(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、排気ガスに含まれる酸素濃度を検知するガスセンサとして、酸素イオン導電性を有するガス検出素子が設けられたセンサであって、車両の内燃機関の排気管に取り付けられるものが知られている。このように、排気管に取り付けられるガスセンサは高温の酸化雰囲気である排気中に晒されるため、腐食が促進されやすい環境下にある。
【0003】
特許文献1に記載されているガスセンサと同様な構成を有するセンサ(
図5参照)を例に挙げて説明すると、ガスセンサP5では、ガス検出素子P1が主体金具P2内に固定されるとともに、ガス検出素子P1の後端側を金属製の外筒P3および保護外筒P4で覆われている。
【0004】
この種のガスセンサP5では、ガス検出素子P1の後端側に、外筒P3の後端側で位置決めされたセパレータP6が配置され、内側電極P7に接触して端子金具P8が配置されている。また、この端子金具P8の後端側は、セパレータP6の貫通孔P9に配置されるとともに、貫通孔P9内にて、センサ出力を取り出すリード線P10と接続されている。
【0005】
更に、外筒P3および保護外筒P4には、それぞれ連通孔P13および連通孔P14が設けられている。連通孔P13および連通孔P14は、酸素基準源となる大気側、つまりガスセンサP5の外部と、ガス検出素子の内部空間P12との間で空気が流通するガス検出素子P1の後端側の空間P11と、を連通させるものである。なお、外筒P3と保護外筒P4との間には、ガスの通過は可能で水の通過を阻止するフィルタP15が配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、外筒や保護外筒、主体金具をステンレス鋼であるSUSで形成していたが、近年では生産コストを下げるため、主体金具を高価なSUSに代わり、安価なFeを採用することがある。しかしながら、そのまま主体金具にFeを採用すると、高温の酸化雰囲気下にあっては、イオン化傾向の大きいFeは腐食してしまう虞がある。ゆえに、主体金具への使用に供しては、高温の酸化雰囲気であっても腐食に強いNiメッキを予め施すなどして防蝕加工を行うことが一般的である。
【0008】
そして、
図5のガスセンサの場合、主体金具P2は、その後端を加締めることによって外筒P3に固定されている。ところが、加締めを実施することに起因して主体金具上に形成されたNiメッキ層にクラックが入る場合がある。このクラックによって主体金具の一部が外部に露出してしまうと、その部分を起点に、腐食する可能性があった。主体金具の腐食は亀裂や貫通孔の形成につながり、この亀裂や貫通孔によってガスセンサ内部が気密に保たれなくなるため、ガスセンサが排気ガスに含まれる酸素濃度を正確に検知できなくなる虞がある。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、加締めによって主体金具上の防蝕メッキ層にクラックが入った場合であっても、主体金具の腐食を抑制することができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のガスセンサは、軸線方向に向かって延び、先端側が被測定ガスに晒されるガス検出素子と、前記ガス検出素子の後端側の部分を収納すると共に、前記ガス検出素子の先端側の部分を突出させる主体金具と、前記主体金具における後端側に配置され、前記主体金具の後端側
が径方向内側に向かって変形されてなる加締め部によって自身の先端側が固定される外筒体と、を備えるガスセンサにおいて、前記主体金具は、自身よりもイオン化傾向が小さい金属からなるメッキが施されてなり、前記加締め部は、
該加締め部上に形成されたメッキ層を介して、前記外筒体に挿通可能な開口部を有し、前記主体金具よりもイオン化傾向が大きい金属からなる略環状の犠牲腐食部材に覆われていることを特徴とする。
【0011】
本発明のガスセンサによれば、主体金具の後端側に設けられた加締め部が、自身よりもイオン化傾向が大きい金属からなる略環状の犠牲腐食部材に覆われている。ゆえに、加締めなどの外圧によって加締め部上に形成されたメッキ層にクラックが入っていたとしても、メッキ層とは別体の犠牲腐食部材が被水した塩水等の導電物を介して主体金具に導通するため、主体金具よりも優先して腐食することとなり、主体金具の腐食を抑制することができる。
