(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭化珪素粒子と、金属珪素と、酸化物相とを含み、前記炭化珪素粒子どうしが前記金属珪素及び前記酸化物相の少なくとも一方を介して結合されている炭化珪素質多孔体であって、
前記酸化物相の主成分がコーディエライトであり、開気孔率が10〜40%であり、
炭化珪素を50〜80重量%、金属珪素を15〜40重量%、コーディエライトを1〜25重量%含む、
炭化珪素質多孔体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、炭化珪素粒子と、金属珪素と、酸化物相とを含み、前記炭化珪素粒子どうしが前記金属珪素及び前記酸化物相の少なくとも一方を介して結合されている炭化珪素質多孔体であって、前記酸化物相の主成分がコーディエライトであり、開気孔率が10〜40%のものである。
【0013】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、炭化珪素粒子と、金属珪素と、酸化物相とを含み、炭化珪素粒子どうしが金属珪素及び酸化物相の少なくとも一方を介して結合されているものである。また、焼結助剤としてホウ素やカーボン、金属酸化物が含まれていてもよく、B
4C、アルカリ土類や希土類金属の酸化物が含まれていてもよい。炭化珪素質多孔体の形状としては、例えば、板状、チューブ状、レンコン状、ハニカム状などが挙げられる。ハニカム状の場合には、例えば、隔壁の厚さを50〜500μm(好ましくは50〜200μm)、セル密度を10〜200セル/cm
2(好ましくは50〜150セル/cm
2)としてもよい。
【0014】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、酸化物相の主成分がコーディエライトMg
2Al
4Si
5O
18である。なお、酸化物相に含まれるコーディエライト以外の酸化物(酸化物相の副成分)として、ムライト、アルミナ、シリカ、スピネル、サフィリン、あるいは、MgO−Al
2O
3−SiO
2を含むガラス相などを含んでも良い。酸化物の主成分がコーディエライト以外の場合には、酸化物の主成分がコーディエライトの場合に比べて、耐熱衝撃性及び抵抗発熱特性の少なくとも一方が劣るため、好ましくない。
【0015】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、開気孔率が10〜40%のものである。開気孔率が10%より小さいと、触媒担体として使用する際に触媒が担持しづらくなるため好ましくない。開気孔率が40%より大きいと、体積抵抗率が大きくなりすぎ、+極と−極とを取り付けて通電したときに電圧を上げても十分に発熱しないおそれがあるため好ましくない。なお、開気孔率は20〜40%であることが好ましい。本明細書で、開気孔率は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積(単位:cm
3/g)と気相置換法による乾式自動密度測定器による見掛け密度(単位:g/cm
3)から、下記式により算出した値である。なお、開気孔率は、例えば、炭化珪素質多孔体を製造する際に用いる造孔材の量やSi/SiC比、焼結助剤量、焼成雰囲気などにより調整することができる。
開気孔率[%]=全細孔容積/{(1/見掛け密度)+全細孔容積} ×100
【0016】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体の平均気孔径は、特に限定するものではないが、2〜15μmであることが好ましい。平均気孔径が2μmより小さいと、触媒担体として使用する際に触媒が担持しづらくなるため好ましくない。また、平均気孔径が15μmより大きいと、強度が低下するため好ましくない。本明細書で、平均気孔径は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)で測定した値である。
【0017】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体の室温における体積抵抗率は、特に限定するものではないが、1〜80Ωcmであることが好ましく、10〜60Ωcmであることがさらに好ましく、10〜40Ωcmであることが一層好ましい。体積抵抗率が1Ωcmより小さいと、電流が過剰に流れることがあり、電気回路等を破損させるおそれがあるため好ましくない。また、体積抵抗率が80Ωcmより大きいと、+極と−極とを取り付けて通電したときに電圧を上げる必要があり設備の高耐圧化が必要になるため好ましくない。本明細書で、体積抵抗率は、4端子法により測定した値である。
【0018】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体の熱伝導率は、特に限定するものではないが、30〜70W/m・Kであることが好ましい。熱伝導率が30W/m・Kより小さいと、+極と−極とを取り付けて通電し発熱させたとしても温度分布にムラが生じるおそれがあるため好ましくない。なお、熱伝導率は高いに越したことはないが、炭化珪素質材料を使用している関係上、70W/m・Kが上限になる。本明細書で、熱伝導率は、比熱、熱拡散率及び嵩密度の積として求めた。
