(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転誘導手段は、前記軌道部材と並列に設けられる直線領域及び当該直線領域に連続して前記収納スペースの開口部側に設けられると共に円弧状に形成されて前記支持部材を水平平面内で回転させる曲線領域を有する案内溝と、前記案内溝内に沿って移動すると共に前記支持部材に固定されるカム部材と、を有することを特徴とする請求項1記載の可動式収納装置。
前記支持部材は、回転軸受を介して前記移動体に回転自在に支承された第一アーム部材と、当該第一アーム部材の長手方向と交わる方向に接続されると共に前記収納対象物を支持する第二アーム部材と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の可動式収納装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を用いながら本発明の実施形態である可動式収納装置を詳細に説明する。
【0011】
図1及び
図2は、本発明の実施形態である可動式収納装置の使用態様を示すものであり、
図1は収納箱体100によって構成される収納スペース101内にコート等の収納対象物102が収納されている状態における可動式収納装置1を示す斜視図であり、
図2は前記収納対象物102が収納スペース101から引き出された状態での前記可動式収納装置1を示す斜視図である。前記可動式収納装置1は前記収納箱体100の上部に架け渡された収納天板103に設けられている。コート等の収納対象物102はこの可動式収納装置1が備える支持部材としての支持アーム3に複数吊り下げられ、この状態で前記収納スペース101内に収納されている。この可動式収納装置1の構成において、前記支持アーム3は前記収納スペース101の奥行き方向(
図1及び
図2内の矢線A方向)に移動可能となっており、かかる支持アーム3が収納スペース101の奥側から開口部104の位置まで到達した際に、当該支持アーム3の姿勢、ひいては前記収納対象物102の姿勢を例えば、約90度変化させることが可能となっている(
図2参照)。尚、
図1及び
図2では、前記収納スペース101内での可動式収納装置1の使用態様を理解しやすくするため、前記収納スペース101を区画する前記開口部104以外の壁部を省略して描いている。
【0012】
図3及び
図4は本実施形態に係る可動式収納装置1を示すものであり、
図3は当該可動式収納装置1の要部を示す正面断面図である。一方で、
図4は
図3に示すB矢視図であり、前記収納天板103を収納スペース101内から観察したものである。本実施形態に係る可動式収納装置1は、前記支持アーム3を前記収納スペース101の奥側から前記開口部104へと向かう方向(
図4の矢線C方向)に案内する案内手段としての直線案内装置2と、複数の収納対象物102が吊り下げられる前記支持アーム3と、前記収納スペース101の開口部104において、収納対象物102の姿勢を変化させる回転誘導手段4と、を備えている。尚、
図4内の矢線Cの方向は
図1及び
図2に示す矢線Aの方向に合致している。
【0013】
前記直線案内装置2は、前記収納箱体100の収納天板103に敷設される軌道レール21と、この軌道レール21に沿って前記収納スペース101の奥行き方向に案内される移動体22と、を備えている。前記軌道レール21は、前記収納スペース101の開口部104から当該収納スペース101の奥行き方向に向けて長尺に形成されている。この軌道レール21の両側面には長手方向に沿って例えば二条のボール転走面21aが夫々形成されている。また、軌道レール21には該軌道レール21を前記収納箱体100の収納天板103に固定するための取付け孔21bがその長手方向に沿って所定の間隔で形成されている。
【0014】
一方、前記移動体22は、前記軌道レール21に組み付けられる例えば二基の移動部材24と、これら二基の移動部材24を連結する平板状のプレート部材5とから構成されている。
