特許第5916452号(P5916452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916452
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】固体高分子形燃料電池の運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20160422BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20160422BHJP
   H01M 8/04119 20160101ALI20160422BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/10
   H01M8/04 K
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-59063(P2012-59063)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-196767(P2013-196767A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 修
(72)【発明者】
【氏名】松本 明
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−032094(JP,A)
【文献】 特開2007−227208(JP,A)
【文献】 特開2006−310109(JP,A)
【文献】 特開2007−059290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜を燃料極及び酸素極で挟んで構成されるセルを複数積層して備える固体高分子形燃料電池の運転方法であって、
前記固体高分子形燃料電池は、前記セルを収容する容器とは水平方向に隣接して設けられる振動源と、当該振動源の側面に対して水平方向に接触するロッドを有する電動アクチュエータを備え、前記電動アクチュエータの前記ロッドが伸長して当該ロッドの先端が前記容器の側部に接触することで、前記セルを水平方向に振動させることができるように構成される振動手段を備え、
発電運転中に前記セルの出力電圧を検出する電圧検出工程と、
前記電圧検出工程で検出した前記セルの出力電圧に、前記セルの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象が現れているか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程において前記発電異常現象が発生していると判定したとき、前記セルの湿潤状態を低下させる処理を行う湿潤低下工程と、を有し、
前記判定工程において、一定の出力電流密度を維持した状態での発電運転の継続中の過去から現在に至る間の設定期間内に前記電圧検出工程で検出した複数の前記セルの出力電圧についての標準偏差を導出し、当該標準偏差が設定閾値以上となったとき前記発電異常現象が現れていると判定し、
前記湿潤低下工程において、前記振動手段の振動を前記セルに伝達する固体高分子形燃料電池の運転方法。
【請求項2】
前記振動手段は、前記容器の、前記ロッドの先端が接触する側部に、当該ロッドの先端が接触したことを検知できる接触検知スイッチを備え、前記電動アクチュエータの前記ロッドが伸長して前記ロッドの先端が前記容器に接触したことを前記接触検知スイッチが検知すると、前記電動アクチュエータは前記ロッドの伸張が停止させられることで、前記電動アクチュエータの前記ロッドの先端が前記容器に対して接触して前記振動源の振動が前記電動アクチュエータを介して前記容器に伝達される状態が維持される請求項1に記載の固体高分子形燃料電池の運転方法。
【請求項3】
前記湿潤低下工程において、前記セルの出力電流密度を低下させる請求項1又は2に記載の固体高分子形燃料電池の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子電解質膜を燃料極及び酸素極で挟んで構成されるセルを複数積層して備える固体高分子形燃料電池の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、セルを構成する電解質膜および電極部(燃料極及び酸素極)が湿潤することによって発電が可能となるため、それら燃料極及び酸素極へ供給するガスに水蒸気を混合するなど、加湿して運転させるのが一般的である。また、燃料電池の長期耐久性が求められる定置用途では、劣化抑制の観点から電池温度とセルへの供給ガスの露点とがほぼ同一の飽和加湿条件での作動が一般的である。
【0003】
一方、セルへの供給ガスの加湿機能(例えば、燃料極及び酸素極に供給されるガスに水蒸気を含ませるバブラー装置など)を簡略化もしくは削除することによって、システムのコスト低減を図ることができる。例えば、非特許文献1に記載のように、飽和加湿条件でなくても電池の劣化が抑制されるような開発が進められてきた。また、このような低加湿条件においては、発電反応による生成水を如何にセルの湿潤に効率よく利用できるかが発電性能を引き出す上で重要である。そのため、非特許文献2に記載のように、触媒層の濡れを高める等、電池の構成部材の最適化が進められている。
