特許第5916213号(P5916213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916213
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20160422BHJP
   H04M 9/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   A61G12/00 E
   H04M9/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-66450(P2012-66450)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-192900(P2013-192900A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(72)【発明者】
【氏名】今 良太郎
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−029798(JP,A)
【文献】 特開2007−061227(JP,A)
【文献】 特開2001−127893(JP,A)
【文献】 特開2010−075376(JP,A)
【文献】 特開2006−129229(JP,A)
【文献】 特開2010−043526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
H04M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各患者が医療従事者を呼び出すために用いるナースコール子機と、前記ナースコール子機により呼び出しが行われたことを報知するナースコール親機とを備えたナースコールシステムであって、
前記ナースコール子機は、前記各患者の居る病床の近傍に設置され、その病床の周囲の音声を入力して音声信号に変換する子機マイクロホンと、前記子機マイクロホンにて変換された音声信号に他のナースコール子機と識別するための子機識別情報を付加する子機制御部と、前記音声信号を出力する子機インターフェースとを備え、
前記子機マイクロホンにて入力された音声信号の音声レベルが所定のレベル以上であるか否かを判定し、所定のレベル以上であると判定された音声信号を出力したナースコール子機の音声信号をナースコール親機へ出力する音声レベル判定装置と、
前記ナースコール親機は、前記子機インターフェースおよび前記音声レベル判定装置に接続され、前記音声信号を入力する親機インターフェースと、前記親機インターフェースに接続されているナースコール子機の中から任意のナースコール子機を複数選択するために操作される選局部と、前記親機インターフェースが入力した音声信号を音声として出力する親機スピーカーと、複数のナースコール子機を識別可能に表示する表示部と、前記選局部により選択された複数のナースコール子機から出力された音声信号を前記親機インターフェースにより順次入力して前記親機スピーカーによって音声を所定の時間間隔で出力させるとともに、その音声信号に含まれる子機識別情報によりナースコール子機を特定して前記表示部に所定の時間間隔で表示させる第一の制御と、前記親機インターフェースが前記音声レベル判定装置から出力された音声信号を入力した場合に、前記第一の制御に割り込みをかけて、前記親機スピーカーによって音声を出力させるとともに、その音声信号に含まれる子機識別情報によりナースコール子機を特定して前記表示部に表示させる第二の制御と、前記第二の制御の終了後に、前記割り込みをかけられたナースコール子機またはその次のナースコール子機から前記第一の制御を再開する第三の制御を行う親機制御部とを備えたことを特徴とするナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者から看護師などの医療従事者の呼び出しを行うナースコールシステムに関し、特に、医療従事者が患者の状態を確認するための聴取機能を備えたナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ナースコールシステムは、呼出操作部を有するナースコール子機を各病室内の各病床の近傍に設置するとともに、看護師などの医療従事者が常駐するナースステーションにナースコール親機を設置している。そして、患者がナースコール子機の呼出操作部を操作した場合に、ナースコール子機からナースコール親機へ呼出信号を出力し、呼出信号を入力したナースコール親機にて呼び出しの報知を行うように構成されている。ここで、ナースコールシステムは、病院だけではなく、介護施設などでも使用される。