図5は前記軌道レール21に組み付けられた移動部材24の詳細を示す斜視図である。この移動部材24は、多数のボール23を介して前記軌道レール21に組み付けられ、前記プレート部材5の取付面25aを備えるブロック本体25と、このブロック本体25の移動方向の両端面に固定される一対の蓋体26と、前記移動部材24と軌道レール21との隙間からかかる移動部材24内に異物が進入するのを防止するためのシール部材27と、から構成されている。前記ブロック本体25には、前記軌道レール21のボール転走面21aと対向してボール転走路を構成する負荷ボール転走面25bと、ボール23を循環させるためのボール戻し通路25cが形成されている。また、前記取付面25aにはボルト孔25dが形成されており、このボルト孔25dに固定ボルトを螺合させることで各移動部材24に後述するブラケット部材が連結されるようになっている。尚、
図5では、前記移動部材24の内部構造を理解しやすくするため、前記ブロック本体25及び蓋体26の一部を切欠いて描いている。
【0015】
一方、各蓋体26には、前記軌道レール21のボール転走面21a上を転動してきたボール23を掬い上げ、前記ブロック本体25のボール戻し通路25cに送り込む一方、かかるボール戻し通路25cを転動してきたボール23を前記ボール転走面21aに送り込む方向転換路(図示せず)が形成されている。そして、固定ボルト26aを用いて前記一対の蓋体26が前記ブロック本体25に固定されることにより、前記移動部材24に前記ボール転走路、ボール戻し通路25c及び方向転換路からなるボール23の無限循環路が具備されるようになっている。この移動部材24に設けられた無限循環路内をボール23が循環することによって前記移動部材24が軌道レール21に沿って往復運動するように構成されている。
【0016】
前記ボール23は、例えば可撓性の連結体ベルト23aに等間隔で一列に配列されており、当該連結体ベルト23aと共に前記無限循環路に組み込まれている。前記連結体ベルト23aは合成樹脂の射出成形で形成されている。尚、前記ボール23は前記連結体ベルト23aを使用することなく、直接、前記無限循環路に組み込んでも良い。
【0017】
このように構成された移動部材24は、前記軌道レール21に対して、二基、組みつけられている。更に、これら移動部材24が前記プレート部材5によって連結され、前記移動体22を構成している。
図6はこの移動体22を示す側面図である。各移動部材24の取付面25aには、各移動部材24と前記プレート部材5を連結するブラケット部材51が固定ボルトによって固定されている。各ブラケット部材51は前記ブロック本体25の取付面25aに固定される当接片51aと前記プレート部材5が連結されるプレート固定片51bとを有している。このプレート固定片51bは前記当接片51aに対して断面L字状になるよう、垂直に設けられている(
図3参照)。前記プレート部材5の両端は一本の固定ボルト5aにより各プレート固定片51bに直接固定されている。
【0018】
一方、
図3及び
図4に示すように、前記プレート部材5には軸受保持部材61を介して回転軸受6が固定されている。この回転軸受6は前記支持アーム3に固定ナット31aによって固定された軸部材31を軸支している。すなわち、前記支持アーム3は前記軸部材31を介して前記回転軸受6により前記移動体22に回転自在に組み付けられている。
【0019】
この回転軸受6は、前記軸部材31の外周面に摺接する内輪部材62と、この内輪部材62に複数のボール64を介して組み付けられると共に前記軸受保持部材61に固定される外輪部材63と、を有している。前記内輪部材62と外輪部材63との間には例えば二列のボール列が設けられている。また、各ボール64と内輪部材62との接触角が各ボール64と外輪部材63との接触角と同一に設定されており、前記内輪部材62と外輪部材63との間に配列されたボール列が前記軸部材31に作用するラジアル荷重及びアキシャル荷重を負荷することができるようになっている。すなわち、この回転軸受6は、いわゆる複列アンギュラ玉軸受の構成をなしている。
【0020】
このように構成された回転軸受6は上述したように、前記軸受保持部材61を介して前記プレート部材5に固定されている。更に前記回転軸受6は、前記軌道レール21の長手方向に配置された二基の移動部材24間に配置されている(
図4参照)。そして、前記軸部材31を介してこの回転軸受6に軸支されている前記支持アーム3はこの軸部材31を中心に矢線D方向に回転自在に前記移動体22に支承されている。
【0021】
