特許第5916170号(P5916170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916170
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】レーザーブランキング装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20160422BHJP
   B23K 37/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   B23K26/38 A
   B23K37/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-530443(P2014-530443)
(86)(22)【出願日】2014年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2014000684
(87)【国際公開番号】WO2015037162
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2014年7月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-189725(P2013-189725)
(32)【優先日】2013年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000238946
【氏名又は名称】株式会社エイチアンドエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 朗
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−050184(JP,A)
【文献】 特開平10−034485(JP,A)
【文献】 特開2002−035967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
B23K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の板材を搬送させながら、レーザーノズルから照射されるレーザー光で切断し、ブランク材とするレーザーブランキング装置であって、
前記レーザーノズルと、
前記板材を送るためのエンドレスコンベアと、
前記レーザーノズルの下方に設けられた一対の上流側支持ローラ及び下流側支持ローラと、
前記上流側支持ローラ及び前記下流側支持ローラの下方に設けられた引込ローラと、
を備え、
前記上流側支持ローラ、前記下流側支持ローラ及び前記引込ローラが前記エンドレスコンベアを案内するものであり、それぞれ独立に、位置変更可能となっているものであるレーザーブランキング装置。
【請求項2】
前記上流側支持ローラ、前記下流側支持ローラ及び前記引込ローラが一体となって、前記エンドレスコンベアの進行方向に移動可能となっている請求項1記載のレーザーブランキング装置。
【請求項3】
張力を調整するための張力調整ローラを更に備える請求項1記載のレーザーブランキング装置。
【請求項4】
前記エンドレスコンベアの上方には、前記エンドレスコンベアの進行方向に直交するようにX軸レールが取り付けられており、
前記エンドレスコンベアの左右両端には、
前記エンドレスコンベアの進行方向に沿ってY軸レールが取り付けられており、
前記レーザーノズルが前記X軸レールに案内されて移動可能となっており、
前記X軸レールが前記Y軸レールに案内されて移動可能となっている請求項1記載のレーザーブランキング装置。
【請求項5】
前記X軸レールと前記上流側支持ローラ、前記下流側支持ローラ及び前記引込ローラとが一体となっている請求項1記載のレーザーブランキング装置。
【請求項6】
前記上流側支持ローラ及び前記下流側支持ローラの間には、スパッタ受け箱が設置されている請求項1記載のレーザーブランキング装置。
【請求項7】
前記レーザーノズルの周囲には、レーザー加工時の板材の振動を抑制するための振動防止手段が取り付けられている請求項1に記載のレーザーブランキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーブランキング装置及びそれを用いた加工方法に関し、更に詳しくは、スペースをとらず、簡単な構造でありながら、位置ズレを起こさずに、鋼板等の板材を所望の位置で所望の形状に切断できるレーザーブランキング装置及びそれを用いた加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工においては、一般に、コイル状の板材から巻き出される平板状の板材を、シャーリング装置によって切断してブランク材とし、それをプレスしている。
具体的には、シャーリング装置において、板材を、シャーリング装置の上刃と下刃とで挟み込むように切断して一定の形状とし(例えば、特許文献1参照)、その後、ブランク材をプレス機械に搬送し、所望の立体形状にプレスしている。
【0003】
ところで、従来のシャーリング装置においては、ブランク材の形状が上刃及び下刃の形状に依存されるため、刃の加工精度の観点から、ブランク材を複雑な形状とすることができない。このため、不要部分が多く発生することとなり生産効率が悪い。
