特許第5916794号(P5916794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916794
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】硬組織補修用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 24/00 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
   A61L25/00 A
【請求項の数】17
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2014-115630(P2014-115630)
(22)【出願日】2014年6月4日
(62)【分割の表示】特願2011-541950(P2011-541950)の分割
【原出願日】2010年11月18日
(65)【公開番号】特開2014-208250(P2014-208250A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2009-265648(P2009-265648)
(32)【優先日】2009年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-265649(P2009-265649)
(32)【優先日】2009年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】浅田 典明
(72)【発明者】
【氏名】青木 伸也
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮越 照一
(72)【発明者】
【氏名】荒田 正三
【審査官】 小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−110913(JP,A)
【文献】 特開平10−114615(JP,A)
【文献】 特開平04−189363(JP,A)
【文献】 特開2005−015435(JP,A)
【文献】 特開平07−097306(JP,A)
【文献】 特開昭62−286467(JP,A)
【文献】 特開平08−099815(JP,A)
【文献】 特開2005−200342(JP,A)
【文献】 歯科材料・器械,1999年,Vol.18,No.5,p347−351
【文献】 歯科材料・器械,2000年,Vol.19,No.1,p92−101
【文献】 Dental Materials Journal,2000年,Vol.19,No.1,p65−74
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 24/00−24/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー(A)である(メタ)アクリレート24〜58.4重量部、(メタ)アクリレート重合体(B)35重量部以上65重量部未満、及び有機ホウ素化合物(c1)である部分酸化トリブチルホウ素を含む重合開始剤組成物(C)0.5〜10重量部((A)、(B)、及び(C)の合計100重量部)並びにX線造影剤70重量部以下を含有する硬組織補修用組成物であり、
上記重合体(B)が、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.51〜1.2(m2/g)の重合体粒子(b2)および、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.1〜0.5(m2/g)の重合体粒子(b3)を、重合体粒子(b1)、(b2)および(b3)の全重量に対して2重量%以上の条件で、重量平均分子量30×104〜60×104かつ比表面積1.5〜4.5(m2/g)の重合体粒子(b1)を20〜98重量%((b1)、(b2)、および(b3)の合計が100重量%)含んでなる重合体混合物であって、
上記(A)、(B)、及び(C)の混合後540秒の粘度が280,000〜80,000,000cpの範囲にあり、かつ上記(A)、(B)、及び(C)の混合後60秒の粘度が10〜2,000,000cpの範囲にある硬組織補修用組成物。
【請求項2】
上記重合開始剤組成物(C)が、有機ホウ素化合物(c1)である部分酸化トリブチルホウ素100重量部に対して、沸点30℃〜150℃の非プロトン性溶媒(c2)30〜80重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の硬組織補修用組成物。
【請求項3】
上記重合開始剤組成物(C)が、有機ホウ素化合物(c1)である部分酸化トリブチルホウ素100重量部に対して、沸点50℃〜120℃の非プロトン性溶媒(c2')5〜40重量部、及び沸点60℃〜180℃のアルコール(c3)0.2〜5重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の硬組織補修用組成物。
【請求項4】
上記(A)、(B)及び(C)の混合後30秒以内の粘度が0.4〜2,000,000cpの範囲にある請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬組織補修用組成物。
【請求項5】
さらに重合禁止剤(D)を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬組織補修用組成物。
【請求項6】
上記重合禁止剤(D)の含有量が上記モノマー(A)に対して10〜5000ppmである請求項5に記載の硬組織補修用組成物。
【請求項7】
上記重合禁止剤(D)がハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2−ヒドロキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及びt−ブチルヒドロキノンから選ばれる少なくとも1種である請求項5または6に記載の硬組織補修用組成物。
【請求項8】
さらに紫外線吸収剤を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬組織補修用組成物。
【請求項9】
さらに軟質剤及び可塑剤から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬組織補修用組成物。
【請求項10】
さらに抗感染剤、抗生物質、抗菌剤、抗ウィルス剤、鎮痛薬、鎮痛薬の配合物、食欲抑制薬、抗蠕虫薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗鬱薬、抗利尿薬、下痢止め薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗偏頭痛薬剤、制嘔吐剤、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、止痒薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経興奮剤、心臓血管用薬剤、抗不整脈薬、抗高血圧薬、利尿薬、血管拡張剤、免疫抑制薬、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、覚醒薬、鎮静剤、精神安定剤、コリン作用薬、化学療法薬、放射性医薬品、骨誘導性薬、膀胱静止性のヘパリン中和剤、凝血原、止血剤、キサンシン誘導体、ホルモン、天然由来又は遺伝子工学によって合成されたタンパク質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗原、バソプレシン、バソプレシン類似体、エピネフリン、セレクチン、凝血促進性の毒物、プラスミノゲン活性化因子阻害剤、血小板活性剤、骨形成因子、及び止血作用を有する合成ペプチド、及び
