(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916635
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】体組織開創器および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/02 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
A61B17/02
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-557265(P2012-557265)
(86)(22)【出願日】2011年3月11日
(65)【公表番号】特表2013-521896(P2013-521896A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011028008
(87)【国際公開番号】WO2011112878
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2014年2月25日
(31)【優先権主張番号】12/722,100
(32)【優先日】2010年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507400686
【氏名又は名称】グローバス メディカル インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ワイマン,マーク
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/060493(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0073111(US,A1)
【文献】
米国特許第6074343(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一回転可能腕部と、第二回転可能腕部と、当該第一回転可能腕部および当該第二回転可能腕部に結合された直線移動可能腕部とを備える開創器基本構造;
上記第一回転可能腕部の遠位端に結合された第一刃部;
上記第二回転可能腕部の遠位端に結合された第二刃部;
上記直線移動可能腕部の遠位端に結合された第三刃部;
上記第一回転可能腕部の遠位端を円弧状に動かすよう上記第一回転可能腕部を回転させるための、上記第一回転可能腕部に結合する第一遊星歯車機構;
上記第二回転可能腕部の遠位端を円弧状に動かすよう上記第二回転可能腕部を回転させるための、上記第二回転可能腕部に結合する第二遊星歯車機構;および
上記直線移動可能腕部を直線状に移動させるためのラック・ピニオン歯車機構:を備えており、
上記第一回転可能腕部は、体組織開創のために、上記第一刃部を円弧状に動かすよう回転するものであり、
上記第二回転可能腕部は、体組織開創のために、上記第二刃部を円弧状に動かすよう回転するものであり、
上記直線移動可能腕部は、体組織開創のために、上記第三刃部を直線状に動かすよう移動するものであり、
体組織開創のために、上記第一刃部、上記第二刃部および上記第三刃部は、当該第一刃部の遠位端、当該第二刃部の遠位端および当該第三刃部の遠位端を互いに離すように角度をなしており、
上記直線移動可能腕部は、当該直線移動可能腕部の直線移動のみを制御するが他の腕部を制御しない取付具を備えており、
上記第一回転可能腕部および上記第二回転可能腕部の回転は、上記第一刃部および上記第二刃部の角度の形成からは独立に行われ、上記第一回転可能腕部および上記第二回転可能腕部の回転は、上記第一刃部および上記第二刃部の角度の形成とは異なる方向におけるものであり、
上記第一回転可能腕部および上記第二回転可能腕部の回転は、互い独立に行われる、開創器システム。
【請求項2】
上記第一回転可能腕部の遠位端は、上記第一刃部を保持するための刃取付部を備えており、当該刃取付部は、上記第一刃部の遠位端を上記第二刃部の遠位端および上記第三刃部の遠位端から遠ざかる方向に移動させるように構成される、請求項1に記載の開創器システム。
【請求項3】
