(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数枚の半導体ウェーハを上下方向に並べて収納可能なフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の開口した正面を着脱自在に開閉する蓋体と、容器本体に収納されるレチクル収容容器用の収容治具とを備え、容器本体に自動搬送用の搬送具を取り付けた基板収納容器であって、
容器本体の内部両側に、半導体ウェーハを略水平に支持する一対の支持片を対向させて設け、この一対の支持片に収容治具の両側部を支持させるとともに、収容治具を、複数のレチクル収容容器を上下方向に並べて収納可能なカセットとし、このカセットを、対向してレチクル収容容器を挟む一対のサイドパネルと、この一対のサイドパネルを連結する連結部材と、各サイドパネルから突出して容器本体の支持片に支持される複数の被支持部材とから構成し、一対のサイドパネルの少なくとも対向面に、レチクル収容容器の側部に嵌合する一対の収納溝を対向させて形成し、収納溝の上面を、サイドパネルの前部からサイドパネルの後部下方向に傾斜しながら伸びる第一の傾斜面と、第一の傾斜面からサイドパネルの後部下方向に傾斜しながら伸びる第二の傾斜面とから形成し、収納溝の下面を、サイドパネルの前部からサイドパネルの後部方向に伸びる第一の下面と、この第一の下面の端部に形成される段差溝と、この段差溝からサイドパネルの後部方向に伸びる第二の下面とから形成し、第二の下面を第一の下面よりも低位に位置させたことを特徴とする基板収納容器。
レチクル収容容器の底板の両側壁に、横方向に張り出すガイド部材をそれぞれ設け、一対のサイドパネルの対向面に、レチクル収容容器のガイド部材を支持する搭載片を対向させて設けた請求項1又は2記載の基板収納容器。
【背景技術】
【0002】
半導体製造ラインのリソグラフィ工程で使用される従来のレチクルは、図示しない5インチ角あるいは6インチ角に形成され、専用の収容容器に収容されてストッカーに保管されたり、必要に応じて露光装置まで搬送されたりした後、半導体ウェーハに露光処理して電子回路を形成する作業に使用される(特許文献1、2参照)。
【0003】
レチクル専用の収容容器は、1枚のレチクルを収容可能な背の低い角形に主に形成されるが、自動搬送用の手段を有していないので、搬送時には、別体の収納容器に収納され、台車等に載置して搬送される。この収容容器には、搬送時の便宜を図るため、何らかの搬送手段を設置することが可能ではあるが、外形寸法や保管スペースの拡大を招くおそれがあるので、省略されている。
【0004】
収容容器にレチクルが収容される場合、1枚のレチクルのみが収容されるが、半導体ウェーハに電子回路が形成される場合、一般的には複数枚のレチクルが使用される。このため、レチクルは、電子回路の形成作業に支障を来さないよう、収容容器に収容され、露光装置まで何回も搬送される。
【0005】
一方、露光処理される半導体ウェーハは、生産性の向上に資する大口径のφ300mmタイプが主流であり、工程内の基板収納容器(例えば、SEMI規格で標準化されたFOUP)に25枚が上下に並べて整列収納され、使用されている。基板収納容器は、所定の材料により正面が閉口した背の高いフロントオープンボックスに形成され、天井に搬送用のフランジが装着されており、このフランジが天井搬送装置に吊持された後、半導体の製造ラインを搬送される。
【0006】
レチクルと半導体ウェーハとは、以上のように一度に搬送できる枚数が異なり、電子回路形成のためには、複数枚のレチクルが必要であり、レチクルを何回も搬送しなければならないので、これが律速となって半導体ウェーハの搬送効率の悪化を招くこととなる。また、レチクル用の収容容器と半導体ウェーハ用の基板収納容器とは、大きさや搬送形態が相違し、別々の搬送ラインが要求されるので、複数の搬送ラインを設置しなければならず、設備やコスト、スペースの占有等の点で問題がある。
【0007】
