(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外周壁のうち、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状の2つの領域が、前記外周壁の他の領域よりも電気抵抗率の低い一対の電極部を形成している請求項1に記載のハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0042】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、
図1〜
図3に示すハニカム構造体100のように、筒状のハニカム構造部4を備えたものである。ハニカム構造部4は、多孔質の隔壁1と、最外周に位置する外周壁3とを有するものである。隔壁1は、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成するものである。本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の電気抵抗率が、1〜200Ωcmである。また、本実施形態のハニカム構造体100の外周壁3は、その少なくとも一部が、隔壁1のヤング率よりもヤング率が低くなるように構成された低ヤング率部6によって形成されたものである。隔壁1のヤング率に対する、低ヤング率部6のヤング率の比率が、2〜95%である。
【0043】
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の一方の端面を模式的に示す平面図である。
図3は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【0044】
本実施形態のハニカム構造体100は、複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するハニカム構造部4を備えている。このため、排ガスの浄化用の触媒担体として好適に用いることができる。また、このハニカム構造部4を構成する隔壁1の電気抵抗率が1〜200Ωcmである。このため、例えば、隔壁1に電圧を印加することにより、上記隔壁1部分を発熱させてヒーターとして機能させることができる。特に、隔壁1の電気抵抗率を1〜200Ωcmとすることで、電圧の高い電源を用いて隔壁1に電流を流しても、隔壁1には過剰に電流が流れないこととなる。従って、ハニカム構造体100を、ヒーターとして極めて良好に機能させることができる。
【0045】
また、外周壁3は、その少なくとも一部が、隔壁1のヤング率よりもヤング率が低くなるように構成された低ヤング率部6によって形成されたものである。更に、隔壁1のヤング率に対する、低ヤング率部6のヤング率の比率が、2〜95%である。このため、上記低ヤング率部6によって、例えば、隔壁1と外周壁3とに温度差が生じた際に発生する応力を緩和することができる。これにより、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体100とすることができる。即ち、上記低ヤング率部6が、熱衝撃を緩和する緩衝部材として機能し、ハニカム構造体100の耐熱衝撃性を向上させることができる。隔壁1のヤング率に対する、低ヤング率部6のヤング率の比率が2%未満であると、外周壁の強度が弱くなり破損し易くなる。隔壁1のヤング率に対する、低ヤング率部6のヤング率の比率が95%を超えると、外周壁が熱衝撃によって破損し易くなる。特に、この破損は、ハニカム構造体の抵抗値を変化させるような極めて程度の大きなものとなることがある。このような破損が生じると、ハニカム構造体をヒーター等として使用することが困難になることがある。
【0046】
隔壁のヤング率は、JIS R1602に準拠して、曲げ共振法によって測定した値である。測定に用いる試験片としては、ハニカム構造部の隔壁が形成された部分を、20mm×10mm×100mmの大きさに切り出した試験片を用いる。また、ヤング率の測定において、曲げ共振法による測定が困難な場合には、4点曲げ法を代替方法として用いることもできる。
【0047】
また、外周壁のヤング率は、JIS R1602に準拠して、曲げ共振法によって測定した値である。測定に用いる試験片としては、外周壁を形成する原料を用いてバルク体を作製し、このバルク体を3mm×4mm×40mmの大きさに切り出した試験片を用いる。外周壁のヤング率が部分的に異なる場合には、外周壁の各部分を構成する材料から試験片を作製して、各部分のヤング率を測定する。即ち、外周壁が、後述するように、低ヤング率部と高ヤング率部とからなる場合や、低ヤング率部がヤング率の異なる2つ以上の領域を有する場合においては、上記の方法によって、試験片を各部分又は各領域ごとに作製する。また、ヤング率の測定において、曲げ共振法による測定が困難な場合には、4点曲げ法を代替方法として用いることもできる。
【0048】
図1〜
図3においては、ハニカム構造部4の最外周に位置する外周壁3の全部が、低ヤング率部6によって形成された場合の例を示している。例えば、このような低ヤング率部は、乾燥及び焼成することにより隔壁よりもヤング率が低くなる材料からなるコート材を、隔壁の外周部分に塗工することによって作製することができる。また、低ヤング率部を形成するためのコート材は、隔壁と同材質であっても、気孔率が大きくなることによってヤング率が低くなる材料を用いることもできる。外周壁が配置されていない隔壁は、以下の方法によって作製することができる。まず、隔壁の外周部分に、隔壁と同一の材料からなる仮の外周壁を有するハニカム構造部を作製する。上記仮の外周壁については、隔壁と同一のヤング率のものであってもよい。次に、この仮の外周壁が配置された外周部分を研削加工して、外周壁が配置されていない隔壁を作製する。
【0049】
本実施形態のハニカム構造体においては、外周壁の全部が低ヤング率部によって形成されていなくともよい。即ち、ハニカム構造体の外周壁の一部が低ヤング率部によって形成されていてもよい。例えば、
図4及び
図5に示すハニカム構造体200のように、外周壁3の一部が、低ヤング率部6によって形成され、且つ外周壁3の低ヤング率部6以外の部位が、高ヤング率部7によって形成されたものであってもよい。低ヤング率部6は、隔壁1よりもヤング率の低い部分である。高ヤング率部7は、隔壁1と同一の材料からなる外周壁、又は、隔壁1よりもヤング率が高くなる材料からなる外周壁である。ここで、
図4は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図5は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態の一方の端面を模式的に示す平面図である。
【0050】
外周壁3が低ヤング率部6と高ヤング率部7とによって構成される場合には、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に、低ヤング率部6と高ヤング率部7とが形成されることが好ましい。
図4及び
図5に示すハニカム構造体200においては、帯状の低ヤング率部6と帯状の高ヤング率部7とが、ハニカム構造部4の周方向に交互に2つずつ形成されている。このように構成することによって、外周壁3の一部を構成する低ヤング率部6が、隔壁1と外周壁3とに温度差が生じた際に発生する応力を緩和する。これにより、ハニカム構造体200の耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0051】
このような低ヤング率部は、乾燥及び焼成することにより隔壁よりもヤング率が低くなる材料からなるコート材を、隔壁の外周部分に塗工することによって作製することができる。一方、高ヤング率部は、例えば、隔壁と同一の材料からなる外周壁部分を研削加工せずに、上記高ヤング率部として留めることによって作製することができる。また、高ヤング率部は、別途、乾燥及び焼成することにより隔壁のヤング率と同じ又はそれ以上のヤング率となる材料からなるコート材を用いて作製することもできる。このようなコートを、隔壁の外周部分の低ヤング率部以外の部分に塗工することによって、高ヤング率部を作製することができる。
【0052】
以下、低ヤング率部の作製方法を更に詳しく説明する。まず、隔壁と同一の材料からなる外周壁、即ち、隔壁と同一のヤング率の外周壁を有するハニカム構造部を一旦作製する。次に、得られたハニカム構造部の外周部分を研削加工する。次に、上記研削加工した部分に、隔壁よりもヤング率が低くなる材料からなるコート材を塗工して低ヤング率部を作製する。この際、研削加工したハニカム構造部の最外周部分には、セルの周囲の一部が隔壁によって区画されていない不完全セルを有することがある。上記低ヤング率部を形成するコート材を塗工する場合には、この不完全セルの内部までコート材が充填されるように塗工を行うことが好ましい。即ち、不完全セルの内部まで低ヤング率部を形成することが好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度を向上させることができる。例えば、
図18に示すハニカム構造体100Aのように、不完全セル2xの内部まで、外周壁3を構成するコート材が充填されたものであってもよい。
図18においては、外周壁3の全部が低ヤング率部6によって形成されるため、不完全セル2xの内部まで、低ヤング率部6を構成するコート材が充填されている。不完全セル2xとは、セル2の周囲の一部が隔壁1によって区画されていないセルのことである。ここで、
図18は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。上記のように不完全セル2xの内部まで、外周壁3が配設されている場合には、「外周壁3の厚さ」は、セル2の延びる方向に直交する断面において、隔壁1の最外周の点を結んで形成される領域の外側に配設される外周壁3の厚さのこととする。隔壁1の最外周の点は、不完全セル2xを形成する隔壁1を含むものとする。
【0053】
外周壁が、低ヤング率部と高ヤング率部とによって構成される場合には、帯状の低ヤング率部と高ヤング率部とが、ハニカム構造部の周方向に交互に形成されていることが好ましい。
図4及び
図5に示すハニカム構造体200においては、低ヤング率部6と高ヤング率部7とが、ハニカム構造部4の周方向に交互に2つずつ形成された場合の例を示している。低ヤング率部6と高ヤング率部7との数は、
図4及び
図5に示すような2つずつに限定されることはない。後述する電極部をハニカム構造体に形成する場合には、電極部の配設部位を考慮して、低ヤング率部6と高ヤング率部7とが、ハニカム構造部4の周方向に交互に2つずつ形成されていることが好ましい。
【0054】
低ヤング率部は、外周壁表面の面積に対して、20%以上の範囲に形成されていることが好ましい。以下、外周壁表面の面積に対する、低ヤング率部の面積の比率を、「低ヤング率部の面積比率」ということがある。例えば、上記した低ヤング率部の面積比率が20%未満であると、外周壁中の熱応力を緩和する部分が少なくなる。これにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性が十分に向上しないおそれがある。上記低ヤング率部の面積比率の最大値は、
図1〜
図3に示すように、外周壁の全部が低ヤング率部によって構成される場合の100%である。
【0055】
図4及び
図5においては、低ヤング率部6と高ヤング率部7とがそれぞれセルの延びる方向に帯状に形成されている。このような場合には、ハニカム構造部4の周方向の長さに対する、低ヤング率部6の上記周方向の長さの総和の比率(即ち、周方向の比率)が、10%以上であることが好ましく、20%以上であることが更に好ましく、30%以上であることが特に好ましい。低ヤング率部6の周方向の長さの総和とは、帯状の低ヤング率部6の幅の総和のことである。例えば、低ヤング率部の周方向の長さの総和が、ハニカム構造部の周方向の長さに対して、10%未満であると、熱応力を緩和する部分が少なくなることがある。これにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性が十分に向上しないおそれがある。
【0056】
また、
図4に示されるように、低ヤング率部6と高ヤング率部7とが、ハニカム構造部4の周方向に交互に2つずつ形成される場合には、低ヤング率部6は以下のように構成されたものであることが好ましい。セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの低ヤング率部6の中心角γが、15〜160°であることが好ましく、25〜140°であることが更に好ましく、35〜120°であることが特に好ましい。このように構成することにより、低ヤング率部6の、周方向(即ち、ハニカム構造部4の周方向)における配置の偏りが少なくなる。これにより、ハニカム構造部4の周方向全域に亘って、熱応力の緩和を良好に行うことが可能となる。例えば、中心角γが15°未満であると、熱応力を緩和する部分が少なくなり、ハニカム構造体の耐熱衝撃性が十分に向上しないことがある。また、本発明のハニカム構造体においては、外周壁の全部が、上記低ヤング率部によって形成されていてもよい。このため、それぞれの低ヤング率部6の中心角γの最大値は180°である。即ち、2つの低ヤング率部6の中心角γの合計が360°である。耐熱衝撃性の向上といった観点からは、上記中心角γの上限については特に制限はない。但し、例えば、上記中心角γが160°を超えると、極めて中心角の狭い高ヤング率部を配設することとなり、製造工程が煩雑になることがある。
【0057】
図4及び
図5のハニカム構造体200は、隔壁1のヤング率と同じ又はそれ以上のヤング率となるように構成された高ヤング率部7を有するものである。本発明のハニカム構造体は、例えば、
図2に示すように、外周壁3の全部が、低ヤング率部6によって形成され、更に、この低ヤング率部6が、ヤング率の異なる二以上の領域を有するものであってもよい。例えば、
図6及び
図7に示すハニカム構造体300のように、外周壁3の全部が、隔壁1のヤング率よりもヤング率が低くなるように構成された低ヤング率部6によって形成されたものであってもよい。
図6及び
図7に示すハニカム構造体300においては、この低ヤング率部6が、第一の低ヤング率部6aと、第二の低ヤング率部6bとから構成されている。第一の低ヤング率部6aは、隔壁1のヤング率よりもヤング率が低くなるように構成されたものである。第二の低ヤング率部6bは、隔壁1のヤング率よりもヤング率が低く、且つ第一の低ヤング率部6aよりもヤング率が更に低くなるように構成されたものである。
【0058】
ここで、
図6は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図7は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の一方の端面を模式的に示す平面図である。
【0059】