【0019】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体の強度は、特に限定するものではないが、20〜70MPaであることが好ましい。強度が20MPaより小さいと、耐熱衝撃性が低下するため好ましくない。なお、強度は高いに越したことはないが、炭化珪素質材料を使用している関係上、70MPaが上限になる。本明細書で、強度は、炭化珪素質多孔体がハニカム構造体の場合には、そのハニカム構造体をセルが貫通する方向を長手方向とした試験片に加工し、JIS R1601に準拠した曲げ試験により曲げ強度を算出した後、別途計測したハニカム構造体の開口率を用いて下記式により算出した値である。
強度=ハニカム構造体の曲げ強度/{1−(開口率/100)}
【0020】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、炭化珪素を50〜80重量%、金属珪素を15〜40重量%、コーディエライトを1〜25重量%含むものであることが好ましく、炭化珪素を55〜71重量%、金属珪素を19〜36重量%、コーディエライトを3〜23重量%含むものであることがより好ましい。こうすれば、耐熱衝撃性や抵抗発熱特性が一層向上する。
【0021】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、炭化珪素粒子が金属珪素によって結合された構造を有することが好ましい。また、金属珪素は酸化物相によって覆われていることが好ましい。こうすれば、耐熱衝撃性や抵抗発熱特性が一層向上しやすくなる。なお、金属珪素が酸化物相によって覆われている場合、酸化物相は膜厚が0.1〜10μmであることが好ましい。
【0022】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、ハニカム構造体に利用可能である。ここで、ハニカム構造体は、例えば貴金属触媒を担持することにより触媒コンバーターとして利用される。つまり、ハニカム構造体の一利用形態は、触媒担体である。また、触媒コンバーターのうち電気加熱方式の触媒コンバーターにおいては、高い耐熱衝撃性が要求されるため、本発明の第1の炭化珪素質多孔体を利用することが特に好ましい。
【0023】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体の製造方法について、以下に炭化珪素質多孔体がハニカム構造体の場合を例に挙げて説明する。
【0024】
まず、炭化珪素粉末と金属珪素粉末とコーディエライト粉末とを混合し、必要に応じて、バインダー、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素粉末の質量との合計に対して、金属珪素粉末の質量が約20〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粒子の平均粒子径は、5〜100μmが好ましく、20〜40μmが更に好ましい。金属系素粒子の平均粒子径は、0.1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmが更に好ましい。コーディエライト粒子の平均粒子径は、0.1〜50μmであることが好ましく、1〜10μmであることが更に好ましい。これらの平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。なお、コーディエライト粉末の代わりに、焼成時に反応してコーディエライトとなる原料を用いてもよい。その場合、例えば、Mg源とAl源とSi源をコーディエライトの組成になるようにしてもよい。具体的には、タルク(3MgO・4SiO
2・H
2O)、カオリン(2SiO
2・Al
2O
3・2H
2O)、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカなどを用いて、コーディエライトの組成になるようにしてもよい。但し、焼成時に反応してコーディエライトとなる原料を用いるよりも、コーディエライト粉末を用いる方が好ましい。
【0025】
バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダーの含有量は、成形原料全体に対して2〜10質量%であることが好ましい。
【0026】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0027】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0028】
水の含有量は、成形しやすい坏土硬度となるように適宜調整されるが、成形原料全体に対して20〜60質量%であることが好ましい。