【0012】
上記発明において、前記主体金具は、鉄からなることを特徴とする。
このように、イオン化傾向が大きく、腐食しやすい金属を主体金具に採用するときに、特に本発明が有用となる。
【0013】
上記発明において、前記外筒体の筒部の外側を径方向にわたって覆う保護外筒と、前記保護外筒と前記外筒体とに挟持され、前記保護外筒よりも軸線方向先端側に突出するフィルタと、をさらに備え、前記犠牲腐食部材は、前記主体金具と前記フィルタとに挟持されることを特徴とする。
このように、犠牲腐食部材を主体金具と前記フィルタとに挟持させることで、溶接や加締めなどの工程を増やすことなく犠牲腐食部材を主体金具に対して簡便に固定することができる。
【0014】
上記発明において、前記犠牲腐食部材、及び前記主体金具は、外気に晒されることを特徴とする。
このように、外気に直接晒されるような被水リスクの高い構成を採るガスセンサの場合、特に本発明が有用である。具体的には、犠牲腐食部材を有しないガスセンサにおいては、主体金具上のメッキ層にクラックが入っていた場合、塩水などの導電物によって主体金具の腐食が促進されてしまうが、本発明のように犠牲腐食部材を有するガスセンサにおいては、犠牲腐食部材が導電物を介して主体金具に導通するため、主体金具よりも優先して腐食することとなり、その結果、主体金具の腐食を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガスセンサによれば、主体金具の後端側に設けられた加締め部が、自身よりもイオン化傾向が大きい金属からなる略環状の犠牲腐食部材に覆われている。ゆえに、加締めによって主体金具上の防蝕メッキ層にクラックが入った場合であっても、主体金具に導通する犠牲腐食部材が優先して腐食することとなり、主体金具の腐食を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態に係るガスセンサについて、
図1から
図4を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るガスセンサ1の全体構成を説明する断面視図である。
本実施形態では、本発明のガスセンサを、例えば乗用車等の車両に搭載された内燃機関のエンジンヘッドに締結され、エンジンヘッド内に形成された排気流路内にガスセンサの先端部分が突出されたセンサであり、排気ガス中の酸素濃度を計測する酸素センサに適用して説明する。なお、以下の説明では、軸線Oに沿う方向のうち、プロテクタ60の取り付けられる側を先端側とし、この逆側を後端側として説明する。
【0018】
本実施形態のガスセンサ1は、後述するガス検出素子10を加熱するためのヒータを備えていない、いわゆるヒータレスのセンサであり、排気ガスの熱によってガス検出素子10を加熱して活性化し、排気ガス中の酸素濃度を計測するものである。
【0019】
ガスセンサ1には、
図1に示すように、ガス検出素子(ガス検出素子)10と、セパレータ20と、閉塞部材30と、端子金具40と、リード線45とが主として備えられているとともに、それらの周囲を覆う主体金具50と、プロテクタ60と、外筒体70と、保護外筒80等が備えられている。
【0020】
図2は、
図1のガス検出素子10の構成を説明する図であり、ガス検出素子10は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質から形成されたものである。ガス検出素子10は、軸線O方向に延びる円筒状に形成され、先端側の端部12が閉塞された素子本体11から主に構成されている。素子本体11の外周には、径方向外向きに突出する鍔部13が周方向にわたって設けられている。なお、本実施形態では、ガス検出素子10が筒状に形成された例に適用して説明しているが、筒状に形成されたものに限定されることなく、板状に形成されたものであってもよく、特に限定するものではない。
【0021】
素子本体11を構成する固体電解質としては、例えば、Y
2O
3又はCaOを固溶させたZrO
2が代表的なものである。この個体電解質以外にも、アルカリ土類金属または希土類金属の酸化物とZrO
