(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術によれば、タイヤの回転角速度から車両の旋回半径を算出して物体の検出領域を決定するので、自車両が搬送路の直線部を走行している間や、曲線部内で自車両が定常旋回状態となっている間については、誤検知の問題は生じない。しかし、鉱山の搬送路のように一方の路側に屹立した壁面がある場合、直線部から曲線部に差し掛かるまでの間において、自車両の前方を正確に把握することができなくなる。
【0008】
直線部から曲線部に差し掛かるまでの間は、自車両のタイヤの回転角速度は、まだ直線部と同じであるため、直線部に応じた物体の検出領域が適用されるのに対して、前方の搬送路は曲線部のため、路側の屹立した壁面を誤検知してしまうからである。この結果、例えば他車両との車間距離が十分あるにも関わらず車速を遅くしてしまい、搬送効率を低下させてしまう虞があった。
【0009】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、自車両前方の走行路状況を正確に把握し、特に直線路から曲線路に差し掛かる状況においても、距離検出手段による路側障害物の誤検知を防止して、安定した車速制御を可能とする鉱山用車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、鉱山の搬送路を走行する
車体と、前記搬送路における前記
車体の前方にある物体との距離及び相対速度を検出する距離検出手段とを有する鉱山用車両において、前記搬送路の
うちの曲線路の形状に基づき、
予め決定される最小路側距離を記憶する最小路側距離決定手段と、前記車
体の状態量を検出する状態量センサと、前記状態量センサが検出した前記車
体の状態量に基づき、前記車
体が前記搬送路のうちの曲線路へ進入する直前までの直進状態か前記曲線路における旋回状態かの走行状態
を算出し、旋回状態のときには旋回半径を算出する走行状態算出手段と、算出された前記旋回半径に基づき、前記車
体と前記搬送路の路側までの
路側距離であって、前記最小路側距離よりも大きい旋回時の路側距離を算出する路側距離算出手段と、算出された前記車
体の走行状態に基づき、直進状態であれば前記最小路側距離を選択出力し、旋回状態であれば前記路側距離算出手段で算出した
旋回時の路側距離を選択出力する路側距離選択手段と、前記距離検出手段で検出した前記車
体の前方にある物体との距離及び相対速度の信号について、前記路側距離選択手段の選択出力した距離以遠の信号を無効とする検出距離制限手段と、前記検出距離制限手段からの
無効にされなかった信号に基づいて、前記車
体の車速制御を行なう車速制御手段とを備えたものとする。
【0011】
また、第2の発明は、鉱山の搬送路を走行する
車体と、前記搬送路における前記
車体の前方にある物体との距離及び相対速度を検出する距離検出手段とを有する鉱山用車両において、前記搬送路の
うちの曲線路の形状に基づき、
予め決定される最小路側距離を記憶する最小路側距離決定手段と、前記車
体の状態量を検出する状態量センサと、前記状態量センサが検出した前記車
体の状態量に基づき、前記車
体が前記搬送路のうちの曲線路へ進入する直前までの直進状態か前記曲線路における旋回状態かの走行状態
を算出し、旋回状態のときには旋回半径を算出する走行状態算出手段と、算出された前記旋回半径に基づき、前記車
体と前記搬送路の路側までの
路側距離であって、前記最小路側距離よりも大きい旋回時の路側距離を算出する路側距離算出手段と、算出された前記車
体の走行状態に基づき、直進状態であれば前記最小路側距離を選択出力し、旋回状態であれば前記路側距離算出手段で算出した
、旋回時の路側距離を選択出力する路側距離選択手段と、前記距離検出手段で検出した前記車
体の前方にある物体との相対速度と、前記状態量センサが検出した前記車
体の速度とから、前記車
体の前方にある物体が静止物体か否かを判定する物体状態判定手段と、前記距離検出手段で検出した前記車
体の前方にある物体との距離及び相対速度の信号について、前記物体状態判定手段の判定結果と前記車
体の走行状態とに基づき、前記路側距離選択手段の選択出力した距離以遠の信号を無効とする検出距離制限手段と、前記検出距離制限手段からの
無効にされなかった信号に基づいて、前記車
体の車速制御を行なう車速制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
更に、第3の発明は、第2の発明において、前記検出距離制限手段は、前記物体状態判定手段が前記車
体の前方にある物体を静止物体であると判定する、又は、前記走行状態算出手段が走行状態を旋回状態と判定する場合に、前記距離検出手段で検出した前記車
