特許第5916475号(P5916475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5916475細胞培養容器に装着される測定ユニット、細胞培養容器、および培養状態監視システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916475
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】細胞培養容器に装着される測定ユニット、細胞培養容器、および培養状態監視システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20160422BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20160422BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   C12M1/34 A
   C12M1/34 D
   C12M3/00 Z
   C12M1/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-77785(P2012-77785)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-202030(P2013-202030A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年12月15日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構、内閣府最先端研究開発支援プログラムに係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591173198
【氏名又は名称】学校法人東京女子医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浦 光宏
(72)【発明者】
【氏名】久保 寛嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克佳
(72)【発明者】
【氏名】刃祢 勝秀
(72)【発明者】
【氏名】岡野 光夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
【審査官】 植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/090792(WO,A1)
【文献】 特表2009−533053(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/120614(WO,A1)
【文献】 特開2011−097878(JP,A)
【文献】 特表2009−525756(JP,A)
【文献】 特開2005−143371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00、3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養すべき細胞および培養液を収容する細胞培養容器と、
前記細胞培養容器に装着され、細胞および培養液に関する情報を非接触で測定する測定ユニットと、
前記細胞培養容器と前記測定ユニットのいずれかに設けられ、当該細胞培養容器の姿勢と当該細胞培養容器に加わった振動の少なくとも一方を検出するセンサと、
前記細胞培養容器と前記測定ユニットのいずれかに設けられ、前記センサによる検出結果を示すデータを無線送信する通信部と、
無線通信により前記通信部より前記データを取得する通信装置と、
前記データに基づいて、前記姿勢と前記振動の少なくとも一方の履歴を含む培養状態の履歴情報を生成する履歴情報生成部と、
を備える、培養状態監視システム
【請求項2】
前記データが所定の条件を充足した場合に、警告を発する警告発生部をさらに備える、請求項1に記載の培養状態監視システム
【請求項3】
前記履歴情報に基づいて、培養技術の評価情報を生成する評価情報生成部をさらに備える、請求項1または2に記載の培養状態監視システム
【請求項4】
前記細胞培養容器を収容するインキュベータをさらに備え、
前記通信装置は、前記インキュベータ内に設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の培養状態監視システム
【請求項5】
前記インキュベータ内の所定の位置へ前記細胞培養容器を自動的に配置する搬送機構と、
前記データに基づいて、前記搬送機構の制御情報を生成する制御情報生成部と、
をさらに備える、請求項4に記載の培養状態監視システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養すべき細胞および培養液を収容する細胞培養容器、当該細胞培養容器に装着されて当該細胞および培養液に関する情報を測定する測定ユニット、および当該細胞の培養状態を監視するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の細胞培養容器として、再生医療や人工授精細胞などの細胞培養に用いられるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような細胞培養容器は、例えば温度や二酸化炭素濃度が管理されたインキュベータ内で保管される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−6261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
