【実施例】
【0013】
(眼科装置の全体構成)
図1は本発明の実施例に係る眼科装置の外観図であって、この
図1において、符合1は眼科装置としての非接触式眼圧計を示す。この非接触式眼圧計1はベース2、架台3、顎受け4、額当て5を有する。
【0014】
その架台3には、測定装置本体部6と操作手段としてのコントロールレバー7とが設けられている。その測定装置本体部6の前部にはノズル筒6aが設けられ、測定装置本体部6の後部には表示部6bが設けられている。そのコントロールレバー7は、
図2に示すように、つまみ部7aと測定ボタン7bとを有する。
【0015】
その測定装置本体部6には、
図2に示すように、既述のノズル筒6aを有する測定ヘッド部10が設けられている。その測定ヘッド10の内部には公知の測定光学系(図示を略す)が設けられている。
【0016】
その測定ヘッド部10は駆動機構11に搭載され、駆動機構11はその測定ヘッド10を前後左右上下方向に駆動する。その架台3の前後左右方向への移動機構、測定ヘッド部10の駆動機構11には公知の機械的機構を用いることができる。
【0017】
そのコントロールレバー7の近傍には、後述する機能を有する手動操作レバー部材9が設けられている。その架台3は、そのコントロールレバー7を前後方向に手動操作により傾動させるとベース2に対して前後方向に移動可能とされ、コントロールレバー7を左右方向に手動操作により傾動させると左右方向に移動可能とされている。
【0018】
また、そのコントロールレバー7のつまみ部7aを回転させると、測定ヘッド部10が上下方向に駆動され、その測定ボタン7bを押すと、ノズル筒6aから空気が噴射されて、被検眼の眼圧測定が実行される。
なお、このコントロールレバー7を架台3に設ける代わりに、表示部6bをタッチパネル式の構成として、表示部6bの画面にタッチすることにより、架台3を上下前後左右に移動させる構成とすることもできる。また、被検眼に対してアライメントが完了すると、自動的にノズル筒6aから被検眼に向けて、エアーを噴射させる構成とすることもできる。
【0019】
(セーフティストッパ機構12、ブレーキ機構13の概略構成)
その架台3には、
図3、
図4に示すように、その架台3が被検眼に接触するのを防止するセーフティストッパ機構12と、ベース2に対するその架台3の前後左右方向の制動を行うブレーキ機構13とが設けられている。
【0020】
その
図3、
図4は、セーフティストッパ機構12、ブレーキ機構13等の部材は組み付けられてはいるが、測定装置本体部6、コントロールレバー7等を組み付ける前の架台3の状態、ベース2の状態を示し、符合6Aは測定装置配設箇所、符合7Aはコントロールレバー配設箇所を示している。なお、その架台3、ベース2の形状は、本発明に関係する箇所のみ詳細に示し、残余の箇所の形状は適宜捨象して示されている。
【0021】
そのセーフティストッパ機構12とブレーキ機構13とは、手動操作レバー部材9を共通の手動操作部材として有する。その手動操作レバー部材9は、架台3の前後方向(Z軸方向)と平行に延びる回動軸9aを軸心として回動可能とされる。
【0022】
その架台3には、
図5に拡大して示すように、架台3の前後方向に間隔を開けて、一対の軸受け部3a、3bが形成されている。この軸受け部3a、3bの間が手動操作レバー部材9の配設空間、セーフティストッパ機構12、ブレーキ機構13の設置空間とされている。
【0023】
そのセーフティストッパ機構12、ブレーキ機構13は、
図1に示すように、架台3を覆う装飾カバー部材8により被覆される。手動操作レバー部材9は、
図6ないし
図8に拡大して示すように操作つまみ部9bを有する。
【0024】
その手動操作レバー部材9は、
図1に示すように、操作つまみ部9bを含めてその一部が外部に露呈されいる。この手動操作レバー部材9は、
図4に示すように、一対の側壁部9c、9dを有する。回動軸9aはその一対の側壁部9c、9dを貫通している。
【0025】
(ブレーキ機構13の詳細構成)
ブレーキ機構13は、
図5に拡大して示すように、シャフト部材15と、付勢スプリング16と、摺動ローラ17とを有する。架台3にはシャフト部材15を上下方向に案内する案内筒3cが形成されている。
【0026】
シャフト部材15は取り付け板18に止めネジ19によって固定されている。摺動ローラ17は、その取り付け板18の屈曲板部18aに回動可能に支承されている。その手動操作レバー部材9の一方の側壁部9dの下部には、カム面20が形成されている。摺動ローラ17はそのカム面20に摺接される。このカム面20の詳細については後述する。
