(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら、本発明の実施形態の一例である真密度測定装置10について、以下詳細に説明する。真密度測定装置10は、あくまでも実施形態の一例であって、本発明の適用はこれに限定されるものではない。また、実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0015】
以下では、説明の便宜上、上下、左右、前後等の方向を示す用語を使用する。具体的には、
図1の矢印Xで示す方向を真密度測定装置10の左右方向又は横方向(矢先が指す方向が右)、矢印Yで示す方向を前後方向又は縦方向(矢先が指す方向が後)、矢印Zで示す方向を上下方向(矢先が指す方向が上)とする。また、本明細書において、「略**」とは、略同一を例に挙げて説明すると、全く同一である場合及び実質的に同一と認められる場合を含む意図である。
【0016】
図1〜
図7を参照しながら、真密度測定装置10の構成について詳説する。
【0017】
図1及び
図2は、真密度測定装置10の外観を示す図であって、
図2は蓋ユニット40を持ち上げて試料室30を開放した状態を示す。
真密度測定装置10は、気相置換法により測定対象の真密度を測定する装置であって、試料室30、拡張室50等を有するマニホールド11と、マニホールド11等の制御や測定値の演算などを実行する制御部12と、タッチパネル13とを備える。タッチパネル13は、測定結果等を表示する表示部、及び測定条件等の入力に用いられる操作部として機能する。なお、表示部と操作部は別々に設けられていてもよい。
【0018】
真密度測定装置10により測定される真密度とは、測定対象が占有する体積密度換算に使用する密度である。気相置換法は、定容積膨張法とも呼ばれ、詳しくは後述するように、温度一定の状態における気体の体積と圧力に関するボイルの法則を利用した測定法である。測定対象は、特に限定されないが、一般的には粉体等の固形物である。実施形態では、測定対象として、粉体であるサンプル100(
図7等参照)を例示する。
【0019】
真密度測定装置10は、マニホールド11や制御部12を覆う筐体14を備える。真密度測定装置10では、例えば筐体14の左側半分にマニホールド11が収容され、筐体14の右側半分に制御部12が収容される。筐体14は、マニホールド11の試料室30及び拡張室50に対応する位置に筐体開口部14aを有する。これにより、筐体14を取り外すことなく、試料室30及び拡張室50へのアクセスが可能となる。拡張室50へのアクセス頻度が高くない場合は、拡張室50がカバーで覆われていてもよい。但し、この場合も装置を分解することなく、当該カバーを容易に取り外せることが要求される。
【0020】
真密度測定装置10は、蓋ユニット40を備える。蓋ユニット40は、蓋ユニット本体41(以下、単に「本体41」という)と、試料室30を密閉する蓋42を有する。本体41は、詳しくは後述するように、蓋42の開閉操作に用いられるアームとして機能する。蓋42は、本体41に対して搖動可能に取り付けられている。本体41は、例えば、筐体14の縦方向長さと略同一の縦方向長さ、筐体14の横方向長さの略1/2の横方向長さを有する。本体41は、筐体14に対して回転可能に支持されており、蓋ユニット40が閉じられた状態で筐体14の筐体開口部14aから露出したマニホールド11を覆う。拡張室50は、蓋ユニット40とは別の蓋56により密閉されている。
【0021】
図3は、真密度測定装置10の構成(特にマニホールド11の構成)を説明するためのブロック図である。
図4は、マニホールド11の外観を示す図である。
マニホールド11は、試料室30及び拡張室50が設けられたブロック20を有する。試料室30及び拡張室50の位置は、左右どちらでもよいが、本実施形態では試料室30が不活性ガス導入側に位置するものとする。さらに、マニホールド11は、ブロック20に取り付けられたガス管21a,21b,21c、ベント22、圧力検出器23、電磁弁25a,25b,25c等を有する。真密度測定装置10において、マニホールド11は、圧力検出器23や各電磁弁がブロック20よりも装置後方側に位置するように配置されている。
【0022】
ブロック20は、縦方向よりも横方向にやや長く延びた略四角形状を有する。ブロック20では、試料室30と拡張室50とが横方向に並んで配置されている。ブロック20は、2つの部屋の温度を均一化するために、アルミニウム等の金属材料で構成されていることが好適である。また、ブロック20に恒温水導入設備26を設けて、ブロック20内に恒温水(図示しない恒温槽から供給される)を循環させてもよいし、ブロック20を断熱材で覆ってもよい。
