特許第5916612号(P5916612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5916612原油から金属およびアミンを除去する改善された方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916612
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】原油から金属およびアミンを除去する改善された方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 17/04 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
   C10G17/04
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-530943(P2012-530943)
(86)(22)【出願日】2010年9月17日
(65)【公表番号】特表2013-505350(P2013-505350A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】US2010049211
(87)【国際公開番号】WO2011035085
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年9月11日
(31)【優先権主張番号】12/563,583
(32)【優先日】2009年9月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507248837
【氏名又は名称】ナルコ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ファン エム サード
(72)【発明者】
【氏名】ロルド サミュエル エイ
(72)【発明者】
【氏名】ブレーデン ミカエル エル
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−537351(JP,A)
【文献】 米国特許第05080779(US,A)
【文献】 特開2007−291164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 17/00〜17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属類およびアミン類を原油から除去する方法であって、リンゴ酸またはその塩の有効な金属除去量を当該原油に加える工程と、別個に洗浄水を当該原油に加えて、当該原油、酸および洗浄水を混合しエマルションを形成させる工程と、当該エマルションを、脱塩装置ユニットを用いて水相と金属およびアミン含量の低下した原油とに分割する工程と、を含み、
前記リンゴ酸またはその塩の有効な金属除去量を当該原油に加える工程において、前記リンゴ酸またはその塩の有効な金属除去量を、前記洗浄水の添加よりも上流で、且つ、当該原油がいずれの前記脱塩装置ユニットに送られるよりも前に、当該原油に加える、方法。
【請求項2】
該金属がカルシウムである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記リンゴ酸またはその塩の有効な金属除去量が、分離した水相のpHを3〜6の範囲に調節するために必要とされる前記リンゴ酸またはその塩の量である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1種またはそれ以上の抗乳化剤を原油または洗浄水に加える工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1種またはそれ以上の腐食抑制剤を原油または洗浄水に加える工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
リンゴ酸および乳酸を含めない1種またはそれ以上の金属錯体形成剤を原油または洗浄水に加える工程をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1種またはそれ以上の腐食抑制剤を洗浄水に加える、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
該エマルションを静電気凝集を用いて分割する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
該原油が石油原油である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該石油原油がドバ原油を含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
原油から金属類およびアミン類を除去するための改善された製油所脱塩方法であって、
(i)原油を供給する工程と、
(ii)洗浄水を原油に加える工程と、
(iii)当該原油と当該洗浄水とを混合してエマルションを形成させる工程と、
(iv)脱塩装置ユニットを用いて該エマルションを分割して、水相と、金属およびアミン含量の低下した原油を供給する工程と、
を含み、