体の前方にある物体との距離及び相対速度の信号について、前記路側距離選択手段の選択出力した距離以遠の信号を無効とすることを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明は、第2または第3の発明において、前記最小路側距離決定手段は、前記搬送路の形状に基づき算出した最小路側距離を最小路側距離初期値として記憶すると共に、前記車
体の走行状態が直進状態で、前記車
体の前方に静止物体が検出されたときには、前記静止物体までの距離を新たな最小路側距離として更新し、その後、前記車
体の走行状態が旋回状態になるまでの期間、前記車
体の速度から算出される前記車
体の走行距離分を逐次減算して更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送路形状と車両の走行状態とに基づいて検出距離制限を行うので、自車両前方の走行路状況を正確に把握できると共に、路側障害物の誤検知を防止できる。この結果、安定した車速制御が可能な鉱山用車両を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、鉱山用車両として、露天の採掘場、鉱山等で採掘した砕石や鉱物等を運搬する大型の運搬車両であるダンプトラックを例にとって本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本発明は、鉱山用車両全般に適用が可能であり、本発明の適用はダンプトラックに限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の鉱山用車両の第1の実施の形態を示す側面図である。
図1に示すダンプトラック(車両)1は、頑丈なフレーム構造で形成された車体2と、車体2上に起伏可能に搭載されたベッセル(荷台)3と、車体2に装着された前輪4A及び後輪4Bを主に備えている。
【0018】
車体2には、後輪4Bを駆動するエンジン(図示せず)が配設されている。エンジンは、例えば、エンジン制御装置(以下ECUという)を有し、ECUからの指令信号によって、供給される燃料流量が制御されることで、その回転数が制御されている。後述する制御装置100(
図3参照)は、車速指令信号をECUに出力することで、車両1の速度を制御する。
【0019】
ベッセル3は、砕石物等の荷物を積載するために設けられた容器であり、ピン結合部5等を介して車体2に対して起伏可能に連結されている。ベッセル3の下部には、車両の幅方向に所定の間隔を介して2つの起伏シリンダ6が設置されている。起伏シリンダ6に圧油が供給・排出されると、起伏シリンダ6が伸長・縮短してベッセル3が起伏される。また、ベッセル3の前側上部には庇部7が設けられている。
【0020】
庇部7は、その下側(すなわち車体2の前部)に設置された運転室8を岩石等の飛散物から保護するとともに、車両転倒時等に運転室8を保護する機能を有している。運転室8の内部には、制御装置100(
図3参照)と、操舵用のハンドル(図示せず)と、アクセルペダル及びブレーキペダル等(図示せず)とが設置されている。
【0021】
操舵用のハンドルには、ハンドルの操舵角を検出する操舵角センサ21(
図3参照)が設けられている。また、後輪4Bには、車輪速度を検出する車輪速センサ24(
図3参照)が設けられている。さらに、車体2には、車体加速度を検出する加速度センサ22(
図3参照)と,車体のヨーレートを検出するヨーレートセンサ23(
図3参照)とが設けられている。
【0022】
また、車体2の前側面には、後述する距離検出手段101(
図3参照)の発信部101A,受信部101B(
図3参照)が設けられている。
【0023】
図2は、本発明の鉱山用車両の第1の実施の形態が鉱山の搬送路を走行する状態を示す斜視図である。
図2における鉱山の搬送路は、例えば、豪州の鉄鉱石鉱床のように、急傾斜な層状の赤鉄鉱鉱床が地下深部まで連続している場所で適用されるベンチカット露天採掘法の場合を示している。
図2に示すように、搬送路9の一方の路側には、屹立した壁面10が形成され、他方の路側には、断崖状の壁面11が形成されている。搬送路9には、一般道路のようなセンターライン等の白線は設けられていない。また、一般的に、搬送路9における直線部と曲線部の距離や旋回半径等は、例えば、鉱山地図などで、予め把握できる。
【0024】
図2において、ダンプトラック1は、鉱山の上部等に設けられた集積場所で鉱石等をベッセル3から搬出し、鉱山の底部等の鉱床に設けられた採掘場所へ向かう場合であって、搬送路9の直線部から曲線部に差し掛かかる状態を示している。本実施の形態においては、このような場合であっても、前方の屹立した壁面10を誤検知せず、安定した車速制御を可能とすることを目的としている。
【0025】