上記開創器基本構造は、上記第一回転可能腕部の回転を駆動するための遊星歯車機構を備えている、請求項1に記載の開創器システム。
【請求項4】
上記開創器基本構造は、上記第一回転可能腕部に結合された取付具を備えており、当該取付具の回転は、上記第一回転可能腕部の回転を始動するように構成される、請求項1に記載の開創器システム。
【請求項5】
上記開創器基本構造は、上記取付具に結合された遊星歯車を備えており、当該取付具の回転は当該遊星歯車を回転させるものであり、上記開創器システムは当該遊星歯車に噛み合う中心歯車を備えている、請求項4に記載の開創器システム。
【請求項6】
上記開創器基本構造は、上記第一回転可能腕部の回転を固定するための追歯車固定機構を備えている、請求項1に記載の開創器システム。
【請求項7】
上記取付具は、上記直線移動可能腕部の移動のためのラック・ピニオン歯車機構の一部である、請求項1に記載の開創器システム。
【請求項8】
上記直線移動可能腕部は、当該直線移動可能腕部の移動促進のためのラック部分を備えている、請求項1に記載の開創器システム。
【請求項9】
上記開創器基本構造は、上記直線移動可能腕部の移動を固定するための追歯車固定機構を備えている、請求項1に記載の開創器システム。
【請求項10】
遠位端に第一刃取付部を備える第一回転可能腕部;
上記第一回転可能腕部の遠位端を円弧状に動かすよう上記第一回転可能腕部を回転させるための、上記第一回転可能腕部に結合する第一遊星歯車機構;
遠位端に第二刃取付部を備える第二回転可能腕部;
上記第二回転可能腕部の遠位端を円弧状に動かすよう上記第二回転可能腕部を回転させるための、上記第二回転可能腕部に結合する第二遊星歯車機構;
上記第一回転可能腕部および上記第二回転可能腕部に結合され、遠位端に第三刃取付部を備える直線移動可能腕部;および
上記直線移動可能腕部を直線状に移動させるためのラック・ピニオン歯車機構:を備える開創器基本構造;
上記第一刃取付部に結合された第一刃部;
上記第二刃取付部に結合された第二刃部;ならびに
上記第三刃取付部に結合された第三刃部:を備えており、
上記直線移動可能腕部は、当該直線移動可能腕部の直線移動のみを制御するが他の腕部を制御しない取付具を備えており、
上記第一刃部、上記第二刃部および上記第三刃部は、当該第一刃部の遠位端、当該第二刃部の遠位端および当該第三刃部の遠位端を互いに離すように角度をなしており、
上記第一回転可能腕部および上記第二回転可能腕部の回転は、互い独立に行われる、開創器システム。
【請求項11】
上記第一回転可能腕部は、第一刃取付部の近位端に結合された遠位端を有する基部を備えている、請求項10に記載の開創器システム。
【請求項12】
上記第一遊星歯車機構は、取付具と、当該取付具の回転が遊星歯車を回転させるように当該取付具に結合された遊星歯車と、当該遊星歯車の歯に噛み合う、上記第一回転可能腕部に結合された第一中心歯車とを備えている、請求項11に記載の開創器システム。
【請求項13】
上記第一中心歯車は、上記第一回転可能腕部の基部の溝内に受け入れられる、請求項12に記載の開創器システム。
【請求項14】
上記開創器基本構造は、上記第一回転可能腕部に結合された中心歯車軸受と、上記第二回転可能腕部と、上記直線移動可能腕部とを備えており、当該中心歯車軸受は上記第一中心歯車を受ける、請求項13に記載の開創器システム。
【請求項15】
上記開創器基本構造は、上記第一回転可能腕部の回転を固定するための追歯車固定機構を備えている、請求項10に記載の開創器システム。
【請求項16】
上記直線移動可能腕部は、ラック部分および溝付き部分を備えており、当該溝付き部分は、当該ラック部分と上記第三刃取付部とを離す、請求項10に記載の開創器システム。
【請求項17】
上記取付具は、ラック・ピニオン歯車機構の一部である、請求項10に記載の開創器システム。
【請求項18】
上記開創器基本構造は、上記直線移動可能腕部の移動を固定するための追歯車固定機構を備えている、請求項10に記載の開創器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に医療器具に関連する。特に、ひとつ以上の実施例において、本発明は手術部位に接近するために体組織を開創する方法および器具を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