上述したように、外周壁が、第一の低ヤング率部と第二の低ヤング率部とによって構成される場合においても、ハニカム構造部のセルの延びる方向に、第一の低ヤング率部と第二の低ヤング率部とが交互に帯状に形成されていることが好ましい。このように構成することによって、第一の低ヤング率部と第二の低ヤング率部とがそれぞれ熱衝撃を緩和する緩衝部材として機能する。これにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。特に、外周壁が、柔らかい部分(例えば、第一の低ヤング率部)と、更に柔らかい部分(例えば、第二の低ヤング率部)とから構成されている。このため、ハニカム構造体を加熱する際の温度条件に応じて、各部分が適切に応力を緩和し、良好な耐熱衝撃性を実現することができる。
【0060】
図6及び
図7においては、セル2の延びる方向に延びる帯状の第一の低ヤング率部6aと第二の低ヤング率部6bとが、ハニカム構造部4の周方向に交互に2つずつ形成されている場合の例を示している。第一の低ヤング率部6aと第二の低ヤング率部6bの形状や大きさについては、
図6及び
図7に示す形態に限定されることはない。
【0061】
本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁のヤング率に対する、低ヤング率部のヤング率の比率が、2〜60%であることが好ましく、2〜50%であることが更に好ましく、2〜40%であることが特に好ましい。以下、隔壁のヤング率に対する、低ヤング率部のヤング率の比率を、単に「ヤング率の比率」ということがある。このように構成することによって、外周壁を構成する低ヤング率部が、隔壁と外周壁とに温度差が生じた際に発生する応力を良好に緩和する。これにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を良好に向上させることができる。例えば、上記ヤング率の比率が2%未満であると、外周壁の強度が弱くなり破損し易くなることがある。また、上記ヤング率の比率が60%を超えると、低ヤング率部のヤング率が比較的高くなり、十分の熱応力を緩和することができないことがある。このヤング率の比率は、外周壁の全てが低ヤング率部から形成されている場合、及び外周壁が低ヤング率部と高ヤング率部とから形成されている場合、の両方に適用される条件である。
ただし、外周壁の全部が、上記低ヤング率部によって形成されている場合には、隔壁のヤング率に対する、低ヤング率部のヤング率の比率を、2〜60%とする。
【0062】
(一対の電極部を更に備えた構成)
本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム構造部の側面に、一対の電極部を更に備えたものであってもよい。一対の電極部は、ハニカム構造部のセルの延びる方向に帯状に配設されたものである。ここで、
図8〜
図10に示すハニカム構造体400は、ハニカム構造部4の最外周に位置する外周壁3の全部が低ヤング率部6によって形成されたものである。このような低ヤング率部6からなる外周壁3の側面に、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状の一対の電極部21,21が配設されている。
【0063】
本実施形態のハニカム構造体400は、これまでに説明したように、ハニカム構造部4の電気抵抗率が10〜200Ωcmである。このため、電圧の高い電源を用いて電流を流しても、隔壁1に過剰に電流が流ない。従って、ハニカム構造体400をヒーターとして好適に用いることができる。また、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に帯状に配設された一対の電極部21,21を備えることにより、この一対の電極部21,21間に電圧を印加することにより、ハニカム構造部4を良好に発熱させることができる。
【0064】
本実施形態のハニカム構造体400は、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されていることが好ましい。このように構成することにより、一方の電極部21から他方の電極21に向けて電圧を印加したときに、ハニカム構造部4全体に均等に電圧が印加される。従って、ハニカム構造部4の温度分布の偏りを抑制することができる。
【0065】
本実施形態のハニカム構造体400は、セル2の延びる方向に直交する断面において、一方の電極部21が、他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されることに加え、各電極部21,21が、以下のように構成されていることが好ましい。本実施形態のハニカム構造体400は、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21,21の中心角αの0.5倍が、15〜65°であることが更に好ましく、30〜60°であることが特に好ましい。このように構成することによって、上述したハニカム構造部4の温度分布の偏りをより良好に抑制することができる。
図10においては、上述した電極部21の中心角αの0.5倍の角度を、角度θとして示す。
【0066】
ここで、
図8は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図9は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
図10は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0067】
ここで、「セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設される」という構成について、以下、詳細に説明する。まず、セル2の延びる方向に直交する断面における、一方の電極部21の中央点とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分を、「線分(P)」とする。また、セル2の延びる方向に直交する断面における、他方の電極部21の中央点とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分を、「線分(Q)」とする。一方の電極部21及び他方の電極部21の中央点は、ハニカム構造部4の周方向における中央の点のことである。そして、「ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側」とは、線分(P)と線分(Q)とにより形成される角度βが、170°〜190°の範囲となるような位置関係のことを意味する。従って、上記した構成においては、一対の電極部21,21が、上記角度βの範囲を満たすような位置関係に配設される。
【0068】
「電極部21の中心角α」は、
図10に示されるように、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ2本の線分により形成される角度である。即ち、中心角αは、セル2の延びる方向に直交する断面において、「電極部21」と、「電極部21の一方の端部と中心Oとを結ぶ線分」と、「電極部21の他方の端部と中心Oとを結ぶ線分」と、により形成される形状における、中心Oの部分の内角である。上記各線分によって形成される形状は、例えば、扇形となる。
【0069】
また、一方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」は、他方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」に対して、0.8〜1.2倍の大きさであることが好ましく、1.0倍の大きさ(即ち、同じ大きさ)であることが更に好ましい。これにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加したときに、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを抑制することができる。これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを抑制することができる。
【0070】
電極部のヤング率については特に制限はないが、本実施形態のハニカム構造体においては、電極部のヤング率が、隔壁のヤング率と同じ、又は隔壁のヤング率よりも低いことが好ましい。このように構成することによって、外周壁の熱応力を緩和することができる。これにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性をより向上させることができる。
【0071】
(外周壁により一対の電極部が形成される構成)
本発明のニカム構造体においては、
図11及び
図12に示すように、外周壁3のうち、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状の2つの領域が、外周壁3の他の領域よりも電気抵抗率が低く構成されていてもよい。この電気抵抗率の低い領域が、一対の電極部21a,21aを形成している。
【0072】
即ち、
図11及び
図12に示すハニカム構造体500は、外周壁3の全部が、低ヤング率部6によって形成される。そして、この低ヤング率6の一部が、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に帯状に配設された一対の電極部21a,21aを兼用するような材料から形成されている。これにより、外周壁3の一部が一対の電極部21a,21aとなる。これにより、
図8〜
図10に示すハニカム構造体400と同様に、一対の電極部21a,21a間に電圧を印加することにより、ハニカム構造部4を良好に発熱させることができる。ここで、
図11は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図12は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0073】
図11及び
図12に示すハニカム構造体500は、
図8〜
図10に示すハニカム構造体400と比較した場合、以下のような実施形態と考えることもできる。即ち、
図11及び
図12に示すハニカム構造体500は、一対の電極部21a,21aが配設される領域の外周壁3が存在せず、一対の電極部21a,21aが隔壁1の周囲に直接配設された実施形態と考えることもできる。この一対の電極部21a,21aは、外周壁3を形成する低ヤング率6の一部を兼用する。このため、一対の電極部21a,21aは、隔壁1のヤング率よりもヤング率が低くなるように構成されている。
【0074】
ハニカム構造体500の一対の電極部21a,21aは、一方の電極部21aが、一対の電極部21a,21aにおける他方の電極部21aに対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されたものであることが好ましい。更に、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21a,21aの中心角αの0.5倍が、15〜65°であることが更に好ましく、30〜60°であることが特に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造部4の温度分布の偏りを良好に抑制することができる。中心角α、及び中心角αの0.5倍の角度θは、
図10に示す中心角α及び角度θと同様に定義される角度である。
【0075】
(一対の電極部を備えた別の構成)
また、ハニカム構造部の外周壁が、低ヤング率部と高ヤング率部とによって形成されている場合においても、ハニカム構造部が、一対の電極部を更に備えていてもよい。例えば、
図13及び
図14においては、ハニカム構造部4の側面に、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に配設された一対の電極部21b,21bを更に備えたハニカム構造体600の例を示す。
図13は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図14は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0076】
ハニカム構造体600は、外周壁3の一部が、低ヤング率部6によって形成されている。このため、上記のような一対の電極部21b,21bを更に備えたハニカム構造体600であっても、低ヤング率部6によって熱応力を緩和することができる。従って、ハニカム構造体600は、耐熱衝撃性に優れたものである。ハニカム構造体600のハニカム構造部4は、
図4及び
図5に示すハニカム構造体200と同様に構成されたものである。
【0077】
ハニカム構造体600においては、外周壁3を構成する高ヤング率部7の表面に、上記一対の電極部21b,21bが配設されていることが好ましい。このように構成することによって、低ヤング率部6の表面が開放されることとなる。このため、この低ヤング率部6によって熱応力を良好に緩和することができる。例えば、このようなハニカム構造体600においては、高ヤング率部7に対して、電極部21bが略同一又はそれ以下の表面積となるように構成されていることが好ましい。そして、高ヤング率部7の表面を覆うように、電極部21bがそれぞれ配設されていることが好ましい。
図6及び
図7に示すハニカム構造体300のように、ヤング率の異なる2種の低ヤング率部を有する場合は、相対的にヤング率が高い方の低ヤング率部の表面に電極部を配設すれば、上記と同様の効果が得られる。一方、相対的にヤング率が低い方の低ヤング率部の表面に電極部を配設すれば、外周壁の強度向上を図ることができる。
【0078】
また、一対の電極部21b,21bは、一方の電極部21bが、一対の電極部21b,21bにおける他方の電極部21bに対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されていることが好ましい。更に、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21b,21bの中心角αの0.5倍が、15〜65°であることが更に好ましく、30〜60°であることが特に好ましい。中心角α、及び中心角αの0.5倍の角度θは、
図10に示す中心角α及び角度θと同様に定義される角度である。
【0079】
本実施形態のハニカム構造体が、これまでに説明した一対の電極部を備えたものである場合、その電極部に印加する電圧は12〜900Vが好ましく、64〜600Vが更に好ましい。上記一対の電極部は、外周壁が電極部を兼用しているものを含む。
【0080】
(1−1)ハニカム構造部の構成:
