(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板の間に介在するセパレータを有する電極体と、前記電極体及び非水電解液を収納する外装体とを有し、前記正極板から前記外装体の外部への導電経路、及び前記負極板から前記外装体の外部への導電経路の少なくとも一方に前記外装体内部の圧力が所定値よりも大きくなった場合に電流を遮断する電流遮断機構を備えた非水電解質二次電池であって、
前記非水電解液は、シクロヘキシルベンゼンを含有し、前記シクロヘキシルベンゼンの含有量が前記シクロヘキシルベンゼンを除いた前記非水電解液の溶媒の総量に対して3.0〜3.75質量%であり、かつ、体積比で前記外装体内の空間体積に対し3.0%以上4.5%以下である非水電解質二次電池。
前記非水電解質を構成する非水溶媒が、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1に記載の非水電解質二次電池。
前記外装体内部の圧力が所定値よりも大きくなった場合に外装体内部のガスを外装体外部へ排出するガス排出弁を有しており、前記電流遮断機構は前記ガス排出弁よりも低い圧力で作動し、前記電流遮断機構は0.4MPa以上1.0MPa以下の圧力で作動する請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
前記正極板は、正極活物質としてリチウムイオンの吸蔵・排出が可能なリチウム遷移金属複合酸化物を含有し、前記負極板は、負極活物質としてリチウムイオンの吸蔵・排出が可能な炭素材料を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
前記正極板及び負極板の少なくとも一方の表面には、無機酸化物と結着材からなる保護層が設けられており、前記無機酸化物がアルミナ、チタニア、及びジルコニアから選択される1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
前記外装体は角形外装体であり、前記電極体は偏平形電極体であり、前記偏平形電極体は一方側の端部に複数枚積層された正極芯体露出部を有し、他方側の端部に複数枚積層された負極芯体露出部を有し、前記正極芯体露出部は前記角形外装体の一方側の側壁に対向し、前記負極芯体露出部が前記角形外装体の他方側の側壁に対向するように配置され、前記正極芯体露出部は正極集電体に接続され、前記負極芯体露出部は負極集電体に接続されている請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、携帯型パーソナルコンピュータ、携帯型音楽プレイヤー等の携帯型電子機器の駆動電源として、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が多く使用されている。更に、環境保護運動の高まりを背景として二酸化炭素ガス等の排出規制が強化されているため、リチウムイオン二次電池等を用いた電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)等の開発が活発に行われている。また、リチウムイオン二次電池等を用いた大型蓄電システムの開発も活発に行われている。
【0003】
この種のリチウムイオン二次電池は、正極活物質としてLiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4等のリチウム遷移金属複合酸化物等を用い、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・排出可能な炭素材料やケイ素材料等を用い、有機溶媒に溶質としてリチウム塩を溶解した電解液を用いる電池である。
【0004】
リチウムイオン二次電池が過充電状態になると、正極からリチウムが過剰に抽出され、負極ではリチウムの過剰な挿入が生じて、正負極の両極が熱的に不安定化する等の問題が生じる。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば電解液中に過充電抑制剤として、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、及びジフェニルエーテルのうち少なくとも一種を添加することにより、過充電時の温度上昇の防止を図ったリチウムイオン二次電池が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、電解液を構成する有機溶媒にフェニル基に隣接する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体またはシクロヘキシルベンゼン誘導体を含有させることにより、低温特性や保存特性などの電池特性に悪影響を及ぼすことがなく、且つ過充電対策が施されたリチウムイオン二次電池が提案されている。(特許文献2参照)。
【0007】
