(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主走査方向に直交する副走査方向に沿って並ぶ複数のノズルからなるノズル列を有するヘッドユニットが複数結合された印刷ヘッドと、前記ノズルに印刷データを対応付けてインク滴を吐出させるように制御する吐出制御手段と、当該印刷ヘッドを前記主走査方向に移動させるとともに、走査毎に前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記副走査方向に相対的に移動させる移動手段とを備え、前記印刷媒体に1回の走査で複数のパスの印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、
前記印刷ヘッドは、隣接する2つの前記ヘッドユニットの間にのみ、前記インク滴を吐出しない非吐出領域を有しており、前記非吐出領域の前記副走査方向の非吐出領域長が、隣接する2つの前記ノズル間の隣接ノズル間距離よりも長く、
各ヘッドユニットのノズル列における、前記パスに対応する前記ノズルからなるパス対応ノズル列の幅が、前記パスの印刷により前記印刷媒体に形成されるバンドの幅と一致し、
前記パスの数よりも多い回数の走査で行われる全ての前記パスの印刷により前記バンドを重ねることで画像を完成させ、
前記移動手段は、走査毎に前記パス対応ノズル列の境界がずれ、かつ、各走査の間で前記非吐出領域がずれるように、前記印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して前記副走査方向に前記パス対応ノズル列の幅より狭い幅で相対的に移動させ、
前記吐出制御手段は、先の走査において、印刷する画素を間引いた第1の画素パターンのデータを各ヘッドユニットの前記副走査方向の両端部における一部の前記ノズルに対応付け、その後の走査において、前記第1の画素パターンを補完する第2の画素パターンのデータを前記両端部における残余の前記ノズルに対応付けることを特徴とするインクジェットプリンタ。
主走査方向に直交する副走査方向に沿って並ぶ複数のノズルからなるノズル列を有するヘッドユニットが複数結合された印刷ヘッドを備え、前記ノズルに印刷データを対応付けてインク滴を吐出させるように制御し、当該印刷ヘッドを前記主走査方向に移動させるとともに、走査毎に前記印刷ヘッドを印刷媒体に対して前記副走査方向に相対的に移動させて、前記印刷媒体に1回の走査で複数のパスの印刷を行うインクジェットプリンタの印刷方法において、
隣接する2つの前記ヘッドユニットの間にのみ、前記インク滴を吐出しない非吐出領域を有しており、前記非吐出領域の前記副走査方向の非吐出領域長が、隣接する2つの前記ノズル間の隣接ノズル間距離よりも長くなるように構成された前記印刷ヘッドを用い、
各ヘッドユニットの前記ノズル列における、前記パスに対応する前記ノズルからなるパス対応ノズル列の幅が、前記パスの印刷により前記印刷媒体に形成されるバンドの幅と一致し、
前記パスの数よりも多い回数の走査で行われる全ての前記パスの印刷により前記バンドを重ねることで画像を完成させ、
走査毎に前記パス対応ノズル列の境界がずれ、かつ、各走査の間で前記非吐出領域がずれるように前記印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して前記副走査方向に前記パス対応ノズル列の幅より狭い幅で相対的に移動させ、
各ヘッドユニットの前記副走査方向の両端部により、先の走査において、印刷する画素を間引いた第1の画素パターンで印刷し、その後の走査において、前記第1の画素パターンを補完する第2の画素パターンで印刷することを特徴とするインクジェットプリンタの印刷方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態について
図1〜
図11に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0031】
[インクジェットプリンタの構成]
図1は、インクジェットプリンタ1の構成を示す平面図であり、
図2は、インクジェットプリンタ1の構成を示す側面図である。
図3は、印刷ヘッド2の構成を示す平面図である。
図4は、印刷ヘッド2の接合部およびその付近の構造を示す平面図である。
【0032】
図1および
図2に示すように、インクジェットプリンタ1は、印刷ヘッド2、ガイドレール3、プラテン4、駆動ローラ5、従動ローラ6および制御部7を備えている。このインクジェットプリンタ1は、マルチパス方式で記録を行うプリンタである。
【0033】
〔印刷ヘッドの構成〕
印刷ヘッド2は、印刷媒体11に対してインク滴を吐出する印刷用のヘッドであり、ガイドレール3に沿って走査時に主走査方向Xに駆動される。
図3に示すように、印刷ヘッド2は、複数のヘッドユニットHU1を有しており、隣接するヘッドユニットHU1同士が互いに結合されることにより複合ヘッドとして構成されている。
【0034】
なお、印刷ヘッド2を構成するヘッドユニットHU1は、ここで説明する構成に限らず、各種の構成を採用することが可能である。その各種の構成については、後述する各実施形態において説明する。
【0035】
各ヘッドユニットHU1は、図示はしないが、それぞれの底面が板状のヘッド結合部材に固定されることによって結合されたり、ケースに一体に収容されることにより結合されたりしてもよい。また、ヘッドユニットHU1は、これらに限定されることなく、各種の結合構造で結合される。
【0036】
各ヘッドユニットHU1は、副走査方向Yに沿って並ぶ複数のノズル201を有しており、これらのノズル201によってノズル列202が構成されている。ノズル201は、インク吐出面(ノズル面)に開口し、印刷媒体11に対してインク滴を吐出する。隣接する2つのノズル201は、隣接ノズル間距離d2の間隔をおいて形成されている。ノズル列202は、1つのパスに対応する複数のノズル201からなるパス列Pを少なくとも1つ含んでいる。
【0037】
また、ヘッドユニットHU1(ノズル列202)の両端部における所定数のノズル201は、半吐出ノズル201aとして設定されている。半吐出ノズル201aは、通常のノズル201が1回の走査で25%の印刷を行うのに対し、1回の走査で12.5%の印刷を行うように吐出制御部73によって吐出が制御される。具体的には、1回目の走査で、一部(半数)の半吐出ノズル201aがインク滴を吐出しているときに、残りの半吐出ノズル201aがインク滴を吐出しない。また、2回目の走査で、1回目の走査においてインク滴を吐出しなかった半吐出ノズル201aがインク滴を吐出し、残りの半吐出ノズル201aがインク滴を吐出しない。
【0038】
なお、1回の走査による印刷度合いは、上記のように半数(12.5%)に限定されない。例えば、1回目の走査でヘッドユニットHU1の一方の端部により2.5%を印刷し、2回目の走査でヘッドユニットHU1の他方の端部により22.5%を印刷することで、25%の印刷を行ってもよい。
