することにより菌体混合液を得た。更に、前記菌体混合液を粒径1 mm以下の木質炭化物(実施例3における木質炭化物と同様の材料及び炭化温度で作成されたもの)と5:1の割合で混合することにより、ペースト状の植物病害防除資材を調製した。
【実施例5】
【0041】
[ヤマザクラにおける白モンパ病の発病抑制効果]
まず、赤玉土とバーミキュライトの等量混合物にポテト・デキストロース液体培地(PDB培地)を含浸させたものを高圧滅菌処理し、これにヤマザクラ由来の白モンパ病菌を接種して、培養器を用いて28℃の温度条件下で培養することにより、充分に白モンパ病菌の菌糸を蔓延させた。次に、上記により得られた菌糸が充分に蔓延した白モンパ病菌体をプランター土壌に混合することを繰り返して、その都度ヤマザクラ苗木を定植し、必ず苗木が枯死する土壌条件を準備した。
【0042】
その後、以上で得られた土壌条件のプランター土壌10 Lに上記実施例3で調製した固形の植物病害防除資材を1 L施用し、健全なヤマザクラの苗木を定植した。また、対照区として、実施例3で調製した固形の植物病害防除資材を滅菌処理したもの(以下「滅菌資材」と呼ぶ)、又は上記5種類の菌株に代えて標準菌株であるバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)NBRC15535菌株を使用して上記実施例3と同様の方法により調製した微生物資材(以下「標準株資材」と呼ぶ)を用いて、上記と同様にプランター土壌への資材の施用及び苗木の定植を行った。更に、無処理区として、前記土壌条件のプランターに対し前記いずれの資材も施用せずに健全なヤマザクラ苗木の定植を行った。
【0043】
上記各区における栽培試験の結果を表7に示す。この表から明らかなように、本発明に係る植物病害防除資材の施用区では、前記の滅菌資材の施用区、標準株資材の施用区、及び無処理区に比べて苗木の枯死率が著しく低下しており、白モンパ病の発病が抑制されていることが確認された。
【0044】
【表7】
【実施例6】
【0045】
[リンゴにおけるフラン病の発病抑制効果]
まず、リンゴ由来のフラン病菌をポテト・デキストロース寒天培地(PDA培地)に接種し、28℃の温度条件下で培養して充分にフラン病菌の菌糸を蔓延させた。次に、リンゴ苗の枝の表皮をメスで剥離してから、そこに上記で得られたフラン病菌の菌糸を接種して経過を観察し、フラン病菌の菌糸を接種した全ての枝でフラン病菌による枝枯れ現象が生じることを確認した。
【0046】
続いて、新たにフラン病菌の菌糸を接種した枝に対し、上記実施例4で調したペースト状の植物病害防除資材を筆で塗布して経過観察を行った。また、対照区として、実施例4で調製したペースト状の植物病害防除資材を滅菌処理したもの(以下「滅菌資材」と呼ぶ)、又は上記5種類の菌株に代えて標準菌株であるバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)NBRC15535菌株を使用して上記実施例4と同様の方法により調製したペースト状の微生物資材(以下「標準株資材」と呼ぶ)を上記と同様にしてフラン病菌の菌糸を接種した枝に塗布して経過観察を行った。更に、無処理区として、上記と同様にしてフラン病菌の菌糸を接種した枝に対し前記いずれの資材も塗布せずに経過観察を行った。
【0047】
上記各区における栽培試験の結果を表8に示す。この表から明らかなように、本発明に係る植物病害防除資材の施用区では、前記の滅菌資材の施用区、標準株資材の施用区、及び無処理区に比べて枝枯れの発生率が著しく低下しており、フラン病菌の発病が抑制されていることが確認された。
【0048】
【表8】
【実施例7】
【0049】
[野外圃場に植栽したリンゴにおける白モンパ病の発病抑制効果]
リンゴ苗木に対する白モンパ病が多発する圃場に植え穴を設け、そこに実施例3で調製した固形の植物病害防除資材を30 L施用した上で健全なリンゴの苗木を定植した。また、対照区として、上記5種類の菌株に代えて標準菌株であるバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)NBRC15535菌株を使用して上記実施例3と同様の方法により調製した固形の微生物資材(標準株資材)を上記同様に圃場の植え穴に施用し、苗木を定植して経過観察を行った。更に、無処理区として、上記圃場に植え穴を設け、前記いずれの資材も施用せずに苗木を定植して経過を観察した。
【0050】
上記各区における栽培試験の結果を表9に示す。この表から明らかなように、本発明に係る植物病害防除資材の施用区では、前記の標準株資材の施用区及び無処理区に比べて苗木の枯死率が著しく低下しており、白モンパ病菌の発病が抑制されていることが確認された。
【0051】
【表9】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]