【0004】
また、特許文献1には、固体高分子形燃料電池の運転中にそのセルの加湿状態(即ち、湿潤状態)をリアルタイムで推測する手法が記載されている。具体的には、固体高分子形燃料電池の通常運転時に、セルの加湿状態を検証する加湿状態検証工程を実行し、その加湿状態検証工程の検証結果に基づいて、通常運転時におけるセルの加湿状態を加湿増大方向又は加湿減少方向に調節する運転方法が記載されている。つまり、特許文献1に記載されている加湿状態検証工程は、固体高分子形燃料電池の通常運転を一旦中断して、セルの出力電流を一定に保持したままセルの温度を上げる又はセルの温度を下げるという特異な運転、或いは、固体高分子形燃料電池の通常運転中に、セルの出力電流を一定に保持したままセルへ供給される燃料ガス及び酸素含有ガスの少なくとも一方の流量を増加させる又はセルへ供給される燃料ガス及び酸素含有ガスの少なくとも一方の流量を減少させるという特異な運転を行うものである。つまり、特許文献1に記載されている加湿状態検証工程は、固体高分子形燃料電池の通常運転を一旦中断してその運転状態を特異な運転状態に変化させることが必要であり、その運転状態を変化させたことによる反応を見て、セルの加湿状態を推測している。
【0005】
他の先行技術としては、セルの内部での水の偏りを解消させるような対策を講じた固体高分子形燃料電池がある。例えば、通常、発電反応によって生成された水は、セルの内部の酸素含有ガスの供給路において上流側(入口部側)よりも下流側(出口部側)の方で多く存在するようになる。ところが、特許文献2に記載の固体高分子形燃料電池では、セルの内部において、固体高分子電解質膜を間に挟んで、酸素含有ガスと燃料ガスとが対向流状態で流動するように構成してある。具体的には、セルの内部での酸素含有ガスの流路と燃料ガスの流路とが、固体高分子電解質膜を間に挟んで位置し、更に、固体高分子電解質膜を間に挟んで、セルの積層方向視にて、酸素含有ガスの入口部と燃料ガスの出口部とを近づけて位置させ、且つ、酸素含有ガスの出口部と燃料ガスの入口部とを近づけて位置させている。このように構成することで、酸素含有ガスの供給路の下流側(出口部側)の方で多く存在する水が、固体高分子電解質膜を経由して、水分濃度が低い燃料ガスの供給路の上流側(入口部側)へと拡散し、更に、燃料ガスの流通に伴って水も燃料ガスの供給路の上流側から下流側へと拡散され易くなる。その結果、セルの内部での水の偏りが解消され易くなる。
更に、特許文献2に記載の固体高分子形燃料電池では、複数のセルを鉛直方向へと順に積層することで、酸素含有ガスの流路と燃料ガスの流路とが水平方向に沿う状態に形成されることとなる。つまり、酸素含有ガスの流路内の水分及び燃料ガスの流路内の水分を、重力に抗して鉛直方向に流動させることは要求されず、酸素含有ガスの流路内の水分及び燃料ガスの流路内の水分をそれぞれのガスの流動と共に水平方向に沿って円滑に流動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−216305号公報
【特許文献2】特開2011−258467号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Eiji Endoh, ECS Transactions, 16(2), 1229 (2008)
【非特許文献2】西川, 中村, 松山, 柏, 第15回燃料電池シンポジウム講演予稿集, 123 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献2に記載のように生成水を効率よく利用して固体高分子形燃料電池の運転中にそのセルの湿潤状態を適正な状態に保とうとしても、セル内部で生成される水の量やセル内部の温度などが固体高分子形燃料電池の運転状態によって変化するため、それに伴ってセルの湿潤状態は変化し得る。そして、セルの湿潤が過剰な状態のままで発電運転を続ければ、燃料極及び酸素極へのガスの供給路として利用されるセルの内部の空間に部分的に水が詰まる可能性がある。そして、セルの内部の空間に水が詰まった場合、燃料極及び酸素極へのガスの供給に支障が生じるため、即ち、発電反応に利用されるガスの供給が滞るため、セルの出力電圧が低下するなどの発電異常現象が生じ得る。
つまり、固体高分子形燃料電池の運転状態が変化すれば、セルが含む水の量(即ち、湿潤状態)は変化する。従って、セルが含む水の量を増加傾向にさせるような運転状態で固体高分子形燃料電池の運転が継続されれば、セルの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象が生じる恐れがある。
【0009】
尚、特許文献1に記載されている運転方法では、固体高分子形燃料電池の運転中にそのセルの湿潤状態をリアルタイムで推測することを試みているが、そのためには固体高分子形燃料電池の通常運転を一旦中断してその運転状態を変化させる必要がある。従って、固体高分子形燃料電池の運転を不安定にさせる恐れがある。
