特許第5916477号(P5916477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916477
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】配管の曲線部の施工方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
   F16L1/00 U
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-79203(P2012-79203)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-210021(P2013-210021A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】村谷 登与治
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−172691(JP,A)
【文献】 特開昭61−215037(JP,A)
【文献】 特開平2−14138(JP,A)
【文献】 特開平10−61832(JP,A)
【文献】 特開2004−268116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
F16L 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる複数の管部材を接続して構成される配管の曲線部の施工方法であって、
前記曲線部に用いられ、曲率を有する曲部と前記曲部の端から延びる直部とを有する曲管の曲げ角度が許容範囲内か否か確認する曲げ角度検査工程と、
前記曲げ角度が許容範囲外の場合に、許容範囲内となるように前記曲管に曲げ加工を施す再曲げ加工工程と、
前記曲げ角度が許容範囲内である前記曲管を接続する曲管接続工程とを備え、
前記再曲げ加工工程は、前記曲管における前記曲部及び前記直部のうちの前記曲部を加熱したまま、該曲管の両端を、牽引具を用いて、前記曲部の曲率を大きくするように牽引した状態で所定時間保持する加熱ステップと、
該加熱ステップ後に、前記牽引具で牽引した状態のまま冷却を行う冷却ステップとを有することを特徴とする配管の曲線部の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配管の曲線部の施工方法において、
前記再曲げ加工工程は、前記曲管の両端に、一対の牽引用部材を接続する牽引用部材接続ステップを有し、
前記加熱ステップでは、前記曲管の両端から突出する各前記牽引用部材の端部同士を牽引することを特徴とする配管の曲線部の施工方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配管の曲線部の施工方法において、
前記加熱ステップでは、加熱する範囲に被覆シートを覆い、該被覆シートの外周面にヒータを配置して加熱することを特徴とする配管の曲線部の施工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の配管の曲線部の施工方法において、
前記被覆シートとしてアルミ箔を用いることを特徴とする配管の曲線部の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の管部材を接続して構成される配管の曲線部の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道、ガスなどの配管は、一般に、直管、曲管などの複数の管部材を接続して構成されている。管部材同士は、継手を介して接続される。または、一方の管部材に取付けられている受け口に他方の管部材を差し込んで接続される。
【0003】
このような配管は、例えば道路に埋設される場合には、道路線形に併せて配設され、交差点や曲がり角では、その道路線形に合わせた角度を有して曲げられた曲線部が形成される。また、マンホールなどの他の構造物が支障となる場合には、曲線部を組み合わせて他の構造物を迂回するように配設される。そして、このような曲線部には、管部材として曲管が用いられる。曲管は、製造工場において規格に従った曲げ角度に形成されていて、予め設定された許容範囲内に収まっているかどうかを検査して出荷されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、近年、配管の管部材として、ポリエチレン管を用いることが多い。ポリエチレン管は、鋼管と比較して耐食性に優れている。また、一定の可撓性を有していることから、地盤の変形にも追従可能であり、耐震性に優れ、軟弱地盤における配管にも適している。