また、バリが発生し易いので、ブランク材を積み重ねてスタックとした場合に、ブランク材間に隙間が生じ、スタック丈が高くなると、スタック全体が傾く恐れがある。
さらに、上記板材の切断の際に、板材を一時停止させる必要があるので、これにおいても必ずしも生産性が優れるとはいえない。
【0004】
ところで、近年、レーザー光を用いて板材を切断するレーザーブランキング装置が開発されている。これを使うと、レーザー光を用いてその動きをプログラム制御することにより、精密に板材を所望の形状に切断することができ、且つバリが発生しにくいという利点がある。
このような装置としては、例えば、板状の材料を送り方向に移送する材料移送手段と、レーザー光を照射可能な加工ヘッドを移動させるためのヘッド移動手段と、移送される材料を支持する上流側支持手段と、切断して得られる切断済み部品を支持する下流側支持手段とを備え、上流側支持手段がローラコンベア機構により構成されており、下流側支持手段がベルトコンベア機構により構成されているレーザー切断装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−131927号公報
【特許文献2】特許第4705139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2記載のレーザー切断装置においては、ローラコンベア機構とベルトコンベア機構とを要するので、広いスペースが必要であり、設置も困難である。
また、ローラコンベア機構とベルトコンベア機構とを同期させると共に、板材(切断後はブランク材)を、ローラコンベア機構からベルトコンベア機構に受け渡しをする必要があるので、板材又はブランク材の位置ズレが生じる恐れがある。
さらに、加工位置がローラコンベア機構とベルトコンベア機構との間に制限される問題もある。このため、板材の切断の際には、板材を停止させるか、低速移送させる必要があり、必ずしも生産性が優れるとはいえない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、スペースをとらず設置が容易で、しかも、板材を搬送させながら、位置ズレを起こさずに、板材を所望の形状にレーザー加工できるレーザーブランキング装置及びそれを用いた加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、1本のエンドレスコンベアを用い、レーザーノズルの下方の上流側支持ローラ及び下流側支持ローラよりも下方に引込ローラを設け、これらのローラがエンドレスコンベアを案内するようにすることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、(1)平板状の板材を搬送させながら、レーザーノズルから照射されるレーザー光で切断し、ブランク材とするレーザーブランキング装置であって、レーザーノズルと、板材を送るためのエンドレスコンベアと、レーザーノズルの下方に設けられた一対の上流側支持ローラ及び下流側支持ローラと、上流側支持ローラ及び下流側支持ローラの下方に設けられた引込ローラと、を備え、上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラがエンドレスコンベアを案内するものであり、それぞれ独立に、位置変更可能となっているものであるレーザーブランキング装置に存する。
【0010】
本発明は、(2)上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラが一体となって、エンドレスコンベアの進行方向に移動可能となっている上記(1)記載のレーザーブランキング装置に存する。
【0012】
本発明は、()張力を調整するための張力調整ローラを更に備える上記(1)記載のレーザーブランキング装置に存する。
【0013】
本発明は、()エンドレスコンベアの上方には、エンドレスコンベアの進行方向に直交するようにX軸レールが取り付けられており、エンドレスコンベアの左右両端には、エンドレスコンベアの進行方向に沿ってY軸レールが取り付けられており、レーザーノズルがX軸レールに案内されて移動可能となっており、X軸レールがY軸レールに案内されて移動可能となっている上記(1)記載のレーザーブランキング装置に存する。
【0014】
本発明は、()X軸レールと上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラとが一体となっている上記(1)記載のレーザーブランキング装置に存する。
【0015】
本発明は、()上流側支持ローラ及び下流側支持ローラの間には、スパッタ受け箱が設置されている上記(1)記載のレーザーブランキング装置に存する。
【0016】
本発明は、()レーザーノズルの周囲には、レーザー加工時の板材の振動を抑制するための振動防止手段が取り付けられている上記(1)に記載のレーザーブランキング装置に存する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のレーザーブランキング装置においては、エンドレスコンベアを1本しか用いないので、スペースをとらず、設置が容易である。
このとき、板材を1本のエンドレスコンベアで搬送しながら、板材に対しレーザー加工を施すので、搬送時やレーザー加工時における板材の位置ズレを防止できる。その結果、板材を精度良く所望の形状に切断することができる。
また、板材を搬送させながら、レーザーノズルから照射されるレーザー光で切断するので、生産性にも優れる。