【0010】
特許文献2に記載の固体高分子形燃料電池では、例えば、酸素含有ガスと燃料ガスとを対向流とし、且つ、酸素含有ガスの流路と燃料ガスの流路とを水平方向に沿う状態に形成するといったセルの内部構造に特徴を持たせることで、セルの内部での水の偏りを解消させようとしている。しかし、セルの内部のガス拡散層の撥水性が経時劣化によって低下すると、撥水性が低下した部分で水が溜り易くなる可能性がある。そして、水溜り部が発生すると、そこでガスの流通が妨げられ、触媒層や電解質膜の劣化を引き起こす恐れがある。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、固体高分子形燃料電池の運転中にその運転を中断することなく又は運転状態を変更することなくセルの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象を検出し、その過剰湿潤状態を解消させることのできる固体高分子形燃料電池の運転方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る固体高分子形燃料電池の運転方法の特徴構成は、固体高分子電解質膜を燃料極及び酸素極で挟んで構成されるセルを複数積層して備える固体高分子形燃料電池の運転方法であって、
前記固体高分子形燃料電池は、前記セルを収容する容器とは水平方向に隣接して設けられる振動源と、当該振動源の側面に対して水平方向に接触するロッドを有する電動アクチュエータを備え、前記電動アクチュエータの前記ロッドが伸長して当該ロッドの先端が前記容器に接触することで、前記セルを水平方向に振動させることができるように構成される振動手段を備え、
発電運転中に前記セルの出力電圧を検出する電圧検出工程と、
前記電圧検出工程で検出した前記セルの出力電圧に、前記セルの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象が現れているか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程において前記発電異常現象が発生していると判定したとき、前記セルの湿潤状態を低下させる処理を行う湿潤低下工程と、を有し、
前記判定工程において、一定の出力電流密度を維持した状態での発電運転の継続中の過去から現在に至る間の設定期間内に前記電圧検出工程で検出した複数の前記セルの出力電圧についての標準偏差を導出し、当該標準偏差が設定閾値以上となったとき前記発電異常現象が現れていると判定し、
前記湿潤低下工程において、前記振動手段の振動を前記セルに伝達する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、判定工程では、発電運転中に(即ち、発電運転を継続している間に)行われる電圧検出工程で検出したセルの出力電圧に基づいて、セルの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象が現れているか否かが判定される。つまり、固体高分子形燃料電池の運転中にその運転状態を従来のように変更しなくても発電異常現象の発生を把握できる。更に、判定工程において発電異常現象が発生していると判定したとき、湿潤低下工程においてセルの湿潤状態が低下させる処理が行なわれる。その結果、セルの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象を迅速に解消できる。更に、湿潤低下工程によってセルの湿潤状態が低下されると、セルの内部では水溜り部の発生が著しく低減される。
従って、固体高分子形燃料電池の運転中にその運転を中断することなく又は運転状態を変更することなくセルの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象を検出し、その過剰湿潤状態を解消させることのできる固体高分子形燃料電池の運転方法を提供できる。
【0015】
また、発電異常現象が現れているか否かの判断が、複数のセルの出力電圧についての標準偏差、即ち、統計的な処理結果、に基づいて行われる。つまり、発電異常現象が現れているか否かを、確度の高い情報に基づいて判断することができる。
【0017】
更に、セルの湿潤が過剰である場合、燃料極又は酸素極に供給されるガスの流路が水で塞がれ、その結果、ガスが燃料極及び酸素極で充分に利用されない状況が発生する可能性がある。
ところが本特徴構成では、固体高分子形燃料電池は、セルを収容する容器とは水平方向に隣接して設けられる振動源と、当該振動源の側面に対して水平方向に接触するロッドを有する電動アクチュエータを備え、電動アクチュエータのロッドが伸長して当該ロッドの先端が容器に接触することで、セルを水平方向に振動させることができるように構成される振動手段を備え、湿潤低下工程においてその振動手段の振動がセルに伝達されるので、水が流路を塞いでいたとしても、その水が振動によって移動することを促進させることができる。そして、流路を塞いでいる水を移動させることで、燃料極及び酸素極に対してガスを適正に供給することができる。