オレンジ油、グレープフルーツ油、レモン油、ライム油、丁子油、ウインターグリーン油、ペパーミント油、ペパーミントスピリット、バナナ留出物、キュウリ留出物、蜂蜜留出物、ローズウオータ、メントール、アネトール、サリチル酸アルキル、ベンズアルデヒド、グルタミン酸一ナトリウム、エチルバニリン、チモール、及びバニリンなどの香料から選ばれる少なくとも1つを含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬組織補修用組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の硬組織補修用組成物に含まれるモノマー(A)である(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート重合体(B)、及び有機ホウ素化合物である部分酸化トリブチルホウ素を含む重合開始剤組成物(C)の各成分が、任意の組合せで2つ以上に分割されて収容された部材を有する硬組織補修用キット。
【請求項12】
モノマー(A)である(メタ)アクリレート24〜58.4重量部、(メタ)アクリレート重合体(B)35重量部以上65重量部未満、及び有機ホウ素化合物(c1)である部分酸化トリブチルホウ素を含む重合開始剤組成物(C)0.5〜10重量部((A)、(B)、及び(C)の合計100重量部)並びにX線造影剤70重量部以下を含有し、かつ、
上記重合体(B)が、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.51〜1.2(m2/g)の重合体粒子(b2)および、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.1〜0.5(m2/g)の重合体粒子(b3)を、重合体粒子(b1)、(b2)および(b3)の全重量に対して2重量%以上の条件で、重量平均分子量30×104〜60×104かつ比表面積1.5〜4.5(m2/g)の重合体粒子(b1)を20〜98重量%((b1)、(b2)、および(b3)の合計が100重量%)含んでなる重合体混合物であり、
上記(A)、(B)、及び(C)の混合後540秒の粘度が280,000〜80,000,000cpの範囲にあり、かつ上記(A)、(B)、及び(C)の混合後60秒の粘度が10〜2,000,000cpの範囲にある硬組織補修用組成物の製造方法であって、
上記モノマー(A)、上記重合体(B)、及び上記重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納されており、上記モノマー(A)と上記重合開始剤組成物(C)とがまず混合され、続いて上記重合体(B)が混合されることにより作製される硬組織補修用組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項5に記載の硬組織補修用組成物に含まれるモノマー(A)である(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート重合体(B)、有機ホウ素化合物である部分酸化トリブチルホウ素を含む重合開始剤組成物(C)、及び重合禁止剤(D)の各成分が、任意の組合せで2つ以上に分割されて収容された部材を有する硬組織補修用キット。
【請求項14】
モノマー(A)である(メタ)アクリレート24〜58.4重量部、(メタ)アクリレート重合体(B)35重量部以上65重量部未満、及び有機ホウ素化合物(c1)である部分酸化トリブチルホウ素を含む重合開始剤組成物(C)0.5〜10重量部((A)、(B)、及び(C)の合計100重量部)、X線造影剤70重量部以下、並びに重合禁止剤(D)を含有し、かつ、
上記重合体(B)が、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.51〜1.2(m2/g)の重合体粒子(b2)および、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.1〜0.5(m2/g)の重合体粒子(b3)を、重合体粒子(b1)、(b2)および(b3)の全重量に対して2重量%以上の条件で、重量平均分子量30×104〜60×104かつ比表面積1.5〜4.5(m2/g)の重合体粒子(b1)を20〜98重量%((b1)、(b2)、および(b3)の合計が100重量%)含んでなる重合体混合物であり、
上記(A)、(B)、及び(C)の混合後540秒の粘度が280,000〜80,000,000cpの範囲にあり、かつ上記(A)、(B)、及び(C)の混合後60秒の粘度が10〜2,000,000cpの範囲にある硬組織補修用組成物の製造方法であって、
上記モノマー(A)と上記重合禁止剤(D)との混合物、上記重合体(B)、及び上記重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納されており、上記モノマー(A)と上記重合禁止剤(D)との混合物と、上記重合開始剤組成物(C)とがまず混合され、続いて上記重合体(B)が混合されることにより作製される硬組織補修用組成物の製造方法。
【請求項15】
上記(A)、(B)、及び(C)を含有する成分を混合して得られる硬組織補修用組成物または上記(A)、(B)、(C)、及び(D)を含有する成分を混合して得られる硬組織補修用組成物を患部に塗布する際に使用する治具を含む、請求項11または13に記載の硬組織補修用キット。
【請求項16】
上記治具が、筆、繊維球、布、スポンジ球、スポンジ片から選ばれる少なくとも1つである請求項15に記載の硬組織補修用キット。
【請求項17】
1〜15重量%のクエン酸と、1〜5重量%の塩化鉄(III)とを含む前処理用水溶液をさらに含む請求項11、13、15および16のいずれか1項に記載の硬組織補修用
キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬組織補修用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、骨、軟骨などの硬組織と人工関節との固定用の骨セメント、骨粗しょう治療用などに用いる骨充填剤、人工骨材料などとして、様々な硬組織補修用組成物が検討されてきている。例えば、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート、及び過酸化ベンゾイル(重合開始剤)を含む組成物、(メタ)アクリレート、リン酸カルシウムなどの無機フィラー、及び有機過酸化物を含む組成物などが検討されてきている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、このような組成物は、硬化時の発熱が大きく、患部組織に損傷を与える危険性が大きい。
また、補修用組成物を骨などの硬組織に使用する場合、作業性、感染防止などを考慮すると、予め容器などの中で組成物となる各成分を混合して組成物を調製した後、この組成物を患部表面に塗布することが通常であるが、混合後の状態が組成物を塗布する際の作業性に影響を与える場合があった。
【0004】