本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム構造部を構成する隔壁及び外周壁の材質が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を主成分とするものであることが好ましい。上記隔壁及び外周壁の材質が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材であることが更に好ましい。「隔壁及び外周壁の材質が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を主成分とするものである」というときは、隔壁及び外周壁が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0081】
ハニカム構造部を構成する隔壁及び外周壁を、上述したような材質とすることにより、隔壁及び外周壁の電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。ここで、珪素−炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものである。複数の炭化珪素粒子は、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、炭化珪素素材は、炭化珪素粒子同士が焼結したものである。ハニカム構造部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0082】
本実施形態のハニカム構造体においては、外周壁の少なくとも一部が、隔壁のヤング率よりもヤング率が低くなるように構成された「低ヤング率部」によって形成されている。このような低ヤング率部は、例えば、上述した材質から外周壁を形成する際に、その気孔率を制御することにより形成することができる。具体的には、外周壁の少なくとも一部の気孔率を隔壁の気孔率よりも高くすることによって、外周壁の一部に低ヤング率部を形成することができる。
【0083】
具体的には、気孔率によりヤング率を制御する場合には、成形原料に含まれる造孔材の量を調整して、外周壁の気孔率を高くすることが好ましい。
【0084】
外周壁、換言すれば、低ヤング率部を、珪素−炭化珪素複合材によって形成する場合における、気孔率とヤング率との値の一例を示す。以下の例は、例えば、炭化珪素等の各成分の比率によっても異なるため、これに限定されることはない。気孔率を40%にした場合は、ヤング率が22GPaとなった。気孔率を50%にした場合は、ヤング率が12GPaとなった。気孔率を60%にした場合は、ヤング率が5GPaとなった。気孔率を70%にした場合は、ヤング率が2GPaとなった。
【0085】
また、外周壁、換言すれば、低ヤング率部を、コート材によって形成する場合おける、気孔率とヤング率との値の一例を示す。以下の例は、コート材の材料によっても異なるため、これに限定されることはない。気孔率を50%にした場合は、ヤング率が3GPaとなった。気孔率を60%にした場合は、ヤング率が1GPaとなった。コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、炭化珪素粒子等からなる材料を挙げることができる。
【0086】
(1−1A)隔壁:
ハニカム構造部は、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有している。この多孔質の隔壁が、排ガス浄化用の触媒を担持する触媒担体としても機能する。即ち、上記セルに排ガスを流通させることで、触媒の作用により排ガスを浄化することができる。また、隔壁の電気抵抗率は、1〜200Ωcmである。このため、隔壁に電圧を印加することにより、この隔壁部分を発熱させてヒーターとして機能させることもできる。
【0087】
本実施形態のハニカム構造体においては、特に限定されることはないが、隔壁のヤング率が、20〜45GPaであることが好ましく、20〜40GPaであることが更に好ましく、20〜35GPaであることが特に好ましい。隔壁のヤング率が20GPaよりも低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。隔壁のヤング率が45GPaを超えると、気孔率が小さくなり過ぎ、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。
【0088】
また、隔壁の気孔率は、30〜60%であることが好ましく、30〜50%であることが更に好ましい。気孔率が30%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0089】
ハニカム構造部の隔壁の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。平均細孔径が15μmより大きいと、電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0090】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁厚さが50〜260μmであることが好ましく、70〜180μmであることが更に好ましい。隔壁厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体を触媒担体として用いて、その隔壁に触媒を担持したとしても、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることを抑制することができる。隔壁厚さが50μmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。隔壁厚さが260μmより厚いと、ハニカム構造体を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0091】
本実施形態のハニカム構造体は、セル密度が40〜150セル/cm
2であることが好ましく、70〜100セル/cm
2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm
2より低いと、触媒担持面積が少なくなることがある。セル密度が150セル/cm
2より高いと、ハニカム構造体を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0092】
本実施形態のハニカム構造体において、ハニカム構造部の隔壁を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜50μmであることが好ましく、3〜40μmであることが更に好ましい。上記炭化珪素粒子は、隔壁を形成する骨材となるものである。ハニカム構造部の隔壁を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、隔壁の400℃における電気抵抗率を10〜200Ωcmにすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が3μmより小さいと、ハニカム構造部の電気抵抗率が大きくなることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム構造部の電気抵抗率が小さくなることがある。更に、炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム成形体を押出成形するときに、押出成形用の口金に成形用原料が詰まることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0093】
本実施形態のハニカム構造体において、ハニカム構造部の隔壁の電気抵抗率は、1〜200Ωcmである。隔壁の電気抵抗率は、40〜100Ωcmであることが好ましい。電気抵抗率が1Ωcmより小さいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体に通電したときに、電流が過剰に流れることがある。電気抵抗率が200Ωcmより大きいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体に通電したときに、電流が流れ難くなり、十分に発熱しないことがある。なお、上記高電圧の電源における電圧は、200Vに限定されることはない。隔壁の電気抵抗率は、四端子法により測定した値である。隔壁の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0094】
本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム構造部の隔壁の材質が、珪素−炭化珪素複合材である場合、「炭化珪素粒子の質量」と「珪素の質量」とは以下の関係にあることが好ましい。即ち、「炭化珪素粒子の質量」と「珪素の質量」との合計に対する、「珪素の質量」の比率が、10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることが更に好ましい。炭化珪素粒子の質量と珪素の質量との合計に対する、珪素の質量の比率を、以下、「珪素の質量比率」ということがある。珪素の質量比率が10質量%より低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。珪素の質量比率が40質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。上記「炭化珪素粒子の質量」とは、隔壁に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」のことである。上記「珪素の質量」とは、隔壁に含有される「結合材としての珪素の質量」のことである。
【0095】
本実施形態のハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状が、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせ、であることが好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。例えば、
図19及び
図20に示すハニカム構造体700A,700Bは、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、六角形の場合の例を示している。
【0096】
図19及び
図20に示すハニカム構造体700A,700Bにおいては、外周壁3の全部が低ヤング率部6によって形成されている。そして、外周壁3の一部が、外周壁3の他の領域よりも電気抵抗率が低くなるように構成されている。上記外周壁3の一部が、一対の電極部21a,21aを形成している。また、外周壁3の上記他の領域が、低ヤング率且つ電気絶縁性の材質の低ヤング率部6c,6cを形成している。
【0097】
ハニカム構造体700A,700Bにおいては、正六角形の複数のセル2が、隔壁1を挟んで、セル2の各辺が互いに向かい合うように最密に配置されている。また、一対の電極部21a,21aにおける一方の電極部21aが、一対の電極部21a,21aにおける他方の電極部21aに対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されている。
図19及び
図20は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、セルの延びる方向に
直交する断面を示す模式図である。
【0098】
ここで、ハニカム構造体700A及びハニカム構造体700Bにおける電極部21aの配置について説明する。セル2の延びる方向に直交する断面において、正六角形のセル2の一組の互いに向き合う辺に直交する方向を、「セル2の延びる方向に直交する断面の軸L」とする。ハニカム構造体700Aにおいては、「各電極部21a,21aの周方向の中間地点と、上記ハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ直線」と、「軸L」とのなす角の角度が0°となるように電極部21
aが配置されている。なお、軸Lを規定する一組の辺を別の一組の辺とした場合は、上記なす角の角度は60°又は120°である。一方、ハニカム構造体700Bにおいては、「各電極部21
a,21
aの周方向の中間地点と、上記ハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ直線」と、「軸L」とのなす角の角度が30°となるように電極部21
aが配置されている。なお、軸Lを規定する一組の辺を別の一組の辺とした場合は、上記なす角の角度は90°又は150°である。
【0099】
ハニカム構造部の最外周を構成する外周壁の厚さについては特に制限はない。例えば、外周壁の厚さが0.1〜1mmであることが好ましく、0.2〜0.8mmであることが更に好ましく、0.2〜0.5mmであることが特に好ましい。外周壁の厚さが0.1mmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。外周壁の厚さが1mmより厚いと、触媒を担持する隔壁の面積が小さくなることがある。
【0100】
外周壁を形成する低ヤング率部は、上述したように、コート材等を、隔壁の外周部分に塗工することによって作製することができる。コート材としては、乾燥及び焼成することにより隔壁よりもヤング率が低くなる材料からなるものを用いることができる。
【0101】
外周壁は、隔壁と同材質であっても、異なる材質であってもよい。例えば、同材質である場合には、外周壁の気孔率を高くして、低ヤング率部を形成することができる。即ち、隔壁のヤング率に対するヤング率の比率が、2〜95%となるような外周壁によって、低ヤング率部を形成することができる。一方、異なる材質の場合には、隔壁のヤング率よりも低くなるような材質のものを選択し、その材質により低ヤング率部を形成することができる。隔壁と外周壁とが異なる材質のものである場合においても、気孔率等によりヤング率を更に調整することもできる。
【0102】
外周壁が、低ヤング率部と高ヤング率部とから形成される場合においては、高ヤング率部は、隔壁と同材質のものであることが好ましい。特に、この高ヤング率部は、隔壁と同一に形成された外周壁の一部を研削加工せずに残すことによって形成されたものであることが好ましい。即ち、まず、隔壁の外周部分に壁を有するハニカム構造部を一旦作製する。上記「壁」は、隔壁と一体に形成された外周壁である。次に、低ヤング率部を形成するために、隔壁と一体に形成された壁の一部を研削加工する。この際、隔壁と一体に形成された壁の一部を研削加工せずに残し、この残した壁を、高ヤング率部とする。このような高ヤング率部は、ハニカム構造部の隔壁と同じ物性を有することとなる。
【0103】
低ヤング率部が隔壁と同材質である場合には、低ヤング率部は、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を主成分とするものであることが好ましい。また、低ヤング率部が隔壁と異なる材質である場合には、例えば、無機繊維、コロイダルシリカ、炭化珪素粒子等からなる材料を用いることができる。このような材料は、従来のハニカム構造体の外周コート材等に用いられるものである。