【0019】
また更に、上記特徴構成によれば、水が流路を塞いでいたとしても、鉛直方向へは重力によってその水を移動させようとする力が自然に加わる。そして、セルを水平方向に振動させる振動手段を用いることで、重力と併せて、水平方向及び鉛直方向に水が移動することを促進させることができる。そして、流路を塞いでいる水を移動させて、燃料極及び酸素極に対してガスを適正に供給することができる。
本発明に係る固体高分子形燃料電池の運転方法の別の特徴構成は、前記振動手段は、前記容器の、前記ロッドの先端が接触する側部に、当該ロッドの先端が接触したことを検知できる接触検知スイッチを備え、前記電動アクチュエータの前記ロッドが伸長して前記ロッドの先端が前記容器に接触したことを前記接触検知スイッチが検知すると、前記電動アクチュエータは前記ロッドの伸張が停止させられることで、前記電動アクチュエータの前記ロッドの先端が前記容器に対して接触して前記振動源の振動が前記電動アクチュエータを介して前記容器に伝達される状態が維持される点にある。
【0020】
本発明に係る固体高分子形燃料電池の運転方法の更に別の特徴構成は、前記湿潤低下工程において、前記セルの出力電流密度を低下させる点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、セルの出力電流密度を低下させることで、単位時間当たりに発電反応によってセルで生成される水の量が減少する。その結果、湿潤低下工程によって、セルが含む水の量を減少させ、セルの過剰湿潤状態を解消させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】固体高分子形燃料電池を備える燃料電池システムの構成を説明する図である。
図2】セルの構造を説明する図である。
図3】固体高分子形燃料電池の運転方法を説明するフローチャートである。
図4】セルの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象の例を説明する図である。
図5】セルの出力電圧の時間的な変化を示すグラフである。
図6】セルの出力電圧の時間的な変化を示すグラフである。
図7】セルの出力電圧の時間的な変化を示すグラフである。
図8】湿潤低下工程を実施した後でのセルの出力電圧の時間的な変化を示すグラフである。
図9】振動手段の構成例を説明する図である。
図10】振動手段による振動方向を説明する図である。
図11】振動手段による振動方向を説明する図である。
図12】振動手段による振動方向を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して第1実施形態の固体高分子形燃料電池の運転方法について説明する。図1は、固体高分子形燃料電池FCを備える燃料電池システムの構成を説明する図である。図2は、固体高分子形燃料電池FCが有するセルCの構造を説明する図である。
固体高分子形燃料電池FC(以下、「燃料電池FC」と記載する)は、固体高分子電解質膜2(以下、「電解質膜2」と記載する)を燃料極1及び酸素極3で挟んで構成されるセルCを複数積層して備える。また、セルCは、発電時に発生する熱を回収することで燃料電池FCを冷却する冷却部4を含む。尚、図1では図面の簡略化のため、単一のセルCのみを記載する。
【0024】
図2に示すように、セルCは、電解質膜2を燃料極1及び酸素極3で挟んで構成される。燃料極1はガス拡散層1aと触媒層1bとを備え、ガス拡散層1aと対面する側のセパレータ13の一面に形成される燃料ガス流路13aに供給された燃料ガスがガス拡散層1aを通って触媒層1bに到達する。触媒層1bは、金属触媒を担持した担体によって構成される。同様に、酸素極3はガス拡散層3aと触媒層3bとを備え、ガス拡散層3aと対面する側のセパレータ14の一面に形成される空気流路14aに供給された酸素(空気)がガス拡散層3aを通って触媒層3bに到達する。セパレータ13とセパレータ14との間には冷却水が流れる冷却水流路14bが形成されており、この冷却水流路14bが冷却部4として機能する。
【0025】
本実施形態では、燃料電池FCのセルCにおいて、燃料極1には改質器5で生成された燃料ガスが供給され、酸素極3には空気が供給されて、発電反応が行われる。
改質器5には、炭化水素を含む原燃料(例えば、メタンを含む都市ガスなど)及び水蒸気が供給される。改質器5は、併設される燃焼器6から与えられる燃焼熱を利用して、原燃料の水蒸気改質を行う。そして、改質器5での水蒸気改質により得られた水素を主成分とする燃料ガスが燃料極1に供給される。
【0026】
燃料極1では、供給された全ての燃料ガスが発電反応で消費される訳ではない。そのため、燃料極1から排出される燃料極排ガスの中には水素等の燃料ガスの成分が残存している。そこで、燃料極1から排出される燃料極排ガスを燃焼器6へ供給し、同じく燃焼器6へ供給される空気と共に燃焼器6で燃焼する。
【0027】