2との固溶体である固体電解質を使用しても良い。また、アルカリ土類金属または希土類金属の酸化物とZrO
2との固溶体に、さらにHfO
2が含有された固体電解質を使用しても良い。
【0022】
素子本体11の外周面には、外側電極14と、縦リード部15と、環状リード部16とが形成されている。外側電極14は、ガス検出素子10の端部12に、PtあるいはPt合金(以下、「Pt等」と表記する。)を多孔質に形成した電極である。縦リード部15は、外側電極14から軸線方向に延びる導電部であり、Pt等から形成されたものである。環状リード部16は、鍔部13の下面側(
図2の下方)に環状に形成され、縦リード部15と導電可能に接続される導電部であり、Pt等から形成されたものである。素子本体11の内周面には、Pt等を多孔質に形成した内側電極17が形成されている。
【0023】
図3は、
図1のセパレータ20、閉塞部材30、および、保護外筒80などの構成を説明する部分分解斜視図であり、セパレータ20は、
図1および
図3に示すように、ガス検出素子10と閉塞部材30との間に配置される部材である。また、セパレータ20は、電気絶縁性を有する材料、例えばアルミナから形成された円筒形状の部材であり、セパレータ20の軸中心には、リード線45が挿通される貫通孔21が形成されている。
【0024】
閉塞部材30は、例えばフッ素ゴムなどの弾性材料からなる円筒形状のシール部材であり、ガスセンサ1の後端に配置される部材である。閉塞部材30の軸中心には、リード線45が挿通される貫通孔31が形成されている。閉塞部材30の先端側は、セパレータ20の後端側に気密に密着し、後端側の外周は、外筒体70の内周面や保護外筒80の内周面と気密に密着する。このように閉塞部材30は、ガスセンサ1の内部と外部とを気密に分離している。即ち、ガスセンサ1の後端側は、閉塞部材30によって、気密に閉塞されている。
【0025】
端子金具40は、ニッケル合金(例えばJIS規格のSUS304CSP)から形成された金具であり、センサ出力を外部に取り出す略筒状に形成された部材である。端子金具40は、リード線45に導電可能に接続されているとともに、ガス検出素子10の内側電極17に接触して配置されている。
【0026】
端子金具40の後端には、径方向外側に向かって延びる3つのフランジ片41が、周方向に等間隔に並んで設けられている。言い換えると、3つのフランジ片41の間には、周方向に広がる隙間が形成されている。
【0027】
主体金具50は、
図1に示すように、鉄から形成された部材であり、概ね円筒状に形成された部材である。主体金具50には、ガス検出素子10の鍔部13を支持する段部51が、内周面から径方向内側に向かって、周方向にわたって突出して設けられている。また、主体金具50の外表面には、予めNiメッキが施され、薄膜のNiメッキ層(図示せず)が形成されている。
【0028】
主体金具50の先端側の外周面には、ガスセンサ1を内燃機関のエンジンヘッド(図示せず。)に取付けるネジ部(取付け部)52と、ネジ部52をエンジンヘッドにネジ込むための取付工具を係合させる六角部53と、が周方向にわたって設けられている。なお、主体金具50の先端から後端に向かって、ネジ部52、六角部53の順に並んで配置されている。更に、この主体金具50の後端側、言い換えると、六角部53の後端側に隣接した位置に筒状部54が設けられている。
【0029】
プロテクタ60は、ステンレス鋼(例えば、JIS規格のSUS310S)から形成された部材であり、ガス検出素子10の先端を覆う保護部材である。プロテクタ60は、軸線方向に延びる筒状の部材であって、先端が閉塞された形状に形成されている。プロテクタ60の後端縁は、ガス検出素子10の鍔部13と主体金具50の段部51との間に挟まれて固定されている。また、主体金具50とガス検出素子10との間には、先端側より順に、滑石から形成されたセラミック粉末65と、アルミナから形成されたセラミックスリーブ66と、が配置されている。
【0030】
外筒体70は、鉄から形成された部材であり、主体金具50の内部に差し込まれると共に、セラミックスリーブ66の後端側に隣接して配置されるものである。外筒体70には、軸線方向に沿って延びる筒状に形成された筒部71と、筒部71の先端側から径方向外側に向かって広がる鍔部72と、筒部71に形成された貫通孔である通気孔73と、が設けられている。また、外筒体70の外表面には、予めNiメッキが施され、薄膜のNiメッキ層(図示せず)が形成されている。