【0104】
次に、ハニカム構造部の低ヤング率部の材質が、珪素−炭化珪素複合材である場合における、低ヤング率部を構成する炭化珪素粒子(即ち、骨材)の平均粒子径の好ましい範囲について説明する。低ヤング率部を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜70μmであることが好ましく、10〜50μmであることが更に好ましい。低ヤング率部を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、低ヤング率部の400℃における電気抵抗率を10〜200Ωcmにすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が3μmより小さいと、低ヤング率部の電気抵抗率が大きくなることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径が70μmより大きいと、低ヤング率部の電気抵抗率が小さくなることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0105】
次に、低ヤング率部の材質が、珪素−炭化珪素複合材である場合における、低ヤング率部に含有される「炭化珪素粒子の質量」と、低ヤング率部に含有される「珪素の質量」との合計に対する、低ヤング率部に含有される「珪素の質量」の比率の好ましい範囲について説明する。炭化珪素粒子は、骨材となるものである。珪素は、結合材となるものである。上記比率は、20〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることが更に好ましい。上記比率が20質量%より低いと、低ヤング率部の強度が低下することがある。上記比率が50質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。
【0106】
外周壁を構成する低ヤング率部が、隔壁と同材質である場合には、この低ヤング率部のヤング率が、0.8〜30GPaであることが好ましく、1.0〜27GPaであることが更に好ましく、1.5〜25GPaであることが特に好ましい。隔壁と同材質の低ヤング率部としては、例えば、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を主成分とするものを挙げることができる。例えば、低ヤング率部のヤング率が0.8GPa未満であると、熱応力によるクラックの発生を抑制することができるものの、ハニカム構造体の強度が低下してしまうことがある。一方、低ヤング率部のヤング率が30GPaを超えると、低ヤング率部にて熱応力を十分に緩衝することができず、クラック等の破損を生じてしまうことがある。
【0107】
また、外周壁を構成する低ヤング率部が、隔壁と同材質である場合には、低ヤング率部の気孔率が、隔壁の気孔率よりも高いことが好ましい。具体的な低ヤング率部の気孔率は、30〜82%であることが好ましく、35〜70%であることが更に好ましく、40〜65%であることが特に好ましい。低ヤング率部の気孔率が30%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。低ヤング率部の気孔率が82%を超えると、外周壁の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0108】
また、外周壁を構成する低ヤング率部が、隔壁と異なる材質の場合には、この低ヤング率部のヤング率が、0.5〜10GPaであることが好ましく、0.5〜7GPaであることが更に好ましく、1〜5GPaであることが特に好ましい。例えば、低ヤング率部のヤング率が0.5GPa未満であると、熱応力によるクラックの発生を抑制することができるものの、ハニカム構造体の強度が低下してしまうことがある。一方、低ヤング率部のヤング率が10GPaを超えると、低ヤング率部にて熱応力を十分に緩衝することができず、クラック等の破損を生じてしまうことがある。
【0109】
また、外周壁を構成する低ヤング率部が、隔壁と異なる材質である場合には、この低ヤング率部の気孔率が、30〜80%であることが好ましく、35〜70%であることが更に好ましく、40〜70%であることが特に好ましい。低ヤング率部の気孔率が30%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。低ヤング率部の気孔率が80%を超えると、外周壁の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0110】
本実施形態のハニカム構造体の形状については、特に制限はない。ハニカム構造体の形状としては、例えば、底面が円形の筒状(円筒形状)、底面がオーバル形状の筒状、底面が多角形の筒状等の形状を挙げることができる。上記多角形としては、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等を挙げることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、底面の面積が2000〜20000mm
2であることが好ましく、4000〜10000mm
2であることが更に好ましい。また、ハニカム構造体の中心軸方向の長さは、50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることが更に好ましい。
【0111】
本実施形態のハニカム構造体のアイソスタティック強度は、1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることが更に好ましい。アイソスタティック強度は、値が大きいほど好ましい。但し、ハニカム構造体の材質、構造等を考慮すると、アイソスタティック強度の上限値は、6MPa程度である。アイソスタティック強度が1MPa未満であると、ハニカム構造体を触媒担体等として使用する際に、ハニカム構造体が破損し易くなることがある。アイソスタティック強度は水中にて静水圧をかけて測定した値である。
【0112】
また、これまでに説明したように、ハニカム構造体が一対の電極部を更に備えている場合には、外周壁の一部が、上記電極部よりも高抵抗の材料からなるものであってもよい。特に、外周壁のうち、一対の電極部が配設されていない部分を高抵抗の材料によって形成することにより、以下のような効果がある。一対の電極部間に電圧を印加した際に、電流が外周壁を経由せずに、比較的に低抵抗の隔壁に流れることとなる。これにより、ハニカム構造部を良好に加熱することができる。
【0113】
低ヤング率部は、電極部を配設する部分と、電極部を配設しない部分とで、電気抵抗率を変えることができる。例えば、電極部を配設する部分については、隔壁と同程度の電気抵抗率であることが好ましい。例えば、電極部を配設する部分の電気抵抗率は、0.1〜100Ωcmであることが好ましく、0.1〜50Ωcmであることが更に好ましい。電気抵抗率が0.1Ωcmより小さいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体に通電したときに、電流が過剰に流れることがある。電気抵抗率が100Ωcmより大きいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体に通電したときに、電流が流れ難くなり、十分に発熱しないことがある。上記高電圧の電源における電圧は、200Vに限定されることはない。外周壁、換言すれば、低ヤング率部の電気抵抗率は、四端子法により測定した値である。外周壁の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0114】
外周壁の一部を高抵抗の材料によって形成する場合には、電極部の電気抵抗率の10倍以上とすることが好ましく、20倍以上とすることが更に好ましい。電気抵抗率の上限については特に制限はない。例えば、外周壁の一部を絶縁体によって形成してもよい。
【0115】
(1−2)電極部の構成:
また、ハニカム構造体が、一対の電極部を備えたものである場合、電極部のヤング率は、0.9〜30GPaであることが好ましく、1.0〜27GPaであることが更に好ましく、1.5〜25GPaであることが特に好ましい。このようなヤング率の電極部は、隔壁と比較してヤング率が低くなる。このため、ハニカム構造体が、より耐熱衝撃性に優れたものとなる。電極部のヤング率が0.9GPa未満であると、電極部の強度が低下してしまうことがある。一方、電極部のヤング率が30GPaを超えると、電極部と外周壁との間でクラック等の破損を生じてしまうことがある。
【0116】
電極部のヤング率は、JIS R1602に準拠して、曲げ共振法によって測定した値である。測定に用いる試験片は、電極部を形成する原料を用いてバルク体を作製し、このバルク体を3mm×4mm×40mmの大きさに切り出した試験片を用いる。ヤング率の測定において、曲げ共振法による測定が困難な場合には、4点曲げ法を代替方法として用いることもできる。
【0117】
電極部の気孔率は、30〜80%であることが好ましく、35〜70%であることが更に好ましく、40〜65%であることが特に好ましい。電極部の気孔率がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部の気孔率が30%より低いと、製造時に変形してしまうことがある。電極部の気孔率が80%より高いと、電気抵抗率が高くなり過ぎることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0118】
図8及び
図9に示すような電極部21の電気抵抗率は、0.1〜100Ωcmであることが好ましく、0.1〜50Ωcmであることが更に好ましい。電極部21の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、一対の電極部21,21が、高温の排ガスが流れる配管内において、効果的に電極の役割を果たす。電極部21の電気抵抗率が0.1Ωcmより小さいと、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端付近のハニカム構造部の温度が上昇し易くなることがある。電極部21の電気抵抗率が100Ωcmより大きいと、電極部21に電流が流れ難くなるため、電極としての役割を果たし難くなることがある。電極部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0119】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、電極部21の厚さは、0.01〜5mmであることが好ましく0.01〜3mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、ハニカム構造体が均一に発熱するものとなる。電極部21の厚さが0.01mmより薄いと、電気抵抗が高くなりハニカム構造体が均一に発熱できないことがある。電極部21の厚さが5mmより厚いと、キャニング時に破損することがある。これまでに説明した電極部の厚さは、外周壁とは別体の電極部を配設した場合における値である。例えば、外周壁の一部を電極部とする場合、例えば、
図11及び
図12に示す電極部21aの場合の厚さの好ましい態様は、以下の通りである。上記した場合においては、外周壁3の厚さと、電極部21aの厚さとは、必ずしも同一である必要はない。即ち、電極の機能に求められる厚さの都合上、外周壁3の厚さと、電極部21aの厚さとが同一であってよいし、異なっていてもよい。但し、クラック抑止・ケーシングなどの観点からは、外周壁3の厚さと電極部21aの厚さとが同一であることが好ましい。
【0120】
電極部が多孔質体である場合、電極部の平均細孔径は、5〜45μmであることが好ましく、7〜40μmであることが更に好ましい。電極部の平均細孔径がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部の平均細孔径が、5μmより小さいと、電気抵抗率が高くなり過ぎることがある。電極部の平均細孔径が、45μmより大きいと、電極部の強度が弱くなり破損し易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0121】
本実施形態のハニカム構造体においては、例えば、
図8及び
図9に示されるように、電極部21の形状が、平面状の長方形の部材を、円筒形状の外周に沿って湾曲させたような形状となっている。ここで、湾曲した電極部21を、湾曲していない平面状の部材に変形したときの形状を、電極部21の「平面形状」と称することにする。上記、
図8及び
図9に示される電極部21の「平面形状」は、長方形になる。そして、「電極部の外周形状」というときは、「電極部の平面形状における外周形状」を意味する。
【0122】
本実施形態のハニカム構造体においては、
図8及び
図9に示されるように、帯状の電極部21の外周形状が長方形であってもよい。好ましい態様としては、
図15に示されるように、帯状の電極部21の外周形状が、長方形の角部が曲線状に形成された形状である。また、
図16に示されるように、帯状の電極部21の外周形状が、長方形の角部が直線状に面取りされた形状であることも好ましい態様である。曲線状と面取りは複合的に用いてもよい。
【0123】
図15に示される電極部21の外周形状は、長方形の4つの角部が曲線状に形成された形状である。電極部21の外周形状は、少なくとも一の角部が曲線状に形成された形状であればよい。電極部21の外周形状が、長方形の少なくとも一の角部が曲線状に形成された形状であることにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を更に向上させることができる。電極部の角部が直角であると、ハニカム構造部における「当該電極部の角部」付近の応力が他の部分と比較して相対的に高くなる傾向にある。これに対し、電極部の角部を曲線状にすると、ハニカム構造部における「当該電極部の角部」付近の応力を更に低下させることが可能となる。
【0124】
曲線状に形成された角部は、
図15に示されるように、円弧状であることが好ましいが、円弧以外の曲線であってもよい。また、曲線状に形成された角部と、長方形の「辺」に相当する部分とは、滑らかにつながっていることが好ましい。別言すれば、上記角部と長方形の「辺」に相当する部分とは、接続部分のそれぞれの接線が共通になっていることが好ましい。また、上記角部と長方形の「辺」に相当する部分とがつながる部位は、頂点を形成するように尖った接続部分を形成してもよい。尖った接続部分を形成する場合、当該接続部分の内角が90°以上であることが好ましい。なお、接続部分とは、直線と直線、曲線と直線、又は曲線と曲線が接続されている部分である。例えば、長方形の場合、2つの辺が接続されている角部(即ち、頂点部分)のことである。また、図