図3は本発明の鉱山用車両の第1の実施の形態を構成する制御装置の構成を示す制御ブロック図である。
図3において、制御装置100は、検出距離制限手段102と、走行状態算出手段104と、最小路側距離決定手段105と、路側距離算出手段106と、路側距離選択手段107と、車速制御手段108とを備えている。また、制御装置100には、操舵角センサ21が検出したハンドルの操舵角信号と、ECUで算出した車両速度信号と、加速度センサ22が検出した車両加速度信号と、ヨーレートセンサ23が検出したヨーレート信号と、車輪速センサ24が検出した車輪速度信号とが入力されている。さらに、制御装置100からは、ECUへ車両速度を制御する車速指令信号が出力されている。操舵角センサ21、加速度センサ22、ヨーレートセンサ23、車輪速センサ24は、ダンプトラック1の状態量を検出するセンサとして機能している。
【0026】
距離検出手段101は、ミリ波やレーザ光等の電波又は光を車両1の前方の検知範囲に照射する発信部101Aと、車両1の前方の物体に当たって反射した電波又は光を検知する受信部101Bと、受信部と発信部とにおける電波又は光から車両1の前方の物体との距離及び相対速度を算出する演算部とを備えている。距離検出手段101で算出された車両1の前方の物体との距離及び相対速度の信号は、検出距離制限手段102に出力されている。
【0027】
検出距離制限手段102は、詳細は後述するが、前記距離検出手段101からの車両1の前方の物体との距離及び相対速度の信号と、路側距離選択手段107からの距離信号とを入力し、路側距離選択手段107からの距離信号より遠距離における車両1の前方物体との距離及び相対速度の信号は出力制限するものである。検出距離制限手段102で出力制限された信号は、車速制御手段108に出力されている。
【0028】
車速制御手段108は、検出距離制限手段102からの車両1の前方の物体との距離及び相対速度の信号に基づき車速制御を行うものである。車速制御手段108は、ECUへ車速指令信号を出力し、車両1の制駆動トルクを制御することで、車速を所望の速度へと制御する。具体的には自車両の前方を走行する他車両との車間距離を一定に保つように速度制御を行なう先行車追従制御などが挙げられる。
【0029】
走行状態算出手段104は、操舵角センサ21が検出したハンドルの操舵角信号と、ECUで算出した車両速度信号と、加速度センサ22が検出した車両加速度信号と、ヨーレートセンサ23が検出したヨーレート信号と、車輪速センサ24が検出した車輪速度信号とが入力され、これらの車両状態量信号に基づき、車両1の挙動を予測することで、車両1が直進状態か旋回状態かの走行状態と、旋回状態の場合の旋回半径とを算出する。走行状態算出手段104で算出した走行状態の信号は路側距離選択手段107に出力され、旋回半径の信号は、路側距離算出手段106に出力されている。
【0030】
なお、走行状態算出手段104の入力信号としては、上述したセンサ類の情報全てを用いる必要はなく、またその種類についても上述したものに限定するものではない。
【0031】
また、旋回の状態を算出する方法としては、簡単には操舵角センサ21による前輪舵角により決定しても良いし、車輪速センサ24による旋回内外輪の回転数差と車両のホイールベース(左右輪間の距離)から車両1の旋回半径を算出しても良い。車両旋回運動モデルを用いて、加速度やヨーレートの情報から車両1の旋回状態量を推定しても良い。
【0032】
最小路側距離決定手段105は、鉱山内の地図などから予め得られる搬送路形状に基づいて決定される最小路側距離を記憶し、この最小路側距離信号を路側距離選択手段107へ出力する。
【0033】
最小路側距離の算出方法について
図4を用いて説明する。
図4は本発明の鉱山用車両の第1の実施の形態における最小路側距離の算出方法を説明する搬送路の模式図である。
図4は、例えば、
図2に示す鉱山の搬送路9を走行する鉱山用車両1を上面視した状態を示している。
図4において、路側距離とは、搬送路9の曲線路において自車両1と自車両1の前方の路側である例えば壁面10までの距離202をいう。最小路側距離とは、鉱山全体の搬送路9において、最も小さい路側距離202をいう。
図4において、Oは、搬送路9の曲線区間の旋回中心点を、204は、旋回中心点Oから鉱山用車両1までの距離を、203は、旋回中心点Oから自車両1の前方の路側である例えば壁面10までの距離を、wは、搬送路9の路幅を、rは、搬送路9の曲線区間の旋回半径をそれぞれ示す。
【0034】
ここでは、説明を簡便化するため、搬送路9の曲線区間が一定の旋回半径rとなる円弧であると仮定する。路側距離202の長さLは、直角三角形の3辺の長さ202,203,204の関係から次式(1)で表すことができる。
L=√(rw+w