【0031】
筒部71は、内部にガス検出素子10の後端や、セパレータ20や、閉塞部材30の先端が配置される部材である。さらに筒部71は、保護外筒80が加締められた際に、同時に径方向内側に向かって変形し、内周面が閉塞部材30の外周面と密着するものである。
【0032】
鍔部72は、先端側の面がセラミックスリーブ66と接触して配置されていると共に、後端側の面には、Niメッキが施された鉄からなる金属リング67が配置されている。
【0033】
また、主体金具50には、筒状部54の後端に外筒体70を主体金具50に固定する加締め部55が設けられている。加締め部55は、筒状に延びる筒状部54の後端に対して力を加えて、径方向内側に向かって変形された部分である。加締め部55は、金属リング67や、鍔部72や、セラミックスリーブ66や、セラミック粉末65などを軸線方向に沿って先端側に押し付けている。なお、加締め部55は、外筒体70の筒部71との間に隙間が形成されていてもよいし、接触していてもよい。隙間は、外筒体70またはフィルタ75の厚みよりも狭く形成されている。
【0034】
外筒体70の外周には、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いて筒状に形成された撥水性を有するフィルタ(通気フィルタ)75が配置されている。フィルタ75の先端側の端部は、
図1および
図4に示すように、後述する主体金具50の加締め部55を覆う犠牲腐食部材90と、周方向にわたって接触している。フィルタ75の後端は、
図1に示すように、外筒体70の後端と同じ位置まで延びて配置されている。フィルタ75は、通気は可能であるが水分の侵入は防止できるものである。
【0035】
なお、上述のようにフィルタ75は、主体金具50の加締め部55と直接に接触してもよいし、犠牲腐食部材90を介して加締め部55と接触してもよく、特に限定するものではない。
【0036】
さらに、上述の筒状に形成されたフィルタ75には、実際に筒状に形成されたものの他に、シート状に形成されたフィルタ75を一周以上巻いたもの、言い換えると、巻いて一部をオーバーラップさせたものも含まれる。
【0037】
フィルタ75の外周には、主体金具50とは異なるステンレス鋼(例えばSUS304L)を用いて、概ね筒状に形成された保護外筒80が配置されている。保護外筒80は、外周側から加締められることにより、外筒体70との間でフィルタ75を挟みこみ、保持するものである。さらに、保護外筒80の後端は、先端と比較して径が小さく形成され、保護外筒80の後端には、閉塞部材30の後端が嵌め込まれている。この状態で外周側から加締められるため、保護外筒80は、閉塞部材30を外筒体70の後端に固定することができる。
【0038】
保護外筒80には、外筒体70の通気孔73と対応する位置に、貫通孔である通気孔81が設けられている。通気孔73および通気孔81は、大気と、ガスセンサ1の内部、詳しくは、ガス検出素子10の内側電極17側の内部空間18とを空気の流通が可能に連通させるものである。
【0039】
犠牲腐食部材90は、亜鉛から形成された環状の部材であり、主体金具50の加締め部55を周方向にわたって覆っている。また、犠牲腐食部材90の後端向き面は、フィルタ75の先端側の端部が周方向にわたって接触し、主体金具50側へと押圧される。換言すると、犠牲腐食部材90は、主体金具50とフィルタ75とに挟持されている。
【0040】
次に、本実施形態のガスセンサ1の製造手順について簡単に説明する。
始めに、
図1に示すように、主体金具50に形成された貫通孔内に、後端側から先端側に向けてプロテクタ60とガス検出素子10とを挿入する。次に、主体金具50とガス検出素子10との間の空間に、セラミック粉末65およびセラミックスリーブ66を配置する。
【0041】
セラミックスリーブ66の後端側に、鍔部72が接触するように外筒体70を配置し、鍔部72の後端側の面に金属リング67を配置する。この状態で、主体金具50の筒状部54の後端を加締めて、具体的には、径方向外側から内側に向けて塑性変形させて加締め部55を形成する。加締め部55は、金属リング67を介して外筒体70をセラミックスリーブ66に押し付けると共に、外筒体70を主体金具50に固定する。