15に示されるように、曲線状に形成された角部は、外側に凸になっているが、内側に凸(換言すれば、外側に凹)であってもよい。曲線状に形成された角部が内側に凸の場合、接続部分の内角が90°以上であることが好ましい。曲線と直線とが接続されている場合の「内角」は、直線と、接続部分における曲線の接線との角度である。
【0125】
「曲線状に形成された角部」の「セルの延びる方向Iにおける」長さを、角部のセル方向長さEとする。角部のセル方向長さEは、電極部21の「セルの延びる方向Iにおける」長さの2〜35%の長さであることが好ましく、5〜25%の長さであることは更に好ましい。長さEが、電極部の方向Iにおける長さの2%より短いと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を更に向上させる効果が低くなることがある。長さEが、電極部の方向Iにおける長さの35%より長いと、ハニカム構造体に電圧を印加したときに、均一に発熱させ難くなることがある。また、「曲線状に形成された角部」の「セルの延びる方向Iに直交する方向における」長さを、角部の垂直方向長さFとする。角部の垂直方向長さFは、電極部21の「セルの延びる方向Iに直交する方向における」長さの2〜35%の長さであることが好ましく、5〜25%の長さであることが更に好ましい。長さFが、電極部の方向Iにおける長さの2%より短いと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を更に向上させる効果が低くなることがある。長さFが、電極部の方向Iにおける長さの35%より長いと、ハニカム構造体に電圧を印加したときに、均一に発熱させ難くなることがある。
【0126】
また、
図16に示される電極部21の外周形状は、長方形の4つの角部が直線状に面取りされた形状である。電極部21の外周形状は、少なくとも一の角部が直線状に面取りされた形状であればよい。電極部21の外周形状の好ましい態様は、長方形の4つの角部が直線状に面取りされた形状である。電極部21の外周形状を、長方形の少なくとも一の角部が直線状に面取りされた形状とすることにより、「電極部21の外周形状を、長方形の少なくとも一の角部が曲線状に形成された形状とする」ときに得られた効果と同様の効果を得ることができる。角部を曲線状にするほうが、より高い効果を得ることができる。
【0127】
「直線状に面取りされた角部」の「セルの延びる方向Iにおける」長さを、角部のセル方向長さGとする。角部のセル方向長さGは、電極部21の「セルの延びる方向Iにおける」長さの2〜35%の長さであることが好ましく、5〜25%の長さであることが更に好ましい。長さGが、電極部の方向Iにおける長さの2%より短いと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を更に向上させる効果が低くなることがある。長さGが、電極部の方向Iにおける長さの35%より長いと、ハニカム構造体に電圧を印加したときに、均一に発熱させ難くなることがある。また、「直線状に面取りされた角部」の「セルの延びる方向Iに直交する方向における」長さを、角部の垂直方向長さHとする。角部の垂直方向長さHは、電極部21の「セルの延びる方向Iに直交する方向における」長さの2〜35%の長さであることが好ましく、5〜25%の長さであることが更に好ましい。長さHが、電極部の方向Iにおける長さの2%より短いと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を更に向上させる効果が低くなることがある。長さHが、電極部の方向Iにおける長さの35%より長いと、ハニカム構造体に電圧を印加したときに、均一に発熱し難くなることがある。
【0128】
本実施形態のハニカム構造体においては、電極部が、「内角が90°未満の角部」を有さないことが好ましい。別言すれば、電極部の外周形状が、角部を有する場合、全ての角部の内角が90°を超えることが好ましい。これにより、ハニカム構造体を自動車に搭載して使用した際に、急加熱、急冷却があっても、ハニカム構造部に大きな応力が生じることを抑制することができる。電極部が、「内角が90°未満の角部」を有すると、ハニカム構造体に熱衝撃を与えたときに、当該電極部の「内角が90°未満の角部」付近において、ハニカム構造部に高い応力がかかり易いためである。
【0129】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、帯状の電極部の、ハニカム構造部のセルの延びる方向における少なくとも一方の端部の形状が、波状、円弧状等、曲線で構成されていることも好ましい態様である。また、曲線と直線を複合的に使用するのも好ましい。
図17Aに示されるように、帯状の電極部21の、ハニカム構造部のセルの延びる方向Iにおける両端部の形状が、波状であることも好ましい態様である。帯状の電極部21の両端部とは、電極部の一方の端部21x、及び電極部の他方の端部21yのことである。このように、帯状の電極部の少なくとも一方の端部の形状が、波状であることにより、電極部内に大きな応力が生じることを抑制することができる。また、
図17Bに示されるように、帯状の電極部21の、ハニカム構造部の周方向Jにおける両端部の形状が、波状であることも好ましい態様である。これにより、電極部内に大きな応力が生じることを抑制することができる。更に、帯状の電極部21の、外周全体が波状であることも好ましい態様である。これにより、電極部内に大きな応力が生じることを抑制することができる。
【0130】
ここで、
図15、
図16、
図17A及び
図17Bは、電極部を模式的に示す平面図である。また、
図15及び
図16に示す電極部の態様と、上記
図15、
図16、
図17A及び
図17Bに示す態様とは、複合的に用いることもできる。また、電極部は、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように配設されたものであってもよい。また、電極部は、ハニカム構造部4の端部から間隔を空けて、セルの延びる方向における中間の部分に配設されたものであってもよい。例えば、ハニカム構造部4の端部から間隔を空けて配設される場合には、ハニカム構造部の一方の端部から、電極部の端部までの距離が、セルの延びる方向におけるハニカム構造部の長さの1〜10%であることが好ましい。上記ハニカム構造部の一方の端部とは、セルの延びる方向におけるハニカム構造部の一方の端部のことである。また、上記電極部の端部とは、セルの延びる方向においてハニカム構造部の一方の端部側を向いている電極部の端部のことである。ハニカム構造部4の端部から間隔を空ける場合には、電極部が外周壁上に別途配設されたものであることが好ましい。
【0131】
電極部21が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることが好ましい。電極部21が、通常含有される不純物以外は、炭化珪素粒子及び珪素を原料として形成されていることが更に好ましい。ここで、「炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」とは、炭化珪素粒子と珪素との合計質量が、電極部全体の質量の90質量%以上であることを意味する。このように、電極部21が炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることにより、電極部21の成分とハニカム構造部4の成分とが同じ成分又は近い成分となるため、電極部21とハニカム構造部4の熱膨張係数が同じ値又は近い値になる。電極部21の成分とハニカム構造部4の成分とが近い成分の例としては、ハニカム構造部の材質が炭化珪素である場合を挙げることができる。また、電極部21とハニカム構造部4の材質が同じもの又は近いものになるため、電極部21とハニカム構造部4との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極部21がハニカム構造部4から剥れてしまうことを防ぐことができる。また、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極部21とハニカム構造部4との接合部分が破損してしまうことを防ぐことができる。
【0132】
電極部21の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合に、電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜70μmであることが好ましく、10〜60μmであることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極部21の電気抵抗率を0.1〜100Ωcmの範囲で制御することができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、10μmより小さいと、電極部21の電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、70μmより大きいと、電極部21の強度が弱くなり破損し易くなることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0133】
電極部21に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極部21に含有される珪素の質量の比率が、20〜50質量%であることが好ましく、25〜40質量%であることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、電極部21の電気抵抗率を0.1〜100Ωcmの範囲で制御することができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、50質量%より大きいと、製造時に変形し易くなることがある。
【0134】
本実施形態のハニカム構造体においては、電極部の電気抵抗率が、隔壁の電気抵抗率より低いことが好ましい。更に、電極部の電気抵抗率が、隔壁の電気抵抗率の、20%以下であることが更に好ましく、1〜10%であることが特に好ましい。電極部の電気抵抗率を、隔壁の電気抵抗率の、20%以下とすることにより、電極部が、より効果的に電極として機能するようになる。
【0135】
(1−3)ハニカム構造体の更に他の実施形態:
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図21〜
図23に示されるように、本実施形態のハニカム構造体800は、本発明のハニカム構造体400(
図8及び
図9参照)において、電気配線を繋ぐための電極端子突起部22が配設されたものである。ハニカム構造体800においては、電極端子突起部22が、それぞれの電極部21,21の、セルの延びる方向に直交する断面における中央部であり、且つセルの延びる方向における中央部に配設されている。電極端子突起部22は、電極部21,21間に電圧を印加するために、電源からの配線を接続する部分である。このように、電極端子突起部22が配設されることにより、電極部に電圧を印加したときに、ハニカム構造部の温度分布の偏りを、より小さくすることができる。
図21は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す正面図である。
図22は、
図21における、A−A’断面を示す模式図である。
図23は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す側面図である。
【0136】
本実施形態のハニカム構造体800の各条件は、下記条件(X)以外は、
図8及び
図9に示すハニカム構造体400における各条件と同じすることができる。条件(X)とは、「それぞれの電極部21,21の、セル2の延びる方向に直交する断面における中央部(周方向の中央部)であり、且つセル2の延びる方向における中央部に、電気配線を繋ぐための電極端子突起部22が配設されている」ことである。但し、本実施形態のハニカム構造体は、電気配線を繋ぐための電極端子突起部22が配設されたものである限り、これまでに説明した他の実施形態のハニカム構造体にも適用可能である。即ち、ハニカム構造部に一対の電極部が配設された他の実施形態や、ハニカム構造部の外周壁の一部が一対の電極部として機能する他の実施形態に対して、上記電極端子突起部22が配設されたものであってもよい。例えば、
図13及び
図14に示すハニカム構造体600や、
図11及び
図12に示すハニカム構造体500に対しても適用可能である。
【0137】
電極部21の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合、電極端子突起部22の主成分も、炭化珪素粒子及び珪素であることが好ましい。このように、電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることにより、電極部21の成分と電極端子突起部22の成分とが同じ(又は近い)成分となる。このため、電極部21と電極端子突起部22の熱膨張係数が同じ(又は近い)値になる。また、材質が同じ(又は近く)になるため、電極部21と電極端子突起部22との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極端子突起部22が電極部21から剥れたり、電極端子突起部22と電極部21との接合部分が破損したりすることを防ぐことができる。ここで、「電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」というときは、電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0138】
電極端子突起部22の形状については、特に制限はない。電極端子突起部22の形状は、電極部21に接合でき、電気配線を接合できる形状であればよい。例えば、
図21〜
図23に示すように、電極端子突起部22は、四角形の板状の基板22aに、円柱状の突起部22bが配設された形状であることが好ましい。このような形状にすることにより、電極端子突起部22は、基板22aにより電極部21に強固に接合されることができ、突起部22bにより電気配線を確実に接合させることができる。
【0139】
電極端子突起部22において、基板22aの厚さは、1〜5mmが好ましい。このような厚さとすることにより、電極端子突起部22を確実に電極部21に接合することができる。基板22aの厚さが1mmより薄いと、基板22aが弱くなり、突起部22bが基板22aから、はずれやすくなることがある。基板22aの厚さが5mmより厚いと、ハニカム構造体を配置するスペースが必要以上に大きくなることがある。
【0140】
