特許第5916727号(P5916727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916727
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】水酸化アルミニウムを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/02 20060101AFI20160422BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20160422BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   C01F7/02 G
   C08L101/00
   C08K3/22
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-524429(P2013-524429)
(86)(22)【出願日】2011年8月12日
(65)【公表番号】特表2013-540675(P2013-540675A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011063957
(87)【国際公開番号】WO2012022692
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2014年7月25日
(31)【優先権主張番号】10173296.4
(32)【優先日】2010年8月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503379760
【氏名又は名称】ナバルテック アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230111590
【弁護士】
【氏名又は名称】金本 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100105991
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 玲子
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100114465
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100156915
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 奈月
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】ライメル,アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】アイメルズ,カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ベール,クリスティアン
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−156030(JP,A)
【文献】 特開2006−111882(JP,A)
【文献】 Micral 632 ALUMINA TRYHYDRATE,J.M. Huber Corporation,2009年,URL,http://www.hubermaterials.com/userfiles/files/product-finder/spec/Micral%20632.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/02
C08K 3/22
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50〜130μmの範囲の平均粒径D50および0.01〜0.5m2/gの範囲のBET比表面積を有する水酸化アルミニウムと、原料混合物基準で0.1〜20重量%の水とを含む原料混合物を粉砕乾燥する方法であって、
i)原料混合物を粉砕乾燥装置に導入するステップと、
ii)20〜100℃の範囲の温度を有する熱気流を前記粉砕乾燥装置に導入して前記粉砕乾燥装置に通すステップと、
iii)前記粉砕乾燥装置中で前記原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムを粉砕するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記原料混合物が、水酸化アルミニウムおよび前記原料混合物基準で3〜15重量%の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料混合物が、90〜110μmの範囲の平均粒径D50を有する水酸化アルミニウムを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記粉砕乾燥装置が、回転子−固定子系を含み、前記回転子が20〜200m/秒の範囲の円周速度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