このようなポリエチレン管でも、直管や、塑性変形により所定の曲げ角度に曲げ加工が施された曲管などがあり、これらを組み合わせて接続させることにより所定の線形に配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−315902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリエチレン管などの熱可塑性樹脂で形成された曲管は、上記のとおり塑性変形により所定の曲げ角度に曲げ加工が施されているが、曲げ加工によって内部に残留歪が生じている場合がある。そして、残留歪が生じていると、曲管の曲げ角度は、曲管を製造する工場における製品検査の段階では所定の許容範囲に収まっているものの、出荷して施工現場に納入され、施工に用いられるまで仮置きされている間に、直線状に戻ろうとする作用が生じて許容範囲から外れてしまう、所謂曲げ戻りが生じてしまう場合があった。特に、夏場の気温が高い時期では、管自体の温度も高くなってしまうため、曲げ戻りが生じやすかった。また、下水管などの大口径の管部材、及び曲げ角度の大きな管部材では、曲げ加工時の塑性変形量が大きくなるため、残留歪が生じやすく、それ故に曲げ戻りが生じやすかった。
【0007】
このような曲げ戻りが生じてしまうと、許容範囲から外れることで規格外の製品となってしまい使用ができなくなってしまう。このため、曲管に曲げ戻りが生じた場合には、曲げ戻りが生じた曲管を工場に返却若しくは処分して許容範囲内の曲管を用いていた。または、曲げ戻りが生じた曲管を、施工現場で許容範囲内に収まるように再曲げ加工して用いていた。しかしながら、前者では、新たな許容範囲内の曲管を用意する必要があり、用意するための時間とコストがかかってしまう問題があった。また、後者では、施工現場には曲げ加工を施すための専用の装置があるわけではなく、作業者の手作業で行う必要があり、非常に手間がかかり、許容範囲内に収まるように正確に曲げ加工を行うことは困難を極めていた。特に、近年、熱可塑性樹脂で形成された管部材は、径350mm以上の大径管にも適用されつつあり、このような大径管に現場で曲げ加工を施すのは困難を極める。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、曲管に曲げ戻りが生じてしまっても容易かつ正確に施工可能とする配管の曲線部の施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、熱可塑性樹脂からなる複数の管部材を接続して構成される配管の曲線部の施工方法であって、前記曲線部に用いられ、曲率を有する曲部と前記曲部の端から延びる直部とを有する曲管の曲げ角度が許容範囲内か否か確認する曲げ角度検査工程と、前記曲げ角度が許容範囲外の場合に、許容範囲内となるように前記曲管に曲げ加工を施す再曲げ加工工程と、前記曲げ角度が許容範囲内である前記曲管を繋げる曲管接続工程とを備え、前記再曲げ加工工程は、前記曲管における前記曲部及び前記直部のうちの前記曲部を加熱したまま、該曲管の両端を、牽引具を用いて、前記曲部の曲率を大きくするように牽引した状態で所定時間保持する加熱ステップと、該加熱ステップ後に、前記牽引具で牽引した状態のまま冷却を行う冷却ステップとを有することを特徴としている。

【0010】
この方法によれば、曲げ角度検査工程で曲管の曲げ角度が許容範囲外の場合には、再曲げ加工工程を実施する。再曲げ加工工程では、加熱ステップとして、曲管における曲率を有する曲部を加熱したまま牽引具で牽引することで、牽引具の牽引力によって加熱された曲部を容易に塑性変形させて、許容範囲内の曲げ角度まで変形させることができる。そして、冷却ステップとして、牽引具で牽引したまま冷却することで、許容範囲内の曲げ角度とされた状態で残留歪を除去し、許容範囲内の曲げ角度が保持された曲管を得て、曲管接続工程で当該曲管を配管の一構成として接続することができる。
【0011】
また、上記の配管の曲線部の施工方法において、 前記再曲げ加工工程は、前記曲管の両端に、一対の牽引用部材を接続する牽引用部材接続ステップを有し、前記加熱ステップでは、前記曲管の両端から突出する各前記牽引用部材の端部同士を牽引することを特徴としている。
【0012】
この方法によれば、加熱ステップでは、牽引用部材接続ステップで曲管の両端に接続された一対の牽引用部材の端部同士を牽引具によって牽引する。このため、曲管における曲げ加工を施す曲部から、牽引具で牽引する位置までの距離を大きくとることができ、これにより曲部に作用する曲げモーメントを大きくして効果的に曲げ加工を施すことができる。また、曲管の端部を直接牽引具で牽引しないため、曲管自体に牽引具の牽引力で傷つけてしまうことを確実に防止することができる。
【0013】