該改善が、リンゴ酸またはその塩の有効金属除去量を、洗浄水の添加とは別個であって、洗浄水の添加よりも上流で、且つ、当該原油がいずれの前記脱塩装置ユニットに送られるよりも前に、当該原油に加える工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製油所の脱塩工程において、許容し得ない高レベルの金属類、特にカルシウムを含有する石油原油から、かかる金属類を除去する方法に関し、該脱塩工程において、洗浄水に対してよりもむしろ原油に対して特定のヒドロキシカルボン酸類を加える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少数ではあるが増加しつつある重要な原油供給原料は、相当レベルの金属類、例えば、鉄およびカルシウムなどを含有しており、それら金属類が通常の精製法による原油処理を、不可能ではないにしても、困難なものとしている。例えば、特に問題を惹き起こすカルシウム混入物は、非ポルフィリン型の有機金属結合化合物の形状を取り得る。これらのカルシウム含有化合物の一群は、ナフテン酸カルシウムおよびそれらの同族系統である。これらの有機カルシウム化合物は、通常の脱塩工程によっては供給原料から分離されず、従来の精製法において、これらはコークス炉付着を惹き起こして、残留燃料を金属に関して規格外とし、結果として、水素化処理触媒を極めて急速に不活性化させ得る。カルシウム化合物が不快なほどに高いレベルを示す供給原料の一例は、西アフリカ・ドバ(Doba)の原料油である。
【0003】
製油所の脱塩工程において、ヒドロキシカルボン酸類を使用して原油からカルシウムや鉄などの金属を除去することが、米国特許第4,778,589号および第4,789,463号にそれぞれ開示されている。
【0004】
製油所の脱塩工程において、原油から金属類を除去する方法については、洗浄水を原油と接触させる前に、様々な酸、例えば、C−Cヒドロキシカルボン酸を洗浄水に加える方法が、米国特許第7,497,943号に開示されている。
【0005】
製油所の脱塩工程において、原油から鉄を除去する方法については、洗浄水の添加前に原油に種々のキレート化剤を加える方法が、米国特許第5,080,779号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,778,589号明細書
【特許文献2】米国特許第4,789,463号明細書
【特許文献3】米国特許第7,497,943号明細書
【特許文献4】米国特許第5,080,779号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
予期せずに発見したことは、従来の原油脱塩操作において、乳酸やリンゴ酸などのヒドロキシカルボン酸類を洗浄水と別に原油に加えると、結果として、アミン類および結合・非結合金属混入物、特に、カルシウムが原油から強力に除去されることであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、一実施態様において、本発明は、金属類およびアミン類を原油から除去する方法であって、乳酸とリンゴ酸およびその塩から選択される1種またはそれ以上のヒドロキシカルボン酸類の、金属除去に有効な量を当該原油に加えることと、洗浄水を当該原油に加えることと、当該原油、酸および洗浄水を混合して、エマルションを形成させることと、当該エマルションを、水相と金属含量の低下した原油とに分割することと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
製油所の原油脱塩操作においては、通常、「洗浄水」と呼ばれる水を原油に加えることにより、意図的に油中水型(w/o型)エマルションを形成させるが、この洗浄水は原油に基づいて約3〜10容量パーセント程度の量で添加し得る。該洗浄水を原油に加え、十分に混合して原油中の塩化物などの不純物を水相に移行させる。次いで、w/oエマルションを脱塩装置ユニットにポンプ送液するが、そこでは小水滴が凝集して漸次より大きな水滴となり、結局、油と下部水相の重力分離により相分離を起こす。
【0010】
脱塩装置は、通常、脱塩装置中に電場を与える電極を備えている。このものの役割は分散した水分子を分極化することである。このように形成された双極子分子は、互いに反対に荷電した極間に引力を生じ、この引力増大が10倍から100倍、水滴の凝集速度を増大させる。水滴は電場において迅速に移動し、従って、ランダムな衝突を促進して、その衝突がさらに凝集を高める。
【0011】
また、脱塩装置は、一般に、熱伝達手段と圧力制御手段を備えており、該装置内でそれぞれ温度と圧力を制御する。典型的には、脱塩装置温度は約200〜300F(約93〜約149℃)に維持される。熱は連続相(すなわち、油)の粘度を低下させ、従って、凝集した水滴の沈降を加速する。熱はまた、原油中に加えておいてもよい、あるいは本来存在する特定の有機エマルション安定剤を溶解させるバルクオイルの能力をも増大させる。
【0012】
脱塩装置の圧力は十分に高い圧に維持され、原油または水の蒸発を防止する。蒸発は脱塩装置から離脱する原油中に水を持ち込む原因となる。操作温度での脱塩装置の圧力は、原油もしくは水蒸気圧のどちらか低い方を約20psi上回るようにすべきである。
【0013】
該水相をw/oエマルションから分離させると、原油は通常脱塩装置の頂部から抜き取られ、原油ユニットまたは他の製油所の工程における精留塔に送られる。水溶性金属塩化合物と沈降物を含む水相は、流出液として放出される。
【0014】
本発明は改善された製油所の脱塩操作であって、(i)原油を供給する工程、(ii)洗浄水を原油に加え、混合してエマルションを形成させる工程、および(iii)該エマルションを分割させて、水相と、金属およびアミン含量の低下した原油を提供する工程とを含む。ここでの改善点は、リンゴ酸および乳酸並びにその塩から選択される1種もしくはそれ以上のヒドロキシカルボン酸の有効な金属除去量を、洗浄水とは別個に原油に加えることからなる。該ヒドロキシカルボン酸の塩は、例えば、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウムおよびカリウム塩並びにアンモニウム塩などである。「洗浄水とは別個に」とは、添加時点が別々であることを意味し、その時点は洗浄水添加の上流または下流であってよい。
【0015】