【0019】
本発明のレーザーブランキング装置においては、レーザーノズルの下方の上流側支持ローラ及び下流側支持ローラよりも下方に引込ローラを設け、これらのローラによりエンドレスコンベアを案内するようにすることで、レーザーノズルの下方の上流側支持ローラ及び下流側支持ローラ間に十分な空間を形成することができる。これにより、レーザーノズルでレーザー加工を行っても、レーザー加工が行われる板材の直下が一定の空間となるので、エンドレスコンベアがレーザー光によって損傷することを防止することができる。
また、かかる空間は任意の位置に形成することができるので、加工位置が制限されない。
さらに、上流側支持ローラ及び下流側支持ローラ間に形成される空間にスパッタ受け箱を設置することができる。これにより、レーザー加工の際に発生するスパッタを回収することも可能となるができる。
【0020】
本発明のレーザーブランキング装置においては、上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラが一体となって、エンドレスコンベアの進行方向に移動可能となっているので、レーザーノズルの移動に追従させて、これらを移動させることができる。このため、レーザーノズル自体を前後に大きく移動させてレーザー加工を行うことができる。すなわち、レーザー加工が可能な領域を大きく広げることができ、これにより板材の搬送速度をあげることも可能となる。
【0021】
本発明のレーザーブランキング装置においては、上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラがそれぞれ独立に、位置変更可能となっているので、板材の厚さ、レーザー光の強さ、後述のスパッタ受け箱のサイズ等に応じて、これらのローラの位置を変えることができる。
また、引込ローラの一端を動かさず、他端を前後方向に動かすことで、エンドレスコンベアのベルトが蛇行した場合の調整を行うことができる。
【0022】
本発明のレーザーブランキング装置においては、張力を調整するための張力調整ローラを更に備えることで、エンドレスコンベアの張力不良によるトラブルを防止することができる。
【0023】
本発明のレーザーブランキング装置においては、レーザーノズルがX軸レールに案内されて移動可能となっており、X軸レールがY軸レールに案内されて移動可能となっているので、これらを組合せて駆使することにより、レーザーノズルを、前後方向、左右方向、斜め方向、曲線方向等、あらゆる方向に移動させることが可能となる。これにより、搬送される板材に対し、複雑な形状にレーザー加工を行うこともできる。
【0024】
本発明のレーザーブランキング装置においては、X軸レールと上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラとが一体となっているので、これらは同時に移動することになるので、レーザーノズルによるレーザー加工の位置と、上流側支持ローラ及び下流側支持ローラ間に形成される空間の位置とがズレない。
【0025】
本発明のレーザーブランキング装置においては、レーザーノズルの周囲に、レーザー加工時の板材の振動を抑制するための振動防止手段が取り付けられることにより、より正確にレーザー加工を行うことができる。
【0026】
本発明のレーザーブランキング装置を用いた加工方法においては、上述のレーザーブランキング装置を用い、レーザーノズルを移動させながら板材にレーザー光を照射するので、板材を搬送させながら、位置ズレを起こさずに、板材を所望の形状にレーザー加工を行うことができる。
また、エンドレスコンベアの進行方向における該レーザーノズルの移動に追従するように上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラを全体的に移動させることにより、エンドレスコンベアがレーザー光によって損傷することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置を概略的に示す側面図である。
図2図2は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置の概略を示す斜視図である。
図3図3(a)〜図3(d)は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置を用いて板材をレーザー加工した一例を示す概略図である。
図4図4(a)〜図4(d)は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置を用いて板材をレーザー加工した他の例を示す概略図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、他の実施形態に係るレーザーブランキング装置の上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラを示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
本発明のレーザーブランキング装置は、平板状の板材を搬送させながら、レーザーノズルから照射されるレーザー光でその板材を切断し、所望の形状のブランク材とする装置である。
ここで、レーザー光の種類としては、特に限定されないが、例えば、固体レーザー、液体レーザー、ガスレーザー、半導体レーザー、自由電子レーザー、金属蒸気レーザー、化学レーザー等を用いることができる。