このリチウムイオン二次電池では、リチウムイオン二次電池が過充電状態になると、フェニル基に隣接する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体またはシクロヘキシルベンゼン誘導体であるクメン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、1−メチルプロピルベンゼン、1,3−ビス(1−メチルプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(1−メチルプロピル)ベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シクロペンチルベンゼンなどの添加剤は分解反応を開始してガスを発生するようになる。これと同時に重合反応を開始して重合熱を発生する。この状態で過充電をさらに続けると、ガスの発生量が増大し、過充電を開始してから15〜19分後に電流遮断封口板が作動して過充電電流を遮断する。これにより、電池温度も徐々に低下することとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特に高い信頼性が求められるEV、PHEV、HEV等に用いられる非水電解質二次電池においては、過充電に対する対策として、上述のとおり非水電解質に過充電抑制剤を含有させる技術を適用することが好ましい。
【0010】
本発明者らは、EV、PHEV、HEV等に用いられる車載用非水電解質二次電池の開発を進める過程において、非水電解液に過充電抑制剤を含有させた場合であっても、低温状態では過充電抑制剤の効果が低下し、電池に異常が生じても電流遮断機構の作動までに時間が掛かるという課題が生じた。さらに、非水電解液に過充電抑制剤を含有させた場合、低温状態で出力特性が低下するという課題が生じた。また、非水電解質二次電池は、一定レートで充電(1段目充電)した後、より高いレートでさらに充電(2段目充電)を行うような用い方(2段階の充電)が想定される。しかし、電流遮断機構を備えた非水電解質二次電池において、この電流遮断機構の作動に関わる諸条件は、一定レートの充電での過充電を想定して設定されているため、2段目における過充電(2段過充電)に対してそのまま適用できるわけではない。なお、本明細書における2段階の充電は、上述の形態に限定されず、充電レートが変動する充電を包含する。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、低温状態において十分な出力特性を有すると共に、低温状態で電池が2段階の充電で過充電状態となっても信頼性を確保することができる非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の非水電解質二次電池は、正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板の間に介在するセパレータを有する電極体と、前記電極体及び非水電解液を収納する外装体とを有し、前記正極板から前記外装体の外部への導電経路、及び前記負極板から前記外装体の外部への導電経路の少なくとも一方に前記外装体内部の圧力が所定値よりも大きくなった場合に電流を遮断する電流遮断機構を備えた非水電解質二次電池であって、前記非水電解液は
シクロヘキシルベンゼンを含有し、前記
シクロヘキシルベンゼンの含有量
が前記シクロヘキシルベンゼンを除いた前記非水電解液の溶媒の総量に対して3.0〜3.75質量%であり、かつ、体積比で前記外装体内の空間体積に対し3.0%以上4.5%以下であることを特徴とする。
【0013】
非水電解液に含有される過充電抑制剤量を、上記のように外装体内の空間体積に対して最適化することにより、低温で十分な出力特性が得られると共に、低温状態で電池が2段階の充電で過充電状態となっても信頼性を確保することができるようになる。なお、本発明における過充電抑制剤とは、電池が過充電状態となった場合にガスを発生し、外装体内部の圧力を上昇させることにより電流遮断機構を作動させ、更なる過充電を抑制するものである。
【0014】
非水電解液に含有される
シクロヘキシルベンゼンの量が体積比で電池外装体内の空間体積に対し3%未満であると、低温状態において過充電抑制剤の効果が低下し、電池が2段階の充電で過充電状態となった場合に電流遮断機構を即座に作動させることが困難となり、内部燃焼や破裂といった不具合事象が発生する虞がある。一方、非水電解液に含有される
シクロヘキシルベンゼンの量が体積比で電池外装体内の空間体積に対し4.5%を越えると、低温状態での出力特性が低下する。したがって、高い出力特性が求められる非水電解質二次電池、特に車載用非水電解質二次電池に適した非水電解質二次電池が得られない。
【0016】
本発明においては、前記非水電解質を構成する非水溶媒が、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。これにより電池特性に優れ且つ信頼性の高い非水電解質二次電池となる。
【0017】
本発明の非水電解質二次電池は、前記外装体内部の圧力が所定値よりも大きくなった場合に外装体内部のガスを外装体外部へ排出するガス排出弁を有しており、前記電流遮断機構は前記ガス排出弁よりも低い圧力で作動し、前記電流遮断機構は0.4MPa以上1.0MPa以下の圧力で作動することが好ましい。