記原料混合物中に存在する前記水酸化アルミニウムが、0.01〜1秒の範囲の前記粉砕乾燥装置中での平均滞留時間を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップi)、ii)およびiii)が同時に進行し、連続的に行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱気流が前記粉砕装置中で3000を超えるレイノルズ数を有する乱流を形成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化アルミニウムを含む原料混合物を粉砕乾燥する方法、この方法により得ることができる水酸化アルミニウム、難燃剤としての得られた水酸化アルミニウムの使用、および耐燃性熱硬化性樹脂を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、建物、家具、輸送、電気および電子産業における材料として使用されている。多くの用途では、ポリマーは国内および国際難燃基準を満たさなければならない。大半のポリマー、特に炭化水素ベースを有するモノマーから得ることができるポリマーは可燃性であるので、耐燃性であるというポリマーの分類を達成し得るためには、ポリマーに難燃剤を含ませることが必要である。一般に、これは、有機または無機難燃剤を添加することにより達成される。使用する難燃剤は、例えば、金属水和物であり、アルミニウムの金属水和物が特に重要になっている(G.Kirschbaum、Kunststoffe;79、1999、1205〜1208およびR.Schmidt、Kunststoffe、88、1998、2058〜2061)。
【0003】
水酸化アルミニウムの難燃作用は、200〜400℃の範囲の温度の火災の場合、化学結合した水の熱脱離に基づく。水酸化アルミニウムのこの吸熱分解はエネルギーを消費し、その結果、プラスチックの表面が冷却される。さらに、遊離した水蒸気がポリマーの可燃性有機分解生成物を希釈する。残渣として残っている酸化アルミニウムは、高い比表面積を有し、ポリマーの燃焼で形成される多環式および芳香族炭化水素化合物を吸収する。その結果、これらの化合物は、燃焼工程から取り除かれる。多環式および芳香族炭化水素化合物は、火災からの黒煙の成分であるので、水酸化アルミニウムはまた、火災の場合の煤煙濃度を低下させるのにも寄与する。したがって、水酸化アルミニウムの使用は、ハロゲンフリー耐燃性ポリマーを製造することを可能にし、ハロゲン含有難燃剤の使用を廃することが可能となる。
【0004】
しかしながら、十分な耐燃性を確保し、防燃基準を満たすためには、プラスチックに大量の水酸化アルミニウムを使用することが必要である。この高い充填度のために、特に水酸化アルミニウムを液状樹脂に使用する場合、このような耐燃性ポリマー混合物の加工工程はしばしば困難であり、ここから得られるプラスチックの機械的特性はしばしば不満足なものである。
【0005】
原則として、高い表面積は、難燃剤の有効性のためには望ましいが、粘度増加がより大きくなるため、ポリマーへの取り込みおよびその後のさらなる加工を顕著に困難にする。低いBET表面積は、ポリマーへの取り込みが容易なために有利であるが、同時に、低いBET表面積を有する水酸化アルミニウムは不満足な難燃効果しか有さないので不利である。この理由のため、使用および取り込み技術に応じて、比較的粗い粉砕等級と非常に微細な沈殿水酸化アルミニウム等級との間で、一般的に区別がなされる。
【0006】
水酸化アルミニウムを液状樹脂に使用する場合、粉砕により粗製水酸化アルミニウムから得られる極めて粗い水酸化アルミニウムを通常使用する。
【0007】
これは、平均粒径D50の減少だけでなく、BET比表面積の有意な増加も達成する。そのため、従来技術による粉砕方法により得られる水酸化アルミニウムは、改善した難燃効果を有する。しかしながら、このような水酸化アルミニウムは、液状樹脂に取り込むと、液状樹脂混合物の粘度の急激な増加をもたらし、このような液状樹脂混合物の加工を困難または不可能にするので、難燃剤として限られた程度しか使用することができない。そのため、この粉砕方法は、3m2/g以下の範囲の許容できる表面積がここではまだ得られるため、通常5μmより大きい平均粒径で停止させる。より大きな程度の粉砕は、表面積の顕著な増加をもたらし、得られる水酸化アルミニウムおよびそこから製造される化合物の加工を許容できない程度に、より困難にする。そのため、原則としてより低い表面積を達成することができる沈殿経路が超微粉水酸化アルミニウムの調製のために選択される。
【0008】
熱可塑性樹脂およびゴム用途の場合、非常に微細な沈殿水酸化アルミニウム等級を一般的に使用する。
【0009】
この目的のため、粗い粗製水酸化アルミニウムを水酸化ナトリウム溶液に溶解し、その後、制御された方法で沈殿させる。この方法は、一般的に3μmより有意に小さい平均粒径D50を有する水酸化アルミニウムをもたらす。このように得られる水酸化アルミニウムは、通常2〜12m2/gの範囲であり、これより高いことはまれな、比較的低いBET比表面積を有する。このような粒径を有する水酸化アルミニウムを複雑な粉砕方法により調製する場合、これは有意に高いBET表面積を有する水酸化アルミニウムをもたらす。