培養中の細胞培養容器に加わる振動や変位は、細胞の培養状態に影響を与えることがあるため極力回避することが求められている。しかしながらインキュベータには特段の振動対策が施されていないことが一般的である。したがって培養状態の相違が見出された場合、当該相違が培養過程で加わった振動により生じたものなのか、他の要因に基づいて生じたものなのかを判断することが困難である。また培地交換などの操作者の手技の巧拙により、細胞培養容器に振動や刺激が加わる可能性がある。
【0005】
よって本発明は、細胞培養中に細胞培養容器に振動が加わったり変位が生じたりした事実を検出し、これを培養状態の解析に利用可能とするとともに、作業者の手技の巧拙を客観的に評価しうる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第1の態様は、培養すべき細胞および培養液を収容する細胞培養容器に装着される測定ユニットであって、
細胞および培養液に関する情報を非接触で測定する測定部と、
位置、姿勢、衝撃、および振動の少なくとも1つを検出するセンサとを備える。
【0007】
このような構成によれば、細胞の培養状態に影響を与えうる細胞培養容器の姿勢や振動を検出することができ、検出結果を利用した適宜の制御、培養状態の分析・評価が可能となる。
【0008】
例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ、衝撃センサ、磁気位置センサ、およびGPSセンサのいずれかを前記センサとして用いることができる。
【0009】
前記測定部は、培養液のpH、培養液の温度、培養液周囲の炭酸ガス濃度、培養液周囲の酸素濃度、培養液周囲の酸素分圧、培養液周囲のアンモニア濃度、培養液のグルコース濃度、および培養液のラクテート濃度の少なくとも1つを、前記情報として測定する構成とすることができる。
【0010】
これにより培養状態を示すこれらの情報の評価を行なう際に、細胞培養容器の変位、姿勢、加わった振動・衝撃の有無と関連付けた分析が可能となる。
【0011】
前記測定ユニットは、前記細胞培養容器に対して着脱可能とすることができる。
【0012】
使用済みの細胞培養容器は破棄されるが、センサを備える測定ユニットは再利用することができるため経済的である。
【0013】
前記センサによる検出結果を示すデータを時刻情報に関連付けて記憶する記憶部をさらに備える構成としてもよい。
【0014】
この場合、培養過程の履歴情報を容易に生成することが可能であり、培養状態の評価に当該履歴情報を利用することができる。
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第2の態様は、細胞培養容器であって、
培養すべき細胞および培養液を収容する培養細胞収容部と、
細胞および培養液に関する情報を非接触で測定する測定ユニットを格納する測定ユニット格納部と、
位置、姿勢、衝撃、および振動の少なくとも1つを検出するセンサとを備える。
【0016】
このような構成によれば、培地により近い場所で姿勢や振動を検出でき、より正確な培養過程の把握が可能となる。
【0017】
例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ、衝撃センサ、磁気位置センサ、およびGPSセンサのいずれかを前記センサとして用いることができる。
【0018】
前記センサによる検出結果を示すデータを時刻情報に関連付けて記憶する記憶部をさらに備える構成としてもよい。
【0019】
この場合、培養過程の履歴情報を容易に生成することが可能であり、培養状態の評価に当該履歴情報を利用することができる。
【0020】
前記センサによる検出結果を示すデータを無線送信する通信部をさらに備える構成としてもよい。
【0021】
この場合、細胞培養容器に振動を加えることなく検出結果を示すデータを取得することができる。
【0022】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第3の態様は、培養状態監視システムであって、
培養すべき細胞および培養液を収容する細胞培養容器と、
前記細胞培養容器に装着され、細胞および培養液に関する情報を非接触で測定する測定ユニットと、
前記細胞培養容器と前記測定ユニットのいずれかに設けられ、位置、姿勢、衝撃、および振動の少なくとも1つを検出するセンサと、
前記細胞培養容器と前記測定ユニットのいずれかに設けられ、前記センサによる検出結果を示すデータを無線送信する通信部と、
無線通信により前記通信部より前記データを取得する通信装置とを備える。
【0023】
このような構成によれば、細胞の培養状態に影響を与えうる細胞培養容器の姿勢や振動を検出することができ、検出結果を利用した適宜の制御、培養状態の分析・評価が可能となる。また無線通信を利用するため、細胞培養容器に振動を加えることなく検出結果を示すデータを取得することができる。
【0024】
前記データが所定の条件を充足した場合に、警告を発する警告発生部をさらに備える構成としてもよい。
【0025】
この場合、警告の対象となった細胞培養容器を交換したり姿勢を修正することにより、好ましくない条件で細胞の培養が進行する可能性を排除することができる。
【0026】
前記データに基づいて、培養状態の履歴情報を生成する履歴情報生成部をさらに備える構成としてもよい。
