(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916166
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】組織試料中の核酸の局在化された検出、又は空間的検出のための方法及び生成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20160422BHJP
C12Q 1/68 20060101ALI20160422BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20160422BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20160422BHJP
G01N 33/566 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
C12N15/00 A
C12Q1/68 AZNA
C12N15/00 F
G01N33/53 M
G01N37/00 102
G01N33/53 Y
G01N33/566
【請求項の数】55
【全頁数】95
(21)【出願番号】特願2014-504349(P2014-504349)
(86)(22)【出願日】2012年4月13日
(65)【公表番号】特表2014-513523(P2014-513523A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】EP2012056823
(87)【国際公開番号】WO2012140224
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2014年12月15日
(31)【優先権主張番号】1106254.4
(32)【優先日】2011年4月13日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513257465
【氏名又は名称】スペイシャル トランスクリプトミクス アーベー
【氏名又は名称原語表記】SPATIAL TRANSCRIPTOMICS AB
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】フライセン, ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】スタール, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ルンデベルグ, ヨアキム
【審査官】
松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0211001(US,A1)
【文献】
CONSTANTINE L,USE OF GENECHIP HIGH-DENSITY OLIGONUCLEOTIDE ARRAYS FOR GENE EXPRESSION MONITORING,LIFE SCIENCE NEWS,米国,AMERSHAM LIFE SCIENCE,1998年 1月 1日,P11-14
【文献】
science tools,amersham pharmacia biotech ,1998年,Vol.3,p.2-4
【文献】
HUMAN GENOME U95AV2,INTERNET CITATION [ONLINE],2002年10月 2日,URL,http://www.affymetrix.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織試料中の核酸の局在化された検出のための方法であって、
(a)複数のスピーシーズの捕捉プローブが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備えるアレイを提供するステップであって、
前記複数のスピーシーズの捕捉プローブが、それぞれのスピーシーズの捕捉プローブがアレイ上の別個の位置を占めるように固定化され、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーション反応のためのプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有するように配向されており、
それぞれのスピーシーズの前記捕捉プローブが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、ステップと、
(b)前記アレイ上の捕捉プローブの前記位置と、前記組織試料における位置とが関連付けられるように前記アレイを前記組織試料に接触させて、前記組織試料の核酸を前記捕捉プローブ中の前記捕捉ドメインにハイブリダイズさせるステップと、
(c)前記捕捉プローブを伸長又はライゲーションプライマーとして用いて、捕捉された核酸分子からDNA分子を生成させるステップであって、
前記伸長された又はライゲートされたDNA分子が前記位置ドメインによりタグ付けされる、ステップと、
(d)場合によってタグ付けされたDNAの相補鎖を生成し、及び/又は場合によってタグ付けされたDNAを増幅するステップと、
(e)前記タグ付けされたDNA分子及び/又はその相補体若しくはアンプリコンの少なくとも一部を前記アレイの表面から放出するステップであって、
前記一部が前記位置ドメイン又はその相補体を含む、ステップと、
(f)放出されたDNA分子の配列を直接的に又は間接的に解析するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
(g)解析された配列の情報を前記組織試料の画像と関連付けるステップであって、
前記組織試料がステップ(c)の前又は後で撮像される、ステップ、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)複数のスピーシーズの捕捉プローブが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備えるアレイを提供するステップであって、
前記複数のスピーシーズの捕捉プローブが、それぞれのスピーシーズの捕捉プローブがアレイ上の別個の位置を占めるように固定化され、かつ前記プローブが逆転写酵素(RT)プライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有するように配向されており、
それぞれのスピーシーズの前記捕捉プローブが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、ステップと、
(b)前記アレイ上の捕捉プローブの前記位置と、前記組織試料における位置とが関連付けられるように前記アレイを前記組織試料に接触させて、前記組織試料のRNAを前記捕捉プローブ中の前記捕捉ドメインにハイブリダイズさせるステップと、
(c)前記捕捉プローブをRTプライマーとして用いて、捕捉されたRNA分子からcDNA分子を生成し、場合によって前記cDNA分子を増幅するステップと、
(d)cDNA分子及び場合によってそのアンプリコンの少なくとも一部を前記アレイの表面から放出するステップであって、
放出された分子が、第一鎖及び/若しくは第二鎖cDNA分子又はそのアンプリコンであり、前記一部が前記位置ドメイン又はその相補体を含むステップと、
(e)放出されたDNA分子の配列を直接的に又は間接的に解析するステップと、場合によって、
(f)解析された配列の情報を前記組織試料の画像と関連付けるステップであって、前記組織試料がステップ(c)の前又は後で撮像される、ステップと、
を含む、
組織試料のトランスクリプトームを決定する、及び/又は解析するための方法。
【請求項4】
前記捕捉プローブがDNA分子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記捕捉プローブが、前記位置ドメインに対して5’側にあるユニバーサルドメインをさらに含み、
前記ユニバーサルドメインが、
(i)生成されたDNA分子を増幅するための増幅ドメイン及び/又は
(ii)生成されたDNA分子を前記アレイの表面から放出するための切断ドメイン
を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのスピーシーズの捕捉プローブが、異なる配列の捕捉ドメインを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
それぞれのスピーシーズの捕捉プローブの前記位置ドメインが、独自のバーコード配列を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記捕捉ドメインが、
(a)少なくとも10個のデオキシチミジン残基を含むポリT DNAオリゴヌクレオチド及び/又はランダム若しくは縮重オリゴヌクレオチド配列、又は
(b)特定の標的遺伝子又は遺伝子群に特異的な配列
を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記捕捉プローブがその5’端部により前記アレイの表面に直接的に固定化されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記捕捉プローブが、表面プローブへのハイブリダイゼーションにより前記アレイの表面に間接的に固定化されており、
前記捕捉プローブの前記捕捉ドメインが、前記アレイ上に固定化されている表面プローブの5’端部にハイブリダイズすることができる上流配列を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記表面プローブがその3’端部により前記アレイの表面に固定化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記表面プローブが、
(i)前記捕捉ドメインの少なくとも一部、
(ii)前記位置ドメイン及び
(iii)前記ユニバーサル増幅ドメインの少なくとも一部
に相補的である配列を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記相補鎖又は前記第二鎖cDNA分子が、前記タグ付けされたDNA分子又は前記cDNA分子が前記アレイの表面から放出される前に又は後で生成される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ランダムプライマーが、前記相補鎖又は前記第二鎖cDNAの合成のために使用される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ランダムプライマーが増幅ドメインを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ランダムプライマーの前記増幅ドメインが、前記捕捉プローブの前記増幅ドメインとは異なるヌクレオチド配列からなる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アダプターが、タグ付き分子若しくはその相補体又はcDNA分子の一方の又は両方の端部にライゲートされている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
配列解析に先立ってタグ付き分子又はcDNA分子を増幅するステップをさらに含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記増幅するステップが、前記アレイの前記基板からのタグ付きDNA若しくはcDNA分子の放出後に実施される、又は前記増幅するステップが前記アレイ上でインサイツで実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記増幅するステップがPCRを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記分子が、
(i)核酸切断、
(ii)変性及び/又は
(iii)物理的手段
により前記アレイの表面から放出される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記分子が、前記捕捉プローブの前記ユニバーサルドメイン又は前記位置ドメインに位置している切断ドメインの酵素的切断により放出される、請求項21(i)に記載の方法。
【請求項23】
前記分子が、熱水又はバッファーを前記アレイに適用することにより放出される、請求項21(ii)又は(iii)に記載の方法。
【請求項24】
シーケンシングに先立って放出された分子を精製するステップをさらに含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記基板が、ガラス、シリコン、ポリ−L−リジン被覆物質、ニトロセルロース、ポリスチレン、環状オレフィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリカーボネートからなる群から選択される、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記組織試料が組織切片である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記組織切片が固定組織、たとえばホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織又は急速冷凍組織、を用いて調製される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記試料をステップ(c)に先立って前記アレイに接触させた後で、前記組織試料を再水和するステップをさらに含む、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記組織試料が植物、動物又は真菌由来である、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記アレイを洗浄して残余組織を取り除くステップであって、前記アレイからの前記分子の放出に先立つステップをさらに含む、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記アレイが、前記アレイ上での前記組織試料の方向付けを可能にする少なくとも1つの位置マーカーを含む、請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記アレイが、前記アレイの表面上の別個の位置に少なくとも10、50、100、200、500、1000又は2000の位置マーカーを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記位置マーカーが、標識された、好ましくは蛍光標識されたマーカー核酸分子にハイブリダイズすることができる、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記組織試料が、光、明視野、暗視野、位相差、蛍光、反射、干渉若しくは共焦点顕微鏡又はその組み合わせを使用して撮像される、請求項2〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記組織試料が蛍光顕微鏡を使用して撮像される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
配列解析ステップが、シーケンシングステップを含み、好ましくは、シーケンシングステップが可逆的ダイターミネーターに基づくシーケンシング反応を含む、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
組織試料中の核酸の局在化された検出において使用するためのアレイを作る又は作製するための方法であって、
複数のスピーシーズの捕捉プローブをアレイ基板に直接的に又は間接的に固定化するステップを含み、
前記複数のスピーシーズの捕捉プローブが、それぞれのスピーシーズの捕捉プローブがアレイ上の別個の位置を占めるように固定化され、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーションプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有するように配向され、
それぞれのスピーシーズの前記捕捉プローブが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)(a)少なくとも10個のデオキシチミジン残基を含むポリT DNAオリゴヌクレオチド及び/又はランダム若しくは縮重オリゴヌクレオチド配列、又は(b)標的遺伝子群に特異的な配列、を含む捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、方法。
【請求項38】
以下の
(a)複数の表面プローブをアレイ基板に直接的又は間接的に固定化するステップであって、前記表面プローブが、
(i)前記捕捉ドメインのオリゴヌクレオチドの一部(前記核酸を捕捉することに関与していない部分)にハイブリダイズすることができるドメイン、
(ii)相補的位置ドメイン、及び
(iii)相補的ユニバーサルドメインを含む
ステップと、
(b)前記アレイ上に固定化された前記表面プローブに、捕捉ドメインオリゴヌクレオチド及びユニバーサルドメインオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップと、
(c)鋳型重合によりユニバーサルドメインオリゴヌクレオチドを伸長して、前記捕捉プローブの前記位置ドメインを生成するステップと、
(d)前記位置ドメインを前記捕捉ドメインオリゴヌクレオチドにライゲートして、捕捉オリゴヌクレオチドを作製するステップ
のうちのいずれか1つ又は複数をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
組織試料中の核酸の局在化された検出において使用するためのアレイであって、
複数のスピーシーズの捕捉プローブが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備え、
前記複数のスピーシーズの捕捉プローブが、それぞれのスピーシーズの捕捉プローブがアレイ上の別個の位置を占めるように固定化されており、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーションプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有するように配向されており、
それぞれのスピーシーズの前記捕捉プローブが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)(a)少なくとも10個のデオキシチミジン残基を含むポリT DNAオリゴヌクレオチド及び/又はランダム若しくは縮重オリゴヌクレオチド配列、又は(b)標的遺伝子群に特異的な配列、を含む捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、
アレイ。
【請求項40】
前記捕捉プローブが請求項4〜7、9又は10のいずれか一項に定義されるとおりであり、
前記表面プローブが請求項11又は12に定義されるとおりであり、
前記基板が請求項25に定義されるとおりであり、
前記組織試料が請求項26、27又は28のいずれか一項に定義されるとおりであり、
前記アレイが請求項31又は32に定義されるとおりであり、
前記位置マーカーが請求項33に定義されるとおりである、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項41】
前記捕捉プローブが請求項4〜7、9又は10のいずれか一項に定義されるとおりであり、
前記表面プローブが請求項11又は12に定義されるとおりであり、
前記基板が請求項25に定義されるとおりであり、
前記組織試料が請求項26、27又は28のいずれか一項に定義されるとおりであり、
前記アレイが請求項31又は32に定義されるとおりであり、
前記位置マーカーが請求項33に定義されるとおりである、請求項39に記載のアレイ。
【請求項42】
(a)複数のスピーシーズの捕捉プローブが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備えるアレイを提供するステップであって、
前記複数のスピーシーズの捕捉プローブが、それぞれのスピーシーズの捕捉プローブがアレイ上の別個の位置を占めるように固定化され、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーション反応のためのプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有するように配向されており、
それぞれのスピーシーズの前記捕捉プローブが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、ステップと、
(b)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置と、前記組織試料中の位置とが関連付けられるように前記アレイを前記組織試料に接触させて、前記組織試料のDNAを前記捕捉プローブの前記捕捉ドメインにハイブリダイズさせるステップと、
(c)前記組織試料中のDNAを断片化するステップであって、
前記断片化が、ステップ(b)において前記アレイを前記組織試料に接触させる前に、間に又は後で実行される、ステップと、
(d)捕捉されたDNA断片を鋳型として用いてプライマー伸長反応において前記捕捉プローブを伸長させて伸長されたDNA分子を生成する、又は捕捉されたDNA断片をライゲーション反応において前記捕捉プローブにライゲートして、ライゲートされたDNA分子を生成するステップであって、
前記伸長された又はライゲートされたDNA分子が前記位置ドメインによりタグ付けされる、ステップと、
(e)場合によって、タグ付けされたDNAの相補鎖を生成する及び/又は場合によって、タグ付けされたDNAを増幅するステップと、
(f)前記アレイの表面から前記タグ付けされたDNA分子並びに/又はその相補体及び/若しくはアンプリコンの少なくとも一部を放出するステップであって、
前記一部が前記位置ドメイン又はその相補体を含む、ステップと、
(g)放出されたDNA分子の配列を直接的に又は間接的に解析する(たとえば、シーケンシングする)ステップと、場合によって
(h)解析された配列の情報を前記組織試料の画像と関連付けるステップであって、
前記組織試料がステップ(d)の前に又は後で撮像される、ステップと、
を含む、
組織試料中のDNAの局在化された検出のための方法。
【請求項43】
(a)複数のスピーシーズの捕捉プローブが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備えるアレイを提供するステップであって、
前記複数のスピーシーズの捕捉プローブが、それぞれのスピーシーズの捕捉プローブがアレイ上の別個の位置を占めるように固定化され、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーション反応のためのプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有するように配向されており、
それぞれのスピーシーズの前記捕捉プローブが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、ステップと、
(b)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置と、組織試料中の位置とが関連付けられるように前記アレイを前記組織試料に接触させるステップと、
(c)前記組織試料中のDNAを断片化するステップであって、
前記断片化が、ステップ(b)において前記アレイを前記組織試料に接触させる前に、間に又は後で実行される、ステップと、
(d)前記DNA断片に、前記捕捉ドメインにハイブリダイズすることができる結合ドメインを与えるステップと、
(e)前記DNA断片を前記捕捉プローブ中の前記捕捉ドメインにハイブリダイズさせるステップと、
(f)捕捉されたDNA断片を鋳型として用いてプライマー伸長反応において前記捕捉プローブを伸長させて、伸長されたDNA分子を生成する、又は捕捉されたDNA断片をライゲーション反応において前記捕捉プローブにライゲートして、ライゲートされたDNA分子を生成するステップであって、
前記伸長された又はライゲートされたDNA分子が前記位置ドメインによりタグ付けされる、ステップと、
(g)場合によって、タグ付けされたDNAの相補鎖を生成する及び/又は場合によって、タグ付けされたDNAを増幅するステップと、
(h)前記アレイの表面から前記タグ付けされたDNA分子並びに/又はその相補体及び/若しくはアンプリコンの少なくとも一部を放出するステップであって、
前記一部が前記位置ドメイン又はその相補体を含む、ステップと、
(i)放出されたDNA分子の配列を直接的に又は間接的に解析する(たとえば、シーケンシングする)ステップと、場合によって
(j)解析された配列の情報を前記組織試料の画像と関連付けるステップであって、
前記組織試料がステップ(f)の前に又は後で撮像される、ステップと、
を含む、方法。
【請求項44】
アレイの基板が、シーケンシングプラットフォームとして使用するために適したものである、請求項1〜38、40、42又は43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
アレイの基板が、次世代シーケンシング技術において使用するために適したものである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
捕捉プローブが、ブリッジ増幅により固定化されたものである、請求項1〜38、40、42又は43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
それぞれのスピーシーズの捕捉プローブが、ブリッジ増幅により局所的クローンコロニーが形成されるようにアレイ基板上に固定化され、それによりそれぞれのスピーシーズの捕捉プローブがアレイ上の別個の位置を占める、請求項1〜38、40、42又は43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
アレイがビーズアレイである、請求項1〜38、40、42又は43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
それぞれのスピーシーズの捕捉プローブが、異なるビーズアレイに固定化され、それによりそれぞれのスピーシーズの捕捉プローブがアレイ上の別個の位置を占める、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
アレイの基板が、シーケンシングプラットフォームとして使用するために適したものである、請求項39又は41に記載のアレイ。
【請求項51】
アレイの基板が、次世代シーケンシング技術において使用するために適したものである、請求項50に記載のアレイ。
【請求項52】
捕捉プローブが、ブリッジ増幅により固定化されたものである、請求項39又は41に記載のアレイ。
【請求項53】
それぞれのスピーシーズの捕捉プローブが、ブリッジ増幅により局所的クローンコロニーが形成されるようにアレイ基板上に固定化され、それによりそれぞれのスピーシーズの捕捉プローブがアレイ上の別個の位置を占める、請求項39又は41に記載のアレイ。
【請求項54】
アレイがビーズアレイである、請求項39又は41に記載のアレイ。
【請求項55】
それぞれのスピーシーズの捕捉プローブが、異なるビーズアレイに固定化され、それによりそれぞれのスピーシーズの捕捉プローブがアレイ上の別個の位置を占める、請求項54に記載のアレイ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は一般的には、組織試料中の核酸の局在化された検出、又は空間的検出に関する。核酸はDNAでもRNAであってもよい。したがって、本発明は、組織試料、たとえば個人の細胞における、遺伝子の局在化、分布若しくは発現についての空間情報、又は実際に、任意のゲノム変異(必ずしも遺伝子中ではない)の局在化若しくは分布についての空間的情報を得るために、RNA、たとえば、RNA転写物又はゲノムDNAを検出する及び/又は解析するための方法を提供する。したがって、本発明は空間ゲノミクス及び空間トランスクリプトミクスを可能にする。
【0002】
より詳細には、本発明は、組織試料のトランスクリプトーム又はゲノム、特に包括的トランスクリプトーム又はゲノムを決定する及び/又は解析するための方法に関する。特に、前記方法は、組織試料中のゲノム配列の分布、場所又は発現を解析するための定量的及び/又は定性的方法であって、組織試料内の空間的発現又は分布又は場所パターンが維持される方法に関する。したがって、前記新しい方法は、「空間トランスクリプトミクス」又は「空間ゲノミクス」を実施するためのプロセスであって、使用者が、組織試料中における発現パターン又は発現された遺伝子若しくは存在する遺伝子若しくはゲノム遺伝子座の場所/分布パターンを同時に決定するのを可能にするプロセスを提供する。
【0003】
本発明は、特に、高処理DNAシーケンシング技術と結びついたアレイ技術に基づいており、このアレイ技術により、組織試料中の核酸分子(たとえば、RNA又はDNA分子)、特にmRNA又はDNAを捕捉し位置タグで標識することが可能となる。このステップに続いてDNA分子が合成され、塩基配列が決定されて解析され、組織試料のありとあらゆる部分においてどの遺伝子が発現されているかが決定される。有利なことに、組織試料におけるそれぞれの細胞の個々別々の特異的トランスクリプトームを同時に得ることができる。それ故に、本発明の方法は、組織試料内の個々の細胞からの平行性の高い網羅的トランスクリプトームサインを、前記調査された組織試料内の空間的情報を失うことなく提供すると言ってもよい。本発明は、本発明の方法を実施するためのアレイ及び本発明のアレイを作製するための方法も提供する。
【0004】
ヒト身体は100兆個を超える細胞を含み、250種類を超える異なる器官及び組織に組織化されている。脳などの複雑な器官の発生及び組織化は理解からは程遠く、定量的方法を使用してそのような組織において発現される遺伝子の発現を精査し、そのような組織の発生及び機能を制御する遺伝子を調査し決定する必要性がある。器官それ自体は、栄養輸送、防御、等などのあらゆる身体機能を調整し維持することを可能にする分化細胞の混合体である。その結果、細胞機能は、特定の組織構造内での細胞の位置及びその組織内で前記細胞が他の細胞と共有する相互作用に、直接的にも間接的にも依存している。それ故に、これらの相互作用が組織内のそれぞれの細胞にどのような影響を与えているのかを転写レベルで解きほぐす必要性がある。
【0005】
RNAディープシーケンシングによる最近の所見で、転写物の大部分がヒト株化細胞で検出できること及びヒトタンパク質コード遺伝子の大部分(75%)が大半の組織で発現されていることが実証された。同様に、ヒトゲノムのうちの1%の詳細な研究により、染色体が偏在的に転写されていること及びすべての塩基の大部分が一次転写物に含まれていることが明らかになった。したがって、転写装置は全体レベルでは乱交雑(promiscuous)であると言える。
【0006】
RNA翻訳、分解などの速度はいずれか1つの転写物から産生されるタンパク質の量に影響を与えることになるので、転写物はタンパク質存在量の代用に過ぎないことが周知である。この点に関して、ヒト器官及び組織の最近の抗体ベースの解析によれば、組織特異性は、空間と時間におけるタンパク質レベルの正確な調節により達成されること及び身体中の異なる組織はどのタンパク質が発現されるのかではなく、それぞれのタンパク質がどの程度産生されるかを制御することによりその独自の特徴を獲得することが示唆されている。
【0007】
しかし、それに続く包括的研究では、トランスクリプトームとプロテオームの相関が比較されて、すべての遺伝子の大多数が発現されていることが明らかにされた。興味深いことに、個々の遺伝子産物についてはRNAレベルの変化とタンパク質レベルの変化の間には高い相関関係が存在することが明らかにされ、タンパク質の機能的役割との関連で個々の細胞中のトランスクリプトームを研究するのが生物学的に有用であることを示している。
【0008】
実際、組織中の組織学及び発現パターンの解析は、生体医学研究及び診断学の礎石である。組織学は、異なる染色技法を利用して、100年以上前に先ず健康な器官の基本的構造組織及び一般病理において起こる変化を確証した。この分野の発展により、免疫組織化学によるタンパク質分布及びインサイツハイブリダイゼーションによる遺伝子発現を研究できるようになった。
【0009】
しかし、ますます進歩する組織学技法及び遺伝子発現技法が並行して発展してきたため、画像処理とトランスクリプトーム解析が分離され、本発明の方法まで、空間分解能での包括的トランスクリプトーム解析に利用できる実行可能な方法はなかった。
【0010】
インサイツ技法に代わるものとして、又はインサイツ技法に加えて、タンパク質及び核酸のインビトロ解析のための、すなわち全組織試料、単一細胞型又は単一細胞からでも分子を抽出し、たとえば、ELISA、qPCR、等により前記抽出物中の特定の分子を定量することによる方法が発達してきた。
【0011】
遺伝子発現解析の最近の発展により、マイクロアレイ又はRNAシーケンシングを使用して組織の完全なトランスクリプトームを評価することの可能性が生じ、そのような発展は生物学的過程の理解と診断学のために役立ってきた。しかし、トランスクリプトーム解析は典型的には全組織から(又は全生物からでも)抽出されるmRNAに関して実施され、トランスクリプトーム解析のために比較的小さな組織区域又は個々の細胞を収集するための方法は典型的には労働集約的で費用がかかり精度が低い。
【0012】
それ故に、マイクロアレイ又はRNAの次世代シーケンシングに基づく遺伝子発現研究の大多数が、多くの細胞を含有する代表試料を使用する。したがって、その結果は調査される遺伝子の平均発現レベルを表す。表現型的に異なる細胞の分離が、いくつかの場合には包括的遺伝子発現プラットフォームと共に使用されてきており(Tang F et al.、Nat Protoc.2010年;5:516〜35頁;Wang D & Bodovitz S、Trends Biotechnol.2010年;28:281〜90頁)、細胞間変異について極めて正確な情報をもたらした。しかし、無傷の組織において高分解能で転写活性を研究する高処理法は、現在まで利用可能になっていない。
【0013】
したがって、遺伝子発現パターンの解析のための既存の技法は、空間的転写情報を提供するのは一度に1個の又は一握りの遺伝子についてのみである又は位置情報を失うという代償を払って試料中の遺伝子すべての転写情報を提供する。それ故に、試料中のそれぞれの細胞のトランスクリプトームを同時に、個別に、特異的に決定する、すなわち空間的分解能を備えたトランスクリプトーム情報をもたらす組織試料中の包括的遺伝子発現解析を可能にする方法が求められていることは明らかであり、本発明はこの要求に取り組んでいる。
【0014】
本発明の方法及び生成物の新規のアプローチは、現在確立しているアレイ及びシーケンシング技術を利用して、転写物ごとの位置情報は保持したまま、試料中の遺伝子すべての転写情報をもたらす。これは生命科学における画期的な出来事を表していることは当業者には明らかとなるであろう。前記新技術は、いわゆる「空間トランスクリプトミクス」という新分野を開き、これによりすべての多細胞生物における組織発生並びに組織及び細胞機能の理解に深みのある結果がもたらされる可能性が高い。そのような技法は、疾患状態の原因及び進行を理解すること並びにそのような疾患、たとえば癌に対する効果的な治療を開発することに特に有用となることが明らかであろう。本発明の方法は数多くの病状の診断においても使用されることになる。
【0015】
最初はトランスクリプトーム解析という目的を念頭において考えていたが、下で詳細に説明されるように、本発明の原理及び方法はDNAの解析にも適用され、それ故にゲノム解析(「空間ゲノミクス」)にも適用することができる。したがって、本発明はもっとも広くは、核酸全般の検出及び/又は解析に関する。
【0016】
アレイ技術、特にマイクロアレイは、スタンフォード大学での研究から生まれ、少量のDNAオリゴヌクレオチドが首尾よくガラス表面に整然とした配置、いわゆる「アレイ」で付着され、そのアレイを使用して45の遺伝子の転写がモニターされた(Schena M et al.、Science.1995年;270:368〜9、371頁)。