【0018】
電流遮断機構の作動圧が0.4MPa以上であると、電池に振動や衝撃が加わったとしても、電流遮断機構が誤作動することを確実に防止できる。また、電流遮断機構の作動圧が1.0MPa以下であると、電流遮断機構が作動する前に内部燃焼や破裂といった不具合事象が発生することを確実に防止できる。従って、前記電流遮断機構は0.4MPa以上1.0MPa以下の圧力で作動することが好ましい。更に、非水電解質二次電池にガス排出弁が設けられていることにより、信頼性をより向上させることが可能となる。なお、電流遮断機構を正常に作動させるために、電流遮断機構の作動圧は、ガス排出弁の作動圧よりも低い値に設定する必要がある。
【0019】
本発明において、正極板は、正極活物質としてリチウムイオンの吸蔵・排出が可能なリチウム遷移金属複合酸化物を含有し、負極板は、負極活物質としてリチウムイオンの吸蔵・排出が可能な炭素材料を含有することが好ましい。
【0020】
リチウムイオンの吸蔵・排出可能なリチウム遷移金属複合酸化物としては、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi
1−xMn
xO
2(0<x<1))、リチウムニッケルコバルト複合酸化物LiNi
1−xCo
xO
2(0<x<1)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi
xMn
yCo
zO
2(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)等のリチウム遷移金属酸化物が挙げられる。また、上記のリチウム遷移金属複合酸化物にAl、Ti、Zr、Nb、B、Mg、またはMoなどを添加したものが使用できる。例えば、Li
1+aNi
xCo
yMn
zM
bO
2(M=Al、Ti、Zr、Nb、B、Mg、Moから選択される少なくとも一種の元素、0≦a≦0.2、0.2≦x≦0.5、0.2≦y≦0.5、0.2≦z≦0.4、0≦b≦0.02、a+b+x+y+z=1)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。
【0021】
リチウムイオンの吸蔵・排出可能な炭素材料としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、繊維状炭素、コークス、及びカーボンブラックなどが挙げられる。特に黒鉛を用いることが好ましい。
【0022】
本発明において、前記正極板及び前記負極板の少なくとも一方の表面には、無機酸化物と結着材からなる保護層が設けられており、前記無機酸化物がアルミナ、チタニア、及びジルコニアから選択される1種以上であることが好ましい。
【0023】
これにより、電極体内部に導電性の異物が混入した場合であっても、正極板と負極板間の短絡を防止できるため、より信頼性の高い非水電解質二次電池が得られる。
【0024】
本発明において、前記外装体は角形外装体であり、前記電極体は偏平形電極体であり、前記偏平形電極体は一方側の端部に複数枚積層された正極芯体露出部を有し、他方側の端部に複数枚積層された負極芯体露出部を有し、前記正極芯体露出部は前記角形外装体の一方側の側壁に対向し、前記負極芯体露出部が前記角形外装体の他方側の側壁に対向するように配置され、前記正極芯体露出部は正極集電体に接続され、前記負極芯体露出部は負極
集電体に接続されていることが好ましい。
【0025】
このような構成とすると、複数枚積層された芯体露出部に集電体が接続されているため、出力特性に優れた非水電解質電池となる。
【0026】
本発明の非水電解質二次電池の製造方法は、正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板の間に介在するセパレータを有する電極体を作製する工程と、
シクロヘキシルベンゼンを含有する非水電解液であって、前記シクロヘキシルベンゼンを除いた非水溶媒の総量に対して3.0〜3.75質量%の前記シクロヘキシルベンゼンを含有する非水電解液を調整する工程と、外装体の内部に前記電極体と
前記非水電解液を収納し、前記非水電解液に含有される前記
シクロヘキシルベンゼンの含有量を体積比で前記外装体内の空間体積に対し3.0%以上4.5%以下とする工程と、前記外装体を密閉する工程を有することを特徴とする。
【0027】
これにより、低温で十分な出力特性を有すると共に、低温状態で電池が2段階の充電で過充電状態となっても高い信頼性を有する非水電解質二次電池が得られる。
【0028】
また、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)等の車両に本発明の非水電解質二次電池を用いることにより、高性能且つ信頼性の備える車両となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための非水電解質二次電池の例を示すものであって、本発明をこの実施例に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0031】
