特許第5916541号(P5916541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916541
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】車載システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20160422BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20160422BHJP
   B60R 1/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   G01C21/26 A
   B60R1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-149247(P2012-149247)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-10800(P2014-10800A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】及川 卓
(72)【発明者】
【氏名】島田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光明
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−284458(JP,A)
【文献】 特開2007−272350(JP,A)
【文献】 特開平10−068906(JP,A)
【文献】 米国特許第06272431(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 1/00
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載される車載システムであって、
前記自動車前方の実空間の風景上に映像を重畳表示する表示部と、
前記自動車の進行方向を案内するマーカーを、前記表示部を用いて、前記自動車前方の実空間上の地点に重なる位置に表示するマーカー表示手段と、
前記自動車前方の危険の発生を監視する前方監視手段と、
前記前方監視手段が発生を検知した危険の緊急レベルを算定する緊急レベル算定手段とを備え、
前記マーカー表示手段は、
前記前方監視手段が前記自動車前方の危険の発生を検知したときに、前記マーカーの大きさが時間経過に従って漸増し、かつ、前記マーカーを表示する位置が重なる前記自動車前方の実空間上の地点までの前記自動車からの距離が、前記マーカーを表示する位置が重なる前記自動車前方の実空間上の地点が前記緊急レベル算定手段が算定した前記緊急レベルに応じて定まる地点である最接近地点となるまで、時間経過に従って漸減するように、前記マーカーの表示を行い、かつ、
当該マーカー表示手段は、前記最接近地点を、前記緊急レベル算定手段が算定した前記緊急レベルがより高いほど前記自動車により近い地点となるように定めることを特徴とする車載システム。
【請求項2】
自動車に搭載される車載システムであって、
前記自動車前方の実空間の風景上に映像を重畳表示する表示部と、
前記自動車の進行方向を案内するマーカーを、前記表示部を用いて、前記自動車前方の実空間上の地点に重なる位置に表示するマーカー表示手段と、
前記自動車前方の危険の発生を監視する前方監視手段と、
前記前方監視手段が発生を検知した危険の緊急レベルを算定する緊急レベル算定手段とを備え、
前記マーカー表示手段は、
前記前方監視手段が前記自動車前方の危険の発生を検知したときに、前記マーカーを表示する位置が重なる前記自動車前方の実空間上の地点までの前記自動車からの距離が、前記マーカーを表示する位置が重なる前記自動車前方の実空間上の地点が前記緊急レベル算定手段が算定した前記緊急レベルに応じて定まる地点である最接近地点となるまで、時間経過に従って漸減するように、前記マーカーの表示を行い、かつ、
当該マーカー表示手段は、前記最接近地点を、前記緊急レベル算定手段が算定した前記緊急レベルがより高いほど前記自動車により近い地点となるように定めることを特徴とする車載システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の車載システムであって、
前記マーカー表示手段は、前記前方監視手段が前記自動車前方の危険を検知していないときには、前記マーカーを表示する位置が重なる前記自動車前方の実空間上の地点までの前記自動車からの距離と前記マーカーの大きさとを、所定の距離と所定の大きさとに固定し、当該マーカーの表示を行うことを特徴とする車載システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の車載システムであって、
目的地までのルートを設定するナビゲーション手段を有し、
