(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916215
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
F22B 37/38 20060101AFI20160422BHJP
F22B 21/06 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
F22B37/38 E
F22B21/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-84966(P2012-84966)
(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-213640(P2013-213640A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】黒木 茂
(72)【発明者】
【氏名】高島 博史
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−200605(JP,A)
【文献】
特開昭63−159741(JP,A)
【文献】
実開昭56−112404(JP,U)
【文献】
特開2003−082481(JP,A)
【文献】
特開昭62−052302(JP,A)
【文献】
特開2010−122075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 21/06
F22B 37/38
G01N 25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直な水管と上部及び下部に設けた管寄せからなる缶体の下部から給水を行い、上部から蒸気を取り出すようにしているボイラであって、水管外側に燃焼ガスを流すことで水管内側のボイラ水を加熱しているボイラにおいて、水管の外側表面で温度を検出する温度センサと、温度センサにて検出した温度に基づいて水管の腐食量を判定する腐食判断部を持ち、ボイラが定常的な燃焼状態にあるにもかかわらず水管温度が基準値より低い場合に、腐食による減肉が発生しているとの判定を行うものであって、ボイラ内の圧力若しくは温度を検出することでボイラ水の温度を算出することができるようにしておき、水管の腐食量を判定する基準値はボイラ水温度とボイラの燃焼量に基づいて補正を行うようにしていることを特徴とするボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載のボイラにおいて、水管温度を検出する温度センサは、水管内でボイラ水が沸騰を開始する位置よりも下方であって、ボイラ水の温度及びpHが低い水管下部に取り付けていることを特徴とするボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水管内の腐食によって水管の減肉が発生したことを検出することのできるボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平10−332623号公報には、水管内に挿入した第1電極と水管外周に設けた第2電極の間を流れる電流値に基づくことで、水管の腐食状況を検出することが記載されている。これは、水管が腐食すると腐食の酸化作用によって電流が発生し、腐食量にほぼ比例した電流が流れるので、電流量を検出することによって水管の腐食状況を検出するというものである。しかしこれは、腐食が進行していることを検出するものであり、腐食によって板厚がどこまで減少しているのかを検出するのには適さないものであった。ボイラで水管に腐食が発生した場合、水管の板厚が減少することによって耐久性が低下するということが問題となる。そのため、腐食によって水管の板厚がどの程度減少しているのかを知ることが重要であるが、特開平10−332623号公報に記載の発明では、残りの寿命を判断することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−332623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、水管を外側から加熱することで水管内のボイラ水を加熱しているボイラにおいて、水管の腐食による減肉の発生状況を検出することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、垂直な水管と上部及び下部に設けた管寄せからなる缶体の下部から給水を行い、上部から蒸気を取り出すようにしているボイラであって、水管外側に燃焼ガスを流すことで水管内側のボイラ水を加熱しているボイラにおいて、水管の外側表面で温度を検出する温度センサと、温度センサにて検出した温度に基づいて水管の腐食量を判定する腐食判断部を持ち、ボイラが定常的な燃焼状態にあるにもかかわらず水管温度が基準値より低い場合に、腐食による減肉が発生しているとの判定を行うものであって、ボイラ内の圧力若しくは温度を検出することでボイラ水の温度を算出することができるようにしておき、水管の腐食量を判定する基準値はボイラ水温度とボイラの燃焼量に基づいて補正を行うようにしていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記のボイラにおいて、水管温度を検出する温度センサは、水管内でボイラ水が沸騰を開始する位置よりも下方であって、ボイラ水の温度及びpHが低い水管下部に取り付けていることを特徴とする。
【0009】
水管の外側に燃焼ガスを流し、水管を外側から加熱することで水管内側のボイラ水を加熱しているボイラでは、燃焼ガスによる熱によって水管温度は上昇するが、一方でボイラ水が水管から熱を奪うために水管温度はある程度の値に維持される。例えば、ある地点では水管外側に流れる燃焼ガス温度が800℃であっても、ボイラ水温度が140℃であれば水管温度はボイラ水温度に近い値となり、外側表面で178℃、内側表面で158℃というようになる。燃焼ガス温度とボイラ水温度が一定の値であった場合、水管外側表面と内側表面での温度差は水管の熱伝導率と板厚によって変化し、熱伝導率が同じであれば板厚が厚いほど温度差は大きくなる。
【0010】
ボイラが定常的な運転を行っており、燃焼ガス温度とボイラ水温度は一定の値になっていた場合において、水管に腐食が発生することで水管の板厚が薄くなると、水管外側表面ではボイラ水との距離が短くなるために温度は低くなる。そのため、水管外側表面の温度を計測することで、水管の腐食による減肉量を検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
水管の腐食による減肉の発生状況を容易に検出することができ、ボイラの寿命を予測することもできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】腐食による減肉が発生していない水管における伝熱状況の説明図
【
図3】腐食による減肉が発生している水管における伝熱状況の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例におけるボイラの一部断面図、
図2と
図3は水管伝熱状況の説明図であり、
図2は腐食による減肉が発生していない水管、
図3は腐食による減肉が発生している水管のものである。
【0014】
ボイラ1は中央に設置した燃焼室2の周囲を多数の垂直な水管3で囲んでおき、燃焼室の上部に燃焼装置4を設けた構成である。燃焼装置4は燃焼室2へ向けて下向きに火炎を発生し、火炎の熱によって水管3の加熱を行う。水管3は上部と下部に設けた環状の管寄せに接続しており、下部管寄せ7へ給水を行い、水管部でボイラ水を加熱することで蒸気を発生し、蒸気は上部管寄せ8へ集合させた後に取り出す。水管は隣り合った水管間をヒレ5でつなぐことで環状の内側水管列と外側水管列を形成しており、内外2列の水管列間に燃焼ガスを通す燃焼ガス通路6を設けている。
【0015】
燃焼装置4による燃焼によって発生した燃焼ガスは、燃焼室周囲の水管表面に沿って流れる際に水管3を加熱する。水管を環状に2列並べた構造の場合、燃焼装置4で発生させた燃焼ガスは、燃焼室2から燃焼ガス通路6へ入り、内側水管列と外側水管列の間に形成した燃焼ガス通路6に燃焼ガスを通すことで水管3を加熱し、水管と熱交換を行うことで温度の低下した排ガスはボイラ外へ排出する。内側水管列の場合、一方の面は燃焼室2に面し、他方の面は燃焼ガス通路6に面しているため、両方の面から加熱することになる。外側水管列の場合は、一方の面は燃焼ガス通路6に面しているが、他方の面は燃焼ガスが通らないため片方の面からのみ加熱することになる。
【0016】
上部管寄せ8には、垂直水管部分から沸き上がってきたボイラ水が蒸気とともに流れ込むため、上部管寄せ8とは連絡管で接続している気水分離器9で蒸気とボイラ水の分離を行う。気水分離器9で分離した蒸気は気水分離器上部から取り出し、ボイラ水は気水分離器9底部と下部管寄せ7をつないだ還水管を通してボイラの下部管寄せ7へ戻す。
【0017】
燃焼装置4は、高燃焼・低燃焼・燃焼停止の三位置で燃焼制御を行うものであって、ボイラから供給する蒸気圧力の値に応じて燃焼量を決定する。燃焼装置の運転を制御する運転制御装置10は、ボイラの蒸気圧力値を検出する圧力検出装置11からの信号を受けて燃焼量を決定し、決定した燃焼量となるように燃料と燃焼用空気の供給を行う。運転制御装置10では、蒸気圧力値が低い区分にある場合には燃焼量が大きな高燃焼とする。その状態から蒸気圧力値が一段階高い状態になると燃焼量を下げることで低燃焼とし、蒸気圧力値が制御範囲の上限値以上になると燃焼停止とする。