また、有機ホウ素化合物を含む開始剤とするアクリル系接着剤は、毒性及び有害性が低く、高い接着強さを有するため、歯科用途への展開が進められてきている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、その他の医療用途、例えば、外科用途、などに用いようとした場合、混合後、適用部位に塗布するまでの組成物の取り扱い安定性や作業性をより一層向上が求められる場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−224294号公報
【特許文献2】特開平9−110913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、硬化時の発熱が小さく、しかも、作業性に優れた硬組織補修用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく、硬組織補修用組成物について鋭意研究を重ねた。この硬組織補修用組成物とは硬組織同士の接着、硬組織内への充填、硬組織とチタン、セラミックス、ステンレスなどの人工物との接着、硬組織と軟組織等の他の組織との接着などを含む。尚、歯と充填物との接着(即ち、歯科用途)は含まない。その結果、モノマー、(メタ)アクリレート重合体、及び特定の重合開始剤組成物をそれぞれ特定量含有する組成物によれば、上述の課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の硬組織補修用組成物は、モノマー(A)である(メタ)アクリレート24〜58.4重量部、(メタ)アクリレート重合体(B)35重量部以上65重量部未満、及び有機ホウ素化合物(c1)である部分酸化トリブチルホウ素を含む重合開始剤組成物(C)0.5〜10重量部((A)、(B)、及び(C)の合計100重量部)並びにX線造影剤10〜70重量部を含有する硬組織補修用組成物であり、
上記重合体(B)が、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.51〜1.2(m2/g)の重合体粒子(b2)および、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.1〜0.5(m2/g)の重合体粒子(b3)を、重合体粒子(b1)、(b2)および(b3)の全重量に対して2重量%以上の条件で、重量平均分子量30×104〜60×104かつ比表面積1.5〜4.5(m2/g)の重合体粒子(b1)を20〜98重量%((b1)、(b2)、および(b3)の合計が100重量%)含んでなる重合体混合物であって、
上記(A)、(B)、及び(C)の混合後540秒の粘度が280,000〜80,000,000cpの範囲にあり、かつ上記(A)、(B)、及び(C)の混合後60秒の粘度が10〜2,000,000cpの範囲にあることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の硬組織補修用組成物は、モノマー(A)5〜98.95重量部、(メタ)アクリレート重合体(B)1〜75重量部、及び有機ホウ素化合物(c1)を含む重合開始剤組成物(C)0.05〜20重量部((A)、(B)、及び(C)の合計100重量部)を含有することを特徴としてもよい。この場合、上記重合体(B)は、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.51〜1.2(m2/g)の重合体粒子(b2)および、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.1〜0.5(m2/g)の重合体粒子(b3)を、重合体粒子(b1)、(b2)および(b3)の全重量に対して2重量%以上、重量平均分子量30×104〜60×104かつ比表面積1.5〜4.5(m2/g)の重合体粒子(b1)を0〜98重量%以下((b1)、(b2)、および(b3)の合計が100重量%)を含んでなる重合体混合物であることが好ましい。
【0010】
上記重合開始剤組成物(C)は、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対して、沸点30℃〜150℃の非プロトン性溶媒(c2)30〜80重量部含有することが好ましい。上記重合開始剤組成物(C)は、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対して、沸点50℃〜120℃の非プロトン性溶媒(c2’)5〜40重量部、及び沸点60℃〜180℃のアルコール(c3)0.2〜5重量部を含有することも好ましい。
【0011】
上記硬組織補修用組成物は、(A)、(B)及び(C)の混合後30秒以内の粘度が0.4〜2,000,000cpの範囲にあることが好ましい。
上記硬組織補修用組成物には、例えば重合禁止剤(D)、紫外線吸収剤、軟質剤、可塑剤などがさらに含まれていてもよい。
【0012】
上記重合禁止剤(D)の含有量はモノマー(A)に対して10〜5000ppmであることが好ましい一態様である。
上記重合禁止剤(D)としては、ハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2−ヒドロキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及びt−ブチルヒドロキノンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
また、上記硬組織補修用組成物は、抗感染剤、抗生物質、抗菌剤、抗ウィルス剤、鎮痛薬、鎮痛薬の配合物、食欲抑制薬、抗蠕虫薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗鬱薬、抗利尿薬、下痢止め薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗偏頭痛薬剤、制嘔吐剤、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、止痒薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経興奮剤、心臓血管用薬剤、抗不整脈薬、抗高血圧薬、利尿薬、血管拡張剤、免疫抑制薬、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、覚醒薬、鎮静剤、精神安定剤、コリン作用薬、化学療法薬、放射性医薬品、骨誘導性薬、膀胱静止性のヘパリン中和剤、凝血原、止血剤、キサンシン誘導体、ホルモン、天然由来又は遺伝子工学によって合成されたタンパク質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗原、バソプレシン、バソプレシン類似体、エピネフリン、セレクチン、凝血促進性の毒物、プラスミノゲン活性化因子阻害剤、血小板活性剤、骨形成因子、及び止血作用を有する合成ペプチド、及び
オレンジ油、グレープフルーツ油、レモン油、ライム油、丁子油、ウインターグリーン油、ペパーミント油、ペパーミントスピリット、バナナ留出物、キュウリ留出物、蜂蜜留出物、ローズウオータ、メントール、アネトール、サリチル酸アルキル、ベンズアルデヒド、グルタミン酸一ナトリウム、エチルバニリン、チモール、及びバニリンなどの香料から選ばれる少なくとも1つを含有していてもよい。
【0014】