【0010】
したがって、一方では、BET比表面積が増加すると難燃効果が増加するので、高いBET比表面積を有する水酸化アルミニウムは有利であるが、他方では、このような水酸化アルミニウムは、液状樹脂に取り込むと、粘度の急激な増加をもたらし、樹脂の加工を困難または不可能にさえする。EP1555286は、沈殿および濾過により得られ、0.8〜1.5μmの範囲の平均粒径D50および水酸化アルミニウム基準で約50重量%の高い水分含量を有する水酸化アルミニウムを、150〜450℃の範囲の温度で粉砕乾燥工程に供する方法を記載している。この方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、液状樹脂中で優れた粘度特性を有するが、まだ改善の余地がある。EP155286に記載されている方法の欠点は、特に、沈殿により得ることができ、0.8〜1.5μmの範囲の平均粒径D50を有する水酸化アルミニウムを使用しなければならないことである。
【0011】
液状樹脂系中の水酸化アルミニウムの不利な粘度特性を回避するさらなる可能な方法が従来技術に記載されており、それは、水酸化アルミニウム粒子をシラン、脂肪酸および/またはチタン酸塩などの有機添加剤でコーティングするステップを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そのため、高いBET比表面積を有し、液状樹脂に容易に取り込むことができ、特に、上記の粘度の急激な増加をもたらさない水酸化アルミニウムを調製する方法を提供することが本発明の目的である。この方法は、従来技術に記載されている方法よりも安価であるべきであり、特に、高価なコーティング工程は避けるべきであり、有意に高い平均粒径D50を有する水酸化アルミニウムも出発物質として使用することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、50〜130μmの範囲の平均粒径を有する水酸化アルミニウムを含む原料混合物を粉砕乾燥工程に供する方法により達成される。そのため、本発明は、50〜130μmの範囲の平均粒径D50および0.01〜0.5m2/gの範囲のBET比表面積を有する水酸化アルミニウムと、原料混合物基準で0.1〜20重量%の水とを含む原料混合物を粉砕乾燥する方法であって、
i)原料混合物を粉砕乾燥装置に導入するステップと、
ii)20〜100℃の範囲の温度を有する熱気流を粉砕乾燥装置に導入して粉砕乾燥装置に通すステップと、
iii)粉砕乾燥装置中で原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムを粉砕するステップと
を含む、方法を提供する。
【0014】
本発明の方法は、従来技術で既知の方法よりも安価である。50〜130μmの範囲の平均粒径D50を有する水酸化アルミニウムを本発明の方法に使用することができる。さらに、本発明の方法は、従来技術による方法(EP155286;150〜450℃)と比較して、有意により低い温度で行うことができ、これは省エネルギーにつながり、また酸化アルミニウムへの水酸化アルミニウムの脱水の可能性を排除する。
【0015】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは高いBET比表面積を有するので、優れた難燃効果を有する。本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、液状樹脂に容易に取り込むことができ、特に、従来技術の水酸化アルミニウムの場合に観察されるような、得られる液状樹脂混合物の粘度の急激な増加をもたらさない。
【0016】
本発明の方法に使用する原料混合物は、50〜99.9重量%、好ましくは80〜99.85重量%の水酸化アルミニウムと、0.1〜20重量%の水と、任意選択により0〜30重量%のさらなる物質、例えば、ベーマイト、水酸化マグネシウム、スズ酸塩、シラン、重縮合シラン、シロキサン、ホウ酸塩、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸の塩、ポリマーエマルジョン、ポリマー溶液および/またはチタン酸塩とを含む。
【0017】
原料混合物は、好ましくは、50〜130μmの範囲、好ましくは80〜120μmの範囲、より好ましくは90〜110μmの範囲、特に好ましくは95〜105μmの範囲の平均粒径D50を有する水酸化アルミニウムを含む。本発明で示す平均粒径D50は、レーザー光散乱(レーザー光散乱装置Cilas 1064、Fraunhofer法により評価)によって測定した。
【0018】
原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムは、好ましくは、0.01〜0.5m2/g、好ましくは0.05〜0.4m2/g、より好ましくは0.06〜0.35m2/g、特に好ましくは0.07〜0.25m2/gの範囲のBET比表面積を有する。本発明で示すBET比表面積は、ISO9277にしたがってBrunauer−Emmet−Teller法により測定した。
【0019】