【0017】
それ以来、世界中の研究者たちがマイクロアレイ技術を使用して30000件を超える論文を発表してきた。様々な適用、たとえば一塩基多型(SNP)を検出する又は変異ゲノムの遺伝子型を同定する若しくは再シーケンシングするための複数種類のマイクロアレイが開発されており、マイクロアレイ技術の重要な使用は遺伝子発現の研究を目的としていた。実際、遺伝子発現マイクロアレイは特定の試料における発現される遺伝物質のレベルを解析する手段として生み出され、実質的利益は多くの遺伝子の発現レベルを同時に比較することができる点である。いくつかの市販のマイクロアレイプラットフォームがこれらの種類の実験に利用することが可能であるが、特別注文の遺伝子発現アレイを作製することも可能になってきた。
【0018】
遺伝子発現研究におけるマイクロアレイの使用は現在では普通であるが、新しいさらに網羅的ないわゆる「次世代DNAシーケンシング」(NGS)技術は多くの適用、たとえば徹底的(in−depth)トランスクリプトーム解析でDNAマイクロアレイに取って代わり始めている。
【0019】
超高速ゲノムシーケンシングのためのNGS技術の開発は生命科学における画期的な出来事を表している(Petterson E et al.、Genomics.2009年;93:105〜11頁)。これらの新しい技術のおかげでDNAシーケンシングの経費は劇的に減り、特定の個体のゲノムを含む高等生物のゲノムを前例のない速度で決定できるようになった(Wade CM et al.、Science.2009年;326:865〜7頁;Rubin J et al.Nature 2010年;464:587〜91頁)。高処理ゲノミクスの新たな前進で生物学研究風景は姿を変え、ゲノムの完全な特徴付けに加えて完全なトランスクリプトームをデジタル及び定量的形式で研究することも可能である。これらの網羅的データセットを視覚化し統合するバイオインフォマティクスツールも近年かなり改良されてきた。
【0020】
しかし、驚くべきことに、組織学技法、マイクロアレイ技法とNGS技法を独自に組み合わせることにより、組織試料中の複数の細胞から、その情報が二次元空間分解能により特徴付けられる網羅的転写又はゲノム情報が得られることが分かってきた。したがって、一方の極では本発明の方法を使用して、細胞を組織試料中のその背景に保持したまま、試料中の1個の細胞の1個の遺伝子の発現を解析することが可能である。もう一方の極、及び本発明の好ましい態様では、前記方法を使用して、試料中のありとあらゆる細胞、又は実質的にすべての細胞におけるすべての遺伝子の発現、すなわち組織試料の包括的空間的発現パターンを同時に決定することが可能である。本発明の方法により中間体解析を実施することも可能になることは明らかであろう。
【0021】
そのもっとも簡単な形態では、本発明は以下のように要約して説明することができる。本発明は、「アレイ」を作製するために、物体基板、たとえば、ガラススライド上に、独自の位置タグ(ドメイン)も含む逆転写(RT)プライマーを整列配置させる必要がある。独自の位置タグはアレイ上のRTプライマーの場所(アレイのフィーチャー)に対応する。薄い組織切片をアレイ上に置き、逆転写反応が物体スライド上の組織切片において実施される。組織試料中のRNAが結合する(又はハイブリダイズする)、RTプライマーは、結合したRNAを鋳型として用いて伸長されてcDNAをもたらし、したがってcDNAはアレイ表面に結合している。RTプライマー中の独自の位置タグの結果として、それぞれのcDNA鎖は組織切片中の鋳型RNAの位置についての情報を担っている。組織切片は、cDNA合成ステップの前又は後で、視覚化又は撮像してもよく、たとえば染色して撮像して、cDNA分子中の位置タグを組織試料内の位置に関連付けることができるようにしてもよい。cDNAはシーケンシングされ、正確な位置情報を備えたトランスクリプトームが得られる。前記手順の概略図は
図1に示されている。次に、配列データは組織試料中の位置とマッチさせることができ、これにより、組織切片と一緒に配列データを、たとえばコンピュータを使用して視覚化して、たとえば、組織にわたって対象のどんな遺伝子の発現パターンでも表示することが可能になる(
図2)。同様に、コンピュータ画面上で組織切片の異なる区域に印をつけ、対象のどんな選択された区域間の差次的に発現された遺伝子に関する情報でも得ることが可能だと考えられる。本発明の方法は、mRNA集団を研究する現在の方法を使用して得られるデータと全く対照的なデータが得られることは明らかであろう。たとえば、インサイツハイブリダイゼーションに基づく方法は、単一mRNA転写物の相対的情報を提供するだけである。したがって、本発明の方法は現在のインサイツ技術よりもはっきりした利点を有する。本発明の方法から得られる包括的遺伝子発現情報は、同時発現情報及び転写物存在量の量的推計も与える。これは、どんな種でも、たとえば動物、植物、真菌におけるどんな組織の解析にも利用可能な一般的に適用可能な戦略であることは明らかであろう。
【0022】
上記のように及び下にさらに詳細に説明されるように、この基本的方法論は、たとえば1つ又は複数の特定の変異を含む細胞を組織試料内で同定するためにゲノムDNAの解析にまで容易に拡大することができるのは明らかであろう。たとえば、ゲノムDNAを断片化してプライマー(上に記載されるRTプライマーと同等)にハイブリダイズさせてもよく、このプライマーは、断片化されたDNAを捕捉して(たとえば、前記プライマーと相補的である配列を有するアダプターを断片化されたDNAにライゲートしてもよいし、たとえば配列の端部に追加のヌクレオチド、たとえばポリAテールを組み込む酵素を使用して断片化されたDNAを伸長させてプライマーに相補的である配列を生成してもよい)、捕捉分子に相補的鎖の合成をプライミングすることができる。解析の残りのステップは上記の通りでもよい。それ故に、トランスクリプトーム解析に関連して下に記載される本発明の具体的実施形態は、必要に応じてゲノムDNAを解析する方法に用いてもよい。
【0023】
位置情報をトランスクリプトーム又はゲノム情報に結び付けることに大きな価値があることは上記の説明から見て取れるであろう。たとえば、これにより、たとえば癌研究及び診断学を含む数多くの適用にその有用性を見出せる高分解能での包括的遺伝子発現マッピングが可能になる。
【0024】
さらに、本明細書に記載される方法は、組織試料の包括的トランスクリプトームの解析のための既に記載されている方法とは著しく異なっていることは明らかであり、これらの違いが数多くの利点をもたらす。本発明は、組織切片を使用してもアレイ表面にカップリングされているプライマー(たとえば、逆転写プライマー)によりプライミングされるDNA(たとえば、cDNA)の合成に干渉しないという驚くべき発見に基づいている。
【0025】
したがって、その最初のもっとも広い態様では、本発明は、組織試料中の核酸の局在化された検出のための方法であって、
(a)捕捉プローブの複数のスピーシーズが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備えるアレイを提供するステップであって、
前記捕捉プローブの複数のスピーシーズが、それぞれのスピーシーズがアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーション反応のためのプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、
前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、ステップと、
(b)前記アレイ上の捕捉プローブの前記位置と、前記組織試料における位置とが関連付けられるように前記アレイを前記組織試料に接触させて、前記組織試料の核酸を前記捕捉プローブ中の前記捕捉ドメインにハイブリダイズさせるステップと、
(c)前記捕捉プローブを伸長又はライゲーションプライマーとして用いて、捕捉された核酸分子からDNA分子を生成させるステップであって、
前記伸長された又はライゲートされたDNA分子が前記位置ドメインによりタグ付けされる、ステップと、
(d)場合によってタグ付けされたDNAの相補鎖を生成し、及び/又は場合によってタグ付けされたDNAを増幅するステップと、
(e)前記タグ付けされたDNA分子及び/又はその相補体若しくはアンプリコンの少なくとも一部を前記アレイの表面から放出するステップであって、
前記一部が前記位置ドメイン又はその相補体を含む、ステップと、
(f)放出されたDNA分子の配列を直接的に又は間接的に解析するステップと、
を含む方法を提供する。
【0026】
本発明の方法は、当技術分野で公知の空間トランスクリプトミクスのための他の方法よりも著しい前進を表している。たとえば、本明細書に記載される方法により、組織試料中のすべての転写物の包括的空間的プロファイルが得られる。さらに、すべての遺伝子の発現をアレイ上の位置又はフィーチャーごとに定量することができ、これにより多数の解析を単一のアッセイからのデータに基づいて実施できるようになる。したがって、本発明の方法により、単一の組織試料中のあらゆる遺伝子の空間的発現を検出する及び/又は定量することが可能になる。さらに、標準マイクロアレイに似て、転写物の存在量が直接的に視覚化(たとえば蛍光により)されないので、前記転写物が同じ試料中に極めて異なる濃度で存在していても単一試料中の遺伝子の発現を同時に測定することができる。
【0027】
したがって、第二のより詳細な態様では、本発明は、組織試料のトランスクリプトームを決定する、及び/又は解析するための方法であって、
(a)捕捉プローブの複数のスピーシーズが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備えるアレイを提供するステップであって、
前記捕捉プローブの複数のスピーシーズが、それぞれのスピーシーズがアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブが逆転写酵素(RT)プライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、
前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、ステップと、
(b)前記アレイ上の捕捉プローブの前記位置と、前記組織試料における位置とが関連付けられるように前記アレイを前記組織試料に接触させて、前記組織試料のRNAを前記捕捉プローブ中の前記捕捉ドメインにハイブリダイズさせるステップと、
(c)前記捕捉プローブをRTプライマーとして用いて、捕捉されたRNA分子からcDNA分子を生成するステップであって、場合によって前記cDNA分子を増幅するステップと、
(d)cDNA分子及び/又は場合によってそのアンプリコンの少なくとも一部を前記アレイの表面から放出するステップであって、放出された分子は第一鎖及び/若しくは第二鎖cDNA分子又はそのアンプリコンであり、前記一部には前記位置ドメイン又はその相補体が含まれるステップと、
(e)放出された分子の配列を直接的に又は間接的に解析するステップと
を含む方法を提供するものとみることができる。
【0028】
下にさらに詳細に説明されているように、核酸解析のいかなる方法も解析ステップにおいて使用することができる。典型的にはこれにはシーケンシングが含まれることがあるが、実際の配列決定を実施する必要はない。たとえば、配列特異的解析方法を使用してもよい。たとえば、配列特異的増幅反応を、たとえば位置ドメインに及び/又は特定の標的配列、たとえば検出されることになる特定の標的DNA(すなわち、特定のcDNA/RNA又は遺伝子、等に対応する)に特異的であるプライマーを使用して実施してもよい。例となる解析法は配列特異的PCR反応である。
【0029】
ステップ(e)で得られる配列解析情報を使用して、試料中のRNAに関する空間的情報を得てもよい。言い換えると、配列解析情報は試料中のRNAの場所に関する情報を提供することができる。この空間的情報は、決定される配列解析情報の性質から導かれることがあり、たとえば、この空間的情報は使用される組織試料との関連でそれ自体が空間的情報価値のある場合がある特定のRNAの存在を明らかにすることがある及び/又は空間的情報(たとえば、空間的局在化)はシーケンシング情報と相俟ってアレイ上の組織試料の位置から導かれることがある。したがって、前記方法は、たとえば、位置タグ及び組織試料中の位置とのその相関関係によって、単に配列解析情報を組織試料中の位置と関連付けることを含んでいてもよい。しかし、上記のように、空間的情報は、都合の良いことに、配列解析データを組織試料の画像と関連付けることにより得られることもあり、これは本発明の1つの好ましい実施形態を表している。したがって、好ましい実施形態では、前記方法は、
(f)前記配列解析情報を前記組織試料の画像と関連付け、組織試料がステップ(c)の前又は後で撮像されるステップ
も含む。
【0030】
そのもっとも広い意味で、本発明の方法を組織試料中の核酸の局在化された検出のために使用してもよい。したがって、一実施形態では、本発明の方法は組織試料のトランスクリプトーム又はゲノムのすべてを、たとえば組織試料の包括的トランスクリプトームを決定する及び/又は解析するために使用してもよい。しかし、前記方法はこれに限定されることはなく、トランスクリプトーム又はゲノムのすべて又は一部を決定する及び/又は解析することを包含する。したがって、前記方法はトランスクリプトーム又はゲノムの一部又はサブセット、たとえば遺伝子のサブセットに対応するトランスクリプトーム、たとえば、たとえば特定の疾患又は状態、組織型、等に関連する特定の遺伝子のセットを決定する及び/又は解析することを含んでいてもよい。
【0031】
別の態様から見ると、上で提示された方法ステップは、空間的に限定されたトランスクリプトーム又はゲノム、特に組織試料の空間的に限定された包括的トランスクリプトーム又はゲノムを得る方法を提供するものとみることが可能である。
【0032】
別の見方をすれば、本発明の方法は、組織試料中のDNAであれRNAであれ、核酸の局在化された若しくは空間的検出のための、又は組織試料中の核酸(DNA又はRNA)の局所的若しくは空間的決定及び/若しくは解析のための方法とみることもできる。特に、前記方法は、組織試料中の遺伝子発現又はゲノム変動の局在化された若しくは空間的検出又は決定及び/若しくは解析のために使用してもよい。局在化された/空間的検出/決定/解析とは、RNA又はDNAが組織試料中の細胞又は組織内のその天然の位置又は場所に局在していることがあることを意味する。したがって、たとえば、RNA又はDNAは試料中の細胞若しくは細胞の群若しくは細胞の型に又は組織試料内の区域の特定の領域に局在していてもよい。RNA又はDNA、たとえば発現された遺伝子又はゲノム遺伝子座の天然の場所又は位置(又は言い換えれば、組織試料中のRNA若しくはDNAの場所若しくは位置)、を決定してもよい。
【0033】
本発明は、捕捉プローブの複数のスピーシーズが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備え、前記捕捉プローブの複数のスピーシーズが、それぞれのスピーシーズがアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーションプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)前記アレイに接触させる前記組織試料のRNAを捕捉するための捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、本発明の方法において使用するためのアレイを提供するものとみることもできる。
【0034】
関連する態様では、本発明は、捕捉プローブの複数のスピーシーズが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備え、前記捕捉プローブの複数のスピーシーズが、それぞれのスピーシーズがアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーションプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、前記アレイに接触させる組織試料のRNAを捕捉するように、前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、アレイの使用も提供する。
【0035】
好ましくは、前記使用は、組織試料のトランスクリプトーム、特に包括的トランスクリプトームを決定する及び/又は解析することを目的とし、
(a)前記捕捉プローブをRTプライマーとして用いて捕捉されたRNA分子からcDNA分子を生成し、場合によって前記cDNA分子を増殖するステップと、
(b)cDNA分子及び/又は場合によってそのアンプリコンの少なくとも一部をアレイの表面から放出するステップであって、前記放出された分子が第一鎖及び/又は第二鎖cDNA分子でも又はそのアンプリコンであってもよく、前記一部が位置ドメイン又はその相補体を含むステップと、
(c)放出された分子の配列を直接的に又は間接的に解析するステップと、場合によって
(d)前記配列解析情報を前記組織試料の画像と関連付け、前記組織試料がステップ(a)の前又は後で撮像されるステップと
をさらに含む。
【0036】
したがって、本発明のアレイを使用して、前記アレイに接触させる組織試料のRNA、たとえばmRNAを捕捉してもよいことが理解されるであろう。前記アレイは、組織試料の部分的若しくは包括的トランスクリプトームを決定する及び/若しくは解析するために又は組織試料の空間的に限定された部分的若しくは包括的トランスクリプトームを得るために使用してもよい。したがって、本発明の方法は、組織試料中の1つ又は複数の遺伝子の空間的発現を定量する方法とみることもできる。別の方法で表現すれば、本発明の方法を使用して、組織試料中の1つ又は複数の遺伝子の空間的発現を検出してもよい。さらに別の方法では、本発明の方法を使用して、組織試料内の1つ又は複数の位置で1つ又は複数の遺伝子の発現を同時に決定してもよい。さらに、前記方法は、二次元空間分解能での組織試料の部分的又は包括的トランスクリプトーム解析のための方法とみることもできる。
【0037】
RNAは細胞中に存在することのあるいかなるRNA分子でもよい。したがって、RNAは、mRNA、tRNA、rRNA、ウイルスRNA、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、piwi結合RNA(piRNA)、リボザイマルRNA、アンチセンスRNA又は非コードRNAでもよい。しかし、好ましくは、RNAはmRNAである。
【0038】
捕捉されたRNAからcDNAを生成する上記の方法におけるステップ(c)(上で提示された使用の好ましい記述におけるステップ(a)に相当する)は、cDNAの合成に関係するとみることもできるであろう。この合成は、捕捉されたRNAを鋳型として用いて、RTプライマーとして機能する捕捉プローブを伸長する、捕捉されたRNAの逆転写のステップを含むことになる。そのようなステップはいわゆる第一鎖cDNAを生成する。下でさらに詳細に説明されるように、第二鎖cDNA合成は、場合によってアレイ上で行われてもよく、又はアレイからの第一鎖cDNAの放出後別々のステップで行われてもよい。下でもさらに詳細に説明されるように、ある種の実施形態では、第二鎖合成は放出された第一鎖cDNA分子の増幅の第一ステップで行われてもよい。
【0039】
核酸解析一般、特にDNA解析との関連において使用するためのアレイは、下で考察され説明される。RNAとの関連において使用するためのアレイ及び捕捉プローブとの関係で本明細書に記載される具体的詳細及び実施形態は、DNAを用いて使用するためのアレイを含むそのようなアレイすべてに等しく(必要に応じて)適用する。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「複数の」は、2つ若しくはそれよりも多い、又は少なくとも2つ、たとえば3、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、400、500、1000、2000、5000、10000又はそれよりも多い、等を意味する。したがって、たとえば、捕捉プローブの数は、前述の数のうちのいずれか2つの間のどんな範囲のどんな整数でもよい。しかし、何百、何千、何万、何十万又は何百万の捕捉プローブでも有する従来型のアレイを使用できることが想定されていることは認識されるであろう。
【0041】
したがって、本明細書で概説される方法は、組織試料、たとえば組織試料の薄切片又は「切片」内の単一細胞すべてから転写物を捕捉し標識するための「捕捉プローブ」を含む高密度核酸アレイを利用する。解析のための組織試料又は切片は、切片内の空間的情報が保持されるように、高度に平行化された形式で作製される。細胞ごとに捕捉されたRNA(好ましくはmRNA)分子、又は「トランスクリプトーム」はcDNAに転写され、得られたcDNA分子は、たとえば高処理シーケンシングにより解析される。得られたデータは元の組織試料、たとえば切片の画像と整列配置させた核酸プローブに取り込まれているいわゆるバーコード配列(又は、位置ドメインとして本明細書で定義されたIDタグ)を通じて関連付けることができる。
【0042】
高密度核酸アレイ又はマイクロアレイは、本明細書に記載される空間的トランスクリプトーム標識化法の中核的構成要素である。マイクロアレイは分子生物学で使用されるマルチプレックス技術である。典型的マイクロアレイは、整列配置された一連のオリゴヌクレオチドの微細なスポットからなる(何十万、一般には何万のスポットを1つのアレイ上に組み込むことができる)。それぞれの核酸(オリゴヌクレオチド)スポット(オリゴヌクレオチド/核酸分子のそれぞれのスピーシーズ)の別個の位置は「フィーチャー」として知られ(それ故に、上に提示される方法においては、捕捉プローブそれぞれのスピーシーズはそのアレイの特異的フィーチャーとみることもでき、それぞれのフィーチャーはアレイ上の別個の位置を占める)、典型的にはそれぞれの別々のフィーチャーは、「プローブ」(又は「リポーター」)として知られる特定のDNA配列(「スピーシーズ」)をピコモル(10
−12モル)の範囲で含んでいる。典型的には、これらの配列は、cDNA又はcRNA試料(又は「標的」)が高厳密ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができる遺伝子又は他の核酸エレメントの短いセクションであることが可能である。しかし、下に説明されるように、本発明のプローブは標準マイクロアレイのプローブとは異なる。
【0043】
遺伝子発現マイクロアレイでは、プローブ−標的ハイブリダイゼーションは通常、標的のすべてに組み込まれている視覚シグナル、たとえばフルオロフォア、銀イオン又は化学発光標識の検出により検出され定量される。視覚シグナルの強度は試料中のそれぞれの標的核酸の相対的存在量と相関している。アレイは何万個ものプローブを含有することができるので、マイクロアレイ実験は多くの遺伝子試験を平行して遂行することが可能である。
【0044】
標準マイクロアレイでは、プローブは、化学マトリックス、たとえばエポキシシラン、アミノシラン、リジン、ポリアクリルアミド、等への共有結合により固体表面又は基板に付着される。基板は典型的には、ガラス、プラスチック又はシリコンチップ若しくはスライドであるが、他のマイクロアレイプラットフォーム、たとえば微小ビーズが知られている。
【0045】
プローブはいかなる適切な手段によって本発明のアレイに付着させてもよい。好ましい実施形態では、プローブは、化学的固定化によりアレイの基板に固定化される。この固定化は、化学反応に基づく基板(支持材)とプローブ間の相互作用であってもよい。そのような化学反応は典型的には、熱又は光を介したエネルギーの入力に頼ってはいないが、熱、たとえば化学反応のための一定の最適温度又は一定の波長の光のどちらかを適用することにより増強することができる。たとえば、化学的固定化は基板上の官能基とプローブ上の対応する機能要素間で起こることがある。プローブ中のそのような対応する機能要素は、プローブの固有の化学基、たとえばヒドロキシル基でもよく、又は追加で導入されてもよい。そのような官能基の例はアミン基である。典型的には、固定化されるプローブは機能的アミン基を含む又は機能的アミン基を含むように化学的に修飾される。そのような化学修飾のための手段と方法は周知である。
【0046】
固定化されるプローブ内の前記官能基の局在化は、プローブの結合行動及び/又は配向性を制御し形成するために使用してもよく、たとえば官能基はプローブの5’若しくは3’端部に又はプローブの配列内に置いてもよい。固定化されるプローブのための典型的な基板は、そのようなプローブに、たとえばアミン官能性をもたせた核酸に結合することができる部分を含む。そのような基板の例は、カルボキシ、アルデヒド又はエポキシ基板である。そのような材料は当業者には公知である。官能基は、アミン基の導入により化学的反応性のあるプローブとアレイ基板間の接続反応を与えるが、当業者には公知である。
【0047】
プローブを固定化してもよい代わりの基板は、たとえばアレイ基板上で利用可能な官能基の活性化により、化学的に活性化されなければならないことがある。用語「活性化された基板」とは、相互作用する又は反応性の化学官能基が当業者には公知である化学修飾法により確立された又は可能になった材料に関連している。たとえば、カルボキシル基を備える基板は使用する前に活性化しなければならない。さらに、核酸プローブ中に既に存在する特異的な部分と反応することができる官能基を含有する入手可能な基板が存在する。
【0048】
代わりに、プローブを基板上で直接合成してもよい。そのようなアプローチに適した方法は当業者には公知である。例は、Agilent Inc.、Affymetrix Inc.、Roche Nimblegen Inc.又はFlexgen BVにより開発された製造技法である。典型的には、ヌクレオチド付加物が占めることになるスポットを特異的に活性化するレーザーと1組の鏡が使用される。そのようなアプローチは、たとえば約30μm又はそれよりも大きいスポットサイズ(すなわち、フィーチャー)を提供する可能性がある。
【0049】
したがって、基板は当業者に公知のいかなる適切な基板でもよい。基板はどんな適切な形態又はフォーマットを有していてもよく、たとえば基板は、平らである、湾曲している、たとえば、組織試料と基板間の相互作用が起こる区域のほうに凸状に又は凹形に湾曲していてもよい。特に好ましいのは、基板が平らである、すなわち平面状チップ又はスライドである場所である。
【0050】
典型的には、基板は固体支持体であり、それによって基板上のプローブの正確で追跡可能な位置決めを可能にする。基板の例は固体材料又は機能的化学基、たとえばアミン基又はアミン官能性をもった基を備える基板である。本発明により想定されている基板は非多孔性基板である。好ましい非多孔性基板はガラス、シリコン、ポリ−L−リジン被覆材料、ニトロセルロース、ポリスチレン、環状オレフィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリカーボネートである。
【0051】
当業者に公知のいかなる適切な材料を使用してもよい。典型的には、ガラス又はポリスチレンが使用される。ポリスチレンは通常、親水性基をほとんど含有していないので負電荷巨大分子に結合するのに適した疎水性材料である。ガラススライド上に固定化された核酸では、ガラス表面の疎水性を増加することにより核酸固定化を増加することがあることはさらに公知である。そのような増強により相対的にさらに高密度に詰まった形成が可能になることがある。ポリ−L−リジンを用いた被覆又は表面処理に加えて、基板、特にガラスは、たとえばエポキシシラン若しくはアミノシランを用いたシラン化(silanation)により又はシリン化(silynation)により又はポリアクリルアミドを用いた処理により処理してもよい。
【0052】
いくつかの標準アレイが市販されており、フィーチャーの数もサイズも変えることができる。本発明では、フィーチャーの配置は、異なる組織又は生物に存在する細胞のサイズ及び/又は密度に対応するように変更してもよい。たとえば、動物細胞は典型的には1〜100μmの領域の断面を有し、植物細胞の断面は典型的には1〜10000μmに及ぶ場合がある。それ故に、Nimblegen(登録商標)アレイは最大210万フィーチャー、又は420万フィーチャー、及び13マイクロメーターのフィーチャーサイズのものが入手可能であるが、動物又は真菌由来の組織試料に好まれ、たとえば8×130kフィーチャーを有する他のフォーマットは、植物組織試料には十分であることがある。市販されているアレイは、配列解析との関連で、特にNGS技術との関連で使用するためにも利用可能である又は知られている。そのようなアレイは、本発明という背景で、アレイ表面、たとえばIlluminaビーズアレイとして使用することもできる。それ自体を注文に応じて作製することができる市販のアレイに加えて、注文の又は非標準「自製」アレイを作製することが可能であり、アレイを作製するための方法は確立している。本発明の方法は、下に定義されるプローブを備える標準と非標準アレイの両方を利用してもよい。
【0053】
マイクロアレイ上のプローブは、アレイの化学マトリックスに応じて、好ましくは5’又は3’端部を介してアレイに固定化される、すなわち付着される若しくは結合されてもよい。典型的には、市販のアレイでは、プローブは3’連鎖を介して付着され、それによって遊離の5’端部を残す。しかし、5’連鎖を介して基板に付着され、それによって遊離の3’端部を残すプローブを備えるアレイは利用可能であり、当技術分野で周知であり本明細書の他所に記載されている標準技法を使用して合成してもよい。
【0054】
核酸プローブをアレイ基板に結合させるのに使用される共有結合は、プローブは「直接」共有結合により付着するが、核酸プローブの「最初の」ヌクレオチドをたとえば、ガラス又はシリコン基板から分離する化学的部分又はリンカー、すなわち間接的連鎖が存在することがあるという点で、直接的及び間接的連鎖の両方とみることもできる。本発明の目的のために、共有結合及び/又は化学リンカーにより基板に固定化されるプローブは一般には基板に直接的に固定化される又は付着されるとみることもできる。
【0055】
下でさらに詳細に説明されることになるように、本発明の捕捉プローブはアレイに直接的に又は間接的に、固定化されても又はアレイと相互作用してもよい。したがって、捕捉プローブはアレイに直接結合しなくてもよいが、たとえばそれ自体がアレイに直接的に又は間接的に結合する分子に結合することにより間接的に相互作用することがある(たとえば、捕捉プローブは捕捉ブローブの結合パートナー、すなわちそれ自体がアレイに直接的に又は間接的に結合している表面プローブと相互作用する(たとえば、結合する又はハイブリダイズする)ことがある)。しかし、一般的に言えば、捕捉プローブは直接的に又は間接的に(1つ又は複数の媒介物により)アレイに結合している又は固定化されていることになる。
【0056】
本発明の使用、方法及びアレイは、その5’又は3’端部を介して固定化されているプローブを含むことがある。しかし、捕捉プローブは、アレイ基板に直接的に固定化されている場合、唯一、捕捉プローブの3’端部が伸長されるように遊離している、たとえば捕捉プローブがその5’端部により固定化されているように固定化されていてもよい。捕捉プローブは、それが遊離の、すなわち伸長可能である、3’端部を有するように間接的に固定化されていてもよい。
【0057】
伸長された又は伸長可能な3’端部とは、追加のヌクレオチドが核酸分子、たとえば捕捉プローブのもっとも3’側のヌクレオチドに付加されて核酸分子の長さを伸長すること、すなわち核酸分子を伸長するのに利用される標準重合反応、たとえばポリメラーゼにより触媒される鋳型重合を意味する。
【0058】
したがって、一実施形態では、アレイは3’端部を介して直接的に固定化されているプローブ、いわゆる表面プローブを備え、このプローブは下に定義されている。表面プローブのそれぞれのスピーシーズは、捕捉プローブが表面プローブにハイブリダイズするように、捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズに相補的な領域を含むので、捕捉プローブは遊離の伸長可能な3’端部を含む。本発明の好ましい態様では、アレイが表面プローブを備える場合、捕捉プローブはアレイ上でインサイツで合成される。
【0059】
アレイプローブは、リボヌクレオチド及び/又はデオキシリボヌクレオチド並びにワトソン−クリック型又は類似の塩基対相互作用に関与することができる合成ヌクレオチド残基で構成されていてもよい。したがって、核酸ドメインは、DNA又はRNA又はその任意の改変物、たとえばPNA若しくは非ヌクレオチド骨格を含有する他の誘導体でもよい。しかし、トランスクリプトーム解析との関連では、捕捉プローブの捕捉ドメインは、捕捉されたRNA分子に相補的であるcDNAを生成する逆転写反応をプライミングすることができなければならない。下にさらに詳細に説明されるように、ゲノム解析との関連では、捕捉プローブの捕捉ドメインは、DNA断片に結合することができなければならず、これには断片化されたDNAに既に付加されている結合ドメインに結合することを含むことがある。いくつかの実施形態では、捕捉プローブの捕捉ドメインはDNA伸長(ポリメラーゼ)反応をプライミングして、捕捉されたDNA分子に相補的なDNAを生成することがある。他の実施形態では、捕捉ドメインは、捕捉されたDNA分子と基板に直接的に又は間接的に固定化されている表面プローブ間のライゲーション反応の鋳型になることがある。さらに他の実施形態では、捕捉ドメインは捕捉されたDNA分子の1つの鎖にライゲートされることがある。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、捕捉プローブの少なくとも捕捉ドメインは、デオキシリボヌクレオチド(dNTP)を含む又はからなる。特に好ましい実施形態では、捕捉プローブの全体がデオキシリボヌクレオチドを含む又はからなる。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、捕捉プローブはアレイの基板に直接的に、すなわちその5’端部により固定化されており、遊離の伸長可能な3’端部を有する。
【0062】
本発明の捕捉プローブは少なくとも2つのドメイン、すなわち捕捉ドメインと位置ドメイン(又はフィーチャー識別タグ若しくはドメイン;位置ドメインは代わりに識別(ID)ドメイン若しくはタグ、又は位置タグと定義されることもある)を含む。捕捉プローブは、下でさらに定義されるユニバーサルドメインをさらに含むことがある。捕捉プローブが、表面プローブへのハイブリダイゼーションを介してアレイ表面に間接的に付着している場合、捕捉プローブは表面プローブに相補的な配列(たとえば、部分又はドメイン)を必要とする。そのような相補的配列は表面プローブ上の位置/識別ドメイン及び/又はユニバーサルドメインに相補的であってもよい。言い換えると、位置ドメイン及び/又はユニバーサルドメインは、表面プローブに相補的であるプローブの領域又は部分を構成することもある。しかし、捕捉プローブは、表面プローブに相補的である追加のドメイン(又は領域、部分若しくは配列)を含むこともある。合成を容易にするために、下にさらに詳細に説明されているように、そのような表面プローブ相補的領域は、捕捉ドメインの一部として又は伸長物として提供されることもある(そのような一部又は伸長物はそれ自体が、標的核酸(たとえばRNA)に結合するために使用される又は結合することができる)。
【0063】
捕捉ドメインは典型的には捕捉プローブの3’端部に位置しており、たとえば鋳型依存性重合により伸長させることができる遊離の3’端部を含む。捕捉ドメインは、アレイに接触している組織試料の細胞に存在する核酸、たとえばRNA(好ましくはmRNA)にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を含む。
【0064】