【0003】
ナースコール親機には、LED(light-emitting diode)などのランプと患者氏名を表示する表示欄とを備えた選局部を患者の数に応じて組み合わせたボード形状のものが知られている。ボード形状のナースコール親機は、ナースステーションの壁面などに取り付けられ、ナースステーション内の医療従事者がボード形状のナースコール親機に表示された情報を閲覧することが可能である。ここで、ナースコール子機から出力された呼出信号を入力したナースコール親機では、呼出信号に含まれ、ナースコール子機を識別するための子機識別情報により呼び出しを行ったナースコール子機を特定する。そして、特定されたナースコール子機を使用している患者に対応する選局部のランプを点灯または点滅させることで呼び出しの報知を行っている。また、呼び出しの報知は、選局部のランプの点灯/点滅だけではなく、スピーカーから出力される音声によっても行われる。
【0004】
このように、ナースコール親機にて呼び出しの報知が行われると、これに気付いた医療従事者が応答する必要がある。そのため、ナースコール親機には、呼び出しの報知に応答するためのハンドセットが設けられている。呼び出しの報知が行われている場合に、医療従事者がハンドセットをオフフックすると、呼び出しの報知が停止し、ナースコール親機とナースコール子機(またはナースコール子機が設置された病室)との間で通話路が形成される。ここで、ナースコール子機(または病室)には、通話用のスピーカーやマイクロホンが設けられているため、患者と医療従事者との間で通話が可能となる。
【0005】
ところで、ナースコール子機とナースコール親機との間で通話が可能であることを利用して、任意のナースコール子機または全てのナースコール子機を選択して、選択したナースコール子機に設けられているマイクロホンから入力した音声を、ナースコール親機に設けられているスピーカーから出力することで、患者の状態を聴取する技術が知られている(例えば、特許文献1など)。この特許文献1に記載の技術によれば、病床選択ボタンにより選択された病床のナースコール子機を順次切り換えて、ナースコール子機から入力した音声をナースコール親機のスピーカーから出力するようにしている。
【0006】
一方、病室内の患者が大声などを出した場合に、その音声を天井に設置したマイクロホンに入力し、入力した音声があるレベル以上であるときに、病室内とナースコール親機との間で通話路を形成することで、医療従事者が病室内の患者の状態を確認できるようにする技術も知られている(例えば、特許文献2など)。なお、マイクロホンに入力した音声のレベルがあるレベル以上である場合に、ナースコール子機が呼出信号をナースコール親機へ出力する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−129229号公報
【特許文献2】特開2001−127893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、病床選択ボタンにより選択された病床のナースコール子機を順次切り換えて、ナースコール子機から入力した音声をナースコール親機のスピーカーから出力しているので、実際に聴取が行われているナースコール子機以外のナースコール子機を使用している患者が大声を出した場合などには、医療従事者は、聴取を行っているにも関わらず患者の状態の変化に気付くことができないという問題があった。
【0009】
一方、特許文献2に記載の技術を含む従来技術では、天井に設置したマイクロホンに入力した音声があるレベル以上である場合に、病室内とナースコール親機との間で通話路を形成したり、ナースコール親機にて報知を行ったりしているので、医療従事者がナースコール親機の近傍に居ない場合には、医療従事者が患者の状態の変化に気付くことができないという問題があった。ここで、ナースコール親機の機能を有する携帯端末を医療従事者に携行させることで、携帯端末による報知を医療従事者に把握させることは可能である。
【0010】