前記マーカーは、前記ルートに従って進行すべき方向を案内するものであることを特徴とする車載システム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の車載システムであって、
前記マーカー表示手段は、前記前方監視手段が前記自動車前方の危険の発生を検知したときに、前記マーカーの形状もしくは表示色を変更することを特徴とする車載システム。
【請求項6】
自動車に搭載されたコンピュータであって、前記自動車前方の実空間の風景上に映像を重畳表示する表示部と、前記自動車の前方状況を検出する前方センサとを備えたコンピュータによって読み取られ実行されるコンピュータプログラムであって、
当該コンピュータプログラムは、前記コンピュータを、
前記自動車の進行方向を案内するマーカーを、前記表示部を用いて、前記自動車前方の実空間上の地点に重なる位置に表示するマーカー表示手段と、
前記前方センサが検出した状況に基づいて、前記自動車前方の危険の発生を監視する前方監視手段と、
前記前方センサが検出した状況に基づいて、前記前方監視手段が発生を検知した危険の緊急レベルを算定する緊急レベル算定手段として機能させるコンピュータプログラムであって、
前記マーカー表示手段は、
前記前方監視手段が前記自動車前方の危険の発生を検知したときに、前記マーカーの大きさが時間経過に従って漸増し、かつ、前記マーカーを表示する位置が重なる前記自動車前方の実空間上の地点までの前記自動車からの距離が、前記マーカーを表示する位置が重なる前記自動車前方の実空間上の地点が前記緊急レベル算定手段が算定した前記緊急レベルに応じて定まる地点である最接近地点となるまで、時間経過に従って漸減するように、前記マーカーの表示を行い、かつ、
当該マーカー表示手段は、前記最接近地点を、前記緊急レベル算定手段が算定した前記緊急レベルがより高いほど前記自動車により近い地点となるように定めることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項7】
自動車に搭載されたコンピュータであって、前記自動車前方の実空間の風景上に映像を重畳表示する表示部と、前記自動車の前方状況を検出する前方センサとを備えたコンピュータによって読み取られ実行されるコンピュータプログラムであって、
当該コンピュータプログラムは、前記コンピュータを、
前記自動車の進行方向を案内するマーカーを、前記表示部を用いて、前記自動車前方の実空間上の地点に重なる位置に表示するマーカー表示手段と、
前記前方センサが検出した状況に基づいて、前記自動車前方の危険の発生を監視する前方監視手段と、
前記前方センサが検出した状況に基づいて、前記前方監視手段が発生を検知した危険の緊急レベルを算定する緊急レベル算定手段として機能させるコンピュータプログラムであって、
前記マーカー表示手段は、
前記前方監視手段が前記自動車前方の危険の発生を検知したときに、前記マーカーを表示する位置が重なる前記自動車前方の実空間上の地点までの前記自動車からの距離が、前記マーカーを表示する位置が重なる前記自動車前方の実空間上の地点が前記緊急レベル算定手段が算定した前記緊急レベルに応じて定まる地点である最接近地点となるまで、時間経過に従って漸減するように、前記マーカーの表示を行い、かつ、
当該マーカー表示手段は、前記最接近地点を、前記緊急レベル算定手段が算定した前記緊急レベルがより高いほど前記自動車により近い地点となるように定めることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AR(拡張現実: Augmented Reality)技術を用いて、自動車の運転を支援する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
AR技術を用いて自動車の運転を支援する技術としては、自動車に搭載したヘッドアップディスプレイを用いて、ユーザが見ている自動車前方の実空間の風景上に、自動車を進行させるべき方向を表す矢印マーカーを重畳表示する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、自動車の運転を支援する技術としては、自動車に搭載したヘッドアップディスプレイを用いて、ユーザが見ている自動車前方の実空間の風景上に、前方を走行する仮想的な他車を表す画像を重畳表示すると共に、カーブ手前の自動車の減速が必要なタイミングで、当該画像を、ブレーキランプを点灯した他車を表す画像に変化させる技術が知られている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-117842号公報
【特許文献2】特開2006-112962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術を用いて、自動車を進行させるべき方向と、減速が必要なタイミングとの双方をユーザに通知する場合には、矢印マーカーと仮想的な他車を表す画像との双方を表示する必要があるため、表示が煩雑となることは避けられない。
