(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916611
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】マルチキャリア光信号のディジタルコヒーレント検出
(51)【国際特許分類】
H04B 10/61 20130101AFI20160422BHJP
H04J 14/00 20060101ALI20160422BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20160422BHJP
H04J 11/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
H04B9/00 610
H04B9/00 E
H04J11/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-530938(P2012-530938)
(86)(22)【出願日】2010年9月16日
(65)【公表番号】特表2013-505676(P2013-505676A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】US2010049019
(87)【国際公開番号】WO2011037806
(87)【国際公開日】20110331
【審査請求日】2012年5月21日
【審判番号】不服2015-4686(P2015-4686/J1)
【審判請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】12/565,600
(32)【優先日】2009年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シヤン
(72)【発明者】
【氏名】セトウマダーバン,チヤンドラセーカル
(72)【発明者】
【氏名】トカーチ,ロバート・ウイリアム
【合議体】
【審判長】
水野 恵雄
【審判官】
近藤 聡
【審判官】
久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−135992(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/104758(WO,A1)
【文献】
“Towards 1−Tb/s per−channel optical transmission based on multi−carrier modulation”,Wireless and Optical Communications Conference (WOCC), 2010 19th Annual,14−15 May 2010,page:1−4
【文献】
“Efficient digital coherent detection of A 1.2−Tb/s 24−carrier no−guard−interval CO−OFDM signal by simultaneously detecting multiple carriers per sampling”,Optical Fiber Communication (OFC), collocated National Fiber Optic Engineers Conference, 2010 Conference on (OFC/NFOEC),21−25 March 2010,page:1−3
【文献】
“No−Guard−Interval Coherent Optical OFDM for 100−Gb/s Long−Haul WDM Transmission”, Journal of Lightwave Technology,Aug.15,2009,page:3705−3713
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mが2より大きいとして、周波数固定されたM個の被変調キャリアを有するマルチキャリア光信号を受信するマルチキャリアコヒーレント光受信機を備え、マルチキャリアコヒーレント光受信機が、
Nを1より大きくMより小さい整数として、分割器を使用してマルチキャリア光信号を、各々がM個の被変調キャリアを有する複数のマルチキャリア光信号に分割し、複数のマルチキャリア光信号から、マルチキャリア光信号のN個の異なったサブバンドに対してディジタル形式の出力信号を供給するように構成されたサブバンドディジタルコヒーレント検出器と、