【0039】
また、ヘッドユニットHU1の端部の半吐出ノズル201aが印刷する幅は、ヘッドユニットHU1の両端部で等しい。
【0040】
隣接するヘッドユニットHU1が接合される部分には、(
図3において斜線にて示す領域)インク滴を吐出しない非吐出領域203(
図3において斜線にて示す領域)が設けられている。非吐出領域203は、ノズル列202においてインク滴を吐出するノズル201(吐出ノズル)のうち、隣接する2つのヘッドユニットHU1における接合端部側の2つのノズル201の間に形成されている。
【0041】
非吐出領域203は、副走査方向Yに非吐出領域長d1の長さを有している。この非吐出領域長d1は、隣接する2つのノズル201間の距離である隣接ノズル間距離d2より長い。また、非吐出領域長d1は、少なくとも、ヘッドユニットHU1の端部のノズル201から吐出されるインク滴が、隣接するヘッドユニットHU1の端部のノズル201から吐出されるインク滴と干渉しないような距離に設定されている。
【0042】
ここで、非吐出領域203は次のように構成される。
【0043】
(1)ヘッドユニット間に間隔を設ける構成
図4(a)に示すように、非吐出領域203は、隣接する2つのヘッドユニットHU1が間隔をおいて接合することにより形成されている。ヘッドユニットHU1間の間隔は、ヘッドユニットHU1を接合する接合部材204へのヘッドユニットHU1の配置位置により設定される。
【0044】
この構成では、非吐出領域長d1がヘッドユニットHU1間の間隔で定まる。それゆえ、ヘッドユニットHU1の配置位置を適宜設定することにより、ヘッドユニットHU1そのものの構成を変更することなく、容易に非吐出領域長d1を設定することができる。
【0045】
(2)非吐出ノズルを設定する構成
図4(b)に示すように、非吐出領域203は、隙間なしに接合された隣接する2つのヘッドユニットHU1の接合端部付近の所定数のノズル201を、インク滴を吐出しない非吐出ノズル201bとして設定することにより形成される。1つのヘッドユニットHU1の接合端部における非吐出ノズル201bの数は特に限定されないが、非吐出領域長d1の長さに応じて定まる。
図4(b)に示す例では、上記の非吐出ノズル201bが1つのヘッドユニットHU1の接合端部において1つ設けられる構成を示している。
【0046】
非吐出ノズル201bは、吐出制御部73によって、空白行のデータが対応付けられているので、インク滴を吐出する機能を有していても、インク滴を吐出しない。したがって、空白行のデータが対応付けられる非吐出ノズル201bを適宜変更することにより、印刷条件などに応じて、同一構成のノズル列202を有する印刷ヘッド2で異なる非吐出領域203を設けることができる。
【0047】
(3)非吐出ノズルを設定してヘッドユニット間に間隔を設ける構成
この構成は、上記の
図4(b)に示す構成と
図4(a)に示す構成との組み合わせである。このような構成では、例えば、非吐出ノズル201bを設定することにより非吐出領域203を設けておき、さらにヘッドユニットHU1間の間隔を調整する。これにより、非吐出ノズル201bの数の増加では対応できない非吐出領域張d1の微妙な調整をすることができる。
【0048】
(4)ノズルを設けない構成
図4(c)に示すように、非吐出領域203は、隙間なしに接合された隣接する2つのヘッドユニットHU1において、ノズル201を設けないことにより形成される。これは、
図4(b)に示す構成において非吐出ノズル201bを設けないことに相当する。
【0049】
この構成では、非吐出領域203によって形成できる空白行は固定されるが、
図4(b)に示す構成のように、吐出制御部73によって空白行のデータを非吐出ノズル201bに対応付ける必要がなく、制御部7の制御を簡素化することができる。また、
図4(b)に示す構成と組み合わせて、非吐出ノズル201bを設定することにより、印刷条件に応じて空白行を追加することができる。
【0050】
〔支持・駆動機構の構成〕
プラテン4は、印刷ヘッド2が移動するガイドレールと対向する位置に設けられた支持台である。このプラテン4は、印刷媒体11の位置を規定するとともに、印刷媒体11を吸着などにより固定するための機構を有している。
【0051】
駆動ローラ5(移動手段)は、駆動軸を介して駆動力を与えられて回転するローラであり、主走査方向に所定の間隔をおいて2つ配置されている。従動ローラ(移動手段)6は、駆動ローラ5と当接することにより、駆動ローラ5と反対方向に回転するローラであり、駆動ローラ5と対向する位置に2つ配置されている。駆動ローラ5および従動ローラ6は、その間に印刷媒体11を挟むことで、駆動ローラ5の回転に応じて、主走査方向Xと直交する副走査方向Yに対して逆方向に印刷媒体11を所定のピッチで搬送する。このピッチは
、パス列Pの長さより短い。また、ピッチは、各走査で等しく設定されるが、各走査で不等に設定されていてもよい。
【0052】
〔制御部の構成〕
制御部7は、主走査制御部71と、副走査制御部72と、吐出制御部73とを有している。
【0053】
主走査制御部71は、印刷ヘッド2を主走査方向Xへ移動させるために、印刷ヘッド2を駆動するモータなどの動作を制御する。また、主走査制御部71は、1回の走査毎に改行を行うため、走査開始前に走査開始信号を出力し、走査終了後に走査終了信号を出力する。
【0054】
副走査制御部72(移動手段)は、印刷媒体11を副走査方向Yと逆方向に搬送するために、駆動ローラ5を駆動するモータなどの動作を制御する。この副走査制御部72は、各走査が終わる毎に印刷媒体11を上記のピッチの搬送量で搬送するように、モータの回転を制御する。
【0055】
吐出制御部73(吐出制御手段)は、印刷データに基づいて、印刷ヘッド2の主走査方向Xへの移動に伴い、各パス列Pのノズル201からインク滴を吐出するように吐出制御を行う。また、吐出制御部73は、主走査制御部71から出力される上記の走査開始信号に基づいて、インクを吐出するパス列Pを次のパス列Pに切り替えて吐出制御を行う。
【0056】
吐出制御部73は、半吐出ノズル201aに対して、2回の走査においてインク滴を吐出する回の走査のみ吐出を行うように制御する。具体的には、吐出制御部73は、先の1回の走査で一部(半数)の画素(ドット)の印刷をする画素パターン(第1の画素パターン)の印刷データを、当該画素パターンに対応する半吐出ノズル201aに対応付ける。また、吐出制御部73は、先の走査において間引かれた残余(半数)の画素をその後の走査において補完する印刷をする画素パターン(第2の画素パターン)の印刷データを対応する半吐出ノズル201aに対応付ける。
【0057】
吐出制御部73は、
図4(b)に示す前述の非吐出領域203を有する印刷ヘッド2を用いる場合、通常の吐出制御と異なる吐出制御を行う。具体的には、吐出制御部73は、非吐出ノズル201bに空白行のデータを対応付けし、インク滴を吐出するノズル201に対して空白行のデータを対応付けない。
【0058】