上記硬組織補修用組成物を調製して24時間後の、上記硬組織補修用組成物から得られる厚み0.1μm以上、縦25mm以上かつ横2mm以上の硬化体は、試験速度2mm/分の条件で測定した際の、曲げ弾性率が100MPa以上、試験速度1mm/分の条件で測定した際の、引張り強さが10MPa以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の硬組織補修用キットは、上記硬組織補修用組成物に含まれるモノマー(A)、(メタ)アクリレート重合体(B)、及び有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)の各成分が、任意の組合せで2つ以上に分割されて収容された部材を有することを特徴とする。
【0016】
上記硬組織補修用キットは、モノマー(A)、重合体(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納されており、モノマー(A)と有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)とがまず混合され、続いて重合体(B)が混合される構成を有することが好ましい。
【0017】
上記キットが重合禁止剤(D)をさらに含む場合には、上記硬組織補修用組成物に含まれるモノマー(A)、(メタ)アクリレート重合体(B)、有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)、及び重合禁止剤(D)の各成分が、任意の組合せで2つ以上に分割されて収容された部材を有している。
【0018】
重合禁止剤を含む上記キットでは、モノマー(A)と重合禁止剤(D)との混合物、重合体(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納されており、モノマー(A)と重合禁止剤(D)との混合物と、有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)とがまず混合され、続いて重合体(B)が混合される構成を有することが好ましい。
【0019】
上記キットには、上記(A)、(B)、(C)、及びさらに必要に応じて含有される成分を混合して得られる硬組織補修用組成物を患部に塗布する際に使用する治具を含んでもよい。
【0020】
上記治具としては、筆、繊維球、布、スポンジ球、スポンジ片などが挙げられる。
上記キットは、1〜15重量%のクエン酸と、1〜5重量%の塩化鉄(III)とを含む前処理用水溶液がさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の硬組織補修用組成物は、組成物の硬化時の発熱が小さく、しかも、作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例で使用する硬化体の試料作製法を例示した模式図である。
図2】本発明の実施例(圧縮強さ)で使用する硬化体の試料作製法を例示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の硬組織補修用組成物には、モノマー(A)が含まれている。モノマー(A)としては、後述する重合開始剤組成物(C)により重合可能であれば特に制限なく使用できる。また、モノマー(A)としては使用目的に応じ、単官能モノマー、多官能モノマーいずれも使用できる。
【0024】
上記モノマー(A)としては、メタクリレート、アクリレート、その他ビニル化合物などが挙げられる。
これらモノマー(A)の中でも、人体への刺激が比較的低いという点では、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1つが好ましい(以下、アクリレート及びメタクリレートを、(メタ)アクリレートと総称する場合がある。)。
【0025】
また、モノマー(A)の中でも、硬組織への接着性が優れるという点では、酸性基を有するモノマーが好ましい。
そのため、モノマー(A)として、(メタ)アクリレート(ただし、酸性基を有さない)と酸性基を有するモノマーとを組み合わせて用いることも好ましい態様である。
【0026】
単官能(メタ)アクリレート(ただし、酸性基を有さない。)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸アルキル;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;
ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート;パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のフルオロアルキルエステル;
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シランなどの(メタ)アクリロキシアルキル基を有するシラン化合物;及び
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの複素環を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
多官能(メタ)アクリレート(ただし、酸性基を有さない。)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、へキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;
下記式(1)で表される脂環系又は芳香族ジ(メタ)アクリレート
【0028】
【化1】
(上記式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、m及びnは同一又は異なっていてもよい0〜10の数を表し、R1
【0029】
【化2】
のいずれかを表わす。);
下記式(2)で表される脂環系又は芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート
【0030】
【化3】
(上記式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、nは0〜10の数を表し、R1
【0031】
【化4】
のいずれかを表わす。);及び
下記式(3)で表される分子中にウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート
【0032】
【化5】
(上記式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、R2
【0033】
【化6】
のいずれかを表す。);
などが挙げられる。
【0034】
これら(メタ)アクリレートの中でも、単官能(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキル;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0035】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の分子内にエチレングリコール鎖を有するジ(メタ)アクリレート;
下記式(1)−aで表される化合物
【0036】
【化7】
(式(1)−a中、Rは水素原子又はメチル基を表し、m及びnは同一又は異なっていてもよい0〜10の数を表わす。);
下記式(2)−aで表される化合物
【0037】
【化8】
(上記式(2)−a中、Rは水素原子又はメチル基を表す。);及び
下記式(3)−aで表される化合物
【0038】
【化9】
(上記式(3)−a中、Rは水素原子又はメチル基を表す。);