また、上記の配管の曲線部の施工方法において、前記加熱ステップでは、加熱する範囲に被覆シートを覆い、該被覆シートの外周面にヒータを配置して加熱することを特徴としている。
【0014】
この方法によれば、加熱ステップでは被覆シートの外周面からヒータで加熱することで、ヒータが配置された箇所のみが局所的に加熱されてしまうことなく、被覆シートで被覆された範囲を均一に加熱して、当該範囲を均一に曲げ変形させることができる。
【0015】
また、前記被覆シートとしてアルミ箔を用いることを特徴としている。
【0016】
この方法によれば、被覆シートとしてアルミ箔を用いることで、ヒータの熱を効果的かつ均一に曲管の曲部に伝熱させて加熱することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の配管の曲線部の施工方法によれば、曲管に曲げ戻りが生じてしまっても容易かつ正確に配管の曲線部を施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態の配管の概要を説明する斜視図である。
図2】本発明の実施形態の配管における曲線部で用いられる曲管の詳細を説明する平面図である。
図3】本発明の実施形態の配管の曲線部の施工方法において、曲げ角度検査工程及び曲げ角度確認工程を説明する説明図である。
図4】本発明の実施形態の配管の曲線部の施工方法において、加熱ステップにて牽引用部材を接続することを説明する説明図である。
図5】本発明の実施形態の配管の曲線部の施工方法において、加熱ステップにて曲管を加熱したまま牽引することを説明する説明図である。
図6】本発明の実施形態の配管の曲線部の施工方法において、牽引用部材の第1の変形例を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態の配管の曲線部の施工方法において、牽引用部材の第2の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、複数の管部材1としてポリエチレン管を互いに接続することで構成された配管100を示している。このような配管100は、下水管や水道管、ガス管などに用いられて、一般に道路下に埋設される。
図1に示すように、配管100は、例えば道路下に埋設される場合、その道路線形に沿って埋設されるため、道路線形に応じて直線部101と、曲線部102とを有している。直線部101では、管部材1としてポリエチレンからなる直管10を用いている。直管10は、定尺長、例えば5mの長さを有する定尺管10aと、定尺管10aを所定の長さに切断した切り管10bとがあり、これらを組み合わせることで所定の長さの直線部101を構成している。また、曲線部102では、所定の角度に曲げられた曲管20を用いている。
【0020】
図2に示すように、曲管20は、一定の曲率で湾曲した曲部21と、曲部21の両端21a、21aから延びる直部22とを有している。直部22としては、少なくとも当該曲管20と隣り合う他の管部材1と接続するための長さを有している。また、曲管20の曲部21の曲げ角度θ、すなわち曲部21の両端21a、21aから延びる一方の直部22の中心線L22aの延長線に対して他方の直部22の中心線L22bがなす角度としては、複数種類用意されている。例えば、曲げ角度θで11.25°、22.5°、45°、90°などの曲管20が用意されており、配管100の曲線部102において、曲がる角度に応じて適切な曲げ角度θの曲管20を選択して用いる。
【0021】
図1に示すように、直管10や曲管20同士、また、直管10と曲管20とは、継手23を用いて接続される。継手23は、内径が直管10及び曲管20の外径と略等しい筒状の部材であり、両端から管部材1の端部それぞれを挿入させる。そして、両端から管部材1を挿入させた状態で通電させて電気溶着することで、管部材1同士は継手23を介して接続される。
【0022】
次に、このような配管100の施工方法、特に曲線部102の施工方法について詳細に説明する。
まず、準備工程として、配管100として必要な管部材1を準備する。具体的には、配管100の直線部101に用いる直管10と、配管100の曲部21に用いる曲管20とを用意する。直線部101に用いる直管10としては、直線部101の長さに応じた必要本数の定尺管10aを用意するとともに、複数の定尺管10aによって生じる調整部分の長さに応じた切り管10bを定尺管10aを切断することにより用意する。また、曲線部102に用いる曲管20としては、配管100の曲線部102における曲がり角度に応じた曲げ角度θを有するものを用意する。
【0023】
次に、曲げ角度検査工程として、曲線部102に用いる曲管20の曲げ角度θが許容範囲内か否かを確認する。