燃焼器6で燃焼された後の燃焼排ガスは燃焼器6の外部に排出され、熱交換器7に流入する。酸素極3で発電反応に用いられた後の排空気も熱交換器7に併せて流入する。また、熱交換器7には、貯湯タンク11に貯えられる湯水の一部が循環する湯水循環路10を通ってその湯水が流入する。
その結果、熱交換器7では、湯水循環路10を流れる湯水と、燃焼排ガス及び排空気との熱交換が行われる。つまり、熱交換器7において、湯水循環路10を流れる湯水は、燃焼排ガス及び排空気から熱を回収して昇温される。
【0028】
冷却部4には、冷却水循環路9を循環する冷却水が供給されて、セルCの冷却が行われる。即ち、冷却水循環路9を循環する冷却水はセルCから熱を回収して昇温される。冷却水循環路9を循環する冷却水(即ち、冷却部4において昇温された冷却水)は熱交換器8にも流入する。また、熱交換器8には、貯湯タンク11に貯えられる湯水の一部が循環する湯水循環路10を通ってその湯水が流入する。
その結果、熱交換器8では、湯水循環路10を流れる湯水と、冷却水循環路9を流れる冷却水(即ち、セルCから熱を回収した後の冷却水)との熱交換が行われる。つまり、熱交換器8において、湯水循環路10を流れる湯水は、セルCから熱を回収して昇温される。
【0029】
以上のように、燃料電池FC及び燃焼器6で発生した熱は、湯水循環路10を流れる湯水によって熱交換器7及び熱交換器8で回収され、貯湯タンク11において湯水として蓄えられる。
尚、冷却水循環路9を流れる冷却水の流速(即ち、単位時間当たりの冷却水の流量)は冷却水循環路9の途中に設けられるポンプP2によって調節可能であり、湯水循環路10を流れる湯水の流速(即ち、単位時間当たりの湯水の流量)は湯水循環路10の途中に設けられるポンプP1によって調節可能である。
【0030】
貯湯タンク11に貯えられている湯水は熱利用装置12に供給される。熱利用装置12は、例えば、床暖房装置12a、浴室暖房乾燥装置12b、給湯装置12cなどである。熱利用装置12が、湯水が保有する熱のみを利用する装置(床暖房装置12a、浴室暖房乾燥装置12bなど)の場合、それら熱利用装置12で熱が利用された後の湯水は貯湯タンク11に帰還する。或いは、熱利用装置12が、湯水自体を利用する給湯装置12cなどの場合、貯湯タンク11には湯水は帰還しない。
【0031】
次に、燃料電池FCの運転方法について説明する。図3は、燃料電池FCの運転方法を説明するフローチャートである。燃料電池FCのセルCの湿潤が過剰な状態になると、セルCの内部の燃料ガスが流れる流路(例えば、燃料ガス流路13a、ガス拡散層1a、触媒層1bなど)や空気が流れる空間(空気流路14a、ガス拡散層3a、触媒層3bなど)が水によって閉塞される可能性がある。そこで、本実施形態において、制御装置20は、セルCの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象が発生していると判定すると、セルCが過剰湿潤状態で運転される状態が継続されないような運転方法を実行する。
【0032】
図4は、セルCの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象の例を説明する図である。図4に示す実験例では、燃料極1及び酸素極3の電極面積が25cm2(5cm×5cm)である単一セルCを用いて発電運転を行った。運転条件は、燃料極1に供給する燃料ガスとしてH2(80%)及びCO2(20%)の混合ガスを用い、酸素極3に供給する酸素含有ガスとして空気を用い、燃料極1及び酸素極3での発電反応におけるH2及びO2の利用率は共に60%であった。また、燃料ガス及び酸素含有ガス共に露点は30℃であり、発電運転中のセル温度は70℃である。
図4において、横軸は燃料電池FCの運転時間であり、縦軸は単一のセルCの出力電圧についての標準偏差である。そして、燃料電池FCを定格出力(出力電流密度は300mA/cm2)で600時間連続運転した。セルCの出力電圧は2秒間隔で検出し、過去から現在に至る10時間内に検出した複数の出力電圧(合計18000個)のデータの標準偏差を導出した。
【0033】
図4に示すように、連続運転時間が約300時間以下の間では、セルCの出力電圧についての標準偏差は約0mVであり、セルCの出力電圧は安定している(即ち、発電反応は安定して行われている)。図5は、図4に示した連続運転時間が約300時間以下の間の特定の100秒間でのセルCの出力電圧の時間的な変化を示すグラフである。図5に示すように、図4において標準偏差が約0mVであった通り、セルCの実際の出力電圧にも大きな変動は見られず、安定した発電反応が行われていることが分かる。
【0034】