などが好ましい。
【0039】
これら(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
酸性基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸及びその無水物、1,4−ジ(メタ)アクリロキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロキシエチルナフタレン1,2,6−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−m−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸及びその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸等のカルボン酸基又はその無水物基を有するモノマー;
(2−(メタ)アクリロキシエチル)ホスホリック酸、(2−(メタ)アクリロキシエチルフェニル)ホスホリック酸、10−(メタ)アクリロキシデシルホスホリック酸等の燐酸基を有するモノマー;及び、
p−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有するモノマーなどが挙げられる。
【0040】
これら酸性基を有するモノマーの中でも、4−メタアクリロキシエチルトリメリット酸及びその無水物が好ましい。
これら酸性基を有するモノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。また、酸性基を有するモノマーはカルシウム塩として使用できる。これら酸性基を有するモノマーを使用することにより、本発明の硬組織補修用組成物の接着性はより向上する傾向にある。
【0041】
上記酸性基を有するモノマーは、本発明の硬組織補修用組成物に含まれる(メタ)アクリレート及び酸性基を有するモノマーの合計100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部の量含まれている。上記範囲内に収まらない場合には、硬組織に対する接着強さあるいは生体への親和性に悪影響が出る場合がある。
【0042】
上記モノマー(A)の添加量は、モノマー(A)、並びに後述する重合体(B)及び重合開始剤組成物(C)の合計100重量部に対して、好ましくは5〜98.95重量部、より好ましくは17〜98.5重量部、さらに好ましくは24〜84重量部である。
【0043】
モノマー(A)の添加量が上記範囲未満である場合には、高粘度となり塗布、骨組織内への注入が困難となり、操作性が優れない傾向にある。モノマー(A)の添加量が上記範囲を超える場合には、接着強さおよび曲げ弾性率、引張り強さ、圧縮強度、曲げ強さなどの物性が乏しくなる傾向にある。
【0044】
本発明の硬組織補修用組成物には、さらにアクリレート重合体及びメタクリレート重合体から選ばれる少なくとも1つの重合体(B)が含まれている(以下、メタクリレート重合体及びアクリレート重合体を(メタ)アクリレート重合体と総称する場合がある。)。
【0045】
上記(メタ)アクリレート重合体としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・スチレン共重合体などの非架橋重合体;
メチル(メタ)アクリレート・エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとブタジエン系モノマーとの共重合体等の架橋重合体及び部分的にカルシウム塩を形成している重合体などが挙げられる。
【0046】
また、上記(メタ)クリレート系重合体には、金属酸化物あるいは金属塩が、上記非架橋重合体あるいは架橋重合体で被覆された有機・無機複合体も含まれる。
上記重合体の重量平均分子量は、好ましくは1000〜100万の範囲、より好ましくは5万〜50万の範囲、さらに好ましくは10万〜50万の範囲である。なお、上記分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた標準ポリメチルメタクリレート換算の分子量である。
【0047】
また、上記重合体(B)は、重合体粒子であってもよい。重合体(B)が重合体粒子である場合、複数の種類の重合体粒子であってもよい。
そのような重合体粒子としては、例えば、重量平均分子量30×104〜60×104かつ比表面積1.5〜4.5(m2/g)の重合体粒子(b1)、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.51〜1.2(m2/g)の重合体粒子(b2)、重量平均分子量5×104〜20×104かつ比表面積0.1〜0.5(m2/g)の重合体粒子(b3)が挙げられる。
【0048】
上記重合体粒子(b1)の比表面積は、好ましくは1.5〜4.5(m2/g)、より好ましくは2.0〜4.0(m2/g)である。
上記重合体粒子(b2)の比表面積は、好ましくは0.51〜1.2(m2/g)、より好ましくは0.6〜1.0(m2/g)である。
【0049】
上記重合体粒子(b3)の比表面積は、好ましくは0.1〜0.5(m2/g)、より好ましくは0.2〜0.45(m2/g)である。
上記重合体粒子(b1)の体積平均粒子径は、通常1〜50(μm)、好ましくは5〜40(μm)である。上記重合体粒子(b2)の体積平均粒子径は、通常0.1〜40(μm)、好ましくは1〜20(μm)である。上記重合体粒子(b3)の体積平均粒径は、通常1〜50(μm)、好ましくは5〜40(μm)である。
【0050】
重合体(B)が上記重合体粒子(b2)および重合体粒子(b3)、さらに必要に応じて重合体粒子(b1)からなる重合体混合物である場合には、重合体(b1)、重合体(b2)、および重合体(b3)の全重量に対して、(b2)および(b3)の合計が、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。なお、上記重合体混合物は重合体粒子(b2)および重合体粒子(b3)の合計100重量%からなる場合もある。
【0051】
重合体粒子(b2)および(b3)の合計が上記下限値以上である場合には、重合体(B)がモノマー(A)に均一に分散しやすく、重合体(B)のモノマー(A)に対する溶解性がより優れ、骨セメントとして骨へ充填する操作や、硬組織どうし、硬組織とチタン、セラミックス等人工物との接着、硬組織と軟組織等の他の組織との接着の操作の途中での、急激な粘度上昇を抑制し、十分な操作時間を確保することができる。さらに、本発明の硬組織補修用組成物に後述するX線造影剤を添加した場合には、混合時に、X線造影剤の沈殿が起こらず、均一に分散させることができる。
【0052】
重合体粒子に重合体(b1)が含まれる場合には、重合体(b2)および(b3)の合計は、重合体(b1)、重合体(b2)、および重合体(b3)の全重量に対して、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましく90重量%以下である。
【0053】
重合体粒子に重合体(b1)が含まれる場合には、重合体(b1)の含有量は、重合体(b1)、重合体(b2)、および重合体(b3)の全重量に対して、好ましくは98重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。また、重合体(b1)の含有量は、重合体(b1)、重合体(b2)、および重合体(b3)の全重量に対して、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上である。重合体粒子に重合体(b1)が上記範囲で含まれると、本発明の組成物に造影剤が含まれる場合であっても造影剤の沈降が起こりにくい傾向にある。