2/4) (1)
この結果、鉱山内の搬送路9の形状から、路幅wと旋回半径rとが最も小さい曲線路を抽出すれば、(1)式から最小路側距離を算出することができる。
【0035】
図3に戻って、路側距離算出手段106は、走行状態算出手段104で算出した旋回半径を入力し、式(1)を用いて、リアルタイムにおける路側距離を算出する。搬送路9の路幅wは一つの鉱山内で大きく変動しないのが一般的であるので、路幅wを一定値とすれば、路側距離の長さLは旋回半径rの関数である。すなわち走行状態算出手段104で算出した旋回半径rから、車両1の走行状態における路側距離の長さLが算出できる。路側距離算出手段106で算出した車両1の走行状態における路側距離の信号は、路側距離選択手段107に出力されている。
【0036】
路側距離選択手段107は、走行状態算出手段104で算出した車両1の走行状態の信号に基づき、検出距離制限手段102へ出力する制限距離信号を選択する。具体的には、車両1が直進状態であれば、最小路側距離決定手段105で決定される最小路側距離を選択し、車両1が旋回状態であれば、走行状態算出手段104で算出した旋回半径rを基に路側距離算出手段106で算出される路側距離を選択する。路側距離選択手段107で選択された路側距離の信号は、検出距離制限手段102へ出力されている。
【0037】
検出距離制限手段102には、車両1が直進状態であれば、最小路側距離が入力され、車両1が旋回状態であれば、車両1の走行状態における路側距離が入力されるので、これらの距離信号より遠距離における車両1の前方物体との距離及び相対速度の信号は、車速制御手段108に出力されず、無効とされる。
【0038】
このため、車両1の走行中において、直進状態であれば鉱山内の地図などから予め得られる搬送路形状に基づいて決定される最小路側距離より内側にある物体が、障害物として検出される。また、旋回状態であれば車両1の旋回半径から算出される路側距離より内側にある物体が、障害物として検出される。そして、この物体検出情報を、衝突回避支援などの車速制御に利用する。このような制御方法を採用することで、搬送路9の路側にある物体(例えば、前方の屹立した壁面10)を障害物と認識する誤検知を防止することができる。このことにより、安定した車速制御が可能な鉱山用車両を提供することができる。
【0039】
上述した本発明の鉱山用車両の第1の実施の形態によれば、搬送路9の形状と車両1の走行状態とに基づいて検出距離制限を行うので、自車両前方の走行路状況を正確に把握できると共に、路側障害物の誤検知を防止できる。この結果、安定した車速制御が可能な鉱山用車両1を提供できる。
【実施例2】
【0040】
以下、本発明の鉱山用車両の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。
図5は本発明の鉱山用車両の第2の実施の形態を構成する制御装置の構成を示す制御ブロック図である。
図5において、
図1乃至
図4に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0041】
図5に示す本発明の鉱山用車両の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。
第1の実施の形態における制御装置100の構成に加えて、物体状態判定手段103を備えている。このことにより、検出した物体が静止物体であるか否かを判定できるようにしている。
【0042】
物体状態判定手段103は、距離検出手段101で算出された車両1の前方の物体との相対速度の信号と、ECUで算出した車両速度信号とを入力し、これらの信号から、車両1の前方の検出物体が静止物体か否かを判定する。距離検出手段101はミリ波やレーザ光を検知範囲に照射し、物体に当たって反射した電波や光を検出することでその飛行時間や位相差を計測し、前方にある物体との距離及び相対速度を正確に検出することができる。車両1の前方の物体の相対速度と自車速度とを比較し、車両1の前方の物体の接近速度と自車速度が等しい場合はその検出物体は静止物体であると判定できる。物体状態判定手段103は、車両1の前方の物体が静止物体であるか否かの判定信号を検出距離制限手段102に出力する。
【0043】
ここで、鉱山環境において移動物体であることは他車両であることを意味し、さらに、物体の接近速度と自車速度との差分の符号によって、自車両に向かって走行している車両(すなわち搬送路9における対向車両)か、自車両と同じ向きに走行している車両(すなわち搬送路9における先行車両)かについても判定可能となる。
【0044】