有利なことに、捕捉ドメインは、特定の核酸、たとえば検出する又は解析するのが望まれるRNAに選択的に又は特異的に結合するように選択される又は設計されてもよい(又は、もっと一般的に言えば、結合することができてもよい)。たとえば、捕捉ドメインは、mRNAの選択的捕捉のために選択される又は設計されてもよい。当技術分野で周知であるように、これはmRNAのポリAテールへのハイブリダイゼーションに基づいていることがある。したがって、好ましい実施形態では、捕捉ドメインは、ポリT DNAオリゴヌクレオチド、すなわちmRNAのポリAテールにハイブリダイズすることができる、リン酸ジエステル結合により連結された一連の連続するデオキシチミジン残基を含む。代わりに、捕捉ドメインは、ポリTに機能的に又は構造的に類似する、すなわちポリAに選択的に結合することができるヌクレオチド、たとえばポリUオリゴヌクレオチド又はデオキシチミジン類似体からなり、ポリAに結合する機能特性を保持しているオリゴヌクレオチド、を含むことがある。特に好ましい実施形態では、捕捉ドメイン、又はさらに詳細には捕捉ドメインのポリTエレメントは、少なくとも10ヌクレオチド、好ましくは少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20ヌクレオチドを含む。追加の実施形態では、捕捉ドメイン、又はさらに詳細には捕捉ドメインのポリTエレメントは、少なくとも25、30又は35ヌクレオチドを含む。
【0065】
当技術分野で公知であるように、ランダム配列、たとえばランダムヘキサマー又は類似の配列も核酸の捕捉に使用することがあり、それ故にそのようなランダム配列を使用して、捕捉ドメインのすべて又は一部を形成してもよい。たとえば、ランダム配列はポリT(又はポリT類似物、等)配列と併せて使用することがある。したがって、捕捉ドメインは、ポリT(又は「ポリT様」)オリゴヌクレオチドを含む場合、ランダムオリゴヌクレオチド配列も含むことがある。これはたとえば、ポリT配列の5’又は3’、たとえば捕捉プローブの3’端部に位置することがあるが、そのようなランダム配列の位置決めは決定的に重要ではない。そのような構築物は、mRNAのポリAの最初の一部の捕捉を促進することができる。代わりに、捕捉ドメインは完全ランダム配列でもよい。当技術分野で公知の原理によれば、縮重捕捉ドメインを使用してもよい。
【0066】
捕捉ドメインは、核酸(たとえばRNA)の所望のサブタイプ若しくはサブセット、たとえば、上に収載されているようにmRNA若しくはrRNA、等などの特定のタイプのRNAに、又は、たとえば特定の遺伝子若しくは遺伝子群に応じて、所与のタイプのRNAの特定のサブセット、たとえば特定のmRNA種に選択的に結合することができることがある。そのような捕捉プローブは、捕捉されることが望まれるRNAの配列に基づいて選択する又は設計してもよい。したがって、捕捉プローブは、特定のRNA標的又は標的の群(標的群、等)に特異的な配列特異的捕捉プローブであってもよい。したがって、捕捉プローブは、当技術分野で周知の原理に従って、特定の遺伝子配列又は特定のモチーフ配列又は共通/保存配列、等に基づいていてもよい。
【0067】
捕捉プローブがアレイの基板に間接的に、たとえば表面プローブへのハイブリダイゼーションを介して固定化されている実施形態では、捕捉ドメインは、表面プローブの5’端部にハイブリダイズすることができる上流配列(組織試料の核酸、たとえばRNAにハイブリダイズする配列の5’側)をさらに含むことがある。単独では、捕捉プローブの捕捉ドメインは、捕捉ドメインオリゴヌクレオチドとみることもでき、前記オリゴヌクレオチドは捕捉プローブがアレイ上に間接的に固定化されている実施形態において捕捉プローブの合成で使用してもよい。
【0068】
捕捉プローブの位置ドメイン(フィーチャー識別ドメイン又はタグ)は捕捉ドメインの上流、すなわち捕捉プローブ核酸分子の5’端部により近いほうに直接的に又は間接的に位置している。好ましくは、位置ドメインは捕捉ドメインに直接隣接している、すなわち捕捉ドメインと位置ドメインの間には中間配列が存在しない。いくつかの実施形態では、位置ドメインはアレイの基板上に直接的に又は間接的に固定化されていてもよい捕捉プローブの5’端部を形成する。
【0069】
上記のように、アレイのそれぞれのフィーチャー(別個の位置)は、それぞれのフィーチャーでの位置ドメインが独自である核酸プローブのスピーシーズのスポットを含む。したがって、捕捉プローブの「スピーシーズ」はその位置ドメインに準拠して定義され、捕捉プローブの単一スピーシーズは同じ位置ドメインを有することになる。しかし、捕捉プローブのスピーシーズのそれぞれのメンバーは全部同じ配列を有する必要はない。特に、捕捉ドメインはランダム若しくは縮重配列であってもよく又はランダム若しくは縮重配列を含んでいてもよいので、スピーシーズ内の個々のプローブの捕捉ドメインは変化してもよい。したがって、捕捉プローブの捕捉ドメインが同じであるいくつかの実施形態では、それぞれのフィーチャーは単一プローブ配列を含む。しかし、捕捉プローブが変化する他の実施形態では、プローブのスピーシーズのメンバーは全く同じ配列を有すことにはならないが、スピーシーズ内のそれぞれのメンバーの位置ドメインの配列は同じになる。求められているのは、アレイのそれぞれのフィーチャー又は位置が単一スピーシーズの捕捉プローブを担っていることである(具体的には、それぞれのフィーチャー又は位置は、同一の位置タグを有する捕捉プローブを担っている、すなわちそれぞれのフィーチャー又は位置には単一の位置ドメインが存在する)。それぞれのスピーシーズは、前記スピーシーズを識別する異なる位置ドメインを有する。しかし、スピーシーズのそれぞれのメンバーは、捕捉ドメインはランダムでも若しくは縮重していてもよく又はランダム若しくは縮重成分を有していてもよいので、いくつかの場合には、本明細書でさらに詳細に説明されているように、異なる捕捉ドメインを有することがある。これは、所与のフィーチャー又は位置内ではプローブの捕捉ドメインは異なることがあることを意味する。
【0070】
したがって、必ずしもすべてではないがいくつかの実施形態では、特定のフィーチャーで固定化されたいずれか1つのプローブ分子のヌクレオチド配列は、同じフィーチャーで固定化されたその他のプローブ分子と同じであるが、それぞれのフィーチャーでのプローブのヌクレオチド配列は他のすべてのフィーチャーで固定化されたプローブとは異なっており、別であり又は区別可能である。好ましくは、それぞれのフィーチャーはプローブの異なるスピーシーズを含む。しかし、いくつかの実施形態では、フィーチャーの群がプローブの同じスピーシーズを含む、すなわち、たとえばアレイの解像度を下げるために、単一フィーチャーよりも大きなアレイの区域に及ぶフィーチャーを効果的に作製するのが有利であることがある。アレイの他の実施形態では、特定のフィーチャーで固定化されたいずれか1つのプローブ分子の位置ドメインのヌクレオチド配列は、同じフィーチャーで固定化されたその他のプローブ分子と同じでよいが、捕捉ドメインは変わることがある。にもかかわらず、捕捉ドメインは同じ種類の分子(たとえばmRNA)全般を捕捉するように設計してもよい。
【0071】
捕捉プローブの位置ドメイン(又はタグ)は、それぞれのフィーチャーにしか含まれない配列を含み、位置又は空間マーカー(識別タグ)として機能する。このように、組織試料のそれぞれの領域又はドメイン(たとえば組織中のそれぞれの細胞)は、核酸(たとえばある種の細胞由来のRNA(たとえば、転写物))を捕捉プローブ中の独自の位置ドメイン配列に連結しているアレイ全域で空間分解能により識別可能になる。位置ドメインのせいで、アレイ中の捕捉プローブは組織試料中の位置に関連付けられることがある、たとえば捕捉プローブは試料中の細胞に関連付けられることがある。したがって、捕捉ドメインの位置ドメインは核酸タグ(識別タグ)とみることもできる。
【0072】
いかなる適切な配列も本発明の捕捉プローブ中の位置ドメインとして用いてもよい。適切な配列とは、位置ドメインが組織試料のRNAと捕捉プローブの捕捉ドメイン間の相互作用に干渉する(すなわち、阻害する又は歪める)べきではないことを意味する。たとえば、位置ドメインは、組織試料中の核酸分子が位置ドメインと特異的にハイブリダイズしないように設計されるべきである。好ましくは、捕捉プローブの位置ドメインの核酸配列は組織試料中の核酸配列に対して80%未満の配列同一性を有する。好ましくは、捕捉プローブの位置ドメインは組織試料中の核酸分子の実質的な部分にわたり70%未満、60%未満、50%未満又は40%未満の配列同一性を有する。配列同一性は当技術分野でいかなる公知の適切な方法でも、たとえばBLASTアライメントアルゴリズムにより決定してもよい。
【0073】
好ましい実施形態では、捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズの位置ドメインは独自のバーコード配列を含有する。バーコード配列は、ランダム配列生成を使用して生成してもよい。ランダムに生成された配列に続いて、すべての共通参照種のゲノムに位置付けることにより及び予め設定されたTm間隔、GC含有量及び確実にバーコード配列が組織試料由来の核酸、たとえばRNAの捕捉に干渉せず難なく互いに区別可能であるようにするその他のバーコード配列までの異なる限定された距離を用いて厳密なフィルタリングを行ってもよい。
【0074】
上記のように及び好ましい実施形態では、捕捉プローブはユニバーサルドメイン(又はリンカードメイン若しくはタグ)も含む。捕捉プローブのユニバーサルドメインは、位置ドメインの上流、すなわち捕捉プローブ核酸分子の5’端部により近いほうに直接的に又は間接的に位置している。好ましくは、ユニバーサルドメインは位置ドメインに直接隣接している、すなわち位置ドメインとユニバーサルドメイン間には中間配列が存在しない。捕捉プローブがユニバーサルドメインを含む実施形態では、前記ドメインは捕捉プローブの5’端部を形成し、前記端部はアレイの基板上に直接的に又は間接的に固定化されてもよい。
【0075】
ユニバーサルドメインは本発明の方法及び使用においていくつかのやり方で利用されることがある。たとえば、本発明の方法は、合成された(すなわち、伸長された又はライゲートされた)アレイの表面由来の核酸(たとえばcDNA)分子の少なくとも一部を放出する(たとえば、取り除く)ステップを含む。本明細書の他所で説明されるように、これはいくつかのやり方で達成されてもよく、そのうちの1つはアレイの表面由来の核酸(たとえばcDNA)分子を切断することを含む。したがって、ユニバーサルドメインはそれ自体が、切断ドメイン、すなわち化学的に又は好ましくは酵素的にのいずれかで特異的に切断することができる配列を含むことがある。
【0076】
したがって、切断ドメインは、核酸分子を切断することができる、すなわち2つ又はそれよりも多いヌクレオチド間のリン酸ジエステル連鎖を切断することができる1つ又は複数の酵素により認識される配列を含むことがある。たとえば、切断ドメインは制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)認識配列を含むことがある。制限酵素は制限部位として知られる特異的な認識ヌクレオチド配列で二本鎖又は一本鎖DNAを切断し、適切な酵素は当技術分野では周知である。たとえば、低頻度切断酵素、すなわち核酸(たとえばcDNA)分子の他の場所で切断する可能性を抑えるために長い認識部位(少なくとも8塩基対長)を有する酵素を使用するのが特に有利である。この点に関して、核酸(たとえばcDNA)分子の少なくとも一部を取り除く又は放出するには核酸(たとえばcDNA)の位置ドメイン及び前記ドメインの下流の配列のすべて、すなわち位置ドメインの3’側の配列のすべてを含む一部を放出する必要があることは理解されるであろう。それ故に、核酸(たとえばcDNA)分子の切断は位置ドメインの5’側で起こるべきである。
【0077】
例として、切断ドメインは、USER(商標)酵素として商業上知られている、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)とDNAグリコシラーゼ−リアーゼエンドヌクレアーゼVIIIの混合物により切断することができるポリU配列を含むことがある。
【0078】
切断ドメインの追加の例は、捕捉プローブがアレイ基板に間接的に、すなわち表面プローブを介して固定化されている実施形態において利用することができる。切断ドメインは、1つ又は複数のミスマッチヌクレオチドを含むことがあり、すなわち表面プローブの相補的部分と捕捉プローブが100%相補的ではない場合である。そのようなミスマッチは、たとえばMutY及びT7エンドヌクレアーゼI酵素により認識され、そのためミスマッチの位置で核酸分子が切断される。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、捕捉プローブの位置ドメインは切断ドメインを含み、前記切断ドメインは位置ドメインの5’端部に位置している。
【0080】
ユニバーサルドメインは増幅ドメインも含むことがある。この増幅ドメインは切断ドメインに加えてでもよく、その代わりでもよい。本発明のいくつかの実施形態では、本明細書の他所で説明されているように、たとえばアレイ基板から放出された(たとえば、取り除かれた又は切断された)後で核酸(たとえばcDNA)分子を増幅するのが有利なこともある。しかし、増幅の最初のサイクル又は実際、増幅のいずれのサイクルも又はすべての追加サイクルはアレイ上インサイツで起きてもよいことは認識されるであろう。増幅ドメインは増幅プライマーがハイブリダイズすることのできる別個の配列を含む。捕捉プローブのユニバーサルドメインの増幅ドメインは好ましくは、捕捉プローブのスピーシーズごとに同一である。それ故に、単回増幅反応で核酸(たとえばcDNA)分子(増幅に先立ってアレイ基板から放出されることもあればされないこともある)のすべてを増幅するのに十分であろう。
【0081】
いかなる適切な配列でも本発明の捕捉プローブにおいて増幅ドメインとして用いてもよい。適切な配列とは、増幅ドメインが、組織試料の核酸(たとえばRNA)と捕捉プローブの捕捉ドメイン間の相互作用に干渉する(すなわち、阻害する又は歪める)べきではないことを意味する。さらに、増幅ドメインは、増幅反応で使用されるプライマーが反応の増幅条件下で増幅ドメインのみにハイブリダイズすることができるように、組織試料の核酸(たとえばRNA)における任意の配列と同じではない又は実質的に同じではない配列を含むべきである。
【0082】
たとえば、増幅ドメインは、組織試料中の核酸分子が増幅ドメインにも増幅ドメインの相補的配列にも特異的にハイブリダイズしないように設計されるべきである。好ましくは、捕捉プローブの増幅ドメインの核酸配列及びその相補体は組織試料中の核酸配列に対して80%未満の配列同一性を有する。好ましくは、捕捉プローブの位置ドメインは組織試料中の核酸分子の実質的な部分にわたって70%未満、60%未満、50%未満又は40%未満の配列同一性を有する。配列同一性は当技術分野で公知の任意の適切な方法により、たとえばBLASTアライメントアルゴリズムを使用して決定してもよい。
【0083】
したがって、単独では、捕捉プローブのユニバーサルドメインは、ユニバーサルドメインオリゴヌクレオチドとみることもでき、このオリゴヌクレオチドは捕捉プローブがアレイ上に間接的に固定化される実施形態では、捕捉プローブの合成において使用してもよい。
【0084】
本発明の一代表的実施形態では、捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズの位置ドメインのみが1つしか存在しない。それ故に、捕捉ドメイン及びユニバーサルドメイン(存在すれば)は一実施形態において、確実に組織試料由来の核酸(たとえばRNA)の捕捉がアレイ全域にわたって均一であるように、どんな特定のアレイでも捕捉プローブのスピーシーズごとに同じである。しかし、上記のように、いくつかの実施形態では、捕捉ドメインはランダム又は縮重配列を含むことによって異なることがある。
【0085】
捕捉プローブがアレイの基板上に間接的に、たとえば表面プローブへのハイブリダイゼーションを介して、固定化されている実施形態では、捕捉プローブは下に記載される通りにアレイ上で合成されてもよい。
【0086】
表面プローブはアレイの基板上に直接的に、たとえばその3’端部により又は3’端部で、固定化されている。表面プローブのそれぞれのスピーシーズはアレイのそれぞれのフィーチャー(個別の位置)にのみ含まれ、上で定義される捕捉プローブに部分的に相補的である。
【0087】
それ故に、表面プローブはその5’端部に、組織試料中の核酸(たとえばRNA)に結合しない捕捉ドメインの一部に相補的であるドメイン(相補的捕捉ドメイン)を含む。言い換えると、表面プローブは、捕捉ドメインオリゴヌクレオチドの少なくとも一部にハイブリダイズすることができるドメインを含む。表面プローブは、捕捉プローブの位置ドメインに相補的であるドメイン(相補的位置ドメイン又は相補的フィーチャー識別ドメイン)をさらに含む。相補的位置ドメインは、相補的捕捉ドメインの下流(すなわち、3’端部に)直接的に又は間接的に位置している、すなわち相補的位置ドメインと相補的捕捉ドメインを分離する中間又はリンカー配列が存在することがある。捕捉プローブがアレイ表面で合成される実施形態では、アレイの表面プローブは常に、表面プローブの3’端部に、すなわち位置ドメインの下流に直接的に又は間接的に、捕捉プローブのユニバーサルドメインに相補的であるドメイン(相補的ユニバーサルドメイン)を含む。言い換えると、表面プローブは、ユニバーサルドメインオリゴヌクレオチドの少なくとも一部にハイブリダイズすることができるドメインを含む。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態では、表面プローブの配列は、位置及びユニバーサルドメインに対して並びに組織試料の核酸、たとえばRNAに結合しない捕捉ドメインの一部に対して100%の相補性又は配列同一性を示す。他の実施形態では、表面プローブの配列は、捕捉プローブのドメインに対して100%未満、たとえば99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%又は90%未満の配列同一性を示すことがある。本発明の特に好ましい実施形態では、相補的ユニバーサルドメインは、捕捉プローブのユニバーサルドメインに対して100%未満の配列同一性を共有する。
【0089】
本発明の一実施形態では、捕捉プローブはアレイの基板上で合成される又は生成される。代表的実施形態では(
図3参照)、アレイは上で定義された表面プローブを含む。捕捉プローブの捕捉ドメイン及びユニバーサルドメインに対応するオリゴヌクレオチドをアレイに接触させ、表面プローブの相補的ドメインにハイブリダイズさせる。過剰なオリゴヌクレオチドは、標準ハイブリダイゼーション条件下でアレイを洗浄することにより取り除いてもよい。得られたアレイは部分的に一本鎖プローブを含み、表面プローブの5’と3’端部の両方は二本鎖であり、相補的位置ドメインは一本鎖である。アレイは、捕捉プローブの位置ドメインを合成するように、ポリメラーゼ酵素で処理して、鋳型依存の様式で、ユニバーサルドメインオリゴヌクレオチドの3’端部を伸長させてもよい。次に、合成された位置ドメインの3’端部は、たとえばリガーゼ酵素を使用して捕捉ドメインオリゴヌクレオチドの5’端部にライゲートされて捕捉プローブを生成する。これに関して、捕捉ドメインオリゴヌクレオチドの5’端部はリン酸化されてライゲーションが起こるのを可能にすることは理解されるであろう。表面プローブのそれぞれのスピーシーズは独自の相補的位置ドメインを含むので、捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズは独自の位置ドメインを含むことになる。
【0090】
本明細書で使用される用語「ハイブリダイゼーション」又は「ハイブリダイズする」とは、ワトソン−クリック塩基対合を介して二重鎖を形成するのに十分相補的であるヌクレオチド配列間での二重鎖の形成のことである。2つのヌクレオチド配列は、その2つの分子が塩基対構成相同性を共有する場合互いに「相補的」である。「相補的」ヌクレオチド配列は、適切なハイブリダイゼーション条件下で、特異的に結合して安定な二重鎖を形成する。たとえば、それぞれの配列の3’端部がもう一方の配列の5’端部に結合し、次に1つの配列のそれぞれのA、T(U)、G及びCがそれぞれもう一方の配列のT(U)、A、C及びGと整列する逆平行の意味で第一の配列の1セクションが第二の配列の1セクションに結合することができる場合、2つの配列は相補的である。RNA配列は相補的G=U又はU=G塩基対も含むことができる。したがって、2つの配列は、本発明の下では「相補的」であるのに完璧な相同性を有する必要はない。通常、2つの配列は、ヌクレオチドの少なくとも約90%(好ましくは少なくとも約95%)が分子の限定された長さにわたって塩基対構成を共有する場合、十分に相補的である。したがって、捕捉及び表面プローブのドメインは相補性の領域を含有する。さらに、捕捉プローブの捕捉ドメインは、組織試料の核酸、たとえばRNA(好ましくはmRNA)について相補的な領域を含有する。
【0091】
捕捉プローブは、ポリメラーゼ伸長(上記と類似して)及び捕捉ドメインを構成することができる「テール」を付加するターミナルトランスフェラーゼ酵素を使用してアレイ基板上でも合成されてもよい。これは下の実施例7においてさらに説明される。たとえばホモポリマーテール、たとえばポリTテールを導入するための、オリゴヌクレオチドの端部にヌクレオチド配列を付加するターミナルトランスフェラーゼの使用は当技術分野では公知である。したがって、そのような合成では、捕捉プローブのユニバーサルドメインに対応するオリゴヌクレオチドをアレイに接触させて、表面プローブの相補的ドメインにハイブリダイズさせてもよい。過剰なオリゴヌクレオチドは、標準ハイブリダイゼーション条件下でアレイを洗浄することにより取り除いてもよい。得られたアレイは部分的に一本鎖プローブを含み、表面プローブの5’端部は二本鎖であり、相補的位置ドメインは一本鎖である。アレイは、捕捉プローブの位置ドメインを合成するように、ポリメラーゼ酵素で処理して、鋳型依存の様式で、ユニバーサルドメインオリゴヌクレオチドの3’端部を伸長させてもよい。次に、たとえばポリT配列を含む捕捉ドメインを、ポリTテールを付加するターミナルトランスフェラーゼを使用して導入して捕捉プローブを生成してもよい。
【0092】
本発明の及び本発明の方法において使用するための典型的アレイは、複数のスポット又は「フィーチャー」を含有することがある。フィーチャーは、捕捉プローブの単一スピーシーズが固定化されているアレイ基板上の区域又は個別の位置として定義することができる。それ故に、それぞれのフィーチャーは、同じスピーシーズの複数のプローブ分子を含むことになる。同じスピーシーズのそれぞれの捕捉プローブは同じ配列を有していてもよいことが包含されるが、これは必ずしもそうである必要はないことは、この文脈で理解されるであろう。捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズは同じ位置ドメインを有することになる(すなわち、スピーシーズのそれぞれのメンバー、それ故フィーチャー内のそれぞれのプローブは等しく「タグ」付けされることになる)が、フィーチャーのそれぞれのメンバー(スピーシーズ)の配列は、捕捉ドメインの配列が異なることがあるために、相違することがある。上記のように、ランダム又は縮重捕捉ドメインを使用してもよい。したがって、フィーチャー内の捕捉プローブは異なるランダム又は縮重配列を含むことがある。アレイ上のフィーチャーの数及び密度はアレイの解像度、すなわち組織試料のトランスクリプトーム又はゲノムを解析することができる詳細レベルを決定することになる。それ故に、フィーチャーの密度が高いほど典型的にはアレイの解像度も増すことになる。
【0093】
上記のように、本発明のアレイ上のフィーチャーのサイズと数は、組織試料の性質と要求される解像度に依存することになる。したがって、組織試料内の細胞の領域についてのみのトランスクリプトーム又はゲノムを決定することが望ましい(又は試料が大きな細胞を含有する)場合は、アレイ上のフィーチャーの数及び/若しくは密度は減らしてもよく(すなわち、フィーチャーの考えられる最大数よりも低い)並びに/又はフィーチャーのサイズを増加させる(すなわち、それぞれのフィーチャーの面積は考えられる最小のフィーチャーよりも大きくてもよい)、たとえばアレイは少数の大きなフィーチャーを含んでいてもよい。代わりに、試料内の個々の細胞のトランスクリプトーム又はゲノムを決定するのが望ましい場合は、考えられる最大数のフィーチャーを使用することが必要になることもあり、そうなれば考えられる最小のフィーチャーサイズを使用すること、たとえばアレイは多くの小さなフィーチャーを含むことが必要になると考えられる。
【0094】
単細胞解像度は本発明の好ましい有利な特長であってもよいが、これを達成することは不可欠ではなく、たとえば特定の細胞型又は組織領域、たとえば正常細胞対腫瘍細胞を検出する又は区別するために、細胞群レベルでの解像度も興味深い。
【0095】
本発明の代表的実施形態では、アレイは少なくとも2、5、10、50、100、500、750、1000、1500、3000、5000、10000、20000、40000、50000、75000、100000、150000、200000、300000、400000、500000、750000、800000、1000000、1200000、1500000、1750000、2000000、2100000、3000000、3500000、4000000、4200000フィーチャーを含有してもよい。4200000は現在市販のアレイ上で使用することができるフィーチャーの最大数を表しているが、これを超えるフィーチャーを有するアレイを調製できることが想定されており、そのようなアレイは本発明においては興味深い。上記のように、フィーチャーサイズは減少させることもあり、こうすればさらに大きな数のフィーチャーを同じ又は類似する面積内に収容することが可能になる。例としては、これらのフィーチャーは、約20cm
2、10cm
2、5cm
2、1cm
2、1mm
2又は100μm
2未満の面積に含まれることができる。
【0096】
したがって、本発明のいくつかの実施形態では、それぞれのフィーチャーの面積は、約1μm
2、2μm
2、3μm
2、4μm
2、5μm
2、10μm
2、12μm
2、15μm
2、20μm
2、50μm
2、75μm
2、100μm
2、150μm
2、200μm
2、250μm
2、300μm
2、400μm
2又は500μm
2からであってよい。
【0097】
どんな生物、たとえば植物、動物又は真菌由来の組織試料でも本発明の方法において使用できることは明白であろう。本発明のアレイによれば、転写及び/又は翻訳が可能である細胞に存在するいかなる核酸、たとえばmRNA分子の捕捉でも可能になる。本発明のアレイ及び方法は、たとえば細胞が隣接する細胞と相互接続している又は直接接触している場合にトランスクリプトーム又はゲノムの空間解像度が望ましい、試料内の細胞のトランスクリプトーム又はゲノムを単離し解析するのに特に適している。しかし、本発明の方法が、前記細胞が直接相互作用していなくても、試料、たとえば血液試料内の異なる細胞又は細胞型のトランスクリプトーム又はゲノムの解析にも有用である可能性があることは当業者には明らかになるであろう。言い換えると、細胞は組織との関連では現れる必要はなく、単一細胞(たとえば、固定されていない組織から単離される細胞)としてアレイに適用することが可能である。そのような単一細胞は、組織内の一定の位置に必ずしも固定されていないが、にもかかわらずアレイ上の一定の位置に適用され、個別に同定することができる。したがって、直接相互作用していない又は組織環境に存在していない細胞を解析することとの関連では、記載される方法の空間特性を、個々の細胞から独自の又は独立したトランスクリプトーム又はゲノムの情報を得る又は引き出すことに適用することもある。
【0098】
したがって、試料は収穫した若しくは生検組織試料でもよく、又は場合によっては培養試料でもよい。代表的試料には、臨床試料、たとえば全血又は血液由来産物、血液細胞、組織、生検又は細胞懸濁液を含む培養組織若しくは細胞、等が含まれる。たとえば、人工組織を細胞懸濁液(たとえば、血液細胞を含む)から調製することもある。細胞はマトリックス(たとえば、ゲルマトリックス、たとえば寒天、アガロース、等)に捕捉されることがあり、次に従来のやり方で区分してもよい。そのような手順は免疫組織化学との関連で当技術分野では公知である(たとえば、Andersson et al 2006年、J.Histochem.Cytochem.54(12):1413〜23頁、Epub 2006年 Sep 6参照)。
【0099】
組織調製の様式及び得られた試料の扱い方は、本発明の方法のトランスクリプトーム又はゲノム解析に影響を及ぼすことがある。さらに、様々な組織試料は異なる物理特性を有することになり、必要な操作を実施して本発明の方法で使用するための組織試料を得ることは十分に当業者の範囲内である。しかし、試料調製のいかなる方法も本発明の方法において使用するのに適した組織試料を得るのに使用してもよいことは本明細書における開示から明らかである。たとえば、ほぼ1細胞又はそれ未満の厚みの細胞のいかなる層も本発明の方法において使用してもよい。一実施形態では、組織試料の厚みは、細胞の横断面の0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2又は0.1未満でもよい。しかし、上記の通りなので、本発明は単一細胞解像度に限定されてはおらず、それ故に、組織試料が1細胞直径又はそれ未満の厚みを有することは必要条件ではなく、さらに厚い組織試料を必要に応じて使用してもよい。たとえば、クリオスタット切片を使用してもよく、これはたとえば、厚みが10〜20μmであることもある。
【0100】
組織試料は従来の又は望みのいかなる方法で調製してもよく、本発明はいかなる特定種類の組織調製物にも制限されてはいない。新鮮な、凍結した、固定した又は非固定の組織を用いてもよい。当技術分野で記載されている及び公知であるように、いかなる望みの便利な手法でも組織試料を固定する又は包埋するために使用してもよい。したがって、いかなる公知の固定液又は包埋材料を使用してもよい。
【0101】
本発明において使用するための組織試料の第一の代表的例として、組織構造の完全性(すなわち、物理的特徴)を維持する又は保存するのに適した温度、たとえば−20℃未満、好ましくは−25、−30、−40、−50、−60、−70、−80℃未満での低温凍結により調製してもよい。凍結組織試料は、いかなる適切な手段によってもアレイ表面上に切片にする、すなわち薄くスライスしてもよい。たとえば、組織試料は、組織試料の構造完全性と試料中の核酸の化学的特性の両方を維持するのに適した温度で、たとえば−15℃未満、好ましくは−20又は−25℃未満に設定して、急冷ミクロトーム、クリオスタットを使用して調製してもよい。したがって、試料は、組織中の核酸、たとえばRNAの変性又は分解を最小限に抑えるように処理するべきである。そのような条件は当技術分野では確立しており、いかなる分解の程度も、組織試料の調製の様々な段階での核酸抽出、たとえば全RNA抽出とそれに続く品質分析を通じてモニターしてもよい。
【0102】
第二の代表的例では、組織は、当技術分野で確立しているホルマリン固定とパラフィン包埋(FFPE)という標準法を使用して調製してもよい。組織試料の固定化とパラフィン又は樹脂ブロックへの包埋に続いて、組織試料はアレイ表面上に切片にする、すなわち薄くスライスしてもよい。上記のように、他の固定液及び/又は包埋材料を使用することは可能である。
【0103】
組織試料切片は、本発明の方法を実行するのに先立って、試料から包埋材料を取り除く、たとえば脱パラフィンする、すなわちパラフィン又は樹脂を取り除くための処理をする必要があることになる。この除去は、いかなる適切な方法によって達成してもよく、たとえば試料(アレイの表面上の)を適切な溶剤、たとえばキシレン中で、たとえば10分間で2度インキュベートし、続いてエタノールすすぎ、たとえば2分間99.5%エタノール、2分間96%エタノール及び2分間70%エタノールによる、パラフィン又は樹脂又は他の材料の組織試料からの除去は当技術分野では確立している。
【0104】
FFPEの方法又は固定し包埋する他の方法を使用して調製される組織切片中のRNAは凍結組織の場合よりも部分的に分解している可能性が高いことは当業者には明らかであろう。しかし、いかなる特定の理論にも縛られたくはないが、これは本発明の方法においては有利なことがあると考えられる。たとえば、試料中のRNAが部分的に分解している場合、RNAポリヌクレオチドの平均長は非分解試料よりも少なくよりランダム化されている。したがって、部分的に分解されたRNAは、本明細書の他所に記載されている様々な処理ステップ、たとえばアダプター(増幅ドメイン)のライゲーション、cDNA分子の増幅及びそのシーケンシングにおいて偏りが少なくなると仮定される。
【0105】
それ故に、本発明の一実施形態では、組織試料、すなわちアレイに接触させた組織試料の切片、はFFPE又は固定し包埋する他の方法を使用して調製される。言い換えると、試料は固定されている、たとえば固定され包埋されていてもよい。本発明の代わりの実施形態では、組織試料は低温凍結により調製される。別の実施形態では、当技術分野で公知の手法に従って、組織のタッチインプリントを使用してもよい。他の実施形態では、非固定試料を使用してもよい。
【0106】
本発明の方法において使用するための組織試料切片の厚みは、試料を調製するのに使用される方法及び組織の物理的特性に依存することがある。したがって、本発明の方法においてはいかなる適切な切片厚みを使用してもよい。本発明の代表的実施形態では、組織試料切片の厚みは、少なくとも0.1μm、さらに好ましくは少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1.0、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9又は10μmになる。他の実施形態では、組織試料切片の厚みは、少なくとも10、12、13、14、15、20、30、40又は50μmである。しかし、厚みは決定的ではなく、これらは代表的値のみである。必要であれば又は都合がよければ、もっと厚い、たとえば70又は100μm又はさらに厚い試料を使用してもよい。典型的には、組織試料切片の厚みは1〜100μm、1〜50μm、1〜30μm、1〜25μm、1〜20μm、1〜15μm、1〜10μm、2〜8μm、3〜7μm又は4〜6μmであるが、上記のようにもっと厚い試料を使用してもよい。
【0107】
たとえば包埋材料の除去、たとえば脱パラフィンに続いて、組織試料切片をアレイに接触させると、組織試料中の核酸(たとえばRNA)分子はアレイ上の固定化された捕捉プローブに結合することになる。いくつかの実施形態では、核酸(たとえばRNA)分子の捕捉プローブへのハイブリダイゼーションを促進することが有利なことがある。典型的には、ハイブリダイゼーションの促進には、ハイブリダイゼーションが起こる条件を変更することが含まれる。変更することが可能な第一条件は、本明細書の他所に記載されている逆転写ステップに先立つアレイ上での組織切片のインキュベーションの時間と温度である。
【0108】
たとえば、組織試料切片をアレイに接触させると、アレイは少なくとも1時間インキュベートされて、核酸(たとえばRNA)を捕捉プローブにハイブリダイズさせておいてもよい。好ましくは、アレイは少なくとも2、3、5、10、12、15、20、22若しくは24時間又は組織試料切片が乾燥してしまうまでインキュベートされてもよい。アレイインキュベーション時間は決定的ではなく、いかなる都合の良い又は所望の時間を使用してもよい。典型的アレイインキュベーションは72時間まででもよい。したがって、インキュベーションは、どんな適切な温度でも、たとえば室温で起こることがあるが、好ましい実施形態では、組織試料切片はアレイ上、少なくとも25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36又は37℃の温度でインキュベートされる。55℃までのインキュベーション温度が当技術分野では普通である。特に好ましい実施形態では、組織試料切片はアレイ上、37℃で24時間乾燥させておく。組織試料切片が乾燥してしまうと、アレイは、逆転写ステップを実施する前に室温で保存してもよい。組織試料切片をアレイの表面上で乾燥させておく場合、捕捉された核酸の追加の操作を達成することができる、たとえば捕捉されたRNAを逆転写するステップ前に組織試料切片を再水和させる必要がないことは理解されるであろう。
【0109】
それ故に、本発明の方法は、試料をアレイに接触させた後に組織試料を再水和させる追加のステップを含むことがある。
【0110】