この回転軸受6により前記移動体22に回転自在に組み付けられた支持アーム3は、前記軸部材31が固定ボルト31aによって固定される第一アーム部材32と、この第一アーム部材32に固定される第二アーム部材33とから構成されている。前記第二アーム部材33は第一アーム部材32と例えば、同一平面内に、且つ、当該第一アーム部材32の長手方向と交わる方向に接続されている。この第二アーム部材33には、コート等の収納対象物102が複数並べられるようになっている。また、この第二アーム部材33には、前記収納対象物102を前記収納スペース101に対して出し入れするための操作レバー(図示外)が設けられている。
【0022】
一方、前記回転誘導手段4は、前記収納箱体100の収納天板103に形成された案内溝41と、この案内溝41の周壁に沿って移動するカム部材42とを有している。前記案内溝41は前記収納スペース101の開口部104から当該収納スペース101の奥行き方向に向けて設けられている。この案内溝41は、前記軌道レール21と平行に設けられた直線領域41aと、この直線領域41aの一端と連続する曲線領域41bとを有している。この曲線領域41bは一定の曲率で円弧状に形成されており、その軸心は前記回転軸受6の軸心と合致している。そして、このように構成された曲線領域41bは、前記収納スペース101の開口部104側に設けられた前記直線領域41aの終端部に連続している。
【0023】
前記カム部材42は、断面円形状に形成されたスタッド43と、このスタッド43の一端に固定されると共に前記案内溝41内を移動する案内円盤44とから構成されている。前記案内円盤44の外径は前記案内溝41の溝幅よりも僅かに小さく設定されている。一方で、前記スタッド43はスタッド連結部材43aを介して前記第一アーム部材32に保持されている。前記スタッド連結部材43aは前記第一アーム部材32に固定ボルト43bによって直接固定される一方、ブッシュ部材43cを介して前記スタッド43を保持している。前記ブッシュ部材43cは前記スタッド43の外周面に摺接しており、前記スタッド43と案内円盤44からなるカム部材42が前記スタッド連結部材43aに対して回転するようになっている。
【0024】
このように構成された本実施形態の可動式収納装置1では、
図1に示すように前記プレート部材5及び二基の移動部材24からなる移動体22が前記収納スペース101の奥側に位置している状態から、前記第二アーム部材33に設けられた操作レバーの操作により、移動体22が収納スペース101の開口部104に向けて軌道レール21上を案内される。この際、前記移動体22の軌道レール21に沿った直線移動と共に、前記カム部材42を構成する案内円盤44が前記案内溝41の直線領域41a内を転動することになる。ここで、前記案内円盤44の外径は前記案内溝41の溝幅よりも僅かに小さく設定されており、かかる案内円盤44は前記案内溝41の溝幅方向への移動が規制されている。このため、当該案内円盤44が前記案内溝41の直線領域41a内を転動している状態では前記支持アーム3の
図4内の矢線D方向への回転運動が規制されるようになっている。また、かかる状態では、前記収納対象物102の正面が開口部104側を向くようにして前記第二アーム部材33に吊り下げられている。
【0025】
更に、前記第二アーム部材33に設けられた操作レバーの操作により前記移動体22が前記収納スペース101の開口部104まで案内されると、前記案内溝41の直線領域41a内を転動していたカム部材42が当該案内溝41の曲線領域41bへと進入し、かかる曲線領域41bの周壁に沿って曲線移動することになる。ここで、前記支持アーム3を構成する第一アーム部材32は前記回転軸受6を介して前記移動体22に回転自在に組み付けられていることから、前記支持アーム3は、前記案内溝41の曲線領域41bに沿ったカム部材42の曲線移動と共に、水平平面内で、
図4に示す矢線D方向に回転運動することになる。
【0026】
これと同時に、前記支持アーム3に吊り下げられた全ての収納対象物102の姿勢が徐々に変化し、
図7に示すように前記カム部材42が前記案内溝41に係る曲線領域41bの終端部まで案内されると、収納対象物102の姿勢が例えば、約90度変化した状態で前記収納スペース101から引き出されることになる(