すなわち、物体状態判定手段103が出力する判定信号としては、物体状態として例えば上述の静止物体か移動物体かというだけでなく、静止物体か先行車両か対向車両かという判定も可能になる。このことにより、検出物体が、路側の壁面10等か先行車両かといった判断に基づき、障害物の種類ごとに適切な検出距離制限が可能になるというメリットがある。
【0045】
上述した本発明の鉱山用車両の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0046】
また、上述した本発明の鉱山用車両の第2の実施の形態によれば、車両1の前方の物体を、路側の壁面10等か先行車両か判断できるので、障害物の種類ごとに適切な検出距離制限をすることが可能となる。この結果、より安定した車速制御が可能となる。
【実施例3】
【0047】
以下、本発明の鉱山用車両の第3の実施の形態を図面を用いて説明する。
図6は本発明の鉱山用車両の第3の実施の形態を構成する制御装置の構成を示す制御ブロック図、
図7は本発明の鉱山用車両の第3の実施の形態を構成する制御装置の処理内容を示すフロー図である。
図6及び
図7において、
図1乃至
図5に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0048】
図6に示す本発明の鉱山用車両の第3の実施の形態は、大略第2の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。
第2の実施の形態における制御装置100の構成において、走行状態算出手段104で算出した車両1の走行状態の信号を検出距離制限手段102に入力している。このことにより、検出距離制限手段102は、検出した物体が静止物体である、または車両1の走行状態が旋回状態である場合に、検出距離を制限し、車両1の直進状態における移動物体の検出においては制限を設けないようにしている。
【0049】
図7を用いて、本実施の形態の処理内容の手順を説明する。ここで鉱山用車両1の制御装置100は決められた処理周期毎に
図7の処理を実行するものとする。
【0050】
まず制御装置100は、車両1の前方の物体の距離計測を行う(ステップS401)。具体的には、車両前方に設けられたレーダ装置等の距離検出手段101により、車両1の前方の障害物を検出する。ここでは、一般のレーダ装置において可能なように、障害物の距離に加えて車両1との相対速度も計測できるものとする。
【0051】
制御装置100は、車両1の走行状態を判定する(ステップS402)。具体的には、走行状態算出手段104において、車両1の旋回状態等の走行状態を判定する。
【0052】
制御装置100は、車両1が旋回状態か否かを判定する(ステップS403)。車両1が旋回状態であれば、(ステップS405)へ進み、車両1が旋回状態でなければ、(ステップS404)へ進む。
【0053】
制御装置100は、最小路側距離を決定する(ステップS404)。具体的には、最小路側距離決定手段105において、決定される最小路側距離が、路側距離選択手段107から出力される。すなわち、直進状態から曲線路へと
進入する瞬間に取り得る最小の路側距離を元にした検出距離制限値が決定される。
【0054】
一方、(ステップS403)で車両1が旋回状態と判定された場合、制御装置100は、旋回半径を算出する(ステップS405)。具体的には、走行状態算出手段104において、旋回半径が算出される。
【0055】
制御装置100は、路側距離を算出する(ステップS406)。具体的には、路側距離算出手段106において、(ステップS403)で算出した旋回半径を基に車両1の走行状態における路側距離を算出し、路側距離選択手段107から出力される。このように、(ステップS403)で判定した旋回状態か否かに基づき、適切な路側距離が決定される。
【0056】
制御装置100は、算出結果を制限距離に代入する(ステップS407)。具体的には、検出距離制限手段102に路側距離選択手段107からの選択された路側距離が入力され、保存される。
【0057】
制御装置100は、車両1が旋回状態または車両1の前方の障害物が静止物か否かを判定する(ステップS408)。具体的には、物体状態判定手段103において判定された車両1の前方の検出物体が静止物体か否かの判定信号と、走行状態算出手段104で算出した走行状態の信号と基づき、車両1が旋回状態、または車両1の前方の検出物体が静止物体であれば、(ステップS409)へ進み、車両1が直進状態、かつ車両1の前方の検出物体が移動物体であれば、(ステップS410)へ進む。
【0058】
制御装置100は、物体距離に応じた車速制御を行う(ステップS410)。具体的には、車速制御手段108が、検出距離制限手段102における検出距離を制限しない制御を行う。距離に応じた車速制御とは、例えば、先行する物体までの距離すなわち車間距離を一定に保つ車間距離制御であるとか、走行経路前方の物体への衝突を防止するために緊急回避制動を行う衝突防止制御などが含まれる。