しかしながら、病室内と携帯端末との間で通話路を形成しても、携帯端末が大音量で音声を出力していない場合には、医療従事者が携帯端末から出力される音声に気付くことが無いため現実的ではないという問題があった。また、患者が大声を出した場合などに、いちいち携帯端末が報知を行ってしまうと、他の業務を行っている医療従事者の業務を妨げるケースが生じてしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、医療従事者が患者の状態を確認しようとして聴取を行っている場合に、各患者の状態をできるだけ長時間に渡って確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明では、選択された複数のナースコール子機を順次切り換えて、ナースコール子機のマイクロホンから入力した音声をナースコール親機のスピーカーから出力するとともに、そのナースコール子機を特定可能に表示するようにしている。このとき、スピーカーから音声の出力が行われていないナースコール子機のマイクロホンに入力している音声のレベルを判定し、その音声のレベルが所定のレベル以上である場合に、選択された複数のナースコール子機からの音声の出力および表示に割り込みをかけて、音声のレベルが所定のレベル以上となったナースコール子機から入力した音声をナースコール親機のスピーカーから出力するとともに、そのナースコール子機を特定可能に表示し、終了後に割り込みをかけられたナースコール子機または次のナースコール子機から音声の出力および表示を再開するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、選択された病床のナースコール子機を順次切り換えて、ナースコール子機から入力した音声をナースコール親機のスピーカーから出力する際に、他のナースコール子機にて所定のレベル以上の音声が入力されると、そのナースコール子機のマイクロホンから入力した音声がナースコール親機のスピーカーから出力される。これにより、医療従事者が患者の状態を確認しようとしている聴取中については、医療従事者は聴取の対象となる全ての患者の状態の変化に気付くことができる。従って、聴取中に、医療従事者が各患者の状態をできるだけ長時間に渡って確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態によるナースコールシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】本実施形態によるナースコールシステムのナースコール親機の選局部の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態によるナースコールシステムの構成例を示すブロック図である。図1に示すナースコールシステムは、患者の病床近傍に設置され、病室内に居る患者によって使用されるナースコール子機1と、医療従事者が常駐するナースステーションなどに設置され、医療従事者によって使用されるナースコール親機10とを備えて構成されている。ここで、ナースコール子機1は、各病室内に病室内の病床数に応じて設置されている。
【0016】
また、ナースコール子機1は、子機制御部2、呼出操作部3、子機マイクロホン4、子機スピーカー5、音声レベル判定部(特許請求の範囲の音声レベル判定装置に該当)6、子機インターフェース7を備えて構成されている。また、ナースコール親機10は、親機制御部11、親機インターフェース12、記憶部13、操作部14、報知部15、親機マイクロホン16、親機スピーカー17、選局部18を備えて構成されている。
【0017】
まず、ナースコール子機1の各構成要素について説明する。子機制御部2は、ナースコール子機1の各構成要素を後述するように制御するためのものであり、CPU(Central Processing Unit)などにより構成されている。呼出操作部3は、患者が医療従事者を呼び出す際に操作するためのものであり、呼出ボタンなどにより構成されている。患者は、医療従事者を呼び出したい場合に、呼出操作部3を操作する。すると、子機制御部2は、呼出信号を生成する。ここで、呼出信号には、このナースコール子機1を他のナースコール子機1と識別するための子機識別情報が含まれる。また、子機識別情報としては、ベッド番号などの情報を用いる。
【0018】
子機マイクロホン4は、周囲の音声を入力して音声信号に変換する。子機スピーカー5は、ナースコール親機10から入力した音声信号を復調して音声として拡声出力する。ここで、子機マイクロホン4および子機スピーカー5は、子機制御部2により動作の有無が制御される。
【0019】
子機制御部2は、ナースコール親機10から自装置の子機識別情報を含む聴取対象信号を入力したか否かを判定する。そして、自装置の子機識別情報を含む聴取対象信号を入力したと子機制御部2にて判定した場合には、子機制御部2は、子機マイクロホン4を動作させる。ここで、聴取対象信号は、聴取対象信号に含まれる子機識別情報によって特定されるナースコール子機1が聴取の対象になっていることを通知するためのものである。
【0020】