マルチキャリア光信号のサブバンドのうち少なくとも1個に対応する被変調キャリアによって搬送されたデータを回復するために、ディジタル形式の検出された出力信号を処理するように構成されたディジタル信号プロセッサとを備える、光通信システム。
【請求項2】
マルチキャリア光信号がガードインターバル無しコヒーレント光直交周波数分割多重(NGI−CO−OFDM)信号である、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
サブバンドディジタルコヒーレント検出器が、
マルチキャリア光信号を複数のマルチキャリア光信号に分割するように構成された1:N分割器と、
マルチキャリア光信号のN個の異なったサブバンドにほぼ中心がある異なった波長を有するN個の光局部発振器と、
各々が、分割されたマルチキャリア光信号のうち1個をN個の光局部発振器のうち対応する光局部発振器と結びつけるように構成された、N個の偏波ダイバーシチ光ハイブリッドと、
N個の偏波ダイバーシチ光ハイブリッドのうち少なくとも1個の偏波ダイバーシチ光ハイブリッドの出力信号を検出するように構成された複数の光検出器と、
複数の光検出器からの検出された出力信号をディジタル形式に変換するように構成された複数のアナログ−ディジタル変換器(ADC)とを備える、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項4】
N個のサブバンドの各々が少なくとも2個の被変調キャリアをカバーする、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項5】
サブバンドに対応する複数のADCが約(m+1)Rsのサンプリングレートを有し、Rsが各々のキャリアの変調シンボルレートであり、mがマルチキャリア光信号のサブバンドでカバーされる被変調キャリアの数である、請求項2に記載の光通信システム。
【請求項6】
マルチキャリア光受信機に供給されるマルチキャリア光信号を発生させるマルチキャリア光送信機をさらに備え、マルチキャリア光送信機が、
入力光を受信しM(M>2)個の周波数固定された光キャリアを発生させるように構成されたマルチキャリア発生器と、
発生した複数の周波数固定された光キャリアを分離するように構成された波長デマルチプレクサと、
対応する光キャリアを同期的に変調して対応する被変調キャリアを発生させるように構成された複数の変調器と、
複数の対応する被変調キャリアを、時間整列されたシンボルを有するM個の被変調キャリアを有するマルチキャリア光信号に結合するように構成された結合器とを備える、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項7】
Mが2より大きいとして、各々がRsの変調シンボルレートを有する周波数固定されたM個の被変調キャリアを含むマルチキャリア光信号を取得するステップと、
分割器を使用して、マルチキャリア光信号を、各々がM個の被変調キャリアを有する複数のマルチキャリア光信号に分割するステップと、
mがマルチキャリア光信号の対応するサブバンドでカバーされる被変調キャリアの数として、約(m+1)Rsのアナログ−ディジタル(ADC)サンプリング速度でサブバンドディジタルコヒーレント検出により、複数のマルチキャリア光信号のうちの1つから、被変調キャリアのうち2個以上をカバーする、複数の被変調キャリアのサブセットを検出するステップと、
キャリアのサブセットを一緒に処理してキャリア分離および回復を実行するステップとを含む、受信機における方法。
【請求項8】
マルチキャリア光信号がガードインターバル無しコヒーレント光直交周波数分割多重(NGI−CO−OFDM)信号である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数の被変調キャリアのサブセットを検出するステップが、
マルチキャリア光信号の対応するサブバンドに対し、
マルチキャリア光信号を、その周波数が対応するサブバンドのほぼ中心である基準源と結びつけて複数の第1の出力信号を発生させるステップと、
複数の第1の出力信号を光検出するステップと、
光検出された複数の第1の出力信号をディジタル形式に変換するステップとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