開創器システムは、各種異なる外科手術手続きにおいて、執刀医が手術部位に接近するための開口を提供するように使用される。例えば脊髄手術においては、執刀医が患者の脊椎に接近できるよう、開創器システムが使用される。開創器システムにより形成された開口を通じて、執刀医が体内に外科手術器具を挿入することが可能となる、あるいはX線を用いた手術部位の可視化が可能となる。典型的な開創器には、開創器基本構造部に結合した複数の刃部が含まれる。使用時にはこれらの刃部が切開部に挿入され開創を施し、切開部周辺の体組織を手術部位まで下方に移動させる。開創された体組織の手術後の外傷を最小にするように、体組織の移動は一般的には手術前に近い状態に復元し処置される。しかしながら、現在の開創器システムを使用しては、このような好ましい処置を実施できない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、体組織を開創して手術部位に接近するために使用することができる、改良された方法および器具の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は一般的に医療器具に関連する。特に、ひとつ以上の実施例において、本発明は手術部位に接近するために体組織を開創する方法および開創器に関するものである。
【0005】
ひとつの実施例がひとつの開創器システムより構成される。この開創器システムは、開創器基本構造部より成る。開創器基本構造部は、第一回転可能腕部、第二回転可能腕部、そして第一および第二の回転可能腕部に連結する直線移動可能腕部より構成される。第一刃部は第一回転可能腕部の遠位端に結合されている。第一回転可能腕部は、体組織開創のため第一刃部を円弧状に回転移動させるように構成される。第二刃部は第二回転可能腕部の遠位端に結合されている。第二回転可能腕部は、体組織開創のため第二刃部を円弧状に回転移動するように構成される。第三刃部は直線移動可能腕部の遠位端に結合されている。第三回転可能腕部は、体組織開創のため第三刃部を直線移動するように構成される。第一刃部、第二刃部、第三刃部は、体組織開創のため、第一刃部、第二刃部、第三刃部の遠位端を互いに分離するよう、角度を形成するよう構成される。
【0006】
本発明の特長および利点は、この分野の専門者には自明であろう。これらの専門者により、多数の改変が実施できようが、そのような改変は本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の特定の局面を示す図であり、本発明の限界を定義するために使用されるべきではない。
【
図1】
図1は、本技術の実施例に従う、閉じた状態の開創器システムを示す。
【
図2】
図2は、本技術の実施例に従う、閉じた状態の開創器システムを示す。
【
図3】
図3は、本技術の実施例に従う、開いた状態の開創器システムを示す。
【
図4】
図4は、本技術の実施例に従う、開いた状態の開創器システムを示す。
【
図5】
図5は、本技術の実施例に従う、開創器の基本構造部を示す。
【
図6】
図6は、本技術の実施例に従う、開創器システムに使用される回転可能腕部を示す。
【
図7】
図7は、本技術の実施例に従う、開創器システムに使用される直線移動可能可能腕部および中心歯車軸受を示す。
【
図8】
図8は、本技術のひとつの実施例に従う、開創器システムに使用される回転可能腕部を示す。
【
図9】
図9は、本技術の実施例に従う、開創器基本構造部の底面図を示す。
【
図10】
図10は、本技術の実施例に従う、開創器基本構造部の断面図を示す。
【
図11】
図11は、本技術の実施例に従う、開創器基本構造部の上面図を示す。
【
図12】
図12は、本技術の実施例に従う、追歯車固定機構を示す。
【
図13】
図12は、本技術の実施例に従う、開創器刃部がなす角度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜4は、本発明のひとつの実施例に従う、外科手術において体組織を開創するために使用される開創器システム10を示す。開創器システム10は、第一刃部12、第二刃部14、そして第三刃部16により構成される。第一刃部、第二刃部、第三刃部は、開創器基本構造部18にそれぞれ結合する。開創器基本構造部18は、第一刃部12を保持し、その位置を決定するための第一刃取付部22を有する、第一回転可能腕部20より成る。開創器基本構造部18は更に、第二刃部14を保持し、その位置を決定するための第二刃取付部26を有する、第二回転可能腕部24より成る。開創器基本構造部18は更に、第三刃部16を保持し、その位置を決定するための第三刃取付部30を有する、直線移動可能腕部28より成る。第一および第二の回転可能腕部20および24、そして直線移動可能腕部28は、刃部12、14、16が所定の距離を保ってお互いに分離されるように移動する。加えて、刃取付部22、26、30は、刃部12、14、16が角度をなし、刃部12、14、16の遠位端間の距離を増大させるように移動することが可能である。このようにして、切開部周辺の体組織を開創すると、手術部位に接近することができるようになる。実施例においては、第一刃部、第二刃部そして第三刃部は個別に移動させることができる。
【0009】
図1〜2は、本発明のひとつの実施例に従う、「閉じた」あるいは非開創状態にある開創器システム10を示す。この閉じた状態においては、第一刃部、第二刃部、第三刃部 12、14、16は、中央開口31の周囲に半径方向に配置され十分閉じて、管状構造が形成される。
【0010】
図3〜4は、本発明のひとつの実施例に従う、「開いた」あるいは開創状態にある開創器システム10を示す。この開いた状態においては、第一刃部、第二刃部、第三刃部 12、14、16は移動しており、十分閉じた管状構造はもはや形成されない。むしろ、第一刃部、第二刃部12、14は回転して角度をなし、そして第三刃部16は直線移動して角度をなしており、刃部12、14、16が配置されている中央開口の直径は増大する。
【0011】
取付具32の回転により第一回転可能腕部20の回転が始動する。取付具32は、六角ネジ (例:10mm六角ネジ)のような締結具でよい。取付具32は、第一中心歯車34に噛み合う歯を有する遊星歯車180 (
図9に図示)に結合されている。取付具32、遊星歯車180、そして第一中心歯車34間の噛み合いは、本発明の実施例に従う遊星歯車機構として記述することができる。図示された実施例には、第一中心歯車34の歯に噛み合う追歯車固定機構38が含まれる。取付具32が回転するに従い、第一回転可能腕部20は矢印36で示される方向に回転し、第一回転可能腕部20の遠位端を円弧状に移動させる。例えば、取付具32の反時計回りの回転は、第一回転可能腕部20を矢印36で示されるように回転させ、従って第一刃部12が第二刃部、第三刃部14、16から離れるように円弧状に回転する。ひとつの実施例においては、第一中心歯車34は静止しており、遊星歯車180の歯は、第一中心歯車の歯と噛み合いながら回転している。別の実施例においては、追歯車固定機構38は第一中心歯車34と噛み合い、第一回転可能腕部20を反時計方向には回転させないようにする。第一回転可能腕部20を回転させて初期位置 (
図1〜2)に戻すには、追歯車固定機構38のレバーを押して、第一回転可能腕部20をその回転移動状態 (
図3〜4)から開放させる。
【0012】
第一回転可能腕部20と同様な方法により、第二回転可能腕部24は取付具40の回転により移動が始動する。取付具40は例えば、六角ネジ (例:10mm六角ネジ)のような締結具でよい。取付具40は、第二中心歯車42に噛み合う歯を有する遊星歯車182(
図9に図示)に結合されている。取付具40、遊星歯車182、そして第二中心歯車42間の噛み合いは、本発明の実施例に従う遊星歯車機構として記述することができる。用語「中心」は、第一および第二の中心歯車34および42が円形という意味ではなく、むしろ、他の構成部品と関連した歯車の機能が遊星歯車として通常参照されるものと同様であるという意味で用いられている。図示された実施例には、第二中心歯車42の歯に噛み合う追歯車固定機構44が含まれる。取付具40が回転するに従い、第二回転可能腕部24は矢印46で示される方向に回転し、第二腕部24の遠位端を円弧状に移動させる。例えば、取付具40の反時計回りの回転では、第二回転可能腕部24が矢印46で示されるように回転し、従って第二刃部12が第一刃部、第三刃部12、16から離れるように円弧状に回転する。ひとつの実施例においては、第二中心歯車42は静止しており、遊星歯車182の歯は、第二中心歯車の歯と噛み合いながら回転している。別の実施例においては、追歯車固定機構44は第二中心歯車42と噛み合い、第二回転可能腕部24が反時計方向には回転させないようにする。第二回転可能腕部24を回転させて初期位置 (