このように子機マイクロホンが動作している状態で、音声レベル判定部6は、子機マイクロホン4にて変換された音声信号を入力し、その音声信号のレベルが所定のレベル以上であるか否かを判定する。そして、入力した音声信号のレベルが所定のレベル以上であると音声レベル判定部6にて判定された場合には、音声レベル判定部6は、その音声信号に割り込み情報を付加して子機制御部2へと出力する。子機制御部2は、音声レベル判定部6から割り込み情報が付加された音声信号を入力し、自装置の子機識別情報を付加して子機インターフェース7へ出力する。従って、この音声信号には、割り込み情報および子機識別情報が付加されていることになる。一方、入力した音声信号のレベルが所定のレベル未満であると音声レベル判定部6にて判定された場合には、音声レベル判定部6は、その音声信号を子機制御部2へ出力しない。
【0021】
ここで、所定のレベルは、患者が大声を出した場合などの患者が異常な状態であることを示す音声信号の閾値に該当する。また、割り込み情報は、ナースコール親機10にて複数のナースコール子機1の聴取が順番に行われている場合に、割り込みを行うためのものである。
【0022】
子機制御部2は、ナースコール親機10から自装置の子機識別情報を含む聴取対象信号を入力している状態で、ナースコール親機10から自装置の子機識別情報を含む聴取信号を入力したか否かを判定する。そして、自装置の子機識別情報を含む聴取信号を入力したと子機制御部2にて判定した場合には、子機制御部2は、音声レベル判定部6を制御して、子機マイクロホン4から出力された音声信号をそのまま入力する。そして、子機制御部2は、音声レベル判定部6から入力した音声信号に自装置の子機識別情報を付加して子機インターフェース7へ出力する。従って、この音声信号には、子機識別情報のみが付加されていることになる。
【0023】
ここで、聴取信号は、聴取信号に含まれる子機識別情報によって特定されるナースコール子機1に対して実際に聴取が行われていることを通知するためのものである。また、子機制御部2が聴取信号を入力しなくなった場合には、子機制御部2は、音声レベル判定部6から入力した音声信号の子機インターフェース7への出力を停止する。
【0024】
子機インターフェース7は、ナースコール子機1とナースコール親機10とを接続して通信を行うためのものである。ここで、子機インターフェース7は、子機制御部2により生成された呼出信号をナースコール親機10に出力する。また、子機インターフェース7は、子機制御部2から入力した音声信号をナースコール親機10へ出力する。また、子機インターフェース7は、子機制御部2から入力した割り込み情報が付加された音声信号をナースコール親機10へ出力する。
【0025】
ナースコール子機1とナースコール親機10との間には、ナースコール子機1からの呼び出しを表示したり、病室内の患者の氏名などを表示したりする図示しない廊下灯が接続されている。また、ナースコール子機1とナースコール親機10との間には、ナースコール子機1およびナースコール親機10間の通信に関する制御を行う図示しない制御機が接続されている。
【0026】
次に、ナースコール親機10の各構成要素について説明する。親機制御部11は、ナースコール親機10の各構成要素を後述するように制御するためのものであり、CPUなどにより構成されている。親機インターフェース12は、ナースコール親機10とナースコール子機1とを接続して通信を行うためのものである。
【0027】
ここで、親機インターフェース12は、ナースコール子機1から出力された呼出信号を入力する。また、親機インターフェース12は、ナースコール子機1から出力された各種の音声信号を入力する。ここで、親機インターフェース12が各ナースコール子機1から音声信号を入力した場合に、親機制御部11は、その音声信号に付加されている子機識別情報を解析することにより、その音声信号がどのナースコール子機1から出力されたのかを識別している。
【0028】
記憶部13は、メモリやハードディスクドライブなどの記憶装置により構成されており、ナースコール親機10に接続されているナースコール子機1の子機識別情報と後述する選局部18における選局ユニット20の位置を示す位置情報とを関連付けて記憶している。操作部14は、聴取を開始するために操作されるものである。
【0029】
報知部15は、ナースコール子機1からの呼び出しを報知するためのものであり、スピーカーや表示装置などによって構成されている。親機インターフェース12がナースコール子機1から呼出信号を入力すると、親機制御部11は報知部15を動作させて、スピーカーから報知音を出力させたり、表示装置に報知の内容を表示させたりして報知を行わせる。報知部15によって報知が行われている場合に、医療従事者が図示しないハンドセットなどによって応答すると、ハンドセットがオフフックされてナースコール親機10とナースコール子機1との間で通話路が形成される。
【0030】