〔ソフトウェアによる制御部の実現〕
制御部7の各ブロック、特に
図2に示す主走査制御部71、副走査制御部72および吐出制御部73は、ハードウェアロジックによって構成されてもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現されてもよい。
【0059】
すなわち、制御部7は、主走査制御部71、副走査制御部72および吐出制御部73の各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、制御プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、制御プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(印刷媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した印刷媒体を、インクジェットプリンタ1に供給し、CPUが印刷媒体に記録されているプログラムコードを読み出して実行することによっても、達成可能である。
【0060】
上記の印刷媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/BD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0061】
また、インクジェットプリンタ1を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記のプログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0062】
〔インクジェットプリンタの他の構成〕
上記のインクジェットプリンタ1は、印刷媒体11上の印刷領域を副走査方向Yに移動させるために、印刷媒体11を副走査方向Yと逆方向に搬送し、印刷ヘッド2を副走査方向Yに移動させない構成を採用している。しかしながら、本発明は、印刷ヘッド2が印刷媒体11に対して相対的に移動できればよく、上記の構成に限定されない。
【0063】
例えば、インクジェットプリンタ1は、印刷媒体11を搬送せずに固定しておき、印刷ヘッド2を副走査方向Yに移動させることにより、印刷ヘッド2を印刷媒体11に対して相対的に移動させる構成を採用してもよい。この構成では、駆動ローラ5および従動ローラ6が不要であり、印刷ヘッド2を副走査方向Yに駆動するための機構が必要となる。このような機構としては、例えば、印刷ヘッド2をガイドレール3ごと副走査方向Yに駆動する機構が挙げられる。また、副走査制御部72は、駆動ローラ5の制御に代わって、上記の機構の動作を制御する。
【0064】
〔各走査で吐出するインク滴の色〕
各パス列Pに割り付けられる吐出ノズルの吐出色、すなわちノズル201が吐出するパス列P毎のインク滴の色(以降「パス列吐出色」と称する)は、単一(同一)であっても異なっていてもよい。あるいは、ノズル201が吐出する吐出色をヘッドユニットHU1毎に単一としておき、多色印刷の場合には、色数分のヘッドユニットHU1を結合して構成した印刷ヘッド2で走査する際に全色のインク滴を吐出するように構成してもよい。
【0065】
各色についてヘッドユニットHU1を用意し、多色印刷を行う場合、印刷速度の観点からは、ヘッドユニットHU1を一度に走査して全色のインク滴を吐出することが好ましい。しかしながら、画質向上の観点からは、一度の走査で単一色のインク滴を吐出すること(パス列吐出色またはヘッドユニットHU1毎の吐出色を単一とすること)が好ましい。
【0066】
パス列吐出色またはヘッドユニットHU1毎の吐出色が一度の走査において単一であることにより、一度の走査時に各パス列Pまたは印刷ヘッド2の全パス列Pから吐出されて印刷媒体11上に着弾するインク滴の色が同一となる。これにより、複数色のインク滴が着弾時に滲み合うことがなくなるので、印刷された画像の発色が良くなる。また、着弾するインク滴の色の順序が同一層のバンド間で同一となることから、着弾順序が異なることによるバンド間での色味の変化を防止することができる。
【0067】
例えば、シアンとマゼンタのインクを用いた印刷を行う際、1回目の走査の吐出色がシアンであれば、シアンのインク滴が印刷媒体11上に着弾することにより、シアンからなる第1層が形成される。2回目の走査の吐出色がマゼンタであれば、マゼンタのインク滴が印刷媒体11上にさらに着弾することにより、マゼンタからなる第2層が形成される。これは、一度の走査におけるパス列吐出色が単一である場合も同様である。
【0068】
これにより、各パス列Pから吐出されるインク滴が着弾時にバンド内で滲むことがなくなるので、印刷された画像の発色が良くなる。また、下層のバンド上に着弾したインク滴の滲み具合が、同一層のバンド間で異なることがないので、バンド間で色味が変化することはない。
【0069】
これに対し、パス列吐出色が単一でない場合、次の不都合が生じる。第1に、各パス列Pから吐出されるインク滴が着弾時に滲んでしまう。第2に、同一層においてバンド間で異なるインク滴が異なる順で着弾することになる。このため、下層のバンド上に着弾したインク滴の滲み具合が、同一層のバンド間で異なることから、バンド間で色味の変化が生じてしまう。したがって、印刷画像を損なわないように、パス列吐出色またはヘッドユニットHU1毎の吐出色が一度の走査において単一であることが好ましい。
【0070】
[実施形態1]
前述の印刷ヘッド2の詳細について、
図5および
図6を参照して説明する。
【0071】
〔印刷ヘッドの構成〕
図5は、印刷ヘッド21の構成を示す平面図である。
【0072】
前述の印刷ヘッド2は、
図5に示すように、印刷ヘッド21として構成されている。印刷ヘッド21は、2つのヘッドユニットHU21を有しており、ヘッドユニットHU21同士が結合されることにより構成されている。
【0073】
ヘッドユニットHU21は、前述のヘッドユニットHU1と同様、一列に並ぶ複数のノズル201を有しており、これらのノズル201によってノズル列202が構成されている。また、ノズル列202の両端側における所定数のノズル201は、半吐出ノズル201aとして設定されている。
【0074】
ノズル列202において、隣接する2つのノズル201は、隣接ノズル間距離d2の間隔をおいて配置されている。また、隣接するヘッドユニットHU21の接合部には、非吐出領域203が、
図4(a)〜(c)のいずれかに示すような前述の構成で設けられている。この非吐出領域203の非吐出領域長d1は、隣接ノズル間距離d2より長い。
【0075】
印刷ヘッド21の一端側に配置されるヘッドユニットHU21において、ノズル列202は第1パス列P1および第2パス列P2に分割されている。第1パス列P1は、当該ヘッドユニットHU21における端部側に配置され、第2パス列P2は、隣接するヘッドユニットHU21側に配置される。
【0076】