まず、実施例及び比較例に係る非水電解質二次電池としての角形リチウムイオン二次電池10の構成について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1に示すように、角形リチウムイオン二次電池10は、角形の有底筒状の外装缶1内に、正極板と負極板とがセパレータを介して積層し巻回されて偏平形に成形された電極体2が外装缶1の缶軸方向に対し横向きに収納されており、封口板3により外装缶1の開口が封口されている。また、封口板3には、ガス排出弁4、電解液注液孔(図示省略)及び電解液注液孔を封止する封止材5が設けられている。ガス排出弁4は、電流遮断機構の作動圧よりも高いガス圧が加わったとき破断し、ガスが電池外部へ排出される。
【0032】
また、封口板3の外面には正極外部端子6と負極外部端子7とが形成されている。この正極外部端子6及び負極外部端子7は、リチウムイオン二次電池を単独で使用するか、直列接続ないし並列接続で使用するか等に応じて、その形状を適宜変更できる。また、正極外部端子6及び負極外部端子7に端子板やボルト形状の外部接続端子等(図示省略)などを取り付けて使用することもできる。
【0033】
次に、角形リチウムイオン二次電池10に設けられた電流遮断機構の構成を
図2及び
図3を用いて説明する。
図2及び
図3は、それぞれ正極側導電経路の分解斜視図、及び正極側導電経路の断面図である。電極体2の一方端面から突出した正極芯体露出部8の両外面に集電体9及び集電体受け部品11が接続されている。正極外部端子6は、筒部6aを備え、内部に貫通孔6bが形成されている。そして、正極外部端子6の筒部6aは、ガスケット12、封口板3、絶縁部材13及びカップ状の導電部材14にそれぞれ設けられた貫通孔に挿入され、正極外部端子6の先端部6cが加締められて一体に固定されている。
【0034】
また、導電部材14の筒状部の下端の周縁部には反転板15の周囲が溶接されており、この反転板15の中央部には、集電体9のタブ部9aに形成された薄肉部9bがレーザ溶接により溶接され溶接部19が形成されている。また、集電体9のタブ部9aに形成された薄肉部9bには、溶接部19の周囲に環状の溝9cが形成されている。集電体9のタブ部9aと反転板15の間には、貫通孔を有する樹脂製の絶縁部材16が配置されており、絶縁部材16の貫通孔を介して集電体9のタブ部9aと反転板15が接続されている。以上の構成により、正極芯体露出部8は、集電体9、集電体9のタブ部9a、反転板15及び導電部材14を介して正極外部端子6と電気的に接続されている。
【0035】
ここでは、反転板15、集電体9のタブ部9a、及び絶縁部材16が電流遮断機構を形成する。すなわち、反転板15は、外装缶1内の圧力が増加すると正極外部端子6の貫通孔6b側に変形するようになっており、反転板15の中央部には集電体9のタブ部9aの薄肉部9bが溶接されているため、外装缶1内の圧力が所定値を超えると集電体9のタブ部9aの薄肉部9bが環状の溝9cの部分で破断するため、反転板15と集電体9との間の電気的接続が遮断されるようになっている。なお、電流遮断機構としては、上述の構成のもの以外に、反転板15に溶接され、この溶接部の周囲を集電体に溶接した金属箔からなるものを使用し、外装缶1内部の圧力が高まって反転板15が変形したときに金属箔が破断する構成のものも採用することができる。また、集電体9のタブ部9aと反転板15との接続強度を調整し、外装缶1内の圧力が所定値を超えると、集電体9のタブ部9aと反転板15との接続部が破断するようにしてもよい。
【0036】
また、正極外部端子6に形成された貫通孔6bは、ゴム製の端子栓17により封止されている。更に、端子栓17の上部には、金属製の板材18がレーザ溶接によって正極外部端子6に溶接固定されている。
【0037】
なお、ここでは正極側の導電経路に電流遮断機構を設ける形態を説明したが、負極側の導電経路に電流遮断機構を設けるようにしてもよい。
【0038】
角形リチウムイオン二次電池10を完成させるには、正極外部端子6及び負極外部端子7にそれぞれ電気的に接続された電極体2を外装缶1内に挿入し、封口板3を外装缶1の開口に嵌合させて、この嵌合部分をレーザ溶接して封口する。そして、電解液注液孔(図示省略)から所定量の電解液を注入した後、電解液注液孔を封止材5によって封止すればよい。
【0039】
また、角形リチウムイオン二次電池10では、電流遮断機構の電池外側に対応する側の空間は完全に密閉されている。この電流遮断機構が作動した後、更に外装缶1内の圧力が増加すると、封口板3に設けられたガス排出弁4が開放されることにより、ガスが電池外部へと排出される。
【0040】
次に、角形リチウムイオン二次電池10の製造方法について、更に詳細に説明する。
【0041】
[正極板の作製]
Li
2CO
3と(Ni
0.35Co
0.35Mn
0.3)
3O
4とを、Liと(Ni
0.35Co
0.35Mn
0.3)とのモル比が1:1となるように混合した。次いで、この混合物を空気雰囲気中にて900℃で20時間焼成し、LiNi
0.35Co