また、仮想的な他車を表す画像を、ブレーキランプを点灯した他車を表す画像に切り替える技術を、自動車前方の危険発生の通知にも用いるようにすることも考えられるが、このように画像の内容を切り替えるだけでは、自動車前方の緊急の危険の発生をユーザに認識せしめるのに必ずしも充分でない。
【0006】
そこで、本発明は、表示が煩雑となることを抑制しつつ、前方の危険を効果的にユーザに認識させることのできる車載システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載される車載システムに、前記自動車前方の実空間の風景上に映像を重畳表示する表示部と、前記自動車の進行方向を案内するマーカーを、前記表示部を用いて、前記自動車前方の実空間上の地点に重なる位置に表示するマーカー表示手段と、前記自動車前方の危険の有無を監視する前方監視手段とを備え、前記マーカー表示手段において、前記前方監視手段が前記自動車前方の危険の発生を検知したときに、前記マーカーの大きさが時間経過に従って漸増するように、前記マーカーの表示を行うようにしたものである。
【0008】
また、本発明は、このような車載システムであって、前記マーカー表示手段において、前記前方監視手段が前記自動車前方の危険の発生を検知したときに、前記マーカーの大きさが時間経過に従って漸増するように前記マーカーの表示を行うことに代えて、もしくは、前記マーカーの大きさが時間経過に従って漸増するように前記マーカーの表示を行うことと共に、前記マーカーを表示する位置が重なる前記自動車前方の実空間上の地点までの前記自動車からの距離が時間経過に従って漸減するように、前記マーカーの表示を行うようにしたものである。
【0009】
ここで、これらのような車載システムは、前記マーカー表示手段において、前記前方監視手段が前記自動車前方の危険を検知していないときには、前記マーカーを表示する位置が重なる前記自動車前方の実空間上の地点までの前記自動車からの距離と前記マーカーの大きさとを、所定の距離と所定の大きさとに固定して、前記マーカーを表示するように構成してもよい。
【0010】
また、これらのような車載システムに、目的地までのルートを設定するナビゲーション手段をもうけ、前記マーカーは、前記ルートに従って進行すべき方向を案内するものとしてもよい。
また、これらのような車載システムは、前記マーカー表示手段において、前記前方監視手段が前記自動車前方の危険の発生を検知したときに、前記マーカーの形状もしくは表示色を変更するように構成してもよい。
これらのような車載システムによれば、表示部を用いて前記自動車前方の実空間上の地点に重なる位置に表示している、前記自動車の進行方向を案内するマーカーの大きさを漸増させたり、当該マーカーの表示位置から重なる地点を前方より自車に近づけることにより、前方より物体が自車に近づくようすを模擬する。そして、このように前記自動車の進行方向を案内するマーカーを用いて前方より物体が自車に近づくようすを模擬する表示を行うことにより、運転者に前方の危険発生を直感的に、当該マーカー以外の表示を必要とすることなく認識せしめることができる。
【0011】
よって、運転者に表示が煩雑となることを抑制しつつ、前方の障害を効果的にユーザに認識させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、表示が煩雑となることを抑制しつつ、前方の危険を効果的にユーザに認識させることのできる車載システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る先行マーカー表示処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態に係る先行マーカー表示処理の処理例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る先行マーカー表示処理の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
車載システムは、自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、車載システム1は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)101、操作部102、前方センサ103、GPS受信機104、自動車の車速や角速度や舵角を計測する車両状態センサ105、制御部106、ナビゲーション部107、前方状況認識部108、先行マーカー表示部109、記憶装置110とを備えている。
【0015】