一方、印刷ヘッド21の他端側に配置されるヘッドユニットHU21において、ノズル列202は第3パス列P3および第4パス列P4に分割されている。第3パス列P3は、当該ヘッドユニットHU21における隣接するヘッドユニットHU21側に配置され、第4パス列P4は、ヘッドユニットHU21の端部側に配置される。
【0077】
なお、第1パス列P1および第2パス列P2のノズル数(ノズル数の比率)は印刷条件等によって設定される。同様に、第3パス列P3および第4パス列P4のノズル数も印刷条件等によって設定される。したがって、第1パス列P1および第2パス列P2のノズル数が同じでない場合もあるし、第3パス列P3および第4パス列P4のノズル数が同じでない場合もある。
【0078】
また、ヘッドユニットHU21は、2つのパス列Pを有しているが、3つ以上のパス列Pを有していてもよい。
【0079】
さらに、印刷ヘッド21は、同種のヘッドユニットHU21同士を組み合わせることによって構成されているが、これに限らず、異種のヘッドユニットを組み合わせて構成されてもよい。
【0080】
〔インクジェットプリンタによる印刷動作〕
上記のように構成される印刷ヘッド21を用いたインクジェットプリンタ1のマルチパス印刷動作について説明する。ここで、
図6(a)は、インクジェットプリンタ1の印刷状態を平面視で示しており、
図6(b)は、同印刷状態を印刷媒体11の側面視(主走査方向Xから見た状態)を示している。
【0081】
なお、
図6(a)においては、印刷ヘッド21の印刷媒体11に対する相対的な移動状態が分かりやすくなるように、主走査方向Xにずらした状態で各走査の印刷ヘッド21の位置を示している。
【0082】
また、以降の説明において、第1パス列P1〜第4パス列P4に共通して言及する場合には、単に「パス列P」と称する。
【0083】
図6(a)の印刷ヘッド21において斜線にて示す部分は、半吐出ノズル201aが設けられている領域である。また、
図6(b)において、斜線にて示す部分は、半吐出ノズル201aによってインク滴が吐出された部分であり、“1”〜“5”は、それぞれ第1走査〜第5走査によって形成された部分であることを示している。
【0084】
〈第1走査〉
図6(a)および(b)に示すように、まず、第1走査では、画像の原点から、第1パス列P1の一部による走査が行われることにより、印刷媒体11上には、インク滴が吐出されたノズル201の幅でバンドが形成される。このバンドのうち、通常のノズル201によりインク滴が吐出された領域は25%の印刷度合いであり、半吐出ノズル201aによりインク滴が吐出された領域は12.5%の印刷度合いである。
【0085】
半吐出ノズル201aからインク滴を吐出させるとき、吐出制御部73が第1の画素パターンの印刷データに基づいて吐出制御を行うことにより、ヘッドユニットHU21の端部における半数の半吐出ノズル201aからインク滴が吐出される。これにより、半数の画素が間引かれた状態で印刷が行われて、12.5%の印刷度合いのバンドが形成される。
【0086】
〈第2走査〉
第2走査では、印刷媒体11が副走査方向Yと逆方向にパス列Pより短い所定のピッ
チだけ搬送されることにより、印刷ヘッド21が印刷媒体11に対して副走査方向Yに
ピッチだけ移動する。この状態で、画像の原点から、第2パス列P2の一部および第1パス列P1による走査が行われる。このとき、第2パス列P2における一端側の半吐出ノズル201aによる走査は行われない。
【0087】
この走査により、印刷媒体11上には、第1層のバンドが、第1走査で形成された第1層のバンドに隣接して上記と同様にして形成され、第1走査で形成された第1層のバンドの上にもバンドが形成される(バンドが重なる)。第1走査で形成された印刷度合いが12.5%であるバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが37.5%となるようにバンドが形成される。一方、第1走査で形成された印刷度合いが25%のバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが50%となるようにバンドが形成される。
【0088】
このように、パス列Pより短い所定のピッチで印刷媒体11を搬送することにより、バンドの重なる部分は、印刷度合いを減らして印刷しており、複数回の走査によって画像が完成する。
【0089】
〈第3走査〉
第3走査でも、上記と同様にして印刷ヘッド21が印刷媒体11に対して副走査方向Yに上記のピッチだけ移動する。この状態で、画像の原点から、第3パス列P3における一端側の半吐出ノズル201a、非吐出領域203、第2パス列P2および第1パス列P1による走査が行われる。
【0090】
この走査により、印刷媒体11上には、第1層のバンドが、第2走査で形成された第1層のバンドに隣接して上記と同様にして形成される。また、第2走査によって形成された印刷度合いが12.5%のバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが37.5%となるようにバンドが形成される。また、第2走査で形成された印刷度合いが25%のバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが50%となるようにバンドが形成される。また、第2走査で形成された印刷度合いが37.5%のバンドの上には、半吐出ノズル201aの走査により、印刷度合いが50%となるようにバンドが形成される。
【0091】
半吐出ノズル201aからインク滴を吐出させるとき、吐出制御部73が第2の画素パターンの印刷データに基づいて吐出制御を行うことにより、ヘッドユニットHU21の端部における残余の半数の半吐出ノズル201aからインク滴が吐出される。これにより、第1走査で半数の画素が形成されたバンドの上に、第2走査によって形成されたバンドを介して、第1走査で間引かれた画素を補完するように12.5%の印刷度合いのバンドが形成される。
【0092】
このように、2回の走査にわたって半吐出ノズル201aによるインク滴の吐出が行われることにより、通常のノズル201による1回の走査で行われる25%の印刷が完成する。
【0093】
さらに、第2走査によって形成された印刷度合いが50%であるバンドの上には、非吐出領域203の走査によりバンドが形成されない部分と、半吐出ノズル201aの走査により62.5%の印刷度合いとなるようにバンドが形成される部分とが存在する。
【0094】
〈第4走査〉
第4走査でも、上記と同様にして印刷ヘッド21が移動する。この状態で、画像の原点から、第4パス列P4の一部、第3パス列P3、非吐出領域203、第2パス列P2および第1パス列P1による走査が行われる。
【0095】