原料混合物は、一般的に原料混合物基準で0.1〜20重量%の水を含む。原料混合物は、好ましくは原料混合物基準で3〜15重量%、より好ましくは4〜12重量%、特に好ましくは6〜10重量%の水を含む。
【0020】
好ましい実施形態では、原料混合物は、調製方法の結果として、水酸化アルミニウム基準で1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%、より好ましくは4〜12重量%、特に6〜10重量%の水を含む水酸化アルミニウムを含む。この場合、原料混合物中に存在する水は、原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムのみに由来する。より低い水分含量を有する水酸化アルミニウムを使用して、原料混合物に水を添加することも可能である。しかしながら、これは好ましくない。
【0021】
原料混合物は、水酸化アルミニウムのほかにさらなる物質、例えば、ベーマイト、水酸化マグネシウム、スズ酸塩、シラン、重縮合シラン、シロキサン、ホウ酸塩、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸の塩、ポリマーエマルジョン、ポリマー溶液および/またはチタン酸塩を含むことができる。これらの物質は、好ましくは原材料中に存在する水酸化アルミニウム中に調製方法の結果として存在する。さらなる物質を原料混合物に添加することも可能である。
【0022】
一実施形態では、水酸化アルミニウム基準で0.1〜20重量%の水、好ましくは3〜15重量%の水、より好ましくは4〜12重量%、特に好ましくは6〜10重量%の水を含み、50〜130μm、好ましくは80〜120μm、より好ましくは90〜110μm、特に好ましくは95〜105μmの範囲の平均粒径D50および0.01〜0.5m2/g、好ましくは0.05〜0.4m2/g、より好ましくは0.06〜0.35m2/g、特に好ましくは0.07〜0.25m2/gの範囲のBET比表面積を有する水酸化アルミニウムを含む原料混合物を使用する。
【0023】
好ましい実施形態では、水酸化アルミニウム基準で6〜10重量%の水を含み、90〜110μmの範囲の平均粒径D50および0.07〜0.25m2/gの範囲のBET比表面積を有する水酸化アルミニウムを含む原料混合物を使用する。
【0024】
本発明の方法によると、原料混合物をステップi)で粉砕乾燥装置に導入する。適当な粉砕混合装置は、それ自体既知であり、例えば、Lueger、Lexikon der Technik、第48巻、394頁に記載されている。
【0025】
特定の実施形態では、粉砕乾燥装置は、むく軸上に固定した方法で取り付けられ、20〜200m/秒、好ましくは30〜180m/秒、より好ましくは90〜120m/秒、特に好ましくは60〜70m/秒の範囲の円周速度で回転する回転子を含む。
【0026】
そのため、本発明はまた、粉砕乾燥装置が回転子−固定子系を含み、回転子が20〜200m/秒の範囲の円周速度を有する方法を提供する。
【0027】
原料混合物の粉砕乾燥装置への導入(ステップi))は、それ自体既知の方法、例えば、ベルトコンベヤー、ねじコンベヤー、偏心ねじポンプおよび螺旋コンベヤーにより行うことができる。好ましい実施形態では、原料混合物を、ねじコンベヤーによって粉砕乾燥装置に導入する。
【0028】
ステップii)では、20〜150℃、好ましくは20〜120℃、より好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜80℃の範囲の温度を有する熱気流を粉砕乾燥装置に導入する。好ましい実施形態では、熱気流は粉砕乾燥装置の入口開口部を通して粉砕乾燥装置の下端に入り、底から上向きに粉砕乾燥装置を通り、熱気流は粉砕乾燥装置の回転子の回転運動と合わせて乱流を形成し、粉砕乾燥装置の上端で出口開口部を通って粉砕乾燥装置を出る。好ましい実施形態では、粉砕乾燥装置中の熱気流は、3000を超えるレイノルズ数を有する。熱気流は、一般的に、作動圧で3000〜7000m3/時間の範囲の空気流量で粉砕乾燥装置を通る。
【0029】
粉砕乾燥装置中では、原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムは、回転子の回転運動と合わせて熱気流により加速される。これは、水酸化アルミニウム粒子の互いの衝撃および/または粉砕乾燥装置の回転子−固定子系への水酸化アルミニウム粒子の衝撃による原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムの粉砕をもたらす(ステップiii))。同時に、解放された粉砕エネルギーによって原料混合物から水が取り除かれる。その後、原料混合物中に存在する水酸化アルミニウムが粉砕乾燥装置から排出される。好ましい実施形態では、排出は、粉砕乾燥装置に導入された熱気流が出る出口開口部を通って起こる。水酸化アルミニウム、熱気流および反応器を出る原料混合物の水酸化アルミニウムから取り除かれる水を含む混合物を任意選択によりさらなる後処理ステップに供する。これらステップは、例えば、熱気流およびステップiii)で原料混合物から取り除かれた水からの粉砕水酸化アルミニウム粒子の分離である。
【0030】