図2参照)。
【0027】
以上のように構成された本実施形態の可動式収納装置1によれば、前記可動体に並べられた複数の収納対象物のうち、可動体の奥行き方向後方に収納された収納対象物を取り出す際に当該可動体全体を収納装置本体から引き出す必要がなく、前記支持アーム3に設けられた操作レバーの操作により前記移動体22を収納スペース101の開口部104の位置まで案内させるだけで、可動体の奥行き方向後方に収納された収納対象物102を収納スペース101から容易に引き出すことが可能となる。
【0028】
また、本実施形態に係る可動式収納装置1では、前記移動体22が前記収納スペース101の開口部104まで案内された状態で、前記支持アーム3の吊り下げられた収納対象物102の姿勢が最大90度変化した状態で前記収納スペース101から引き出されることになる。このため、例えば本実施形態に係る可動式収納装置1を航空機等の収納スペースが限られる輸送機等に適用し、前記収納スペース101の開口部104が幅方向長さが狭い通路に面している場合であっても、かかる通路に対して収納スペース101から収納対象物102を出し入れすることが可能となる。
【0029】
また、本実施形態の可動式収納装置1によれば、前記移動体22が前記収納スペース101の開口部104まで案内された状態で、前記支持アーム3の吊り下げられた収納対象物102の姿勢が最大90度変化するようになっているため、前記可動体に並べられた複数の収納対象物のうち、可動体の奥行き方向後方に収納された収納対象物を取り出そうとする際に、前記収納対象物102を収納スペース101から引き出したとしても、前記開口部104が面する通路を使用する乗客等の障害とならない。
【0030】
尚、上記実施形態に係る可動式収納装置1では、前記直線案内装置2を構成する移動体22において、前記プレート部材5が前記ブラケット部材51を介して二基の移動部材24に固定されるようになっているが、前記ブラケット部材51の構成を省略し、前記プレート部材5の両端を各移動部材24の取付面25aに直接固定されるようにしても差し支えない。
【0031】
また、上記実施形態に係る可動式収納装置1では、前記移動体22が二基の移動部材24とこれら移動部材24を連結するプレート部材5とから構成されており、更に前記プレート部材5に前記回転軸受6を介して支持アーム3が回転自在に支承されているが、前記移動体22が単一の移動部材24を有する構成とし、この単一の移動部材24に回転軸受6を設け、この回転軸受6によって支持アーム3が支持されるようにしても差し支えない。又は、単一の移動部材24に対してブラケット部材等を介して回転軸受6及び支持アーム3が支持されるようにしても差し支えない。
【0032】
更に、上記実施形態に係る可動式収納装置1では、移動体22が二基の移動部材24を有しており、これら二基の移動部材24が軌道レール21に組み付けられるようになっているが、前記軌道レール21に組み付けられる移動部材24の個数は、前記可動式収納装置1に必要とされる負荷能力に応じて適宜変更して差し支えない。
【0033】
また、上記実施形態に係る可動式収納装置1では、転動体としてボールを用いた案内手段の構成例を説明したが、転動体としてローラを用いたものであっても差し支えない。
【0034】
更に、上記実施形態に係る可動式収納装置1では、一つの軌道レール21に対して一つの移動体22が組み付けられるようになっており、かかる移動体22が収納スペース101に設けられた開口部104に向けて案内されるようになっているが、例えば本発明の可動式収納装置は互いに相反する方向を向いた二つの開口部104を有する収納スペース101に対して適用することも可能である。かかる場合、一つの軌道レール21に二つの移動体22を組み付け、更に各移動体22に支持アーム3が回転自在に支承されるように構成し、各移動体22が各開口部104に向けて案内されるようにしても差し支えない。
【0035】
また、上記実施形態に係る可動式収納装置1では、乗務員等の作業者が前記第二アーム部材33に設けられた操作レバーを操作することにより、前記移動体22が開口部104に向けて案内されるようになっているが、前記移動体22の案内作業を遠隔操作により自動化し、例えばソレノイドへの通電に応じて行われるようにしても差し支えない。