【実施例1】
【0023】
図1は、本願発明の一実施例に係るノズルを適用したクロスフロー水車の断面図である。符号は、
図9のものに対応しており、4はノズルである。ノズル4は、入口管2の内部に着脱自在に設ける。
【0024】
図2は、本願発明の一実施例に係るノズルを示す図である。この図は、
図1のものとは上下を反転させて、正面図,平面図及び側面図を示している。
図2において、5は流入口、6は噴出口、7は下面板、8は上面板、9は側板、10は支持部である。
【0025】
入口管2は、
図7の水圧管路12のような水圧管路を通して送られてくる水を、クロスフロー水車のケーシング1内に導入する。クロスフロー水車は、入口管2の先端吐出部に、水流方向と軸心を交差させてランナ3を設けている。入口管2の内部には、ノズル4が着脱自在に設けられる。
【0026】
ノズル4は、材質をSUS304として、強度を高くし、長期間水に浸かっても錆びないようにしており、ランナ3とほぼ同じ横幅を有する下面板7と、それに対向した上面板8と、下面板7及び上面板8の左右両縁間に渡した2枚の側板9,9とで断面四角形に形成されていて、流入口5と噴出口6を有している。ノズル4の吐出部nの断面積は、前記入口管2の先端吐出部Nの断面積より小さく形成されている。
【0027】
また、上面板8の先端を下面板7の先端より長くしてランナ3の外周直近まで延伸させてることにより、水流をスムーズにし、かつ、図中R
1で示す広い範囲でランナ3に水流が当たるようにしている。
【0028】
さらに側板9を、上面板8の外側まで延ばして支持部10を形成しており、該支持部10の上縁部と下面板7の外面が、入口管2の、先端に向かうにしたがって狭くなっている先端部内面に合致する形状になるようにして、ノズル4が入口管2の先端部内面に嵌合するようにしている。
【0029】
このようなノズル4を入口管2へ取り付ける際には、一旦入口弁13(
図7)を閉じて水を止め、入口管2から導水管16(
図8)を取り外した後、ノズル4を上面板8と支持部10を上にした状態で入口管2の中へ嵌め込む。このようにすれば、入口管2へのノズル4の取り付けを簡単に行うことができ、取り付けた後は、ノズル4は水圧により完全に固定される。また、ノズル4を取り外す際には、水を止めた後、導水管16を取り外して、入口管2からノズル4を引き抜く。このように、ノズル4の着脱はきわめて簡単に行うことができる。
【0030】
ここで、ノズル4を取り付けることによる水位の変化、及び発電出力の変化について、
図3と
図4を使って説明する。
図3は、流れ込む流量が減少してノズルを取り付けたときの状態を示す図であり、
図4は、流量と有効落差及び有効落差と出力の関係を示す図である。符号は、
図7のものに対応している。
【0031】
前提条件として、本発明は、落差は大きく取れるが、河川の水量はあまり確保できないような条件下での運用を想定しており、もともと利用可能な流量が少ないので、渇水期に、受水槽11内の水位を所定のレベルに維持しようとしてノズル4の吐出部nの断面積を小さくしすぎると、ランナ3に流す流量が少なくなりすぎて、発電効率が悪くなってしまう。そこで、渇水期でも最低限の流量をランナ3に流せるように、ノズル4の吐出部nの断面積をある程度以上確保するとともに、水位が水圧管路12内まで低下した状態でも運転できるようにしている。
【0032】
そのような水力発電施設において、豊水期には、河川から受水槽11に流れ込む流量Q1が十分あって、受水槽11が満水状態になって、
図4に示すように、最大の有効落差H0及び水力発電装置14に流れ込む水の最大流量Q20により、最大の発電出力P0が得られる。
【0033】
一方、渇水期には、受水槽11に流れ込む流量Q1が減少して受水槽11の水位が低下していき、さらに低下して、水圧管路12内で、所定の水位L1まで低下したときに、入口管2内にノズル4を取り付ける。その時の有効落差はH1で、水力発電装置14に流れ込む水の流量はQ21であり、流量Q21は、河川から流れ込む流量Q1と平衡している。ノズル4を取り付ける直前までは、そのような、有効落差H1,流量Q21の水流により、水力発電装置14から出力P1が得られていたことになる。
【0034】
その状態で、水力発電装置14の入口管2に、吐出部断面積が小さいノズル4を取り付けると、吐出部断面積が小さくなった分、ノズルから吐出する水の流量が減少する。一方、流れ込む水の流量Q21は変化がないので、ノズルから吐出する水の流量<流量Q21となって、水圧管路12内の水位は徐々に上昇する。
ここで、流れ込む水の流量をQ、流出係数をC、吐出部断面積をA、ノズル4からの吐出流速をVとすると、
(数2)
Q=C×A×V
となり、流れ込む水の流量Q21は変化しないので、吐出部断面積Aが小さくなったことで、吐出流速Vが速くなる。
また、有効落差をHとすると、
(数3)
V=(2×9.8×H)
1/2
となるので、吐出流速Vが速くなるのにともなって、有効落差Hが大きくなっていく。
【0035】
その内、ノズルから吐出する水の流速が速くなっていくのに応じて吐出流量が多くなっていき、流れ込む水の流量Q21と平衡するようになって、水圧管路12内の水位が水位L2で一定になり、その時の有効落差はH2となる。そして、有効落差H2により、水力発電装置14から出力P2が得られる。この時、有効落差H2は、ノズル取り付け前の有効落差H1より大きくなっているため、出力P2は、ノズル4を取り付ける前の出力P1より大きくなる。
【0036】
このように、入口管2内にノズル4を取り付けることにより、流れ込む水の流量が同じでも、取り付け前より有効落差が大きくなり、発電出力を大きくすることができる。
【0037】
ただ、このように水位が水圧管路12内まで低下した状態で運転する場合、流れ込む流量Q1が変動すると、有効落差Hと吐出する流量Q2が変動する。それにともなって、発電機の出力も変動し、そのままでは、出力電圧や周波数を一定に保てなくなる。その対策としては、発電機と負荷との間にインバータを介在させ、そのインバータにより出力電圧及び周波数を一定に保持させるようにすればよい。
【0038】
そして、このような可動部分のないノズル4を用いることにより、構造が簡単で、制御が不要になり、コストを抑えながら、発電に使える流量の変動に応じた流量調整が可能になる。また、常にランナの全幅にわたり水を流して羽根全体を使用し、かつ、水がスムーズに流れてランナに当たるようになって、水車の効率が向上する。
【0039】
また、吐出部nの断面積が異なるノズル4を複数種類用意しておけば、よりきめの細かい流量調整が可能になり、流れ込む様々な流量に対して無駄なく対応できる。