これらの問題を解消するため、従来においては、基板収納容器にレチクルを治具を介して収納し、一種類の基板収納容器を用いて搬送する半導体製造ラインが提案されている(特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、半導体ウェーハ用の基板収納容器にレチクルを治具を介して収納しようとする場合、レチクル用の治具と基板収納容器とでは重量や重心の位置が大きく異なるので、同じように高速搬送することは振動によりレチクルがダメージを受ける等、非常に困難である。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたもので、レチクルと半導体ウェーハとを共に同じ容器に収納することができ、搬送効率を向上させ、搬送ラインを統一して設備やコスト、スペース等の削減を図ることのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するため、複数枚の半導体ウェーハを上下方向に並べて収納可能なフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の開口した正面を着脱自在に開閉する蓋体と、容器本体に収納されるレチクル収容容器用の収容治具とを備え、容器本体に自動搬送用の搬送具を取り付けたものであって、
容器本体の内部両側に、半導体ウェーハを略水平に支持する一対の支持片を対向させて設け、この一対の支持片に収容治具の両側部を
支持させるとともに、収容治具を、複数のレチクル収容容器を上下方向に並べて収納可能なカセットとし、このカセットを、対向してレチクル収容容器を挟む一対のサイドパネルと、この一対のサイドパネルを連結する連結部材と、各サイドパネルから突出して容器本体の支持片に支持される複数の被支持部材とから構成し、一対のサイドパネルの少なくとも対向面に、レチクル収容容器の側部に嵌合する一対の収納溝を対向させて形成し、収納溝の上面を、サイドパネルの前部からサイドパネルの後部下方向に傾斜しながら伸びる第一の傾斜面と、第一の傾斜面からサイドパネルの後部下方向に傾斜しながら伸びる第二の傾斜面とから形成し、収納溝の下面を、サイドパネルの前部からサイドパネルの後部方向に伸びる第一の下面と、この第一の下面の端部に形成される段差溝と、この段差溝からサイドパネルの後部方向に伸びる第二の下面とから形成し、第二の下面を第一の下面よりも低位に位置させたことを特徴としている。
【0012】
なお、レチクル収容容器は、レチクルを収容する底板と、この底板に回転可能に支持され、底板の開口した上面を開閉する上蓋と、この上蓋の前部に回転可能に支持されて底板の開口した前面を開閉する前蓋とを含み、
上蓋と前蓋との間にバネを架設し、上蓋の底板に対向する対向面に、レチクル用の押さえ部材を軸受を介し回転可能に支持させるとともに、この押さえ部材と軸受のいずれかにバネの一部を連結し、前蓋が底板の前面を閉じた場合に押さえ部材を連動させ、この押さえ部材によりレチクルを押さえることができる。
【0013】
また、一対のサイドパネルのうち、少なくとも一方のサイドパネルに、容器本体の内面とレチクル収容容器の前蓋の少なくともいずれかに接触する規制保護部材を設けることもできる。
【0015】
また、レチクル収容容器の底板の両側壁に、横方向に張り出すガイド部材をそれぞれ設け、一対のサイドパネルの対向面に、レチクル収容容器のガイド部材を支持する搭載片を対向させて設けることが可能である。
【0017】
ここで、特許請求の範囲における半導体ウェーハには、少なくともφ300mmや450mmタイプのシリコンウェーハが含まれる。搬送具は、自動搬送用の自動機に対応可能であれば、フランジでも良いし、レール等でも
良い。カセットのサイドパネルと被支持部材とは、一体でも良いし、別体でも良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レチクルと半導体ウェーハを共に同じ容器に収納することができ、搬送効率を向上させ、搬送ラインを統一して設備やコスト等の削減を図ることができるという効果がある。
また、設備投資や搬送ライン用の設置スペースを低減することができるし、複数のレチクルを一度にまとめて安定した姿勢で搬送することができる。また、収納溝の上面における第二の傾斜面がレチクル収容容器の側部と接触することにより、レチクル収容容器のがたつき防止が期待できる。さらに、収納溝の下面における段差溝がレチクル収容容器の側部と接触するので、レチクル収容容器の前後方向への位置ずれ防止が期待できる。