いくつかの実施形態では、特に組織試料中の核酸がアレイ上でのその捕捉に先立って変更の手順を受けている場合には、組織試料をアレイに接触させることに先立って捕捉プローブを遮断する(たとえば、マスクする又は改変する)のが有利なこともある。詳細には、捕捉プローブの遊離の3’端部を遮断する又は改変するのが有利なこともある。特定の実施形態では、組織試料中の核酸(たとえば断片化されたゲノムDNA)は、捕捉プローブにより捕捉されることができるように改変してもよい。たとえば及び下にさらに詳細に説明されているように、アダプター配列(捕捉プローブの捕捉ドメインに結合することができる結合ドメインを含む)を核酸(たとえば断片化されたゲノムDNA)の端部に付加してもよい。これは、たとえば追加のヌクレオチドを配列(たとえばポリAテール)の端部に組み込む酵素を使用して、たとえばアダプターのライゲーション又は核酸の伸長により達成してもよい。たとえば、捕捉プローブの遊離の3’端部へのポリAテールの付加を回避するためには、組織試料をアレイに接触させて捕捉プローブの改変を回避するのに先立って、捕捉プローブ、特に捕捉プローブの遊離の3’端部を遮断する又は改変する必要がある。好ましくは、遮断ドメインは捕捉プローブが合成されるときに捕捉プローブに組み込まれてもよい。しかし、遮断ドメインは捕捉プローブの合成後に捕捉プローブに組み込まれてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、組織試料がアレイに接触された後で起こる組織試料の核酸の改変が進行中に捕捉ドメインの改変を妨げると考えられるどんな適切な可逆的手段により遮断されてもよい。言い換えると、捕捉プローブは、捕捉プローブの捕捉ドメインが遊離の3’端部を含まないように、すなわち3’端部が取り除かれる若しくは改変されるように可逆的にマスクされる若しくは改変される、又は捕捉プローブが、組織試料の核酸を改変するのに使用される手順、たとえばライゲーション若しくは伸長に感受性ではないように接近しにくくされてもよいし、或いは追加のヌクレオチドを取り除いて捕捉プローブの捕捉ドメインの3’端部を露呈する及び/又は回復させてもよい。
【0112】
たとえば、遮断プローブ(たとえばその適切な例は当技術分野で公知であるヘアピンプローブ又は部分的二本鎖プローブ)を捕捉プローブにハイブリダイズさせて捕捉ドメインの3’端部をマスクしてもよい。捕捉ドメインの遊離の3’端部を化学修飾(たとえば捕捉プローブが遊離の3’端部を含まないように化学的に可逆的なキャップ形成部分としてのアジドメチル基の付加)により遮断してもよい。適切な代わりのキャップ形成部分は当技術分野では周知であり、たとえば捕捉ドメインの末端ヌクレオチドは可逆的終止ヌクレオチドであることも可能であり、このヌクレオチドはプローブ合成中又はその後で捕捉プローブに含むこともできる。
【0113】
代わりに又はさらに、捕捉プローブの捕捉ドメインは、組織試料の核酸分子が改変されるときに起きる捕捉プローブのどのような修飾(たとえばヌクレオチドの追加)をも除去できるように、改変することもできる。たとえば、捕捉プローブは、捕捉ドメインの下流(すなわち捕捉ドメインの3’側)に追加の配列、すなわち遮断ドメイン、を含んでいてもよい。これは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列又は特異的酵素活性により切断可能なヌクレオチド(たとえばウラシル)の配列の形態でも可能である。組織試料の核酸の改変に続いて、捕捉プローブは酵素的切断に供することもでき、この切断により、遮断ドメイン及び改変手順中に捕捉プローブの3’端部に付加される追加のヌクレオチドのいずれでも除去することが可能だと考えられる。遮断ドメインの除去により、捕捉プローブの捕捉ドメインが遊離の3’端部は露呈される及び/又は回復されると考えられる。遮断ドメインは捕捉プローブの一部として合成することができる又は、たとえば遮断ドメインのライゲーションにより捕捉プローブにインサイツで付加する(すなわち、既存のアレイの改変物として)こともできる。
【0114】
捕捉プローブは、上記の遮断機構のいかなる組合せでも使用して遮断してもよい。
【0115】
組織試料の核酸、たとえば断片化されたゲノムDNAが改変されて前記核酸が捕捉プローブの捕捉ドメインにハイブリダイズすることが可能になると、捕捉プローブは、たとえば遮断オリゴヌクレオチドの解離、キャップ形成部分及び/又は遮断ドメインの除去により遮断を解除しなければならない。
【0116】
アレイのそれぞれのフィーチャーから得られる配列解析又はトランスクリプトーム若しくはゲノム情報を組織試料の領域(すなわち、区域又は細胞)と関連付けるために、組織試料はアレイ上でフィーチャーとの関係で方向付けられる。言い換えると、組織試料は、アレイ上の捕捉プローブの位置が組織試料中の位置と関連付けられるようにアレイ上に置かれる。したがって、組織試料中のどこに捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズの位置(又はアレイのそれぞれのフィーチャー)が対応するのかを同定することができる。言い換えると、組織試料中のどの位置に捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズの位置が対応するのかを同定することができる。これは、下で説明されるように、アレイ上に存在する位置マーカーに基づいて実行されることができる。必ずしもそうではないが、都合の良いことに、組織試料はアレイとのその接触に続いて撮像することができる。この撮像は、組織試料の核酸が処理される前に又は後で、たとえば前記方法のcDNA生成ステップ、特に逆転写により第一鎖cDNAを生成するステップ前に又は後で実施してもよい。好ましい実施形態では、組織試料はアレイから捕捉され合成された(すなわち、伸長された又はライゲートされた)DNA、たとえばcDNAの放出に先立って撮像される。特に好ましい実施形態では、組織は、組織試料の核酸が処理された後で、たとえば逆転写ステップの後で撮像され、いかなる残余の組織も、アレイから分子、たとえばcDNAの放出に先立ってアレイから取り除かれる(たとえば、洗浄される)。いくつかの実施形態では、捕捉された核酸を処理するステップ、たとえば逆転写ステップは、たとえば低温凍結による組織調製を使用する場合に、アレイ表面から残余の組織を取り除くように作用することがある。そのような場合、組織試料の撮像は、処理ステップ、たとえばcDNA合成ステップに先立って行われてもよい。一般的に言えば、撮像は組織試料を区域に接触させた後の、しかし組織試料を分解する又は取り除く任意のステップ前のどの時期に行われてもよい。上記のように、これは組織試料に依存することがある。
【0117】
有利なことに、アレイは、アレイのフィーチャーとの関係での組織試料又はその画像の方向付けを促進するマーカーを含むことがある。アレイをマークするためのいかなる適切な手段も、組織試料が撮像されるとマーカーが検出可能であるように使用してもよい。たとえば、シグナル、好ましくは目に見えるシグナルを発する分子(たとえば蛍光分子)をアレイの表面に直接的に又は間接的に固定化することができる。好ましくは、アレイは、アレイ表面の別個の位置に少なくとも2個のマーカー、さらに好ましくは少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100個のマーカーを含む。都合の良いことに、数百又は数千のマーカーでさえ使用してもよい。マーカーは、パターンで提供してもよく、たとえばアレイの外縁、たとえばアレイのフィーチャーの全外列を構成する。他の情報を与えるパターン、たとえばアレイを区分する線を使用してもよい。これにより、組織試料の画像をアレイに合わせて整列させることが容易になり、又は実際には一般的にはアレイのフィーチャーを組織試料に関連付ける際に容易になることがある。したがって、マーカーは、シグナル発生分子が相互作用をしてシグナルを発生する固定化された分子であってもよい。代表的な例では、アレイは、標識された核酸がハイブリダイズすることのできるマーカーフィーチャー(たとえばアレイの基板上に固定化された核酸プローブ)を含むことがある。たとえば、標識された核酸分子又はマーカー核酸は、特定の波長(又は範囲の波長)の光を受けると、すなわち励起されると、蛍光を発することができる化学的部分に連結又はカップリングされてもよい。そのようなマーカー核酸分子は、組織試料を視覚化する又は撮像するために染色する前に、と同時に又は後でアレイに接触させてもよい。しかし、マーカーは組織試料が撮像されるときには検出可能でなければならない。したがって、好ましい実施形態では、マーカーは、組織試料を視覚化するのに使用されるのと同じ撮像条件を使用して検出してもよい。
【0118】
本発明の特に好ましい実施形態では、アレイは、標識された(好ましくは蛍光標識された)マーカー核酸分子(たとえばオリゴヌクレオチド)がハイブリダイズされるマーカーフィーチャーを含む。
【0119】
組織を撮像するステップは、当技術分野で公知のいかなる都合の良い組織学的手段(たとえば光、明視野、暗視野、位相差、蛍光、反射、干渉、共焦点顕微鏡又はその組合せ)を使用してもよい。典型的には、組織試料は、組織試料の異なる領域(たとえば細胞間)にコントラストを与える視覚化に先立って染色される。使用される染色剤の種類は、染色される組織の種類及び細胞の領域に依存することになる。そのような染色プロトコールは当技術分野では公知である。いくつかの実施形態では、1つを超える染色剤を使用して、組織試料の異なる面(たとえば組織試料の異なる領域、特定の細胞構造体(たとえば、オルガネラ)又は異なる細胞型)を視覚化(撮像)してもよい。他の実施形態では、組織試料は、たとえば組織試料が十分なコントラストを与える色素を既に含有している場合又は特定の形態の顕微鏡が使用される場合、試料を染色せずに可視化される又は撮像されてもよい。
【0120】
好ましい実施形態では、組織試料は蛍光顕微鏡を使用して視覚化される又は撮像される。
【0121】
撮像が望まれるが逆転写前に実行されなかった場合、組織試料、すなわち逆転写ステップ及び場合によって撮像に続いてアレイ基板に接触したままであるどんな残余の組織、は、好ましくはアレイからcDNA分子を放出するステップに先立って取り除かれる。したがって、本発明の方法はアレイを洗浄するステップを含むことがある。残余の組織試料の除去は、いかなる適切な手段を使用して実施してもよく組織試料に依存することになる。もっとも簡単な実施形態では、アレイは水を用いて洗浄してもよい。水は様々な添加剤、たとえば組織の除去を促進する界面活性剤(たとえば、洗剤)、酵素等、を含有していてもよい。いくつかの実施形態では、アレイはプロテイナーゼ酵素(及び適切なバッファー)(たとえばプロテイナーゼK)を含む溶液を用いて洗浄される。他の実施形態では、溶液は、たとえば組織試料が植物又は真菌供給源由来の場合は、その上又は代わりに、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ又はキチナーゼ酵素を含んでいてもよい。追加の実施形態では、アレイの洗浄に使用される溶液の温度は、たとえば少なくとも30℃、好ましくは少なくとも35、40、45、50又は55℃であってもよい。洗浄液は固定化された核酸分子の破壊を最小限に抑えるべきであることは明らかであろう。たとえば、いくつかの実施形態では、核酸分子は、アレイの基板に、間接的に、たとえば捕捉プローブ並びにRNA及び/又は捕捉プローブ並びに表面プローブのハイブリダイゼーションを介して固定化されることもあり、したがって洗浄ステップはアレイ上に固定化された分子間の相互作用に干渉すべきではない、すなわち核酸分子を変性させるべきではない。
【0122】
ハイブリダイゼーションを組織試料の核酸、たとえばRNA(好ましくは、mRNA)、と捕捉プローブ間で起こさせるのに十分な条件下で、アレイを組織試料に接触させるステップに続いて、ハイブリダイズした核酸を確保する(獲得する)ステップが行われる。捕捉された核酸を確保する又は獲得することは、ハイブリダイズした核酸の相補鎖が捕捉プローブに共有結合し(すなわち、ヌクレオチド結合、2つの直接隣接するヌクレオチドの並置された3’−ヒドロキシルと5’−リン酸末端の間でのリン酸ジエステル結合)、それによって、核酸が捕捉されるフィーチャーに特異的な位置ドメインで捕捉された核酸にタグ付けする又はマークすることを伴う。
【0123】
いくつかの実施形態では、ハイブリダイズした核酸(たとえば一本鎖核酸)を確保することは、捕捉プローブを伸長させて捕捉された核酸のコピーを作製する、たとえば捕捉された(ハイブリダイズした)RNAからcDNAを生成する、ことを伴ってもよい。これは、ハイブリダイズした核酸の相補鎖を合成する、たとえば捕捉されたRNA鋳型(捕捉プローブの捕捉ドメインにハイブリダイズしたRNA)に基づいてcDNAを生成する、ことを指すのは理解されるであろう。したがって、捕捉プローブを伸長させる最初のステップ、たとえばcDNA生成では、捕捉された(ハイブリダイズした)核酸(たとえばRNA)は伸長(たとえば逆転写)ステップのための鋳型として機能する。他の実施形態では、下に説明されるように、ハイブリダイズした核酸(たとえば部分的二本鎖DNA)を確保することは、ハイブリダイズした核酸(たとえば断片化されたDNA)を捕捉プローブに共有結合させる、たとえばライゲーション反応において、捕捉プローブに、捕捉プローブにハイブリダイズした核酸の相補鎖をライゲートすることを伴うことがある。
【0124】
逆転写は、RNA、好ましくはmRNA(メッセンジャーRNA)から、逆転写酵素によりcDNA(相補的又はコピーDNA)を合成するステップに関する。したがって、cDNAは、組織試料が採取された時点で細胞中に存在していたRNAのコピーとみることができる、すなわちcDNAは単離の時点で前記細胞内で発現された遺伝子のすべて又は一部を表している。
【0125】
捕捉プローブ、詳細には捕捉プローブの捕捉ドメインは、捕捉プローブにハイブリダイズした核酸の相補鎖を作製するためのプライマー、たとえば逆転写のためのプライマー、として機能する。それ故に、伸長反応(たとえば逆転写反応)により生成される核酸(たとえばcDNA)は捕捉プローブの配列を組み込む、すなわち伸長反応(たとえば逆転写反応)は、アレイのそれぞれのフィーチャーと接触している組織試料の核酸(たとえば転写産物)を間接的に標識する方法とみることもできる。上記のように、捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズは、アレイのフィーチャーごとに独自の配列を表す位置ドメイン(フィーチャー識別タグ)を含む。したがって、特定のフィーチャーで合成される核酸(たとえばcDNA)分子のすべてが同じ核酸「タグ」を含むことになる。
【0126】
アレイのそれぞれのフィーチャーで合成される核酸(たとえばcDNA)分子は、そのフィーチャーに接触している組織試料の領域又は区域(たとえば組織又は細胞型又は細胞群若しくはそのサブグループ)のゲノム又はそこから発現される遺伝子を表していることがあり、特定の条件下で、たとえば特定の時間に、特定の環境で、発生の段階で又は刺激に応答して、等で発現される遺伝子をさらに表していることがある。それ故に、いずれの単一フィーチャーのcDNAでも単一細胞で発現された遺伝子を表していることがある、又はフィーチャーが細胞間結合で試料と接触している場合、cDNAは1つよりも多い細胞で発現された遺伝子を表していることがある。同様に、単一細胞が複数のフィーチャーと接触している場合、それぞれのフィーチャーは前記細胞で発現された遺伝子の一部を表していることがある。同様に、捕捉された核酸がDNAである実施形態では、いかなる単一のフィーチャーも単一細胞又は1つよりも多い細胞のゲノムを表していることがある。代わりに、単一細胞のゲノムが複数のフィーチャーにより表されることもある。
【0127】
捕捉プローブを伸長するステップ、たとえば逆転写は、下に詳細に説明されるように、当技術分野においてその多くが存在するいかなる適切な酵素及びプロトコールを使用して実施してもよい。しかし、捕捉プローブの捕捉ドメインがプライマー、たとえば逆転写プライマーとして機能するので、最初の核酸(たとえばcDNA)鎖の合成のためのプライマーを提供する必要はないことは明らかであろう。
【0128】
好ましくは、本発明との関連では、確保された核酸(すなわち、捕捉プローブに共有結合している核酸)(たとえばcDNA)は二本鎖DNAを含むように処理される。しかし、いくつかの実施形態では、捕捉されたDNAは、たとえば部分的二本鎖断片化されたDNAが捕捉プローブにライゲートされている場合には、既に二本鎖DNAを含んでいることがある。二本鎖DNAを作製するための捕捉された核酸の処理は、第二のDNA(たとえばcDNA)鎖のみを生成する、すなわち二本鎖DNA分子の数を増加させずに二本鎖DNA分子を作製する単回反応において、又は一本鎖DNA(たとえば、線形増幅)若しくは二本鎖DNA(たとえばcDNA)(たとえば、指数増幅)の形態でもよい第二の鎖の複数のコピーを生成する増幅反応において達成してもよい。
【0129】
第二鎖DNA(たとえばcDNA)合成のステップは、たとえば下にさらに詳細に説明されているランダムプライマーを使用する第二鎖合成の個別のステップとして、又は増幅反応の最初のステップにおいて、アレイ上インサイツで行われてもよい。代わりに、第一鎖DNA(たとえばcDNA)(捕捉プローブを含む、すなわち組み込んでいる鎖)はアレイから放出されてもよく、第二鎖合成は、個別のステップとしてであれ増幅反応においてであれ、それに続いて、たとえば溶液中で実行される反応において起きてもよい。
【0130】
第二鎖合成がアレイ上で(すなわち、インサイツで)行われる場合、前記方法は、たとえばRNA消化酵素(リボヌクレアーゼ)、たとえばリボヌクレアーゼHを使用して、第二鎖合成の前に捕捉された核酸(たとえばRNA)を取り除く任意のステップを含んでいてもよい。この手法は当技術分野では周知であり記載されている。しかし、これは一般的には必ずしも必要ではなく、大半の場合には前記RNAは自然に分解する。アレイからの組織試料の除去は、一般にアレイから前記RNAを取り除くことになる。必要な場合にはリボヌクレアーゼHを使用して、RNA除去の強さを増加することができる。
【0131】
たとえば、大量のRNAを含む組織試料においては、二本鎖cDNAを生成するステップは、(アレイからの放出に続いて)直接シーケンシングをすることができるのに十分な量のcDNAを生じることがある。この場合には、第二鎖cDNA合成は、当技術分野で公知の及び下に説明されているいかなる手段によっても達成することができる。下に説明されているように、第二鎖合成反応はアレイ上で直接、すなわちcDNAがアレイ上に固定化されている間に、又は好ましくはcDNAがアレイ基板から放出された後で実施してもよい。
【0132】
他の実施形態では、確保された核酸(たとえば合成されたcDNA)の量を増強する、すなわち増幅して、DNAシーケンシングのために十分な量を生じることが必要になる。この実施形態では、確保された核酸(たとえばcDNA)分子の第一鎖は、アレイのフィーチャーの捕捉プローブも含むが、増幅反応、たとえばポリメラーゼ連鎖反応のための鋳型として機能する。増幅の最初の反応生成物は、DNA(たとえばcDNA)の第二鎖になり、これは増幅反応の追加のサイクルのための鋳型として機能することになる。
【0133】
上記の実施形態のどちらかにおいて、DNA(たとえばcDNA)の第二鎖は、捕捉プローブの相補体を含むことになる。捕捉プローブがユニバーサルドメインを、特にユニバーサルドメイン内に増幅ドメインを含む場合、これはDNA(たとえばcDNA)のそれに続く増幅のために使用してもよく、たとえば増幅反応は増幅ドメインと同じ配列を有するプライマー、すなわち増幅ドメインの相補体に相補的である(すなわち、ハイブリダイズする)プライマー、を含んでいてもよい。増幅ドメインは捕捉プローブの位置ドメインの上流にある(確保された核酸において、たとえば第一cDNA鎖)という事実に照らして、位置ドメインの相補体はDNA(たとえばcDNA)分子の第二の鎖に組み込まれることになる。
【0134】
DNA(たとえばcDNA)の第二の鎖が単回反応で生成される実施形態では、第二の鎖の合成はいかなる適切な手段によっても達成することができる。たとえば、好ましくは、しかし必ずしもそうではないが、アレイ基板から放出された第一鎖cDNAは、鋳型になったDNA合成が起こるのに十分な条件下で、ランダムプライマー(たとえばヘキサマープライマー)及びDNAポリメラーゼ、好ましくは鎖置換ポリメラーゼ、たとえばクレノー(exo)と一緒にインキュベートしてもよい。この手順は様々な長さの二本鎖cDNA分子を生じることになり、完全長cDNA分子、すなわちそれが合成された元になる全mRNAに対応するcDNA分子を生じる可能性はない。ランダムプライマーはランダムな位置で、すなわち配列の端部ではなくむしろ配列内で第一鎖cDNA分子にハイブリダイズすることになる。
【0135】
完全長のDNA(たとえばcDNA)分子、すなわち捕捉された核酸(たとえばRNA)分子の全体に対応する分子を生成するのが望ましい場合(核酸、たとえばRNAが組織試料内で部分的に分解している場合には、捕捉された核酸、たとえばRNA分子はゲノムDNAの最初の断片と同じ長さの「完全長」転写物にはならない)、確保された核酸(たとえば第一鎖cDNA)分子の3’端部を改変してもよい。たとえば、リンカー又はアダプターをcDNA分子の3’端部にライゲートしてもよい。これは、T4 RNAリガーゼ又はCircligase(商標)(Epicentre Biotechnologies)などの一本鎖ライゲーション酵素を使用して達成してもよい。
【0136】
代わりに、ヘルパープローブ(第一鎖cDNA分子の3’端部にハイブリダイズすることができる部分的二本鎖DNA分子)を、T4 DNAリガーゼなどの二本鎖ライゲーション酵素を使用して確保された核酸(たとえば第一鎖cDNA)分子の3’端部にライゲートしてもよい。ライゲーションステップに適した他の酵素は当技術分野では公知であり、たとえばTth DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、サーモコッカス(Thermococcus)菌種(9゜N株)DNAリガーゼ(9゜N(商標)DNAリガーゼ、New England Biolabs)及びAmpligase(商標)(Epicentre Biotechnologies)が含まれる。ヘルパープローブは、確保された核酸(たとえば第一cDNA鎖)にライゲートされているヘルパープローブの一部に相補的であるプライマーを用いて、第二鎖DNA(たとえばcDNA)合成をそこからプライミングすることができる特定の配列も含む。追加の代替物は、確保された核酸、たとえば第一鎖cDNA分子の3’端部でポリヌクレオチドテール、たとえばポリAテール、を組み込むターミナルトランスフェラーゼ活性酵素の使用を含む。第二鎖合成はポリTプライマーを使用してプライミングしてもよく、これには追加の増幅のための特定の増幅ドメインが含まれてもよい。「完全長」二本鎖DNA(たとえばcDNA)分子を生成するための他の方法(又は最長第二鎖合成)は当技術分野では確立している。
【0137】
いくつかの実施形態では、第二鎖合成は、たとえばClonetech(登録商標)からのSMART(商標)技術を使用する鋳型切替えの方法を使用してもよい。SMART(RNA鋳型の5’端部での切替え機構)技術は当技術分野では確立しており、逆転写酵素、たとえばSuperscript(登録商標)II(Invitrogen)、が伸長されたcDNA分子の3’端部で数個のヌクレオチドを付加する、すなわち一本鎖DNAオーバーハングが3’端部にあるDNA/RNAハイブリッドを作製することができるという発見に基づいている。DNAオーバーハングは、オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズしてcDNA分子のさらなる伸長のための追加の鋳型を提供することができる標的配列を提供することができる。有利なことに、cDNAオーバーハングにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブは増幅ドメイン配列を含有しており、このドメイン配列の相補体は合成された第一鎖cDNA産物に組み込まれる。cDNA第一鎖に組み込まれている相補的増幅ドメイン配列にハイブリダイズすることになる増幅ドメイン配列を含有するプライマーを反応混合物に添加して、適切なポリメラーゼ酵素及び鋳型としてcDNA第一鎖を使用する第二鎖合成をプライミングすることができる。この方法は、アダプターをcDNA第一鎖の3’端部にライゲートする必要性を回避する。鋳型切替えは最初は5’キャップ構造を有する完全長mRNAのために開発されたが、以来キャップ構造のない切断型mRNAでも等しくうまく機能することが実証されてきた。したがって、鋳型切替えは、完全長及び/又は部分的若しくは切断型cDNA分子を生成する本発明の方法において使用してもよい。したがって、本発明の好ましい実施形態では、第二鎖合成は鋳型切替えを利用する、又はこれにより達成されてもよい。特に好ましい実施形態では、鋳型切替え、すなわちcDNA第一鎖をさらに伸長して相補的増幅ドメインを組み込む反応、はインサイツで実施される(捕捉プローブが、直接的に又は間接的にアレイにまだ結合している間に)。好ましくは、第二鎖合成反応もインサイツで実施される。
【0138】
DNA(たとえばcDNA)分子を増強する、濃縮する又は増幅することが必要である又は有利なことがある実施形態では、増幅ドメインはDNA(たとえばcDNA)分子に組み込まれてもよい。上記のように、捕捉プローブが増幅ドメインを含むユニバーサルドメインを含む場合、第一増幅ドメインは確保された核酸分子(たとえばcDNA分子)の第一鎖に組み込まれてもよい。これらの実施形態では、第二鎖合成は第二増幅ドメインを組み込むことができる。たとえば、第二鎖cDNAを生成するのに使用されるプライマー(たとえばランダムヘキサマープライマー、ポリTプライマー、ヘルパープローブに相補的であるプライマー)は、その5’端部に増幅ドメイン、すなわち増幅プライマーがハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を含んでいることがある。したがって、得られた二本鎖DNAは、二本鎖DNA(たとえばcDNA)分子のそれぞれの5’端部で又は5’端部の方に向かって増幅ドメインを含むことがある。これらの増幅ドメインは、増幅反応、たとえばPCRにおいて使用されるプライマーのための標的として用いてもよい。代わりに、確保された核酸分子(たとえば第一鎖cDNA分子)の3’端部にライゲートされているリンカー又はアダプターは、第二増幅ドメインを含む第二ユニバーサルドメインを含むことがある。同様に、第二増幅ドメインは、鋳型切替えにより第一鎖cDNA分子に組み込まれていることがある。
【0139】
捕捉プローブが、特に増幅ドメインを含んでいるユニバーサルドメインを含まない実施形態では、cDNA分子の第二鎖は上記説明に従って合成されてもよい。得られた二本鎖DNA分子は、第一DNA(たとえばcDNA鎖)の5’端部に(第一増幅ドメイン)、たとえばcDNA合成ステップにおいて、第二鎖DNAに組み込まれない場合は、第二のDNA(たとえばcDNA鎖)の5’端部に(第二増幅ドメイン)増幅ドメインを組み込むように改変することができる。そのような増幅ドメインは、たとえばライゲーティング二本鎖アダプターにより、DNA(たとえばcDNA)分子の端部に組み込んでもよい。ライゲーションステップに適した酵素は当技術分野では公知であり、たとえばTth DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、サーモコッカス(Thermococcus)菌種(9゜N株)DNAリガーゼ(9゜N(商標)DNAリガーゼ、New England Biolabs)、Ampligase(商標)(Epicentre Biotechnologies)及びT4 DNAリガーゼが含まれる。好ましい実施形態では、第一及び第二増幅ドメインは異なる配列を含む。
【0140】
上記から、したがって、様々な方法及び技法並びに当技術分野で公知のそのような技法の組合せにより、たとえばそのようなドメインを含むプライマーの使用、アダプターのライゲーション、ターミナルトランスフェラーゼ酵素の使用により及び/又は鋳型切替え法により、増幅ドメインを含むことがあるユニバーサルドメインを、確保された(すなわち、伸長した又はライゲートされた)DNA分子に(たとえばcDNA分子、又はその相補体(たとえば、第二鎖)に)付加してもよいことは明らかである。本明細書の考察から明白であるように、そのようなドメインは、アレイからDNA分子を放出する前に又は後で添加してもよい。
【0141】
本発明の方法により合成された単一アレイ由来のDNA(たとえばcDNA)分子のすべてが、同じ第一及び第二増幅ドメインを含んでいることがあることは上記の説明から明らかであろう。その結果として、単回増幅反応、たとえばPCRは、DNA(たとえばcDNA)分子のすべてを増幅するのに十分であることがある。したがって、好ましい実施形態では、本発明の方法はDNA(たとえばcDNA)分子を増幅するステップを含むことがある。一実施形態では、増幅ステップは、DNA(たとえばcDNA)分子のアレイの基板からの放出後に実施される。他の実施形態では、増幅はアレイ上で(すなわち、アレイ上インサイツで)実施してもよい。増幅反応はアレイ上で実施できることが当技術分野では公知であり、そのような反応を実行するためのオンチップ熱サイクラーが存在する。したがって、一実施形態では、シーケンシングプラットフォームとして又はいかなる形態の配列解析においても(たとえば、次世代シーケンシング技術において又はそれにより)使用するための当技術分野では公知であるアレイは、本発明のアレイの基盤(たとえば、イルミナビーズアレイ、等)として用いてもよい。
【0142】
DNA(たとえばcDNA)の第二鎖の合成のためには、アレイの基板から放出されたcDNAが部分的二本鎖核酸分子を含んでいる場合には、鎖置換ポリメラーゼ(たとえば、Φ29DNAポリメラーゼ、Bst(exo
−)DNAポリメラーゼ、クレノー(exo
−)DNAポリメラーゼ)を使用するのが好ましい。たとえば、捕捉プローブが表面プローブを介してアレイの基板に間接的に固定化され、DNA(たとえばcDNA)分子を放出するステップは切断ステップを含む実施形態では、放出された核酸は少なくとも部分的二本鎖(たとえば、DNA:DNA、DNA:RNA又はDNA:DNA/RNAハイブリッド)であることになる。鎖置換ポリメラーゼは、確実に第二cDNA鎖合成が位置ドメイン(フィーチャー識別ドメイン)の相補体を第二DNA、たとえばcDNA鎖に組み込むのに必要である。
【0143】
アレイの表面又は基板から少なくとも一部のDNA(たとえばcDNA分子又はそのアンプリコン)を放出するステップはいくつかの方法を使用して達成できることは明らかになるであろう。放出ステップの主目的は、DNA(たとえばcDNA分子又はそのアンプリコン)がアレイ上のそのフィーチャー(又は位置)に従って「タグ」付けされるように捕捉プローブ(又はその相補体)の位置ドメインが組み込まれる(又は含まれる)分子を生じることである。したがって、放出ステップは、DNA(たとえばcDNA分子又はそのアンプリコン)をアレイから取り除き、そのDNA(たとえばcDNA分子又はアンプリコン)は位置ドメイン又はその相補体を含む(前記位置ドメイン又はその相補体が、たとえば捕捉プローブの伸長により確保された核酸、たとえば第一鎖cDNAに組み込まれていた、及び場合によっては、第二鎖合成がアレイ上で起こる場合は第二鎖DNAにコピーされていた、又は増幅がアレイ上で起こる場合はアンプリコンにコピーされていたせいで)。それ故に、組織試料の様々な領域と関連付けることができる配列解析データを生じるためには、放出された分子が捕捉プローブ(又はその相補体)の位置ドメインを含むことが不可欠である。
【0144】
放出された分子は第一及び/又は第二鎖DNA(たとえばcDNA分子又はアンプリコン)である可能性があるので、及び捕捉プローブはアレイ上に間接的に固定化されていることもあるので、放出ステップがアレイからのDNA(たとえばcDNA)分子の切断のステップを含むことがあるけれども、放出ステップは核酸切断のステップを必要としない、すなわち、DNA(たとえばcDNA分子又はアンプリコン)は、二本鎖分子を変性する、たとえば第二cDNA鎖を第一cDNA鎖から放出する、又はアンプリコンをその鋳型から放出する、又は第一鎖cDNA分子(すなわち、伸長された捕捉プローブ)を表面プローブから放出するだけで放出することができることは理解されるであろう。したがって、DNA(たとえばcDNA)分子は、核酸切断により及び/又は変性により(たとえば、加熱して二本鎖分子を変性することにより)アレイから放出することができる。増幅がアレイ上インサイツで実行される場合、これは当然のことながら、循環反応において変性によりアンプリコンを放出することを包含することになる。
【0145】
いくつかの実施形態では、DNA(たとえばcDNA)分子は、捕捉プローブのユニバーサルドメイン又は位置ドメインに位置していることがある切断ドメインの酵素的切断により放出される。上記のように、切断ドメインは、放出されたDNA(たとえばcDNA)分子が位置(識別)ドメインを含むように位置ドメインの上流に(5’端部に)位置していなければならない。核酸切断のために適した酵素には、制限エンドヌクレアーゼ(たとえばRsal)が含まれる。他の酵素、たとえばウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)とDNAグリコシラーゼ−リアーゼエンドヌクレアーゼVIIIの混合物(USER(商標)酵素)又はMutYとT7エンドヌクレアーゼI酵素の組合せは、本発明の方法の好ましい実施形態である。
【0146】
代わりの実施形態では、DNA(たとえばcDNA)分子は物理的手段によりアレイの表面又は基板から放出されることがある。たとえば、捕捉プローブが、たとえば表面プローブへのハイブリダイエーションを介してアレイの基板に間接的に固定化されている実施形態では、核酸分子間の相互作用を破壊するだけで十分である可能性がある。核酸分子間の相互作用を破壊する、たとえば二本鎖核酸分子を変性する、ための方法は、当技術分野では周知である。DNA(たとえばcDNA)分子を放出するための(すなわち、合成されたDNA(たとえばcDNA)分子をアレイからはぎ取る)率直な方法は、二本鎖分子の水素結合に干渉する溶液を使用することである。本発明の好ましい実施形態では、DNA(たとえばcDNA)分子は、加熱水、たとえば少なくとも85℃、好ましくは少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99℃の水又はバッファーを適用することにより放出することができる。水素結合を破壊するのに十分な温度の使用の代替案又は追加として、前記溶液は核酸分子間の相互作用をさらに不安定化して、DNA(たとえばcDNA)分子を放出することができる塩、界面活性剤、等を含んでいてもよい。
【0147】
高温液、たとえば90〜99℃水の適用で、捕捉プローブ又は表面プローブをアレイ基板に固定化するのに使用される共有結合を破壊するのに十分でもありうることは理解されるであろう。それ故に、好ましい実施形態では、DNA(たとえばcDNA)分子は、熱水をアレイに適用して共有結合的に固定化された捕捉又は表面プローブを破壊することにより放出してもよい。
【0148】
放出されたDNA、たとえばcDNA分子(放出されたDNA、たとえばcDNA分子を含む溶液)は、さらなる操作、たとえば第二鎖合成及び/又は増幅、のために収集されることは暗黙的に含まれる。にもかかわらず、本発明の方法は放出されたDNA(たとえばcDNA)分子を収集する又は回収するステップを含むとみることもできる。上記のように、インサイツ増幅との関連では、放出された分子は確保された核酸(たとえばcDNA)のアンプリコンを含んでいてもよい。
【0149】
本発明の方法の実施形態では、どんな伸長されていない又はライゲートされていない捕捉プローブも取り除くのが望ましいことがある。これは、たとえば、アレイからDNA分子を放出するステップの後であってもよい。たとえば伸長されていない又はライゲートされていないプローブの分解のための酵素(たとえばエキソヌクレアーゼ)の使用を含む、いかなる望ましい又は都合のよい方法でも、そのような除去のために使用してもよい。
【0150】