【0023】
ガス管21aは、図示しないHeガスボンベ等の不活性ガス供給源と、試料室30とを接続する配管である。ガス管21aは、電磁弁25aにより開閉される。ガス管21bは、試料室30と拡張室50とを接続する配管であって、電磁弁25bにより開閉される。ガス管21a,21bには、サンプル100の飛散を防止するために、内径の小さな配管やらせん状に巻かれた配管など、いわゆる抵抗管を用いることが好適である。ガス管21cは、拡張室50とベント22とを接続する配管であって、電磁弁25cにより開閉される。
【0024】
圧力検出器23は、試料室30及び拡張室50の圧力を測定する装置である。圧力検出器23の検出値に基づいて、例えば制御部12がサンプル100の真密度を算出する。圧力検出器23には、検出値を制御部12に出力するためのコネクタ24が設けられている。圧力検出器23は、試料室30と拡張室50とを接続するガス管21bにおいて、電磁弁25bよりも試料室30側に取り付けられている。
【0025】
試料室30と拡張室50は、上記のように、圧力検出器23及び電磁弁25bが取り付けられたガス管21bにより接続されている。試料室30は、サンプル100を収容する部屋であって、真密度測定時にHeガス等の不活性ガスの導入により加圧される。試料室30は、例えば、後述するサンプル容器の種類を変更することで容積を変更することができる。拡張室50は、試料室30に導入された不活性ガスが解放される部屋である。また、拡張室50は、通常の使用状態において着脱自在の蓋56により開閉され、容積変更部材55の出し入れにより容積が変更することができる。試料室30の不活性ガスは、電磁弁25bを開くことで拡張室50に導入される。
【0026】
真密度測定装置10による真密度測定は、下記の手順で実行される。測定方法は、従来公知の方法であり、JISZ8807でも規定されている。各電磁弁の開閉や真密度の算出など、一連の手順は制御部12の測定制御手段12aによって制御される。
(1)試料室30に未知容積のサンプル100を収容し、蓋42を閉じて密閉した試料室30に電磁弁25aを開いて既知圧力のHeガスを導入する。これにより、サンプル100の細孔はHeガスで満たされる。この状態で試料室30に充填されたHeガスの圧力を測定する。
(2)次に、電磁弁25bを開いて試料室30に充填されたHeガスを、蓋56により密閉された拡張室50に解放する。これにより、試料室30のサンプル100以外の内部空間に充填されていたHeガスが2つの部屋に拡散する。この状態で拡張室50にHeガスを導入した後の圧力を測定する。
(3)試料室30と拡張室50の容積は既知であるため、サンプル100の容積は当該Heガスの拡散による圧力変化により求めることができる。あらかじめ測定したサンプル100の重量と、当該圧力変化とに基づいて、サンプル100の真密度が算出される。
【0027】
試料室30に求められる条件は、測定を反復したときの容積の再現性である。試料室30の容積は、あらかじめ体積が検定されている検定球を用いて校正することができるが、測定の度に行うものではないため、安定性が求められる。また、校正と測定の間での安定性は必須である。本実施形態の場合、後述のOリング34で囲まれた範囲が試料室30の容積としてカウントされるので、蓋42は毎回同じ状態で閉じられる必要がある。例えば、蓋42を開口部31の周縁に押し付けたときに上下方向に許容される誤差は数μm程度である(測定再現性の目標を0.01%とする場合)。これにより、試料室容積の再現性が確保される。さらに、試料室30はサンプル100を変更する度に開閉されるため、試料室30の開閉機構には、再現性だけでなく開閉の容易さが求められる。後述するように、真密度測定装置10の開閉機構によれば、優れた試料室容積の再現性と、蓋42の良好な開閉性が得られる。
【0028】
以下、
図5〜
図7をさらに参照し、試料室30及び蓋ユニット40の構成、特に試料室30の開閉機構について詳説する。
図5は、真密度測定装置10を縦方向に切断した断面の一部を示す図である。
図6及び
図7は、試料室30及び開口部31近傍を拡大した断面図である。
図7は、蓋42により試料室30を密閉した状態を示す。
【0029】