この走査により、印刷媒体11上には、第1層のバンドが、第3走査で形成された第1層のバンドに隣接して上記と同様にして形成される。また、第3走査で形成された印刷度合いが12.5%のバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが37.5%となるようにバンドが形成される。また、第3走査で形成された印刷度合いが25%のバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが50%となるようにバンドが形成される。さらに、第3走査で形成された印刷度合いが37.5%であるバンドの上には、半吐出ノズル201aの走査により、印刷度合いが50%となるようにバンドが形成される。
【0096】
第3走査で形成された印刷度合いが50%のバンドの上には、非吐出領域203の走査によりバンドが形成されない部分と、半吐出ノズル201aの走査により62.5%の印刷度合いとなるようにバンドが形成される部分とが存在する。また、第2走査および第3走査で形成された印刷度合いが50%のバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが75%となるようにバンドが形成される。さらに、第3走査で形成された印刷度合いが62.5%のバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが87.5%となるようにバンドが形成される。
【0097】
〈第5走査〉
第5走査でも、上記と同様にして印刷ヘッド21が移動する。この状態で、画像の原点から、第4パス列P4、第3パス列P3、非吐出領域203、第2パス列P2および第1パス列P1による走査が行われる。
【0098】
この走査により、印刷媒体11上には、第1層のバンドが、第4走査で形成された第1層のバンドに隣接して上記と同様にして形成される。また、第4走査で形成された印刷度合いが12.5%のバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが37.5%となるようにバンドが形成される。また、第4走査で形成された印刷度合いが25%のバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが50%となるようにバンドが形成される。さらに、第4走査で形成された印刷度合いが37.5%のバンドの上には、半吐出ノズル201aの走査により、印刷度合いが50%となるようにバンドが形成される。
【0099】
第4走査で形成された印刷度合いが50%のバンドの上には、非吐出領域203の走査によりバンドが形成されない部分と、半吐出ノズル201aの走査により62.5%の印刷度合いとなるようにバンドが形成される部分とが存在する。また、第3走査および第4走査で形成された印刷度合いが50%であるバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが75%となるようにバンドが形成される。
【0100】
第4走査で形成された印刷度合いが62.5%のバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが87.5%となるようにバンドが形成される。また、第4走査で形成された印刷度合いが75%のバンドの上には、ノズル201の走査により、印刷度合いが100%となるようにバンドが形成される。さらに、第4走査で形成された印刷度合いが87.5%のバンドの上には、半吐出ノズル201aの走査により、印刷度合いが100%となるようにバンドが形成される。
【0101】
〔実施形態の総括〕
〈非吐出領域〉
本実施形態の印刷ヘッド21は、2つのヘッドユニットHU21が接合されることにより構成されており、ヘッドユニットHU21の接合部にインク滴を吐出しない非吐出領域203が設けられている。
【0102】
これにより、ヘッドユニットHU21の間で、非吐出領域203が緩衝地帯となって、ヘッドユニットHU21の端部のノズル201から吐出されるインク滴が干渉し合うことがなくなる。したがって、印刷ヘッド21のノズル面と印刷媒体11との間の距離が長くなった場合でも、従来のように、印刷ヘッド21の搭載位置を機構的に調整することなく、容易にインク滴の干渉を防止することができる。
【0103】
〈非吐出領域長〉
非吐出領域長d1が隣接ノズル間距離d2よりも長いことにより、少なくとも1行の空白行を設けることができる。これにより、隣接ノズル間距離d2よりも長い非吐出領域長d1を有する非吐出領域203で走査が行われると、前回の走査で形成されたバンド上には空白行(無記録領域)が形成される。それゆえ、従来のインクジェットプリンタの印刷方法と同様に、各走査で印刷ヘッド21を印刷媒体11に対して所定のピッチの幅だけ移動させても、今回の走査で形成されたバンドの端部は、前回の走査で形成された下層のバンドの端部よりもずれる。
【0104】
例えば、
図6(a)および(b)に示す第3走査〜第5走査のように、第1パス列P1〜第4パス列P4の境界が順次ずれていくので、その結果により形成されるバンドの境界も下層のバンドの境界に対してずれていく。これにより、バンドの境界が重なることがないので、バンド同士の境界が目立たなくなり、バンディングの発生を防止することができる。
【0105】
〈半吐出ノズル〉
印刷ヘッド21は、ヘッドユニットHU21の両端部に半吐出ノズル201aを有している。これにより、半吐出ノズル201aによる走査で印刷された画素の密度が低い部分は、不足する画素が後の走査によって補完される。それゆえ、各ヘッドユニットHU21によって形成されるバンドの間でインク滴の濃度が急減に変化することがなくなり、インク濃度のムラによるバンド縞の発生を防止することができる。
【0106】
半吐出ノズル201aを第1パス列P1〜第4パス列P4の各両端部に設けると、上記の効果がより高められるが、重複して印刷する箇所が多くなり、印刷速度が低下する。これに対し、ヘッドユニットHU21の両端部に半吐出ノズル201aを設けることにより、重複して印刷する箇所を最小にして、印刷速度の低下を最小限に抑えながら、印刷品質を向上させることができる。
【0107】
[実施形態2]
前述の印刷ヘッド2の詳細について、
図7および
図8を参照して説明する。
【0108】
なお、本実施形態において、前述の実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記してその説明を適宜省略する。
【0109】
〔印刷ヘッドの構成〕
図7は、印刷ヘッド22の構成を示す平面図である。
【0110】
前述の印刷ヘッド2は、
図7に示すように、印刷ヘッド22として構成されている。印刷ヘッド22は、4つのヘッドユニットHU22を有しており、ヘッドユニットHU22同士が結合されることにより構成されている。
【0111】
ヘッドユニットHU22は、前述のヘッドユニットHU1と同様、一列に並ぶ複数のノズル201を有しており、これらのノズル201によってノズル列202が構成されている。また、ノズル列202の両端側における所定数のノズル201は、半吐出ノズル201aとして設定されている。
【0112】
ノズル列202において、隣接する2つのノズル201は、隣接ノズル間距離d2の間隔をおいて配置されている。また、隣接するヘッドユニットHU22の接合部には、非吐出領域203が、