検出するステップがマルチキャリア光信号の複数のサブバンドに対して実行され、光局部発振器が、マルチキャリア光信号のスペクトルの一部のカバレッジを提供するために、各々のサブバンドに対して異なった周波数において構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
キャリアのサブセットを一緒に処理するステップが複数のサブバンドの各々に対して別々に実行される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムに関し、より詳細には、マルチキャリア光信号のディジタルコヒーレント検出のためのシステム、装置および技術に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分散(CD)は、光ファイバの設計によって生じる決定論的歪みである。この歪みは、光位相の周波数依存を招き、伝送される信号におけるその影響は、バンド幅の消費、すなわちデータレートと共に二次的に変化する。したがって、信号のデータレートが4倍に増加すると、CD許容範囲は16分の1に減少する。2.5Gb/sのデータレートまで、光データ伝送は、長距離においても、CDのいかなる補償もなしで実行可能である。10Gb/sにおいて、波長分散の考慮が必要になり、分散補償ファイバ(DCF)がしばしば使用される。40Gb/s以上において、DCFの適用後であっても、残りのCDは、実行可能な光通信に対して依然として大き過ぎる場合がある。
【0003】
光伝送において、例えば、コヒーレント光直交周波数分割多重(CO−OFDM)システムにおいて経験する他の伝送障害は、偏波モード分散(PMD)であり、これは、製造と設置とにおける不備による光ファイバの確率的特性である。1990年以前のファイバは、10Gb/sに対してでさえボーダーラインである0.1ps/√kmをかなり上回る高いPMD値を示す。より新しいファイバは、0.1ps/√kmより低いPMDを有するが、再構成可能光分岐挿入装置(ROADM)のようなファイバリンクにおける他の光学構成要素は、かなりのPMDの原因となり得る。40Gb/sシステムが、より古いファイバリンク上で、または、多くのROADMを有する新しいファイバリンク上で動作される場合、PMDは重大な害となり得る。
【0004】
PMDは、ファイバに対して逆の伝送特性を有する光学要素によって補償することができる。しかしながら、数kHz範囲に及ぶ速い変化速度を有するPMDの統計的性質により、光学的PMD補償器の実現は困難を伴う。チャネルデータレートの増加と共に、光信号は、CDおよびPMDによるような光ファイバの伝送障害によってますます制限される。
【0005】
したがって、その高い受信感度と、高速伝送の性能に決定的に影響を与える波長分散(CD)および偏波モード分散(PMD)のような伝送障害を補償する能力とのため、将来の高速光伝送のための有望な技術としてディジタルコヒーレント検出が考えられる。100Gb/sイーサネット(登録商標)が次世代光伝送システムのために現在研究および開発されていると同時に、テラビット/sイーサネットが光伝送システムに関する将来の方向としてすでに言及されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
システム要素の制限は、ディジタルコヒーレント検出を利用する将来の光伝送システムの開発に対していくつかの障害を引き起こす。例えば、ディジタルコヒーレント検出に必要な重要な構成要素は、電子アナログ−ディジタル変換器(ADC)である。最近の研究デモンストレーションにおいて使用されるADCのサンプリング速度は、通常50Gsamples/sであり、ADCのサンプリング速度は、ここ当分の間は100Gsamples/sよりはるかに下に制限されると予測される。また、光変調器および変調器ドライバのバンド幅は、現在100GHzよりはるかに下に制限される。結果として、これらのサンプリング制限は、超高速(例えば、400Gb/s以上)シングルチャネル伝送の実現に対する電子的なボトルネックの原因となる。
【0007】
電子的なボトルネックに対して、マルチキャリアガードインターバル無しコヒーレント光直交周波数分割多重(No−GI−CO−OFDM)信号を発生させることによって対処することが提案されており、No−GI−CO−OFDM信号は、複数の変調器を使用することにより変調器および変調器ドライバにおけるバンド幅要件の削減を可能にする。No−GI−CO−OFDMの使用は、また、GIを必要とする従来のCO−OFDMと比較して信号のスペクトルバンド幅をわずかに減少させ、したがって、ADCにおけるバンド幅要件を緩和させる。