0.35Mn
0.3O
2で表されるリチウム遷移金属酸化物を得て、正極活物質とした。以上のようにして得られた正極活物質、導電剤として薄片化黒鉛及びカーボンブラック、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とを、正極活物質:薄片化黒鉛:カーボンブラック:PVdFの質量比が88:7:2:3となるように混練し、正極スラリーを作製した。作製した正極スラリーを正極芯体としてアルミニウム合金箔(厚さ15μm)の両面に塗布した後、乾燥させてスラリー作製時に溶媒として使用したNMPを除去し正極活物質合剤層を形成した。その後、圧延ロールを用いて正極活物質層が所定の充填密度(2.61g/cc)になるまで圧延し、正極板の一方の端部に長手方向に沿って両面に正極活物質層が形成されない正極芯体露出部が形成されるように正極板を所定寸法に切断して正極板を作製した。なお、正極活物質層の充填密度は、2.0〜2.9g/cm
3とすることが好ましく、2.2〜2.8g/cm
3とすることがより好ましく、2.4〜2.8g/cm
3とすることが更に好ましい。
【0042】
[負極板の作製]
負極活物質としての天然黒鉛と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着剤としてのスチレン−ブタジエン−ラバー(SBR)を水と共に混練して負極スラリーを作製した。ここで、負極活物質:CMC:SBRの質量比は98:1:1となるように混合した。ついで、作製した負極スラリーを負極芯体としての銅箔(厚さが10μm)の両面に塗布した後、乾燥させてスラリー作製時に溶媒として使用した水を除去し負極活物質合剤層を形成した。その後、圧延ローラーを用いて負極活物質層が所定の充填密度(1.11g/cc)になるまで圧延した。なお、負極活物質層の充填密度は、0.9〜1.5g/cm
3とすることが好ましい。
【0043】
次に、負極活物質層表面に保護層を形成する。アルミナ粉末と、結着剤(アクリル系樹脂)と、溶剤としてNMPを重量比で30:0.9:69.1となるように混合し、ビーズミルにて混合分散処理を施し、保護層スラリーを作製した。このように作製した保護層スラリーを上述の方法で作製した負極板の負極合剤層上に塗布した後、溶剤として使用したNMPを乾燥除去して、負極表面にアルミナと結着剤からなる保護層を形成した。なお、上記アルミナと結着剤からなる保護層の厚みは3μmとした。その後、負極板の一方の端部に長手方向に沿って両面に負極活物質層が形成されない負極芯体露出部が形成されるように負極板を所定寸法に切断して、負極板を作製した。
【0044】
なお、上述の正極板及び負極板の充填密度は以下のようにして求めた。まず、電極板を10cm
2に切り出し、電極板10cm
2の質量A(g)、電極板の厚みC(cm)を測定する。次いで、芯体10cm
2の質量B(g)、及び芯体厚みD(cm)を測定する。そして、次の式から充填密度を求める。
充填密度=(A−B)/〔(C−D)×10cm
2〕
【0045】
[偏平形の電極体の作製]
上述のようにして作製した正極板及び負極板を用い、正極板及び負極板を、巻回軸方向の一方の端部に正極芯体露出部、他方の端部に負極芯体露出部がそれぞれ位置するように、ポリエチレン製の多孔質セパレータを介して巻回して円筒形の電極体を作製した。その後、円筒形の電極体を押し潰し、偏平形の電極体とした。
【0046】
[電解液の調製]
非水電解液の非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)30体積%及びエチルメチルカーボネート(EMC)30体積%及びジメチルカーボネート(DMC)40体積%よりなる混合溶媒に、電解質塩としてLiPF
6を1mol/Lとなるように添加して混合し、さらにシクロヘキシルベンゼンを混合溶媒に対して3.0〜3.75質量%添加混合して電解液を調製した。
【0047】
[導電経路の作製]
電流遮断機構を備えた正極側の導電経路の作製手順について説明する。まず、アルミニウム製の封口板3の上面にガスケット12を、封口板3の下面に絶縁部材13及びアルミニウム製の導電部材14をそれぞれ配置し、それぞれの部材に設けられた貫通孔にアルミニウム製の正極外部端子6の筒部6aを挿通させた。その後、正極外部端子6の先端部6cを加締めることにより、正極外部端子6、ガスケット12、封口板3、絶縁部材13、及び導電部材14を一体的に固定した。その後、正極外部端子6の先端部6cと導電部材14の接続部をレーザ溶接により接続した。
【0048】
次いで、カップ状の導電部材14の筒状部の下端の周縁部に反転板15の周囲を完全に密閉するように溶接した。なお、ここでは、反転板15としては薄いアルミニウム製の板を下部が突出するように成型処理したものを用いた。導電部材14と反転板15との間の溶接法としては、レーザ溶接法を用いた。
【0049】