【0019】
また、
請求項2記載の発明によれば、容器本体内の背面や側面等の内面に規制保護部材が接触する場合、カセット又はアダプタが容器本体の前後方向に位置ずれするのを防止することが可能となる。また、レチクル収容容器の前蓋に規制保護部材が接触する場合、衝撃等が加わることで前蓋が回転し、底板の前面が開放してレチクルの汚染等を招くのを防ぐことが可能となる。
【0020】
また、請求項4記載の発明によれば、収納溝の上面における第二の傾斜面がレチクル収容容器の側部と接触することにより、レチクル収容容器のがたつき防止が期待できる。また、収納溝の下面における段差溝がレチクル収容容器の側部と接触するので、レチクル収容容器の前後方向への位置ずれ防止が期待できる。
【0021】
また、
請求項3記載の発明によれば、一対のサイドパネルの対向する内面に収納溝を形成することができない場合にも、カセットを製造することができ、カセットの構成の多様化を図ることが
できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図8に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを収納可能な容器本体1と、この容器本体1の開口した正面を着脱自在に開閉する蓋体10とを備え、容器本体1に、複数枚の半導体ウェーハWの代わりにレチクル収容容器30用の収容治具50を正面側から着脱自在に収納するようにしている。
【0024】
容器本体1と蓋体10とは、所定の樹脂を含有する成形材料により複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。この成形材料の樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。熱可塑性樹脂には、導電性を付与するために、適量のカーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性高分子、金属繊維、金属酸化物等が添加される。
【0025】
容器本体1は、
図1や
図2に示すように、正面が横長に開口した背の高いフロントオープンボックスに成形され、内部の両側、換言すれば、左右両側壁の内面に、φ300mmの半導体ウェーハWの側部周縁を下方から水平に支持する一対の支持片2が対設されており、この一対の支持片2が上下方向に所定の間隔で複数配列される。
【0026】
容器本体1は、例えば25枚や26枚の半導体ウェーハWを上下方向に並べて整列収納可能な大きさに形成される。また、各支持片2は、例えば容器本体1の前後方向に伸びる平坦な棚板に形成され、表面の前後部のうち、少なくとも前部に、収納された半導体ウェーハWが正面方向に位置ずれするのを防止するストッパ3が隆起して一体形成される。
【0027】
容器本体1の底板下面には図示しないボトムプレートが選択的に装着され、容器本体1の天井中央部には、自動搬送用の搬送具である平面矩形のロボティックフランジ4が着脱自在に装着されており、このロボティックフランジ4が工場の天井搬送装置に把持して吊持された後、半導体の製造ラインを搬送される。また、容器本体1の内部背面には、非常時に半導体ウェーハWの後部周縁を挟持可能な複数のリアサポートが並設され、容器本体1の正面周縁部は幅方向外側に屈曲して膨出形成されており、この正面周縁部の内面における上部両側と下部両側とには、蓋体10用の施錠穴5がそれぞれ凹み形成される。
【0028】
容器本体1の両側壁の外面には、手動操作用の操作ハンドル6がそれぞれ着脱自在に装着され、各側壁の下部には、自動搬送具である搬送レール7が必要に応じ着脱自在に装着されて前後方向に水平に指向する。
【0029】
蓋体10は、
図1や
図2に示すように、容器本体1の正面に着脱自在に嵌合される断面略皿形の蓋本体11と、この蓋本体11の開口した表面を覆うカバープレート15とを備え、これら蓋本体11とカバープレート15との間に施錠機構17が内蔵される。蓋本体11は、横長の略矩形に形成され、裏面の中央部に、半導体ウェーハWの前部周縁を弾性片で弾発的に保持するフロントリテーナ12が着脱自在に装着される。