曲管20は、その曲げ角度θが、一般に設計角度を基準として予め設定された許容差によって規定される許容範囲内に収まるように工場にて製造され、出荷されている。しかしながら、残留歪に起因して、出荷され現場に仮置きされ、配管100の一部として配設されるまでの間に曲げ戻りが生じてしまう場合がある。そして、曲げ角度検査工程では、曲げ戻りにより、使用する曲管20の曲げ角度θが上記許容範囲から外れてしまっていないかを確認する。
【0024】
具体的には、図3に示すように、平らな台200の載置面200a上に、曲管20を配置する。この際、曲管20の中心線L21、L22a、L22bに沿う方向に、曲管20と台200の載置面200aとの間に隙間が生じないように配置する。これにより、曲管20は、その中心線L21、L22a、L22bが台200の載置面200aに平行となるようにして配置される。
【0025】
この状態で、曲管20の外周面において、上部に角度計測器30を当てて、曲管20の曲げ角度θを測定する。角度計測器30は、例えば、直線状に延びて、一端に分度器31が取付けられた第一の定規32と、分度器31の中心点31aで、一端が第一の定規32に対して回転可能に取付けられた第二の定規33とを備えている。第二の定規33の一端には、回転中心となる分度器31の中心点31aよりも先へ延びて、分度器31の表示された目盛りを読むための針34が設けられている。そして、第一の定規32を曲管20における一方の直部22の上部に、その中心線L22bと平行となるように配置する。また、第二の定規33を曲管20における他方の直部22の上部に、その中心線L22aと平行となるように配置する。そして、この状態で針34が示す分度器31に表示された目盛りを読むことで、曲げ角度θを測定する。そして、曲げ角度θが、許容範囲内である場合には、その曲管20を後述する曲管接続工程に用いる。一方、曲げ角度θが、許容範囲外である場合には、以下の再曲げ加工工程を実施する。
【0026】
再曲げ加工工程では、曲げ角度θが許容範囲外である曲管20に対して曲げ加工を施す。具体的には、本実施形態の再曲げ加工工程は、曲管20の両端に、一対の牽引用部材を接続する牽引用部材接続ステップと、曲管20の曲部21を加熱したまま、該曲管20の両端を互いの距離を縮めるように牽引した状態で所定時間保持する加熱ステップと、加熱ステップ後に、牽引した状態のまま所定時間冷却を行う冷却ステップとを有する。以下詳細を説明する。
【0027】
図4に示すように、まず、牽引用部材接続ステップでは、曲管20の両端に、一対の牽引用部材40の一端部40aを接続させる。一対の牽引用部材40は、本実施形態では管状の部材で、その外径が、曲管20の内径と略等しく設定されている。このため、牽引用部材40は、一端部40aが曲管20の端部に嵌合し、他端部40bが曲管20の端部から突出した状態となる。牽引用部材40の材質としては特に限定されないが、後述する加熱ステップ及び冷却ステップで牽引する際に、撓み変形しない材質が好ましく、同材質のポリエチレンや、高剛性となる鋼などが選択される。
【0028】
次に、加熱ステップを実施する。具体的には、図5に示すように、各牽引用部材40の他端部40bに牽引するための牽引具50を係合する。牽引具50として、本実施形態では、2つのレバー付きのチェーンブロック51を組み合わせて用いている。チェーンブロック51は、牽引部52と、牽引部52に取付られた第一のフック53と、牽引部52から延びるチェーン54と、チェーン54の一端部に取り付けられた第二のフック55とを有する。牽引部52は、円柱状でチェーン54の他端部側が巻回された図示しない巻回部と、巻回部を回転させる図示しない減速ギア機構と、減速ギア機構に接続されて一方向のみに減速機構を回転させる図示しないラチェット機構と、ラチェット機構を回転させるレバー56とを有する。従って、レバー56を往復回転させることで、チェーン54を牽引部52の図示しない巻回部に巻き取ることが可能であり、これにより第一のフック53と第二のフック55との距離を縮めることが可能となっている。また、牽引部52の図示しない減速機構により、レバー56に作用する力を倍力で作用させて第一のフック53と第二のフック55との距離を縮めることが可能となっている。そして、2つのチェーンブロック51の第一のフック53同士を係合させつつ、各チェーンブロック51の第二のフック55のそれぞれを、一対の牽引用部材40の他端部に係合させる。ここで、牽引用部材40の他端部40bの周縁40cにおいて、チェーンブロック51の第二のフック55を係合する位置は、曲管20の曲部21の曲率半径方向内側となる位置とする。より詳細には、曲部21の曲率半径方向内側において、曲管20の両直部22の中心線L22a、L22bを含む平面と、牽引用部材40の周縁40cとが交差する位置とする。これにより、牽引具50によって一対の牽引用部材40の他端部40b同士が互いの距離を縮めるように牽引することとなり、曲管20を、牽引用部材40を介して曲部21の曲率を大きくするように曲げることが可能となる。