親機マイクロホン16は、周囲の音声を入力して音声信号に変換する。親機スピーカー17は、ナースコール子機1から入力した音声信号を復調して音声として拡声出力する。ここで、親機マイクロホン16および親機スピーカー17は、親機制御部11により動作の有無が制御される。
【0031】
選局部18は、図2に示すように、患者にそれぞれ対応する選局ユニット20を縦横に組み合わせて形成されている。各選局ユニット20には、その患者が使用するベッド番号を表示するベッド番号表示欄21と、表面に少なくとも患者の氏名を記載した氏名カードを着脱自在に装着する氏名カード装着部22と、選局ユニット20を選択するために操作されるとともに、透光性を有する選択ボタン、および、選択ボタンの内部に取り付けたLEDなどのランプを有する選択部23とを備えて構成されている。
【0032】
ここで、選択部23のランプは、報知部15の報知と同期して点滅することにより、患者から呼び出しがあったことを報知する。また、記憶部13には、呼出信号や音声信号に含まれる子機識別情報に関連付けて選局ユニット20の位置情報が記憶されているので、呼び出しを行った患者に対応する選局ユニット20に設置されている選択部23のランプのみが点滅したり、聴取を行っているナースコール子機1に対応する選局ユニット20に設置されている選択部23のランプのみが点灯したりする。
【0033】
従って、ランプが点滅すると、そのランプに対応するベッド番号表示欄21や氏名カード装着部22に装着された氏名カードを見た医療従事者は、どの患者が呼び出しを行ったのかを容易に把握することができる。また、ランプが点灯すると、そのランプに対応するベッド番号表示欄21や氏名カード装着部22に装着された氏名カードを見た医療従事者は、どのナースコール子機1の聴取を行っているのかを容易に把握することができる。
【0034】
次に、聴取を行う際の動作を説明する。ナースコール親機10の親機制御部11は、選局部18の選択部23が操作されたか否かを判定する。医療従事者は、聴取を行いたい患者を、選択部23を操作することで選択する。なお、全ての患者を一斉に選択するための一斉選択部を設けるようにしても良い。
【0035】
この状態で、親機制御部11は、操作部14により聴取開始の操作が行われたか否かを判定する。選択部23による選択が終了すると、医療従事者は操作部14を操作する。すると、親機制御部11は、記憶部13を参照して、選択部23が操作された選局ユニット20の位置情報に関連付けて記憶されている子機識別情報を抽出する。そして、複数の選択部23が操作された後に操作部14が操作されると、親機制御部11は、抽出した複数の子機識別情報を含む聴取対象信号を生成する。
【0036】
親機制御部11により生成された聴取対象信号は、親機インターフェース12によりナースコール親機10に接続されている全てのナースコール子機1へ出力される。各ナースコール子機1では、子機インターフェース7により聴取対象信号を入力する。各ナースコール子機1の子機制御部2は、聴取対象信号に含まれる子機識別情報が自装置の子機識別情報と一致するか否かを判定する。そして、聴取対象信号に含まれる子機識別情報が自装置の子機識別情報と一致すると子機制御部2にて判定した場合には、子機制御部2は子機マイクロホン4を動作させる。
【0037】
この状態で、各ナースコール子機1の音声レベル判定部6は、子機マイクロホン4にて変換された音声信号を入力し、その音声信号のレベルが所定のレベル以上であるか否かを判定する。そして、入力した音声信号のレベルが所定のレベル以上であると音声レベル判定部6にて判定された場合には、音声レベル判定部6は、その音声信号に割り込み情報を付加して子機制御部2へと出力する。子機制御部2は、音声レベル判定部6から割り込み信号が付加された音声信号を入力し、自装置の子機識別情報を付加して子機インターフェース7へ出力する。従って、この音声信号には、割り込み情報および子機識別情報が付加されていることになる。一方、入力した音声信号のレベルが所定のレベル未満であると音声レベル判定部6にて判定された場合には、音声レベル判定部6は、その音声信号を子機制御部2へ出力しない。
【0038】
また、ナースコール親機10の親機制御部11は、聴取対象信号に含まれる複数の子機識別情報のうち、所定の順番に従って聴取信号を生成するとともに、生成された聴取信号を所定の時間間隔で親機インターフェース12により出力する。ここで、所定の順番とは、選択部23が操作された順番であっても良いし、ベッド番号の順番であっても良い。また、所定の時間間隔とは、一つのナースコール子機1に対して聴取を行う時間であり、例えば30秒程度である。すなわち、親機制御部11は、最初に聴取を行うナースコール子機1の子機識別情報を含む聴取信号を30秒間出力した後に、次に聴取を行うナースコール子機1の子機識別情報を含む聴取信号を30秒間出力する。そして、親機制御部11は、前述した動作を聴取の対象の全てのナースコール子機1に対して行う。