【0030】
蓋本体11の周壁には、容器本体1の正面内周面に圧接変形する枠形のガスケット13が嵌合され、蓋本体11の周壁における上部両側と下部両側とには、施錠機構17用の出没孔14がそれぞれ貫通して穿孔される。また、カバープレート15は、透明、半透明、あるいは不透明の板に形成され、両側部に、施錠機構17用の操作孔16がそれぞれ貫通して穿孔されており、各操作孔16を蓋体開閉装置の回転可能な操作キーが外部から貫通する。
【0031】
施錠機構17は、同図に示すように、カバープレート15の操作孔16を貫通した蓋体開閉装置の操作キーに回転操作される左右一対の回転プレート18と、各回転プレート18の回転に応じて上下方向にスライドする複数のスライドバー19と、各スライドバー19の先端部に連結軸支され、蓋本体11周壁の出没孔14を貫通して容器本体1の施錠穴5に嵌合係止する出没可能な複数の施錠爪20とを備えて構成される。
【0032】
施錠機構17は、容器本体1や蓋体10と同様の成形材料により成形される。複数の回転プレート18とスライドバー19とは、蓋本体11内に設けられる支持リブを介して軸支されたり、支持されたりし、各回転プレート18の周縁部寄りの一対の円弧溝孔21にスライドバー19の末端部がピンを介しそれぞれ遊嵌される。また、各施錠爪20は、例えば断面略L字形に屈曲形成され、自由端部に摩擦軽減用のローラが回転可能に軸支される。
【0033】
このような基板収納容器は、容器本体1内に複数枚の半導体ウェーハWが順次収納され、容器本体1の正面に蓋体10が蓋体開閉装置により圧入して嵌合されるとともに、各半導体ウェーハWの前部周縁をフロントリテーナ12が保持し、施錠機構17が蓋体開閉装置に施錠操作されて蓋体10を強固に固定する。蓋体10が強固に固定されると、容器本体1のロボティックフランジ4が工場の天井搬送装置に吊持され、次の加工処理工程に搬送されて各半導体ウェーハWに加工と処理とが順次施され、半導体ウェーハWの表面に電子回路が形成されることとなる。
【0034】
レチクル収容容器30は、
図3、
図4、
図6〜
図8に示すように、レチクルを1枚収容する平面矩形の底板31と、この底板31の開口した上面を開閉する上蓋39と、この上蓋39に回転可能に軸支されて底板31の開口した前面を開閉する前蓋44とを備えて構成される。このレチクル収容容器30の底板31は、背の低い正面視略チャネル形に形成され、板体の後部周縁にブロック形の後部壁32が立設されるとともに、板体の両側部周縁にブロック形の側壁33がそれぞれ立設されており、これら後部壁32と一対の側壁33とが一体的に連設される。
【0035】
底板31の上面両側部には、1枚のレチクルを水平に搭載する左右一対の支持レール34が配設される。各支持レール34は、例えばレチクルとの接触面積の低減に資する断面略凸字形に形成され、レチクル収容容器30の前後方向に直線的に指向する。また、底板31の両側壁外面には、水平横方向に張り出すガイドグリップ35がそれぞれ配設されている。
【0036】
各ガイドグリップ35は、基本的には握持操作可能な平面略溝形に屈曲形成され、前部に差し込み凹部36が形成されており、この差し込み凹部36に、固定用の押さえバネ37の一端部が挿着される。この押さえバネ37は、他端部側が略鉤形に屈曲形成され、この他端部側が側壁33と上蓋39の側部に係合して弾圧付勢することにより、底板31に上蓋39を固定するよう機能する。また、ガイドグリップ35の後部38は、他の部分よりも水平横方向に張り出し形成され、レチクル収容容器用の図示しない保管棚にレチクル収容容器30が保管されたり、取り出されたりする際のガイドとなる。
【0037】
上蓋39は、底板31の大きさに対応する平面矩形の板に形成され、底板31の後部壁32に上下方向に揺動可能に軸支される。この上蓋39の底板上面に対向する対向面40の両側部付近には、レチクルを上方から押さえる押さえ部材41が軸受42を介しそれぞれ揺動可能(起伏可能)に軸支され、各押さえ部材41が直線的な短いバーに形成される。
【0038】