【0018】
腐食による減肉の検出は、水管温度を検出する温度センサ12と、検出した水管温度に基づいて腐食量を判定する腐食判断部13によって行い、腐食判断部13はボイラの運転制御装置10に設置しておく。水管3には水管温度を検出する温度センサ12を設けておき、温度センサ12にて検出した水管温度の情報は運転制御装置10の腐食判断部13へ出力する。温度センサ12は、外側水管列のさらに外側から水管の燃焼ガス通路6に面した部分に感温部を差し込み、外側水管の燃焼ガス通路6に面している表面温度を検出するようにしている。温度センサ12の設置位置は、ボイラ燃焼時における水管内での沸騰開始位置より下方で、ボイラ水の温度及びpHが低い水管下部に設置する。
【0019】
ボイラの運転を行っている場合、水管内のボイラ水は加熱されながら上昇していくため、水管内の下部は温度が低く、上部へ行くほど温度が高くなっていく。ボイラ水の温度が沸騰を開始する温度となる位置まで来ると、水中で気泡の発生が始まり、さらに上昇すると気泡は大きくなっていくことで気体の割合が増加していく。腐食は、沸騰開始位置より下方であって、ボイラ水の温度及びpHが低い水管下部で顕著に発生するため、この領域に温度センサを設けると、より早い段階で腐食による減肉を検出することができる。
【0020】
腐食の発生を判断する腐食判断部13は、温度センサ12で検出している水管温度の値に基づいて腐食量の判定を行う。ボイラでは給水の水質を調節することによって腐食の発生を防止するようにしているが、ボイラ水が水管を腐食させる性状であると、水管の内側から腐食させることになり、水管の板厚が内側から減少していく。
【0021】
水管は燃焼ガスによって外側から加熱され、ボイラ水によって内側から冷却されており、この状態で燃焼ガス温度を一定として見た場合、水管の板厚が減少すると水管外側表面の温度は低くなる。腐食判断部13では、水管外側表面温度が基準値より高い場合には腐食による減肉は発生していない、水管温度が基準値より低い場合には腐食による減肉が発生している、との判定を行うことができる。そして、腐食による減肉量が大きくなるほど水管外側温度の低下量が大きくなるため、水管外側温度を検出することでボイラの寿命を予測することもできるようになる。
【0022】
なお、ボイラで必要とされる蒸気圧力は個々に異なるため、ボイラでは運転を行う圧力を任意の値に設定できるようにしている。そして、飽和状態にあるボイラ水の温度はボイラ内の圧力によって定まり、気水分離器9に入るボイラ水の温度はボイラの圧力が高いほど高くなるため、気水分離器9で分離して下部管寄せ7へ戻ってくるボイラ水の温度もボイラごとに異なる。水管下部でのボイラ水は、気水分離器9で分離したすることで戻ってきたボイラ水が混合することで温度は上昇しており、気水分離器9から下部管寄せ7へ戻るボイラ水の温度が高くなるほど、水管下部でのボイラ水温度も高くなる。そのため、水管下部でのボイラ水温度はボイラの圧力によって変化することになる。
【0023】
水管の温度はボイラ水の温度に影響を受けるため、ボイラの蒸気圧力若しくは蒸気温度を検出することでボイラ水の温度を検出するようにしておき、腐食の判定を行う基準値はボイラ水の温度に対応させて設定する。腐食判断部13では、ボイラ水温度が高い場合には腐食の判定を行う基準値を高くし、ボイラ水温度が低い場合には腐食の判定を行う基準値を低くする補正を行う。このようにすることで、ボイラがどのような条件で運転するものであっても腐食の状態をより正確に判定することができる。
【0024】
また、燃焼量を高燃焼/低燃焼のように複数設定している変更するようにしているボイラでは、燃焼量が異なれば燃焼ガス温度が変化する。燃焼ガス温度が変化した場合にも水管外側表面の温度が変化するため、水管の腐食量をより正確に検出するためには燃焼量に応じても補正する方が好ましい。腐食判断部13では、燃焼量が大きい場合には腐食の判定を行う基準値を高くし、燃焼量が小さい場合には腐食の判定を行う基準値を低くする補正を行う。このようにすることで、どの燃焼量でも腐食の状態をより正確に判定することができる。
【0025】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 ボイラ
2 燃焼室
3 水管
4 燃焼装置
5 ヒレ
6 燃焼ガス通路
7 下部管寄せ
8 上部管寄せ
9 気水分離器
10 運転制御装置
11 圧力検出装置
12 温度センサ
13 腐食判断部