【0029】
また、曲管20において加熱範囲となる曲部21の外周面に加熱手段として、ヒータ60を設置する。本実施形態では、まず曲管20における曲部21の外周面に被覆シート61としてアルミ箔を被覆させる。次に、被覆シート61上に複数の短冊状のヒータ60を設置する。この際、複数のヒータ60を、曲管20の曲部21の中心線L21に沿って間隔を有して配置するとともに、それぞれその長手方向を曲管20の周方向に沿うようして、全周に配置する。そして、ヒータ60に電源から通電させることで、曲管20の曲部21を加熱していく。曲管20の加熱温度としては、材質であるポリエチレンの融点を考慮して、塑性変形可能な温度以上でかつ溶融する温度未満とする必要がある。具体的には、本実施形態では、120〜130℃の加熱温度とする。
【0030】
この際、複数のヒータ60が、曲管20の曲部21の中心線L21に沿って間隔を有して配置されているとともに、それぞれその長手方向を曲管20の周方向に沿うようして、全周に配置されていることで、曲管20の曲部21全体を均一に加熱することができる。また、ヒータ60が被覆シート61を介して加熱することで、直接加熱して曲管20の曲部21外周面おけるヒータ60との接触面のみを局所的に加熱してしまうことなくより均一に加熱することができる。また、被覆シート61がアルミ箔であることで、熱伝導性を良くして均一かつ効果的に曲管20の曲部21を加熱することができる。
【0031】
そして、曲管20の曲部21がヒータ60で上記加熱温度まで加熱されたことを温度計等による温度測定で確認できたら、次に、牽引具50であるチェーンブロック51で牽引する。具体的には、一方または両方のチェーンブロック51のレバー56を往復回動させる。これにより、レバー56の往復回動数に従って、徐々にチェーン54が巻き取られ第一のフック53と第二のフック55との距離が縮まる。これにより、一対の牽引用部材40の他端部40b同士が互いの距離を縮めるように牽引されることとなり、曲管20は、牽引用部材40を介して曲部21の曲率を大きくするように塑性変形させて曲げられる。
【0032】
ここで、チェーンブロック51を用いることで、小さな操作力かつ大きな操作量で、大きな牽引力かつ小さな牽引量で曲管20を曲げることができる。また、曲管20を、一対の牽引用部材40を介して曲げることで、小さな牽引力で曲管20に効果的に曲げモーメントを作用させることができる。また、曲管20に直接牽引具50であるチェーンブロック51から牽引力が作用しないことで、曲管20の端部が損傷してしまうことを防止することができる。
【0033】
そして、牽引具50であるチェーンブロック51で牽引させながら、角度計測器30で曲管20の曲げ角度θを計測する。角度計測器30で計測された曲げ角度θが許容範囲内となったら、チェーンブロック51の操作を止める。この状態で加熱温度を維持するようにヒータ60で加熱しつつ、所定時間保持する。本実施形態では、3〜4時間程度保持する。
そして、所定時間加熱温度を維持するように加熱したら、加熱ステップが終了する。
【0034】
次に、冷却ステップを実施する。
冷却ステップでは、牽引具50であるチェーンブロック51によって牽引した状態のまま、曲管20の冷却を行う。本実施形態では、冷却は自然冷却により行う。冷却は、予め設定された時間行うものとする。本実施形態では、2時間冷却する。そして、一定時間冷却を行ったら、チェーンブロック51によって牽引した状態を解除し、チェーンブロック51を取り外して冷却ステップが完了し、再曲げ加工工程の全てのステップが完了する。
【0035】
次に、曲げ角度確認工程として、再曲げ加工工程を実施した曲管20の曲げ角度θの再確認を行う。曲げ角度θの測定方法としては、再曲げ加工工程前に実施する曲げ角度検査工程と同様であるので、省略する。そして、曲管20の曲げ角度θが許容範囲内であった場合には次工程に移行する。なお、本工程で曲げ角度θが許容範囲外であった場合には、再度、再曲げ加工工程を実施する。
【0036】
次に、管部材接続工程として、直管接続工程及び曲管接続工程を実施する。すなわち、図1に示すように、配管100の直線部101においては、準備工程で準備していた直管10を継手23を介して接続していく。また、配管100の曲線部102においては、曲げ角度確認工程で曲げ角度θが許容範囲内であった曲管20を継手23を介して接続する。管部材1と継手23は、上記のとおり、電気溶着によって固定される。
【0037】