【0027】
そのシャフト部材15は、架台3を厚さ方向に貫通してそのシャフト部材15の下部はベース部材2の上面2aに臨んでいる。そのシャフト部材15の下部には圧接パッド21が設けられている。シャフト部材15は案内筒3cに沿って上下方向に可動される。付勢スプリング16は、取り付け板18と架台3との間に設けられて、シャフト部材15を上方向に付勢している。
【0028】
その圧接パッド21は、そのシャフト部材15が下降するとベース部材2の上面2aに圧接され、そのシャフト部材15は上昇するとベース部材2の上面2aに対する圧接が解除される。
【0029】
カム面20は、
図9、
図11、
図13に示すように、摺動ローラ17をセーフティストッパ機構12、ブレーキ機構13の設定操作を行わない中立位置に保持する中立位置保持面20aと、手動操作レバー部材9を一方の回動方向に回動させたとき(操作つまみ部9bを持ち上げたとき)にブレーキ機構13を作動させて圧接パッド21のベース2の上面2aに対する圧接状態を保持する圧接状態保持面20bと、手動操作レバー部材9を他方の回動方向に回動させたとき(操作つまみ部9bを押し下げたとき)に、セーフティストッパ機構の12の設定操作変更の邪魔にならないようにするために、摺動ローラ17を圧接状態保持面20bから遠ざかる方向に摺動させる摺動面20cとを有している。
【0030】
その中立位置保持面20aと圧接状態保持面20bとの間には、意図せずに手動操作レバー部材9が中立位置から圧接位置へ回動するのを阻止するための回動阻止突起20dが形成されている。
【0031】
(セーフティストッパ機構12の詳細構成)
セーフティストッパ機構12は、
図7、
図8に示すように、移動規制板22と、スプリング部材23と、板バネ24とを有する。移動規制板22は板状体から構成されている。この板状体は架台3の前後方向に延びるようにして架台3に配置されている。
【0032】
その板状体の前端は、
図8に拡大して示すように、屈曲されて、
図4、
図5、
図7に示すベース2の移動規制壁部2bに当接する当接壁部22aとされている。その板状体には、前後方向に所定間隔を開けて係合穴22bが複数個形成されている。
【0033】
スプリング部材23は、その一端部23aが
図3に示すように架台3の一係止片部3cに係止され、その他端部23bが板状体の起立壁部22cに係止されている。その移動規制板22は、その架台3の下部にスライド可能に支承され、そのスプリング部材23により架台3に対して前方方向にスライド可能に付勢される。その移動規制板22は、移動規制壁部2bと協働して架台3の前後方向の移動を規制する機能を果たす。
【0034】
板バネ24はその移動規制板22が延びる前後方向に対して直交する方向に延びるようにしてその架台3に配設されている。その板バネ24はその基端部が止めネジ25により架台3に固定されている。
【0035】
その板バネ24の自由端部には、係合穴22bに係合する係合ピン26が形成されている。この係合ピン26は、係合穴22bに係合可能に臨まされている。
手動操作レバー部材9の他方の側壁部9cの下部には、
図10、
図12、
図14に示すように、係合凸部27が形成されている。この係合凸部27は板バネ24の下面に臨まされ、手動操作レバー部材9が一方の回動方向に回動されたとき(操作つまみ部9bを持ち上げたとき)には、ブレーキ機構13の作動の妨げとならないように、板バネ24の下面から離間した位置に位置している。
【0036】
手動操作レバー部材9が他方の回動方向に回動されたとき(操作つまみ部9bを押し下げたとき)には、セーフティストッパ機構12による架台3の移動規制の設定変更を可能とするために、係合穴22bに対する係合ピン26の係合が解除されるように板バネ24を撓ませる機能を有する。
【0037】
(ブレーキ機構13の作用の説明)
図9に示すように、摺動ローラ17がカム面20の中立位置保持面20aに位置しているときには、圧接パッド21はベース2の上面2aから離反しており、この状態で、コントロールレバー7を前後方向、左右方向に傾動させると、架台3はベース2に対してスムーズに前後左右方向に移動される。
また、架台3のベース2に対する前方移動位置への移動はセーフティストッパ機構12により規制されている。
【0038】
手動操作レバー部材9の操作つまみ部9bを摘んで、手動操作レバー部材9を一方の回動方向(矢印A方向)に回動させると、摺動ローラ17が回動阻止突起20dを乗り越えて、