アレイから放出されており、上記の通りに改変されている可能性があるDNA(たとえばcDNA分子又はアンプリコン)は、研究するために解析される(たとえば、その配列を決定するが、上記のように、実際の配列決定は必要ではなく、配列を解析するいかなる方法を使用してもよい)。したがって、核酸解析のいかなる方法を使用してもよい。配列解析のステップにより、位置付けられたドメインを同定することができ、それ故に解析された分子を組織試料内の位置に局在化することが可能になる。同様に、解析された分子の性質又は同一性を決定することができる。このようにして、アレイ中(それ故に組織試料中)の所与の位置の核酸(たとえばRNA)を決定することができる。それ故に、解析ステップは、解析された分子(及びそれ故に「標的」分子)及びその位置ドメインを同定するいかなる方法も含む又は使用してもよい。一般的に、そのような方法は配列特異的方法になる。たとえば、前記方法は配列特異的プライマー又はプローブ、特に位置ドメインに及び/又は検出される若しくは解析される特定の核酸分子(たとえば検出される核酸(たとえばRNA若しくはcDNA分子)に対応するDNA分子)に特異的であるプライマー又はプローブを使用することがある。典型的には、そのような方法では、配列特異的増幅プライマー、たとえばPCRプライマーを使用してもよい。
【0151】
いくつかの実施形態では、標的関連分子のサブセット又はファミリー(たとえば配列類似性及び/又は保存されたドメインを共有するタンパク質の特定の群(たとえば受容体のファミリー)をコードする配列のすべて)を解析するのが望ましいことがある。それ故に、本明細書に記載される増幅及び/又は解析法は、捕捉された核酸又はそれに由来する核酸(たとえばアンプリコン)のサブセットにハイブリダイズする縮重又は遺伝子ファミリー特異的プライマー又はプローブを使用してもよい。特に好ましい実施形態では、増幅及び/又は解析法は、ユニバーサルプライマー(すなわち、捕捉された配列のすべてに共通するプライマー)を標的分子のサブセットに特異的な縮重又は遺伝子ファミリー特異的プライマーと組み合わせて利用してもよい。
【0152】
したがって、一実施形態では、配列解析の増幅ベースの、特にPCRベースの方法が使用される。
【0153】
しかし、放出されたDNA(たとえばcDNA)分子を改変する及び/又は増幅するステップは試料に追加の成分、たとえば酵素、プライマー、ヌクレオチド、等を導入してもよい。それ故に、本発明の方法は、たとえばシーケンシング反応に干渉することがあるオリゴヌクレオチドプライマー、ヌクレオチド、塩、等を取り除くために、配列解析に先立って放出されたDNA(たとえばcDNA分子又はアンプリコン)を含む試料を精製するステップをさらに含むことがある。DNA(たとえばcDNA)分子を精製するいかなる適切な方法を使用してもよい。
【0154】
上記のように、放出されたDNA分子の配列解析は直接的でも間接的でもよい。したがって、配列解析基質(配列解析ステップ又は手順を受ける分子とみることもできる)はアレイから放出される分子そのままでもよく、前記分子に由来する分子であってもよい。したがって、たとえば、シーケンシング反応を含む配列解析ステップとの関連ではシーケンシング鋳型は、アレイから放出される分子でもよく、前記分子に由来する分子であってもよい。たとえば、アレイから放出される第一及び/又は第二鎖DNA、たとえばcDNA分子、は配列解析を直接受けてもよく(たとえば、シーケンシング)、すなわち配列解析反応又は手順に直接関与してもよい(たとえば、シーケンシング反応若しくはシーケンシング手順、又はシーケンシングされる若しくは他の方法で同定される分子である)。インサイツ増幅との関連では、放出された分子はアンプリコンであってもよい。代わりに、放出された分子は、配列解析(たとえば、シーケンシング又は他の手段による同定)の前に第二鎖合成又は増幅のステップを受けてもよい。したがって、配列解析基質(たとえば、鋳型)は、アレイから直接放出される分子のアンプリコン又は第二鎖でもよい。
【0155】
二本鎖分子の両鎖は配列解析(たとえば、シーケンシングされる)を受けてもよいが、本発明はこれに限定されず、一本鎖分子(たとえば、cDNA)が解析され(たとえば、シーケンシングされ)てもよい。たとえば、様々なシーケンシング技術(たとえばHelicos or Pacbio技術又は開発中のナノポアシーケンシング技術)を単一分子シーケンシングのために使用してもよい。したがって、一実施形態では、DNA(たとえばcDNA)の第一鎖がシーケンシングを受けてもよい。第一鎖DNA(たとえばcDNA)は、単一分子シーケンシングを可能にするために3’端部で改変される必要があることもある。これは、第二DNA(たとえばcDNA)鎖を取り扱うための手順に類似する手法によって実行することができる。そのような手法は当技術分野では公知である。
【0156】
本発明の好ましい態様では、配列解析は捕捉された核酸(たとえばRNA)配列の一部及び位置ドメインの配列を同定する又は明らかにすることになる。位置ドメイン(又はタグ)の配列は、核酸(たとえばmRNA)分子が捕捉されたフィーチャーを同定することになる。捕捉された核酸(たとえばRNA)分子の配列は、それが対応する遺伝子を決定するために、試料が由来する生物の配列データベースと比較されることがある。組織試料のどの領域(たとえば、細胞)がフィーチャーと接触していたのかを決定することにより、組織試料のどの領域が前記遺伝子を発現していた(又は、たとえば空間ゲノミクスの場合では、遺伝子を含有していた)のかを決定することが可能である。この解析は、本発明の方法により生成されるDNA(たとえばcDNA)分子のすべてについて達成され、組織試料の空間的トランスクリプトーム又はゲノムが得られる。
【0157】
代表的な例として、シーケンシングデータは解析されて、その配列を捕捉プローブの特定のスピーシーズに(すなわち位置ドメインの配列に従って)分類してもよい。これは、たとえばそれぞれの捕捉プローブ位置ドメイン(タグ)配列について配列を個々のファイルに分類するFastXツールキットFASTQ Barcodeスプリッターツールを使用することにより達成することができる。それぞれのスピーシーズの(すなわちそれぞれのフィーチャー由来の)配列は解析されて、転写物の同一性を決定することができる。たとえば、配列は、配列を1つ又は複数のゲノムデータベース、好ましくは組織試料が得られた生物のデータベースと比較するBlastnソフトウェアを使用して同定してもよい。本発明の方法により生成される配列に最大の類似性のあるデータベース配列の同一性は前記配列に割り当てることができる。一般に、少なくとも1e
−6、好ましくは1e
−7、1e
−8又は1e
−9の確実性を有するヒットのみが、首尾よく同定されたとみることができる。
【0158】
本発明の方法ではいかなる核酸シーケンシング法でも使用できることは明らかであろう。しかし、いわゆる「次世代シーケンシング」技法は、本発明において特に有用になる。高処理シーケンシングは、これにより多数の核酸を極めて短期間で部分的にシーケンシングすることができるので、本発明の方法においては特に有用である。完全に又は部分的にシーケンシングされたゲノムの数が最近激増したことに照らして、それぞれの分子が対応する遺伝子を決定するために生成されたDNA(たとえばcDNA)分子の完全長をシーケンシングすることは不可欠ではない。たとえば、DNA(たとえばcDNA)分子のそれぞれの端部から最初の100ヌクレオチドで、その核酸(たとえばmRNA)が捕捉されたフィーチャー(すなわち、アレイ上のその位置)と発現される遺伝子の両方を同定するのに十分であるはずである。DNA(たとえばcDNA)分子の「捕捉プローブ端部」からの配列反応により、位置ドメインの配列及び少なくとも約20塩基、好ましくは30又は40塩基の転写物特異的配列データが得られる。「非捕捉プローブ端部」からの配列反応により、少なくとも約70塩基、好ましくは80、90又は100塩基の転写物特異的配列データが得られることがある。
【0159】
代表的な例として、シーケンシング反応は、Illumina(商標)技術において使用されるなどの可逆的ダイターミネーターに基づいていてもよい。たとえば、DNA分子は、たとえばガラス又はシリコンスライド上のプライマーに先ず結合され、局所的クローンコロニーが形成されるように増幅される(ブリッジ増幅)。4種類のddNTPが添加され、組み込まれなかったヌクレオチドは洗い流される。ピロシーケンスとは異なり、DNAは一度に1つのヌクレオチドのみを伸長することができる。蛍光標識されたヌクレオチドの画像がカメラで取られ、次に色素は終端3’ブロッカーと共にDNAから化学的に取り除かれ、次のサイクルが可能になる。これは必要な配列データが得られるまで繰り返すことができる。この技術を使用すれば、数千の核酸を1つのスライド上で同時にシーケンシングすることができる。
【0160】
他の高処理シーケンシング技術、たとえばピロシーケンスは本発明の方法において等しく適切である可能性がある。この方法では、DNAはオイル溶液中の水滴内で増幅され(エマルジョンPCR)、それぞれの水滴には単一プライマー被覆ビーズに付着した単一DNA鋳型が含有されており、このビーズは次にクローンコロニーを形成する。シーケンシング装置には多くのピコリットル容積のウェルが含有され、それぞれのウェルは単一ビーズとシーケンシング酵素を含有している。ピロシーケンスは、新生DNAに付加される個々のヌクレオチドの検出のために光を発するルシフェラーゼを使用し、組合せデータを使用して配列読出しを生む。
【0161】
開発中の技術の例は、DNAの重合中に放出される水素イオンの検出に基づいている。シーケンシングされる鋳型DNA鎖を含有するマイクロウェルは1種類のヌクレオチドで満たされる。導入されたヌクレオチドが主要な鋳型ヌクレオチドに相補的である場合、前記ヌクレオチドは成長中の相補鎖に組み込まれる。このせいで、超感受性イオンセンサーを始動させる水素イオンが放出されるが、これは反応が起きたことを示している。ホモポリマーリピートが鋳型配列に存在する場合、複数のヌクレオチドが一回のサイクルで組み込まれることになる。このせいで、対応する数の水素イオンが放出されて電子シグナルは比例して高くなる。
【0162】
したがって、次世代のシーケンシングフォーマットは徐々に利用されるようになっていることは明白であり、そうしたプラットフォームの主な特長の1つとして実行時間が短くなるにしたがって、他のシーケンシング技術が本発明の方法において有用になることは明らかとなろう。
【0163】
本発明の不可欠な特長は、上記のように、捕捉された核酸分子の相補鎖を捕捉プローブに固定する(たとえば捕捉されたRNA分子を逆転写する)ステップである。逆転写反応は当技術分野では周知であり、代表的な逆転写反応では、反応混合物には逆転写酵素、dNTP及び適切なバッファーが含まれる。反応混合物には、他の成分(たとえばリボヌクレアーゼ阻害剤(複数可))が含まれることもある。プライマー及び鋳型は捕捉プローブの捕捉ドメインであり、捕捉されたRNA分子は上に記載されている。主題方法では、それぞれのdNTPは典型的には、約10〜5000μM、通常は約20〜1000μMに及ぶ量で存在していることになる。DNAポリメラーゼ活性のある酵素を使用して、同等の反応を実施して捕捉されたDNA分子の相補鎖を生成してもよいことは明らかであろう。この種の反応は当技術分野では周知であり、下にさらに詳細に説明されている。
【0164】
望ましい逆転写酵素活性は、1つ又は複数の別個の酵素によって提供されることがあり、適切な例は、M−MLV、MuLV、AMV、HIV、ArrayScript(商標)、MultiScribe(商標)、ThermoScript(商標)並びにSuperScript(登録商標)I、II及びIII酵素である。
【0165】
逆転写酵素反応はいかなる適切な温度でも実行でき、その温度は酵素の特性に依存することになる。典型的には、逆転写酵素反応は37〜55℃で実施されるが、この範囲外の温度も適切であることもある。反応時間は、わずか1、2、3、4若しくは5分又は48時間にもなることがある。典型的には、反応は選択に従って、5〜120分、好ましくは5〜60、5〜45若しくは5〜30分又は1〜10若しくは1〜5分間実行されることになる。反応時間は決定的ではなく、いかなる所望の反応時間を使用してもよい。
【0166】
前述の通り、方法のある種の実施形態には増幅ステップが含まれ、このステップでは、たとえば試料を濃縮して核酸(たとえば組織試料から捕捉された転写物)のさらに良好な表出を得るために生成されたDNA(たとえばcDNA)分子のコピー数が増加される。増幅は所望により、線形でも指数関数的でもよく、興味深い代表的増幅プロトコールは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、等温増幅、等が含まれるが、これらに限定されない。
【0167】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は当技術分野では周知であり、米国特許第4683202号、米国特許第4683195号、米国特許第4800159号、米国特許第4965188号及び米国特許第5512462号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。代表的PCR増幅反応では、反応混合物はアレイからの上記の放出されたDNA(たとえばcDNA)分子を含み、この分子はプライマー伸長反応において用いられる1つ又は複数のプライマー、たとえば第一及び/又は第二増幅ドメインにハイブリダイズするPCRプライマー(たとえば、幾何学的(又は指数関数的)増幅において用いられるフォワード及びリバースプライマー又は線形増幅において用いられる単一プライマー)と組み合わされる。放出されたDNA(たとえばcDNA)分子(以下、便宜上鋳型DNAと呼ばれる)が接触されるオリゴヌクレオチドプライマーは、アニーリング条件下(下にさらに極めて詳細に説明されている)で相補的鋳型DNAへのハイブリダイゼーションを提供するのに十分な長さになる。プライマーの長さは増幅ドメインの長さに依存することになるが、一般的には少なくとも10bp長、通常は少なくとも15bp長、さらに通常では少なくとも16bp長になり、30bp長にも又はさらに長くなることもあり、プライマーの長さは一般的には18〜50bp長、通常は約20〜35bp長に及ぶことになる。鋳型DNAは、鋳型DNAのプライマー伸長線形又は指数関数的増幅が望まれるかどうかに応じて、単一プライマー又は2つのプライマー(フォワード及びリバースプライマー)のセットに接触させてもよい。
【0168】
上記の成分に加えて、主題方法において作製された反応混合物は典型的には、ポリメラーゼ及びデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)を含む。望ましいポリメラーゼ活性は、1つ又は複数の別個のポリメラーゼ酵素により提供されることがある。多くの実施形態では、反応混合物は少なくともファミリーAポリメラーゼを含み、興味深い代表的ファミリーAポリメラーゼには、天然に存在するポリメラーゼ(Taq)並びにKlentaq(Barnes et al.Proc.Natl.Acad.Sci USA(1994)91:2216〜2220頁に記載されている)などのその誘導体及び類似体を含むサーマス・アクアチカス(Thermus aquaticus)ポリメラーゼ;天然に存在するポリメラーゼ(Tth)並びにその誘導体及び類似体を含むサーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)ポリメラーゼ、等が含まれるがこれらに限定されない。実行される増幅反応が高忠実度反応である、ある種の実施形態では、反応混合物は、たとえばファミリーBポリメラーゼにより提供されることのあるような3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素をさらに含んでいてもよく、興味深いファミリーBポリメラーゼには、Perier et al.、Proc.Natl.Acad.Sci USA(1992)89:5577〜5581頁に記載されているサーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)DNAポリメラーゼ(Vent);Lundberg et al.、Gene(1991)108:1〜6頁に記載されているパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)DNAポリメラーゼ(Pfu)、パイロコッカス・ヴェッセイ(Pyrococcus woesei(Pwo))、等が含まれるがこれらに限定されない。反応混合物がファミリーAとファミリーBポリメラーゼの両方を含む場合、ファミリーAポリメラーゼはファミリーBポリメラーゼよりも多い量で反応混合物に存在していてもよく、活性の違いは通常少なくとも10倍、さらに通常では少なくとも約100倍になる。通常、反応混合物は、存在する4種の天然に存在する塩基に対応して4つの異なる種類のdNTP(すなわちdATP、dTTP、dCTP及びdGTP)を含むことになる。主題方法では、それぞれのdNTPは典型的には、約10〜5000μM、通常は約20〜1000μMに及ぶ量で存在することになる。
【0169】
主題方法の逆転写酵素及び/又は増幅ステップにおいて調製された反応混合物は、一価イオンの供給源、二価陽イオンの供給源及び緩衝剤を含む水性緩衝媒体をさらに含んでいることがある。KCl、K−アセテート、NH
4−アセテート、K−グルタミン酸、NH
4Cl、硫酸アンモニウム、等などの一価イオンのいかなる都合の良い供給源も用いることができる。二価陽イオンは、マグネシウム、マンガン、亜鉛、等であってもよく、陽イオンは典型的にはマグネシウムになる。MgCl
2、Mg−アセテート、等を含むマグネシウム陽イオンのいかなる都合の良い供給源も用いることができる。バッファー中に存在するMg
2+の量は0.5〜10mMに及ぶことがあるが、好ましくは約3〜6mMに及ぶことになり、理想的には約5mMになる。バッファー中に存在していてもよい代表的な緩衝剤又は塩には、Tris、Tricine、HEPES、MOPS、等が含まれ、緩衝剤の量は典型的には、約5〜150mM、通常は約10〜100mM、さらに通常は約20〜50mMに及ぶことになり、ある種の好ましい実施形態では、緩衝剤は約6.0〜9.5に及ぶpHを与えるのに十分な量で存在することになり、もっとも好ましくは72℃でpH7.3である。緩衝媒体に存在していてもよい他の薬剤には、EDTA、EGTA、等などのキレート剤が含まれる。
【0170】
主題方法のステップの逆転写酵素、DNA伸長又は増幅反応混合物を調製する際に、様々な構成成分はいかなる都合の良い順番で組み合わせてもよい。たとえば、増幅反応では、バッファーはプライマー、ポリメラーゼと、次に鋳型DNAと組み合わせてもよく、又は様々な構成成分のすべてを同時に組み合わせて反応混合物を作製してもよい。
【0171】
上記のように、本発明の好ましい実施形態では、DNA(たとえばcDNA)分子は核酸分子の端部に増幅ドメインを付加することにより改変してもよく、これにはライゲーション反応を含むことがある。ライゲーション反応は、捕捉プローブがアレイ表面に間接的に固定化されている場合には、アレイ上での捕捉プローブのインサイツ合成にも必要とされる。
【0172】
当技術分野では公知であるように、リガーゼは、2つの直接隣接している核酸の並置された3’ヒドロキシルと5’リン酸終端間でのリン酸ジエステル結合の形成を触媒する。いかなる都合の良いリガーゼでも用いてよく、興味深い代表的リガーゼには、温度感受性及び熱安定性リガーゼが含まれるがこれらに限定されない。温度感受性リガーゼには、バクテリオファージT4 DNAリガーゼ、バクテリオファージT7リガーゼ及びイー・コリ(E.coli)リガーゼが含まれるがこれらに限定されない。熱安定性リガーゼには、Taqリガーゼ、Tthリガーゼ及びPfuリガーゼが含まれるがこれらに限定されない。熱安定性リガーゼは、原核、真核又は古細菌生物を含むがこれらに限定されない好熱性又は超好熱性生物から得られる。ある種のRNAリガーゼも本発明の方法において用いることができる。
【0173】
このライゲーションステップでは、適切なリガーゼ並びに必要である及び/又は望ましいどんな試薬でも反応混合物と組み合わされて、関連オリゴヌクレオチドのライゲーションが起こるのに十分な条件下で維持される。ライゲーション反応条件は当業者には周知である。ライゲーション中、ある種の実施形態における反応混合物は、約4℃〜約50℃、たとえば約20℃〜約37℃に及ぶ温度で、約5秒〜約16時間、たとえば約1分〜約1時間に及ぶ期間維持されてもよい。さらに他の実施形態では、反応混合物は約35℃〜約45℃、たとえば約37℃〜約42℃に及ぶ温度で、たとえば38℃、39℃、40℃又は41℃で又は約38℃、39℃、40℃又は41℃で、約2分〜約8時間を含む、約5秒〜約16時間、たとえば約1分〜約1時間に及ぶ期間維持されてもよい。代表的な実施形態では、ライゲーション反応混合物には、50mM Tris pH7.5、10mM MgCl
2、10mM DTT、1mM ATP、25mg/ml BSA、0.25ユニット/mlリボヌクレアーゼ阻害剤及びT4 DNAリガーゼが0.125ユニット/mlで含まれる。さらに別の代表的実施形態では、2.125mMマグネシウムイオン、0.2ユニット/mlリボヌクレアーゼ阻害剤及び0.125ユニット/ml DNAリガーゼが用いられる。反応におけるアダプターの量は試料中のDNA、たとえばcDNAの濃度に依存することになり、一般にはDNA、たとえばcDNAのモル量の10〜100倍の間で存在することになる。
【0174】
代表的な例として、本発明の方法は、以下の
(a)アレイを組織試料に接触させるステップであって、前記アレイは捕捉プローブの複数のスピーシーズが、直接的に又は間接的に固定化されている基板を備え、それぞれのスピーシーズはアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブが逆転写酵素(RT)プライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、組織試料のRNAが前記捕捉プローブにハイブリダイズするように、5’から3’に向けて、
(i)アレイ上の捕捉プローブの位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸を含む、ステップと、
(b)アレイ上の組織試料を撮像するステップと、
(c)捕捉されたmRNA分子を逆転写してcDNA分子を生成するステップと、
(d)アレイを洗浄して残余の組織を取り除くステップと、
(e)前記cDNA分子の少なくとも一部をアレイの表面化から放出するステップと、
(f)放出されたcDNA分子上で第二鎖cDNA合成を実施するステップと、
(g)前記cDNA分子の配列を解析する(たとえば、シーケンシングする)ステップと
を含むことがある。
【0175】
代わりの代表的な例として、本発明の方法は、以下の
(a)アレイを組織試料に接触させるステップであって、前記アレイは捕捉プローブの少なくとも2つのスピーシーズが、直接的に又は間接的に固定化されている基板を備え、それぞれのスピーシーズがアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブが逆転写酵素(RT)プライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、組織試料のRNAが前記捕捉プローブにハイブリダイズするように、5’から3’に向けて、
(i)アレイ上の捕捉プローブの位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸を含む、ステップと、
(b)場合によって組織試料を再水和するステップと、
(c)捕捉されたmRNA分子を逆転写して第一鎖cDNA分子を生成し、場合によって第二鎖cDNA分子を合成するステップと、
(d)アレイ上の組織試料を撮像するステップと、
(e)アレイを洗浄して残余の組織を取り除くステップと、
(f)前記cDNA分子の少なくとも一部をアレイの表面化から放出するステップと、
(g)放出されたcDNA分子を増幅するステップと、
(h)前記増幅されたcDNA分子の配列を解析する(たとえば、シーケンシングする)ステップと
を含むことがある。
【0176】
さらに追加の代表的な例として、本発明の方法は、以下の
(a)アレイを組織試料に接触させるステップであって、前記アレイは捕捉プローブの複数のスピーシーズが、直接的に又は間接的に固定化されている基板を備え、それぞれのスピーシーズがアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブが逆転写酵素(RT)プライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、組織試料のRNAが前記捕捉プローブにハイブリダイズするように、5’から3’に向けて、
(i)アレイ上の捕捉プローブの位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、ステップと、
(b)場合によってアレイ上の組織試料を撮像するステップと、
(c)捕捉されたmRNA分子を逆転写してcDNA分子を生成するステップと、
(d)場合によって、ステップ(b)としてまだ実施されていなければ、アレイ上の組織試料を撮像するステップと、
(e)アレイを洗浄して残余の組織を取り除くステップと、
(f)前記cDNA分子の少なくとも一部をアレイの表面から放出するステップと、
(g)放出されたcDNA分子上で第二鎖cDNA合成を実施するステップと、
(h)二本鎖cDNA分子を増幅するステップと、
(i)場合によってcDNA分子を精製して、シーケンシング反応に干渉することがある成分を取り除くステップと、
(j)前記増幅されたcDNA分子の配列を解析する(たとえば、シーケンシングする)ステップと
を含むことがある。
【0177】
本発明は上記の方法におけるステップのいかなる適切な組合せも含む。本発明が、たとえば増幅がアレイ上インサイツで実施される場合に、これらの方法の変動も包含することは理解されるであろう。撮像ステップを省く方法も包含されている。
【0178】
本発明は、(i)アレイに接触させる組織試料からmRNAを捕捉するのに使用するための、又は(ii)組織試料の(たとえば、一部の若しくは包括的)トランスクリプトームを決定する及び/若しくは解析するのに使用するためのアレイを作る又は作製するための方法であって、捕捉プローブの複数のスピーシーズをアレイ基板に直接的に又は間接的に固定化することを含み、前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、5’から3’に向けて、
(i)アレイ上の捕捉プローブの位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む前記方法を含むとみることも可能である。
【0179】
本発明のアレイを作製する方法は、捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズがアレイ上のフィーチャーとして固定化されるようにさらに定義にしてもよい。
【0180】
アレイ上に捕捉プローブを固定化する方法は、本明細書に記載されるいかなる適切な方法でも使用して達成してもよい。捕捉プローブがアレイ上に間接的に固定化されている場合、捕捉プローブはアレイ上で合成されてもよい。前記方法は、以下の
(a)複数の表面プローブをアレイ基板に直接的又は間接的に固定化するステップであって、前記表面プローブが
(i)捕捉ドメインオリゴヌクレオチドの一部(核酸、たとえばRNAを捕捉することに関与していない部分)にハイブリダイズすることができるドメイン、
(ii)相補的位置ドメイン、及び
(iii)相補的ユニバーサルドメイン
を含むステップと、
(b)アレイ上に固定化された表面プローブに、捕捉ドメインオリゴヌクレオチド及びユニバーサルドメインオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップと、
(c)鋳型重合によりユニバーサルドメインオリゴヌクレオチドを伸長して、捕捉プローブの位置ドメインを生成するステップと、
(d)位置ドメインを捕捉ドメインオリゴヌクレオチドにライゲートして、捕捉オリゴヌクレオチドを作製するステップ
のうちのいずれか1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0181】
ステップ(d)のライゲーションは、ステップ(c)の伸長と同時に起こってもよい。したがって、ステップ(d)のライゲーションは別々のステップにおいて実行される必要はないが、当然のことながら、これは必要な場合には包含されている。
【0182】
本発明のアレイを作製する上記方法により作製されたアレイのフィーチャーは、上記説明に従ってさらに定義されてもよい。
【0183】
本発明は、RNAの検出又は解析及びトランスクリプトーム解析又は検出に関して上に説明されているが、記載されている原理は細胞中のDNAの検出又は解析に及びゲノム研究に同様に適用することが可能であることは認識されるであろう。したがって、さらに広く見渡せば、本発明は核酸全般の検出に一般的に適用可能であると、さらにより詳細な態様ではDNAの解析又は検出のための方法を提供するとみることができる。空間情報はゲノミクス関連、すなわち空間分解能でのDNA分子の検出及び/又は解析において価値があることもある。これは、本発明に従ってゲノムタグ付けにより達成することができる。そのような局在化された又は空間的検出法は、たとえば組織の異なる細胞若しくは領域のゲノム変動を研究する、たとえば正常細胞若しくは組織と疾患細胞若しくは組織(たとえば、正常細胞若しくは組織対腫瘍細胞若しくは組織)を比較するという状況において、又は疾患進行におけるゲノム変化を研究する、等において有用であることがある。たとえば、腫瘍組織は、前記組織が含有するゲノム変動(たとえば、変異及び/又は他の遺伝子異常、たとえば染色体再編、染色体増幅/欠失/挿入、等)が異なることがある異種細胞集団を含むことがある。異なる細胞におけるゲノム変動又は異なるゲノム遺伝子座の局所的な形態での検出は、そのような状況において、たとえばゲノム変動の空間的分布を研究するのに有用であることがある。そのような方法の主な有用性は、腫瘍解析にあると考えられる。本発明の状況では、たとえば1つのフィーチャー上の細胞全体のゲノムを捕捉するように設計されているアレイを調製してもよい。したがって、組織試料中の異なる細胞を比較することができる。当然のことながら、本発明はそのような設計に限定されてはおらず、他の変動も可能なことがあり、その場合DNAは局在化された方法で検出され、アレイで捕捉されたDNAの位置は組織試料中の位置又は場所と関連付けられる。
【0184】
したがって、さらに一般的な態様では、本発明は、組織試料中の核酸の局在化された検出のための方法であって、
(a)
捕捉プローブの複数のスピーシーズが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備えるアレイを提供するステップであって、
前記補足プローブの複数のスピーシーズが、それぞれのスピーシーズがアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーション反応のためのプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、
前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、ステップと、
(b)アレイ上の捕捉プローブの位置と、組織試料中の位置とが関連付けられるように前記アレイを組織試料に接触させ、組織試料の核酸を前記捕捉プローブの捕捉ドメインにハイブリダイズさせるステップと、
(c)前記捕捉プローブを伸長又はライゲーションプライマーとして用いて捕捉された核酸分子からDNA分子を生成するステップであって、前記伸長された又はライゲートされたDNA分子が位置ドメインによりタグ付けされるステップと、
(d)場合によって前記タグ付けされたDNAの相補鎖を生成する及び/又は場合によって前記タグ付けされたDNAを増幅するステップと、
(e)アレイの表面から前記タグ付けされたDNA分子及び/又はその相補体若しくはアンプリコンの少なくとも一部を放出し、前記一部が位置ドメイン又はその相補体を含むステップと、
(f)前記放出されたDNA分子の配列を直接的に又は間接的に解析する(たとえば、シーケンシングする)ステップと
を含む方法を提供するとみることができる。
【0185】
上でさらに詳細に説明されたように、核酸解析のいかなる方法でも解析ステップにおいて使用してもよい。典型的には、これはシーケンシングを含むことがあるが、実際の配列決定を必ずしも実施する必要はない。たとえば、配列特異的解析方法を使用してもよい。たとえば、配列特異的増幅反応を、たとえば、位置ドメインに及び/又は特定の標的配列、たとえば検出される特定の標的DNA(すなわち、特定のcDNA/RNA又は遺伝子又は遺伝子バリアント又はゲノム遺伝子座又はゲノムバリアント、等に対応する)に特異的なプライマーを使用して実施してもよい。例となる解析法は配列特異的PCR反応である。
【0186】
ステップ(f)において得られる配列解析(たとえば、シーケンシング)情報を使用して、試料中の核酸に関する空間情報を得ることもできる。言い換えると、配列解析情報は試料中の核酸の位置に関する情報を提供することができる。この空間情報は、たとえば決定された又は同定された配列から得られた配列解析情報の性質から導かれることがあり、たとえば前記空間情報は、使用される組織試料との関連ではそれ自体が空間的な情報を与えることができる特定の核酸分子の存在を明らかにすることができる、及び/又は空間情報(たとえば、空間的局在化)は、配列解析情報と相俟ってアレイ上の組織試料の位置から導かれることがある。しかし、上記のように、空間情報は、配列解析データを組織試料の画像と関連付けることにより都合よく得られることがあり、これは本発明の1つの好ましい実施形態を表す。
【0187】
したがって、好ましい実施形態では、前記方法は、
(g)前記配列解析情報を前記組織試料の画像と関連付け、前記組織試料はステップ(c)の前に又は後で撮像されるステップも含む。
【0188】
ステップ(a)において言及されるプライマー伸長反応は、ポリメラーゼ触媒伸長反応と定義してもよく、すなわちプライマーとして捕捉プローブを鋳型として捕捉された核酸を利用して相補鎖を合成することにより、捕捉プローブに共有結合している捕捉された核酸分子の相補鎖を獲得するように作用する。言い換えると、プライマー伸長反応は、どんなポリメラーゼ酵素により実行されるいかなるプライマー伸長反応であってもよい。核酸はRNAであることもあり、又はDNAであることもある。したがって、ポリメラーゼはいかなるポリメラーゼでもよい。ポリメラーゼは逆転写酵素であることもあり、又はDNAポリメラーゼであることもある。ライゲーション反応はいかなるリガーゼにより実行されてもよく、捕捉プローブに捕捉された核酸分子の相補鎖を固定するように作用する、すなわち捕捉された核酸分子(捕捉プローブにハイブリダイズした)は部分的に二本鎖であり、相補鎖は捕捉プローブにライゲートされている。
【0189】
そのような方法の一つの好ましい実施形態は、トランスクリプトームの決定及び/若しくは解析のために、又はRNAの検出のために上に記載されている方法である。代わりの好ましい実施形態では、検出される核酸分子はDNAである。そのような実施形態では、本発明は、組織試料中のDNAの局在化された検出のための方法であって、
(a)捕捉プローブの複数のスピーシーズが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備えるアレイを提供するステップであって、
前記補足プローブの複数のスピーシーズが、それぞれのスピーシーズがアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーション反応のためのプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、
前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、ステップと、
(b)アレイ上の捕捉プローブの位置と、組織試料中の位置とが関連付けられるように前記アレイを組織試料に接触させ、組織試料のDNAを前記捕捉プローブ中の捕捉ドメインにハイブリダイズさせるステップと、
(c)前記組織試料中のDNAを断片化するステップであって、前記断片化がステップ(b)において前記アレイを組織試料に接触させる前に、間に又は後で実行される、ステップと、
