【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、50〜130μmの範囲の平均粒径を有する水酸化アルミニウムを含む原料混合物を粉砕乾燥工程に供する方法により達成される。そのため、本発明は、50〜130μmの範囲の平均粒径D
50および0.01〜0.5m
2/gの範囲のBET比表面積を有する水酸化アルミニウムと、原料混合物基準で0.1〜20重量%の水とを含む原料混合物を粉砕乾燥する方法であって、
i)原料混合物を粉砕乾燥装置に導入するステップと、
ii)20〜100℃の範囲の温度を有する熱気流を粉砕乾燥装置に導入して粉砕乾燥装置に通すステップと、
iii)粉砕乾燥装置中で原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムを粉砕するステップと
を含む、方法を提供する。
【0014】
本発明の方法は、従来技術で既知の方法よりも安価である。50〜130μmの範囲の平均粒径D
50を有する水酸化アルミニウムを本発明の方法に使用することができる。さらに、本発明の方法は、従来技術による方法(EP155286;150〜450℃)と比較して、有意により低い温度で行うことができ、これは省エネルギーにつながり、また酸化アルミニウムへの水酸化アルミニウムの脱水の可能性を排除する。
【0015】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは高いBET比表面積を有するので、優れた難燃効果を有する。本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、液状樹脂に容易に取り込むことができ、特に、従来技術の水酸化アルミニウムの場合に観察されるような、得られる液状樹脂混合物の粘度の急激な増加をもたらさない。
【0016】
本発明の方法に使用する原料混合物は、50〜99.9重量%、好ましくは80〜99.85重量%の水酸化アルミニウムと、0.1〜20重量%の水と、任意選択により0〜30重量%のさらなる物質、例えば、ベーマイト、水酸化マグネシウム、スズ酸塩、シラン、重縮合シラン、シロキサン、ホウ酸塩、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸の塩、ポリマーエマルジョン、ポリマー溶液および/またはチタン酸塩とを含む。
【0017】
原料混合物は、好ましくは、50〜130μmの範囲、好ましくは80〜120μmの範囲、より好ましくは90〜110μmの範囲、特に好ましくは95〜105μmの範囲の平均粒径D
50を有する水酸化アルミニウムを含む。本発明で示す平均粒径D
50は、レーザー光散乱(レーザー光散乱装置Cilas 1064、Fraunhofer法により評価)によって測定した。
【0018】
原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムは、好ましくは、0.01〜0.5m
2/g、好ましくは0.05〜0.4m
2/g、より好ましくは0.06〜0.35m
2/g、特に好ましくは0.07〜0.25m
2/gの範囲のBET比表面積を有する。本発明で示すBET比表面積は、ISO9277にしたがってBrunauer−Emmet−Teller法により測定した。
【0019】
原料混合物は、一般的に原料混合物基準で0.1〜20重量%の水を含む。原料混合物は、好ましくは原料混合物基準で3〜15重量%、より好ましくは4〜12重量%、特に好ましくは6〜10重量%の水を含む。
【0020】
好ましい実施形態では、原料混合物は、調製方法の結果として、水酸化アルミニウム基準で1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%、より好ましくは4〜12重量%、特に6〜10重量%の水を含む水酸化アルミニウムを含む。この場合、原料混合物中に存在する水は、原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムのみに由来する。より低い水分含量を有する水酸化アルミニウムを使用して、原料混合物に水を添加することも可能である。しかしながら、これは好ましくない。
【0021】
原料混合物は、水酸化アルミニウムのほかにさらなる物質、例えば、ベーマイト、水酸化マグネシウム、スズ酸塩、シラン、重縮合シラン、シロキサン、ホウ酸塩、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸の塩、ポリマーエマルジョン、ポリマー溶液および/またはチタン酸塩を含むことができる。これらの物質は、好ましくは原材料中に存在する水酸化アルミニウム中に調製方法の結果として存在する。さらなる物質を原料混合物に添加することも可能である。