図11に示すように圧接状態保持面20bに位置する。同時に、係合突部27は板バネ24の下面から遠ざかるので、ブレーキ機構13の操作の妨げとなることが防止される。
【0039】
この手動操作レバー部材9の操作により、シャフト部材15が、付勢スプリング16の付勢力に抗して下降され、圧接パッド21がベース2の上面に圧接される。圧接パッド21は例えばゴム等の摩擦性材料から構成されている。
【0040】
手動操作レバー部材9の操作つまみ部9bによる操作を開放しても、回動阻止突起20dにより摺動ローラ17の移動が規制されるため、手動操作レバー部材9の押圧力により、シャフト部材15はベース2に対する圧接状態を維持する。
【0041】
従って、コントロールレバー7を前後左右方向に傾動させて、架台3をベース2に対して前後左右方向に移動させようとしても、架台3には制動が加えられ、架台3はベース2に対してスムーズに移動しない。
【0042】
手動操作レバー部材9の操作つまみ部9bを、
図11に示す状態から
図9に示す状態に戻すために、矢印B方向に回動させ、摺動ローラ17を回動阻止突起20dを乗り越えて中立位置に復帰させると、付勢スプリング16の付勢力により、シャフト部材15が上昇され、これにより、圧接パッド21によるベース2に対する圧接が解除される。
【0043】
(セーフティストッパ機構12の作用)
手動操作レバー部材9が中立位置にあるときには、
図10に示すように、板バネ24の自由端部の係合ピン26が移動規制板22の係合穴22bに係合されている。このとき、当接壁部22aが移動規制壁部2bに当接しているものとすると、コントロールレバー7の操作により、架台3をベース2に対して前方に移動させようとしても、当接壁部22aと移動規制壁部2bとの協働作用によって、架台3のベース2に対する前方への移動が規制され、これにより、眼に対する安全性が図られる。なお、ベース2に対する架台3の後退はこのセーフティストッパ機構12により規制はされない。
【0044】
その手動操作レバー部材9が中立位置にあるときには、係合凸部27は板バネ24の下面に臨んでおり、手動操作レバー部材9の操作つまみ部9bを摘んで、
図10に示すように、手動操作レバー部材9を他方の回動方向(矢印B方向)に回動させると、
図13、
図14に示すように、板バネ24がその係合凸部27により撓まされて、係合穴22bに対する係合ピン26の係合が解除される。
なお、摺動ローラ17は、
図13に示すように摺動面20cに沿って摺動するので、摺動ローラ17がセーフティストッパ機構12による設定変更操作の妨げとなることは防止される。
【0045】
この
図13、
図14に示す状態で、すなわち、移動規制壁部2bに移動規制板22の当接壁部22aが当接している
図15(a)に示す状態で、コントロールレバー7を操作して、
図15(a)に示す状態から、ベース2に対して架台3を後方(矢印C方向)に移動させると、移動規制板22はスプリング部材23の付勢力により前方に付勢されているので、当接壁部22aが移動規制壁部2bに当接するまで、移動規制板22が架台3に対して相対的に前方にスライドされる。その結果、係合穴22bに対する係合ピン26の位置が
図15(a)に示す位置から
図15(b)に示す位置に変更される。
【0046】
ついで、操作つまみ部9bを離すと、板バネ24の復帰力により、係合ピン26が対応する係合穴22bに係合する。また、手動操作レバー部材9は、その板バネ24の復帰力により回動軸9aを軸心として元の位置に回動復帰される。
【0047】
このように、ベース2に対して架台3を後退させて停止させて、係合ピン26が係合する移動規制板22の係合穴22bの位置を変更すると、その架台3の後退停止位置で当接壁部22aが移動規制壁部2bに当接しているので、架台3をベース2に対してその後退停止位置よりも前方に移動させようとしても、係合ピン26により移動規制板22の架台3に対する相対的スライドが禁止される。その結果、架台3が設定位置よりもベース2に対して前方に移動するのが防止され、各患者毎の眼に対する安全性が図られる。
【0048】
以上説明したように、この実施例によれば、手動操作レバー部材9の一方の回動方向がブレーキ機構13の操作に対応され、手動操作レバー部材9の他方の回動方向がセーフティストッパ機構12の操作に対応され、両者の操作の妨げとならないように手動操作レバー部材9が構成されているので、手動操作レバー部材9をセーフティストッパ機構12とブレーキ機構13とで共通化することができる。