上蓋39の対向面40の両側部付近には、押さえ部材41の後方に位置するコイルバネ43の一端部がそれぞれ装着され、各コイルバネ43の中央部等の一部が軸受42に連結されており、各コイルバネ43の他端部が前蓋44の内面に装着される。この一対のコイルバネ43は、上蓋39と前蓋44との間に張架され、底板31の開口した前面方向に前蓋44を弾圧付勢することにより、底板31の開口した前面を前蓋44により閉塞するよう機能する。
【0039】
前蓋44は、底板31の前面に対応する横長の板に形成され、上蓋39の前端部に回転可能に軸支されており、回転して一対の押さえ部材41を共に揺動させる。すなわち、前蓋44が回転して底板31の前面を開放する場合、押さえ部材41は、軸受42に連結されたコイルバネ43の伸長動作により、前蓋44に連動してレチクルから離れ、上蓋39の対向面40方向に揺動してレチクルの底板31からの取り出しを許容する。
【0040】
これに対し、前蓋44が回転して底板31の前面を閉塞する場合、押さえ部材41は、軸受42に連結されたコイルバネ43の圧縮動作により、前蓋44に連動して上蓋39の対向面40から離れ、レチクル方向に揺動して接触することにより、レチクルの底板31からの取り出しやがたつきを規制することとなる。
【0041】
収容治具50は、
図1、
図3〜
図5に示すように、複数のレチクル収容容器30を上下方向に並べて整列収納可能な中空のカセット51からなる。このカセット51は、対向して水平状態のレチクル収容容器30を左右から挟持する一対のサイドパネル52と、この一対のサイドパネル52の間に架設されて連結する複数本(例えば、2〜8本)の連結バー62と、一対のサイドパネル52の外面中央部付近からそれぞれ突出して容器本体1の支持片2に支持される一対の被支持片63とから構成される。
【0042】
カセット51を構成するサイドパネル52、連結バー62、被支持片63は、所定の成形材料、例えばポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン等の各種合成樹脂、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系等の熱可塑性エラストマーにより成形される。これらの成形材料に導電性を付与したい場合等には、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性高分子、金属繊維、金属酸化物等の導電性添加物が添加される。
【0043】
一対のサイドパネル52は、それぞれ矩形の板に形成され、四隅を含む周縁部に連結バー62用の複数の螺子孔がそれぞれ貫通して穿孔される。この一対のサイドパネル52の少なくとも相対向する内面には、レチクル収容容器30の側部であるガイドグリップ35に嵌挿される一対の収納溝53が対向して切り欠かれ、この一対の収納溝53が上下方向に所定のピッチで配列されており、各収納溝53がサイドパネル52の前部から後部方向に向かうにしたがい細くなる長い先細りの台形に形成される。
【0044】
収納溝53の上面は、
図6や
図7に示すように、サイドパネル52の前端部からサイドパネル52の中央部下方向に傾斜しながら伸びる第一の傾斜面54と、この第一の傾斜面54の端部から下方に僅かに伸びる段差面55と、この段差面55の端部からサイドパネル52の後部下方向にやや傾斜しながら長く伸びる第二の傾斜面56とを備えて一体形成される。
【0045】
第一、第二の傾斜面54、56は、第一の傾斜面54がレチクル収容容器30のガイドグリップ35との嵌合が容易になるよう大きく傾斜し、第二の傾斜面56が第一の傾斜面54よりも低く位置してガイドグリップ35と接触することにより、レチクル収容容器30のがたつきを有効に防止する。
【0046】
収納溝53の下面は、同図に示すように、サイドパネル52の前端部からサイドパネル52の中央部方向に伸びる第一の下面57と、この第一の下面57の端部から下方に僅かに伸びて上方に折り返される断面略J字形の段差溝58と、この段差溝58の折り返された短い端部からサイドパネル52の後部方向に長く伸びる第二の下面59とを備えて一体形成される。第一の下面57と第一の傾斜面54との間の長さ(高さ)は、第二の下面59と第二の傾斜面56との間の長さ(高さ)よりも長くなり、大きく開口するよう調整される。また、第二の下面59は、第一の下面57よりもやや下方に位置する。