【0054】
上記(メタ)アクリレート重合体(B)の添加量は、モノマー(A)、(メタ)アクリレート重合体(B)及び後述する重合開始剤組成物(C)の合計100重量部に対して、好ましくは1〜75重量部、より好ましくは1〜73重量部、さらに好ましくは15〜73重量部である。
【0055】
(メタ)アクリレート重合体(B)の添加量が上記範囲未満である場合には、重合が進行しにくくなり、接着強さおよび曲げ弾性率、引張り強さ、圧縮強度、曲げ強さなどの物性が乏しくなる傾向にある。(メタ)アクリレート重合体(B)の添加量が上記範囲を超える場合には、高粘度となり塗布、骨組織への適用が困難となり、作業性が優れない傾向にある。
【0056】
また、重合体(B)が(メタ)アクリレート重合体であり、上記重合体粒子(b1)、(b2)および(b3)の混合物である場合には、重合体粒子(b1)、(b2)および(b3)の合計が100重量%、かつ、(b2)および(b3)の合計が2重量%以上、好ましくは5重量%以上の条件で、以下の態様が好ましい。
【0057】
モノマー(A)、重合体(B)及び重合開始剤組成物(C)100重量部に対して重合体(B)が35重量部以上65重量部未満の範囲では、重合体粒子(b1)は好ましくは10重量%〜98重量%、より好ましくは20重量%〜95重量%あり、重合体粒子(b2)は好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下であり、重合体粒子(b3)は好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0058】
本発明の硬組織補修用組成物では、後述する有機ホウ素化合物(c1)を含有する開始剤組成物(C)として用いることに特徴があるが、有機ホウ素化合物は、モノマーを含む組成物に添加すると、比較的早い段階で重合反応が開始し、緩やかに重合反応が進行していくのに対して、過酸化物を重合開始剤として用いた場合には、重合開始剤を混合しても重合開始までには比較的長い時間が必要であり、一旦重合反応が開始すると急激に反応し、比較的短時間で完結してしまう点で大きく異なる。そのため、硬組織などへの使用に好適な組成物とするためには、モノマー(A)に対して、本発明の重合体(B)を上述に説明したものとすることは重要である。このような重合体(B)を使用することによって、長時間にわたり作業性を確保することができるだけでなく、硬組織などへの使用に好適な流動性、塗布性など好適な操作性を確保できるようになる。
【0059】
本発明の硬組織補修用組成物に含まれる重合開始剤組成物(C)は、必須成分として有機ホウ素化合物(c1)を含有し、必要に応じて非プロトン性溶媒(c2)、アルコール(c3)を含有することができる。上記有機ホウ素化合物(c1)は少量の酸素や水が存在した方が重合速度が大きくなる特徴を有するが、(c1)を含有する重合開始剤組成物(C)が本発明の上記組成物に含まれることにより、硬組織への充填、塗布など水分を有する生体と接触する際、硬組織に一部浸透して、接触界面から重合が開始されるため、モノマー(A)および組成物の漏出が少なく、また、上記、生体中この組成物全体が硬化した際においても、モノマー(A)の残存が、重合開始剤として過酸化物を用いた組成物と比較してより少ない傾向にある。したがって、本発明の上記組成物は、生体への使用に好適である。
【0060】
有機ホウ素化合物(c1)としては、例えば、トリアルキルホウ素、アルコキシアルキルホウ素、ジアルキルボラン及び部分酸化トリアルキルホウ素などが挙げられる。
トリアルキルホウ素としては、例えば、トリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ−sec−ブチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリヘプチルホウ素、トリオクチルホウ素、トリシクロペンチルホウ素、トリシクロヘキシルホウ素などの炭素数が2〜8のアルキル基を有するトリアルキルホウ素が挙げられる。なお、上記アルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基のいずれであってもよく、トリアルキルホウ素に含まれる3つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。
【0061】
アルコキシアルキルホウ素としては、モノアルコキシジアルキルホウ素、ジアルコキシモノアルキルホウ素などがある。上記アルコキシアルキルホウ素としては、例えば、ブトキシジブチルホウ素等のモノアルコキシジアルキルホウ素が挙げられる。なお、アルコキシアルキルホウ素が有するアルキル基と、そのアルコキシ基のアルキル部とは同一であっても異なっていてもよい。
【0062】
ジアルキルボランとしては、例えば、ジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボランなどが挙げられる。なお、ジアルキルボランが有する2つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。また、上記ジアルキルボランに含まれる2つのアルキル基は結合して単環構造あるいはビシクロ構造を形成していてもよい。このような化合物としては、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンなどが挙げられる。
【0063】
部分酸化トリアルキルホウ素とは、上記トリアルキルホウ素の部分酸化物である。この部分酸化トリアルキルホウ素としては、部分酸化トリブチルホウ素が好ましい。また、部分酸化トリアルキルホウ素としては、トリアルキルホウ素1モルに対し、好ましくは0.3〜0.9モル、より好ましくは0.4〜0.6モルの酸素を付加させたものが使用できる。
【0064】
これら有機ホウ素化合物の中でも、トリブチルホウ素あるいは部分酸化トリブチルホウ素が好ましく、部分酸化トリブチルホウ素がより好ましい。トリブチルホウ素、部分酸化トリブチルホウ素を有機ホウ素化合物(c1)として用いた場合には、操作性が良くなるだけでなく、水分を有する生体に対して適切な反応性を有する傾向にある。また、トリブチルホウ素、部分酸化トリブチルホウ素を有機ホウ素化合物(c1)として用いた場合には、生体の様に水分が多い場所でも反応が開始し、反応が進むために、接着剤と生体との界面においてモノマーが残存しにくく、そのため生体への為害性が極めて少ない。これら有機ホウ素化合物(c1)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0065】
重合開始剤組成物(C)には、さらに非プロトン性溶媒(c2)が含まれていてもよい。このように重合開始剤組成物(C)中に非プロトン性溶媒が含まれ、有機ホウ素化合物が希釈されることにより、発火性を有する有機ホウ素化合物(c1)の発熱性がより穏やかになり、発火性を抑制し、搬送時、保存時、混合時の取扱いが容易になる。また、発熱性の適当な低下により極めて多量の組成物を使用する場合には急激な発熱を抑制できるので、本発明の組成物と接する組織へのダメージが少なくなる傾向にある。上記非プロトン性溶媒(c2)の1気圧における沸点は、通常30℃〜150℃であり、好ましくは50℃〜120℃である。沸点が上記範囲未満である場合には、搬送時あるいは保存中に重合開始剤組成物から非プロトン性溶媒が揮発、飛散などしてしまい、有機ホウ素化合物(c1)の発火抑制効果が低下してしまう傾向にある。また、沸点が上記範囲を超える場合には、本発明の硬組織補修用組成物から形成される硬化物への非プロトン性溶媒の残存が多くなり、硬化物の患部に対する接着強さおよび曲げ弾性率、引張り強さ、圧縮強度、曲げ強さなどの物性が乏しくなる傾向にある。