図1〜2)に戻すには、追歯車固定機構44のレバーを押して、第二回転可能腕部24をその回転移動状態 (
図3〜4)から開放させる。
【0013】
直線移動可能腕部28は取付具48の回転により移動が始動する。取付具48は例えば、六角ネジ (例:10mm六角ネジ)のような締結具でよい。取付具48は、直線移動可能腕部28のラック部分50の歯に噛み合うピニオン歯車 (非図示)に結合されている。図示されているように、ラック部分50は、直線移動可能腕部28の第三刃取付部30から反対側の終端に位置する。取付具48、ピニオン歯車、ラック部分50間の噛み合いは、本発明の実施例に従うラック・ピニオン歯車機構として記述することができる。図示された実施例においては、ラック部分50の歯に噛み合う追歯車固定機構52もまた含まれる。取付具48が回転するに従い、直線移動可能腕部28は
図3〜4で図示されているように直線移動する。これにより、第三刃部16と第一刃部、第二刃部12、14との間の距離が増加する。ひとつの実施例においては、追歯車固定機構42は、ラック部分50と噛み合い、刃部12、14、16の間の距離が減少するような反対方向へ直線移動させないようにする。取付具48を作動させずに、直線移動可能腕部28を回転させて初期位置 (
図1〜2) に戻すには、追歯車固定機52のレバーを押して、直線移動可能腕部28をその直線移動状態 (
図3〜4) から開放させる。
【0014】
本実施例においては、取付具54の回転により、第一刃部、第二刃部、第三刃部12、14、16のそれぞれが、対応する角度をなす。ここで使用されているように、刃部12、14、16が角度をなすことは、刃部12、14、16の遠位端が外側かつ上方に回転して遠位端が分離することを意味する。取付具54は例えば、六角ネジ (例:10mm六角ネジ)のような締結具でよい。
図3〜4で図示されているように、取付具54の各々が回転して、第一刃部、第二刃部、第三刃部のそれぞれが角度をなす。
図13に関連して詳細に説明するように、取付具54が回転するにつれ、刃取付部22、26、30が角度をなして移動し、刃部12、14、16が対応する角度をなす。実施例においては、ネジ山により制御される無限角度調整機構を利用して角度が形成される。
【0015】
開創器システム10の第一刃部、第二刃部、第三刃部12、14、16には、第一刃部、第二刃部、第三刃部12、14、16のそれぞれの長軸に沿って、ひとつ以上の孔58が延長して形成されている。孔58は、光学部品、キルシナー銅線、その他の適切な装置が刃部12、14、16を通過できるように構成される。刃縁には、開創された体組織への損傷可能性を最小限に止めるように、例えば、丸みを付けることができる。ここでは3枚の刃を用いて図示されてはいるが、この分野の専門者は、開創器システム10 は3枚以上の刃を用いて構成させて、特定の用途に対して好ましく移動させることができよう。例えば、開創器システムには、2つの直線移動可能腕部および2つの回転可能腕部より構成される4つの刃部を用いることができる。あるいは、開創器システムは、2つの回転可能腕部あるいは1つの直線移動可能腕部および1つの回転可能腕部で構成することができる。
【0016】
取付具32、40、48、54には各種異なる治具を取り付けて、所定の回転を促すように構成できることが理解されるべきである。例えば、レンチ、ねじ回しといった適切な治具を用いて、取付具32、40、48、54を回転させることが可能である。更に、取付具32、40、48、54は固定具として示されているが、移動させるためには固定具は必ずしも必要としない。クランクなどの他の適切な装置が所定の移動を促すために使用することができる。
【0017】