【0008】
しかしながら、例えば、シングルディジタルコヒーレント受信機によってキャリア変調のための一般的な偏波分割多重4値位相偏移(PDM−QPSK)変調による1Tb/sマルチキャリアチャネルを受信するために、必要なADCサンプリング速度は、250Gsamples/sより高くする必要があり、これは、近い将来に実現されるには高過ぎる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、多重化および検出方法論を使用して電子的なボトルネックに対処する。各々がRsの変調シンボルレートを有するM(Mは2より大きい整数)個の被変調キャリアを含み、例えば、直交周波数分割多重(OFDM)状態である超高速マルチキャリア信号が受信機に伝送される。この文脈において、「超高速」は、ADCサンプリング速度の制限によりシングルディジタルコヒーレント受信機によって捉えることができないマルチキャリア光信号速度を意味する。例えば、超高速マルチキャリア信号は、400Gb/s以上または1Tb/s以上の速度を有してもよい。
【0010】
受信機は、約(m+1)RsのADCサンプリング速度R
ADCでサブバンドディジタルコヒーレント検出によってm(2≦m<M)個の被変調キャリアを一度に検出し、ディジタル信号処理(DSP)によってキャリア分離およびデータ回復を実行する。適切なアンチエイリアスフィルタ処理を、ADCサンプリングの前に実行してもよい。このような構成によって、隣接するサブバンドからの大きなコヒーレントクロストーク無しに、必要なADCサンプリング速度をm/M減少させることができる。加えて、サブバンド1個あたり少なくとも2個のキャリアの同時検出は、サンプリングレートと信号変調シンボルレートとの比として定義される有効オーバーサンプリングファクタが(m+1)/mのように変化するため、キャリア回復に必要なDSPの効率を上昇させる。例えば、一度に1個のキャリアのみが検出される場合、オーバーサンプリングファクタは2であり、m=3の場合、オーバーサンプリングファクタは1.33に減少する。また、ディジタルサンプリングごとにより多くのキャリアが検出される場合、受信機の光学的複雑さは減少する。
【0011】
システム、方法および装置の実施形態は、超高速マルチキャリア光信号の効率的なディジタルコヒーレント検出のために提供される。本発明の実施形態は、超高速(例えば、1Tb/s)ディジタルコヒーレント検出を、ADCにおける非常に緩和されたサンプリング速度要件と、高いDSP効率と共に可能にする。例示的な実施形態は、マルチキャリア光信号のサブバンド内の被変調キャリアによって搬送されるデータを回復するために、サブバンドディジタルコヒーレント検出と、検出されたディジタル信号の処理とを実行するステップおよび構成を含む。
【0012】
本発明による例示的な光通信システムは、Mが2より大きいとして、周波数固定されたM個の被変調キャリアを有するマルチキャリア光信号を受信するマルチキャリアコヒーレント光受信機を含む。マルチキャリアコヒーレント光受信機は、Nを1より大きくMより小さい整数として、マルチキャリア光信号のN個の異なったサブバンドに対してディジタル形式の出力信号を供給するように構成されたサブバンドディジタルコヒーレント検出器と、マルチキャリア光信号のサブバンドのうち少なくとも1個に対応する被変調キャリアによって搬送されたデータを回復するために、ディジタル形式の検出された出力信号を処理するように構成されたディジタル信号プロセッサとを含む。
【0013】
一実施形態において、マルチキャリア光信号はガードインターバル無しコヒーレント光直交周波数分割多重(NGI−CO−OFDM)信号である。一実施形態において、サブバンドディジタルコヒーレント検出器は、マルチキャリア光信号を複数のマルチキャリア光信号に分割するように構成された1:N分割器と、マルチキャリア光信号のN個の異なったサブバンドにほぼ中心がある異なった波長を有するN個の光局部発振器と、分割されたマルチキャリア光信号のうち1つをN個の光局部発振器のうち対応する光局部発振器の基準源と結びつけるように各々が構成されたN個の偏波ダイバーシチ光ハイブリッドと、N個の偏波ダイバーシチ光ハイブリッドのうち少なくとも1個の偏波ダイバーシチ光ハイブリッドの出力信号を検出するように構成された複数の光検出器と、複数の光検出器からの検出された出力信号をディジタル形式に変換するように構成された複数のアナログ−ディジタル変換器(ADC)とを含む。
【0014】