ただし、車載システム1は、ハードウエア的には、マイクロプロセッサや、メモリや、その他の周辺デバイスを有する一般的な構成を備えたコンピュータを用いて構成してよく、この場合、以上に示した車載システム1の各部、または、その一部は、マイクロプロセッサが予め用意されたプログラムを実行することにより具現化するプロセスとして実現されるものであって良い。また、この場合、このようなプログラムは、記録媒体や適当な通信路を介して、車載システム1に提供されるものであって良い。
【0016】
ここで、このような車載システム1の前方センサ103は、自動車前方の状況を検出するセンサであり、前方センサ103としては、図1bに示すように、自動車前方のようすを撮影するカメラや、自動車前方の障害物の自車に対する相対位置や相対速度を検出するレーダ装置などを用いることができる。
【0017】
また、車載システム1の前方状況認識部108は、前方センサ103を用いて、自動車前方の障害物の自車に対する相対位置や相対速度などの自動車前方の障害物の状況を識別する。なお、前方センサ103がカメラである場合には、前方状況認識部108は、カメラが撮影した映像に対する画像認識処理を行って自動車前方の障害物の状況を識別する。
【0018】
また、車載システム1のヘッドアップディスプレイ101は、フロントウインドシールドディスプレイであり、図1cに示すように、フロントウインドシールドガラスの車内側またはフロントウインドシールドガラスに内挿して設けた透明スクリーン1011と、透明スクリーン1011に画像を投影する投影ユニット1012とより構成され、投影ユニット1012より投影した画像が、透明スクリーン1011によって反射されて、透明スクリーン1011越しに見える自動車前方の実空間の風景に重畳した形態で、運転者に視認されるように構成されている。なお、ヘッドアップディスプレイ101としては、透明スクリーン1011を、バイザー状に運転者の目前に配置したものなども用いることができる。
【0019】
次に、車載システム1のナビゲーション部107は、記憶装置110に記録されている地図データを用いて、GPS受信機104や車両状態センサ105を利用した、自車の現在位置や自車の現在の進行方向の算出や、ユーザからの目的地の設定の受け付けや、設定された目的地までのルートの設定や、現在位置周辺の道路地図上に現在位置や現在の進行方向を表すマーカーや設定した目的地までのルートを表したナビゲーション画像の生成や、ナビゲーション画像のヘッドアップディスプレイ101への表示などを行う。
【0020】
一方、先行マーカー表示部109は、先行マーカー表示処理を行って、ヘッドアップディスプレイ101に先行マーカーを表示する。
図2に、この先行マーカー表示処理の手順を示す。
図示するように、この先行マーカー表示処理において、先行マーカー表示部109は、まず、前方状況認識部108が識別している自動車前方の障害物の状況や、車両状態センサ105が検出している自動車の車速等より、前方安全レベルの高/中/低を算出する(ステップ202)。
ここで、ステップ202では、自車前方の自車の近距離内に障害物(歩行者や先行他車など)が存在する場合や、自車前方の自車までの距離が中程度の距離内に自車に対する相対速度が自車に向かう方向の障害物(先行他車など)が存在する場合などの、自車の現在の状態を維持した場合に所定時間内に自車が衝突する可能性がある障害物が存在した場合に前方安全レベルを低と判定する。
【0021】
また、前方安全レベルを低と判定しなかった場合において、自車前方の自車までの距離が中程度の距離内に障害物(先行他車など)が存在する場合や、ナビゲーション部107において設定されているルートに従って次に右左折など進路変更すべき交差点までの距離が所定距離以内となっている場合には、前方安全レベルを中と判定する。
【0022】
そして、前方安全レベルを低とも中とも判定しなかった場合、すなわち、ルートに従って次に右左折など進路変更すべき交差点まで所定距離以内に接近しておらず、自車前方の自車までの距離が中程度の距離内に障害物(先行他車など)も存在しない場合に、前方安全レベルを高と判定する。
【0023】
そして、前方安全レベルが中と判定された場合には(ステップ204)、図3aに示すように、矢印状の大きさが中サイズの先行マーカー300を、自車走行中の道路上の自車前方の自車までの距離が中程度の距離の地点の風景に重畳されるようにヘッドアップディスプレイ101に表示する(ステップ206)。そして、ステップ202からの処理に戻る。
【0024】
ここで、先行マーカー300の矢印の向きは、ナビゲーション部107に目的地までのルートが設定されている場合には、次の向きとする。
すなわち、次に通過する交差点がルートに従って右左折など進路変更すべき交差点であって、当該交差点に所定距離内に近づいている場合には、当該交差点通過まで、先行マーカー300の矢印の向きを当該交差点のルートに従った通過方向とする。すなわち、たとえば、ルートに従って直角に右折すべき交差点手前では先行マーカー300の矢印の向きを右向きとし、ルートに従って直角に左折すべき交差点手前では先行マーカー300の矢印の向きを左向きとする。そして、他の場合には先行マーカー300の矢印の方向を、走行中道路の先行マーカー300が重なる地点における道路方向に沿った方向とする。