ステップi)、ii)およびiii)は、連続的にまたは同時に行うことができる。好ましい実施形態では、ステップi)、ii)およびiii)を同時に行い、粉砕乾燥の方法を連続的に行う。この実施形態では、原料混合物および熱気流を粉砕乾燥装置に同時に導入する。
【0031】
原料混合物の粉砕乾燥装置中での滞留時間は、一般的に0.01〜1秒、好ましくは0.01〜0.1秒、特に好ましくは0.01〜0.08秒である。分級機を任意選択により本発明の方法に使用することができる。分級機は、好ましくはステップiii)の後に使用する。分級機は、粗粒材料を原料混合物から分離する。分離された粗粒材料を原料混合物に再循環させる。本発明の目的のために、粗粒材料は20μmより大きい粒径を有する粒子からなる。
【0032】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、高いBET比表面積を有するので、プラスチックにおける優れた防燃効果を有する。
【0033】
本発明により得ることができる水酸化アルミニウムは、液状樹脂に容易に取り込むことができ、特に、従来技術から既知の高いBET比表面積を有する水酸化アルミニウムの場合に観察されるような粘度の急激な増加をもたらさない。
【0034】
そのため、本発明はまた、本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムを提供する。
【0035】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、一般的に3〜15μmの範囲、好ましくは4〜12μm、特に好ましくは4〜6μmの範囲の平均粒径D50を有する。本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、狭い粒径分布を有する。D10値は、1〜4μmの範囲、好ましくは1〜1.5μmの範囲にある。
【0036】
90値は、9〜20μmの範囲、好ましくは9〜13μmの範囲にある。
【0037】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、好ましくは1〜1.5μmの範囲のD10値、4〜6μmの範囲のD50値、および9〜13μmの範囲のD90値を有する。
【0038】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、2〜9m2/gの範囲、好ましくは5〜9m2/gの範囲のBET比表面積を有する。本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、一般的に水酸化アルミニウム基準で0〜2重量%、好ましくは0〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%の水を含む。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、3〜15μmの範囲の平均粒径D50、2〜9m2/gの範囲のBET比表面積、および水酸化アルミニウム基準で0〜2重量%の範囲の水分含量を有する。
【0040】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、架橋性液状樹脂に取り込むことができる。そのため、本発明はまた、
a)本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムを少なくとも1種の架橋性液状樹脂に取り込んで、水酸化アルミニウムと液状樹脂の硬化性混合物を形成するステップと、
b)a)により得られた混合物を架橋するステップと
を含む、熱硬化性樹脂を製造する方法を提供する。
【0041】
ステップb)は、当業者に既知の方法、例えば、適当な硬化剤系によって、任意選択により促進剤およびさらなる添加剤を利用して行う。
【0042】
そのため、本発明はまた、
a)本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムを不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂およびポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種の架橋性液状樹脂に取り込んで、水酸化アルミニウムと液状樹脂の硬化性混合物を形成するステップと、
b)a)により得られた混合物を架橋するステップと
を含む、熱硬化性樹脂を製造する方法を提供する。
【0043】
本発明の目的のため、架橋性液状樹脂は、互いに反応し、互いに架橋性液状樹脂の成分を架橋することができる官能基を含む液体ポリマー組成物である。適当な官能基は、二重結合、エポキシド単位ならびにイソシアネートおよびアルコール単位の組み合わせである。熱硬化性樹脂を製造するために、1種の(1)架橋性液状樹脂または2種以上の架橋性液状樹脂の混合物を使用することが可能である。
【0044】
そのため、本発明はまた、本発明の水酸化アルミニウムを含む熱硬化性樹脂を提供する。
【0045】
本発明はまた、難燃剤としての本発明により得ることができる水酸化アルミニウムの使用、特に、上記架橋性液状樹脂から得ることができる熱硬化性樹脂用の難燃剤としての使用を提供する。