【0059】
一方、(ステップS408)で車両1が旋回状態、または車両1の前方の検出物体が静止物体と判定された場合、制御装置100は、車両1の前方の検出物体までの距離が(ステップS408)で保存された制限距離以上か否かを判定する(ステップS409)。具体的には、検出距離制限手段102において、距離
検出手段101にて検出された車両1の前方の検出物体までの距離と(ステップS408)で保存された制限距離とを比較する。車両1の前方の検出物体までの距離が(ステップS408)で保存された制限距離以上であれば、リターンに進み、物体検出情報はクリアされるとともに本処理手順を終了する。
【0060】
一方、車両1の前方の検出物体までの距離が(ステップS408)で保存された制限距離未満であれば、(ステップS410)へ進む。この場合、制御装置100は、上述した物体距離に応じた車速制御を行うが、これは、車両1が旋回状態、または車両1の前方の検出物体が静止物体であって、車両1の前方の検出物体までの距離が、制限距離未満の場合のみ、検出距離を採用して物体距離に応じた車速制御を行うものである。
【0061】
制御装置100は、上述した処理を実行するので、本実施の形態によれば、車両1が直進状態で走行する場合、路側の壁面10などの静止物に関しては、鉱山内の地図などから予め得られる搬送路9の形状に基づいて決定される最小路側距離より内側にあるときに障害物として検出される。また、先行車など移動物に関しては、全ての物体が障害物として検出される。検出された物体検出情報は、衝突回避支援などの車速制御に利用される。
【0062】
一方、車両1が旋回状態で走行する場合、車両1の旋回半径から算出される路側距離より内側にある物体が障害物として検出され、その物体検出情報が衝突回避支援などの車速制御に利用される。
【0063】
上述した本発明の鉱山用車両の第3の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0064】
また、上述した本発明の鉱山用車両の第3の実施の形態によれば、車両1が、直線路から曲線路へと進入する直前や、曲線路を旋回中のいずれの場合であっても、搬送路9の路側にある静止物体を障害物としてしまう誤検知を適切に防止することができる。また、直進中の先行車などの移動物体に関しては、レーダ装置などの距離検出手段101の距離検出性能を損なうことなく、最大検出可能距離からの車速制御が可能になる。
【実施例4】
【0065】
以下、本発明の鉱山用車両の第4の実施の形態を図面を用いて説明する。
図8は本発明の鉱山用車両の第4の実施の形態を構成する制御装置の構成を示す制御ブロック図、
図9は本発明の鉱山用車両の第4の実施の形態を構成する制御装置における「最小路側距離決定」の処理内容を示すフロー図である。
図8及び
図9において、
図1乃至
図7に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0066】
図8に示す本発明の鉱山用車両の第4の実施の形態は、大略第3の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。
第3の実施の形態における制御装置100の構成において、最小路側距離決定手段105に、距離検出手段101で算出された車両1の前方の物体との距離信号と,物体状態判定手段103で判定した車両1の前方の物体が静止物体であるか否かの判定信号と,ECUで算出した車両速度信号とを入力し、これらの信号から、最小路側距離を状況に応じて更新できるようにしている。このことにより、検出された障害物の情報により、適切な最小路側距離を設定し、車両1の移動による障害物距離の変化を反映した最小路側距離の更新を実施することができる。
【0067】
本実施の形態における最小路側距離決定手段105は、上述した各信号を入力し、予め設定した最小路側距離の初期値を更新する。最小路側距離の初期値は、上述した他の実施の形態と同様に、鉱山内の地図などから予め得られる搬送路形状に基づいて決定される。
【0068】
最小路側距離決定手段105の処理内容の概略は以下のとおりである。
(1)車両1が、搬送路9の直線部を走行中に、距離検出手段101において、障害物を検出し、それが静止物であると物体状態判定手段103が判定した場合、最小路側距離決定手段105は、その障害物の検出位置に路側の壁面10等があるものとみなす。
(2)最小路側距離決定手段105は、最小路側距離を初期値から(1)の障害物検出距離に変更設定する。
(3)最小路側距離決定手段105は、車両1が走行することで上述した障害物(路側の壁面10)と近接する距離分、(2)で設定した最小路側距離の値を減少させるように更新していく。この減少分は、車両1の車両速度と制御装置100の処理周期によって算出されるものであって、処理周期の間に車両1が進む距離分である。