【0042】
その後、
図1および
図4に示すように、外部に露出する主体金具50の加締め部55に対し、犠牲腐食部材90を被せ、さらに外筒体70の外周を周方向にわたって覆うようにフィルタ75を配置する。このとき、フィルタ75の先端側の端部は、犠牲腐食部材90に突き当てられ、犠牲腐食部材90と外筒体70の筒部71との境目を周方向にわたって覆うように配置されている。
【0043】
その一方で、
図3に示すように、セパレータ20の貫通孔21と閉塞部材30の貫通孔31と保護外筒80にリード線45を通し、そのリード線45の先端に端子金具40を固定する。以下では、これを複合部材91と表記する。
【0044】
形成された複合部材91は外筒体70内に差し込まれ、
図1に示すように、端子金具40の先端をガス検出素子10の内部空間18に挿入し、端子金具40と内側電極17とを接触させる。このとき、端子金具40は、フランジ片41がガス検出素子10の後端部に接触するまで挿入され、位置決めされる。
【0045】
同時に、セパレータ20および閉塞部材30の先端側を外筒体70内に配置するとともに、セパレータ20、閉塞部材30および保護外筒80を先端側に押圧する。さらに、フィルタ75の外周側に保護外筒80を嵌め込む。さらに、保護外筒80の先端側の端部は、犠牲腐食部材90から離れているため、フィルタ75の先端側の端部は、保護外筒80の先端側の端部と犠牲腐食部材90との間で露出している。
【0046】
その後、保護外筒80を径方向外側から内側に向けて加締めることにより、保護外筒80と外筒体70とを一体に固定する。加締めは、通気孔73および通気孔81が形成された位置以外の位置で行われる。以上により、ガスセンサ1が完成する。
【0047】
本実施形態では、通気孔73および通気孔81が形成された位置の先端側および後端側の二つの位置で加締めが行われる例に適用して説明する。この場合、保護外筒80の先端側の端部は、少なくとも、先端側で行われる加締め位置の先端側の端、または、この加締め位置よりも主体金具50に近い位置まで延びていることが望ましい。
【0048】
上記の構成のガスセンサ1によれば、主体金具50の後端側に設けられた加締め部55が、自身よりもイオン化傾向が大きい金属からなる略環状の犠牲腐食部材90に覆われている。ゆえに、加締めなどの外圧によって加締め部55上に形成されたNiメッキ層にクラックが入っていたとしても、Niメッキ層とは別体の犠牲腐食部材90が被水した塩水等の導電物を介して主体金具50に導通するため、主体金具50よりも優先して腐食することとなり、主体金具50の腐食を抑制することができる。
【0049】
また、イオン化傾向が大きく、腐食しやすい鉄を主体金具50に採用するときに、特に本発明が有用となる。
【0050】
また、犠牲腐食部材90を主体金具50とフィルタ75とに挟持させることで、溶接や加締めなどの工程を増やすことなく犠牲腐食部材を主体金具に対して簡便に固定することができる。
【0051】
また、主体金具50の加締め部55が外気に直接晒されるような被水リスクの高い構成を採るガスセンサの場合、本発明が特に有用である。具体的には、犠牲腐食部材を有しないガスセンサにおいては、主体金具上のメッキ層にクラックが入っていた場合、塩水などの導電物によって主体金具の腐食が促進されてしまうが、本発明のように犠牲腐食部材を有するガスセンサ1においては、犠牲腐食部材90が導電物を介して主体金具50に導通するため、主体金具50よりも優先して腐食することとなり、その結果、主体金具50の腐食を抑制することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、主体金具50、外筒体70を鉄から形成した例に適用して説明したが、主体金具50、外筒体70をその他の材料から形成してもよく、特に限定するものではない。例えば、外筒体70にアルミナ等のセラミックを採用しても良い。また、犠牲腐食部材90を亜鉛から形成した例に適用して説明したが、例えばアルミニウム、マグネシウム、アルミニウム-亜鉛合金等、その他の金属から形成してもよく、特に限定するものではない。