【0046】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に制限されない。
【0047】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれらの例に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明に係る方法により調製した水酸化アルミニウムの粒子分布を示すグラフである。
図2】本発明に係る方法により調製した水酸化アルミニウムの粘度挙動を示すグラフである。
図3】本発明に係る方法により調製した水酸化アルミニウムについて、充填度を関数として粘度を測定した結果を示すグラフである。
【実施例】
【0049】
本発明の方法により得ることができる水酸化アルミニウムは、高いBET比表面積を有し、そのためプラスチック中で優れた難燃効果を有する。本発明により得ることができる水酸化アルミニウムは、液状樹脂に容易に取り込むことができ、特に、従来技術から既知の高いBET比表面積を有する水酸化アルミニウムの場合に観察されるような粘度の急激な増加をもたらさない。
【0050】
粒子分布およびBET表面積の比較
表1は、従来技術の方法により調製した水酸化アルミニウム(比較実施例1および2)および本発明の方法により調製した水酸化アルミニウム(本発明による実施例)を示している。
【0051】
【表1】
【0052】
本発明の方法により調製した水酸化アルミニウムは、図1により明らかにされるように、有意に微細であり、狭い粒子分布を示す。さらに、本発明による生成物は、有意に高いBET比表面積を示す。図1中、
X=平均粒径、d50(μm);
Y=ヒストグラム(10倍);
円=本発明による実施例1;
星=比較実施例2;
三角形=比較実施例1。
【0053】
相対粘度特性の比較:
不飽和ポリエステル樹脂(DSM製のPalapreg P17−02)への水酸化アルミニウムの充填度への影響を、従来技術の水酸化アルミニウム(比較実施例1および2)と比較して本発明による水酸化アルミニウム(本発明による実施例1)について試験した。充填度が増加した分散混合物を、増加する回転速度で40mmの直径を有するプレート/プレート測定要素を使用して22℃でレオメータ(Anton Paar製のMCR301)で測定した。0.25分-1の回転速度で、値を抽出し、このように得られた粘度を各試料について充填度に対してプロット図示した。
【0054】
図2は、本発明による水酸化アルミニウム(本発明による実施例1)ならびに比較実施例1および2の粘度挙動を示している。図2中、
X=phr(樹脂100部当たりの水酸化アルミニウムの部)の充填度;
Y=相対粘度増加(単位無し)
(Y=(充填樹脂の粘度)(未充填樹脂の粘度))
円=本発明による実施例1
三角形=比較実施例1
正方形=比較実施例2。
【0055】
本発明による実施例1は、有意に優れた粘度特性を示している、すなわち、この水酸化アルミニウムは、BET表面積の有意な増加での全ての予想に反して、比較的微細な水酸化アルミニウム(比較実施例2)およびより粗い水酸化アルミニウム(比較実施例1)さえよりも有意により低い粘度増加をもたらす。
【0056】
結果を図2に示す。
【0057】
難燃特性の比較
樹脂100部当たり水酸化アルミニウム150部を充填した樹脂(Palapreg P17−02)を硬化し、その後硬化した試料の限界酸素指数(LOI)を測定した。本発明による水酸化アルミニウム(実施例1)を使用すると、比較実施例1による水酸化アルミニウムと比較して34.4から37.2%へのO2の値の有意な増加が見られる。これは、従来技術の水酸化アルミニウムと比較して、本発明による水酸化アルミニウムの防燃効果の有意な改善を示している(同時に加工性が改善されると共に)。
【0058】
結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
相対粘度特性の比較:
【表3】
【0061】
表3は、既知の水酸化アルミニウム(比較実施例3)および本発明の方法により調製した水酸化アルミニウム(本発明による実施例2)の粒子分布を示している。
【0062】
ここでも、より微細なより狭い粒子分布および匹敵するBET表面積にもかかわらず、正の粘度効果が見られる。
【0063】
充填度を関数とした粘度測定値の結果を図3に示す。図3中、
X=phr(樹脂100部当たりの水酸化アルミニウムの部)の充填度;
Y=相対粘度増加(単位無し);
(Y=(充填樹脂の粘度)(未充填樹脂の粘度))
円=比較実施例3
三角形=本発明による実施例2。
【0064】
難燃特性の比較
エポキシドノボラック(D.E.N 438)92.3部、ジシアンジアミド(Dyhard 100 S)6.7部およびフェヌロン(Dyhard UR 300)1.0部当たり水酸化アルミニウム150部で充填した樹脂を硬化し、その後硬化した試料の限界酸素指数(LOI)を測定した。本発明による実施例1による水酸化アルミニウムを使用すると、比較実施例1による水酸化アルミニウムと比較して46.5から50.5%へのO2の値の有意な増加が見られる。
【0065】
結果を表に示す。
【0066】
【表4】
図1
図2
図3