【0069】
本実施の形態における制御装置100の処理内容の手順は、大略、
図7に示す第3の実施の形態に従う。
図7に示すフロー図における「最小路側距離決定」(ステップS404)の処理内容に本実施の形態の特徴がある。
図9を用いて、本実施の形態における「最小路側距離決定」の処理内容の手順を説明する。
【0070】
まず、制御装置100は、車両1が旋回状態か否かを判定する(ステップS601)。車両1が旋回状態であれば、(ステップS607)へ進み、車両1が旋回状態でなければ、(ステップS602)へ進む。
【0071】
車両1が旋回状態であれば、制御装置100は、最小路側距離を初期化する(ステップS607)。具体的には、最小路側距離決定手段105において、鉱山内の地図などから予め得られる搬送路形状に基づいて決定される最小路側距離の初期値へと初期化する。そして、リターンに進み、静止物検出フラグをクリアし、次の車両1の直進状態で静止物体を検出したときに備える。
【0072】
一方、(ステップS601)で車両1が旋回状態でないと判定された場合、制御装置100は、静止物体の検出済みか否かを判定する(ステップS602)。具体的には、物体状態判定手段103において判定された車両1の前方の検出物体が静止物体か否かの判定信号のフラグを利用することが考えられる。車両1の前方の検出物体が静止物体であることを検出済みであれば、(ステップS605)へ進み、検出済みでなければ、(ステップS603)へ進む。
【0073】
車両1の前方の検出物体が静止物体であることを検出済みでなければ、制御装置100は、現在検出している物体が静止物体であるか否かについて判定する(ステップS603)。具体的には、物体状態判定手段103にて判定する。現在検出している物体が静止物体であれば、(ステップS604)へ進み、静止物体でなければ、リターンへ進む。
【0074】
現在検出している物体が静止物体であれば、制御装置100は、最小路側距離に検知距離を代入する(ステップS604)。具体的には、最小路側距離決定手段105において、距離検出手段101が検出した車両1の前方の検出物体までの距離を最初路側距離に設定する。これにより、直進走行状態で検出した静止物体の距離を新たな最小路側距離として更新することができる。
【0075】
一方、(ステップS602)で車両1の前方の検出物体が静止物体であることを検出済みと判定された場合、制御装置100は、現在の最小路側距離が予め設定された初期値以下か否かについて判定する(ステップS605)。具体的には、最小路側距離決定手段105において、現在の最小路側距離の設定値と予め定められた初期値とを比較する。現在の最小路側距離が、予め設定された初期値以下であれば、リターンへ進み、現在の最小路側距離が、予め設定された初期値を超えれば、(ステップS606)へ進む。
【0076】
現在の最小路側距離が、予め設定された初期値を超えると判定された場合、
制御装置100は、最小路側距離から車両走行距離分減算する(ステップS606)。具体的には、最小路側距離決定手段105において、処理周期間における車両1の接近分だけ最小路側距離を減算して再設定する。以降最小路側距離が初期値以下になるまでこの設定値の更新を続ける。
【0077】
このことにより、過去に検出した静止物体までの距離を車両1の走行距離で更新しながら制限距離として利用することができる。また、この制限距離の下限値は、搬送路形状に基づいて決定される最小路側距離の初期値となる。このため、例えば、車両1が直進状態において、壁面10などの路側障害物でなく路上にある静止障害物を検出した場合であっても、最小路側距離の初期値より接近した時点で、静止障害物と判定されるので、物体距離に応じた車速制御を行なうことが可能になる。
【0078】
上述した本発明の鉱山用車両の第4の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0079】
また、上述した本発明の鉱山用車両の第4の実施の形態によれば、特に直線路から曲線路に進入する直前の状況において距離検出手段101の検出情報を利用した、現実の状況に即した最小路側距離の設定と更新が可能になる。このことにより、より距離検出手段101の距離検出性能を活かした車速制御を行なえる鉱山用車両を提供することが可能になる。
【0080】
以上、本発明を実施するための実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成は上記各実施の形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。