【0047】
段差溝58は、例えば収納溝53の段差面55の直下やその付近に位置し、収納溝53に収納されるガイドグリップ35の後部38と嵌合接触し、レチクル収容容器30の前後方向への位置ずれを有効に防止する。この段差溝58の湾曲した底は、ガイドグリップ35の寸法誤差の悪影響を緩和できる回避部60が選択的に深く下方に形成される。
【0048】
各サイドパネル52の後端部からは規制保護片61が内方向に突出し、この規制保護片61が上下方向に細長く伸長する。この規制保護片61は、容器本体1内の背面や側面等からなる内面に接触してカセット51が容器本体1の背面方向に位置ずれするのを規制したり、レチクル収容容器30の前蓋側部に接触したりしてその回転を規制することにより、前蓋44が衝撃等の作用で回転して底板31の前面が不必要に開放するのを阻止する。
【0049】
各連結バー62は、例えば細長い円柱に形成され、両端部の周面に螺子溝がそれぞれ形成されており、この螺子溝がサイドパネル52の螺子孔に螺嵌される。連結バー62は、レチクル収容容器30の幅を考慮して長さが設定され、レチクル収容容器30の両側壁外面とサイドパネル52の内面とを接触させ、レチクル収容容器30が左右方向にがたつくのを防止する。このような連結バー62は、各サイドパネル52の螺子孔に端部が螺嵌され、螺子孔から露出した端部にボルトやビス等の締結具が外部から螺挿されることにより、一対のサイドパネル52を強固に連結する。
【0050】
一対の被支持片63は、容器本体1の支持片2間に挿入可能な厚さと長さを有する板にそれぞれ形成され、被支持片63と被支持片63との間の最大幅寸法B1が容器本体1の一対の支持片2が形成する支持溝の最大幅寸法B2よりも小さくなるよう、それぞれの幅寸法が設定される(
図4、
図5参照)。各被支持片63は、カセット51の前後方向に伸びる平面矩形に形成され、下面の前部先端に位置決め用の切り欠き64が形成されており、この切り欠き64が支持片2のストッパ3と支持片2の奥側壁との間に嵌合支持されることにより、容器本体1の正面方向、奥側方向にカセット51が位置ずれするのを有効に防止する。
【0051】
基板収納容器は、複数のレチクル収容容器30を整列収納したカセット51を容器本体1に収納した場合の重心位置が複数枚の半導体ウェーハWを整列収納した場合の重心位置と0〜±1.0mmの範囲内に調整される。この範囲内の調整により、複数のレチクル収容容器30を収納したカセット51を容器本体1に収納した場合にも、工場の天井搬送装置により搬送することが可能となる。
【0052】
上記構成において、レチクル収容容器30に1枚のレチクルを収容する場合には、開放した底板31の一対の支持レール34上にレチクルを水平に支持させ、開放した上蓋39を閉じるとともに、底板31に上蓋39を押さえバネ37により固定し、前端部の前蓋44を閉じることにより、レチクルに一対の押さえ部材41を回転させて位置決め接触させれば、レチクル収容容器30に1枚のレチクルを収容することができる。
【0053】
次に、カセット51にレチクル収容容器30を収納する場合には、一対のサイドパネル52間にレチクル収容容器30を挿入してそのガイドグリップ35を収納溝53に嵌入(
図7参照)し、サイドパネル52の前部から後部方向にレチクル収容容器30をスライドさせてその前蓋44の両側部を一対の規制保護片61に接触させ、各収納溝53の第二の傾斜面56にガイドグリップ35を接触させるとともに、各収納溝53の段差面55にガイドグリップ35を嵌合してがたつきを未然に防止する(
図8参照)ようにすれば、カセット51にレチクル収容容器30を収納することができる。
【0054】
次に、基板収納容器にカセット51を収納する場合には、空の容器本体1内にカセット51を収納し、容器本体1の対向する一対の支持片2にカセット51の被支持片63をそれぞれ支持させ、位置や姿勢を安定させた後、容器本体1の開口した正面に蓋体10を圧入して嵌合すれば、基板収納容器にカセット51を収納することができる。
【0055】