試料室30は、ブロック20の上面から下方に延びた凹部であって、サンプル100を収容する内部空間を有する。試料室30は、横方向に切断した断面形状が略真円形状であり、深さ方向(上下方向)に略一定の直径を有していることが好適である。なお、試料室30のサイズ等は適宜設定することができる。例えば、試料室30の直径は1〜10cm程度、深さは1〜10cm程度、内部空間の広さ(容積)は0.1〜2000ml程度とすることができる。
【0030】
試料室30は、上記のようにブロック20の上面から形成された凹部であって、上方に向かって開口している。即ち、試料室30の開口部31は、ブロック20の上面に形成されている。これにより、サンプル100の出し入れが容易になる。サンプル100は、例えば、有底筒状のサンプル容器35に充填されて試料室30に収容される。サンプル容器35の直径は、出し入れに支障がない範囲で試料室30の直径に近い長さに設定される。ブロック20の試料室壁面にガス抜き用の溝を付けることによりサンプル容器35の出し入れがし易くなる。サンプル容器35の長さは試料室30の深さよりもやや長く設定され、サンプル容器35の上端は試料室30の開口部31よりも上方に突出している。このため、蓋42の底面42aには、凹部42cが形成されている。
【0031】
サンプル100の使用量は、サンプルの貴重性や測定精度等に応じて適切な量が選択される。サンプル100が貴重である場合、使用量を少なくしたいという要求がある。サンプル量に対し、試料室30の容積(サンプル100以外の空間)が多く存在すると測定精度が低下する、即ち圧力検出器23の測定レンジにおいて極端に低い値での測定は精度が低くなるため、サンプル量が少ない場合は試料室30の容積は小さいことが好ましい。
【0032】
試料室30の容積は、サンプル容器等を用いて変更することができる。これにより、1台の装置で様々なサンプルの測定に対応することができる。例えば、
図7に示すサンプル容器35を用いた場合と、後述の
図8に示すサンプル容器35zを用いた場合とでは、後者の方が試料室容積を小さくすることができる。また、サンプル容器とセットで使用される別の部材を用いて試料室容積を変更してもよい。
【0033】
試料室30は、開口部31の周縁に蓋42が押し付けられることにより密閉される。開口部31の周縁には、蓋42が嵌め込まれる凹部32が設けられている。凹部32は、蓋42を適切な位置にガイドする役割を果たす。凹部32は、ブロック20の最上面から、例えば1〜30mm程度の深さで形成され、凹部32の底面32aに開口部31が形成されている。即ち、開口部31はブロック20の最上面から凹部32の深さ分、下方に位置している。蓋42は、その底面42aが凹部32の底面32aに押し付けられることで開口部31を塞ぐ。このため、底面32a,42aは、後述の溝33、凹部42cが形成される部分を除いて略平坦である。開口部31は、凹部32の底面32aの略中央に形成されることが好適である。
【0034】
凹部32は、横方向に切断した断面形状が略真円形状であり、底面32aに近づくほどその直径が小さくなる。即ち、凹部32は、底面32aが略真円形状であり、ブロック20の最上面から試料室30側に向かって直径が小さくなるように傾斜した側面32bを有している。蓋42についても、底面42aが略真円形状であり、凹部32に嵌る部分に試料室30側に向かって直径が小さくなるように傾斜した側面42bを有している。かかるテーパー状の側面を設けたことにより、蓋42が適切な位置に適切な状態で嵌り易くなる。試料室30の密閉性、蓋42のガイド性等を考慮すると、底面32aの直径は底面42aの直径よりも大きいことが好ましく、側面32b及び側面42bの傾斜角度は互いに略同一とすることが好ましい。
【0035】
詳しくは後述するように、蓋42は、開口部31の円周方向に沿って回転しない非回転式の蓋である。このため、蓋42及び凹部32の側面等には、互いに嵌合する溝等が形成されていない。さらには、底面32aの直径>底面42aの直径、側面32bの傾斜角度≒側面42bの傾斜角度として、底面32a,42aの中心を互いに略一致させて底面42aが底面32aに押し付けられたときに側面32b,42b同士が接触しないことが好ましい(
図7参照)。即ち、側面32b,42bの間には、所定の隙間が設けられる。当該所定の隙間は、底面42aの中心が底面32aの中心からずれた場合においても、底面42aに形成された凹部42cが後述のOリング34にかかることがなく、また底面42aがサンプル容器35と接触しない範囲で設定されることが好ましい。
【0036】