これに対して、図4に示す連続運転時間が300時間から600時間の間では、セルCの出力電圧についての標準偏差は大きな増減を繰り返しながら増加傾向を示している。図6は、図4に示した連続運転時間が400時間付近での特定の100秒間でのセルCの出力電圧の時間的な変化を示すグラフであり、図7は、図4に示した連続運転時間が500時間付近での特定の100秒間でのセルCの出力電圧の時間的な変化を示すグラフである。図6及び図7に示すように、図4において標準偏差が大きな増減を繰り返しながら増加傾向を示していた通り、セルCの実際の出力電圧にも大きな変動が見られ、安定した発電反応が行われていないことが分かる。このようなセルCの出力電圧の大きな変動(即ち、発電異常現象)が発生したのは、セルCの出力電流密度が相対的に高い定格運転が長期間にわたって行われたことで、即ち、発電反応による生成水が相対的に多くなる定格運転が長期間にわたって行われたことで、セルCの湿潤が過剰になり、セルCの内部の燃料ガスが流れる空間(例えば、燃料ガス流路13a、ガス拡散層1a、触媒層1bなど)や空気が流れる空間(空気流路14a、ガス拡散層3a、触媒層3bなど)が水によって閉塞される状況が発生したためであると考えられる。このように、本実施形態では、発電異常現象が現れているか否かの判断を、セルCの複数の出力電圧についての標準偏差、即ち、統計的な処理結果、に基づいて行っているので、発電異常現象が現れているか否かを確度の高い情報に基づいて判断することができる。
【0035】
従って、本発明に係る燃料電池FCの運転方法では、以下に具体的に説明するように、制御装置20は、図3に示したように、電圧検出工程#10と、判定工程#20と、湿潤低下工程#30とを実行する。
【0036】
制御装置20は、電圧検出工程#10において、発電運転中にセルCの出力電圧を検出し、次に、判定工程#20において、上記電圧検出工程#10で検出したセルCの出力電圧に、セルCの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象が現れているか否かを判定する。本実施形態では、制御装置20は、判定工程#20において、発電運転の継続中の過去から現在に至る間の設定期間内に電圧検出工程#10で検出したセルの複数の出力電圧についての標準偏差を導出し、その標準偏差が設定閾値以上となったとき発電異常現象が現れていると判定する。つまり、図4図7に説明したように、セルCの湿潤が過剰になるとセルCの複数の出力電圧についての標準偏差が大きくなるため、その標準偏差を参照して発電異常現象が発生しているか否かを判定できる。例えば、制御装置20は、設定閾値として「5mV」を設定し、セルCの複数の出力電圧についての標準偏差がこの設定閾値としての5mV以上になったとき発電異常現象が現れていると判定する。
【0037】
制御装置20は、判定工程#20において発電異常現象が発生していると判定したとき、湿潤低下工程#30において、セルCの湿潤状態を低下させる処理を行う。つまり、セルCの湿潤が過剰な状態のまま燃料電池FCの運転が継続されたことで発電異常現象が発生した場合に、強制的にセルCの湿潤状態を低下させるのがこの湿潤低下工程#30である。
【0038】
本実施形態では、湿潤低下工程#30において、セルCの出力電流密度を低下させる。つまり、セルCの出力電流密度を小さくすることで、単位時間当たりに発電反応によってセルCで生成される水の量が減少するように燃料電池FCの運転状態を変化させる。その結果、セルCの湿潤状態を低下させることができる。つまり、湿潤低下工程#30によって、セルCが含む水の量を減少させ、セルCの過剰湿潤状態を解消させることができる。この湿潤低下工程#30は、燃料電池FCの発電運転中に設定期間だけ行えばよい。
【0039】
図8は、湿潤低下工程#30を実施した後でのセルCの出力電圧の時間的な変化を示すグラフである。具体的には、制御装置20が、燃料電池FCをセルCの出力電流密度が75mA/cm2(即ち、定格運転時の出力電流密度の25%)の状態で2時間運転させるという湿潤低下工程#30を行った後の、特定の100秒間でのセルCの出力電圧の時間的な変化を示すグラフである。図8に示すように、セルCの出力電圧は安定している。また、図示は省略するが、湿潤低下工程#30を実施した後で検出したセルCの複数の出力電圧についての標準偏差は約3mVとなった。これは、湿潤低下工程#30を行ってセルCの湿潤状態が低下したことで、セルCの内部の燃料ガスが流れる空間や空気が流れる空間が水によって閉塞される事象が解消されたためであると考えられる。
尚、この湿潤低下工程#30において、セルCの出力電流密度をどの程度低下させるのか、及び、どれだけの期間低下させるのかは、上述した例に限定されず適宜変更可能である。
【0040】
以上のように、本発明に係る燃料電池FCの運転方法では、判定工程#20において、一定の出力電流密度を維持した状態での発電運転の継続中に行われる電圧検出工程#10で検出したセルCの出力電圧に基づいて、セルCの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象が現れているか否かが判定される。つまり、燃料電池FCの運転中にその運転状態を従来のように変更しなくても、発電異常現象の発生を把握できるため、固体高分子形燃料電池の運転を不安定にさせることがない。更に、判定工程#20において発電異常現象が発生していると判定したとき、湿潤低下工程#30においてセルCの湿潤状態が低下させる処理が行なわれる。従って、燃料電池FCの運転中にその運転を中断することなく又は運転状態を変更することなくセルCの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象を検出し、その過剰湿潤状態を解消させることのできる燃料電池FCの運転方法を提供できる。