図4(a)〜(c)のいずれかに示すような前述の構成で設けられている。この非吐出領域203の非吐出領域長d1は、隣接ノズル間距離d2より長い。
【0113】
4つのヘッドユニットHU22のうち、印刷ヘッド22の一方の端部に配置されるヘッドユニットHU22のノズル列202が第1パス列P1に相当し、当該ヘッドユニットHU22に隣接するヘッドユニットHU22のノズル列202が第2パス列P2に相当する。また、印刷ヘッド22の他方の端部に配置されるヘッドユニットHU22のノズル列202が第4パス列P4に相当し、当該ヘッドユニットHU22に隣接するヘッドユニットHU22のノズル列202が第3パス列P3に相当する。
【0114】
なお、ヘッドユニットHU22は、1つのパス列Pを有しているが、2つ以上のパス列Pを有していてもよい。
【0115】
また、印刷ヘッド22は、同種のヘッドユニットHU22同士を組み合わせることによって構成されているが、これに限らず、異種のヘッドユニットを組み合わせて構成されてもよい。
【0116】
〔インクジェットプリンタによる印刷動作〕
上記のように構成される印刷ヘッド22を用いたインクジェットプリンタ1のマルチパス印刷動作について説明する。ここで、
図8(a)は、インクジェットプリンタ1の印刷状態を平面視で示しており、
図8(b)は、同印刷状態を印刷媒体11の側面視(主走査方向Xから見た状態)を示している。
【0117】
なお、
図8(a)においては、印刷ヘッド2の印刷媒体11に対する相対的な移動状態が分かりやすくなるように、主走査方向Xにずらした状態で各走査の印刷ヘッド2の位置を示している。
【0118】
また、以降の説明において、第1パス列P1〜第4パス列P4に共通して言及する場合には、単に「パス列P」と称する。
【0119】
図8(a)の印刷ヘッド22において斜線にて示す部分は、半吐出ノズル201aが設けられている領域である。また、
図8(b)において、斜線にて示す部分は、半吐出ノズル201aによってインク滴が吐出された部分であり、“1”〜“5”は、それぞれ第1走査〜第5走査によって形成された部分であることを示している。
【0120】
〈第1走査〉
図8(a)および(b)に示すように、まず、第1走査では、画像の原点から、第1パス列P1の一部による走査が行われる。このとき、第1パス列P1における一端側の半吐出ノズル201aによる走査は行われない。
【0121】
この走査により、印刷媒体11上には、インク滴が吐出されたノズル201の幅でバンドが形成される。このバンドのうち、通常のノズル201によりインク滴が吐出された領域は25%の印刷度合いであり、半吐出ノズル201aによりインク滴が吐出された領域は12.5%の印刷度合いである。
【0122】
半吐出ノズル201aからインク滴を吐出させるとき、吐出制御部73が第1の画素パターンの印刷データに基づいて吐出制御を行うことにより、ヘッドユニットHU22の端部における半数の半吐出ノズル201aからインク滴が吐出される。これにより、半数の画素が間引かれた状態で印刷が行われて、12.5%の印刷度合いのバンドが形成される。
【0123】
〈第2走査〉
第2走査では、印刷媒体11が副走査方向Yと逆方向にパス列Pより短い所定のピッチ(バンド幅)だけ搬送されることにより、印刷ヘッド21が印刷媒体11に対して副走査方向Yにバンド幅だけ移動する。この状態で、画像の原点から、第2パス列P2の一部、非吐出領域203および第1パス列P1による走査が行われる。
【0124】
この走査により、印刷媒体11上には、第1層のバンドが、第1走査で形成された第1層のバンドに隣接して上記と同様にして形成される。
【0125】
第1走査で形成された印刷度合いが12.5%のバンドの上には、半吐出ノズル201aによる走査により、25%の印刷度合いとなるようにバンドが形成される。一方、第1走査で形成された印刷度合いが25%のバンドの上には、ノズル201による走査により、印刷度合いが50%となるようにバンドが形成される。
【0126】
半吐出ノズル201aからインク滴を吐出させるとき、吐出制御部73が第2の画素パターンの印刷データに基づいて吐出制御を行うことにより、ヘッドユニットHU22の端部における残余の半数の半吐出ノズル201aからインク滴が吐出される。これにより、第1走査で半数の画素が形成されたバンドの上に、第1走査で間引かれた画素を補完するように12.5%の印刷度合いのバンドが形成される。
【0127】
〈第3走査〉
第3走査でも、上記と同様にして印刷ヘッド21が印刷媒体11に対して副走査方向Yに上記のピッチだけ移動する。この状態で、画像の原点から、非吐出領域203、第2パス列P2および第1パス列P1による走査が行われる。
【0128】
この走査により、印刷媒体11上には、第1層のバンドが、第2走査で形成された第1層のバンドに隣接して上記と同様にして形成される。
【0129】
第2走査で形成された印刷度合いが12.5%のバンドの上には、半吐出ノズル201aの走査により、印刷度合いが25%となるようにバンドが形成される。また、第1走査および第2走査で形成された印刷度合いが50%のバンドの上には、半吐出ノズル201aおよびノズル201の走査により、それぞれ37.5%および50%の印刷度合いとなるようにバンドが形成される。さらに、第2走査で形成された印刷度合いが37.5%のバンドの上には、半吐出ノズル201aの走査により、印刷度合いが50%となるようにバンドが形成される。
【0130】
〈第4走査〉
第4走査でも、上記と同様にして印刷ヘッド21が移動する。この状態で、画像の原点から、第3パス列P3の一部、非吐出領域203、第2パス列P2、非吐出領域203および第1パス列P1による走査が行われる。このとき、第3パス列P3における一端側の半吐出ノズル201aによる走査は行われない。
【0131】
この走査により、印刷媒体11上には、第1層のバンドが、第3走査で形成された第1層のバンドに隣接して上記と同様にして形成される。
【0132】
第3走査で形成された印刷度合いが12.5%のバンドの上には、半吐出ノズル201aの走査により、印刷度合いが25%となるようにバンドが形成される。また、第2走査および第3走査で形成された印刷度合いが50%のバンドの上には、半吐出ノズル201aおよびノズル201の走査により、それぞれ37.5%および50%の印刷度合いとなるようにバンドが形成される。また、第3走査で形成された印刷度合いが37.5%のバンドの上には、半吐出ノズル201aの走査により、印刷度合いが50%となるようにバンドが形成される。さらに、第2走査および第3走査で形成された印刷度合いが50%のバンドの上には、半吐出ノズル201aおよびノズル201の走査により、それぞれ62.5%および75%の印刷度合いとなるようにバンドが形成される。
【0133】
〈第5走査〉
第5走査でも、上記と同様にして印刷ヘッド21が移動する。この状態で、画像の原点から、第4パス列P4の一部、非吐出領域203、第3パス列P3、非吐出領域203、第2パス列P2、非吐出領域203および第1パス列P1による走査が行われる。