【0027】
この場合、培養状態の評価を行なう際に、培養過程における細胞培養器の姿勢や加わった振動・衝撃の有無と関連付けた分析が可能となる。
【0028】
前記データに基づいて、培養技術の評価情報を生成する評価情報生成部をさらに備える構成としてもよい。
【0029】
この場合、作業者による培地の調製や持ち運び時における細胞培養器の姿勢や加わった振動の検出結果に基づいて、当該作業者の培養技術を評価することができる。
【0030】
前記細胞培養容器を収容するインキュベータをさらに備え、前記通信装置は、前記インキュベータ内に設けられている構成としてもよい。
【0031】
この場合、センサの検出結果を示すデータの取得に際して細胞培養容器に振動が加わるおそれを抑制することができる。
【0032】
前記インキュベータ内の所定の位置へ前記細胞培養容器を自動的に配置する搬送機構と、前記データに基づいて、前記搬送機構の制御情報を生成する制御情報生成部とをさらに備える構成としてもよい。
【0033】
この場合、搬送機構を用いた細胞培養容器の取り扱いを、センサの検出結果に応じて自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1の実施形態に係る細胞培養器を示す分解斜視図である。
図2図1の細胞培養器が収容されるインキュベータを模式的に示す図である。
図3図2のインキュベータにおける制御ユニットの機能を説明するためのブロック図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る細胞培養器を示す分解斜視図である。
図5図4の細胞培養器におけるRFIDタグの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態を添付の図面を参照しつつ以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0036】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る細胞培養器100を示す分解斜視図である。細胞培養器100は、細胞培養容器110、および測定ユニット120により構成されている。
【0037】
細胞培養容器110は、周壁111と隔壁112により区画形成された培養細胞収容部113と測定ユニット格納部114を備えている。培養細胞収容部113は、培養すべき細胞および培養液115を収容する空間である。測定ユニット120は、細胞培養容器110に対して着脱可能とされており、測定ユニット格納部114に矢印で示される向きに挿入される。隔壁112の一部は測定ユニット格納部114の側に突出して凸部116を形成している。
【0038】
測定ユニット120は、培養液115のpHを測定するための装置である。測定ユニット120は、ハウジング121、バッテリ122、発光部123、受光部124、制御部125、通信部126、および加速度センサ127を備えている。ハウジング121の一部は、細胞培養容器110の凸部116に対応する形状の凹部128を有しており、発光部123と受光部124は凹部128を挟んで対向している。
【0039】
細胞培養容器110の隔壁112のうち少なくとも凸部116を形成している部分は、発光部123より出射される光に対して透明とされている。測定ユニット120が測定ユニット格納部114に格納されるとき、発光部123と受光部124は凸部116を形成する隔壁を介して対向する。
【0040】
バッテリ122は、測定ユニット120を構成する各要素に駆動電力を供給する。制御部125は図示しない演算素子とメモリを備えており、測定ユニット120を構成する各要素の動作を制御する。
【0041】
発光部123は、それぞれ異なる波長の光を出射する3つのLEDを備えている。各LEDから出射された光は、凸部116内の培養液115を通過して受光部124により受光される。受光部124は周知のフォトダイオードであり、受光強度に応じた信号を出力するように構成されている。
【0042】
培養細胞収容部113に収容されている培養液115にはpH指示薬が含まれている。3つのLEDのうち1つは、当該pH指示薬がほとんど吸光性を示さない波長で発光する校正用光源である。他の2つのLEDの一方は、培養液115のpHが所定の管理幅の中央値から酸性に振れるにしたがって上記指示薬が顕著な吸光性を示す波長で発光する光源である。他の2つのLEDの他方は、培養液115のpHが当該中央値からアルカリ性に振れるにしたがって上記指示薬が顕著な吸光性を示す波長で発光する光源である。
【0043】
本実施形態では、上記指示薬としてフェノールレッドを用いている。この場合、校正用光源としてのLEDは700nm帯で発光するものであり、他の2つのLEDは、それぞれ558nm帯と430nm帯で発光するものである。
【0044】
培養液115のpHを測定するにあたり、先ず校正用のLEDを点灯させて培養液115の吸光性について校正係数を求める。次に残り2つのLEDを交互に点灯させて各波長における培養液115の吸光度を測定する。
【0045】
制御部125は、予め求めておいた指示薬のpHと吸光度との関係、および上記校正係数に基づいて培養液115のpHを特定する。特定されたpHを示すデータ(pHデータ)は、測定時刻を示す情報と関連付けられて制御部125が備えるメモリに格納される。
【0046】
すなわち発光部123、受光部124、および制御部125は、培養液115に関する情報としてのpHを非接触で測定する、本発明の測定部として機能する。