凹部32の底面32aには、開口部31を囲む位置に溝33が形成されている。溝33は、開口部31を中心として略真円形状に形成されることが好適である。溝33には、シール部材としてOリング34が嵌め込まれている。溝33の深さは、Oリング34の線径の70〜92%とすることが好ましく、75〜85%とすることがより好ましい。つまり、Oリング34は、好ましくは線径の8〜30%、より好ましくは線径の15〜25%が底面32aから突出する(
図6参照)。溝33の断面形状は、略コの字形状であり、溝33の幅は、Oリング34の線径と略同一であることが好ましい。溝33の直径(Oリング34の直径)は、死容積低減の観点から、試料室30の密閉性等に支障のない範囲で小さいことが好ましい。即ち、Oリング34が嵌め込まれる溝33は、できるだけ開口部31の近傍に形成されることが好ましい。
【0037】
Oリング34は、上記のように、底面32aから突出した状態で溝33に嵌め込まれている。Oリング34は、蓋42によって押し潰されることで、Oリング34に囲まれた試料室30の気密性を確保する(
図7参照)。Oリング34は、蓋42の底面42aと凹部32の底面32aとが接触するまで、即ちOリング34が底面32aから突出しなくなる状態まで押し潰される。Oリング34の線径は、例えば2.0mm以下、又は1.5mm以下である。かかる線径範囲のOリング34を用いることにより、密閉性を損なうことなく、必要な押し付け圧を低減することができる。Oリング34には、例えばJIS規格S24を用いることができる。
【0038】
Oリング34には、グリス等の潤滑剤は塗布されない。蓋42は、Oリング34に沿って回転せずOリング34を上から押さえ付けるだけであるから、Oリング34に強い回転力が作用せず、グリスを塗布する必要がないからである。したがって、真密度測定装置10では、グリスに起因する試料室30の汚染や測定誤差が発生しない。なお、Oリングは、蓋42の底面42aに設けられていてもよい。この場合、底面42aの凹部42cを囲む位置にOリングが嵌め込まれる溝を形成することができる。
【0039】
蓋ユニット40は、上記のように、操作アームとして機能する本体41と、本体41に対して搖動可能に取り付けられた非回転式の蓋42とを有する。本体41は、装置前方側から後方側に持ち上がるように、筐体14に対して回転可能に取り付けられている。本体41は、その前側端部(以下、「第1端部」という)を用いて操作され、後側端部(以下、「第2端部」という)を中心として回転する。蓋42は、本体41の第1端部と第2端部との間に取り付けられている。蓋42は、本体41の第1端部を押し下げることで、開口部31の周縁である凹部32の底面32aに押し付けられて試料室30を密閉する。このように、本体41の第1端部を押し下げる、又は持ち上げるという簡便な操作により試料室30を開閉することができる。
【0040】
本体41は、第1端部を力点、第2端部を支点、蓋42が取り付けられる部分を作用点とする梃子として機能する。このため、小さな力でOリング34を押し潰して試料室30を密閉することができる。本実施形態では、支点よりもやや力点寄りに蓋42を取り付けているが、より大きな押し付け力を必要とする場合は、支点寄りに蓋42を取り付ければよい。この場合、例えば圧力検出器23がブロック20よりも装置前方側に位置するようにマニホールド11が配置される。或いは、二重梃子の機構を本体41に採用してもよい。
【0041】
本体41は、支持部43によって、筐体14に対して回転可能に支持される。支持部43の構成は、本体41を回転可能に支持できるものであれば特に限定されないが、操作性向上等の観点から、特定の持ち上がった状態で本体41を支持することが可能なトルクヒンジを用いて支持部43を構成することが好ましい。トルクヒンジは、その回転軸が横方向に沿うように、本体41の第2端部と、筐体14の後部とに取り付けられる。
【0042】
本体41は、固定部44によって、蓋42が開口部31の周縁に押し付けられた状態、即ち第1端部が押し下げられた状態で固定される。固定部44の構成は、第1端部が押し下げられた状態で本体41を固定できるものであれば特に限定されず、例えばレバーラッチを用いて固定部44を構成することができる。レバーラッチは、そのレバー部の回転軸が横方向に沿うように、例えばレバー部が本体41の第1端部に、受座が筐体14の前部にそれぞれ取り付けられる。
【0043】