【0030】
また、板材としては、鉄、アルミニウム、チタン、マグネシウム等の金属だけでなく、レーザー光で切断されるものであれば、ガラス、セラミックス、樹脂、これらの複合材等も採用可能である。
本発明のレーザーブランキング装置によれば、板材を搬送させながら、レーザー加工を行うので、切断効率が高く、生産性に優れる。
【0031】
図1は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置を概略的に示す側面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るレーザーブランキング装置100は、板材Xにレーザー光を照射するレーザーノズル11と、レーザーノズル11の周囲に位置し、レーザー加工時の板材Xの振動を抑制するための振動防止手段11aと、板材Xを送るためのエンドレスコンベア1と、エンドレスコンベア1を案内する複数の案内ローラ2と、レーザーノズル11の下方に設けられた一対の上流側支持ローラ21a及び下流側支持ローラ21bと、上流側支持ローラ21a及び下流側支持ローラ21bの下方に設けられた引込ローラ21cと、エンドレスコンベア1の張力を調整するための張力調整ローラ23と、上流側支持ローラ21a及び下流側支持ローラ21bの間の空間Sに設置されたスパッタ受け箱22と、を備える。
そして、エンドレスコンベア1は、複数の案内ローラ2、上流側支持ローラ21a、下流側支持ローラ21b及び引込ローラ21cによって案内されている。
【0032】
レーザーブランキング装置100においては、板材Xがエンドレスコンベア1により上流側から下流側に搬送され、当該エンドレスコンベア1上にて、レーザーノズル11を用いてレーザー加工が施される。
このように、レーザーブランキング装置100においては、エンドレスコンベア1を1本しか用いないので、スペースをとらず、設置が極めて容易である。
また、板材Xを、1本のエンドレスコンベア1で搬送しながら、レーザー加工を完了させるので、搬送時やレーザー加工時に板材Xを受け渡し等する必要が全く無い。このため、板材Xの位置ズレを防止することができる。その結果、板材Xを精度良く所望の形状に切断することが可能となる。
【0033】
レーザーブランキング装置100においては、レーザーノズル11の周りを囲むように振動防止手段11aが取り付けられている。
また、振動防止手段11aは、板材に接圧を与えており、レーザー加工時のブランク材の振動を抑制するようになっている。
さらに、振動防止手段11aは、レーザーノズル11が取り付けられているフレームに固定され、レーザーノズル11と共に水平方向に移動するようになっている。
【0034】
本実施形態に係るレーザーブランキング装置のレーザーノズル11において、レーザーノズル11は前後、左右、斜めのあらゆる方向に移動できる特徴があるが、このようにレーザーノズル11の周囲に振動防止手段11aを設けることにより、全ての方向に対しても振動を抑制でき、レーザー加工が正確に行える利点がある。
なお、かかる振動防止手段11aとしては、特に限定されないが、接圧ブラシ等が挙げられる。
【0035】
レーザーブランキング装置100においては、レーザー加工が行われるレーザーノズル11の下方にある上流側の案内ローラ2と下流側の案内ローラ2との間に、上流側支持ローラ21a及び下流側支持ローラ21bが一対設けられている。そして、レーザー加工は、上流側支持ローラ21a及び下流側支持ローラ21bの間で行われる。
また、上流側支持ローラ21a及び下流側支持ローラ21bの下方には引込ローラ21cが設けられているので、上流側支持ローラ21a、下流側支持ローラ21b及び引込ローラ21cの間には必然的に空間Sが形成される。
【0036】
本実施形態に係るレーザーブランキング装置100においては、レーザーノズル11でレーザー加工を行っても、レーザー加工が行われる板材Xの直下が逃がし用の一定の空間Sが形成される。したがって、上流側支持ローラ21a、下流側支持ローラ21b及び引込ローラ21cによって案内されるエンドレスコンベア1がレーザー光によって損傷することを確実に防止することができる。なお、かかる空間Sは任意の位置に形成することができるので、加工位置が制限されない。
【0037】
レーザーブランキング装置100において、上流側支持ローラ21a、下流側支持ローラ21b及び引込ローラ21cは、それぞれ独立に、位置変更可能となっている。すなわち、これらのローラは、それぞれ独立に、板材の厚さ、レーザー光の強さ、後述のスパッタ受け箱のサイズ等に応じて、前後、上下、斜め方向等に移動させ、設定位置に固定することができる。
【0038】
また、上流側支持ローラ21a、下流側支持ローラ21b及び引込ローラ21cは、軸心の角度を変えることが可能となっている。
例えば、引込ローラ21cの軸心を前後方向に傾けることで、引込ローラ21cのみの角度を変えることもできる。これにより、エンドレスコンベアのベルトが位置ずれを起こした場合、元の位置に戻すように調整することができる。
【0039】
レーザーブランキング装置100においては、張力を調整するための張力調整ローラ23を備えている。これにより、エンドレスコンベアの張力不良によるトラブルを防止することができる。
【0040】
レーザーブランキング装置100においては、空間Sに、スパッタ受け箱22が設置される。すなわち、スパッタ受け箱22は、レーザーノズル11と、エンドレスコンベア1との間の空間Sに配置される。