以上のように、本実施形態の配管100の曲線部102の施工方法によれば、曲げ角度検査工程で曲管20の曲げ角度θが許容範囲外の場合には、上記再曲げ加工工程を実施することで、施工現場にて容易かつ正確に曲げ角度θが許容範囲内となるように加工することができる。このため、曲管20に曲げ戻りが生じてしまっても容易かつ正確に配管100の曲線部102を施工することができる。また、本実施形態の再曲げ加工工程における加熱ステップでは、牽引用部材接続ステップで曲管20の両端に接続された一対の牽引用部材40の他端部40b同士を牽引具50によって牽引する。このため、曲管20の曲げ加工を施す曲部21から、牽引具50で牽引する位置までの距離を大きくとることができ、これにより曲部21に作用する曲げモーメントを大きくして効果的に曲げ加工を施すことができる。また、曲管20の端部を直接牽引具50で牽引しないため、曲管20自体に牽引具50の牽引力で傷つけてしまうことを確実に防止することができる。
【0038】
また、本実施形態では、加熱ステップでは被覆シート61の外周面からヒータ60で加熱することで、ヒータ60が配置された箇所のみが局所的に加熱されてしまうことなく、被覆シート61で被覆された範囲を均一に加熱して、当該範囲を均一に曲げ変形させることができる。そして、被覆シート61がアルミ箔であることで、ヒータ60の熱を効果的かつ均一に曲管20の曲部21に伝熱させて加熱することができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、牽引具50としてチェーンブロック51を2つ用いるものとしたが、これに限らず1つのチェーンブロック51で、第一のフック53を一方の牽引用部材40に係合して、第二のフック55を他方の牽引用部材40に係合するようにしても良い。また、牽引具50としては、レバー付きのチェーンブロック51に限らず、レバー無しでチェーン自体を牽引操作するタイプのチェーンブロックや、その他牽引力を発生させる装置であれば良いが、チェーンブロック51のように変位制御可能で、かつ、減速機構を備えた装置であることが好ましい。
【0040】
また、上記実施形態では、牽引用部材40は、管状の部材で、曲管20の端部に挿入されるものとしたが、これに限るものではない。例えば、図6に示す牽引用部材45のように、曲管20の外径と等しくして、継手23を用いて牽引用部材45を曲管20の端部に接続するようにしても良い。また、牽引用部材は、管状の部材である必要はなく、中実の円柱状の部材としても良い。少なくとも、曲管20の端部に、該端部から突出するようにして取付けられ、突出する端部付近に牽引具50を取り付け可能な構成であれば良い。また、本実施形態では、管状の部材である牽引用部材40の他端部40bの周縁40cに係合するものとしたが、図7に示す牽引用部材46のように、係合する位置に切欠き40dを設けるようにしても良い。このようにすることで、中心線L22a、L22bを含む平面内で曲げ加工可能な位置に容易に牽引具50を係合可能であるとともに、牽引している最中に係合する位置がずれてしまうことも防止することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、加熱手段である短冊状のヒータ60を、曲管20の全周にわたって配設するものとしたが、これに限るものではないが、全周にわたって配設することで曲管20の曲部21を、周方向全体で均一に塑性変形させることができる。また、少なくとも、曲率半径内側となる部分と外側となる部分にヒータ60を配置することで、圧縮変形が相対的に大きい曲率半径内側となる部分と、引張り変形が相対的に曲率半径外側となる部分を効果的に塑性変形させることができる。ヒータ60の形状は、短冊状のものに限定されず、例えば、円板状のものや、曲部21全体を被覆可能なシート状のものとしても良い。
【0042】
また、上記実施形態では、配管100は、直管10または曲管20からなる管部材1を、継手23で接続し、電気溶着で接合するものとしたが、これに限るものではない。継手の内周部分にゴム環が設けられ、ゴム輪によりシーリングするタイプや、ネジ止めするタイプなどでも適用できる。また、管部材1の一端に受口が設けられていて、継手を用いずに接続可能なタイプにも適用できる。また、上記実施形態では、管部材1としてポリエチレン管を例に挙げたが、これに限るものではなく、少なくとも熱可塑性樹脂からなる管部材を接続して構成される配管に適用可能である。
【0043】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 管部材
20 曲管
21 曲部
40、45、46 牽引用部材
50 牽引具
61 被覆シート
100 配管
102 曲線部
θ 曲げ角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7