【0025】
また、先行マーカー300の矢印の向きは、ナビゲーション部107に目的地までのルートが設定されていない場合には、車両状態センサ105が検出している舵角より求まる自車の進行方向とする。
なお、図3aにおいて、350はナビゲーション部107によってヘッドアップディスプレイ101に表示されたナビゲーション画像を表している。
さて、図2に戻り、前方安全レベルが高と判定された場合には(ステップ208)、前方安全レベルが中と判定された場合よりも、遠方の地点に先行マーカー300が存在すると運転者に認識されるように先行マーカー300の表示を行う。すなわち、前方安全レベルが高と判定された場合には(ステップ208)、図3bに示すように、矢印状の大きさが小サイズの先行マーカー300を、自車走行中の道路上の自車前方の遠方地点、すなわち、自車までの距離が大程度の距離の地点の風景に重畳されるようにヘッドアップディスプレイ101に表示する(ステップ210)。そして、ステップ202からの処理に戻る。
【0026】
また、前方安全レベルが中とも高とも判定されなかった場合、すなわち、前方安全レベルが低と判定された場合には、図4aから図4dに示すように、先行マーカー300が、前方より自車に近づいてくるようすを表すアニメーションを表示する(ステップ212)。
ここで、図4のTは時間軸を表しており、ステップ212では、図4a、b、c、dに示すように、時間の経過に伴い先行マーカー300を表示する位置を、自車前方の自車から中距離離れた地点に重なる位置から、自車前方の自車近傍の地点に重なる位置まで逐次変化させながら、先行マーカー300の大きさを漸増させる。
【0027】
また、このステップ212で表示するアニメーションにおける先行マーカー300の位置、大きさの変化の速度は、緊急レベルに応じて、緊急レベルが高いほど速度が大きくなるようにする。ここで、緊急レベルは、前方状況認識部108が識別している自動車前方の障害物と自車との関係において設定する。すなわち、たとえば、障害物までの自車からの距離が小さいほど緊急レベルを高く算出したり、障害物の相対位置や相対速度などより求まる自車の現在の状態を維持した場合に障害物に衝突するまでの時間が小さいほど緊急レベルを高く算出する。
【0028】
なお、このステップ212で表示するアニメーションにおいて先行マーカー300が重畳表示される、最も自車に接近した地点が、緊急レベルが高いほど、より自車に近い地点となるように、すなわち、緊急レベルが高いほどより自車に近い位置まで先行マーカー300が接近すると運転者に認識されるように、当該アニメーションの表示を行うようにしてもよい。
【0029】
また、このアニメーションに用いる先行マーカー300の図形としては、図3に示した安全レベルが中、高のときに用いる先行マーカー300の図形に、点灯したテールランプ/ブレーキランプを模擬する図形(図4cの400)を付加したものを用いる。
そして、ステップ212において、このようにアニメーションを表示したならばステップ202からの処理に戻る。
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、以上の実施形態で示した先行マーカー表示処理は、ナビゲーション部107に目的地までのルートが設定されている場合にのみ行い、ルートが設定されていない場合は、先行マーカー300を表示しない処理とするようにしてもよい。
また、ステップ202において、安全レベルとして低を算出しない場合には、常に安全レベルとして中を算出するようにすると共に、ステップ204、206を排し、図3bに示した表示は行わないようにしてもよい。
また、以上の実施形態は、ヘッドアップディスプレイ101に代えて、自車前方を撮影するカメラとカメラで撮影した映像が表す実空間の風景上に、先行マーカーを重畳表示する場合についても同様に適用することができる。
以上のように、本実施形態によれば、ヘッドアップディスプレイ101を用いて前記自動車前方の実空間上の地点に重なる位置に表示している、前記自動車の進行方向を案内する先行マーカー300の大きさを漸増させたり、当該先行マーカー300の表示位置に重なる実空間上の地点を前方より自車に近づけて、前方より物体が自車に近づくようすを模擬することにより、先行マーカー300以外の表示を行うことなく、運転者に前方の危険発生を直感的に認識せしめることができる。
【符号の説明】
【0030】
1…車載システム、101…ヘッドアップディスプレイ、102…操作部、103…前方センサ、104…GPS受信機、105…車両状態センサ、106…制御部、107…ナビゲーション部、108…前方状況認識部、109…先行マーカー表示部、110…記憶装置。
図1
図2
図3
図4