【0022】
一実施形態では、水酸化アルミニウム基準で0.1〜20重量%の水、好ましくは3〜15重量%の水、より好ましくは4〜12重量%、特に好ましくは6〜10重量%の水を含み、50〜130μm、好ましくは80〜120μm、より好ましくは90〜110μm、特に好ましくは95〜105μmの範囲の平均粒径D
50および0.01〜0.5m
2/g、好ましくは0.05〜0.4m
2/g、より好ましくは0.06〜0.35m
2/g、特に好ましくは0.07〜0.25m
2/gの範囲のBET比表面積を有する水酸化アルミニウムを含む原料混合物を使用する。
【0023】
好ましい実施形態では、水酸化アルミニウム基準で6〜10重量%の水を含み、90〜110μmの範囲の平均粒径D
50および0.07〜0.25m
2/gの範囲のBET比表面積を有する水酸化アルミニウムを含む原料混合物を使用する。
【0024】
本発明の方法によると、原料混合物をステップi)で粉砕乾燥装置に導入する。適当な粉砕混合装置は、それ自体既知であり、例えば、Lueger、Lexikon der Technik、第48巻、394頁に記載されている。
【0025】
特定の実施形態では、粉砕乾燥装置は、むく軸上に固定した方法で取り付けられ、20〜200m/秒、好ましくは30〜180m/秒、より好ましくは90〜120m/秒、特に好ましくは60〜70m/秒の範囲の円周速度で回転する回転子を含む。
【0026】
そのため、本発明はまた、粉砕乾燥装置が回転子−固定子系を含み、回転子が20〜200m/秒の範囲の円周速度を有する方法を提供する。
【0027】
原料混合物の粉砕乾燥装置への導入(ステップi))は、それ自体既知の方法、例えば、ベルトコンベヤー、ねじコンベヤー、偏心ねじポンプおよび螺旋コンベヤーにより行うことができる。好ましい実施形態では、原料混合物を、ねじコンベヤーによって粉砕乾燥装置に導入する。
【0028】
ステップii)では、20〜150℃、好ましくは20〜120℃、より好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜80℃の範囲の温度を有する熱気流を粉砕乾燥装置に導入する。好ましい実施形態では、熱気流は粉砕乾燥装置の入口開口部を通して粉砕乾燥装置の下端に入り、底から上向きに粉砕乾燥装置を通り、熱気流は粉砕乾燥装置の回転子の回転運動と合わせて乱流を形成し、粉砕乾燥装置の上端で出口開口部を通って粉砕乾燥装置を出る。好ましい実施形態では、粉砕乾燥装置中の熱気流は、3000を超えるレイノルズ数を有する。熱気流は、一般的に、作動圧で3000〜7000m
3/時間の範囲の空気流量で粉砕乾燥装置を通る。
【0029】
粉砕乾燥装置中では、原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムは、回転子の回転運動と合わせて熱気流により加速される。これは、水酸化アルミニウム粒子の互いの衝撃および/または粉砕乾燥装置の回転子−固定子系への水酸化アルミニウム粒子の衝撃による原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムの粉砕をもたらす(ステップiii))。同時に、解放された粉砕エネルギーによって原料混合物から水が取り除かれる。その後、原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムが粉砕乾燥装置から排出される。好ましい実施形態では、排出は、粉砕乾燥装置に導入された熱気流が出る出口開口部を通って起こる。水酸化アルミニウム、熱気流および反応器を出る原料混合物の水酸化アルミニウムから取り除かれる水を含む混合物を任意選択によりさらなる後処理ステップに供する。これらステップは、例えば、熱気流およびステップiii)で原料混合物から取り除かれた水からの粉砕水酸化アルミニウム粒子の分離である。
【0030】
ステップi)、ii)およびiii)は、連続的にまたは同時に行うことができる。好ましい実施形態では、ステップi)、ii)およびiii)を同時に行い、粉砕乾燥の方法を連続的に行う。この実施形態では、原料混合物および熱気流を粉砕乾燥装置に同時に導入する。
【0031】
原料混合物の粉砕乾燥装置中での滞留時間は、一般的に0.01〜1秒、好ましくは0.01〜0.1秒、特に好ましくは0.01〜0.08秒である。分級機を任意選択により本発明の方法に使用することができる。分級機は、好ましくはステップiii)の後に使用する。分級機は、粗粒材料を原料混合物から分離する。分離された粗粒材料を原料混合物に再循環させる。本発明の目的のために、粗粒材料は20μmより大きい粒径を有する粒子からなる。