N個の光局部発振器は周波数において均等に間隔を開けてもよい。一実施形態において、N個のサイドバンドの中心周波数は均等に間隔を開ける。一実施形態において、N個のサブバンドの各々は少なくとも2個の被変調キャリアを含んでもよい。マルチキャリア光信号の各々のサブバンドは等しい数の被変調キャリアを有してもよい。光検出器は、平衡検出器、シングルエンド型検出器、またはこれらの組合せであってもよい。
【0015】
一実施形態において、サブバンドに対応する複数のADCは約(m+1)Rsのサンプリングレートを有し、ここでRsは各々のキャリアの変調シンボルレートであり、mはマルチキャリア光信号のサブバンドでカバーされる被変調キャリアの数である。適切なアンチエイリアスフィルタ処理を、ADCサンプリングの前に実行してもよい。
【0016】
一実施形態において、DSPはマルチキャリア光OFDM信号の各々のサブバンドに対して別々に伝送障害を補償するようにさらに構成される。これらの伝送障害は、CDと、PMDと、自己位相変調(SPM)とを含んでもよい。
【0017】
一実施形態において、DSPは、受信されたマルチキャリア光信号の少なくとも1個のサブバンドを処理する、分散補償モジュールと、定モジュラスアルゴリズム(CMA)に基づくブラインド等化モジュールと、自己位相変調(SPM)補償モジュールと、キャリア分離モジュールと、周波数推定および補償モジュールと、位相推定および補償モジュールと、復調モジュールと、データ回復モジュールと、のうちの少なくとも1個を含む。
【0018】
一実施形態において、光通信システムは、マルチキャリア光受信機に供給されるマルチキャリア光信号を発生させるマルチキャリア光送信機も含む。ある例示的なマルチキャリア光送信機は、入力光を受信しM(M>2)個の周波数固定された光キャリアを発生させるように構成されたマルチキャリア発生器と、発生した複数の周波数固定された光キャリアを分離するように構成された波長デマルチプレクサと、対応する光キャリアを同期的に変調して対応する被変調キャリアを発生させる複数の変調器と、複数の対応する被変調キャリアを、時間整列されたシンボルを有するM個の被変調キャリアを有するマルチキャリア光信号に結合するように構成された結合器とを含む。
【0019】
受信機において実行される例示的な方法は、Mが2より大きいとして、各々がRsの変調シンボルレートを有する周波数固定されたM個の被変調キャリアを含むマルチキャリア光信号を取得するステップと、mがマルチキャリア光信号の対応するサブバンドでカバーされる被変調キャリアの数として、約(m+1)Rsのアナログ−ディジタル(ADC)サンプリング速度でサブバンドディジタルコヒーレント検出により、2個以上の被変調キャリアを含む、複数の被変調キャリアのサブセットを検出するステップと、キャリアのサブセットを一緒に処理してキャリア分離および回復を実行するステップとを含む。
【0020】
一実施形態において、複数の被変調キャリアのサブセットを検出するステップは、マルチキャリア光信号の対応するサブバンドに対し、マルチキャリア光信号を、その周波数が対応するサブバンドのほぼ中心である光局部発振器の基準源と結びつけて複数の第1の出力信号を発生させるステップと、複数の第1の出力信号を光検出するステップと、光検出された複数の第1の出力信号をディジタル形式に変換するステップとを含む。検出するステップは、マルチキャリア光信号の複数のサブセットに対して実行されてもよく、光局部発振器は、マルチキャリア光信号のスペクトルの一部のカバレッジを提供するために、各々のサブバンドに対して異なった周波数において構成される。
【0021】
一実施形態において、マルチキャリア光信号のすべてのサブバンドは、等しい数のキャリアを有し、例えば、2個、3個または4個のキャリアを有する。他の実施形態において、マルチキャリア光信号のすべてのサブバンドは、等しい数のキャリアを有さない。
【0022】
一実施形態において、キャリアのサブセットを一緒に処理するステップは、複数のサブバンドの各々に対して別々に実行される。サブセットを処理するステップは、分散補償と、定モジュラスアルゴリズム(CMA)に基づくブラインド等化と、自己位相変調(SPM)補償と、キャリア分離と、周波数推定および補償と、位相推定および補償と、復調と、データ回復と、のうちの少なくとも1個を含んでもよい。マルチキャリア光信号は、超高速(例えば、1Tb/s)信号であってもよい。
【0023】