【0047】
本発明のセンサとしての加速度センサ127は、例えば周知の3軸加速度センサである。XYZ方向の加速度を検出することにより、測定ユニット120の姿勢を検出可能とされている。測定ユニット120は細胞培養容器110に装着されているため、細胞培養容器110の姿勢を検出しているとみなすこともできる。姿勢を検出することにより、細胞培養器100に振動や衝撃が加わった事実も検出することができる。
【0048】
加速度センサ127による検出結果を示すデータ(姿勢データ)は、検出時刻を示す情報と関連付けられて制御部125が備えるメモリに記憶される。このときメモリは本発明の記憶部として機能する。
【0049】
図2に示すように、細胞培養器100はインキュベータ200内に保管されて細胞の培養が行なわれる。インキュベータ200は複数の細胞培養器100を収容可能に構成されている。
【0050】
図3に示すように、インキュベータ200は、通信装置201、搬送機構202、および制御ユニット210を備えている。搬送機構202は、複数の細胞培養器100のそれぞれを、所定の位置へ自動的に搬送するための周知の機構である。図2に示すように、インキュベータ200の内部には、複数の通信装置201が所定位置に配置された複数の細胞培養器100のそれぞれに対応するように配置されている。
【0051】
測定ユニット120の通信部126は、対応する通信装置201に対して制御部125のメモリに格納されているpHデータと姿勢データを無線送信可能な構成とされている。
【0052】
制御ユニット210は、通信制御部211、警告発生部212、履歴情報生成部213、評価情報生成部214、および制御情報制御部215を備えている。また制御ユニット210は、通信制御部211を介してコンピュータ等のホスト装置300と通信可能に接続されている。細胞培養器100、インキュベータ200、およびホスト装置300により培養状態監視システム10が構成されている。
【0053】
通信制御部211は、測定ユニット120の通信部126とインキュベータ200の通信装置201との間で行なわれる無線通信を制御するものであり、当該無線通信を通じて測定ユニット120よりpHデータと姿勢データを取得する。無線通信を利用するため、細胞培養器100に振動を加えることなくデータを取得することができる。
【0054】
警告発生部212は、通信制御部211が取得した姿勢データが所定の条件を充足した場合に警告を発するように構成されている。例えば細胞培養器100が傾斜した状態でインキュベータ200内に配置されていたり、培地を交換するために作業者がインキュベータ200から細胞培養器100を取り出した際の扱いによって細胞培養器100に過度の振動や衝撃が加わったことを姿勢データが示している場合に、警告が発せられる。警告による報知は、音声と表示の少なくとも一方によりなされる。警告の対象となった細胞培養器100を交換したり姿勢を修正することにより、好ましくない条件で細胞の培養が進行する可能性を排除することができる。
【0055】
履歴情報生成部213は、通信制御部211が取得したpHデータおよび姿勢データのそれぞれについて履歴情報を生成するように構成されている。上述のようにpHデータと姿勢データは、それぞれ測定時刻と検出時刻を示す情報と関連付けられているため、容易に履歴情報を生成することができる。培養状態の評価を行なう際に、培養過程における細胞培養器100の姿勢や加わった振動・衝撃の有無と関連付けた分析が可能となる。
【0056】
評価情報生成部214は、通信制御部211が取得したpHデータおよび姿勢データに基づいて、あるいは上記履歴情報に基づいて培養技術の評価情報を生成するように構成されている。測定ユニット120の加速度センサ127は、細胞培養器100がインキュベータ200内に保管されている間だけでなく、作業者による培地の調製や持ち運び時における細胞培養器100の姿勢や加わった振動を検出することができるため、その記録から当該作業者の培養技術(手技)を客観的に評価することができる。評価結果は、手技の向上により安定した培養結果を得るための作業者訓練ツール等に利用することができる。
【0057】
制御情報生成部215は、通信制御部211が取得した姿勢データ、警告発生部212が発した警告、履歴情報生成部213が生成した履歴情報、評価情報生成部214が生成した評価情報の少なくとも1つを用いて、搬送機構202の動作を制御するための情報を生成するように構成されている。例えば警告の対象となった細胞培養器100の交換または姿勢修正を行なったり、履歴情報や評価情報に基づいて振動を抑制すべく搬送速度を調整したりすることができる。
【0058】
通信制御部211は、制御ユニット210とホスト装置300の間で行なわれる通信の制御も行なっている。通信制御部211は、ホスト装置300の側から入力される指示に応じてインキュベータ200の各部の動作制御を行なうとともに、制御ユニット210において取得・生成された各種データや情報をホスト装置300の側に送信するように構成されている。ホスト装置300の側では、制御ユニット210より取得した履歴情報や評価情報に基づいて、上記の分析や評価が行なわれる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、細胞の培養状態に影響を与えうる細胞培養器100の姿勢や振動を検出することができ、検出結果を利用した適宜の制御、培養状態の分析・評価が可能となる。
【0060】