(d)捕捉されたDNA断片を鋳型として用いてプライマー伸長反応において前記捕捉プローブを伸長させて伸長されたDNA分子を生成する、又は前記捕捉されたDNA断片をライゲーション反応において捕捉プローブにライゲートしてライゲートされたDNA分子を生成するステップであって、前記伸長された又はライゲートされたDNA分子が位置ドメインによりタグ付けされる、ステップと、
(e)場合によって前記タグ付けされたDNAの相補鎖を生成する及び/又は場合によって前記タグ付けされたDNAを増幅するステップと、
(f)アレイの表面から前記タグ付けされたDNA分子並びに/又はその相補体及び/若しくはアンプリコンの少なくとも一部を放出するステップであって、前記一部が位置ドメイン又はその相補体を含む、ステップと、
(g)前記放出されたDNA分子の配列を直接的に又は間接的に解析するステップと
を含む方法を提供する。
【0190】
前記方法は、
(h)前記配列解析情報を前記組織試料の画像と関連付け、前記組織試料がステップ(d)の前に又は後で撮像されるステップを
さらに含むこともある。
【0191】
標的核酸がDNAである空間ゲノミクスとの関連では、撮像と画像関連付けステップを含むことは、いくつかの状況では好ましいことがある。
【0192】
DNAが捕捉される実施形態では、前記DNAは細胞中に存在することができるいかなるDNA分子でもよい。したがって、前記DNAはゲノム(すなわち核DNA、ミトコンドリアDNA又はプラスチドDNA(たとえば葉緑体DNA))でもよい。好ましい実施形態では、前記DNAはゲノムDNAである。
【0193】
ステップ(b)における接触後、すなわち組織試料がアレイ上に置かれた後に断片化が実行される場合、断片化はDNAが捕捉ドメインにハイブリダイズされる前に起こることが理解されるであろう。言い換えると、DNA断片は、前記捕捉プローブ中の捕捉ドメインにハイブリダイズされる(又はさらに詳細には、ハイブリダイズさせる)。
【0194】
有利なことに、しかし必ずしもそうではないが、本発明のこの態様の特定の実施形態では、組織試料のDNA断片に、アレイ上の捕捉プローブによるその捕捉を可能にする又は促進する結合ドメインを与えてもよい。したがって、結合ドメインは捕捉プローブの捕捉ドメインにハイブリダイズすることができる。したがって、そのような結合ドメインは捕捉ドメインの相補体とみることもできるが(すなわち、結合ドメインは相補的捕捉ドメインとみることもできる)、捕捉ドメインと結合ドメイン間の絶対的相補性は必要ではなく、結合ドメインが、生産的ハイブリダイゼーションを起こすのに十分相補的であること、すなわち組織試料中のDNA断片が捕捉プローブの捕捉ドメインにハイブリダイズすることができることだけが求められる。そのような結合ドメインの提供により、試料中のDNAが断片化ステップの後まで捕捉プローブに結合しないことが保証される。結合ドメインは、当技術分野で周知の手順により、たとえば結合ドメインを含有することができるアダプター又はリンカー配列のライゲーションにより、DNA断片に与えてもよい。たとえば、はみ出ている端部を有するリンカー配列を使用してもよい。結合ドメインは、DNA断片へのリンカーのライゲーションに続いて、結合ドメインを含有する一本鎖部分が捕捉プローブの捕捉ドメインへのハイブリダイゼーションに利用可能であるように、そのようなリンカーの一本鎖部分に存在していてもよい。代わりに及び好ましい実施形態では、結合ドメインは、ポリヌクレオチドテール、たとえばポリAドメインなどのホモポリマーテールを導入するターミナルトランスフェラーゼ酵素を使用することにより導入してもよい。これは、RNA法との関連においてユニバーサルドメインを導入するために上に記載されている手順に類似する手順を使用して実行してもよい。したがって、有利な実施形態では、共通の結合ドメインを導入することができる。言い換えると、すべてのDNA断片に共通であり、アレイ上への断片の捕捉を達成するのに使用することができる結合ドメインである。
【0195】
テーリング反応が実行されて(共通の)結合ドメインを導入する場合、アレイ上の捕捉プローブをテーリング反応から保護することができる、すなわち捕捉プローブを上記の通りに遮断する又はマスクすることができる。これは、たとえば遮断オリゴヌクレオチドを捕捉プローブに、たとえば捕捉プローブのはみ出ている端部(たとえば、一本鎖部分)にハイブリダイズさせることにより達成してもよい。たとえば、捕捉ドメインがポリT配列を含む場合、そのような遮断オリゴヌクレオチドはポリAオリゴヌクレオチドであってもよい。遮断オリゴヌクレオチドは遮断された3’端部(すなわち、伸長する又はテールすることができない端部)を有していてもよい。捕捉プローブも、上で詳細に説明しているように、化学的及び/又は酵素的改変により保護される、すなわち遮断されてもよい。
【0196】
結合ドメインが上記のリンカーのライゲーションにより与えられる場合、捕捉プローブを伸長して捕捉プローブプライマーの位置タグを含む捕捉されたDNA断片の相補的コピーを生成するのではなく、DNA断片は捕捉プローブの3’端部にライゲートされてもよいことは理解されるであろう。上記のように、ライゲーションにはライゲートされる5’端部がリン酸化される必要がある。したがって、一実施形態では、付加されるリンカーの5’端部、すなわち捕捉プローブにライゲートされることになる端部(すなわち、DNA断片に付加されるリンカーのはみ出ていない端部)がリン酸化されることになる。そのようなライゲーション実施形態では、したがって、リンカーを二本鎖DNA断片にライゲートしてもよく、前記リンカーは結合ドメインを含有する一本鎖の突出した3’端部を有することが分かることになる。アレイに接触すると、突出した端部は捕捉プローブの捕捉ドメインにハイブリダイズする。このハイブリダイゼーションにより、付加されるリンカーの5’端部(はみ出ていない)へのライゲーションのために捕捉プローブの3’端部が並置される。捕捉プローブ、それ故に位置ドメインは、このようにしてこのライゲーションにより捕捉されたDNA断片に組み込まれる。そのような実施形態は
図21に図式的に示されている。
【0197】
したがって、本発明のこの態様の方法は、さらに詳細な実施形態では、
(a)捕捉プローブの複数のスピーシーズが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備えるアレイを提供するステップであって、
前記補足プローブの複数のスピーシーズが、それぞれのスピーシーズがアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーション反応のためのプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、
前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、5’から3’に向けて、
(i)前記アレイ上の前記捕捉プローブの前記位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、ステップと、
(b)アレイ上の捕捉プローブの位置と、組織試料中の位置とが関連付けられるように前記アレイを組織試料に接触させるステップと、
(c)前記組織試料中のDNAを断片化するステップであって、前記断片化がステップ(b)において前記アレイを組織試料に接触させる前に、間に又は後で実行される、ステップと、
(d)前記捕捉ドメインにハイブリダイズすることができる結合ドメインを前記DNA断片に与えるステップと、
(e)前記DNA断片を前記捕捉プローブ中の捕捉ドメインにハイブリダイズさせるステップと、
(f)捕捉されたDNA断片を鋳型として用いてプライマー伸長反応において前記捕捉プローブを伸長させて伸長されたDNA分子を生成する、又は前記捕捉されたDNA断片をライゲーション反応において捕捉プローブにライゲートしてライゲートされたDNA分子を生成するステップであって、前記伸長された又はライゲートされたDNA分子が位置ドメインによりタグ付けされる、ステップと、
(g)場合によって前記タグ付けされたDNAの相補鎖を生成する及び/又は場合によって前記タグ付けされたDNAを増幅するステップと、
(h)アレイの表面から前記タグ付けされたDNA分子並びに/又はその相補体及び/若しくはアンプリコンの少なくとも一部を放出するステップであって、前記一部が位置ドメイン又はその相補体を含む、ステップと、
(i)前記放出されたDNA分子の配列を直接的に又は間接的に解析するステップと
を含むこともある。
【0198】
前記方法は、場合によって
(j)前記配列解析情報を前記組織試料の画像と関連付け、前記組織試料がステップ(f)の前に又は後で撮像される追加のステップを
含むこともある。
【0199】
上記の核酸又はDNA検出の方法において、タグ付けされた核酸/DNAの相補的コピーを生成する又はタグ付けされたDNAを増幅する任意のステップは、RNA/トランスクリプトーム解析/検出法との関連で上で説明された原理に従って、鎖置換ポリメラーゼ酵素の使用を伴うことがある。適切な鎖置換ポリメラーゼは上で考察されている。これは、位置ドメインが相補的コピー又はアンプリコンにコピーされることを保証するためである。これは特に捕捉プローブが、表面プローブへのハイビリダイゼーションによりアレイに固定化される場合に当てはまることになる。
【0200】
しかし、このステップにおける鎖置換ポリメラーゼの使用は不可欠ではない。たとえば、非鎖置換ポリメラーゼを、位置ドメインにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドのライゲーションと一緒に使用してもよい。そのような手順はアレイ上での捕捉プローブの合成について上で説明された手順に類似している。
【0201】
一実施形態では、本発明の方法は、組織試料のゲノムすべて(たとえば組織試料の包括的ゲノム)を決定する及び/又は解析するために使用することができる。しかし、前記方法はこれに限定されず、前記ゲノムのすべて又は一部を決定する及び/又は解析することを包含している。したがって、前記方法は、ゲノムの一部又はサブセット(たとえば遺伝子の又は染色体のサブセット又は群に対応する部分的ゲノム(たとえば(たとえば特定の疾患又は状態、組織型、等に関連する)特定の遺伝子若しくは染色体のセット又はゲノムの特定の領域若しくは部分))を決定する及び/又は解析することを含むことがある。したがって、前記方法を使用して、正常組織と比べた場合の腫瘍組織からのゲノム配列又はゲノム遺伝子座を検出する又は解析することができる、又は組織試料中の異なる細胞型内でさえ、ゲノム配列又はゲノム遺伝子座を検出する又は解析することができる。異なる細胞、細胞の群、組織又は組織の一部若しくは型における異なるゲノムバリアント又は遺伝子座の存在若しくは非存在又は分布若しくは位置を調べることもできる。
【0202】
別の態様から眺めると、上記の方法ステップは、組織試料の核酸(たとえばゲノム配列、バリアント又は遺伝子座)に関する空間情報を得る方法を提供するとみることができる。別の言い方をすれば、本発明の方法は、ゲノム、特に個々の又は空間的に分布するゲノム、の標識化(又はタグ付け)のために使用してもよい。
【0203】
別の眺め方をすれば、本発明の方法は、組織試料中のDNAの空間的検出のための方法、或いは空間分解能でDNAを検出するための、又は組織試料中のDNAの局所的若しくは空間的決定及び/若しくは解析のための方法とみることもできる。特に、前記方法は組織試料中の遺伝子若しくはゲノム配列又はゲノムバリアント若しくは遺伝子座(たとえば、ゲノムバリアント又は遺伝子座の分布)の局在化された若しくは空間的検出又は決定及び/若しくは解析のために使用してもよい。局在化された/空間的検出/決定/解析は、DNAが組織試料において細胞又は組織内のその天然の位置又は場所に局在化していてもよいことを意味する。したがって、たとえば、DNAは試料中の細胞若しくは細胞の群若しくは細胞の型に、又は組織試料内の区域の特定の領域に局在化していてもよい。DNAの天然の場所又は位置(言い換えると、組織試料中のDNAの場所又は位置)、たとえばゲノムバリアント又は遺伝子座を決定することができる。
【0204】
したがって、本発明のアレイを使用すれば、前記アレイに接触される組織試料の核酸(たとえばDNA)を捕捉することができることが理解されるであろう。前記アレイは、組織試料の部分的若しくは包括的ゲノムを決定する及び/若しくは解析するために又は組織試料の空間的に限定された部分的若しくは包括的ゲノムを得るために使用してもよい。したがって、本発明の方法は、組織試料中の1つ又は複数のゲノム配列(又はバリアント又は遺伝子座)の空間的分布を定量する方法とみることもできる。別の表現をすれば、本発明の方法を使用して、組織試料中の1つ又は複数のゲノム配列又はゲノムバリアント又はゲノム遺伝子座の空間的分布を検出することができる。さらに別のやり方では、本発明の方法を使用して、組織試料内の1つ又は複数の位置での1つ又は複数のゲノム配列又はゲノムバリアント又はゲノム遺伝子座の場所又は分布を同時に決定することができる。さらに、前記方法は、空間分解能、たとえば二次元空間分解能での組織試料の核酸(たとえばDNA)の部分的又は包括的解析のための方法とみることもできる。
【0205】
本発明は、捕捉プローブの複数のスピーシーズが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備え、それぞれのスピーシーズがアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブが伸長又はライゲーションプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、5’から3’に向けて、
(i)アレイ上の捕捉プローブの位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)前記アレイに接触させる組織試料の核酸を捕捉するための捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、本発明の方法において使用するアレイを提供するとみることもできる。
【0206】
一態様では、捕捉される核酸分子はDNAである。上記のRNA検出との関連において説明された方法への類似により、たとえば標的DNA中のモチーフの特定の配列(たとえば保存された配列)への特異的ハイブリダイゼーションによって、捕捉ドメインは検出される特定のDNAに、又はDNAの特定の種類若しくは群に特異的であってもよい。代わりに、捕捉されるDNAには、捕捉プローブの捕捉ドメインにより認識されることがある結合ドメイン(たとえば上記の共通結合ドメイン)を与えてもよい。したがって、上記のように、結合ドメインは、たとえばホモポリマー配列(たとえばポリA)であってもよい。さらに、そのような結合ドメインは、RNA/トランスクリプトーム解析又は検出のための方法と関連して上で説明された原理及び方法に従って又は類似して与えてもよい。そのような場合、捕捉ドメインは、組織試料のDNA分子に導入される結合ドメインに相補的であってもよい。
【0207】
上のRNA関連でも記載されたように、捕捉ドメインはランダム配列でも縮重配列でもよい。したがって、DNAは、ランダム若しくは縮重捕捉ドメインに又は少なくとも部分的にランダム若しくは縮重配列を含む捕捉ドメインに結合することにより非特異的に捕捉されてもよい。
【0208】
関連する態様では、本発明は、捕捉プローブの複数のスピーシーズが、直接的に又は間接的に、その上に固定化された基板を備え、それぞれのスピーシーズがアレイ上の別個の位置を占め、かつ前記プローブがプライマー伸長又はライゲーション反応のためのプライマーとして機能できるように遊離の3’端部を有する配向となっており、前記アレイに接触させる組織試料の核酸、たとえばDNA又はRNAを捕捉するために、前記捕捉プローブのそれぞれのスピーシーズが、5’から3’に向けて、
(i)アレイ上の捕捉プローブの位置に対応する位置ドメイン、及び
(ii)捕捉ドメイン
を有する核酸分子を含む、
アレイの使用も提供する。
【0209】
好ましくは、前記使用は組織試料中の核酸の局在化された検出を目的とし、
(a)前記捕捉プローブを伸長又はライゲーションプライマーとして用いて捕捉された核酸分子からDNA分子を生成するステップであって、前記伸長された又はライゲートされた分子が位置ドメインによってタグ付けされるステップと、
(b)場合によって前記タグ付けされた核酸の相補鎖を生成する及び/又は前記タグ付けされた核酸を増幅するステップと、
(c)アレイの表面から前記タグ付けされたDNA分子及び/又はその相補体若しくはアンプリコンの少なくとも一部を放出するステップであって、前記一部が位置ドメイン又はその相補体を含むステップと、
(d)放出されたDNA分子の配列を直接的に又は間接的に解析するステップと、場合によって
(e)前記配列解析情報を前記組織試料の画像と関連付け、前記組織試料がステップ(a)の前に又は後で撮像されるステップと
をさらに含む。
【0210】
組織試料中のDNAを断片化するステップは、当技術分野で公知のいかなる望ましい手順を使用して実行してもよい。したがって、断片化の物理的方法(たとえば音波破砕又は超音波処理)を使用してもよい。化学的方法も知られている。たとえば、エンドヌクレアーゼ(たとえば制限酵素)を用いた断片化の酵素的方法を使用してもよい。さらに、このための方法と酵素は当技術分野では周知である。断片化は、アレイ上に置くための組織試料を調製する、たとえば組織切片を調製する前、間又は後に実行してもよい。都合の良いことに、断片化は組織を固定するステップにおいて達成してもよい。したがって、たとえば、ホルマリン固定により、DNAは断片化されることになる。他の固定液でも同様の結果を生じることができる。
【0211】
本発明のこれらの態様においてアレイを調製し使用する詳細に関しては、RNA法との関連において上で与えられた説明及び詳細な点は、本明細書に記載されるさらに一般的な核酸検出及びDNA検出法と同様に適用されることは理解されるであろう。したがって、上記のすべての態様及び詳細が同様に適用される。たとえば、逆転写酵素プライマー及び反応、等の考察は、上で言及される伸長プライマー、ポリメラーゼ反応、等のいかなる態様と同様に適用することができる。同じように、第一及び第二鎖cDNA合成への言及は、タグ付けされたDNA分子及びその相補体に同様に適用することができる。上記の配列解析の方法を使用してもよい。
【0212】
例として、捕捉ドメインは上記の捕捉プローブについて記載される通りでもよい。ポリT又はポリT含有捕捉ドメインは、たとえばDNA断片にポリA配列を含む結合ドメインが与えられる場合に使用してもよい。
【0213】
たとえば、増幅及び/又は切断のために、捕捉プローブ/タグ付けされたDNA分子(すなわち、タグ付けされた伸長された又はライゲートされた分子)に上記のユニバーサルドメインを与えてもよい。
【0214】
本発明は、以下の図を参照し、以下の非限定的実施例に準拠してさらに説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【
図1】トランスクリプトーム解析のために組織切片からmRNAを捕捉するための整列配置された「バーコード化」オリゴ−dTプローブを使用する全体的構想を示す図である。
【
図2】対応する組織切片についての転写物存在量の視覚化の模式図を示す図である。
【
図3】3’から5’表面プローブ組成及びアレイ表面に間接的に固定化されている5’から3’配向捕捉プローブの合成を示す図である。
【
図4】プローブ放出後にアレイ表面への蛍光標識されたプローブのハイブリダイゼーションにより測定された、自製アレイからの酵素的切断(USER又はRsal)の効率及びAgilent製アレイからの99℃水による効率を示す棒グラフを示す図である。
【
図5】Agilent社製市販のアレイからのDNA表面プローブの99℃水媒介放出後に捕捉された蛍光画像を示す図である。蛍光検出プローブは熱水処理後にハイブリダイズされた。上のアレイは非処理対照である。
【
図6】cDNA合成後にそれぞれ細胞質(上)及び核染色(中)で処理されたトランスクリプトーム捕捉アレイ上の固定されたマウス脳組織切片並びに両方の染色を示す混合画像(下)を示す図である。
【
図7】模式図に見られる低密度自製DNA捕捉アレイにわたりその起源について分類された読取りを収載する表を示す図である。
【
図8】バーコード化マイクロアレイを使用して核及びMap2を特異的に染色したFFPEマウス脳組織を示す図である。
【
図9】核染色(白)及び可視形態学を用いたFFPEマウス脳嗅球を示す図である。
【
図10】低解像度アレイのために理論的スポッティングパターンを重ねた、核を染色(白)したFFPEマウス脳嗅球(約2×2mm)を示す図である。
【
図11】中−高解像度アレイのために理論的スポッティングパターンを重ねた、核を染色(白)したFFPEマウス脳嗅球(約2×2mm)を示す図である。
【
図12】糸球体領域(
図9の右上)に焦点を合わせて画像を拡大したFFPEマウス脳嗅球を示す図である。
【
図13】増幅中にB_ハンドル(B_R6)に連結されたランダムヘキサマープライマー(R6)を使用するUSER放出から得られた生成物を示す図である;バイオアナライザー上に表されている生成物。
【
図14】増幅中にB_ハンドル(B_R8)に連結されたランダムオクタマープライマー(R8)を使用するUSER放出から得られた生成物を示す図である;バイオアナライザー上に表されている生成物。
【
図15】アレイ全体で覆われたFFPE脳組織上で実施された実験の結果を示す図である。cDNAの合成及び表面からの放出後のID特異的及び遺伝子特異的プライマー(B2M エクソン4)を用いて増幅されたID5(左)及びID20(右);増幅されたID5及びID20。
【
図16】実施例4に記載される方法の原理、すなわち空間標識タグ配列(位置ドメイン)を担持している固定化されたDNAオリゴ(捕捉プローブ)を用いるマイクロアレイの使用、の略図を示す図である。マイクロアレイのオリゴのそれぞれのフィーチャーは、1)独自の標識タグ(位置ドメイン)及び2)捕捉配列(捕捉ドメイン)を担っている。
【
図17】平均サイズ200bpまで前もって断片化されたゲノムDNAを用いて実行された実施例5に記載されている空間ゲノミクスプロトコールの結果を示す図である。アレイ上で増幅された内部生成物はDNAを標識し合成した。検出されたピークは予測されたサイズである。
【
図18】平均サイズ700bpまで前もって断片化されたゲノムDNAを用いて実行された実施例5に記載されている空間ゲノミクスプロトコールの結果を示す図である。アレイ上で増幅された内部生成物はDNAを標識し合成した。検出されたピークは予測されたサイズである。
【
図19】平均サイズ200bpまで前もって断片化されたゲノムDNAを用いて実行された実施例5に記載されている空間ゲノミクスプロトコールの結果を示す図である。表面オリゴに含有される1つの内部プライマー及び1つのユニバーサル配列を用いて増幅された生成物。アレイ上で実行された増幅はDNAを標識し合成した。ゲノムDNAのランダム断片化及びターミナルトランスフェラーゼ標識化は極めて多様な試料プールを生成すると仮定すると、予測される生成物はスメアである。
【
図20】平均サイズ700bpまで前もって断片化されたゲノムDNAを用いて実行された実施例5に記載されている空間ゲノミクスプロトコールの結果を示す図である。表面オリゴに含有される1つの内部プライマー及び1つのユニバーサル配列を用いて増幅された生成物。アレイ上で実行された増幅はDNAを標識し合成した。ゲノムDNAのランダム断片化及びターミナルトランスフェラーゼ標識化は極めて多様な試料プールを生成すると仮定すると、予測される生成物はスメアである。
【
図21】ポリT捕捉ドメインへのハイブリダイゼーションのために結合ドメインを導入するためのDNA断片へのリンカーのライゲーション及び捕捉プローブへのそれに続くライゲーションの略図を示す図である。
【
図22】高密度捕捉アレイ上で使用される5’から3’配向捕捉プローブの組成を示す図である。
【
図23】高密度アレイの枠を示す図であり、枠は組織試料を方向付けるのに使用され、蛍光マーカープローブのハイブリダイゼーションにより視覚化される。
【
図24】高密度アレイから切断された及び切断されていない捕捉プローブを示す図であり、枠プローブはウラシル塩基を含有していないので切断されない。捕捉プローブはポリAオリゴヌクレオチドに連結されたフルオロフォアで標識された。
【
図25】マウス嗅球から捕捉された転写物を用いて調製されたシーケンシングライブラリーのバイオアナライザー画像を示す図である。
【
図26】マウス嗅球から抽出された全RNAから捕捉された転写物のMatlab視覚化を示す図である。
【
図27】マウス嗅球組織からの捕捉後Matlab視覚化を使用して捕捉アレイにわたり視覚化されたOlfr(臭覚受容体)転写物を示す図である。
【
図28】自製41−ID−タグマイクロアレイについてのプリントのパターンを示す図である。
【
図29】捕捉アレイ上でのポリAテールゲノム断片の捕捉後のA431特異的転座から生成された空間ゲノミクスライブラリーを示す図である。
【
図30】捕捉アレイ上のポリAテールU2OSゲノム断片へのスパイクド10%及び50%ポリAテールA431ゲノム断片の捕捉後のA431特異的転座の検出を示す図である。
【
図31】組織画像で表面を覆われた41−ID−タグ自製アレイ上のマウス嗅球組織から捕捉されたID−タグ付けされた転写物のMatlab視覚化を示す図である。明確にするために、特定の遺伝子が同定された特異的フィーチャーは円で囲まれている。
【0216】
実施例1
アレイの調製
以下の実験は、オリゴヌクレオチドプローブが5’又は3’端部のどちらかによりアレイ基板に付着されて、mRNAにハイブリダイズすることができる捕捉プローブを有するアレイを生じる方法を示す。
【0217】
5’から3’配向プローブをプリントした自製マイクロアレイの調製
個々のタグ配列を有する20個のRNA捕捉オリゴヌクレオチド(Tag1〜20、表1)は、捕捉プローブとして機能するようにガラススライド上にスポットされた。前記プローブはC6スペーサーを有する5’−終端アミノリンカーを用いて合成された。すべてのプローブがSigma−Aldrich(St.Louis、MO、USA)により合成された。RNA捕捉プローブは、150mMリン酸ナトリウム中、pH8.5、濃度20μMで懸濁され、CodeLink(商標)活性化マイクロアレイスライド(7.5cm×2.5cm;Surmodics、Eden Prairie、MN、USA)上にナノプロッターNP2.1/E(Gesim、Grosserkmannsdorf、Germany)を使用してスポットされた。プリント後、表面ブロッキングは製造業者の使用説明書に従って実施された。プローブはスライド上の16個の同一アレイにプリントされ、それぞれのアレイは予め定義されたプリントパターンを含有していた。16個のサブアレイは、16−パッドマスク(ChipClip(商標)Schleicher&Schuell Bioscience、Keene、NH、USA)によりハイブリダイゼーション中は、分離されていた。
【0218】
【表1】
【0219】
3’から5’配向プローブをプリントした自製マイクロアレイの調製、及び5’から3’配向捕捉プローブの合成
表1に示されるように、表面プローブオリゴヌクレオチドのプリントは、3’端部にアミノ−C7リンカーを付けて、上記の5’から3’配向プローブの場合と同じように実施された。
【0220】
捕捉プローブ合成のためにプライマーをハイブリダイズさせるため、4×SSC及び0.1%SDS、2μMの伸長プライマー(ユニバーサルドメインオリゴヌクレオチド)及び2μMのスレッド結合プライマー(捕捉ドメインオリゴヌクレオチド)を含有するハイブリダイゼーション溶液が50℃で4分間インキュベートされた。その間、自製アレイはChipClip(Whatman)に装着された。前記アレイは引き続き、ウェルあたり50μLのハイブリダイゼーション溶液を用いて、50℃、30分間、300rpm振盪でインキュベートされた。
【0221】
インキュベーション後、アレイはChipClipから取り除かれ、以下の3つのステップ、1)50℃で0.1%SDSを有する2×SSC液、6分間、300rpm振盪で、2)0.2×SSC、1分間、300rpm振盪で、及び3)0.1×SSC、1分間、300rpm振盪で洗浄された。次にアレイは、遠心脱水され、再びChipClipに戻された。
【0222】
伸長及びライゲーション反応のために(捕捉プローブの位置ドメインを生成するため)、10×Ampligaseバッファー、2.5U AmpliTaq DNAポリメラーゼStoffel断片(Applied Biosystems)、10U Ampligase(Epicentre Biotechnologies)、dNTP各々2mM(Fermentas)及び水を含有する50μLの酵素混合物がそれぞれのウェルにピペットで移された。それに続いて、前記アレイは55℃で30分間インキュベートされた。インキュベーション後、前記アレイは、前述のアレイ洗浄法に従って洗浄されたが、第一のステップは6分間ではなく10分間の持続時間を有する。
【0223】
前記方法は
図3に描かれている。
【0224】
組織調製
以下の実験は、組織試料切片を本発明の方法において使用するために調製することができる方法を示す。
【0225】
新鮮な凍結組織の調製及び捕捉プローブアレイ上への切片作り
新鮮な固定されていないマウス脳組織は必要ならば切り取って−40℃冷イソペンタン中で凍結させ、続いてクリオスタットを用いて10μmの切片化のためにマウントされた。組織切片は、使用されるそれぞれの捕捉プローブアレイ上に適用された。
【0226】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織の調製
マウス脳組織は4%ホルマリン中で4℃で24時間固定された。その後、前記組織は以下の通りにインキュベートされた:70%エタノール中1時間、3×インキュベーション;80%エタノール中1時間、1×インキュベーション;96%エタノール中1時間、1×インキュベーション;100%エタノール中1時間、3×インキュベーション;及びキシレン中室温で1時間、2×インキュベーション。
【0227】
次に、脱水された試料は液体低融点パラフィン中、52〜54℃で最長3時間インキュベートされ、その間パラフィンは1度交換され、残余キシレンを洗い落とした。次に、完了した組織塊は室温で保存された。次に、切片は、使用されるそれぞれの捕捉プローブアレイ上に、ミクロトームを用いてパラフィン中4μmでカットされた。
【0228】
切片はアレイスライド上で37℃、24時間乾燥され、室温で保存された。
【0229】
FFPE組織の脱パラフィン
CodeLinkスライドに付着したホルマリン固定パラフィン化マウス脳10μm切片は、キシレン中10分間で2度、99.5%エタノール2分間;96%エタノール2分間;70%エタノール2分間脱パラフィンされ、次に空気乾燥された。
【0230】
cDNA合成
以下の実験は、組織試料切片からアレイ上に捕捉されたmRNAをcDNA合成のための鋳型として使用することができることを示す。
【0231】
チップ上でのcDNA合成
Whatman社製の16ウェルマスク及びChipClipスライドホルダーをCodeLinkスライドに装着させた。cDNA合成を実施する場合はInvitrogen社製Platinum(登録商標)Taq DNAポリメラーゼを用いるSuperScript(商標)III One−step RT−PCR Systemを使用した。反応ごとに、25μl 2×反応混合物(Platinum(登録商標)Taq DNAポリメラーゼを用いるSuperScript(商標)III One−step RT−PCR System、Invitrogen)、22.5μl H
2O及び0.5μl 100×BSAが混合され50℃まで加熱された。SuperScriptIII/Platinum Taq酵素混合物が反応あたり2μlで反応混合物に添加され、50μlの反応混合物がチップ上のそれぞれのウェルに添加された。前記チップは50℃で30分間インキュベートされた(サーモミキサーコンフォート、Eppendorf)。
反応混合物はウェルから取り除かれ、スライドは、2×SSC、0.1%SDS、50℃で10分間;0.2×SSC、室温で1分間;及び0.1×SSC、室温で1分間を用いて洗浄された。次に、チップは遠心乾燥された。
【0232】
FFPE組織切片の場合、切片は組織を取り除く前に、この時点で染色し視覚化することができた、下の視覚化のセクションを参照されたい。
【0233】
視覚化
染色に先立つ蛍光マーカープローブのハイブリダイゼーション
組織の適用に先立って、蛍光マーカープローブは、捕捉プローブアレイ上にプリントされたマーカーオリゴヌクレオチドを含むフィーチャーにハイブリダイズされた。蛍光マーカープローブは、組織視覚化後の得られた画像を方向付けるのに役立ち、画像をシーケンシング後に得られる個々の捕捉プローブ「タグ」(位置ドメイン)配列についての得られた発現プロファイルと組み合わせることが可能になる。蛍光プローブをハイブリダイズさせるため、4×SSC及び0.1%SDS、2μMの検出プローブ(P)を含有するハイブリダイゼーション溶液は50℃で4分間インキュベートされた。その間、自家アレイはChipClip(Whatman)に装着された。アレイはそれに続いて、ウェルあたり50μLのハイブリダイゼーション溶液と一緒に50℃、30分間、300rpm振盪でインキュベートされた。
【0234】
インキュベーション後、アレイはChipClipから取り除かれ、以下の3つのステップ、1)50℃、0.1%SDSを有する2×SSC液、6分間、300rpm振盪で、2)0.2×SSC、1分間、300rpm振盪で、及び3)0.1×SSC、1分間、300rpm振盪で洗浄された。次にアレイは、遠心脱水された。
【0235】
cDNA合成に先立つ又は後のFFPE組織切片の一般的組織学的染色
捕捉プローブアレイ上に固定化されたFFPE組織切片は、前述のようにcDNA合成に先立って脱パラフィン後に洗浄され再水和された、又は前述のようにcDNA合成後に洗浄された。次に、前記切片は以下の通りに処理された;ヘマトキシリン中で3分間インキュベートする、脱イオン水を用いてすすぐ、水道水中で5分間インキュベートする、酸性エタノール中8〜12回素早く浸す、水道水中2×1分間すすぐ、脱イオン水中2分間すすぐ、エオシン中30秒間インキュベートする、95%エタノール中3×5分間洗浄する、100%エタノール中3×5分間洗浄する、キシレン中3×10分間洗浄する(一晩実行することができる)、DPXを使用してスライド上にカバーガラスを置く、一晩フード内でスライドを乾燥させる。
【0236】
cDNA合成に先立つ又は後のFFPE組織切片中の標的タンパク質の一般的免疫組織化学染色
捕捉プローブアレイ上に固定化されたFFPE組織切片は、前述のようにcDNA合成に先立って脱パラフィン後に洗浄され再水和された、又は前述のようにcDNA合成後に洗浄された。次に、前記切片は、全染色作業中乾燥させておくことなく以下の通りに処理された;切片は室温で一晩湿潤チャンバー内で一次抗体(1×Tris緩衝食塩水(50mM Tris、150mM NaCl、pH7.6)、4%ロバ血清及び0.1%triton−Xを含むブロッキング溶液中の希釈一次抗体)と一緒にインキュベートされる;1×TBSを用いて3回すすぐ;室温で1時間湿潤チャンバー内で蛍光色素(FITC、Cy3又はCy5)にコンジュゲートされた適合する二次抗体と一緒に切片をインキュベートする。1×TBSを用いて3回すすぎ、できる限り多くのTBSを取り除き、切片をProLong Gold+DAPI(Invitrogen)と一緒にマウントし、蛍光顕微鏡及び適合するフィルターセットを用いて解析する。
【0237】
残余組織の除去
凍結組織
新鮮な凍結マウス脳組織では、cDNA合成に直に続く洗浄ステップだけで組織を完全に取り除くのに十分であった。
【0238】
FFPE組織
付着したホルマリン固定パラフィン化マウス脳組織切片を有するスライドは、ChipClipスライドホルダー及び16ウェルマスク(Whatman)に装着された。RNeasy FFPEキット(Qiagen)由来の150μlのプロテイナーゼKダイジェストバッファーごとに、10μlのプロテイナーゼK溶液(Qiagen)が添加された。50μlの最終混合液がそれぞれのウェルに添加され、スライドは56℃で30分間インキュベートされた。
【0239】
捕捉プローブ(cDNA)放出
PCRバッファー中ウラシル切断USER酵素混合物を用いた捕捉プローブ放出(共有結合プローブ)
16ウェルマスク及びCodeLinkスライドはChipClipホルダー(Whatman)に装着された。1×FastStart高忠実度反応バッファーを1.8mM MgCl