上記構成によれば、半導体ウェーハWを収納した基板収納容器の重心位置と、カセット51を収納したときの基板収納容器の重心位置とが略一致するよう調整しているので、収納する物品により、重心の位置が大きく相違するのを防ぐことができる。したがって、半導体ウェーハWを収納した基板収納容器と、レチクル収容容器30を収納した基板収納容器とを高速搬送しても、同じように安全に搬送することができる。
【0056】
また、基板収納容器とカセット51とを使用すれば、一度に複数枚のレチクルを搬送することができるので、半導体ウェーハWの搬送効率の悪化を有効に防止することができる。また、複数の搬送ラインを設置する必要がないので、設備やコスト、スペース等を大幅に削減することが可能になる。
【0057】
次に、
図9は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、各サイドパネル52に、収納溝53の近傍に位置する係止バネ65を支持するためにその一端部を軸止し、係止バネ65が傾くように配設して、この係止バネ65を収納溝53に完全に嵌合したガイドグリップ35に弾接するようにしている。
【0058】
収納溝53の上面は、サイドパネル52の前端部からサイドパネル52の中央部下方向に傾斜しながら伸びる第一の傾斜面54と、この第一の傾斜面54の端部から上方に緩やかに湾曲しながら伸びて下方に折り返される略逆V字形の段差面55Aと、この段差面55Aの折り返された端部からサイドパネル52の後部下方向にやや傾斜しながら伸びる第二の傾斜面56とを備えて一体形成される。また、係止バネ65は、例えば細長い板バネ等からなり、略へ字形に屈曲形成されてその短い先端部66がガイドグリップ35に上方から圧接する。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0059】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、簡易な構成でレチクル収容容器30が上下方向にがたつくのをさらに有効に防止することができるのは明らかである。
【0060】
次に、
図10は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、一対のサイドパネル52の相対向する内面に、レチクル収容容器30のガイドグリップ35を支持する搭載片67を対設し、この一対の搭載片67を上下方向に所定のピッチで配列するようにしている。
【0061】
一対の搭載片67の寸法は、その根元部間の最大間隔B3がレチクル収容容器30の最大幅寸法Bよりも僅かに大きく設定される(この点については、
図6参照)。また、一対の搭載片67の先端部間の間隔B4は、レチクル収容容器30の最大幅寸法Bよりも小さく設定(この点についても、
図6参照)され、好ましくはガイドグリップ35を確実に支持する観点から、底板31の側壁幅よりも僅かに大きく設定される。これらの寸法は、連結バー62や搭載片67の長さの調整により実現される。
【0062】
各搭載片67は、カセット51の前後方向に伸びる平面矩形の細長い板に形成される。この搭載片67の上面は、例えばサイドパネル52の前端部からサイドパネル52の中央部方向に伸びる第一の上面68と、この第一の上面68の端部から下方に僅かに伸びる段差面と、この段差面の短い端部からサイドパネル52の後部方向に伸びる第二の上面69とから一体形成される。第二の上面69は、第一の上面68よりもやや下方に位置する。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0063】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、カセット51の製造の際、一対のサイドパネル52の対向する内面に収納溝53をそれぞれ高精度に切り欠くことができない場合に実に有意義である。
【0064】
次に、
図11と
図12は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、収容治具50を中空のカセット51とするのではなく、1個のレチクル収容容器30を搭載するアダプタ70とし、このアダプタ70を容器本体1内の上下方向に間隔を空けて必要枚数収納するようにしている。