【0041】
<第2実施形態>
第2実施形態で説明する固体高分子形燃料電池の運転方法は、湿潤低下工程の内容が第1実施形態で説明した湿潤低下工程と異なっている。以下に、第2実施形態の固体高分子形燃料電池の運転方法について説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0042】
第2実施形態において、燃料電池FCは、セルCを振動させることのできる振動手段Vを備える。図9は、振動手段Vの構成例を説明する図である。図示するように、セル(セルスタック)Cを収容する容器30は防振台34の上に載置されている。また、セルCを収容する容器30の内部へ、酸素極3で利用される空気を供給するためのブロア15は防振台33の上に載置されている。ブロア15を載置している防振台33と容器30を載置している防振台34とは、防振部材32を介して支持基材31の上に各別に載置されている。防振部材32は、ゴムやバネなどの弾性材料を用いて構成可能である。このように構成することで、支持基材31とブロア15との間では振動が互いに伝わり難くなっており、支持基材31と容器30との間でも振動が互いに伝わり難くなっている。
【0043】
ブロア15の側部には、電動アクチュエータ16が装着されている。電動アクチュエータ16は電動モータを収容する本体部16aと、電動モータによって伸縮駆動されるロッド16bとを有する。電動アクチュエータ16の動作制御は制御装置20によって行われる。また、電動アクチュエータ16は、ロッド16bの伸縮方向が水平方向となるようにブロア15の側面に装着されている。ブロア15と容器30とは水平方向に隣接して設けられ、電動アクチュエータ16のロッド16bが伸長すると、ロッド16bの先端が容器30に接触する。容器30の、ロッド16bが接触する側部には接触検知スイッチ17が設けられ、接触検知スイッチ17は、ロッド16bが接触したことを検知できる。接触検知スイッチ17の検知結果は制御装置20に対して伝達される。そして、制御装置20は、接触検知スイッチ17に対してロッド16bが接触したという検知結果を受け取ると、電動アクチュエータ16に対してロッド16bの伸張を停止させる。その結果、電動アクチュエータ16のロッド16bが容器30(接触検知スイッチ17)に対して接触した状態、即ち、ブロア15の振動が電動アクチュエータ16を介して容器30に伝達される状態が維持される。
以上のように、セルCを振動させることのできる振動手段Vは、上述したブロア15及び電動アクチュエータ16及び接触検知スイッチ17を用いて実現できる。
【0044】
本実施形態では、制御装置20は、上記湿潤低下工程#30において、振動手段Vの振動をセルCに伝達させる。つまり、制御装置20は、上記湿潤低下工程#30が開始されると、振動手段Vの振動をセルCに伝達させるべく電動アクチュエータ16を動作させてロッド16bを容器30に接触させ、湿潤低下工程#30が行われる設定期間が終了すると、振動手段Vの振動がセルCに伝達されないように電動アクチュエータ16を動作させてロッド16bを容器30から離す。このように、本実施形態では、第1実施形態で説明したのと同様の湿潤低下工程#30においてセルCが含む水の量を減少させてセルCの過剰湿潤状態の解消を試みると共に、振動手段Vの振動がセルに伝達されるので、水がガスの流路を塞いでいたとしても、その水を振動によって移動させ、流路が閉塞された状態の解消を促進させることができる。
【0045】
更に、本実施形態では、ブロア15と容器30とは水平方向に隣接して設けられ、且つ、電動アクチュエータ16のロッド16bはブロア15の側面に対して水平方向に接触する。つまり、振動手段VによってセルCを水平方向に振動させられるように構成されている。従って、セルCの内部に存在している水には、鉛直方向へは重力によって力が加わり、且つ、水平方向へは振動手段Vによって力が加わるようになっている。つまり、セルCを水平方向に振動させる振動手段Vを用いることで、重力と併せて、水平方向及び鉛直方向に水が移動することを促進させることができる。
【0046】
図10図12は、振動手段Vによる振動方向を説明する図である。
図10は、セルCが鉛直方向に積層される場合の例である。図示するように、セパレータ13に形成される燃料ガス流路13a及びセパレータ14に形成される空気流路14aは、互いに平行に配置されている。各セパレータ13、14に形成される燃料ガス流路13aと空気流路14aとは水平方向に向かって延びる。そして、振動手段Vによる振動方向は、燃料ガス流路13a及び空気流路14aの延び方向と平行になるように設計されている。
図11は、セルCが水平方向に積層される場合の例である。この場合も、セパレータ13に形成される燃料ガス流路13a及びセパレータ14に形成される空気流路14aは互いに平行に配置され、各セパレータ13、14に形成される燃料ガス流路13aと空気流路14aとは水平方向に向かって延びる。そして、振動手段Vによる振動方向は、燃料ガス流路13a及び空気流路14aの延び方向と平行になるように設計されている。