反転板15に樹脂製の絶縁部材16を当接し、絶縁部材16と絶縁部材13とをラッチ固定した。次いで、アルミニウム製の集電体9のタブ部9aに設けた貫通孔9dに絶縁部材16の下面に設けた突出部(図示省略)を挿入した後、この突出部を加熱しながら拡径することにより、絶縁部材16と集電体9を固定した。そして、集電体9の溝9cで囲まれた領域と反転板15とをレーザ溶接法によって溶接した。その後、正極外部端子6の頂部より貫通孔6b内に所定圧力のN
2ガスを導入し、導電部材14と反転板15との間の溶接部の密封状態を検査した。
【0050】
その後、正極外部端子6の貫通孔6b内に端子栓17を挿入し、アルミニウム製の板材18をレーザ溶接によって正極外部端子6に溶接固定した。
【0051】
負極側の導電経路については、封口板3の上面にガスケットを配置し、封口板3の下面に絶縁部材及び負極集電体を配置し、それぞれの部材に形成された貫通孔に負極外部端子7の筒部を挿通させた。その後、負極外部端子7の先端部を加締めることにより、負極外部端子7、ガスケット、封口板3、絶縁部材、及び負極集電体を一体に固定した。その後、負極外部端子7の先端部と負極集電体の接続部をレーザ溶接により接続した。
【0052】
[角形リチウムイオン二次電池の作製]
上記の方法で封口板3に固定された正極集電体9及び正極集電体受け部品11を電極体
2の正極芯体露出部8の両外面に当接して抵抗溶接を行うことにより、正極集電体9、複数枚積層された正極芯体露出部8、及び正極集電体受け部品11を一体的に溶接接続した。また、上記の方法で封口板3に固定された負極集電体及び負極集電体受け部品を電極体2の負極芯体露出部の両外面に当接して抵抗溶接を行うことにより、負極集電体、複数枚積層された負極芯体露出部、及び負極集電体受け部品を一体的に溶接接続した。なお、積層された芯体露出部の枚数が多い場合は、積層された芯体露出部を二つに分割し、その間に金属製の中間部材を配置し、集電体、積層された芯体露出部、中間部材、積層された芯体露出部、及び集電体受け部材を一体的に抵抗溶接することが好ましい。この場合、一枚の金属部材を折り曲げ加工することにより、正極集電体9と正極集電体受け部品11とが一体的に形成された部材とすることがより好ましい。
【0053】
その後、電極体2の外周を絶縁シート(図示省略)で被覆してから、電極体2を絶縁シートと共にアルミニウム製の角形の外装缶1内に挿入し、封口板3を外装缶1の開口部に嵌合させた。そして、封口板3と外装缶1との嵌合部をレーザ溶接した。
【0054】
[実施例1]
上述のようにして調製した非水電解液を、外装体内部に存在するシクロヘキシルベンゼンの量が体積比で外装体内の空間体積に対し3.4%となるように封口体に設けられた注液孔より注入し、その後注液孔をブラインドリベットにより封止し実施例1の非水電解質二次電池を作製した。ここで、外装体内の空間体積を63ccとし、電流遮断機構の作動圧を0.7MPaに設定した。
【0055】
[実施例2]
上述のようにして調製した非水電解液を、外装体内部に存在するシクロヘキシルベンゼンの量が体積比で外装体内の空間体積に対し3.6%となるように注入したこと以外は実施例1と同様の方法で実施例2の非水電解質二次電池を作製した。
【0056】
[比較例1]
上述のようにして調製した非水電解液を、外装体内部に存在するシクロヘキシルベンゼンの量が体積比で外装体内の空間体積に対し2.9%となるように注入したこと以外は実施例1と同様の方法で比較例1の非水電解質二次電池を作製した。
【0057】
[実施例3]
外装体内の空間体積を176ccとし、上述のようにして調製した非水電解液を、外装体内部に存在するシクロヘキシルベンゼンの量が体積比で外装体内の空間体積に対し3.6%となるように注入し、電流遮断機構作動圧を0.61MPaに設定したこと以外は実施例1と同様の方法で実施例3の非水電解質二次電池を作製した。
【0058】
[実施例4]
上述のようにして調製した非水電解液を、外装体内部に存在する電解液中のシクロヘキシルベンゼンの量が体積比で外装体内の空間体積に対し3.8%となるように注入したこと以外は実施例3と同様の方法で実施例4の非水電解質二次電池を作製した。
【0059】
[比較例2]
上述のようにして調製した非水電解液を、外装体内部に存在する電解液中のシクロヘキシルベンゼンの量が体積比で外装体内の空間体積に対し4.8%となるように注入したこと以外は実施例3と同様の方法で比較例2の非水電解質二次電池を作製した。
【0060】
なお、実施例1〜4、比較例1及び比較例2における外装体内の空間体積に対する過充電抑制剤としてのシクロヘキシルベンゼンの量は次の方法により算出した。
[外装体内の空間体積の算出方法]
外装体内の空間体積は、外装体と封口板とにより形成される密閉空間の容積から電極体等の上記密閉空間に収容される構成材料の実質体積を減じることにより算出する。電極体以外の構成材料としては、集電体、絶縁部材、絶縁シート、電流遮断機構を構成する部材等がある。ここで、電極体等の実質体積とは、正負電極やセパレータ等の空隙体積は含まないものとする。また、外装体内に存在する非水電解液の体積も含まないものとする。
[外装体内の空間体積に対する過充電抑制剤量の体積比の算出方法]
注液した非水電解液に含有されるシクロヘキシルベンゼンの体積を、上述の方法で求めた外装体内の空間体積で除して、百分比率で算出した。なお、体積算出は、いずれも、25℃、1気圧(101325Pa)条件のものである。