【0039】
自装置の子機識別情報を含む聴取対象信号を入力しているナースコール子機1では、ナースコール親機10から自装置の子機識別情報を含む聴取信号を入力したか否かを子機制御部2にて判定する。自装置の子機識別情報を含む聴取信号を入力したと子機制御部2にて判定した場合には、子機制御部2は、音声レベル判定部6を制御して、子機マイクロホン4から出力された音声信号をそのまま入力する。そして、子機制御部2は、音声レベル判定部6から入力した音声信号に自装置の子機識別情報を付加して子機インターフェース7へ出力する。
【0040】
子機インターフェース7は、子機制御部2から入力した音声信号をナースコール親機10へ出力する。ナースコール親機10の親機インターフェース12は、ナースコール子機1から音声信号を入力する。すると、親機制御部11は、親機インターフェース12が入力した音声信号を解析し、割り込み情報が含まれるか否かを判定する。入力した音声信号に割り込み情報が含まれていない場合には、親機制御部11は、上述した所定の順番に従って聴取信号の生成を継続する。このとき、親機制御部11は、親機スピーカー17へ音声信号を出力し、親機スピーカー17は入力した音声信号を音声に変換して外部へ出力する。また、親機制御部11は、記憶部13を参照して、音声信号に含まれる子機識別情報に関連付けて記憶されている位置情報を取得し、この位置情報によって特定される選局ユニット20の選択部23のランプを順番に点灯させる。
【0041】
一方、入力した音声信号に割り込み情報が含まれている場合には、親機制御部11は、親機スピーカー17へ音声信号を出力し、親機スピーカー17は入力した音声信号を音声に変換して外部へ出力する。また、親機制御部11は、記憶部13を参照して、音声信号に含まれる子機識別情報に関連付けて記憶されている位置情報を取得し、この位置情報によって特定される選局ユニット20の選択部23のランプを点灯させる。このように、所定の順番で各ナースコール子機1の子機マイクロホン4に入力した音声をナースコール親機10の親機スピーカー17から出力している状態で、聴取の対象である他のナースコール子機1の子機マイクロホン4が所定のレベル以上の音声を入力した場合に、ナースコール親機10では、所定のレベル以上の音声を入力したナースコール子機1の聴取を行うことになる。
【0042】
この状態で、所定のレベル以上の音声を入力したナースコール子機1の聴取が終了した場合には、親機制御部11は、所定の順番での聴取を再開する。ここで、所定のレベル以上の音声を入力したナースコール子機1の聴取の終了は、所定の時間により終了するようにしても良いし、該当する選局ユニット20の選択部23の操作により終了するようにしても良い。また、聴取の再開は、割り込みが行われたナースコール子機1から再開するようにしても良いし、割り込みが行われたナースコール子機1の次のナースコール子機1から再開するようにしても良い。
【0043】
例えば、「101−1」、「101−2」、「101−3」、「101−4」、「102−1」、「102−2」、「102−3」、「102−4」の子機識別情報により特定されるナースコール子機1に対して聴取を行う場合、医療従事者は、選局部18により上記のナースコール子機1を指定し、操作部14を操作して聴取を開始する。すると、ナースコール親機10では、上述した子機識別情報を含む聴取対象信号を生成して全てのナースコール子機1へ出力する。上述した子機識別情報を持つナースコール子機1では、子機制御部2が子機マイクロホン4を動作させ、音声レベル判定部6が音声信号の音声レベルを判定する。
【0044】
一方、ナースコール親機10では、子機識別情報「101−1」を含む聴取信号を生成して出力する。子機識別情報「101−1」により特定されるナースコール子機1では、聴取信号を入力している間、子機マイクロホン4にて入力して変換された音声信号をナースコール親機10へ出力する。次に、ナースコール親機10は、子機識別情報「101−2」を含む聴取信号を生成して出力する。子機識別情報「101−2」により特定されるナースコール子機1では、聴取信号を入力している間、子機マイクロホン4にて入力して変換された音声信号をナースコール親機10へ出力する。
【0045】
この状態で、子機識別情報「102−4」により特定されるナースコール子機1の音声レベル判定部6が所定のレベル以上の音声信号が子機マイクロホン4により入力して変換されたと判定されると、このナースコール子機1の子機制御部2は、子機識別情報「102−4」および割り込み情報を含む音声信号を生成し、子機インターフェース7は、この音声信号をナースコール親機10へ出力する。