例示的な実施形態は、以下に示す詳細な説明と添付図面とからより完全に理解されるようになるであろう。添付図面では、同様の要素は同様の参照符号によって示され、添付図面は、例示としてのみ示され、したがって本発明を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による例示的なマルチキャリア光送信機と、例示的な送信機内の場所において発生される対応する信号スペクトルの概略図である。
【
図2】マルチキャリア光信号を受信する本発明による例示的なマルチキャリアコヒーレント光受信機の概略図である。
【
図3】本発明によるマルチキャリア光信号の例示的なサブバンド分割の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
種々の例示的な実施形態を、添付図面への参照と共により完全にここに記載する。本明細書に開示した特定の構成的および機能的詳細は、例示的な実施形態を説明する目的のために表しているに過ぎないことに留意されたい。例示的な実施形態は、多くの代わりの形態において実施されてもよく、本明細書に記載した実施形態のみに限定されると解釈すべきではない。
【0026】
第1、第2等の用語が種々の要素を示すために本明細書で使用されているとしても、これらの用語はある要素を他の要素から区別するためにのみ使用されるため、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことは理解されるであろう。例えば、例示的な実施形態の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と名付けることができ、同様に、第2の要素を第1の要素と名付けることができる。本明細書で使用される用語「および」は、接続的および離接的な意味の両方において使用され、関係する列挙された項目の1個または複数のすべての組合せをも含む。用語「備える」、「備えている」、「含む」、および「含んでいる」は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または、構成要素の存在を特定するが、1個または複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/または、これらのグループの存在または追加を排除しないことは、さらに理解されるであろう。
【0027】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、例示的な実施形態が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。いくつかの代替の実装において、記された機能/作用は、図に記された順序以外で生じてもよいことにも留意すべきである。例えば、連続して示される2個の図は、実際は、含まれる機能/作用に応じて、実質的に同時に実行されてもよく、または、時には逆の順序において実行されてもよい。
【0028】
図1は、本発明による例示的なマルチキャリア光送信機と、例示的な送信機内の場所における対応する信号スペクトルの概略図である。マルチキャリア光送信機100は、マルチキャリア光受信機に伝送されるマルチキャリア光信号を発生させる。例示的な送信機100は、f
0の周波数を有するレーザ110を含む。参照符号111は、周波数f
0におけるオリジナルキャリアの光スペクトルを図示する。レーザ110からの連続波光は、マルチキャリア発生器120に供給され、マルチキャリア発生器120は、入力光を受信し、Δfの所定の周波数間隔を有するM(M>2)個の周波数固定された光キャリアを発生させる。参照符号121は、M個の周波数固定された光キャリアを図示する。
【0029】
M個の周波数固定された光キャリアは、発生した多数の周波数固定された光キャリアを分離する波長デマルチプレクサ130に供給される。次に、個々のキャリアの各々は、複数の変調器140のうち対応するものに供給される。変調器は、対応する光キャリアを同期的に変調して、対応する被変調キャリアを発生させる。この文脈における「同期的」は、各々のキャリアが、同じ変調シンボルレート(Rs)と、変調されたシンボルの同じ時間整列とを有することを意味する。変調器は、PDM位相偏移変調(PSK)およびPDM直角位相振幅変調(QAM)等のような種々の変調方式のいずれかによって駆動される偏波ダイバーシチI/Q変調器であってもよい。変調シンボルレートRsは、Δfの周波数間隔に等しくなるように設定して、マルチキャリアNGI−CO−OFDM信号を形成するようにしてもよい。