2(Roche)と一緒に、200μM dNTP(New England Biolabs)及び0.1U/1μl USER酵素(New England Biolabs)を含有する50μlの混合物を37℃まで加熱し、それぞれのウェルに添加し、混ぜながら(300rpmで3秒間、静止して6秒間)(サーモミキサーコンフォート;Eppendorf)37℃で30分間インキュベートした。次に、放出されたcDNA及びプローブを含有する反応混合物は、ピペットを用いてウェルから回収された。
【0240】
TdT(ターミナルトランスフェラーゼ)バッファー中ウラシル切断USER酵素混合物を用いた捕捉プローブ放出(共有結合プローブ)
1×TdTバッファー(20mM Tris−アセテート(pH7.9)、50mM酢酸カリウム及び10mM酢酸マグネシウム)(New England Biolabs、www.neb.com);0.1μg/μl BSA(New England Biolabs);及び0.1U/μl USER酵素(New England Biolabs)を含有する50μlの混合物は37℃まで予加熱され、それぞれのウェルに添加され、混ぜながら(300rpmで3秒間、静止して6秒間)(サーモミキサーコンフォート;Eppendorf)37℃で30分間インキュベートされた。次に、放出されたcDNA及びプローブを含有する反応混合物はピペットを用いてウェルから回収された。
【0241】
熱湯を用いた捕捉プローブ放出(共有結合プローブ)
16ウェルマスク及びCodeLinkスライドはChipClipホルダー(Whatman)に装着された。50μlの99℃水はピペットでそれぞれのウェルに移された。99℃水は30分間反応させておいた。次に、放出されたcDNA及びプローブを含有する反応混合物はピペットを用いてウェルから回収された。
【0242】
加熱PCRバッファーを用いた捕捉プローブ放出(ハイブリダイズされたインサイツ合成捕捉プローブ、すなわち表面プローブにハイブリダイズされた捕捉プローブ)
1×TdTバッファー(20mM Tris−アセテート(pH7.9)、50mM酢酸カリウム及び10mM酢酸マグネシウム)(New England Biolabs、www.neb.com);0.1μg/μl BSA(New England Biolabs);及び0.1U/μl USER酵素(New England Biolabs)を含有する50μlの混合物は95℃まで予熱された。混合物はそれぞれのウェルに添加され、混ぜながら(300rpmで3秒間、静止して6秒間)(サーモミキサーコンフォート;Eppendorf)95℃で5分間インキュベートされた。次に、放出されたプローブを含有する反応混合物はウェルから回収された。
【0243】
加熱したTdT(ターミナルトランスフェラーゼ)バッファーを用いた捕捉プローブ放出(ハイブリダイズされたインサイツ合成された捕捉プローブ、すなわち表面プローブにハイブリダイズされた捕捉プローブ)
1×TdTバッファー(20mM Tris−アセテート(pH7.9)、50mM酢酸カリウム及び10mM酢酸マグネシウム)(New England Biolabs、www.neb.com);0.1μg/μl BSA(New England Biolabs);及び0.1U/μl USER酵素(New England Biolabs)を含有する50μlの混合物は95℃まで予熱された。次に、混合物はそれぞれのウェルに添加され、混ぜながら(300rpmで3秒間、静止して6秒間)(サーモミキサーコンフォート;Eppendorf)95℃で5分間インキュベートされた。次に、放出されたプローブを含有する反応混合物はウェルから回収された。
【0244】
USER酵素及び99℃まで加熱された水を用いてアレイを処理する有効性は
図3に見ることができる。USER酵素及びRsal酵素を使用する酵素的切断は、上記の「自製」アレイを使用して実施された(
図4)。DNA表面プローブの熱水媒介放出は、Agilent社製の市販のアレイを使用して実施された(
図5参照)。
【0245】
プローブ収集及びリンカー導入
実験は、アレイ表面から放出された第一鎖cDNAを改変して、二本鎖DNAを作製し、続いて増幅できることを示している。
【0246】
Picoplex全ゲノム増幅キットによる全トランスクリプトーム増幅(得られたdsDNAの端に保持されていない位置ドメイン(タグ)配列を含む捕捉プローブ配列)
捕捉プローブは、PCRバッファー中のウラシル切断USER酵素混合物を用いて(共有結合捕捉プローブ)、又は加熱PCRバッファーを用いて(ハイブリダイズされたインサイツ合成された捕捉プローブ、すなわち表面プローブにハイブリダイズされた捕捉プローブ)放出された。
【0247】
放出されたcDNAは、Picoplex(Rubicon Genomics)ランダムプライマー全ゲノム増幅法を使用して増幅され、前記方法は製造業者の使用説明書に従って実行された。
【0248】
ターミナルトランスフェラーゼ(TdT)を用いるdAテーリングによる全トランスクリプトーム増幅(得られたdsDNAの端に保持されている位置ドメイン(タグ)配列を含む捕捉プローブ配列)
捕捉プローブは、TdT(ターミナルトランスフェラーゼ)バッファー中のウラシル切断USER酵素混合物を用いて(共有結合捕捉プローブ)、又は加熱TdT(ターミナルトランスフェラーゼ)バッファーを用いて(ハイブリダイズされたインサイツ合成された捕捉プローブ、すなわち表面プローブにハイブリダイズされた捕捉プローブ)放出された。
【0249】
38μlの切断混合物は清潔な0.2mlのPCR管に入れられた。混合物は、1×TdTバッファー(20mM Tris−アセテート(pH7.9)、50mM酢酸カリウム及び10mM酢酸マグネシウム)(New England Biolabs、www.neb.com);0.1μg/μl BSA(New England Biolabs);0.1U/μl USER酵素(New England Biolabs)(加熱された放出のためではない);放出されたcDNA(表面プローブから伸長された);及び放出された表面プローブを含有していた。PCR管に、0.5μlのリボヌクレアーゼH(5U/μl、最終濃度0.06U/μl)、1μlのTdT(20U/μl、最終濃度0.5U/μl)及び0.5μlのdATP(100mM、最終濃度1.25mM)が添加された。dAテーリングでは、管は37℃、15分間熱サイクラー(Applied Biosystems)中でインキュベートされ、続いて70℃で10分間TdTを不活化した。dAテーリング後、PCRマスター混合物が調製された。前記混合物は、1.8mM MgCl
2を有する1×Faststart HiFi PCRバッファー(pH8.3)(Roche);0.2mMのそれぞれのdNTP(Fermentas);0.2μMのそれぞれのプライマー、A(捕捉プローブの増幅ドメインに相補的)及びB_(dT)24(Eurofins MWG Operon)(第一cDNA鎖の3’端部にカップリングされることになるポリAテールに相補的);並びに0.1U/μl Faststart HiFi DNAポリメラーゼ(Roche)を含有していた。23μlのPCRマスター混合物は9個の清潔な0.2ml PCR管に入れられた。2μlのdAテーリング混合物は前記管のうちの8個に添加され、2μlの水(リボヌクレアーゼ/デオキシリボヌクレアーゼなし)が最後の管に添加された(陰性対照)。PCR増幅は以下のプログラムで実行され、ホットスタート、95℃で2分間;第二鎖合成、50℃で2分間及び72℃で3分間、30PCRサイクルでの増幅、95℃で30秒間、65℃で1分間、72℃で3分間並びに最終伸長、72℃で10分間。
【0250】
反応後精製及び解析
4つの増幅生成物はまとめてプールされ、Qiaquick PCR精製カラム(Qiagen)を通して処理され、30μlのEB(10mM Tris−Cl、pH8.5)中に溶出された。生成物はBioanalyzer(Agilent)上で解析された。DNA 1000キットは製造業者の説明書に従って使用された。
【0251】
シーケンシング
Illuminaシーケンシング
試料インデックス化を使用するIlluminaシーケンシングのためのdsDNAライブラリーは製造業者の説明書に従って実行された。シーケンシングはHiSeq2000プラットフォーム(Illumina)上で実行された。
【0252】
バイオインフォマティクス
dAテーリングターミナルトランスフェラーゼアプローチを使用して増幅される全トランスクリプトームライブラリー由来のシーケンシングデータからデジタルトランスクリプトーム情報を得る
シーケンシングデータは、FastXツールキットFASTQバーコードスプリッターツールを通じて、それぞれの捕捉プローブ位置ドメイン(タグ)配列の個々のファイルに分類された。次に、個々にタグ付けされたシーケンシングデータは、Tophatマッピングツールを用いたマウスゲノムへのマッピングを通じて解析された。得られたSAMファイルは、HTseqカウントソフトウェアを通じて転写物数について処理された。
【0253】
Picoplex全ゲノム増幅キットアプローチを使用して増幅される全トランスクリプトームライブラリー由来のシーケンシングデータからデジタルトランスクリプトーム情報を得る
シーケンシングデータは、FastXツールキットFASTQ−to−FASTA変換機を使用してFASTQフォーマットからFASTAフォーマットに変換された。シーケンシング読取りはBlastnを使用して捕捉プローブ位置ドメイン(タグ)配列に整列させ、タグ配列のうちの1つに対して1e
−6よりもよいヒットを有する読取りは、それぞれタグ配列ごとに個々のファイルに選り分けられた。次に、タグ配列読取りのファイルは、Blastnを使用してマウストランスクリプトームに整列させ、ヒットが収集された。
【0254】
視覚化データと発現プロファイルを組み合わせる
個々の捕捉プローブ位置ドメイン(タグ)配列の発現プロファイルは、染色を通じて組織切片から得られる空間情報と組み合わされる。それによって組織切片の細胞コンパートメントからのトランスクリプトームデータは、所与の構造背景における異なる細胞亜型についての別個の発現フィーチャーを区別する利用可能性のある直接比較の様式で解析することができる。
【0255】
実施例2
図8〜12は、実施例1に記載される一般手順に従って、バーコードトランスクリプトーム捕捉アレイ上で染色されたFFPEマウス脳組織(嗅球)切片の視覚化に成功していることを示している。実施例1における新鮮な凍結組織を用いた実験と比較すると、
図8のほうがFFPE組織について良好な形態を示している。
図9及び
図10は、異なる種類のプローブ密度アレイ上に組織が配置されている様子を示している。
【0256】
実施例3
ランダムプライマー第二鎖合成とそれに続くユニバーサルハンドル増幅による全トランスクリプトーム増幅(得られたdsDNAの端に保持されているタグ配列を含む捕捉プローブ配列)
PCRバッファー中のウラシル切断USER酵素混合物を用いた捕捉プローブ放出に続いて(共有結合プローブ)
又は
加熱PCRバッファーを用いた捕捉プローブ放出に続いて(ハイブリダイズされたインサイツ合成された捕捉プローブ)
1μlリボヌクレアーゼH(5U/μl)は、1.8mM MgCl
2を有する40μlの1×Faststart HiFi PCRバッファー(pH8.3)(Roche、www.roche−applied−science.com)、0.2mMのそれぞれのdNTP(Fermentas、www.fermentas.com)、0.1μg/μl BSA(New England Biolabs、www.neb.com)、0.1U/μl USER酵素(New England Biolabs)、放出されたcDNA(表面プローブから伸長された)及び放出された表面プローブを含有している2つの管のそれぞれに、最終濃度0.12U/μlで添加された。管は、熱サイクラー(Applied Biosystems、www.appliedbiosystems.com)中、37℃で30分間、続いて70℃で20分間インキュベートされた。1μlのクレノーフラグメント(3’から5’exoマイナス)(Illumina、www.illumina.com)及び1μlのハンドル連結ランダムプライマー(10μM)(Eurofins MWG Operon、www.eurofinsdna.com)は、最終濃度0.23μMで、2つの管(管のうちの1つにB_R8(オクタマー)及び残りの管にB_R6(ヘキサマー))に添加された。2つの管は、熱サイクラー(Applied Biosystems)中で、15℃で15分間、25℃で15分間、37℃で15分間及び最後に75℃で20分間インキュベートされた。インキュベーション後、1μlのそれぞれのプライマー、A_P及びB(10μM)(Eurofins MWG Operon)は、最終濃度それぞれ0.22μMで両方の管に添加された。1μlのFaststart HiFi DNAポリメラーゼ(5U/μl)(Roche)も、最終濃度0.11U/μlで両方の管に添加された。PCR増幅は熱サイクラー(Applied Biosystems)中で、以下のプログラム:ホットスタート、94℃で2分間、続いて50サイクルを94℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で1分間及び最終伸長、68℃で5分間により実行された。増幅後、2つの管のそれぞれ由来の40μlはQiaquick PCR精製カラム(Qiagen、www.qiagen.com)を用いて精製され、30μlのEB(10mM Tris−Cl、pH8.5)中に溶出された。精製された生成物はバイオアナライザー(Agilent、www.home.agilent.com)を用いて解析され、DNA 7500キットが使用された。結果は
図13及び14に示されている。
【0257】
この実施例は、ランダムヘキサマー及びランダムオクタマー第二鎖合成の使用、それに続く放出されたcDNA分子から集団を生成する増幅を実証している。
【0258】
実施例4
cDNA合成及びプローブ収集後のID特異的及び遺伝子特異的生成物の増幅
PCRバッファー中のウラシル切断USER酵素混合物を用いた捕捉プローブ放出に続く(共有結合プローブ)。
【0259】
切断されたcDNAは、最終反応容積10μlで増幅された。1.8mM MgCl
2を有する1.4×FastStart高忠実度反応バッファー中、7μlの切断された鋳型、1μlのID特異的フォワードプライマー(2μM)、1μlの遺伝子特異的リバースプライマー(2μM)及び1μlのFastStart高忠実度酵素ブレンドは、1.8mM MgCl
2を有する1×FastStart高忠実度反応バッファー及び1UのFastStart高忠実度酵素ブレンドとの10μlの最終反応容積を与える。PCR増幅は熱サイクラー(Applied Biosystems)中で、以下のプログラム:ホットスタート、94℃で2分間、続いて50サイクルを94℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で1分間及び最終伸長、68℃で5分間により実行された。
【0260】
プライマー配列、ほぼ250bpの生成物になる。
ベータ−2マイクログロブリン(B2M)プライマー
5’−TGGGGGTGAGAATTGCTAAG−3’(配列番号43)
ID−1プライマー
5’−CCTTCTCCTTCTCCTTCACC−3’(配列番号44)
ID−5プライマー
5’−GTCCTCTATTCCGTCACCAT−3’(配列番号45)
ID−20プライマー
5’−CTGCTTCTTCCTGGAACTCA−3’(配列番号46)
【0261】
結果は
図15に示されている。これは2つの異なるIDプライマー(すなわち、マイクロアレイ上の異なる位置に配置されたIDタグに特異的である)及びすべてのプローブを覆う脳組織由来の同じ遺伝子特異的プライマーを使用してID特異的及び遺伝子特異的生成物の増幅に成功したことを示している。したがって、この実験は、生成物がIDタグ特異的又は標的核酸特異的増幅反応により同定できることを確立している。異なるIDタグを区別することができることがさらに確立されている。第二の実験では、組織がアレイ上のIDプローブ(すなわち、捕捉プローブ)の半分だけを覆うが、組織に覆われたスポットで陽性結果(PCR生成物)が得られた。
【0262】
実施例5
空間ゲノミクス
背景。前記方法はその目的として、組織試料からDNA分子を保持された空間分解能で捕捉し、特定のDNA断片が組織のどの部分から生じているのかを決定することができなければならない。
【0263】
方法。前記方法の原理は、空間標識タグ配列(位置ドメイン)を担持する固定化されたDNAオリゴ(捕捉プローブ)を有するマイクロアレイを使用することである。マイクロアレイのオリゴのそれぞれのフィーチャーは、1)独自の標識タグ(位置ドメイン)及び2)捕捉配列(捕捉ドメイン)を担っている。どの標識タグが地理的にアレイ表面のどこに置かれているのかを追跡すれば、それぞれの標識タグから二次元で位置情報を引き出すことが可能になる。断片化されたゲノムDNAが、たとえばFFPE処理された組織の切片の添加を通じて、マイクロアレイに添加される。この組織切片中のゲノムDNAは、固定処理により予め断片化されている。
【0264】
組織片がアレイ上に置かれると、ユニバーサルテーリング反応が、ターミナルトランスフェラーゼ酵素の使用を通じて実行される。テーリング反応により、組織中のゲノムDNA断片の突出した3’端部にポリdAテールが付加される。表面上のオリゴは、ハイブリダイズされ3’遮断されたポリdAプローブを介してターミナルトランスフェラーゼによるテーリングから遮断される。
【0265】
ターミナルトランスフェラーゼテーリングに続いて、ゲノムDNA断片は、ポリdAテールが表面オリゴ上のポリdT捕捉配列に出会うことを通じてその近傍の空間的にタグ付けされたオリゴにハイブリダイズすることができる。ハイブリダイゼーションが終了した後、クレノーexo−などの鎖置換ポリメラーゼは、ハイブリダイズしたゲノムDNA断片に相補的な新しいDNA鎖を作製するためのプライマーとして表面上のオリゴを使用することができる。新しいDNA鎖は、この時点で表面オリゴの標識タグの位置情報も含有することになる。
【0266】
最後のステップとして、新たに生成され標識されたDNA鎖は、酵素的手段、変性又は物理的手段のいずれかを通じて表面から切断される。次に、鎖は収集され、ユニバーサルハンドルの導入、特異的アンプリコンの増幅及び/又はシーケンシングを通じて鎖の全セットの下流増幅を受けることができる。
【0267】
図16はこの手順の模式図である。
【0268】
材料及び方法
5’から3’配向プローブをプリントした自製マイクロアレイの調製
個々のタグ配列を有する20個のDNA捕捉オリゴ(表1)は、捕捉プローブとして機能するようにガラススライド上にスポットされた。プローブは、C6スペーサーを有する5’終端アミノリンカーを用いて合成された。すべてのプローブがSigma−Aldrich(St.Louis、MO、USA)により合成された。DNA捕捉プローブは、150mMリン酸ナトリウム中に、pH8.5、濃度20μMで懸濁され、CodeLink(商標)活性化マイクロアレイスライド(7.5cm×2.5cm;Surmodics、Eden Prairie、MN、USA)上にナノプロッターNP2.1/E(Gesim、Grosserkmannsdorf、Germany)を使用してスポットされた。プリント後、表面ブロッキングは製造業者の使用説明書に従って実施された。プローブはスライド上の16個の同一アレイにプリントされ、それぞれのアレイは予め定義されたプリントパターンを含有していた。16個のサブアレイは16−パッドマスク(ChipClip(商標)Schleicher&Schuell Bioscience、Keene、NH、USA)によりハイブリダイゼーション中は、分離されていた。
【0269】
3’から5’配向プローブをプリントした自製マイクロアレイの調製及び5’から3’配向捕捉プローブの合成
オリゴのプリントは、上記の5’から3’配向プローブを用いた場合のように実施された。
【0270】
捕捉プローブ合成のためのプライマーをハイブリダイズさせるため、4×SSC及び0.1%SDS、2μMの伸長プライマー(A_プライマー)及び2μMのスレッド結合プライマー(p_ポリ_dT)を含有するハイブリダイゼーション溶液が50℃で4分間インキュベートされた。その間、自製アレイはChipClip(Whatman)に装着された。前記アレイは引き続き、ウェルあたり50μLのハイブリダイゼーション溶液を用いて、50℃、30分間、300rpm振盪でインキュベートされた。
【0271】
インキュベーション後、アレイはChipClipから取り除かれ、以下の3つのステップ、1)50℃で0.1%SDSを有する2×SSC液、6分間、300rpm振盪で、2)0.2×SSC、1分間、300rpm振盪で、及び3)0.1×SSC、1分間、300rpm振盪で洗浄された。次にアレイは、遠心脱水され、再びChipClipに戻された。
【0272】
伸長及びライゲーションのために、10×Ampligaseバッファー、2.5U AmpliTaq DNAポリメラーゼStoffel断片(Applied Biosystems)、10U Ampligase(Epicentre Biotechnologies)、dNTP各々2mM(Fermentas)及び水を含有する55μLの酵素混合物がそれぞれのウェルにピペットで移される。それに続いて、前記アレイは55℃で30分間インキュベートされる。インキュベーション後、前記アレイは、前述のアレイ洗浄法に従って洗浄されるが、第一のステップは6分間ではなく10分間の持続時間を有する。
【0273】
dAテーリングからの表面オリゴ捕捉配列の保護のためのポリdAプローブのハイブリダイゼーション
表面オリゴ捕捉配列の保護のために3’ビオチン遮断ポリdAプローブをハイブリダイズさせるため、4×SSC及び0.1%SDS、2μMの3’ビオチン−ポリdAを含有するハイブリダイゼーション溶液は50℃で4分間インキュベートされた。その間、自製アレイはChipClip(Whatman)に装着された。前記アレイは引き続き、ウェルあたり50μLのハイブリダイゼーション溶液を用いて、50℃、30分間、300rpm振盪でインキュベートされた。
【0274】
インキュベーション後、アレイはChipClipから取り除かれ、以下の3つのステップ、1)50℃で0.1%SDSを有する2×SSC液、6分間、300rpm振盪で、2)0.2×SSC、1分間、300rpm振盪で、及び3)0.1×SSC、1分間、300rpm振盪で洗浄された。次にアレイは、遠心脱水され、再びChipClipに戻された。
【0275】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織の調製
マウス脳組織は4%ホルマリン中で4℃で24時間固定された。その後、前記組織は以下の通りにインキュベートされた:70%エタノール中1時間、3×インキュベーション;80%エタノール中1時間、1×インキュベーション;96%エタノール中1時間、1×インキュベーション;100%エタノール中1時間、3×インキュベーション;キシレン中室温で1時間、2×インキュベーション。
【0276】
次に、脱水された試料は液体低融点パラフィン中、52〜54℃で最長3時間インキュベートされ、その間パラフィンは1度交換され、残余キシレンを洗い落とした。次に、完了した組織塊は室温で保存された。次に、切片は、使用されるそれぞれの捕捉プローブアレイ上に、ミクロトームを用いてパラフィン中4μmでカットされた。
【0277】
切片はアレイスライド上で37℃、24時間乾燥され、室温で保存される。
【0278】
FFPE組織の脱パラフィン
CodeLinkスライドに付着したホルマリン固定パラフィン化マウス脳10μm切片は、キシレン中10分間で2度;99.5%エタノール2分間;96%エタノール2分間;70%エタノール2分間脱パラフィンされ、次に空気乾燥された。
【0279】
ゲノムDNAのユニバーサルテーリング
dAテーリングのために、1×TdTバッファー(20mM Tris−アセテート(pH7.9)、50mM酢酸カリウム及び10mM酢酸マグネシウム)(New England Biolabs、www.neb.com)、0.1μg/μl BSA(New England Biolabs)、1μlのTdT(20U/μl)及び0.5μlのdATP(100mM)を含有する50μlの反応混合物が調製された。混合物はアレイ表面に添加され、アレイは熱サイクラー(Applied Biosystems)中37℃で15分間インキュベートされ、続いてTdTは70℃で10分間不活化された。この後、温度は再び50℃まで下げられ、dAテール付きゲノム断片の表面オリゴ捕捉配列へのハイブリダイゼーションを可能にした。
【0280】
インキュベーション後、アレイはChipClipから取り除かれ、以下の3つのステップ、1)50℃で0.1%SDSを有する2×SSC液、6分間、300rpm振盪で、2)0.2×SSC、1分間、300rpm振盪で、及び3)0.1×SSC、1分間、300rpm振盪で洗浄された。次にアレイは、遠心脱水された。
【0281】
標識DNAの伸長
1×クレノーバッファー、200μMのdNTP(New England Biolabs)及び1μlのクレノー断片(3’から5’exoマイナス)を含有する混合物50μlを含有する反応混合物の50μlは37℃まで加熱され、それぞれのウェルに添加されて混ぜながら(300rpmで3秒、静止して6秒)37℃で30分間インキュベートされた(サーモミキサーコンフォート;Eppendorf)。
【0282】
インキュベーション後、アレイはChipClipから取り除かれ、以下の3つのステップ、1)50℃で0.1%SDSを有する2×SSC液、6分間、300rpm振盪で、2)0.2×SSC、1分間、300rpm振盪で、及び3)0.1×SSC、1分間、300rpm振盪で洗浄された。次にアレイは、遠心脱水された。
【0283】
残余組織の除去
付着したホルマリン固定パラフィン化マウス脳組織切片を有するスライドは、ChipClipスライドホルダー及び16ウェルマスク(Whatman)に装着された。RNeasy FFPEキット(Qiagen)由来の150μlのプロテイナーゼKダイジェストバッファーごとに、10μlのプロテイナーゼK溶液(Qiagen)が添加された。50μlの最終混合液がそれぞれのウェルに添加され、スライドは56℃で30分間インキュベートされた。
【0284】
PCRバッファー中ウラシル切断USER酵素混合物を用いた捕捉プローブ放出(共有結合プローブ)
16ウェルマスク及びCodeLinkスライドはChipClipホルダー(Whatman)に装着された。1.8mM MgCl
2を有する1×FastStart高忠実度反応バッファー(Roche)、200μM dNTP(New England Biolabs)及び0.1U/1μl USER酵素(New England Biolabs)を含有する50μlの混合物を37℃まで加熱し、それぞれのウェルに添加し、混ぜながら(300rpmで3秒間、静止して6秒間)(サーモミキサーコンフォート;Eppendorf)37℃で30分間インキュベートした。次に、放出されたcDNA及びプローブを含有する反応混合物は、ピペットを用いてウェルから回収された。
【0285】
標識DNAの合成及びプローブ収集後のID特異的及び遺伝子特異的生成物の増幅
PCRバッファー中のウラシル切断USER酵素混合物を用いた捕捉プローブ放出に続く(共有結合プローブ)。
【0286】
切断されたDNAは、最終反応容積10μlで増幅された。1.8mM MgCl
2を有する1.4×FastStart高忠実度反応バッファー中、7μlの切断された鋳型、1μlのID特異的フォワードプライマー(2μM)、1μlの遺伝子特異的リバースプライマー(2μM)及び1μlのFastStart高忠実度酵素ブレンドは、1.8mM MgCl
2を有する1×FastStart高忠実度反応バッファー及び1UのFastStart高忠実度酵素ブレンドとの10μlの最終反応容積を与える。PCR増幅は熱サイクラー(Applied Biosystems)中で、以下のプログラム:ホットスタート、94℃で2分間、続いて50サイクルを94℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で1分間及び最終伸長、68℃で5分間により実行された。
【0287】
ランダムプライマー第二鎖合成とそれに続くユニバーサルハンドル増幅による全ゲノム増幅(得られたdsDNAの端に保持されているタグ配列を含む捕捉プローブ配列)
PCRバッファー中のウラシル切断USER酵素混合物を用いた捕捉プローブ放出に続く(共有結合プローブ)。
【0288】
反応混合物は、1.8mM MgCl
2を有する40μlの1×Faststart HiFi PCRバッファー(pH8.3)(Roche、www.roche−applied−science.com)、0.2mMのそれぞれのdNTP(Fermentas、www.fermentas.com)、0.1μg/μl BSA(New England Biolabs、www.neb.com)、0.1U/μl USER酵素(New England Biolabs)、放出されたDNA(表面プローブから伸長された)及び放出された表面プローブを含有していた。管は、熱サイクラー(Applied Biosystems、www.appliedbiosystems.com)中、37℃で30分間、続いて70℃で20分間インキュベートされた。1μlのクレノー断片(3’から5’exoマイナス)(Illumina、www.illumina.com)及び1μlのハンドル連結ランダムプライマー(10μM)(Eurofins MWG Operon、www.eurofinsdna.com)は管に添加された。管は、熱サイクラー(Applied Biosystems)中で、15℃で15分間、25℃で15分間、37℃で15分間及び最後に75℃で20分間インキュベートされた。インキュベーション後、1μlのそれぞれのプライマー、A_P及びB(10μM)(Eurofins MWG Operon)は管に添加された。1μlのFaststart HiFi DNAポリメラーゼ(5U/μl)(Roche)も管に添加された。PCR増幅は熱サイクラー(Applied Biosystems)中で、以下のプログラム:ホットスタート、94℃で2分間、続いて50サイクルを94℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で1分間及び最終伸長、68℃で5分間により実行された。増幅後、管由来の40μlはQiaquick PCR精製カラム(Qiagen、www.qiagen.com)を用いて精製され、30μlのEB(10mM Tris−Cl、pH8.5)中に溶出された。精製された生成物はバイオアナライザー(Agilent、www.home.agilent.com)を用いて解析され、DNA 7500キットが使用された。
【0289】
視覚化
染色に先立つ蛍光マーカープローブのハイブリダイゼーション
組織の適用に先立って、蛍光マーカープローブは、捕捉プローブアレイ上にプリントされた指定されたマーカー配列にハイブリダイズされる。蛍光マーカープローブは、組織視覚化後の得られた画像を方向付けるのに役立ち、画像をシーケンシング後に得られる個々の捕捉プローブ「タグ」配列についての得られた発現プロファイルと組み合わせることが可能になる。蛍光プローブをハイブリダイズさせるため、4×SSC及び0.1%SDS、2μMの検出プローブ(P)を含有するハイブリダイゼーション溶液は50℃で4分間インキュベートされた。その間、自製アレイはChipClip(Whatman)に装着された。アレイはそれに続いて、ウェルあたり50μLのハイブリダイゼーション溶液と一緒に50℃、30分間、300rpm振盪でインキュベートされた。
【0290】
インキュベーション後、アレイはChipClipから取り除かれ、以下の3つのステップ、1)50℃、0.1%SDSを有する2×SSC液、6分間、300rpm振盪で、2)0.2×SSC、1分間、300rpm振盪で、及び3)0.1×SSC、1分間、300rpm振盪で洗浄された。次にアレイは、遠心脱水された。
【0291】
標識DNAの合成に先立つ又は後のFFPE組織切片の一般的組織学的染色
捕捉プローブアレイ上に固定化されたFFPE組織切片は、前述のように標識DNA合成に先立って脱パラフィン後に洗浄され再水和される、又は前述のように標識DNA合成後に洗浄される。次に、前記切片は以下の通りに処理された;ヘマトキシリン中で3分間インキュベートする、脱イオン水を用いてすすぐ、水道水中で5分間インキュベートする、酸性エタノール中8〜12回素早く浸す、水道水中2×1分間すすぐ、脱イオン水中2分間すすぐ、エオシン中30秒間インキュベートする、95%エタノール中3×5分間洗浄する、100%エタノール中3×5分間洗浄する、キシレン中3×10分間洗浄する(一晩実行することができる)、DPXを使用してスライド上にカバーガラスを置く、一晩フード内でスライドを乾燥させる。
【0292】
標識DNAの合成に先立つ又は後のFFPE組織切片における標的タンパク質の一般的免疫組織化学染色
捕捉プローブアレイ上に固定化されたFFPE組織切片は、前述のように標識DNA合成に先立って脱パラフィン後に洗浄され再水和される、又は前述のように標識DNA合成後に洗浄される。次に、前記切片は、全染色作業中乾燥させておくことなく以下の通りに処理された;一次抗体をブロッキング溶液(1×TBS(Tris緩衝食塩水(50mM Tris、150mM NaCl、pH7.6)、4%ロバ血清及び0.1%triton−X)に希釈する、切片を湿潤チャンバー中室温で一晩一次抗体と一緒にインキュベートする、1×TBSを用いて3回すすぐ、切片を室温で1時間湿潤チャンバー内で蛍光色素(FITC、Cy3又はCy5)にコンジュゲートされた適合する二次抗体と一緒にインキュベートする、1×TBSを用いて3回すすぐ、できる限り多くのTBSを取り除き、切片をProLong Gold+DAPI(Invitrogen)と一緒にマウントし、蛍光顕微鏡及び適合するフィルターセットを用いて解析する。
【0293】
実施例6
この実験は実施例5の原理に従って、しかし組織ではなくアレイ上の断片化されたゲノムDNAを使用して行われた。ゲノムDNAはそれぞれ平均サイズ200bpと700bpまで予め断片化された。この実験は、前記原理が機能することを明らかにしている。断片化されたゲノムDNAはFFPE組織に極めて類似している。
【0294】
標識DNAの合成及びプローブ収集後の内部遺伝子特異的生成物の増幅
1.8mM MgCl
2を有する1×FastStart高忠実度反応バッファー(Roche)、200μMのdNTP(New England Biolabs)及び0.1U/1μlのUSER酵素(New England Biolabs)を含有するPCRバッファー中のウラシル切断USER酵素混合物を用いた捕捉プローブ(共有結合プローブ)放出に続く。
【0295】
切断されたDNAは、最終反応容積50μlで増幅された。47μlの切断された鋳型に、1μlのID特異的フォワードプライマー(10μM)、1μlの遺伝子特異的リバースプライマー(10μM)及び1μlのFastStart高忠実度酵素ブレンドが添加された。PCR増幅は熱サイクラー(Applied Biosystems)中で、以下のプログラム:ホットスタート、94℃で2分間、続いて50サイクルを94℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で1分間及び最終伸長、68℃で5分間により実行された。
【0296】
標識DNAの合成及びプローブ収集後の標識特異的及び遺伝子特異的生成物の増幅
1.8mM MgCl
2を有する1×FastStart高忠実度反応バッファー(Roche)、200μMのdNTP(New England Biolabs)及び0.1U/1μlのUSER酵素(New England Biolabs)を含有するPCRバッファー中のウラシル切断USER酵素混合物を用いた捕捉プローブ(共有結合プローブ)放出に続く。
【0297】
切断されたDNAは、最終反応容積50μlで増幅された。47μlの切断された鋳型に、1μlの標識特異的フォワードプライマー(10μM)、1μlの遺伝子特異的リバースプライマー(10μM)及び1μlのFastStart高忠実度酵素ブレンドが添加された。PCR増幅は熱サイクラー(Applied Biosystems)中で、以下のプログラム:ホットスタート、94℃で2分間、続いて50サイクルを94℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で1分間及び最終伸長、68℃で5分間により実行された。