電極端子突起部22において、基板22aの長さ(幅)は、電極部21の長さの、10〜50%であることが好ましく、20〜40%であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、電極端子突起部22が、電極部21から外れ難くなる。10%より短いと、電極端子突起部22が、電極部21から外れ易くなることがある。50%より長いと、質量が大きくなることがある。上記「基板22aの長さ(幅)」とは、基板22aの、「ハニカム構造部4の、セルの延びる方向に直交する断面における外周方向」における長さのことである。上記「電極部21の長さ」とは、電極部21の、「ハニカム構造部4の、セルの延びる方向に直交する断面における外周方向(外周に沿った方向)」における長さのことである。電極端子突起部22において、基板22aの「セル2の延びる方向」における長さは、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの、5〜30%に相当する長さであることが好ましい。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さをこのような範囲とすることにより、十分な接合強度が得られる。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さを、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの5%の長さより短くすると、電極部21から外れ易くなることがある。そして、30%の長さより長くすると、質量が大きくなることがある。
【0141】
電極端子突起部22において、突起部22bの太さは3〜15mmが好ましい。このような太さにすることにより、突起部22bに、電気配線を確実に接合させることができる。突起部22bの太さが3mmより細いと突起部22bが折れ易くなることがある。突起部22bの太さが15mmより太いと、電気配線を接続し難くなることがある。また、突起部22bの長さは、3〜20mmが好ましい。このような長さにすることにより、突起部22bに、電気配線を確実に接合させることができる。突起部22bの長さが3mmより短いと電気配線を接合し難くなることがある。突起部22bの長さが20mmより長いと、突起部22bが折れ易くなることがある。
【0142】
電極端子突起部22の電気抵抗率は、0.1〜2.0Ωcmであることが好ましく、0.1〜1.0Ωcmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、高温の排ガスが流れる配管内において、電極端子突起部22から、電流を電極部21に効率的に供給することができる。電極端子突起部22の電気抵抗率が2.0Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電流を電極部21に供給し難くなることがある。
【0143】
電極端子突起部22は、気孔率が30〜45%であることが好ましく、30〜40%であることが更に好ましい。電極端子突起部22の気孔率がこのような範囲であることにより、適切な電気抵抗率が得られる。電極端子突起部22の気孔率が、45%より高いと、電極端子突起部22の強度が低下することがある。特に、突起部22bの強度が低下すると、突起部22bが折れ易くなることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0144】
電極端子突起部22は、平均細孔径が5〜20μmであることが好ましく、7〜15μmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の平均細孔径がこのような範囲であることにより、適切な電気抵抗率が得られる。電極端子突起部22の平均細孔径が、20μmより大きいと、電極端子突起部22の強度が低下することがある。特に、突起部22bの強度が低下すると、突起部22bが折れ易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0145】
電極端子突起部22の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合に、電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極端子突起部22の電気抵抗率を、0.1〜2.0Ωcmにすることができる。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、10μmより小さいと、電極端子突起部22の電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、60μmより大きいと、電極端子突起部22の電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0146】
電極端子突起部22に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極端子突起部22に含有される珪素の質量の比率が、20〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることが更に好ましい。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、0.1〜2.0Ωcmの電気抵抗率を得やすくなる。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、電極端子突起部の電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。そして、上記比率が40質量%より大きいと、製造時に電極端子突起部が変形してしまうことがある。
【0147】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体900は、
図24に示すようなハニカム構造体である。ハニカム構造体900は、
図8及び
図9に示すハニカム構造体400の電極部21の表面に、導電体23が更に配設されたものである。上記導電体23は、電極部21の電気抵抗率よりも低い電気抵抗率をもつ導電体である。従って、本実施形態のハニカム構造体900は、導電体23を有すること以外は、上記本発明のハニカム構造体400(
図8及び
図9参照)と、同じ条件であることが好ましい。
図24は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す正面図である。
【0148】
このように、本実施形態のハニカム構造体900は、電極部21の電気抵抗率よりも低い電気抵抗率をもつ導電体23が、電極部21の表面に設置されたものである。このため、導電体23に電圧を印加することにより、ハニカム構造部の全体に、より均一に電流を流すことが可能になる。
【0149】
導電体23の形状は、特に限定されないが、
図24に示されるように、電極部の一方の端部から電極部の他方の端部に亘る、長方形であることが好ましい。導電体23は、電極部の両端部間に亘らなくてもよい。即ち、導電体23の端部と電極部の端部との間に隙間があってもよい。導電体23の長さは、電極部21の長さの50%以上が好ましく、80%以上が更に好ましく、100%が特に好ましい。50%より短いと、電圧を印加したときに、ハニカム構造部の全体に、より均一に電流を流すという効果が低下することがある。上記「導電体23の長さ」は、「ハニカム構造部のセル」の延びる方向における長さのことである。上記「電極部21の長さ」は、「ハニカム構造部のセル」の延びる方向における長さのことである。
【0150】
また、導電体23の周方向の長さは、電極部の周方向の長さ以下の長さであれば特に限定されない。上記周方向とは、ハニカム構造部の外周における周方向のことである。導電体23の周方向の長さは、電極部の周方向の長さの5〜75%が好ましく、10〜60%が更に好ましい。導電体23の周方向の長さが75%より長いと、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端付近のハニカム構造部の温度が上昇し易くなることがある。導電体23の周方向の長さが5%より短いと、電圧を印加したときに、ハニカム構造部の全体に、より均一に電流を流すという効果が低下することがある。
【0151】
導電体23の材質としては、炭化珪素構造体に珪素が含浸されて気孔率が5%以下となるもの等を挙げることができる。
【0152】
導電体23の厚さは、0.1〜2mmが好ましく、0.2〜1.5mmが更に好ましく、0.3〜1mmが特に好ましい。導電体23の厚さが2mmより厚いと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性が低下することがある。導電体23の厚さが0.1mmより薄いと、導電体23の強度が低下することがある。
【0153】
本実施形態のハニカム構造体は、触媒担体として使用することができる。本実施形態のハニカム構造体に、公知の触媒を公知の方法で担持することにより、排ガス処理用の触媒として使用することができる。
【0154】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。上記本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態である、ハニカム構造体800(
図21〜
図23参照)を製造する方法を示す(以下、「製造方法(A)」と記す場合がある)。
【0155】
まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜50μmが好ましく、5〜20μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子である。金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。尚、これは、ハニカム構造部の材質を、珪素−炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合である。ハニカム構造部の材質を炭化珪素とする場合には、金属珪素は添加しない。
【0156】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0157】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜60質量部であることが好ましい。
【0158】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0159】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5〜10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0160】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0161】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と最外周に位置する壁(隔壁と一体の外周壁)とを有する構造である。
【0162】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする本発明のハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0163】
得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。このような乾燥方法によれば、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましい。外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0164】
ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、ハニカム成形体の両端部を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法としては、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。切断方法は、上述した方法に限定されることはない。
【0165】
次に、ハニカム成形体を乾燥させて、ハニカム乾燥体を得ることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0166】
次に、ハニカム乾燥体を焼成してハニカム焼成体を得ることが好ましい。また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に制限はない。仮焼成及び焼成は、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【0167】
次に、ハニカム焼成体の外周部分のうち、低ヤング率部を形成する部分を研削加工して所望の形状に整える。例えば、外周壁全部を低ヤング率部とする場合には、ハニカム焼成体の外周部分の全部を研削加工する。また、外周壁の一部を低ヤング率部とする場合には、ハニカム焼成体の外周部分の一部を研削加工する。ハニカム焼成体の外周部分を残した部分は、外周壁の高ヤング率部となる。
【0168】
次に、低ヤング率部を形成するための低ヤング率部形成原料を調合する。低ヤング率部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合には、炭化珪素粉末及び珪素粉末を用いて、ペースト状の低ヤング率部形成原料を形成することが好ましい。炭化珪素粉末及び珪素粉末には、所定の添加物を添加することが好ましい。添加物を添加した炭化珪素粉末及び珪素粉末を混練して、低ヤング率部形成原料を形成することが好ましい。上記低ヤング率部形成原料は、焼成することにより、隔壁のヤング率に対して、そのヤング率が2〜95%となるようなものであることが好ましい。
【0169】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して低ヤング率部形成原料を作製する。炭化珪素粉末及び金属珪素の合計質量を100質量部としたときに、金属珪素の質量が20〜50質量部となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜70μmが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。金属珪素粉末の平均粒子径が2μmより小さいと、電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。金属珪素粉末の平均粒子径が20μmより大きいと、電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子である。金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0170】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。