【0030】
変調後、結合器150は、複数の対応する被変調キャリアを、時間整列されたシンボルを有するM個の被変調キャリアを有するマルチキャリア光信号に結合する。参照符号151は、送信機によって伝送されるM個の被変調キャリアを有するマルチキャリア光信号を図示する。マルチキャリア光信号は、超高速(例えば、1Tb/s)信号であってもよい。
【0031】
マルチキャリア光信号は、光リンク(図示せず)によってマルチキャリア光受信機に伝送される。例えば、光リンクは、多数のエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)と、多数のファイバスパンと、を備える長距離ファイバリンクであってもよい。光リンクには、通常、ファイバ非線形性と、自己位相変調(SPM)と、波長分散(CD)と、偏波モード分散(PMD)といった問題がある。
【0032】
図2は、マルチキャリア光信号を受信する本発明による例示的なマルチキャリアコヒーレント光受信機の概略図である。例示的な光通信システム内で、マルチキャリアコヒーレント光受信機200は、マルチキャリア光信号を、光ファイバリンクを通過した後で受信する。マルチキャリアコヒーレント光受信機200によって受信されたマルチキャリア光信号は、周波数固定されたM個の被変調キャリアを有し、ここでMは2より大きい。各々の被変調キャリアは、Rsの変調シンボルレートを有してもよい。一例示的な実施形態において、マルチキャリア光信号は、ガードインターバル無しコヒーレント光直交周波数分割多重(NGI−CO−OFDM)信号である。
【0033】
マルチキャリアコヒーレント光受信機は、サブバンドディジタルコヒーレント検出器210と、ディジタル信号プロセッサ(DSP)240とを含む。サブバンドディジタルコヒーレント検出器は、各々がRsの変調シンボルレートを有する複数の被変調キャリアを含むマルチキャリア光信号を取得し、マルチキャリア光信号のN個の異なったサブバンドに対してディジタル形式の出力信号を供給し、ここでNは1より大きくMより小さい整数である。一実施形態において、サブバンドディジタルコヒーレント検出器のアナログ−ディジタル(ADC)サンプリング速度は約(m+1)Rsであり、mはマルチキャリア光信号の対応するサブバンドでカバーされる被変調キャリアの数である。このように、被変調キャリアのうち2個以上をカバーする複数の被変調キャリアのサブセットが検出される。
【0034】
ディジタル信号プロセッサ(DSP)は、マルチキャリア光信号のサブバンドのうち少なくとも1個に対応する被変調キャリアによって搬送されたデータを回復するために、ディジタル形式の検出された出力信号を処理する。DSPは、マルチキャリア光信号の各サブセットの被変調キャリアを一緒に処理して、障害補償と、キャリア分離および回復とを実行する。他の実施形態において、マルチキャリア光信号の1個のサブセットを検出し、ディジタル形式の1個のサブセットを処理して、このサブセットの1個または複数の被変調キャリアに関するデータを回復するようにすることが望ましいことがある。
【0035】
図2の例示的な実施形態において、サブバンドディジタルコヒーレント検出器はマルチキャリア光信号を取得し、マルチキャリア光信号は、1:N分割器112によって複数のマルチキャリア光信号に分割される。分割されたマルチキャリア光信号は、N個の偏波ダイバーシチ光ハイブリッド214のうち1個に導かれる。各々の偏波ダイバーシチ光ハイブリッドは、分割されたマルチキャリア光信号のうち1個を、N個の光局部発振器のうちの対応する光局部発振器(OLO)216からの基準源と結びつける。
【0036】
マルチキャリア光信号の各々のサブバンドに対して、マルチキャリア光信号を、その周波数がそのサブバンドのほぼ中心にある光局部発振器の基準源と結びつけて、複数の第1の出力信号を発生させる。N個の光局部発振器は、周波数において均等に間隔を開けてもよく、したがって、マルチキャリア光信号のN個のサブバンドの中心周波数は、等しく間隔を開ける。一実施形態において、1個のサブバンドは少なくとも2個の被変調キャリアを含む。他の実施形態において、マルチキャリア光信号のすべてのサブバンドは、等しい数のキャリアを有さない。例えば、第1の組のサブバンドは3個のキャリアをカバーしてもよく、第2の組のサブバンドは、より少ないまたはより多いキャリアをカバーしてもよい。
【0037】