【0066】
上記非プロトン性溶媒(c2)としては、有機ホウ素化合物(c1)と反応するヒドロキシ基、メルカプト基等の活性水素を含有する基を有さず、有機ホウ素化合物(c1)と均一な溶液を形成しうる溶媒が好ましい。
【0067】
非プロトン性溶媒(c2)としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素;
フルオロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、いわゆるフロン等のハロゲン化炭化水素;
ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;
アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;及び
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステルなどが挙げられる。
【0068】
これらの中でもペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和脂肪族炭化水素、エーテル、及びエステルが好ましく、ヘキサン、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチルがより好ましい。
【0069】
これら非プロトン性溶媒(c2)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
上記重合開始剤組成物(C)中の非プロトン性溶媒(c2)の含有量は、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対し、好ましくは30〜80重量部である。
【0070】
非プロトン性溶媒(c2)の含有量が上記範囲未満の場合には、十分な希釈効果が得られず、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、非プロトン性溶媒(c2)の含有量が上記範囲を超えてしまう場合には、重合開始剤組成物(C)の重合開始能を低下させる傾向にある。
【0071】
重合開始剤組成物(C)には、非プロトン性溶媒(c2)に加えてさらにアルコール(c3)が含まれていてもよい。重合開始剤組成物(C)にアルコール(c3)が少量添加されたことにより、重合活性を低下させることなく、有機ホウ素化合物(c1)による反応がさらに穏やかになり、空気中で紙等に触れても焦げや発火を抑制しやすくなる傾向にある。
【0072】
上記アルコール(c3)の1気圧における沸点は、通常60℃〜180℃であり、好ましくは60℃〜120℃である。沸点が上記範囲未満である場合には、搬送あるいは保存中に重合開始剤組成物から非プロトン性溶媒が揮発、飛散などしてしまい、有機ホウ素化合物(c1)の発火抑制効果が低下してしまう傾向にある。また、沸点が上記範囲を超える場合には、本発明の組成物の硬化時間が長くなる傾向にあり、硬化物の患部に対する接着強さおよび曲げ弾性率、引張り強さ、圧縮強度、曲げ強さなどの物性が乏しくなる傾向にある。
【0073】
アルコール(c3)としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びその異性体、n−ブタノール及びその異性体、n−ペンタノール及びその異性体、n−ヘキサノール及びその異性体、n−ヘプタノール及びその異性体などが挙げられる。
【0074】
これらアルコール(c3)の中でも、炭素数4以下のアルコール、すなわちメタノール、エタノール、n−プロパノール及びその異性体、並びにn−ブタノール及びその異性体が好ましく、エタノール及びn−プロパノールがより好ましい。
【0075】
これらアルコール(c3)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
上記重合開始剤組成物(C)におけるアルコール(c3)の含有量は、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対し、通常0.2〜5重量部、好ましくは0.3〜4.5重量部、より好ましくは0.5〜4重量部である。
【0076】
アルコール(c3)の含有量が、上記範囲未満の場合には、十分な希釈効果が得られず、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、アルコール(c3)の含有量が、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対して上記範囲を越える場合には、重合開始剤組成物(C)の重合開始能を必要以上に低下させる傾向がある。
【0077】
また、アルコール(c3)と非プロトン性溶媒(c2)とを併用する場合には、上記重合開始剤組成物(C)中の非プロトン性溶媒(c2)の含有量は、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対し、好ましくは5〜40重量部であり、より好ましくは10〜30重量部、さらに好ましくは10〜25重量部である。
【0078】
非プロトン性溶媒(c2)の含有量が、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対して上記範囲未満の場合には、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、非プロトン性溶媒(c2)の含有量が、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対して上記範囲を越える場合には、重合開始剤組成物(C)の重合開始能を低下させる傾向がある。
【0079】
上記重合開始剤組成物(C)の添加量は、モノマー(A)、重合体(B)、及び重合開始剤組成物(C)の合計100重量部に対して、通常0.05〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜3重量部である。
【0080】
重合開始剤組成物(C)の添加量が上記範囲未満である場合には、重合が進行しにくくなり、硬化時間が遅くなる傾向にある。重合開始剤組成物(C)の添加量が上記範囲を超える場合には、希釈により粘度を低下させてしまう可能性、安全性に悪影響を及ぼす可能性があり、また急激な重合が進行し速やかに重合硬化物が形成されることも想定される。
【0081】
上記硬組織補修用組成物には、硬組織補修用剤としての性能に悪影響を及ぼさない範囲において、さらに必要に応じてその他成分が含まれていてもよい。
その他成分の一例としては重合禁止剤(D)が挙げられる。上記重合禁止剤(D)としては、ハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン等のハイドロキノン化合物類や、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール類、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2−ヒドロキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及びt−ブチルヒドロキノンなどが挙げられる。これらの中でも、ハイドロキノンモノメチルエーテル及び2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの混合物が好ましく用いられる。