【0171】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、15〜60質量部であることが好ましい。
【0172】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0173】
造孔材は、焼成後に気孔となるものであればよい。特に限定されることはないが、造孔材としては、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜15.0質量部であることが好ましい。造孔材の含有量を増減することによって、低ヤング率部の気孔率を制御することができる。ひいては、低ヤング率部のヤング率を制御することができる。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。
【0174】
このような低ヤング率部形成原料を、ハニカム焼成体の外周部分を研削加工した部分に塗工して、低ヤング率部からなる外周壁を形成する。低ヤング率部形成原料を塗工する方法については特に制限はない。低ヤング率部形成原料を塗工する方法としては、例えば、外周部分が研削されたハニカム焼成体を、ろくろ上で回転させながら、ゴムへら等でコーティングする方法等を挙げることができる。また、外周部分を研削加工したハニカム焼成体は、その外周部分に不完全セルを有することがある。このような場合には、低ヤング率部形成原料を塗工する場合に、この不完全セルの内部まで低ヤング率部形成原料を充填することが好ましい。これにより、不完全セルの内部まで低ヤング率部を形成することが好ましい。
【0175】
次に、電極部を形成するための電極部形成原料を調合する。電極部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0176】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極部形成原料を作製する。炭化珪素粉末及び金属珪素の合計質量を100質量部としたときに、金属珪素の質量が20〜40質量部となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。金属珪素粉末の平均粒子径が2μmより小さいと、電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。金属珪素粉末の平均粒子径が20μmより大きいと、電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子である。金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0177】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。
【0178】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、15〜60質量部であることが好ましい。
【0179】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0180】
造孔材は、焼成後に気孔となるものであればよい。特に限定されることはないが、造孔材としては、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。造孔材の平均粒子径が10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。造孔材の平均粒子径が30μmより大きいと、大気孔ができやすくなり、強度低下を起こすことがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0181】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、ペースト状の電極部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、縦型の撹拌機を用いることができる。
【0182】
次に、得られた電極部形成原料を、低ヤング率部形成原料を塗工したハニカム焼成体の側面に塗布することが好ましい。電極部形成原料を、低ヤング率部形成原料を塗工したハニカム焼成体の側面に塗布する方法については、特に制限はない。例えば、電極部形成原料を塗布する方法としては、印刷方法を挙げることができる。以下、低ヤング率部形成原料を塗工したハニカム焼成体のことを、「低ヤング率部付きハニカム焼成体」ということがある。
【0183】
また、電極部形成原料を、低ヤング率部付きハニカム焼成体の側面に塗布する際に、形成される電極部の外周形状が、下記形状となるようにしたりすることも、好ましい態様である。即ち、長方形の少なくとも一の角部が曲線状に形成された形状、又は長方形の少なくとも一の角部が直線状に面取りされた形状である。また、形成される電極部の、「ハニカム構造部のセルの延びる方向」における少なくとも一方の端部の形状が、波状となるようにしたりすることも、好ましい態様である。
【0184】
電極部の厚さは、電極部形成原料を塗布するときの厚さを調整することにより、所望の厚さとすることができる。このように、電極部形成原料を、低ヤング率部付きハニカム焼成体の側面に塗布し、乾燥、焼成するだけで電極部を形成することができる。そのため、非常に容易に電極部を形成することができる。
【0185】
次に、低ヤング率部付きハニカム焼成体の側面に塗布した電極部形成原料を乾燥させることが好ましい。これにより、乾燥後の「電極部形成原料が塗布された低ヤング率部付きハニカム焼成体」を得ることができる。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。上記「電極部形成原料が塗布された低ヤング率部付きハニカム焼成体」は、電極端子突起部形成用部材が貼り付いていないものである。
【0186】
次に、電極端子突起部形成用部材を作製することが好ましい。電極端子突起部形成用部材は、低ヤング率部付きハニカム焼成体に貼り付けられて、電極端子突起部となるものである。電極端子突起部形成用部材の形状は、特に限定されないが、例えば、
図21〜
図23に示すような形状に形成することが好ましい。そして、得られた電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布された低ヤング率部付きハニカム焼成体の、電極部形成原料が塗布された部分に貼り付けることが好ましい。なお、低ヤング率部付きハニカム焼成体の作製、電極部形成原料の調合、及び電極端子突起部形成用部材の作製の、順序はどのような順序でもよい。
【0187】
電極端子突起部形成用部材は、電極端子突起部形成原料を成形、乾燥して得ることが好ましい。電極端子突起部形成原料とは、電極端子突起部形成用部材を形成するための原料のことである。電極端子突起部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極端子突起部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0188】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極端子突起部形成原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が20〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。金属珪素粉末の平均粒子径が2μmより小さいと、電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。金属珪素粉末の平均粒子径が20μmより大きいと、電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子である。金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0189】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0190】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜40質量部であることが好ましい。
【0191】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0192】
造孔材は、焼成後に気孔となるものであればよい。特に限定されことはないが、造孔材としては、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。造孔材の平均粒子径が10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。造孔材の平均粒子径が30μmより大きいと、大気孔ができやすくなり、強度低下を起こすことがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0193】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、電極端子突起部形成原料とすることが好ましい。混練の方法については特に制限はない。例えば、混練機を用いた混練方法を挙げることができる。
【0194】
得られた電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にする方法については特に制限はない。例えば、押し出し成形後に加工する方法を挙げることができる。
【0195】
電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にした後に、乾燥させて、電極端子突起部形成用部材を得ることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0196】
次に、電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布された低ヤング率部付きハニカム焼成体に貼り付けることが好ましい。電極端子突起部形成用部材を、低ヤング率部付きハニカム焼成体の電極部形成原料が塗布された部分に貼り付ける方法については、特に制限はない。例えば、上記電極部形成原料を用いて、電極端子突起部形成用部材を低ヤング率部付きハニカム焼成体に貼り付けることが好ましい。例えば、以下の方法によって、電極端子突起部形成用部材を貼り付けることが好ましい。まず、電極端子突起部形成用部材の、低ヤング率部付きハニカム焼成体に貼り付く面に、電極部形成原料を塗布する。上記「貼り付く面」とは、低ヤング率部付きハニカム焼成体と、電極端子突起部形成用部材とが接触する面のことである。より具体的には、低ヤング率部付きハニカム焼成体の電極部形成原料が塗布された面のことである。次に、「電極部形成原料を塗布した面」が低ヤング率部付きハニカム焼成体に接触するようにして、電極端子突起部形成用部材を低ヤング率部付きハニカム焼成体に貼り付ける。
【0197】
そして、「電極部形成原料が塗布され、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられた低ヤング率部付きハニカム焼成体」を乾燥し、焼成して、本発明のハニカム構造体とすることが好ましい。なお、本発明のハニカム構造体の一の実施形態(ハニカム構造体100、
図1〜3参照)を作製する際には、上記電極部を形成せずに、低ヤング率部付きハニカム焼成体を焼成すればよい。
【0198】
このときの乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0199】
また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法については特に制限はない。仮焼成及び焼成は、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【0200】
電極端子突起部形成用部材は、「電極部形成原料が塗布された低ヤング率部付きハニカム焼成体」を再度焼成する前に貼り付けてもよいし、焼成した後に貼り付けてもよい。電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布された低ヤング率部付きハニカム焼成体を再度焼成した後に貼り付けた場合は、その後に、上記条件によって再度焼成することが好ましい。
【0201】
次に、
図24に示される、ハニカム構造体900の製造方法について説明する。ハニカム構造体900の製造方法は、上記製造方法(A)において、「電極部形成原料が塗布された低ヤング率部付きハニカム焼成体」を作製した後に、電極端子突起部形成用部材を貼り付けずに、導電体23を配設するものである。
【0202】
「電極部形成原料が塗布された低ヤング率部付きハニカム焼成体」に、導電体23を配設する方法としては、薄い金属板(例えば、金属箔)を電極部の表面に貼り付ける方法を挙げることができる。また、別の方法として、金属粉を含有するペーストを電極部の表面に塗工して乾燥させる方法を挙げることができる。上記「電極部形成原料が塗布された低ヤング率部付きハニカム焼成体」とは、乾燥後の電極部形成原料が塗布された低ヤング率部付きハニカム焼成体である。即ち、電極端子突起部形成用部材が貼り付いていないものである。
【実施例】
【0203】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0204】
(実施例1)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合した。これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。その後、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部であった。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部であった。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであった。金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。炭化珪素、金属珪素及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0205】
得られた円柱状の坏土を、押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した。その後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両端面を所定量切断した。次に、乾燥したハニカム成形体を脱脂し、焼成してハニカム焼成体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。