【0029】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0030】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形には、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとするハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。こうして得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0031】
次に、ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0032】
次に、ハニカム成形体を焼成して、ハニカム構造体を作製する。焼成の前に、バインダー等を除去するため、仮焼を行うことが好ましい。仮焼は、大気雰囲気において、200〜600℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。焼成は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下(酸素分圧は10
-4atm以下)、1300〜1600℃、常圧で1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、大気中(水蒸気を含んでいてもよい)で1100〜1400℃、1〜20時間、酸化処理を行うことが好ましい。なお、仮焼及び焼成は、例えば、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。
【0033】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、ハニカム構造体に利用可能である。ここで、ハニカム構造体は、例えば貴金属触媒を担持することによりDPFや触媒コンバーターとして利用される。つまり、ハニカム構造体の一利用形態は、触媒担体である。また、触媒コンバーターのうち電気加熱方式の触媒コンバーターは、高い耐熱衝撃性が要求されるため、本発明の第1の炭化珪素質多孔体を利用することが特に好ましい。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とコーディエライト粒子を64:28:8の質量割合で混合した。この混合物に、バインダーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。この成形原料を混練し、土練して円柱状の坏土を作製した。バインダーの含有量はSiC粉末とSi粉末の合計に対し7質量%であり、造孔材の含有量はSiC粉末とSi粉末の合計に対し2質量%であり、水の含有量はSiC粉末とSi粉末の合計に対し35質量%であった。SiC粉末の平均粒子径は30μmであり、Si粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。なお、SiC粒子、Si粒子及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0035】
得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いてハニカム形状に成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、ハニカム乾燥体を得た。
【0036】
得られたハニカム乾燥体を、大気雰囲気にて450℃で3時間かけて脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気(酸素分圧10
-4atm以下)にて約1450℃で2時間焼成し、更に、1200℃で4時間、酸化処理を行ってハニカム構造の炭化珪素質多孔体を得た。
【0037】
このときのハニカム構造体は、隔壁の厚さが90μmであり、セル密度が90セル/cm
2であった。また、ハニカム構造体の底面は直径93mmの円形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは100mmであった。このハニカム構造体の断面のSEM写真を
図1に示す。
【0038】
得られたハニカム構造の炭化珪素質多孔体の開気孔率は34%、強度は42MPa、平均気孔径は11μm、熱伝導率は43W/mK、平均線熱膨張係数は4.3×10
-6K
-1、体積抵抗率36Ωcmであった。また、通電時の発熱に伴う温度分布の均一性を評価した通電発熱試験では、評価が「○」であり、温度分布のムラが少なかった。耐熱衝撃性を評価した電気炉スポーリング試験では、評価が「○」であり、高い耐熱衝撃性を示した。これらの結果を表1にまとめた。
【0039】
なお、各パラメーターの値は、以下のようにして求めた値である。
・組成
ハニカム構造の炭化珪素質多孔体の組成は、粉末X線回折の内部標準法により測定した。なお、原料の組成比と炭化珪素質多孔体の組成比とのズレは1%程度であった。
・開気孔率
水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積[cm