蓋42は、本体41の第1端部と第2端部との間に、フローティングジョイント45を用いて搖動可能に取り付けられている。フローティングジョイント45は、少なくとも前後方向に対する蓋42の搖動を可能とする。フローティングジョイント45は、横方向に蓋42を搖動させるものであってもよいが、好ましくは前後方向のみに搖動(回転)可能に蓋42を支持する。即ち、ジョイントの回転軸が支持部43の回転軸と略平行となるように、フローティングジョイント45が設置される。本体41に対して蓋42を固定すると、蓋42を底面32aに押し付けたときにOリング34を片側から押し潰していくことになりOリング34に歪みが発生する。蓋42を揺動させることで、Oリング34を上から均等に押圧し易くなり、例えば試料室30の密閉性が向上する。
【0044】
蓋42は、底面42aを試料室30側に付勢する付勢部材として圧縮バネ46を有する。これにより、固定部44を用いて本体41を固定した状態で、蓋42は凹部32の底面32aに押し付けられる。即ち、押し付け力が緩んで戻りが発生することなく、蓋42がOリング34を押し潰して底面32a,42a同士が接触した良好な密着状態が維持される。なお、蓋を試料室30側に付勢する付勢部材は、蓋42に設けられる圧縮バネ46に限定されず、固定部44や、蓋42と本体41との接続部などに設けられてもよいし、本体41自体が付勢部材として機能してもよい。
【0045】
以下、
図8をさらに参照し、特に拡張室50の構成について詳説する。
図8は、試料室30及び拡張室50を示す断面図である。
【0046】
拡張室50は、ブロック20の上面から下方に延びた凹部であって、容積変更部材55を収容可能な内部空間を有する。拡張室50は、試料室30と同様に、横方向に切断した断面形状が略真円形状であり、深さ方向に略一定の直径を有していることが好適である。試料室30と拡張室50は、蓋42,56の開閉操作等に支障のない範囲で互いに近接して設けられていることが好ましい。
【0047】
上記のように、試料室30の容積はサンプル容器35zを用いて変更可能であるが、試料室容積を変更した場合は、それに合わせて拡張室50の容積も変更することが好適である(後述の
図10参照)。拡張室50は、オペレーターが容積変更部材55を室内に挿入することで容積を小さくすることができる。
【0048】
拡張室50の直径や深さ、内部空間の広さ(容積)は、試料室30の容積等に応じて適宜設定できる。一般的な装置では、試料室30の容積よりも拡張室50の容積を小さく設定することが多い。真密度測定装置10の場合は、拡張室50の容積をオペレーターによる容積変更部材55の挿入によって容易に変更する(小さくする)ことが可能であるから、拡張室50の最大容積を試料室30の最大容積よりも大きくする、或いは各最大容積を略同一にすることができる。真密度測定装置10の場合、拡張室50の最大容積は、試料室30の最大容積の80〜120%が好ましく、90〜110%がより好ましい。2つの部屋の最大容積を略同一(100±5%)とすることにより、1つの拡張室50を用いて幅広い測定レンジで測定誤差を小さくすることができる。
【0049】
拡張室50は、上記のようにブロック20の上面から形成された凹部であって、上方に向かって開口している。即ち、拡張室50の開口部51は、ブロック20の上面に形成されている。そして、蓋56を取り外すと、開口部51は筐体14の筐体開口部14aから露出する。このため、通常の使用状態において拡張室50へのアクセスが可能となり、容積変更部材55の出し入れが容易になる。ここで、通常の使用状態とは、装置が一般のオペレーターにより真密度測定がなされる状態にあることを意味し、清掃や部品交換、保守点検が行われるような状態ではないことを意味する。
【0050】
拡張室50は、通常の使用状態において着脱自在の蓋56により開閉される。蓋56は、蓋42と同様に非回転式の押し付け蓋であるが、ブロック20に対してボルト止めされる点で蓋42と異なる。蓋56は、ブロック20に形成された複数(4つのボルト孔57に挿入されるボルト58を締め付けることで開口部51を塞ぐ。開口部51の周縁には、試料室30の場合と同様に、蓋56が嵌め込まれる凹部52が設けられている。凹部52の底面52aには、開口部51を囲む位置に溝53が形成されており、溝53には、シール部材としてOリング54が嵌め込まれている。即ち、拡張室50の開閉機構は、蓋56がボルト止めされる点を除いて試料室30の場合と同じである。
【0051】