使用済みの細胞培養容器110は破棄される。加速度センサ127を備える測定ユニット120は細胞培養容器110に対して着脱可能とされているため、再利用が可能であり、経済的である。
【0061】
次に図4を参照し、本発明の第2の実施形態に係る細胞培養器100Aについて説明する。第1の実施形態に係る細胞培養器100と同一または同等の構成要素については同一の参照番号を付与し、繰り返しとなる記載は割愛する。
【0062】
細胞培養器100Aは、加速度センサ127が細胞培養容器110に設けられている点において、細胞培養器100と相違する。具体的には、細胞培養容器110の底部に装着されたRFIDタグ130に加速度センサ127が内蔵されている。図5に内部構造を示すように、RFIDタグ130は、加速度センサ127に加えて、ICチップ131およびアンテナ132を備えている。
【0063】
加速度センサ127は、ICチップ131より電力の供給を受けて細胞培養容器110の姿勢を検出可能とされている。ICチップ131は、加速度センサ127による検出結果(姿勢データ)を検出時刻を示す情報と関連付けて記憶するメモリを備えている。本実施形態においては、ICチップ131が本発明の記憶部として機能する。
【0064】
ICチップ131は、メモリに格納された姿勢データを、アンテナ132を介してインキュベータ200が備える通信装置201に対し無線送信可能に構成されている。すなわち本実施形態においては、RFIDタグ130が本発明の通信部として機能する。
【0065】
インキュベータ200の制御ユニット210における通信制御部211は、RFIDタグ130と通信装置201との間で行なわれる無線通信を制御するものであり、当該無線通信を通じてRFIDタグ130より姿勢データを取得する。姿勢データの取り扱いについては第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0066】
本実施形態のように加速度センサ127を細胞培養容器110に設けることにより、培地により近い場所で姿勢や振動を検出でき、より正確な培養過程の把握が可能となる。
【0067】
RFIDタグ130は、使用済み細胞培養容器110と共に廃棄される。しかしながらRFIDタグ130を細胞培養容器110に対して着脱可能に構成することにより、加速度センサ127の再利用が可能となる。
【0068】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0069】
細胞培養器100の姿勢を検出するセンサとしては、上記の加速度センサ127に代えて、周知のジャイロセンサ、地磁気センサ、または衝撃センサを用いることができる。また周知のGPSセンサや磁気位置センサを用いて細胞培養器100の位置を検出する構成としてもよい。位置を検出することによっても細胞培養器100に振動や衝撃が加わった事実を把握することができる。また培養している細胞にいつどこでどのような処理が行われたかを確認することもできる。
【0070】
測定ユニット120の測定対象は、培養液のpHに限られるものではない。これに加えてあるいは代えて、培養液115の温度、培養液115の周囲の炭酸ガス濃度、培養液115の周囲の酸素濃度、培養液115の周囲の酸素分圧、培養液115の周囲のアンモニア濃度、培養液115のグルコース濃度、培養液115のラクテート濃度の少なくとも1つを、細胞および培養液115に関する情報として測定対象とすることができる。測定部の位置および構成は、測定対象に応じて適宜に定められる。
【0071】
測定ユニット120が備える通信部126、または細胞培養容器110が備えるRFIDタグ130との無線通信により、インキュベータ200が備える通信装置201がpHデータや姿勢データを取得するタイミングは適宜に定められる。培養の終了後に一括して取得してもよいし、一定の時間間隔をおいて取得する構成としてもよい。またリアルタイムに取得する構成としてもよい。
【0072】
測定ユニット120が備える通信部126、または細胞培養容器110が備えるRFIDタグ130からのpHデータや姿勢データの取得は、必ずしもインキュベータ200内に設けられた通信装置201により行なわれることを要しない。例えばインキュベータ200の外部に設けられたRFIDリーダ等の通信装置を介して無線通信が行なわれる構成としてもよい。
【0073】
測定ユニット120が備える通信部126を通じたpHデータや姿勢データの取得は、必ずしも無線通信を通じて行なわれることを要しない。培養の終了後に細胞培養容器110から取り外した測定ユニット120とホスト装置300を、測定ユニット120に設けたデータ通信端子を介して有線接続し、ホスト装置300にpHデータや姿勢データを送信する構成としてもよい。
【0074】
インキュベータ200の制御ユニット210が備える警告発生部212、履歴情報生成部213、評価情報生成部214、制御情報生成部215のうち、少なくとも1つはホスト装置300の側に設けられる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10:培養状態監視システム、100:細胞培養器、110:細胞培養容器、113:培養細胞収容部、114:測定ユニット格納部、115:培養液、120:測定ユニット、123:発光部、124:受光部、125:制御部、126:通信部、127:加速度センサ、130:RFIDタグ、131:ICチップ、132:アンテナ、200:インキュベータ、201:通信装置、202:搬送機構、212:警告発生部、213:履歴情報生成部、214:評価情報生成部、215:制御情報生成部
図1
図2
図3
図4
図5