【0065】
レチクル収容容器30は、上記実施形態で説明した容器でも良いが、別のタイプ30Aでも良い(例えば、レチクルSMIF POD14と呼ばれる収容容器等)。この別のレチクル収容容器30Aは、例えばレチクルを1枚水平に収容する平面矩形で箱形の底板と、この底板の開口した上面に着脱自在に嵌合する平面矩形の上蓋とを備えて構成される。
【0066】
アダプタ70は、例えばカセット51と同様の成形材料により、容器本体1の隣接する支持片2間に挿入可能な厚さと大きさを有する円板に成形され、両側部の周縁が容器本体1の一対の支持片2に支持される。このアダプタ70の上面周縁部付近には、レチクル収容容器30・30Aに前後左右、前後、又は左右から接触して位置決めする複数の位置決めバー71が間隔をおいて配設され、各位置決めバー71が直線的な略I字形等に形成される。アダプタ70の上面には、レチクル収容容器30・30A用の収容穴等を選択的に設けることができる。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0067】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、設備投資の削減や省スペース化を図り、生産効率を向上させることもできる。また、アダプタ70の上方や左右に余裕のスペースが存在するので、別タイプのレチクル収容容器30Aをも簡易に収容することができる。
【0068】
次に、
図13と
図14は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、アダプタ70を横長の平面矩形に形成し、このアダプタ70の上面に、レチクル収容容器30に四隅、斜め二隅、又は二隅から接触して位置決めする複数の位置決めバー71Aを間隔をおいて配設し、各位置決めバー71Aを平面略L字形に屈曲形成するようにしている。
【0069】
アダプタ70は、その上面の後端部に、容器本体1の内面とレチクル収容容器30の前蓋44のうち、少なくとも前蓋44の下部に接触してその回転を規制する規制保護片61Aが左右方向に細長く一体形成され、両側部から薄肉の張出片72がそれぞれ水平横方向に突出しており、この一対の張出片72が容器本体1の支持片2に着脱自在に支持される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0070】
本実施形態においても上記実施形態と同様、設備投資の削減や省スペース化を図ることができ、生産効率の向上も期待できる。
【0071】
なお、上記実施形態ではコイルバネ43の一部と押さえ部材41の軸受42とを連結したが、前蓋44と押さえ部材41とを連動させることができるのであれば、押さえ部材41とコイルバネ43の一部とを連結しても良い。また、上記実施形態ではサイドパネル52の内面のみに収納溝53を切り欠いたが、サイドパネル52に収納溝53を貫通して切り欠いても良い。また、各サイドパネル52やアダプタ70の後端部に規制保護片61を一体形成したが、少なくとも一方のサイドパネル52の後部に規制保護片61を形成しても良いし、別体の規制保護片61を後付けしても良い。
【0072】
また、規制保護片61を上下方向に細長く連続的に伸ばしたが、サイドパネル52の後部上下方向に複数の規制保護片61を間隔をおいて並べ設け、各規制保護片61をレチクル収容容器30の前蓋44側部に接触させることもできる。また、上記実施形態ではサイドパネル52の螺子孔に連結バー62の端部を螺嵌したが、熱溶着法、超音波溶着法、高周波溶着法、レーザ溶着法等により、サイドパネル52に連結バー62を連結することもできる。
【0073】
また、サイドパネル52と連結バー62のいずれか一方に凹部を、他方には凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部とを摩擦係合等させることにより、サイドパネル52と連結バー62とを連結することもできる。さらに、連結部材は、円柱の連結バー62に何ら限定されるものではなく、例えば一対のサイドパネル52の間に架設される単数複数の連結板等でも良い。