「原油」とは、製油所操作にて使用される炭化水素供給原料を意味し、未精製の石油(原油)、常圧または減圧残留分、これら原油および残留分に由来する溶媒脱アスファルト油、頁岩油、液化石炭、有益化タールサンドなど、ならびにそれらの混合物である。原油はまた、1種もしくはそれ以上の処理加工助剤、例えば、溶媒、抗乳化剤、腐食抑制剤などにより処理してもよい。一実施態様において、原油は未精製の石油である。一実施態様において、未精製の石油はドバ原油(Doba crude)であるか、またはドバ原油からなる原油スレートである。
【0016】
本発明に係る方法を使用して除去するのに適した金属は、限定されるものではないが、カルシウム、鉄、亜鉛、ケイ素、ニッケル、ナトリウム、カリウム、バナジウムなど、およびそれらの混合物である。一実施態様において、該金属は鉄およびカルシウムである。一実施態様において、該金属は、その結合形状および非結合形状のカルシウムである。
【0017】
本発明方法を使用して除去するのに適するアミン類は、限定されるものではないが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、エチレンジアミン、メトキシプロピルアミン、N−エチルモルホリン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなど、およびそれらの混合物である。
【0018】
リンゴ酸および/または乳酸は水溶液として加えてもよい。一実施態様において、該水溶液は約40から約70重量パーセントの酸を含む。
【0019】
リンゴ酸および/または乳酸の有効量は、原油から所望量の金属またはアミンの除去を達成するために必要な酸の量であり、当業者が、酸の特性、処理すべき原油およびさらなる工程のパラメータを考慮して決定し得る。
【0020】
一実施態様において、原油に加える酸の量は、分離する水溶液のpHを約3から約6とするために充分な量である。
一般に、約1から約2,000ppmのヒドロキシカルボン酸を原油に加える。一実施態様においては、約10から約500ppmのヒドロキシカルボン酸が原油に加えられる。
【0021】
一実施態様において、該ヒドロキシカルボン酸はリンゴ酸である、
【0022】
該ヒドロキシカルボン酸は、製油所脱塩工程において採用される1種もしくはそれ以上のアジュバントと組み合わせて使用し得る。該アジュバントは腐食抑制剤、抗乳化剤、pH調節剤、金属錯体形成剤、スケール抑制剤、炭化水素溶媒などである。アジュバントは独立して原油に加えるか、洗浄水に加えるか、または酸溶液で製剤化し得る。例えば、油溶性アジュバント、例えば、抗乳化剤および腐食抑制剤などは直接原油に加え得るが、水溶性アジュバントは酸で製剤化するか、または洗浄水に加えてもよい。
【0023】
一実施態様においては、1種またはそれ以上の抗乳化剤が原油または洗浄水に加えられる。
【0024】
一実施態様においては、1種またはそれ以上の腐食抑制剤が原油または洗浄水に加えられる。
【0025】
一実施態様においては、1種またはそれ以上の腐食抑制剤が洗浄水に加えられる。
【0026】
一実施態様において、ヒドロキシカルボン酸は、腐食抑制剤含有洗浄水の上流で、原油に加えられる。
【0027】
一実施態様において、ヒドロキシカルボン酸は、腐食抑制剤含有洗浄水の下流で、原油に加えられる。
【0028】
一実施態様においては、リンゴ酸および乳酸を含めない1種またはそれ以上の金属錯体形成剤が、原油または洗浄水に加えられる。
【0029】
金属錯体形成剤は広範囲の一群の化学物質であって、金属イオンと配位するか、または錯体形成する。代表的な金属錯体形成剤は、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリコール酸、グルコン酸、チオグリコール酸、酒石酸、マンデル酸、クエン酸、酢酸、シュウ酸、ニトロロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミン(EDA)、メタンスルホン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、ジチオカルバミン酸エステルおよび重合性ジチオカルバミン酸エステルなど、ならびにそれらの塩である。
【0030】
代表的な製油所での適用においては、約70ppmのカルシウムを含む原油が、慣用の脱塩操作により処理加工されるが、その操作は、予熱交換器を含む予熱部品、予熱部品の下流の混合バルブ、および静電気脱塩装置を含む。約20%(30,000bbl)のドバ原油を含む原油150,000bbl/日以上が加工処理される。腐食抑制剤で処理した洗浄水は、約5%(7,500bbl/日)の割合で原油流に加えられる。50%ヒドロキシカルボン酸水溶液は、約2,000から約35,000ガロン/日の適用割合で洗浄水の上流にて供給原油に加えられる。混合バルブにより形成された原油エマルションは脱塩装置の静電凝集により分割され、約95%までのカルシウムが原油から除去される。
【0031】
上記の説明は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解され得よう。当該実施例は説明を目的に提示されるものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例1】
【0032】
トルエン中、50重量パーセント原油溶液を180F(約88℃)で約20分間加熱し、次いで、その加熱した原油サンプルを10重量パーセントのヒドロキシカルボン酸水溶液と混合する。この混合物を約30分間加熱、振盪する。抽出サイクルの最終段階で、サンプルを直ちに別の10分間の加熱サイクルで加熱し、その後に分液漏斗にて相分離させる。回収した相のカルシウムと鉄の含量をICP分析により定量する。結果を表1にまとめて示す。
【0033】
【表1】
【0034】
本発明につき、代表的な、または説明となる実施態様と関連付けて、上記のように説明したが、これらの実施態様は本発明を網羅するものでも、または制限しようとするものでもない。むしろ、本発明は、添付の請求項に定義するように、本発明の精神と範囲内に含まれるすべての代替法、修飾および等価物を包含しようとするものである。