拡張室50は、試料室30と同じ方向に向かって開口している。開口部31,51は、ブロック20の上面において横方向に並んで形成されている。例えば、開口部31,51の直径は互いに略同一に設定され、開口部31,51同士の間隔は当該直径の3倍以下、好ましくは2倍以下に設定される。拡張室50は、試料室30と異なる方向に向かって開口していてもよいが、真密度測定装置10の場合、通常の使用状態においてオペレーターが拡張室50にアクセスするため、操作性向上等の観点から、開口部31,51はブロック20の同じ面に形成され、互いに近接していることが好ましい。
【0052】
容積変更部材55は、拡張室50に収容できるものであれば、その形状等は特に限定されない。容積の異なる複数の容積変更部材を準備することもできる。容積変更部材55は、拡張室50の損傷防止等の観点から、測定中に動かないことが好ましい。このため、容積変更部材55は、拡張室50の形状に対応する円柱形状或いは球状であり、その直径は出し入れに支障がない範囲で拡張室50の直径に近い長さに設定されることが好ましい。また、試料室30と拡張室50の形状、直径等の寸法を略同一とすることにより、サンプル容器を容積変更部材として使用することも可能である。
【0053】
ここで、上記構成を備えた真密度測定装置10の作用効果について詳説する。
【0054】
真密度測定装置10によれば、非回転式の試料室開閉機構を採用したことによって、Oリング34に対して蓋の回転による大きな摩擦力が作用せず、Oリング34にグリス等の潤滑剤を塗布する必要がなくなる。これにより、グリスを用いることの弊害、例えばグリスにサンプル100等が付着する等して試料室30を汚染すること、またグリスの体積がカウントされることにより測定精度が低下すること等を防止できる。
【0055】
また、真密度測定装置10では、蓋42の側面42bや凹部32の側面32b等に、互いに嵌合する溝等が形成されておらず、金属同士がこすれ合って摩耗することで金属粉が発生することもない。このため、回転式の蓋を用いた場合のように、金属粉に起因する試料室30の汚染や密閉性の低下が起こらない。
【0056】
さらに、真密度測定装置10によれば、試料室30の容積だけでなく、拡張室50の容積も容易に変更することができる。拡張室50は、試料室30と同じ方向に向かって開口しており、いずれの開口部もブロック20の上面に形成されている。このため、オペレーターは、試料室30にサンプル100を挿入するのと同様にして、拡張室50に容積変更部材55を挿入し、その容積を簡便且つ迅速に変更することができる。
【0057】
図9及び
図10は、拡張室50の容積変更による効果を説明するための図である。
図9の矢印αは試料室30に導入したHeガスを拡張室50に解放する時点、即ち電磁弁25bを開いた時点を示し、矢印βは拡張室50からHeガスを排出する時点、即ち電磁弁25cを開いた時点を示す。拡張室50へのHeガスの解放によって圧力検出器23により検出される圧力は降下するが、この降下の程度が小さ過ぎても、大き過ぎても良好な測定精度は得られない。即ち、当該圧力差として適切な範囲が存在する。真密度測定装置10では、拡張室容積を容易に変更することが可能であるから、当該圧力差を適切な範囲に設定することができ、測定精度を向上させることが可能になる。例えば、試料室容積を小さくした場合には、拡張室容積も小さくすることが好ましい。容積変更部材を変更した場合は、検定球により容積を再検定することが好ましい。
【0058】
図10は、試料室30及び拡張室50の容積を変更した場合のサンプルの体積Vs(横軸)に対する測定誤差(縦軸)を示している。
図10の◆は試料室容積Vcが13.5ml、拡張室容積Vrが13.1mlの場合、△はVcのみを6.0mlとした場合、▲はVcを6.0ml、Vrを5.3mlとした場合、○はVcのみを3.7mlとした場合、●はVcを3.7ml、Vrを5.3mlとした場合である。サンプルの体積Vsが小さな範囲では、試料室容積を小さくすることにより測定精度が向上する。そして、試料室容積に合わせて拡張室容積を小さくすることにより、試料室容積のみを変更した場合よりも測定精度がさらに向上する。真密度測定装置10では、例えば試料室30と拡張室50の最大容積を略同一として、体積Vsが大きい場合は各部屋の容積を変更せずに測定を行い、体積Vsが小さい場合は各部屋の容積を小さくして対応することができる。これにより、1つの拡張室を備える1台の装置を用いて様々なサンプルの真密度を精度良く測定することが可能となる。
【0059】