3/g]と気相置換法による乾式自動密度測定機による見掛密度[g/cm
3]から、下記式にて算出した。
開気孔率[%]=全細孔容積/{(1/見掛密度)+全細孔容積}×100
・平均気孔径
水銀圧入法(JIS R 1655準拠)により測定した。
・強度
ハニカム構造体をセルが貫通する方向を長手方向とした試験片(縦5セル×横10セル×長さ40mm)に加工し、JIS R1601に準拠した曲げ試験によりハニカム構造体の曲げ強度を算出した後、別途計測したハニカムの開口率を用いて、下記式にて算出した。
強度=ハニカム構造体の曲げ強度/{1−(開口率/100)}
・熱伝導率
比熱と熱拡散率と嵩密度の積として算出した。なお、比熱はDSC法、熱拡散率は光交流法により測定した。また、嵩密度は下記式から算出した。
嵩密度=1/{(1/見掛密度)+全細孔容積}
・平均線熱膨張係数
JIS R1618に準拠して、室温〜800℃の平均線熱膨張係数を測定した。
・体積抵抗率
室温で4端子法により測定した。
・通電発熱試験
実施例1と同じ組成の原料を用いて、別途、板状の成形体を作製し、その成形体に上述した乾燥・脱脂・焼成・酸化処理を施し、板状の焼成体とし、その焼成体から縦30mm×横40mm×厚さ0.3mmの試験片を切り出した。その試験片の一方の長辺の頂点を電極として、1Vから500Vへ徐々に電圧を上げながら通電し、試験片の温度分布の時間変化をサーモグラフィーで測定した。このとき、電極間の中点の温度が200℃となった時点での試験片の中心部と電極間の中点の温度(200℃)との差をΔTとした。ΔTが80℃未満のとき「◎」、80℃以上〜120℃未満のとき「○」、120℃以上のとき「△」とした。つまり、「◎」、「○」、「△」は、試験片の温度分布の均一性を表す指標であり、「◎」や「○」は温度分布が比較的均一であることを示し、「△」は温度分布にムラがあることを示す。また、「×」は抵抗が高すぎて電流が流れなかったことを示す。なお、体積抵抗率の高い比較例2,4では、電圧を上げていってもなかなか電流が流れず、高電圧になったとき、一気に電流が流れて電極間中点温度は急激に上昇したが、そのときの試料中心部への熱の伝わりが遅いため、ΔTは大きくなった。
・電気炉スポーリング試験(急速冷却試験)
ハニカム構造体を電気炉にて所定温度で2h加熱し、均一な温度にした後、室温に取り出し、クラックの発生の有無を目視で観察した。このとき、所定温度を650℃としたときにクラックが発生しなかったものを「○」、650℃としたときにクラックが発生したものを「△」、それ以下の温度でクラックが発生したものを「×」とした。クラックが発生する温度が高いものほど耐熱衝撃性が高いことを示す。
【0040】
[実施例2〜17,比較例1〜5]
実施例2〜17,比較例1〜5は、表1に記載の組成とすることと、造孔材量や原料の平均粒径を微調整した以外は、実施例1に準じて炭化珪素質多孔体を製造した。なお、炭化珪素質多孔体の組成の測定結果から、実施例1〜17の酸化物相は、コーディエライトであった。ただし、ごく僅かな異相(ムライト、クリストバライト、スピネル、サフィリンなど)も存在した。比較例1〜3のコーディエライトを含まない酸化物相の主成分は、SrO−SiO
2であった。
【0041】
表1から明らかなように、通電発熱試験の評価は、実施例1〜17ではいずれも「◎」又は「○」だったのに対して、比較例1〜5はいずれも「△」又は「×」であった。また、電気炉ポーリング試験の評価は、実施例1〜17では実施例11を除き「○」だったのに対して、比較例1〜5では「△」又は「×」であった。こうしたことから、比較例1〜5の炭化珪素質多孔体に比べて、実施例1〜17の炭化珪素質多孔体は耐熱衝撃性や抵抗発熱特性に優れることがわかる。こうした試験結果について、以下に考察する。実施例1〜17では、酸化物相がコーディライト相であり、開気孔率が10〜40%であるという2つの条件を満足していたのに対して、比較例2〜5は、2つの条件の両方とも満足しておらず、比較例1は開気孔率が10〜40%という条件のみしか満足していない。このため、実施例1〜17では、良好な試験結果が得られたのに対して、比較例1〜5では、良好な結果が得られなかったと考えられる。また、実施例1〜17は、熱伝導率が30〜70W/mK、体積抵抗率が1〜50Ωcmの範囲に入ったが、比較例1〜5は、熱伝導率及び体積抵抗率の少なくとも一方がこの範囲から外れていた。このことも、実施例1〜17では、良好な試験結果が得られたのに対して、比較例1〜5では、良好な結果が得られなかった要因と考えられる。
【0042】
なお、コーディエライト相を有する比較例1と、SrO−SiO
2を主成分とする酸化物相を有する比較例4とを比較すると、比較例4は比較例1と比べて開気孔率が高いにもかかわらず、熱伝導率が高い。このことから、コーディエライトの方がSrO−SiO
2に比べて熱伝導率を高くする効果があるといえる。
【0043】
【表1】
【0044】
本出願は、2011年3月18日に出願された日本国特許出願第2011−060515号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。