スパッタ受け箱22は、エンドレスコンベア1の進行方向に直交する方向(すなわちエンドレスベルト1を横断する方向)に延びた箱状となっており、レーザー加工の際に発生するスパッタを回収可能となっている。なお、スパッタ受け箱22には、図示しないヒュームコレクター(集塵機)が取り付けられており、当該ヒュームコレクターがスパッタ受け箱22に収容されたスパッタを吸引回収するようになっている。
【0041】
レーザーブランキング装置100においては、上流側支持ローラ21a、下流側支持ローラ21b、引込ローラ21c及びスパッタ受け箱22が、いずれも、エンドレスコンベア1の左右両端(図1でいう紙面の垂直方向)に設けられた移動基体20に、任意の位置で位置決めされて連結支持されている。
そして、移動基体20は、エンドレスコンベアの左右両端に、エンドレスコンベアの進行方向に沿って取り付けられた一対の下Y軸レール25に案内されて移動可能となっている。すなわち、移動基体20を介して、上流側支持ローラ21a、下流側支持ローラ21b、引込ローラ21c及びスパッタ受け箱22は、一体となって、エンドレスコンベア1の進行方向に下Y軸レール25に案内されて移動可能となっている。なお、下Y軸レール25は、機枠に取り付けられている。
これにより、レーザーノズル11を前後に大きく移動させてレーザー加工を行う場合であっても、レーザーノズル11の移動に追従するように、空間Sを、移動基体20を介して移動させることができるので、レーザー加工が可能な領域を大きく広げることができる。なお、詳細については後述する。
また、板材の搬送速度をあげることも可能となる。
【0042】
図2は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置の概略を示す斜視図である。なお、図2は、板材1を省略して示している。
図2に示すように、レーザーブランキング装置100において、エンドレスコンベア1の上方には、エンドレスコンベア1の進行方向に直交するようにX軸レール12が取り付けられており、レーザーノズル11がX軸レール12に案内されて移動可能となっている。
また、エンドレスコンベア1の両端には、エンドレスコンベアの進行方向に沿って一対のY軸レール15が取り付けられており、X軸レール12は、エンドレスコンベア1の進行方向に移動可能となっている。なお、Y軸レール15は、下Y軸レール25の上方に、下Y軸レール25と平行となるように配置されている。また、X軸レール12及びY軸レール15は、図示しない機枠に取り付けられている。
【0043】
レーザーブランキング装置100においては、レーザーノズル11がX軸レール12に案内されて移動可能となっており、X軸レール12がY軸レール15に案内されて移動可能となっている。したがって、これらを組合せてプログラム制御することにより、搬送される板材を、前後方向、左右方向、斜め方向、曲線方向等、あらゆる方向にレーザー加工を行うことが可能となる。
【0044】
次に、レーザーブランキング装置100を用いた加工方法について例をあげて説明する。
図3(a)〜図3(d)は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置を用いて板材をレーザー加工した一例を示す概略図である。かかる例は、レーザーノズル11をX軸レール12に案内させて移動させ、X軸レール12を固定した例である。なお、振動防止手段11aの記載は省略する。
まず、図3(a)に示すように、レーザーブランキング装置100においては、コイル等から巻き出された平板状の板材Xが、図示しないエンドレスコンベアによって連続搬送される。
そして、レーザー光を照射しながら、レーザーノズル11がX軸レール12に案内されて矢印A1の方向に移動する。そうすると、図3(b)に示すように、板材Xが斜め方向に切断される。なお、上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラにより形成される空間Sは移動しない。
【0045】
次に、連続してレーザー光を照射しながら、レーザーノズル11がX軸レール12に案内されて、逆の矢印A2の方向に移動する。そうすると、図3(c)に示すように、板材Xがくの字に切断される。なお、上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラにより形成される空間Sは移動しない。
この操作を繰り返すことにより、図3(d)に示すように、板材Xが斜め方向及び逆斜め方向に切断され、三角状のブランク材が得られる。
【0046】
図4(a)〜図4(d)は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置を用いて板材をレーザー加工した他の例を示す概略図である。かかる例は、レーザーノズル11をX軸レール12に案内させて移動させ、X軸レール12をY軸レール15に案内させて移動させた例である。
まず、図4(a)に示すように、レーザーブランキング装置100においては、コイル等から巻き出された平板状の板材Xが、図示しないエンドレスコンベアによって連続搬送される。