本発明のひとつの実施例には、手術手続きにおいて体組織を開創するために開創器システム10を使用することが含まれる。例えば、閉じた状態の開創器システム10を患者体組織内の開いた部位(例:切開部)に配置することができる。次に執刀医(あるいは他の手術担当医)は、取付具32および取付具40を回転させて、第一回転可能腕部20および第二回転可能腕部24をそれぞれ回転させることができ、これにより第一刃部および第二刃部が円弧状に移動する。執刀医はまた、取付具48を回転させて直線移動可能刃部28そして第三刃部16を直線移動させることができる。このように、第一刃部、第二刃部、第三刃部12、14、16が開創し(あるいは広がり)、手術部位へ接近できるようになる。接近を更に促すには、執刀医が取付具54のそれぞれを回転させて、第一刃部、第二刃部、第三刃部12、14、16角度をなして移動させる。
【0018】
図5〜11の説明に移り、開創器基本構造部18を本発明の実施例に基づいて詳細に図示する。前述のように、開創器基本構造部18は、第一回転可能腕部20、第二回転可能腕部24、そして直線移動可能腕部28より構成される。開創器基本構造部18の内部部品が図示されるように、第二回転可能腕部の一部が
図11では省略されている。加えて、開創器基本構造部18は更に、中心歯車軸受60より成る。図示されているように、中心歯車軸受60は、第一中心歯車34、および第二中心歯車42を受ける。本実施例に従えば、第一中心歯車34および第二中心歯車42は、第一回転可能腕部20および第二回転可能腕部24をそれぞれ回転させるように構成される。
【0019】
第一回転可能腕部20は、近位端62および遠位端64を有する第一刃取付部22により成る。第一回転可能腕部20は更に、近位端68および遠位端70を有する基部66より成る。第一刃取付部22の近位端62は、基部66の遠位端70上に配置される。第一刃取付部22は、ピボットピン(非図示)により基部66に固定される。第一刃取付部22の遠位端64は、第一刃部12(
図1および3に図示)を受け入れるように構成される。例えば、遠位端64は、第一刃部12を受け入れる溝72を有する。遠位端64にある切欠74は、第一刃部12の対応する突起物を受け入れることができる。締結具76は、刃取り付け部22内に刃部12を固定する。図示されているように、締結具76には、半径方向に延長するひとつ以上の突起物78が含まれる。第一刃部12が固定されるよう、第一刃部12は、切欠74の刃部12の突起部分に定着するまで、溝72に挿入される。突起物78のひとつが第一刃部12の上部まで到達するまで締結具76を回転させて、溝72から外れないようにする。
【0020】
基部66には近位端68の位置につまみがあり、追歯車固定機構38が押されると第一回転可能腕部20が制御されながら初期位置に戻るのに使用される。上部および底部環状部80および82は、それぞれ第一回転可能腕部22から横方向に延長する。溝84は、中心歯車軸受60を受け入れるよう、第一回転可能腕部20内に形成される。ピン86は、環状部80および82を通過して、遊星歯車180に噛み合う第一中心歯車34の歯と中心歯車軸受60を溝84に固定する。固定ネジ87がピン88を中心歯車軸受60内に固定する。ピン88は、孔90を通過して、基部66の上下部分92、94に延長される。ピン88は、第一回転可能ア−ム22をバネを用いて取り付けるためのバネ170に結合されるはずである。上溝96は、基部66の上部92に形成され、開創器基本構造部18の中心歯車軸受60、そしてその他の部品へ接近できるようになっている。
図9に示されているように、基部66の下部94には対応する下溝98が形成されており、開創器基本構造部18の中心歯車軸受60、そしてその他の部品へ接近できるようになっている。
【0021】
第二回転可能腕部24は、近位端100および遠位端102を有する第二刃取付部26により成る。第二回転可能腕部24は更に、近位端106および遠位端108を有する基部104より成る。第二刃取付部26の近位端100は、基部104の遠位端108上に配置される。第二刃取付部26はピボットピン105(
図12に図示)で基部104に固定される。第二刃取付部26の遠位端102は、第二刃部14 (