以上のように、真密度測定装置10は、試料室30の開閉機構として非回転式の押し付け方式を採用し、且つ簡便で迅速な拡張室容積の変更を可能とした。これにより、メンテナンス負荷を低減しながら、測定精度を大幅に向上させることができる。
【0060】
ここで、上記構成を備えた真密度測定装置10において、拡張室50の容積変更に関する制御モードの一例を示す。
図11は、当該制御モードを示すフローチャートである。
【0061】
まず初めに、オペレーターは、サンプル100を適切な容量のサンプル容器に充填し、当該容器を試料室30に収容する。その後、本体41を押し下げて蓋42を閉め、試料室30を密閉する。タッチパネル13により、サンプル100の重量など真密度の算出に必要な情報等を入力し、測定をスタートさせる。試料室30へのHeガスの導入や拡張室50へのHeガスの解放など真密度測定の一連の動作は、制御部12の測定制御手段12aの機能により自動的に実行される(S10)。
【0062】
続いて、S10で得られた測定結果に基づいて、最適な拡張室50の容積を求める(S11)。即ち、S10で適用した拡張室容積が、最も測定誤差が小さくなる条件であったかどうかを判断する。その結果、S10で適用した拡張室容積が最も測定誤差が小さくなる条件であった場合は、本制御モードを終了する。一方、S10で適用した拡張室容積よりも好ましい条件がある場合、即ちS10で適用した拡張室容積がS11で求めた拡張室容積と一致しない場合は、容積変更部材55の使用を薦める表示をタッチパネル13に出力する(S13)。S11〜S13の手順は、制御部12の報知手段12bの機能により自動的に実行される。
【0063】
オペレーターは、タッチパネル13の表示を見て、容積変更部材55を拡張室50に挿入する(S14)。容積変更部材が複数存在する場合は、S13において容積変更部材の種類を表示する設定としてもよい。その場合、オペレーターは適切な容積変更部材を選択して拡張室50に挿入する。そして、再び真密度測定を実行する(S15)。
【0064】
なお、上記制御モードにおいて、最適な拡張室容積を求めると共に、最適な試料室容積を求める設定を設けてもよい。また、報知手段12bは、タッチパネル13への表示以外の方法、例えば音声等により容積変更部材55の使用を促してもよい。
【0065】
上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。
例えば、蓋42が本体41から独立していてもよい。測定を行う際には、蓋42をあらかじめ凹部32に嵌め込んでおき、本体41で押し下げることで試料室30を閉じることができる。この場合、凹部32やそのテーパー状の側面など、蓋42を適切な位置にガイドするための構成は、より簡単なものであってもよく、或いは当該構成を設けなくてもよい。蓋42と本体41を分離することで、開閉機構がより単純になる、蓋の位置合わせがより容易になる、蓋の洗浄がより容易になる等の利点がある。
【0066】
図12〜
図14Cに、設計変更の例を示す。ここでは、上記実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0067】
図12に例示する真密度測定装置10vは、蓋ユニット40vの本体41に、試料室30の蓋42に加えて拡張室50の蓋56vが取り付けられている点で、真密度測定装置10と異なる。蓋56vは、蓋42と同様に本体41の第1端部と第2端部との間に揺動可能に支持されている。この場合、本体41を押し下げることで、蓋42,56vが各部屋の開口部の周縁に押し付けられて各部屋を密閉する。大きな押し付け力が必要である場合は、本体41に対する蓋42,56vの位置や本体41の長さを変更してもよいし、本体41に二重梃子の構造を適用してもよい。
【0068】
図13に例示する真密度測定装置10wは、本体41を有さず、試料室30についても拡張室50の蓋56と同様の蓋42wが用いられている点で、真密度測定装置10と異なる。真密度測定装置10wでは、筐体開口部14waから各部屋を閉じる蓋42w,56が常時露出している。
【0069】
図14A〜
図14Cに示すように、Oリング34が嵌め込まれる部分は、断面略コの字形状の溝以外であってもよい。例えば、
図14Aに示すように、Oリング34の脱落を防止すべく、底から上に向かって幅を小さくした溝33zを設けてもよい。溝33zは、アリ溝と呼ばれる。また、
図14B及び
図14Cに示すように、開口部31の周縁を一段低くして、Oリング34の外周部が当接する段差36,37を設けてもよい。