【0046】
割り込み情報を含む音声信号を入力したナースコール親機10では、その音声信号を親機スピーカー17から出力するとともに、音声信号に含まれる子機識別情報によって特定される選局ユニット20のランプを点灯させる。そして、所定の時間が経過すると、親機制御部11は、子機識別情報「101−3」を含む聴取信号を生成し、親機インターフェース12により出力する。子機識別情報「101−3」により特定されるナースコール子機1では、聴取信号を入力している間、子機マイクロホン4にて入力して変換された音声信号をナースコール親機10へ出力する。
【0047】
このように、上述した子機識別情報により特定される全てのナースコール子機1の聴取が終了するまで、同様の動作が繰り返される。
【0048】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、ナースコール親機10の選局部18によって選択された複数のナースコール子機1を順次切り換えて、子機マイクロホン4から入力した音声をナースコール親機10の親機スピーカー17から出力するとともに、そのナースコール子機1を特定可能に選局部18のランプにより表示するようにしている。このとき、親機スピーカー17から音声の出力が行われていないナースコール子機1の子機マイクロホン4により変換されている音声信号のレベルを音声レベル判定部6によって判定し、その音声信号のレベルが所定のレベル以上であると音声レベル判定部6によって判定された場合に、そのナースコール子機1の子機マイクロホン4から入力した音声をナースコール親機10の親機スピーカー17から出力するとともに、そのナースコール子機1を特定可能に選局部18のランプにより表示するようにしている。
【0049】
これにより、医療従事者が患者の状態を確認しようとしている聴取中については、所定のレベル以上の音声を入力したナースコール子機1の音声が親機スピーカー17から出力されるとともに、そのナースコール子機1が選局部18により特定されるので、医療従事者は聴取の対象となる全ての患者の状態の変化に気付くことができる。従って、聴取中に、医療従事者が各患者の状態をできるだけ長時間に渡って確認することができる。
【0050】
なお、前述した実施形態では、所定のレベルの値を操作部14にて予め設定しているが、これに限定されない。例えば、所定のレベルの値を聴取中に変更できるようにしても良い。具体的には、所定のレベル以上の音声信号を出力しているナースコール子機1が多数存在するような場合に、操作部14を操作して、所定のレベルの値を大きく変更すると、新たに設定された所定のレベル以上の音声信号を出力しているナースコール子機1の数を絞り込むことができる。また、所定のレベル以上の音声信号を出力しているナースコール子機1が全く存在しないような場合に、操作部14を操作して、所定のレベルの値を小さく変更すると、新たに設定された所定のレベル以上の音声信号を出力しているナースコール子機1を増やすことができる。
【0051】
また、前述した実施形態では、選局ユニット20はボード形状のナースコール親機10に設けられているが、これに限定されない。例えば、パーソナルコンピューターを用いたナースコール親機10の表示ディスプレイに選局ユニットを表示するようにしても良い。
【0052】
また、前述した実施形態では、音声レベル判定部6が各ナースコール子機1に設けられているが、これに限定されない。例えば、ナースコール親機10や図示しない廊下灯などに音声レベル判定部6を設けるようにしても良い。ここで、各ナースコール子機1に音声レベル判定部6を設けた場合、ナースコール親機10とナースコール子機1との通話路を常に形成する必要がなくなるため、ナースコール親機10とナースコール子機1との通話路の数を少なくすることができる。一方、ナースコール親機10に音声レベル判定部6を設けた場合、通話路の数を確保する必要はあるが、音声レベル判定部6を各ナースコール子機1に設ける必要がなくなる。
【0053】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ナースコール子機
2 子機制御部
3 呼出操作部
4 子機マイクロホン
5 子機スピーカー
6 音声レベル判定部
7 子機インターフェース
10 ナースコール親機
11 親機制御部
12 親機インターフェース
13 記憶部
14 操作部
15 報知部
16 親機マイクロホン
17 親機スピーカー
18 選局部
20 選局ユニット
21 ベッド番号表示欄
22 氏名カード装着部
23 選択部
図1
図2