【0061】
実施例1、実施例2、及び比較例1の非水電解質二次電池について、以下の測定を行った。なお、実施例1、実施例2及び比較例1の非水電解質二次電池の電池容量は、5Ahである。
[常温出力特性の測定]
常温出力は25℃の室温下において、5Aの充電電流で充電深度50%になるまで充電した状態で、25A、50A、90A、120A、150A、180A及び210Aの電流で10秒間放電を行い、それぞれの電池電圧を測定し、各電流値と電池電圧とをプロットして放電時におけるI−V特性から算出した。なお、放電によりずれた充電深度は5Aの定電流で充電することにより元の充電深度に戻した。
[低温出力特性の測定]
低温出力は−30℃の低温下において、5Aの充電電流で充電深度50%になるまで充電した状態で、8A、16A、24A、32A、40A及び48Aの電流で10秒間放電を行い、それぞれの電池電圧を測定し、各電流値と電池電圧とをプロットして放電時におけるI−V特性から算出した。なお、放電によりずれた充電深度は5Aの定電流で充電することにより元の充電深度に戻した。
[低温過充電試験条件]
低温過充電試験は、5℃の環境下で、20Aで充電深度が170%になるまで充電し、その後125Aで30Vに到達するまで充電を行い、その後は30V定電圧で充電を行った。
【0062】
実施例3、実施例4及び比較例2の非水電解質二次電池について、以下の測定を行った。なお、実施例3、実施例4及び比較例2の非水電解質二次電池の電池容量は、21.5Ahである。
[常温出力特性の測定]
常温出力は25℃の室温下において、21.5Aの充電電流で充電深度50%になるまで充電した状態で、40A、80A、120A、160A、200A及び240Aの電流で10秒間放電を行い、それぞれの電池電圧を測定し、各電流値と電池電圧とをプロットして放電時におけるI−V特性から算出した。なお、放電によりずれた充電深度は21.5Aの定電流で充電することにより元の充電深度に戻した。
[低温出力特性の測定]
低温出力は−30℃の低温下において、21.5Aの充電電流で充電深度50%になるまで充電した状態で、20A、40A、60A、80A、100A及び120Aの電流で10秒間放電を行い、それぞれの電池電圧を測定し、各電流値と電池電圧とをプロットして放電時におけるI−V特性から算出した。なお、放電によりずれた充電深度は21.5Aの定電流で充電することにより元の充電深度に戻した。
[低温過充電試験条件]
低温過充電試験は、5℃の環境下で、20Aで充電深度が145%になるまで充電し、その後125Aで30Vに到達するまで充電を行い、その後は30V定電圧で充電を行った。
【0063】
[試験結果]
実施例1〜4、比較例1、及び比較例2についての各試験結果を、外装体内の空間体積、非水電解液に含有されるシクロヘキシルベンゼンの量、外装体内の空間体積に対するシクロヘキシルベンゼンの量、及び電流遮断機構の作動圧と共に表1及び表2に示す。なお表1における常温出力及び低温出力は、実施例1の非水電解質二次電池の値を100%とした場合の値である。また、表2における常温出力及び低温出力は、実施例3の非水電解質二次電池の値を100%した場合の値である。
【0066】
表1及び表2から分かるように、非水電解液に含有される過充電抑制剤としてのシクロヘキシルベンゼンの量が、体積比で外装体内の空間体積に対し3.0%よりも少ない比較例1では、過充電時の電池内部圧力が十分に上昇せず、電流遮断機構が短時間に作動しないため、内部燃焼等の不具合事象が発生した。一方、非水電解液に含有される過充電抑制剤としてのシクロヘキシルベンゼンの量が、体積比で外装体内の空間体積に対し4.5%よりも多い比較例2では、過充電時の電池内部圧力を短時間で上昇させることが可能であり、電流遮断機構を即座に作動させ安全を確保できるものの、出力特性、特に、低温での出力特性が大きく低下した。これに対して、実施例1〜4では、低温状態においても十分な出力特性を有すると共に、低温状態で2段階の充電で電池が過充電状態となっても信頼性を確保することができた。したがって、非水電解液に含有される過充電抑制剤の量は、体積比で外装体内の空間体積に対して3%以上4.5%以下とすることが好ましいことが分かる。なお、2段目の充電では、比較例1に示すように本来電流遮断機構が作動するような過充電状態になっているにもかかわらず電流遮断機構の作動が遅れる傾向にある。これは、2段目の充電において、電池内圧の上昇よりも先に正極の崩壊が始まり易くなるため、また電圧がさらに上昇することにより電解液の分解が始まり易くなるためと考えられる。
【0067】
また、本発明では、所定の温度(例えば−30℃〜60℃、典型的には5℃)条件の下、所定の電流レート(例えば5A〜125A、典型的には20A。Cレートでは例えば1C〜25C、典型的には4C)で4.7Vに到達するまで1段目の充電を行った後、所定の電流レート(例えば100A〜125A、典型的には125A。Cレートでは例えば20C〜25C、典型的には25C)でさらに2段目の充電を行ったときに、1段目の充電開始から1200秒以内(好ましくは1000秒以内、典型的には750秒以内)に電流遮断機構の作動圧(例えば、0.4〜1.0MPa、典型的には0.65MPa〜0.75MPa)まで電池ケースの内圧を上昇させるように、過充電抑制