図1および3に図示)を受け入れるように構成される。例えば、遠位端102は、第二刃部14を受け入れる溝110を有する。遠位端102にある切欠112は、第二刃部14の対応する突起物を受け入れることができる。締結具114は、第二刃取付部26内に第二刃部14を固定する。図示されているように、締結具114には半径方向に延長するひとつ以上の突起物116が含まれる。第二刃部14が固定されるよう、第二刃部14は、切欠110の刃部14の突起部分に定着するまで、溝110に挿入される。突起物116のひとつが第二刃部14の上部まで到達するまで締結具114を回転させて、溝110から外れないようにする。
【0022】
基部104には近位端106につまみがあり、追歯車固定機構38が押されると、第二回転可能腕部24が制御されながら戻るのを促進する。上部および底部環状部118、120は第二回転可能腕部26から横方向に延長する。溝122は、中心歯車軸受60を受け入れるよう、第二回転可能腕部24内に形成される。ピン86は、環状部118、120を通過して、遊星歯車182に噛み合う第二中心歯車42の歯と中心歯車軸受60を溝112に固定する。ピン124は、孔126を通過して、基部104の上下部分128、130に延長される。ピン124は、第二回転可能ア−ム24をバネで取り付けるために使用されるバネ168に結合される。上溝132は、基部104の上部128に形成され、開創器基本構造部18の中心歯車軸受60、そしてその他の部品へ接近できるようになっている。
図9に示されているように、基部104の下部130には対応する下溝134が形成されており、開創器基本構造部18の中心歯車軸受60、そしてその他の部品へ接近できるようになっている。
【0023】
直線移動可能腕部28は、第三刃取付部30、および溝付中央部分136により、第三刃取付部30から分離されたラック部分50より成る。ひとつの実施例においては、ラック部分50には少なくとも部分的に溝が形成されている。第三刃取付部30は近位端138および遠位端140を有する。溝付中央部分136は、第三刃取付部30の近位端138の上に配置される遠位端142より構成される。一本のピンが第三刃取付部30を溝付中央部分136に固定する。第三刃取付部30の遠位端140は、第三刃部16 (
図1および3に図示) を受け入れるように構成される。例えば、遠位端140には第三刃部16を受け入れる溝144がある。遠位端140にある切欠146は、第三刃部16の対応する突起物を受け入れる。締結具148は、第三刃部16を第三刃取付部30内に固定する。図示されているように、締結具148には半径方向に延長するひとつ以上の突起物150が含まれる。第三刃部16が固定されるよう、第三刃部16の突起部分が切欠146に定着するまで、刃部16が溝144に挿入される。次に、突起物150のひとつが第三刃部16の上部まで到達するまで締結具148を回転させて、溝144から外れないようにする。溝144の底部にある突起物160のひとつは更に、溝144内にある第三刃部16を固定する。
【0024】
溝付中央部分136は、第三刃取付部30の遠位端142とラック部分50の近位端を結合させる。図示されているように、溝付中央部分136は、中心歯車軸受60内の経路152を通過して延長している。溝付中央部分136により、ラック部分50が第三取付部30から分離されている。図示されているように、ラック部分50は、中心歯車軸受60内の経路152を通過して延長している。ラック部分50は更に、取付具/子歯車48に噛み合うラック歯153により構成される。追歯固定機構50は更に、開創器システム10を腕部(非図示)に固定するための機能を備える。この分野の専門者は、例えば、開創器システム10と手術台とを連結するために、この腕部が利用されることを理解するであろう。開創器システム10と手術台とを連結する機能には、例えば、ラック部分50の反対側での一対の溝156および半楕円状の開口158が含まれる。
【0025】