【0206】
次に、ハニカム焼成体の外周側を、外周壁の一部を残して研削加工した。即ち、本実施例においては、予め存在するハニカム焼成体の外周部分の一部を取り除いた。そして、後述する低ヤング率部形成原料を用いて、外周を取り除いた部分に、低ヤング率部を新たに作製した。研削加工の方法としては、砥石による研削方法を用いた。低ヤング率部は、ハニカム構造部の周方向の長さに対する、低ヤング率部の周方向の長さの総和の比率(周方向の比率)が、40%となるような大きさのものとした。
【0207】
次に、低ヤング率部を形成するための低ヤング率部形成原料を調製した。まず、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合した。これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。得られた成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部であった。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであった。金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。炭化珪素、金属珪素及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である
。
【0208】
得られた低ヤング率部形成原料を、ハニカム焼成体の外周部分を研削加工した部分に塗工して、低ヤング率部からなる外周壁を形成した。低ヤング率部形成原料を塗工する方法としては、ハニカム焼成体をろくろ上で回転させながら、低ヤング率部形成原料をゴムへらでハニカム焼成体の外周部分に均一な厚さで塗工(コーティング)する方法とした。乾燥、焼成後の、低ヤング率部の厚さは、0.35mmであった。
【0209】
次に、ハニカム焼成体に塗工した低ヤング率部形成原料を乾燥させた。乾燥条件は、70℃とした。
【0210】
次に、電極部形成原料を作製した。まず、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合した。これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、保湿剤としてグリセリン、分散剤として界面活性剤を添加すると共に、水を添加して、混合した。混合物を混練して電極部形成原料を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.5質量部であった。グリセリンの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに10質量部であった。界面活性剤の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.3質量部であった。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は52μmであった。金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素及び金属珪素の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。混練は、縦型の撹拌機で行った。
【0211】
次に、電極部形成原料を、ハニカム焼成体の側面に帯状に塗布した。具体的には、ハニカム焼成体の外周壁を残した部分の側面に、「セルの延びる方向に直交する断面において中心角の0.5倍が49°」になるように塗布した。外周壁を残した部分は、高ヤング率部となる部分である。塗布した電極部形成原料の厚さは、乾燥、焼成後の厚さが0.25mmとなるような厚さとした。また、電極部形成原料は、ハニカム焼成体の外周壁を残した部分の側面に、ハニカム焼成体の一方の端面から他方の端面に亘る2箇所に塗布した。そして、セルの延びる方向に直交する断面において、2箇所に塗布した電極部形成原料のうちの一方の電極部形成原料が、他方の電極部形成原料に対して、ハニカム焼成体の中心を挟んで反対側に配置されるようにした。ハニカム焼成体の側面に塗布された電極部形成原料の形状は、長方形とした。
【0212】
次に、ハニカム焼成体に塗布した電極部形成原料を乾燥させた。乾燥条件は、70℃とした。
【0213】
次に、電極端子突起部形成原料を作製した。まず、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合した。これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加すると共に、水を添加して、混合した。混合物を混練して電極端子突起部形成原料を作製した。電極端子突起部形成原料を、真空土練機を用いて坏土とした。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに4質量部であった。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに22質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は52μmであった。金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素及び金属珪素の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0214】
得られた坏土を、
図21〜
図23に示される電極端子突起部22のような形状に加工した。
図21〜
図23に示される形状とは、基板と突起部とからなる形状のことである。加工した坏土を、乾燥して、電極端子突起部形成用部材を得た。また、乾燥条件は、70℃とした。板状の基板22aに相当する部分は、「3mm×12mm×15mm」の大きさとした。また、突起部22bに相当する部分は、底面の直径が7mmで、中心軸方向の長さが10mmの円柱状とした。電極端子突起部形成用部材は2つ作製した。
【0215】
次に、2つの電極端子突起部形成用部材のそれぞれを、ハニカム焼成体の2箇所の電極部形成原料を塗布した部分のそれぞれに貼り付けた。電極端子突起部形成用部材は、電極部形成原料を用いて、ハニカム焼成体の電極部形成原料を塗布した部分に貼り付けた。その後、「電極部形成原料が塗布され、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられたハニカム焼成体」を、脱脂し、焼成し、更に酸化処理してハニカム構造体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。酸化処理の条件は、1300℃で1時間とした。
【0216】
得られたハニカム構造体の隔壁の平均細孔径は8.6μmであった。ハニカム構造体の隔壁の気孔率は45%であった。また、外周壁を形成する低ヤング率部の平均細孔径は15μmであった。低ヤング率部の気孔率は82%であった。平均細孔径及び気孔率は、水銀ポロシメータ(Micromeritics社製 商品名:オートポアIV9505)により測定した値である。
【0217】
また、隔壁のヤング率は、30GPaであった。外周壁を形成する低ヤング率部のヤング率は、0.8GPaであった。電極部のヤング率は、3GPaであった。また、隔壁と一体に形成された外周壁の残存部分のヤング率は、隔壁と同様に30GPaであった。この外周壁の残存部分は高ヤング率部となる。各部のヤング率の測定は、JIS R1602に準拠して、曲げ共振法により測定した値である。隔壁のヤング率の測定の試験片は、20mm×10mm×100mmの大きさとした。低ヤング率部及び電極部のヤング率測定の試験片は、各原料を用いてバルク体を作製し、このバルク体を3mm×4mm×40mmの大きさとしてものを用いた。
【0218】
また、ハニカム構造体の隔壁の厚さは101.6μmであった。ハニカム構造体のセル密度は93セル/cm
2であった。また、ハニカム構造体の底面は直径93mmの円形であった。ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは100mmであった。また、ハニカム構造体に配設された2つの電極部の、セルの延びる方向に直交する断面における中心角の0.5倍は、49°であった。また、電極部の厚さは、0.25mmであった。また、電極部の電気抵抗率は、0.8Ωcmであった。ハニカム構造部を構成する隔壁の電気抵抗率は、40Ωcmであった。外周壁の低ヤング率部の電気抵抗率は、100Ωcmであった。電極端子突起部の電気抵抗率は、0.8Ωcmであった。
【0219】
なお、ハニカム構造部、電極部及び電極端子突起部の電気抵抗率は、以下の方法で測定した。測定対象と同じ材質で10mm×10mm×50mmの試験片を作成した。つまり、ハニカム構造部の電気抵抗率を測定する場合にはハニカム構造部と同じ材質で試験片を作製した。電極部の電気抵抗率を測定する場合には電極部と同じ材質で試験片を作製した。そして、電極端子突起部の電気抵抗率を測定する場合には電極端子突起部と同じ材質で試験片を作製した。試験片の両端部(長手方向における両端部)全面に銀ペーストを塗布し、配線して通電できるようにした。試験片に電圧印加電流測定装置をつなぎ印加した。試験片中央部に熱伝対を設置し、電圧印加時の試験片温度の経時変化をレコーダーにて確認した。100〜200V印加し、試験片温度が400℃の状態における電流値及び電圧値を測定した。得られた電流値及び電圧値、並びに試験片寸法から電気抵抗率を算出した。
【0220】
また、隔壁のヤング率(GPa)に対する、外周壁のヤング率(GPa)の比の百分率を「ヤング率比(%)」として算出した。結果を表1に示す。
【0221】
得られたハニカム構造体について、以下の方法で、「耐熱衝撃性の評価」と「アイソスタティック強度の評価」とを行った。結果を表1に示す。
【0222】
(耐熱衝撃性の評価)
ガスバーナー試験機を用いて、ハニカム構造体の耐熱衝撃性の評価を行った。ガスバーナー試験機としては、プロパンガスを燃焼させるプロパンガスバーナー試験機を用いた。具体的には、各実施例のハニカム構造体を金属ケースにキャニングし、キャニングされたハニカム構造体をガスバーナー試験機内に配置した。ハニカム構造体の加熱、冷却を、下記通気条件を1サイクルとして、100サイクル行った。1サイクルの通気条件は、ガスバーナー試験機内のハニカム構造体の入口側から、950℃のガスを10分間流通させ、その後、100℃のガスを10分間流通させるものとした。そして、100サイクル後のハニカム構造体のクラックの発生状態を確認して、耐熱衝撃性の評価を行った。クラックが発生しない場合を「A」とし、クラックが発生した場合を「B」とした。クラックの発生の有無は、目視によって行った。
【0223】
(抵抗変化)
上記「耐熱衝撃性」の試験の前後におけるハニカム構造体の抵抗値から、ハニカム構造体の抵抗変化の評価を行った。具体的には、上記「耐熱衝撃性」の試験を行う前のハニカム構造体の抵抗値を測定する。そして、「耐熱衝撃性」の試験を行った後のハニカム構造体の抵抗値を測定する。「耐熱衝撃性」試験の前後の抵抗値の差が、「耐熱衝撃性」試験前のハニカム構造体の抵抗値の5%以内であれば、「抵抗変化」が「無し(変化なし)」とした。「耐熱衝撃性」試験の前後の抵抗値の差が、「耐熱衝撃性」試験前のハニカム構造体の抵抗値の5%を超える場合は、「抵抗変化」が「有り(抵抗値が変化)」とした。抵抗値の測定は、ハニカム構造体の電極端子突起部に配線して通電することにより行った。測定時には、ハニカム構造体に電圧印加電流測定装置をつなぎ、電圧を印加した。100〜200Vで電圧を印加し、電流値及び電圧値を測定した。得られた電流値及び電圧値からハニカム構造体電気抵抗率を算出した。通電中の最小となる抵抗値をハニカム構造体の抵抗値(抵抗)とした。大きなクラックが発生した場合には、抵抗値が大きくなる。
【0224】
(アイソスタティック強度の評価)
得られたハニカム構造体を、水中に浸漬し、3.0MPaの静水圧をかけて、ハニカム構造体が破壊及びクラックの発生を確認した。破損及びクラックが発生しない場合を「A」とした。破損及びクラックが発生した場合を「B」とした。クラックの発生の有無は、試験中の破壊音確認と、試験後にハニカム構造体の外観を目視することによって行った。
【0225】
【表1】
【0226】
(実施例2〜9、比較例1及び2)
外周壁のヤング率を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
【0227】
得られた実施例2〜9、比較例1及び2のハニカム構造体について、実施例1の場合と同様にして、「耐熱衝撃性の評価」と「アイソスタティック強度の評価」との評価を行った。結果を表1に示す。
【0228】
(実施例10)
外周壁の低ヤング率部を形成する材料を、コート材に変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を製造した。実施例10におけるコート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、炭化珪素粒子等からなる材料を用いた。
【0229】
実施例10のハニカム構造体は、隔壁のヤング率が30GPaであり、低ヤング率部のヤング率は0.6GPaであった。得られた実施例10のハニカム構造体について、実施例1の場合と同様にして、「耐熱衝撃性の評価」と「アイソスタティック強度の評価」との評価を行った。結果を表2に示す。
【0230】
【表2】
【0231】
(実施例11〜17、比較例3、4)
外周
壁のヤング率を、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。得られた実施例11〜17、比較例3、4のハニカム構造体について、実施例1の場合と同様にして、「耐熱衝撃性の評価」と「アイソスタティック強度の評価」との評価を行った。結果を表2に示す。
【0232】
表1及び表2より、本実施例のハニカム構造体は、アイソスタティック強度の評価において、破損、クラックの発生が確認されなかった。また、本実施例のハニカム構造体は、耐熱衝撃性の評価においても、抵抗値が変化するような大きなクラックの発生は確認されなかった。即ち、実施例1〜7、10〜16のハニカム構造体においては、目視によるクラックの発生は確認されなかった。また、実施例8、9及び17においても、一部クラックの発生が確認されたものの、ハニカム構造体の抵抗値に変化を与えるような極端に大きなクラックは発生していなかった。このため、実施例1〜17のハニカム構造体は、ヒーターとして使用することに支障の無いものであった。
【0233】
一方、比較例1及び3においては、外周壁、具体的には、低ヤング率部のヤング率が低すぎて、アイソスタティック強度が低下し、破損、クラックの発生が確認された。また、比較例2及び4においては、外周壁のヤング率が高すぎて、ハニカム構造体の抵抗値に変化を与えるような極端に大きなクラックが発生してしまった。