【0134】
この走査により、印刷媒体11上には、第1層のバンドが、第4走査で形成された第1層のバンドに隣接して上記と同様にして形成される。
【0135】
第3走査および第4走査で形成された印刷度合いが50%のバンドの上には、半吐出ノズル201aおよびノズル201の走査により、それぞれ37.5%および50%の印刷度合いとなるようにバンドが形成される。また、第4走査で形成された印刷度合いが37.5%のバンドの上には、半吐出ノズル201aの走査により、印刷度合いが50%となるようにバンドが形成される。また、第3走査および第4走査で形成された印刷度合いが50%のバンドの上には、半吐出ノズル201aおよびノズル201の走査により、それぞれ62.5%および75%の印刷度合いでバンドが形成される。また、第4走査で形成された印刷度合いが6.25%のバンドの上には、半吐出ノズル201aの走査により、75%の印刷度合いとなるようにバンドが形成される。さらに、第4走査で形成された印刷度合いが75%のバンドの上には、半吐出ノズル201aおよびノズル201の走査により、それぞれ87.5%および100%の印刷度合いとなるようにバンドが形成される。
【0136】
〔実施形態の総括〕
〈非吐出領域〉
本実施形態の印刷ヘッド22は、4つのヘッドユニットHU22が接合されることにより構成されており、ヘッドユニットHU22の接合部にインク滴を吐出しない非吐出領域203が設けられている。
【0137】
これにより、印刷ヘッド21と同様、ヘッドユニットHU22の間で、非吐出領域203が緩衝地帯となって、ヘッドユニットHU22の端部のノズル201から吐出されるインク滴が干渉し合うことがなくなる。したがって、印刷ヘッド22のノズル面と印刷媒体11との間の距離が長くなった場合でも、従来のように、印刷ヘッド22の搭載位置を機構的に調整することなく、容易にインク滴の干渉を防止することができる。
【0138】
〈非吐出領域長〉
非吐出領域長d1が隣接ノズル間距離d2よりも長いことにより、印刷ヘッド21と同様、今回の走査で形成されたバンドの端部は、前回の走査で形成された下層のバンドの端部よりもずれる。したがって、印刷時に各層のバンドの端部が同じ行になることがないので、バンド同士の境界が目立たなくなり、バンディングをなくすことができる。
【0139】
〈半吐出ノズル〉
印刷ヘッド22は、ヘッドユニットHU22の両端部に半吐出ノズル201aを有している。これにより、印刷ヘッド21と同様、半吐出ノズル201aによる走査で画素の密度が低い部分は、不足する画素が後の走査によって補完される。それゆえ、各ヘッドユニットHU21によって形成されるバンドの間でインク滴の濃度が急減に変化することがなくなり、インク濃度のムラによるバンド縞の発生を防止することができる。
【0140】
印刷ヘッド22は、半吐出ノズル201aを第1パス列P1〜第4パス列P4の各両端部に設けているので、印刷ヘッド22と比べて、印刷品質を向上させることはできるが、重複して印刷する箇所が多くなるために印刷速度が低下する。したがって、印刷ヘッド22は、印刷速度よりも印刷品質を重視する場合に好適に用いることができる。
【0141】
[実施形態3]
前述の印刷ヘッド2の詳細について、
図9を参照して説明する。
【0142】
なお、本実施形態において、前述の実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記してその説明を適宜省略する。
【0143】
図9は、印刷ヘッド23の構成を示す平面図である。
【0144】
前述の印刷ヘッド2は、
図9に示すように、印刷ヘッド23として構成されている。印刷ヘッド23は、前述の印刷ヘッド21と同様、2つのヘッドユニットHU21を有しており、ヘッドユニットHU21同士が結合されることにより構成されている。
【0145】
印刷ヘッド23は、印刷ヘッド21と相違して、ヘッドユニットHU21が副走査方向Yに直交する方向にオフセットして並ぶように結合されている。また、両ヘッドユニットHU21は、一部で接触しているが、主走査方向Xおよび/または副走査方向Yに離れていてもよい。
【0146】
なお、図示はしないが、両ヘッドユニットHU21は、
図9に示すヘッドユニットHU21と逆の位置関係に配置されていてもよい。
【0147】
上記のように構成される印刷ヘッド23を用いてインクジェットプリンタ1によるマルチパス印刷を行っても、
図6(a)および(b)に示すようにして印刷が行われる。これにより、印刷ヘッド21を用いた場合と同様、インク滴の干渉を容易に防止すること、バンディングをなくすこと、およびインク濃度のムラによるバンド縞の発生を防止することができる。
【0148】
[実施形態4]
前述の印刷ヘッド2の詳細について、
図10および
図11を参照して説明する。
【0149】
なお、本実施形態において、前述の実施形態2における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記してその説明を適宜省略する。
【0150】
図10は、印刷ヘッド24の構成を示す平面図である。
図11は、印刷ヘッド25の構成を示す平面図である。
【0151】
前述の印刷ヘッド2は、
図10に示すように、印刷ヘッド24として構成されている。印刷ヘッド24は、前述の印刷ヘッド22と同様、4つのヘッドユニットHU22を有しており、ヘッドユニットHU22同士が結合されることにより構成されている。
【0152】
印刷ヘッド24は、印刷ヘッド22と相違して、副走査方向Yに直交する方向に交互に逆向きにオフセットする、いわゆるスタガード配置(千鳥型配置)に並ぶように結合されている。また、各ヘッドユニットHU22は、隣接するもの同士が一部で接触しているが、主走査方向Xおよび/または副走査方向Yに離れていてもよい。
【0153】
なお、図示はしないが、各ヘッドユニットHU22は、
図10に示すヘッドユニットHU22と逆の位置関係に配置されていてもよい。
【0154】
一方、前述の印刷ヘッド2は、
図11に示すように、印刷ヘッド25として構成されている。印刷ヘッド25は、前述の印刷ヘッド22と同様、4つのヘッドユニットHU22を有しており、ヘッドユニットHU22同士が結合されることにより構成されている。
【0155】
印刷ヘッド25は、印刷ヘッド22と相違して、副走査方向Yに直交する同方向に順次オフセットする、いわゆる雁行型配置に並ぶように結合されている。また、各ヘッドユニットHU22は、隣接するもの同士が一部で接触しているが、主走査方向Xおよび/または副走査方向Yに離れていてもよい。
【0156】
なお、図示はしないが、各ヘッドユニットHU22は、
図11に示すヘッドユニットHU22と逆の位置関係に配置されていてもよい。
【0157】
上記のように構成される印刷ヘッド24,25を用いてインクジェットプリンタ1によるマルチパス印刷を行っても、