中心歯車軸受60は、第一側面上の第一中心歯車34および第二側面上の第二中心歯車42より構成される。図示された実施例においては、中心歯車軸受60は縁を有する一般的な円盤形状162であり、それを中心に第一中心歯車34および第二中心歯車42が個別に回転可能である。図示されているように、縁部162は更に、第二回転可能腕部24の追歯固定機構44に噛み合う歯164より構成される。図示されてはいないが、縁部162の反対側にも、第一回転可能腕部20の追歯固定機構38に噛み合う歯が対応して構成されている。中央開口は、ピン86が挿入されている中心歯車軸受60に配置される。中心歯車軸受60は更に、矩形断面を有する経路152より構成される。中心歯車軸受60は更に、経路166より構成される。図示された実施例においては、バネ170がピン88に結合しており、追歯固定機構34が開放されたときに、バネの力によって第一回転可能腕部20が初期位置に戻る。更に図示されているように、ピン124がもうひとつの経路166に挿入されている。バネ168がピン124に結合しており、追歯固定機構44が開放されたときに、バネの力によって第二回転可能腕部24が初期位置に戻る。中心歯車軸受60は更に、腕部取付板174に取り付けられており、上方に延長する腕部172より構成されている。腕部取付板174は更に、開創器システム10を手術台の接続部に接続させるための腕部などの特長により構成される。例えば、取付板174は、溝176および半楕円形開口178より構成される。図示されているように、追歯固定機構52は、直線移動可能腕部28のラック部分50の歯に噛み合うように、中心歯車軸受60に結合される。更に図示されているように、取付具48は、中心歯車軸受60内の開口を通過して延長されており、これに結合するピニオン歯車(非表示)はまた、ラック歯153に噛み合うようになっている。
【0026】
図12は、本発明のひとつの実施例に従い、追歯固定機構44を詳細に図示している。実施例においては、追歯固定機構44には、レバー180および先端部182が含まれる。図示されているように、追歯固定機構44の先端部182は、第二中心歯車52の歯164に噛み合い、第二回転可能腕部24の一方向への移動、つまり反時計回りの回転を可能にさせる。第二回転可能腕部24は、レバー180を押すことにより、その回転位置から開放される。バネ168は一般的に、レバー180が開放されたときに、第二回転可能腕部24がその初期位置に戻るのに必要な力を提供する。
図12の前述の説明は追歯固定機構44に関するものではあるが、追歯固定機構38もまた、第一回転可能腕部20の回転を制限するために同様に作動することは理解される。更に、上述の説明は追歯固定機構を記述するが、回転可能腕部を一方向に移動させるための他の適切な装置もまた、本発明に従って利用することができることには留意すべきである。
【0027】
図13は、本発明のひとつの実施例に従う、刃取付部22の角度をなす移動を図示している。前述のように、第一回転可能腕部20は、基部66の遠位端70に結合した刃取付部22より成る。図示されているように、取付具54は、刃取付部22を基部66上に固定する。取付具54は例えば、基部66の対応する開口184に挿入されるねじ山でよい。ピン107(
図12を参照)は、取付具54のネジ軸を旋回軸として取付部22を結合させる。第二ピン105(
図13を参照)は、基部66の底部を通過して刃取付部22を固定する。取付具のネジ山には、取付具の頭部に刃取付部が留まる部分が提供されており、取付具54が作動する場合に刃取付部が旋回することが可能である。ピン107および105により、回転軸が2つ別々に形成される。取付具が作動すると、刃取付部22がピン105の回転軸の周りを回転する。ひとつの実施例においては、開口184は角度をなしており、開口184の軸が第一回転可能腕部20のz軸と角度をなす。従って、取付具54が回転するにつれ、刃取付部22が旋回することになる。このように、刃取付部22そして第一刃部12は角度をなして移動する。
図12および13の前述の説明は第一刃取付部22がなす角度についてではあるが、第二刃部、第三刃部26、30がなす角度もまた同様に理解されるべきである。更に、前述の説明は、刃取付部22、26、30が角度をなすように機能する角度付き取付具についてではあるが、刃部の所定角度を容易に設定するための、他の適切な機構もまた、本発明に従い利用することができることに留意すべきである。
【0028】
ここで開示した発明は、上述の目的を充足させるために十分計算されていることは自明ではあるが、多数の改変および実施例がこの分野の専門者により考案されるであろう。