複数の光検出器218は、N個の偏波ダイバーシチ光ハイブリッドのうち少なくとも1個の偏波ダイバーシチ光ハイブリッドの出力信号を検出する。偏波ダイバーシチ光ハイブリッドの各々は、対応する複数の光検出器を有し、複数の光検出器は、マルチキャリア光信号のN個のサブバンドの光検出のために、対応するハイブリッドからの出力信号を検出する。光検出器は、平衡検出器、シングルエンド型検出器、またはこれらの組合せであってもよい。
【0038】
その後、複数のアナログ−ディジタル変換器(ADC)220は、複数の光検出器からの検出された出力信号をディジタル形式に変換する。一実施形態において、1個のサブバンドに対応する複数のADCは、約(m+1)Rsのサンプリングレートを有し、ここでRsは各々のキャリアの変調シンボルレートであり、ここでmはマルチキャリア光信号のサブバンドでカバーされる被変調キャリアの数である。この文脈において、[f
i−Rs,f
i+Rs]内のその主なスペクトル成分がサブバンドのスペクトル範囲内である場合、周波数f
iに中心がある被変調キャリアを「サブバンドでカバーされている」と呼ぶ。上記におけるケースでは、サブバンドでカバーされるキャリアの数がより大きくなるほど、所与の変調シンボルレートのために必要なADCサンプリング速度がより高くなることに留意されたい。光局部発振器は、マルチキャリア光信号のスペクトルの一部のカバレッジを提供するために、各々のサブバンドに対して異なった周波数において構成される。
【0039】
一実施形態において、DSP240は、さらに、マルチキャリア光OFDM信号の各々のサブバンドに対して伝送障害を別々に補償するように構成される。これらの伝送障害は、波長分散と、PMDと、自己位相変調とを含んでもよい。したがって、DSPは、受信されたマルチキャリア光信号の少なくとも1個のサブバンドを処理する、分散補償モジュールと、定モジュラスアルゴリズム(CMA)に基づくブラインド等化モジュールと、自己位相変調(SPM)補償モジュールと、キャリア分離モジュールと、周波数推定および補償モジュールと、位相推定および補償モジュールと、復調モジュールと、データ回復モジュールと、のうちの少なくとも1個を含んでもよい。キャリアのサブセットの処理を、複数のサブバンドの各々に対して別々に実行してもよい。名前付きのモジュールは、モジュールの記述された名前を実施するのに必要な処理を実行することに留意されたい。例えば、分散補償モジュールは、処理されているサブバンドのキャリアにおいて分散補償を実行し、データ回復モジュールは、被変調キャリアによって搬送されたデータを回復する、等である。
【0040】
図3は、本発明によるマルチキャリア光信号の例示的なサブバンド分割の説明図である。
図3の(A)から(C)は、参照符号151によって
図1内で前もって図示したM個の被変調キャリアを有するマルチキャリア光信号の例示的な分割を示す。Mはマルチキャリア光信号内のキャリアの合計数を示す。Nはサブバンドの合計数であり、m(i)はi番目のサブバンドでカバーされ検出されるべきキャリアの数である。i番目のサブバンド内の検出されるべきキャリアの数は、(m(i)=m=M/N、および2≦m≦M/2)である。したがって
図3の(A)は、サブバンド1個あたり2個のキャリア(m=2)が検出されるべきであるようにマルチキャリア光信号が分割されるべきであることを図示する。M/2個のサブバンドが、この所望の分割を実行するために必要であろう。サブバンドの数は、したがって、サブバンドディジタルコヒーレント検出器210の実装を決定する。マルチキャリア光信号の各々のサブバンドは、
図3の(A)に示すように等しい数の被変調キャリアを有してもよい。しかしながら、各々のサブバンドが同じ数のキャリアをカバーしないように分割を行うことができる。
【0041】
同様に、
図3の(B)は、サブバンド1個あたり3個のキャリア(m=3)がカバーおよび検出されるべき分割を図示し、
図3の(C)は、サブバンド1個あたり3個のキャリア(m=4)がカバーおよび検出されるべき分割を図示する。
【0042】
例示的な方法に関して上述した種々の機能は、例えば、ソフトウェア、ファームフェア、またはハードウェアプログラミングにおいて具体化された適切な命令のもとで作動する専用または汎用ディジタル情報処理装置によって容易に実行される。例えば、DSPおよび他の論理回路の機能モジュールを、半導体技術によって構成されたASIC(特定用途向け集積回路)として実装してもよく、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)または任意の他のハードウェアブロックによって実装してもよい。