フォワード−ゲノムDNAヒトプライマー
5’−GACTGCTCTTTTCACCCATC−3’(配列番号47)
リバース−ゲノムDNAヒトプライマー
5’−GGAGCTGCTGGTGCAGGG−3’(配列番号48)
P−標識特異的プライマー
5’−ATCTCGACTGCCACTCTGAA−3’(配列番号49)
【0298】
結果は
図17及び20に示されている。前記図はアレイ上で増幅された内部生成物を示しており、
図17及び18における検出されたピークは予想されたサイズである。したがって、これはゲノムDNAを捕捉し増幅できることを実証している。
図19及び20では、ゲノムDNAのランダム断片化及びターミナルトランスフェラーゼ標識化が極めて多様な試料プールを生成することを考えると、スメアである。
【0299】
実施例7
ポリメラーゼ伸長及びターミナルトランスフェラーゼテーリングを使用する5’から3’配向捕捉プローブの代替合成
捕捉プローブ合成のためのプライマーをハイブリダイズさせるため、4×SSC及び0.1%SDS及び2μMの伸長プリマー(A_プライマー)を含有するハイブリダイゼーション溶液が50℃で4分間インキュベートされた。その間、自製アレイ(実施例1参照)はChipClip(Whatman)に装着された。前記アレイは引き続き、ウェルあたり50μLのハイブリダイゼーション溶液を用いて、50℃、30分間、300rpm振盪でインキュベートされた。
【0300】
インキュベーション後、アレイはChipClipから取り除かれ、以下の3つのステップ、1)50℃で0.1%SDSを有する2×SSC液、6分間、300rpm振盪で、2)0.2×SSC、1分間、300rpm振盪で、及び3)0.1×SSC、1分間、300rpm振盪で洗浄された。次にアレイは、遠心脱水され、再びChipClipに戻された。
【0301】
1μlのクレノー断片(3’から5’exoマイナス)(Illumina、www.illumina.com)は10×クレノーバッファーと共に、dNTPそれぞれ2mM(Fermentas)及び水は50μlの反応に混合され、それぞれのウェルにピペットで移された。
【0302】
アレイはEppendorfサーモミキサーにおいて、15℃で15分間、25℃で15分間、37℃で15分間及び最後に75℃で20分間インキュベートされた。
【0303】
インキュベーション後、アレイはChipClipから取り除かれ、以下の3つのステップ、1)50℃で0.1%SDSを有する2×SSC液、6分間、300rpm振盪で、2)0.2×SSC、1分間、300rpm振盪で、及び3)0.1×SSC、1分間、300rpm振盪で洗浄された。次にアレイは、遠心脱水され、再びChipClipに戻された。
【0304】
dTテーリングのために、1×TdTバッファー(20mM Tris−アセテート(pH7.9)、50mM酢酸カリウム及び10mM酢酸マグネシウム)(New England Biolabs、www.neb.com)、0.1μg/μl BSA(New England Biolabs)、0.5μlのリボヌクレアーゼH(5U/μl)、1μlのTdT(20U/μl)及び0.5μlのdTTP(100mM)を含有する50μlの混合物が調製された。混合物はアレイ表面に添加され、アレイは熱サイクラー(Applied Biosystems)中37℃で15分間インキュベートされ、続いてTdTは70℃で10分間不活化された。
【0305】
実施例8
USERシステム切断及びターミナルトランスフェラーゼを介した増幅を用いて5’から3’高プローブ密度アレイ及びホルマリン固定凍結(FF凍結)組織を使用する空間トランスクリプトーム
アレイ調製
予め製作された高密度マイクロアレイチップはRoche Nimblegen(Madison、WI、USA)に発注した。それぞれの捕捉プローブアレイは135000のフィーチャーを含有しており、そのうちの132640フィーチャーが、独自のIDタグ配列(位置ドメイン)及び捕捉領域(捕捉ドメイン)を含む捕捉プローブを担持していた。それぞれのフィーチャーは13×13μmのサイズであった。捕捉プローブは、5’から3’方向に、5つのdUTP塩基(切断ドメイン)及びジェネラル増幅ドメインを含有するユニバーサルドメイン、IDタグ(位置ドメイン)並びに捕捉領域(捕捉ドメイン)で構成されていた(
図22及び表2)。それぞれのアレイは、アレイ視覚化中に方向付けを助ける蛍光プローブのハイブリダイゼーションを可能にするジェネリック30bp配列(表2)を担持するマーカープローブの枠(
図23)も取り付けられていた。
【0306】
組織調製−ホルマリン固定凍結組織の調製
動物(マウス)は50mlのPBS及び100mlの4%ホルマリン液を灌流された。嗅球の切除後、組織は後固定のために24時間、4%ホルマリン浴に漬けられた。次に、組織はPBSに溶解させた30%ショ糖中で24時間ショ糖処理され、形態を安定化させ過剰なホルマリンを取り除いた。組織は制御された速度で−40℃まで凍結降下させ、実験間は−20℃で保管した。3時間の組織後固定又は後固定なしの類似の調製は平行標本について実行された。後固定のない2%ホルマリンを用いた灌流も首尾よく使用された。同様に、ショ糖処理ステップは省くことができた。組織は10μmの切片を作るためにクリオスタットにマウントされた。組織片は、使用されるそれぞれの捕捉プローブアレイ上に貼り付けられた。場合によってさらに良好な組織付着性のために、アレイチップは50℃で15分間置かれた。
【0307】
随意の対照−切片組織からの全RNA調製
全RNAは、製造業者の使用説明書に従ってRNeasyFFPEキット(Qiagen)を使用して単一の組織切片(10μm)から抽出された。組織切片から得られた全RNAは、RNAが組織切片から直接アレイ上に捕捉される実験との比較のために対照実験で使用された。したがって、全RNAがアレイに適用される場合には、組織ステップの染色、視覚化及び分解は省かれた。
【0308】
オンチップ反応
マーカープローブの枠プローブへのハイブリダイゼーション、逆転写、核染色、組織消化及びプローブ切断反応はすべて、ウェルあたり50μlの反応容積で16ウェルシリコンガスケット(Arrayit、Sunnyvale、CA、USA)において実施された。蒸発を防ぐために、カセットはプレートシーラー(in Vitro AB、Stockholm、Sweden)で覆われた。
【0309】
随意−cDNA合成に先立つ組織透過処理
プロテイナーゼKを使用する透過処理のために、プロテイナーゼK(Qiagen、Hilden、Germany)は、PBS中に1μg/mlまで希釈された。前記溶液はウェルに添加され、スライドは室温で5分間インキュベートされ、続いて10分間にわたり80℃まで徐々に増加させた。スライドは、逆転写反応前にPBS中で短時間で洗浄された。
【0310】
代わりに、マイクロ波を使用する透過処理のために、組織付着後スライドは50mlの0.2×SSC(Sigma−Aldrich)を含有するガラス瓶の底に置かれ、マイクロ波オーブンにおいて800Wで1分間加熱された。マイクロ波処理の直後、スライドは紙ティシューの上に置かれ、不必要な大気曝露から保護されたチャンバー内で30分間乾燥された。乾燥後、cDNA合成が開始される前に、スライドは短時間水(リボヌクレアーゼ/デオキシリボヌクレアーゼなし)に浸され、最後に遠心分離により遠心乾燥された。
【0311】
cDNA合成
逆転写反応のために、プラチナTaq付のSuperScriptIII One−Step RT−PCR System(Life Technologies/Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)が使用された。逆転写反応は、最終容積50μlで1×反応混合物、1×BSA(New England Biolabs、Ipswich、MA、USA)及び2μlのSuperScriptIII RT/Platinum Taq混合物を含有していた。この溶液は組織切片に適用する前に50℃まで加熱され、反応は50℃で30分間実施された。逆転写溶液はそれに続いてウェルから取り除かれ、スライドは2時間風乾させておいた。
【0312】
組織視覚化
cDNA合成後、核染色及びマーカープローブの枠プローブ(アレイ上の組織試料の方向付けを可能にするためにアレイ基板に付着しているプローブ)へのハイブリダイゼーションは同時に実行された。濃度300nMのDAPI及びPBS中濃度170nMのマーカープローブを有する溶液が調製された。この溶液はウェルに添加され、スライドは室温で5分間インキュベートされ、続いてPBS中で短時間洗浄され、遠心乾燥させた。
【0313】
代わりに、マーカープローブは、組織をアレイ上に置くのに先立って枠プローブにハイブリダイズされた。次に、マーカープローブはハイブリダイゼーション溶液(4×SSC、0.1%SDS)中170nMまで希釈された。この溶液はチップに適用する前に50℃まで加熱され、ハイブリダイゼーションは50℃、30分間、300rpmで実施された。ハイブリダイゼーション後、スライドは、2×SSC、0.1%SDS、50℃、10分間、300rpmで、0.2×SSC、1分間、300rpmで、及び0.1×SSC、1分間、300rpmで洗浄された。その場合、cDNA合成後の染色液は、PBS中300nMまで希釈された核DAPI染色を含有しているだけであった。前記溶液はウェルに適用され、スライドは室温で5分間インキュベートされ、続いてPBS中で短時間洗浄し、遠心乾燥させた。
【0314】
切片はZeiss Axio Imager Z2を用いて顕微鏡的に調べられ、MetaSystemsソフトウェアを用いて処理された。
【0315】
組織除去
組織切片は、RNeasy FFPEキットからのPKDバッファー(両方ともQiagen社製)中に1.25μg/μlまで希釈されたプロテイナーゼKを使用して、300rpmで3秒間、次に静止させて6秒間の間隔を開けて混合させて、56℃で30分間消化された。スライドはそれに続いて2×SSC、0.1%SDS、50℃、10分間、300rpmで、0.2×SSC、1分間、300rpmで、及び0.1×SSC、1分間、300rpmで洗浄された。
【0316】
プローブ放出
シリコンガスケット付の16ウェルハイブリダイゼーションカセット(Arraylt)は37℃まで予熱され、Nimblegenスライドに装着させた。濃度未知の溶解バッファー(Takara)、0.1U/μl USER酵素(NEB)及び0.1μg/μlのBSAからなる、37℃まで予熱した容積50μlの切断混合物が表面固定化cDNAを含有するウェルのそれぞれに添加された。泡の除去後、スライドは密封され、サーモミキサーコンフォート内、37℃で30分間インキュベートされ、300rpmで3秒間と間に静止6秒間をおくサイクル振盪させた。インキュベーション後、45μlの切断混合物は使用されたウェルのそれぞれから収集され、0.2mlのPCR管に入れられた(
図24)。
【0317】
ライブラリー調製
エキソヌクレアーゼ処理
前記溶液を氷上で2分間冷却後、エキソヌクレアーゼI(NEB)が添加され、伸長していないcDNAプローブを取り除き、最終容積46.2μl及び最終濃度0.52U/μlにした。管は熱サイクラー(Applied Biosystems)において37℃で30分間インキュベートされ、続いてエキソヌクレアーゼは80℃で25分間不活化された。
【0318】
ターミナルトランスフェラーゼによるdAテーリング
エキソヌクレアーゼステップ後、45μlのポリAテーリング混合物は、製造業者の使用説明書に従って、TdTバッファー(Takara)、3mMのdATP(Takara)及びマニュファクチャラーズTdT酵素混合物(TdT及びリボヌクレアーゼH)(Takara)から成るが、試料のそれぞれに添加された。混合物は熱サイクラーにおいて37℃で15分間インキュベートされ、続いてTdTは70℃で10分間不活化された。
【0319】
第二鎖合成及びPCR増幅
dAテーリング後、23μlのPCRマスター混合物は、試料あたり4個の新しい0.2ml PCR管に入れ、それぞれの管に2μl試料が鋳型として添加された。最終PCRは、1×Ex Taqバッファー(Takara)、200μMのそれぞれのdNTP(Takara)、600nMのA_プライマー(MWG)、600nMのB_dT20VN_プライマー(MWG)及び0.025U/μlのEx Taqポリメラーゼ(Takara)から成っていた(表2)。第二cDNA鎖は、熱サイクラーにおいて95℃で3分間、50℃で2分間及び72℃で3分間の1サイクルを実行することにより作製された。次に、試料は、95℃で30秒間、67℃で1分間及び72℃で3分間の20サイクル(ライブラリー調製のため)又は30サイクル(cDNAの存在を確認するため)を実行することにより増幅され、続いて72℃で10分間最終伸長させた。
【0320】
ライブラリー精製
増幅後、4つのPCR(100μl)は500μlの結合バッファー(Qiagen)と混合され、Qiaquick PCR精製カラム(Qiagen)に入れられ、増幅されたcDNAを膜に結合させるために17900×gで1分間回転させた。次に、膜はエタノールを含有する洗浄バッファー(Qiagen)を用いて洗浄され、最後に50μlの10mM Tris−Cl、pH8.5に溶出させた。
【0321】
精製され濃縮された試料は、MBSロボット(Magnetic Biosolutions)を用いてCA−精製(カルボン酸にコンジュゲートされた超常磁性ビーズによる精製)によりさらに精製され濃縮された。150〜200bp未満の断片を取り除くために最終PEG濃度10%が使用された。増幅されたcDNAは10分間CAビーズ(Invitrogen)に結合させておき、次に15μlの10mM Tris−Cl、pH8.5に溶出させた。
【0322】
ライブラリー品質解析
30サイクル増幅された試料は、増幅されたcDNAライブラリーの存在を確認するためにAgilentバイオアナライザー(Agilent)を用いて解析され、DNA高感度キット又はDNA 1000キットが、材料の量に応じて使用された。
【0323】
シーケンシングライブラリー調製
ライブラリーインデックス化
20サイクル増幅された試料をさらに使用して、シーケンシングライブラリーを調製した。インデックスPCRマスター混合物は試料ごとに調製され、23μlが6個の0.2ml管に入れられた。2μlの増幅され精製されたcDNAが6つのPCRのそれぞれに鋳型として添加され、1×Phusionマスター混合物(Fermentas)、500nMのInPE1.0(Illumina)、500nMのIndex 1−12(Illumina)及び0.4nMのInPE2.0(Illumina)を含有するPCRを作製した。試料は、熱サイクラーにおいて、98℃で30秒間、65℃で30秒間及び72℃で1分間の18サイクルで増幅され、続いて72℃で5分間最終伸長させた。
【0324】
シーケンシングライブラリー精製
増幅後、6つのPCR(150μl)は750μlの結合バッファーと混合され、Qiaquick PCR精製カラムに入れられ、増幅されたcDNAを膜に結合させるために17900×gで1分間回転させた(大きな試料容積(900μl)のせいで、試料は2つ(それぞれ450μl)に分割され2つの別々のステップで結合された)。次に、膜はエタノールを含有する洗浄バッファーを用いて洗浄され、最後に50μlの10mM Tris−Cl、pH8.5に溶出させた。
【0325】
精製され濃縮された試料は、MBSロボットを用いてCA−精製によりさらに精製され濃縮された。300〜350bp未満の断片を取り除くために最終PEG濃度7.8%が使用された。増幅されたcDNAは10分間CAビーズに結合させておき、次に15μlの10mM Tris−Cl、pH8.5に溶出させた。試料は、完成ライブラリーの存在及びサイズを確認するためにAgilentバイオアナライザーを用いて解析され、DNA高感度キット又はDNA 1000キットが、材料の量に応じて製造業者の使用説明書に従って使用された(
図25)。
【0326】
シーケンシング
前記ライブラリーは、製造業者の使用説明書に従って、望ましいデータ処理能力に応じて、Illumina Hiseq2000又はMiseq上でシーケンシングされた。場合によって読取り2では、カスタムシーケンシングプライマーB_r2を使用して、20Tのホモポリマーストレッチを通じたシーケンシングを回避した。
【0327】
データ解析
読取り1は5’端部で42塩基刈り取られた。リード2は5’端部で25塩基刈り取られた(場合によって、カスタムプライマーが使用された場合には、読取り2から塩基は刈り取られなかった)。次に、前記読取りはリピート遮蔽マスマスキュラス(Mus musculus)9ゲノムアセンブリーへボウタイ(bowtie)を用いてマッピングされ、出力はSAMファイルフォーマットにフォーマットされた。マッピングされた読取りは抜き出され、UCSC refGene遺伝子アノテーションを用いて推定された。インデックスは「インデックスファインダー」(インデックス回収のための自製ソフトウェア)を用いて回収された。次に、すべての捕捉された転写物及びチップ上のそのそれぞれのインデックス位置に関する情報を含有するモンゴDBデータベースが作成された。
【0328】
matlab実施はデータベースと結び付けられ、データの空間視覚化及び解析が可能になった(
図26)。
【0329】
場合によって、データ視覚化は、正確な整列化のために蛍光標識された枠プローブを使用し、空間トランスクリプトームデータ抽出を可能にする顕微鏡画像を重ね合わされた。
【0330】
実施例9
MutYシステム切断及びTdTを介する増幅を用いて3’から5’高プローブ密度アレイ及びFFPE組織を使用する空間トランスクリプトーム
アレイ調製
予め製作された高密度マイクロアレイチップはRoche Nimblegen(Madison、WI、USA)に発注した。それぞれの使用された捕捉プローブアレイは72kのフィーチャーを含有しており、そのうちの66022が、独自のIDタグ相補的配列を含有していた。それぞれのフィーチャーは16×16μmのサイズであった。捕捉プローブは、3つの追加の塩基がプローブの上部(P’)ジェネラルハンドルに付加されてプローブを長バージョンのP’、LP’にする以外は、自製プリントされた3’から5’アレイのために使用されたプローブと同じように3’から5’に構成されていた(表2)。それぞれのアレイは、アレイ視覚化中に方向付けを助ける蛍光プローブのハイブリダイゼーションを可能にするジェネリック30bp配列を担持するプローブの枠も取り付けられていた。
【0331】
5’から3’配向捕捉プローブの合成
高密度アレイ上での5’から3’配向捕捉プローブの合成は、伸長及びライゲーションステップが55℃で15分間、続いて72℃で15分間実行されたこと以外は、自製プリントされたアレイの場合と同じように実行された。Aハンドルプローブ(表2)は、下に説明されるMutY酵素システムを通じたプローブのその後の放出を可能にするA/Gミスマッチを含んでいた。Pプローブは、表面上のさらに長いプローブに適合するようにさらに長いLPバージョンで置き換えられた。
【0332】
ホルマリン固定パラフィン包埋組織の調製及び脱パラフィン
これは、自製プロトコールにおいて上で説明された通りに実行された。
【0333】
cDNA合成及び染色
cDNA合成及び染色は、ビオチン標識dCTP及びdATPが4つの定まったdNTP(それぞれがビオチン標識したものの25倍で存在していた)と共にcDNA合成に添加されたこと以外は、5’から3’配向高密度Nimblegenアレイについてのプロトコールの通りに実行された。
【0334】
組織除去
組織除去は、実施例8において説明される5’から3’配向高密度Nimblegenアレイについてのプロトコールと同じように実行された。
【0335】
MutYによるプローブ切断
シリコンガスケット(ArraylT)付の16ウェルインキュベーションチャンバーは37℃まで予熱され、Codelinkスライドに装着された。37℃まで予熱され、1×エンドヌクレアーゼVIIIバッファー(NEB)、10U/μlのMutY(Trevigen)、10U/μlのエンドヌクレアーゼVIII(NEB)、0.1μg/μlのBSAから成る容積50μlの切断混合物が、表面固定化cDNAを含有するウェルのそれぞれに添加された。泡を除去後、スライドは密封され、サーモミキサーコンフォートにおいて37℃で30分間インキュベートされ、300rpmで3秒間と間に6秒間の静止でサイクル振盪した。インキュベーション後、プレートシーラーは取り除かれ、40μlの切断混合物は使用されたウェルのそれぞれから収集されて、PCRプレートに置かれた。
【0336】
ライブラリー調製
ビオチン−ストレプトアビジン媒介ライブラリー精製
非伸長cDNAプローブを取り除きバッファーを交換するために、ビオチン標識cDNAをストレプトアビジン被覆C1ビーズ(Invitrogen)に結合させビーズを0.1M NaOH(新たに作製される)で洗浄することにより試料は精製された。精製はMBSロボット(Magnetic Biosolutions)を用いて実行され、ビオチン標識cDNAはC1ビーズに10分間結合させておき、次に、ビーズ−水溶液を80℃まで加熱してビオチン−ストレプトアビジン結合を切断することにより20μlの水中に溶出させた。
【0337】
ターミナルトランスフェラーゼによるdAテーリング
精製ステップ後、製造業者の使用説明書に従って、18μlのそれぞれの試料は新しい0.2mlのPCR管に入れられ、22μlのポリAテーリングマスター混合物と混合されて、溶解バッファー(Takara、Cellamp全トランスクリプトーム増幅キット)、TdTバッファー(Takara)、1.5mM dATP(Takara)及びTdT酵素混合物(TdT及びリボヌクレアーゼH)(Takara)から成る40μlの反応混合物とした。混合物は熱サイクラーにおいて37℃で15分間インキュベートされ、続いてTdTは70℃で10分間不活化された。
【0338】
第二鎖合成及びPCR増幅
dAテーリング後、23μlのPCRマスター混合物は、試料あたり4個の新しい0.2ml PCR管に入れ、それぞれの管に2μl試料が鋳型として添加された。最終PCRは、1×Ex Taqバッファー(Takara)、200μMのそれぞれのdNTP(Takara)、600nMのA_プライマー(MWG)、600nMのB_dT20VN_プライマー(MWG)及び0.025U/μlのEx Taqポリメラーゼ(Takara)から成っていた。第二cDNA鎖は、熱サイクラーにおいて95℃で3分間、50℃で2分間及び72℃で3分間の1サイクルを実行することにより作製された。次に、試料は、95℃で30秒間、67℃で1分間及び72℃で3分間の20サイクル(ライブラリー調製のため)又は30サイクル(cDNAの存在を確認するため)を実行することにより増幅され、続いて72℃で10分間最終伸長させた。
【0339】
ライブラリー精製
増幅後、4つのPCR(100μl)は500μlの結合バッファー(Qiagen)と混合され、Qiaquick PCR精製カラム(Qiagen)に入れられ、増幅されたcDNAを膜に結合させるために17900×gで1分間回転させた。次に、膜はエタノールを含有する洗浄バッファー(Qiagen)を用いて洗浄され、最後に50μlの10mM Tris−HCl、pH8.5に溶出させた。
【0340】
精製され濃縮された試料は、MBSロボット(Magnetic Biosolutions)を用いてCA−精製(カルボン酸にコンジュゲートされた超常磁性ビーズによる精製)によりさらに精製され濃縮された。150〜200bp未満の断片を取り除くために最終PEG濃度10%が使用された。増幅されたcDNAは10分間CAビーズ(Invitrogen)に結合させておき、次に15μlの10mM Tris−HCl、pH8.5に溶出させた。
【0341】
二次PCR増幅
最終PCRは、1×EX Taqバッファー(Takara)、200μMのそれぞれのdNTP(Takara)、600nMのA_プライマー(MWG)、600nMのB_プライマー(MWG)及び0.025U/μlのEx Taqポリメラーゼ(Takara)から成っていた。試料は3分間で95℃まで加熱し、次に、95℃で30秒間、65℃で1分間及び72℃で3分間の10サイクルを実行することにより増幅され、続いて72℃で10分間最終伸長させた。
【0342】
二次ライブラリー精製
増幅後、4つのPCR(100μl)は500μlの結合バッファー(Qiagen)と混合され、Qiaquick PCR精製カラム(Qiagen)に入れられ、増幅されたcDNAを膜に結合させるために17900×gで1分間回転させた。次に、膜はエタノールを含有する洗浄バッファー(Qiagen)を用いて洗浄され、最後に50μlの10mM Tris−Cl、pH8.5に溶出させた。
【0343】
精製され濃縮された試料は、MBSロボット(Magnetic Biosolutions)を用いてCA−精製(カルボン酸にコンジュゲートされた超常磁性ビーズによる精製)によりさらに精製され濃縮された。150〜200bp未満の断片を取り除くために最終PEG濃度10%が使用された。増幅されたcDNAは10分間CAビーズ(Invitrogen)に結合させておき、次に15μlの10mM Tris−HCl、pH8.5に溶出させた。
【0344】
シーケンシングライブラリー調製
ライブラリーインデックス化
20サイクル増幅された試料をさらに使用して、シーケンシングライブラリーを調製した。インデックスPCRマスター混合物は試料ごとに調製され、23μlが6個の0.2ml管に入れられた。2μlの増幅され精製されたcDNAが6つのPCRのそれぞれに鋳型として添加され、1×Phusionマスター混合物(Fermentas)、500nMのInPE1.0(Illumina)、500nMのIndex 1−12(Illumina)及び0.4nMのInPE2.0(Illumina)を含有するPCRを作製した。試料は、熱サイクラーにおいて、98℃で30秒間、65℃で30秒間及び72℃で1分間の18サイクルで増幅され、続いて72℃で5分間最終伸長させた。
【0345】
シーケンシングライブラリー精製
増幅後、試料はMBSロボットを用いてCA精製により精製され濃縮された。300〜350bp未満の断片を取り除くために最終PEG濃度7.8%が使用された。増幅されたcDNAを10分間、CAビーズに結合させておき、次に、15μlの10mM Tris−HCl、pH8.5に溶出させた。
【0346】
10μlの増幅され精製された試料は、Caliper XTチップ上に置かれ、480bpから720bpまでの断片はCaliper XT(Caliper)で切り出された。試料は、完成ライブラリーの存在及びサイズを確認するためにAgilentバイオアナライザーを用いて解析され、DNA高感度キットが使用された。
【0347】
シーケンシング及びデータ解析
シーケンシング及びバイオインフォマティックは、実施例8において説明された5’から3’配向高密度Nimblegenアレイについてのプロトコールと同じように実行された。しかし、データ解析では、転写物のマッピングでは読取り1は使用されなかった。特異的Olfr転写物は、Matlab視覚化ツールを使用して分類することができた(
図27)。
【0348】
実施例10
プロテイナーゼK又はマイクロ波を通じた透過処理を用い、USERシステム切断及びTdTを介した増幅を用いる、5’から3’配向プローブとホルマリン固定凍結(FF−凍結)組織を有する自製プリントされた41−タグマイクロアレイを使用する空間トランスクリプトーム
アレイ調製
前記の通りであるが、実施例8の5’から3’配向高密度アレイにおけるプローブと同じ組成を有する41の独自のIDタグプローブのパターンで自製アレイはプリントされた(
図28)。
【0349】
他のすべてのステップは、実施例8において説明されたプロトコールと同じように実行された。
【0350】
実施例11
cDNA合成ステップを実施するための代替方法
上記のチップ上のcDNA合成は、鋳型切替えプライマーをcDNA合成反応に添加することにより第二鎖を作製する鋳型切替えと組み合わせることもできる(表2)。第二増幅ドメインは、逆転写酵素により第一cDNA鎖の3’端部にカップリングされる終端塩基に前記ドメインを結合させることにより導入され、第二鎖の合成をプライミングする。ライブラリーは、アレイ表面からの二本鎖複合体の放出の直後に容易に増幅させることができる。
【0351】
実施例12
USERシステム切断及びTdT−テーリング又は転座特異的プライマーを介した増幅を用いた、5’から3’配向プローブ及び断片化されたポリAテールgDNAを有する自製プリントされた41タグマイクロアレイを使用する空間ゲノミクス
アレイ調製
前記の通りであるが、実施例8の5’から3’配向高密度におけるプローブと同じ組成を有する41の独自のIDタグプローブのパターンでCodelinkスライド(Surmodics)を使用して自製アレイはプリントされた。
【0352】
細胞からの全DNA調製
DNA断片化
ゲノムDNA(gDNA)は、A431及びU2OS株化細胞から、製造業者の使用説明書に従ってDNeasyキット(Qiagen)により抽出された。DNAは製造業者の使用説明書に従ってCovaris超音波処理器(Covaris)上で500bpまで断片化された。
【0353】
試料は、MBSロボット(Magnetic Biosolutions)を用いるCA精製(カルボン酸にコンジュゲートされた超常磁性ビーズによる精製)により精製され濃縮された。150〜200bp未満の断片を取り除くために最終PEG濃度10%が使用された。断片化されたDNAは10分間CAビース(Invitrogen)に結合させておき、次に15μlの10mM Tris−HCl、pH8.5に溶出させた。
【0354】
随意対照−異なる株化細胞のスパイク
A431 DNAのU2OS DNAへのスパイクを通じて、A431 DNAの1%、10%又は50%のスパイクからなど、異なるレベルの捕捉感度を測定することができる。
【0355】
ターミナルトランスフェラーゼによるdAテーリング
45μlポリAテーリング混合物(製造業者の使用説明書によれば、TdTバッファー(Takara)、3mM dATP(Takara)及びTdT酵素混合物(TdT及びリボヌクレアーゼH)(Takara)から成る)は、0.5μgの断片化されたDNAに添加された。混合物は熱サイクラーにおいて37℃で30分間インキュベートされ、続いてTdTは80℃で20分間不活化された。次に、dAテール断片は製造業者の使用説明書に従って、Qiaquick(Qiagen)カラムを通じて浄化され、濃度は製造業者の使用説明書に従って、Qubitシステム(Invitrogen)を使用して測定された。
【0356】
オンチップ実験
ハイブリダイゼーション、第二鎖合成及び切断反応は、16ウェルシリコンガスケット(Arraylt、Sunnyvale、CA、USA)のチップ上で実施された。蒸発を防ぐために、カセットはプレートシーラー(in Vitro AB、Stockholm、Sweden)で覆われた。
【0357】
ハイブリダイゼーション
117ngのDNAは、1×NEBバッファー(New England Biolabs)及び1×BSAから成る総容積45μl中で予め暖められたアレイ(50℃)上のウェルに置かれた。混合物はMTPブロックを備えたサーモミキサーコンフォート(Eppendorf)において50℃で30分間、300rpm振盪でインキュベートされた。
【0358】
第二鎖合成
ハイブリダイゼーション混合物を取り除かずに、1×NEBバッファー、1.5μlのクレノーポリメラーゼ及び3.75μlのdNTP(それぞれ2mM)から成る15μlのクレノー伸長反応混合物がウェルに添加された。反応混合物はサーモミキサーコンフォート(Eppendorf)において37℃で30分間、振盪せずにインキュベートされた。
【0359】
スライドはそれに続いて、2×SSC、0.1%SDS、50℃、10分間、300rpmで、0.2×SSC、1分間、300rpmで、及び0.1×SSC、1分間、300rpmで洗浄された。
【0360】
プローブ放出
1.8mM MgCl
2を有する1×FastStart高忠実度反応バッファー(Roche)、200μM dNTP(New England Biolabs)、1×BSA及び0.1U/1μl USER酵素(New England Biolabs)を含有する容積50μlの混合物を37℃まで加熱し、それぞれのウェルに添加し、混ぜながら(300rpmで3秒間、静止して6秒間)(サーモミキサーコンフォート;Eppendorf)37℃で30分間インキュベートした。次に、放出されたDNAを含有する反応混合物は、ピペットを用いてウェルから回収された。
【0361】
ライブラリー調製
増幅反応
増幅は、7.5μlの放出された試料、1μlのそれぞれのプライマー及び0.5μlの酵素から成る10μlの反応において実行された(Roche、FastStart HiFi PCRシステム)。反応は、94℃で2分間、1サイクルの94℃で15秒間、55℃で2分間、72℃で2分間、30サイクルの94℃で15秒間、65℃で30秒間、72℃で90秒間及び最終伸長72℃で5分間として循環された。
【0362】
シーケンシングのためのライブラリーの調製では、2つのプライマーは、表面プローブAハンドル及び特異的転座プライマー(A431では)又はBハンドルに連結された特異的SNPプライマーのいずれかから成っていた(表2)。
【0363】
ライブラリー精製
精製され濃縮された試料は、MBSロボット(Magnetic Biosolutions)を用いてCA−精製(カルボン酸にコンジュゲートされた超常磁性ビーズによる精製)によりさらに精製され濃縮された。150〜200bp未満の断片を取り除くために最終PEG濃度10%が使用された。増幅されたDNAは10分間CAビーズ(Invitrogen)に結合させておき、次に15μlの10mM Tris−HCl、pH8.5に溶出させた。
【0364】
ライブラリー品質解析
試料は、増幅されたDNAライブラリーの存在を確認するためにAgilentバイオアナライザー(Agilent)を用いて解析され、DNA高感度キット又はDNA 1000キットが、材料の量に応じて使用された。
【0365】
ライブラリーインデックス化
20サイクル増幅された試料をさらに使用して、シーケンシングライブラリーを調製した。インデックスPCRマスター混合物は試料ごとに調製され、23μlが6個の0.2ml管に入れられた。2μlの増幅され精製されたcDNAが6つのPCRのそれぞれに鋳型として添加され、1×Phusionマスター混合物(Fermentas)、500nMのInPE1.0(Illumina)、500nMのIndex 1−12(Illumina)及び0.4nMのInPE2.0(Illumina)を含有するPCRを作製した。試料は、熱サイクラーにおいて、98℃で30秒間、65℃で30秒間及び72℃で1分間の18サイクルで増幅され、続いて72℃で5分間最終伸長させた。
【0366】
シーケンシングライブラリー精製
精製され濃縮された試料は、MBSロボットを用いてCA−精製によりさらに精製され濃縮された。300〜350bp未満の断片を取り除くために最終PEG濃度7.8%が使用された。増幅されたDNAは10分間CAビーズに結合させておき、次に15μlの10mM Tris−Cl、pH8.5に溶出させた。試料は、完成されたライブラリーの存在及びサイズを確認するためにAgilentバイオアナライザーを用いて解析され、DNA高感度キット又はDNA 1000キットは製造業者の使用説明書に従って、材料の量に応じて使用された(
図29)。
【0367】
シーケンシング
シーケンシングは、実施例8において説明された5’から3’配向高密度Nimblegenアレイについてのプロトコールと同じように実行された。
【0368】
DNA解析
DNA解析は、整列配置されたID捕捉プローブの捕捉感度を決定するために実行された。読取り2は、転座又はSNPプライマーのいずれかのその含有量に基づいて分類された。次に、これらの読取りは、読取り1に含有されるそのIDあたりで分類された。
【0369】
随意対照−株化細胞特異的転座の直接増幅
これは、PCRにより直接スパイクされた株化細胞の捕捉感度を測定するために使用された。A431転座のためのフォワード及びリバースプライマー(表2)を使用して、第二鎖コピーされ放出された物質における転座を試みその存在を検出した(
図30)。
【0370】
【表2】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]