このように、振動手段Vによる振動方向が燃料ガス流路13a及び空気流路14aの伸び方向と平行になるように設計されているため、セルCの内部に存在している水が燃料ガス流路13a及び空気流路14aの延び方向に沿って移動し易くなり、燃料ガス流路13a及び空気流路14aを通って水がセパレータ13、14から抜け出し易くなる。
【0047】
尚、図10及び図11には、燃料ガス流路13a及び空気流路14aが屈曲せずに直線状に形成される例を示したが、燃料ガス流路13a及び空気流路14aが屈曲した状態で形成されてもよい。
図12は、セパレータ13に形成される燃料ガス流路13aが屈曲している場合の例である。この場合、水平方向に沿った面内(図中のx−y平面内)において、燃料ガス流路13aは、x方向に延びる流路部分13axと、y方向に延びる流路部分13ayとで構成される。このように複数の方向に燃料ガス流路13aが延びている場合、流路総長の長い方向と振動手段Vの振動方向とが平行になるように設計する。図12に示す例では、y方向に延びる流路部分13ayの流路総長の方が、x方向に延びる流路部分13axの流路総長よりも長いので、振動手段Vによる振動方向は、y方向に延びる流路部分13ayと平行になるように設計すればよい。
【0048】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、燃料電池システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。例えば、改質器5から燃料極1へ供給される燃料ガスを加湿するための加湿装置や、酸素極3に供給される空気を加湿するための加湿装置などを別途設けてもよい。また、貯湯タンク11から熱利用装置12に供給される湯水を昇温するための補助熱源装置などを別途設けてもよい。
【0049】
<2>
上記実施形態では、本発明に係る固体高分子形燃料電池の運転方法について具体例を挙げて説明したが、上記具体例で挙げた数値等は一例として記載したに過ぎず、それらの値は適宜変更可能である。例えば、湿潤低下工程#30により得られる効果を図4図8を用いて説明する際、燃料ガス及び空気の露点や、出力電流密度や、発電運転中のセル温度などについての具体的な数値を挙げたが、それらの数値は適宜変更可能である。
また、セルCの複数の出力電圧についての標準偏差を導出するために、過去から現在に至る10時間内の2秒間隔で検出された複数の出力電圧(合計18000個)のデータを用いる例を説明したが、どの期間内のどれだけの数の出力電圧のデータを用いて標準偏差を導出するのかは適宜変更可能である。更に、発電異常現象が現れていると判定するための、標準偏差の設定閾値の値も、上述した例(5mV)に限定されず、適宜変更可能である。
【0050】
<3>
上記実施形態では、振動手段Vの振動源としてブロア15を用いた例を説明したが、他の装置を振動手段Vの振動源として用いてもよい。例えば、ポンプなどを振動源として用いてもよい。
また、制御装置20は、振動源からセルCに伝わる振動の強さを変化させることもできる。例えば、制御装置20が、接触検知スイッチ17に対してロッド16bが接触したという検知結果を接触検知スイッチ17から受け取ってから、電動アクチュエータ16に対してロッド16bの伸張を停止させる指令を与えるまでの期間が短いと、電動アクチュエータ16は容器30に対して(即ち、ロッド16bは接触検知スイッチ17に対して)相対的に弱く接触する。これに対して、制御装置20が、接触検知スイッチ17に対してロッド16bが接触したという検知結果を接触検知スイッチ17から受け取ってから、電動アクチュエータ16に対してロッド16bの伸張を停止させる指令を与えるまでの期間が長いと、電動アクチュエータ16は容器30に対して(即ち、ロッド16bは接触検知スイッチ17に対して)相対的に強く接触する。従って、電動アクチュエータ16を容器30に対して強く接触させることで、ブロア15から容器30に伝わる振動を強くすることができ、逆に、電動アクチュエータ16を容器30に対して弱く接触させることで、ブロア15から容器30に伝わる振動を弱くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、固体高分子形燃料電池の運転中にその運転状態を変更することなくセルの過剰湿潤状態に起因する発電異常現象を検出し、その過剰湿潤状態を解消させることのできる固体高分子形燃料電池の運転方法に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 燃料極(セル C)
2 固体高分子電解質膜(セル C)
3 酸素極(セル C)
4 冷却部(セル C)
15 ブロア(振動手段 V)
16 電動アクチュエータ(振動手段 V)
17 接触検知スイッチ(振動手段 V)
C セル
FC 固体高分子形燃料電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
図12