剤の量を調整することが好ましい。
【0068】
以上より、本発明によると、低温状態において十分な出力特性を有すると共に、低温状態で電池が2段階の充電で過充電状態となっても信頼性を確保することができ、優れた出力特性及び高い信頼性が求められる車載用非水電解質二次電池に適した非水電解質二次電池が得られる。但し、本発明の非水電解質二次電池は、車載用非水電解質二次電池に限定されるものではなく、優れた出力特性が求められる大型蓄電システム用の非水電解質二次電池にも好適に適用できる。
【0069】
<その他>
なお、電流遮断機構の作動圧は、活物質の種類、電池容量、電池エネルギー密度、電池の用途により適宜調整するため、特に限定されないが、0.4〜1.5MPa程度に設定することが好ましい。また、電流遮断機構は、非復帰式、復帰式のいずれであってもよいが、非復帰式の方が好ましい。
【0070】
本発明の非水電解質二次電池では、非水電解質を構成する非水溶媒(有機溶媒)としては、非水電解質二次電池において一般的に使用されているカーボネート類、ラクトン類、エーテル類、エステル類などを使用することができ、これら溶媒の2種類以上を混合して用いることもできる。これらの中ではカーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好ましく、カーボネート類がさらに好適に用いられる。
【0071】
例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを用いることができる。特に、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を用いることが好ましい。また、ビニレンカーボネート(VC)などの不飽和環状炭酸エステルを非水電解質に添加することもできる。なお、非水溶媒には、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネート及びジメチルカーボネートの少なくとも一方を含有させることがより好ましい。
【0072】
本発明における非水電解質の溶質としては、非水電解質二次電池において一般に溶質として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC(C
2F
5SO
2)
3、LiAsF
6、LiClO
4、Li
2B
10Cl
10、Li
2B
12Cl
12、LiB(C
2O
4)
2、LiB(C
2O
4)F
2、LiP(C
2O
4)
3、LiP(C
2O
4)
2F
2、LiP(C
2O
4)F
4など及びそれらの混合物が例示される。これらの中でも、LiPF
6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)が好ましく用いられる。前記非水溶媒に対する溶質の溶解量は、0.5〜2.0mol/Lとするのが好ましい。
【0073】
本発明の非水電解質二次電池では、過充電抑制剤としてクメン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、1−メチルプロピルベンゼン、1,3−ビス(1−メチルプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(1−メチルプロピル)ベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-ジブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、t-ジアミルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シクロペンチルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテルなど、過充電時に分解反応を開始してガスを発生するものを用いることができる。特にシクロヘキシルベンゼンを用いることが好ましい。
【0074】
本発明の非水電解質二次電池では、セパレータとしてポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PP)などのポリオレフィン製の多孔質セパレータを用いることが好ましい。また、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の3層構造(PP/PE/PP、あるいはPE/PP/PE)を有するセパレータを用いることもできる。
【0075】
本発明は、5Ah以上の大容量の非水電解質二次電池、特に20Ah以上の大容量の非水電解質二次電池に適用した場合に特に効果的である。また、この非水電解質二次電池は、大電流充放電が可能であり、しかも過充電時の信頼性も優れているため、EV、PHEV、HEV等の車両用の電池として最適である。