【0032】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、高いBET比表面積を有するので、プラスチックにおける優れた防燃効果を有する。
【0033】
本発明により得ることができる水酸化アルミニウムは、液状樹脂に容易に取り込むことができ、特に、従来技術から既知の高いBET比表面積を有する水酸化アルミニウムの場合に観察されるような粘度の急激な増加をもたらさない。
【0034】
そのため、本発明はまた、本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムを提供する。
【0035】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、一般的に3〜15μmの範囲、好ましくは4〜12μm、特に好ましくは4〜6μmの範囲の平均粒径D
50を有する。本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、狭い粒径分布を有する。D
10値は、1〜4μmの範囲、好ましくは1〜1.5μmの範囲にある。
【0036】
D
90値は、9〜20μmの範囲、好ましくは9〜13μmの範囲にある。
【0037】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、好ましくは1〜1.5μmの範囲のD
10値、4〜6μmの範囲のD
50値、および9〜13μmの範囲のD
90値を有する。
【0038】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、2〜9m
2/gの範囲、好ましくは5〜9m
2/gの範囲のBET比表面積を有する。本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、一般的に水酸化アルミニウム基準で0〜2重量%、好ましくは0〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%の水を含む。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、3〜15μmの範囲の平均粒径D
50、2〜9m
2/gの範囲のBET比表面積、および水酸化アルミニウム基準で0〜2重量%の範囲の水分含量を有する。
【0040】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、架橋性液状樹脂に取り込むことができる。そのため、本発明はまた、
a)本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムを少なくとも1種の架橋性液状樹脂に取り込んで、水酸化アルミニウムと液状樹脂の硬化性混合物を形成するステップと、
b)a)により得られた混合物を架橋するステップと
を含む、熱硬化性樹脂を製造する方法を提供する。
【0041】
ステップb)は、当業者に既知の方法、例えば、適当な硬化剤系によって、任意選択により促進剤およびさらなる添加剤を利用して行う。
【0042】
そのため、本発明はまた、
a)本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムを不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂およびポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種の架橋性液状樹脂に取り込んで、水酸化アルミニウムと液状樹脂の硬化性混合物を形成するステップと、
b)a)により得られた混合物を架橋するステップと
を含む、熱硬化性樹脂を製造する方法を提供する。
【0043】
本発明の目的のため、架橋性液状樹脂は、互いに反応し、互いに架橋性液状樹脂の成分を架橋することができる官能基を含む液体ポリマー組成物である。適当な官能基は、二重結合、エポキシド単位ならびにイソシアネートおよびアルコール単位の組み合わせである。熱硬化性樹脂を製造するために、1種の(1)架橋性液状樹脂または2種以上の架橋性液状樹脂の混合物を使用することが可能である。
【0044】
そのため、本発明はまた、本発明の水酸化アルミニウムを含む熱硬化性樹脂を提供する。
【0045】
本発明はまた、難燃剤としての本発明により得ることができる水酸化アルミニウムの使用、特に、上記架橋性液状樹脂から得ることができる熱硬化性樹脂用の難燃剤としての使用を提供する。
【0046】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に制限されない。
【0047】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれらの例に制限されない。