そして、レーザー光を照射しながら、レーザーノズル11がX軸レール12に案内されて矢印A1の方向に移動すると共に、X軸レール12がY軸レール15に案内されて、矢印B1の方向に移動する。このとき、X軸レール12がエンドレスコンベア1と同じ速度で移動したとする。そうすると、板材Xが鉛直方向に切断される。このとき、上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラは、X軸レールの移動に追従するように、下Y軸レール25に案内されて移動する。すなわち、上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラ形成される空間SはX軸レールの移動に追従して移動する。
【0047】
次に、レーザー光の照射を停止させ、図4(b)に示すように、レーザーノズル11がX軸レール12に案内されて逆の矢印A2の方向に移動すると共に、X軸レール12がY軸レール15に案内されて逆の矢印B2の方向に移動する。そうすると、図4(c)に示すように、レーザーノズル11及びX軸レール12が元の位置に戻る。このとき、上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラは、X軸レールの移動に追従するように、下Y軸レール25に案内されて移動する。すなわち、上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラ形成される空間SはX軸レールの移動に追従して移動する。
この操作を繰り返すことにより、図4(d)に示すように、板材Xが鉛直方向に切断され、矩形状のブランク材が得られる。
【0048】
本実施形態に係るレーザーブランキング装置100を用いた加工方法においては、レーザーノズル11を移動させながら板材Xにレーザー光を照射するので、板材Xを搬送させながら、位置ズレを起こさずに、板材Xを所望の形状にレーザー加工を行うことができる。
また、エンドレスコンベア1の進行方向における該レーザーノズル11の移動に追従するように上流側支持ローラ21a、下流側支持ローラ21b及び引込ローラ21cにより形成される空間Sを移動させることにより、エンドレスコンベア1を逃がし、レーザー光によって損傷することを防止することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0050】
例えば、本実施形態に係るレーザーブランキング装置100においては、エンドレスコンベア1が1本のベルトであるが、分割されていてもよい。
【0051】
本実施形態に係るレーザーブランキング装置100を用いた加工方法においては、レーザーノズル11をX軸レール12に案内されて移動させ、X軸レール12をY軸レール15に案内されて移動させた例(図3参照)と、レーザーノズル11をX軸レール12に案内されて移動させ、X軸レール12をY軸レール15に案内されて移動させた例(図4参照)とを示したが、これらに限定されない。当然、レーザーノズル11とX軸レール12とをプログラム制御により複雑に移動させ、複雑な形状のブランク材とすることも可能である。
【0052】
本実施形態に係るレーザーブランキング装置100においては、X軸レール12と、上流側支持ローラ21a、下流側支持ローラ21b及び引込ローラ21cとが一体となっていてもよい。この場合、X軸レール12、上流側支持ローラ21a、下流側支持ローラ21b及び引込ローラ21cは、同時に移動することになるので、レーザーノズル11によるレーザー加工の位置と、上流側支持ローラ21a及び下流側支持ローラ21b間に形成されている既定された空間Sの位置とがズレない。なお、X軸レール12は、Y軸レール15に案内されて移動し、上流側支持ローラ21a、下流側支持ローラ21b及び引込ローラ21cは、下Y軸レールに案内されて移動する。
【0053】
本実施形態に係るレーザーブランキング装置100においては、上流側支持ローラ21a及び下流側支持ローラ21bの下方に1つの引込ローラ21cが設けられているが、引込ローラは複数設けられていてもよい。
図5(a)及び図5(b)は、他の実施形態に係るレーザーブランキング装置の上流側支持ローラ、下流側支持ローラ及び引込ローラを示す概略側面図である。
例えば、図5(a)に示すように、引込ローラ21c1が2つ設けられていてもよく、図5(b)に示すように、引込ローラ21c2が3つ設けられていてもよい。
これらの場合、レーザーノズルの下方の上流側支持ローラ21a及び下流側支持ローラ21b間に、より十分な空間を確実に形成することができる。なお、引込ローラを複数備える場合であっても、それぞれの引込ローラが独立して位置変更可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、板材を所望の形状に切断し、ブランク材とするレーザーブランキング装置として用いられる。本発明のレーザーブランキング装置によれば、スペースをとらず設置が容易で、しかも、板材を搬送させながら、位置ズレを起こさずに、板材を所望の形状にレーザー加工することができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・エンドレスコンベア
2・・・案内ローラ
11・・・レーザーノズル
11a・・・振動防止手段
12・・・X軸レール
15・・・Y軸レール
20・・・移動基体
21a・・・上流側支持ローラ
21b・・・下流側支持ローラ
21c,21c1,21c2・・・引込ローラ
22・・・スパッタ受け箱
25・・・下Y軸レール
100・・・レーザーブランキング装置
S・・・空間
X・・・板材
図1
図2
図3
図4
図5