図8(a)および(b)に示すようにして印刷が行われる。これにより、印刷ヘッド22を用いた場合と同様、インク滴の干渉を容易に防止すること、バンディングをなくすこと、およびインク濃度のムラによるバンド縞の発生を防止することができる。
【0158】
〔付記事項〕
インクジェットプリンタ1は、主走査方向Xに直交する副走査方向Yに沿って並ぶ複数のノズル201からなるノズル列202を有するヘッドユニットHU1,HU21,HU22が複数結合された印刷ヘッド2,21〜25と、ノズル201に印刷データを対応付けてインク滴を吐出させるように制御する吐出制御部73と、当該印刷ヘッド2,21〜25を主走査方向Xに移動させるとともに、走査毎に印刷ヘッド2,21〜25を印刷媒体11に対して副走査方向Yに相対的に移動させる駆動ローラ5、従動ローラ6および副走査制御部72とを備え、印刷媒体11に1回の走査で複数のパスの印刷を行う。このインクジェットプリンタ1は、印刷ヘッド2,21〜25が、隣接する2つのヘッドユニットHU1,HU21,HU22の間にのみ、インク滴を吐出しない非吐出領域203を有しており、非吐出領域203の副走査方向Yの非吐出領域長d1が、隣接する2つのノズル201間の隣接ノズル間距離d2よりも長く、各ヘッドユニットHU1,HU21,HU22のノズル列202における、パスに対応するノズル201からなるパス対応ノズル列の幅が、パスの印刷により印刷媒体11に形成されるバンドの幅と一致し、パスの数よりも多い回数の走査で行われる全てのパスの印刷によりバンドを重ねることで画像を完成させ、駆動ローラ5、従動ローラ6および副走査制御部72が、走査毎にパス対応ノズル列の境界
がずれ、かつ、各走査の間で非吐出領域203がずれるように、印刷ヘッド2,21〜25を印刷媒体11に対して副走査方向Yにパス対応ノズル列の幅より狭い幅で相対的に移動させ、吐出制御部73が、先の走査において、印刷する画素を間引いた第1の画素パターンのデータを各ヘッドユニットHU1,HU21,HU22の副走査方向Yの両端部における一部のノズル201(半吐出ノズル201a)に対応付け、その後の走査において、第1の画素パターンを補完する第2の画素パターンのデータを両端部における残余のノズル201(半吐出ノズル201a)に対応付ける。
【0159】
また、インクジェットプリンタ1の印刷方法は、主走査方向Xに直交する副走査方向Yに沿って並ぶ複数のノズル201からなるノズル列202を有するヘッドユニットHU1,HU21,HU22が複数結合された印刷ヘッド2,21〜25を備え、ノズル201に印刷データを対応付けてインク滴を吐出させるように制御し、当該印刷ヘッド2,21〜25を主走査方向Xに移動させるとともに、走査毎に印刷ヘッド2,21〜25を印刷媒体11に対して副走査方向Yに相対的に移動させて、印刷媒体11に1回の走査で複数のパスの印刷を行うインクジェットプリンタの印刷方法である。この印刷方法は、隣接する2つのヘッドユニットHU1,HU21,HU22の間にのみ、インク滴を吐出しない非吐出領域203を有しており、非吐出領域203の副走査方向Yの非吐出領域長d1が、隣接する2つのノズル201間の隣接ノズル間距離d2よりも長くなるように構成された印刷ヘッド2,21〜25を用い、各ヘッドユニットHU1,HU21,HU22のノズル列202における、パスに対応するノズル201からなるパス対応ノズル列の幅が、パスの印刷により印刷媒体11に形成されるバンドの幅と一致し、パスの数よりも多い回数の走査で行われる全てのパスの印刷によりバンドを重ねることで画像を完成させ、走査毎にパス対応ノズル列の境界
がずれ、かつ、各走査の間で非吐出領域203がずれるように印刷ヘッド2,21〜25を印刷媒体11に対して副走査方向Yにパス対応ノズル列の幅より狭い幅で相対的に移動させ、各ヘッドユニットHU1,HU21,HU22の副走査方向Yの両端部により、先の走査において、印刷する画素を間引いた第1の画素パターンで印刷し、その後の走査において、前記第1の画素パターンを補完する第2の画素パターンで印刷し、各走査の間で前記非吐出領域が走査する位置をずらす。
【0160】
上記の構成によれば、印刷媒体11に対して印刷ヘッド2,21〜25を移動させながら走査を繰り返して行うことにより、全パス列Pによる印刷が終了したバンドでは画像が完成する。また、印刷ヘッド2,21〜25においては、隣接する2つのヘッドユニットHU1,HU21,HU22の間にのみ非吐出領域203が設けられているので、ヘッドユニットHU1,HU21,HU22の間で、非吐出領域203が緩衝地帯となって、ヘッドユニットHU1,HU21,HU22の端部のノズル201から吐出されるインク滴が干渉し合うことがなくなる。したがって、印刷ヘッド2,21〜25と印刷媒体との間の距離が長くなった場合でも、従来のように、印刷ヘッド2,21〜25の搭載位置を機構的に調整することなく、容易にインク滴の干渉を防止することができる。
【0161】
また、非吐出領域長d1が隣接ノズル間距離d2よりも長いことにより、少なくとも1行の空白行を設けることができる。これにより、非吐出領域長d1を有する非吐出領域203で走査が行われると、前回の走査で形成されたバンド上には空白行(無記録領域)が形成される。それゆえ、従来のインクジェットプリンタの印刷方法と同様に、各走査で印刷ヘッド2,21〜25を印刷媒体11に対して副走査方向に移動させても、今回の走査で形成されたバンドの端部は、前回の走査で形成された下層のバンドの端部よりもずれる。したがって、バンドの境界が重なることがないので、バンド同士の境界が目立たなくなり、バンディングの発生を防止することができる。
【0164】
上記のように構成されるインクジェットプリンタ1では、第1の画素パターンのデータが、ヘッドユニットHU1,HU21,HU22の両端部における一部のノズル201(半吐出ノズル201a)に対応付けられているので、当該ノズル201からインク滴が吐出されることにより、間引かれた状態で画素が形成される。また、第2の画素パターンのデータが、ヘッドユニットの両端部における残余のノズルに対応付けられているので、その後の走査で、当該ノズル201からインク滴が吐出されることにより、先の走査で間引かれた画素が補完されるように形成される。
【0165】
また、上記のような印刷方法では、各ヘッドユニットHU1,HU21,HU22の両端部により、先の走査で印刷する画素を間引いた第1の画素パターンで印刷が行われることにより、間引かれた状態で画素が形成される。また、その後の走査では、上記の両端部により、第2の画素パターンで印刷が行われることにより、先の走査で間引かれた画素が補完されるように形成される。
【0166】
これにより、1回の走査で印刷された画素の密度が低い部分は、不足する画素が後の走査によって補完される。それゆえ、各ヘッドユニットによって形成されるバンドの間でインク滴の濃度が急減に変化することがなくなり、インク濃度のムラによるバンド縞の発生を防止することができる。したがって、印刷品質を向上させることができる。