【0082】
これら重合禁止剤(D)の中でも、それ自体の安定性の良さという点では、ハイドロキノンモノメチルエーテルが好ましい場合がある。
上記重合禁止剤(D)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0083】
上記重合禁止剤(D)を添加する場合には、硬組織補修用組成物全量に対して、好ましくは10〜5000ppm、より好ましくは50〜1000ppm、さらに好ましくは50〜500ppm添加する。
【0084】
また、上記重合禁止剤(D)は、上記モノマー(A)に対して、10〜5000ppmの範囲で添加することも好ましい。
このような組成物とすることで、例えば、従来と比べ、組成物を外科手術時の患部(体液等水分を含む硬組織)等の部位に適用する際にも、塗布性と適切な硬化時間の確保に優れ、組成物として安定して取り扱うことができる。また作業性に優れる。
【0085】
上記重合禁止剤(D)の添加量は、上述のとおりであるが、モノマー(A)に対して、より好ましくは50〜1000ppm、さらに好ましくは50〜500ppmの範囲で添加する。上述のような組成物とすることで、例えば、組成物を適用時に安定して取り扱うことができるだけでなく、適用後、効率よく組成物を硬化できる傾向にある。重合禁止剤(D)の含有量が上記範囲未満の場合には、モノマー(A)、重合物(B)および重合開始剤(C)の混和直後に硬化してしまい、塗布が困難となる傾向にある。一方、重合禁止剤(D)の含有量が上記範囲を超えてしまう場合には、重合開始剤組成物(C)の重合開始能を低下させ、硬化時間が必要以上に長くなり医療用途として使用が困難な傾向にある。
【0086】
その他成分の一例としては、さらに紫外線吸収剤が挙げられる。上記紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−sec−ブチル−5’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−ドデシル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾールと2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾール−2−イルフェノール]との混合物、2−[3’−tert−ブチル−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)−2’−ヒドロキシフェニル]ベンゾトリアゾールとポリエチレングリコール300とのエステル交換反応生成物、[[R−CH2CH2−COOCH232−(式中、R=3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシ−5’−2H−ベンゾトリアゾール−2−イルフェニル)などのベンゾトリアゾール化合物;
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−デシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン及び2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン化合物;
サリチル酸4−tert−ブチルフェニル、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチルフェニル、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4−tert−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、及び安息香酸2−メチル−4,6−ジ−tert−ブチルフェニル、及び安息香酸3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート;
セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、コハク酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)n−ブチル−3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロネート、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−第三−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−s−トリアジンとの縮合生成物、トリス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラオエート、1,1’−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−n−ブチル−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三−ブチルベンジル)マロネート、3−n−オクチル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、セバシン酸ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、コハク酸ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−モルホリノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合生成物、2−クロロ−4,6−ジ−(4−n−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンとの縮合生成物、2−クロロ−4,6−ジ−(4−n−ブチルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンとの縮合生成物、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアゾスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、及び3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、及び3−ドデシル−1−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオンなどのヒンダードアミン化合物;
4,4’−ジオクチルオキシオキサニリド、2,2’−ジエトキシオキサニリド、2,2’−ジオクチルオキシ−5,5’−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2,2’−ジドデシルオキシ−5,5’−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサルアミド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチルオキサニリドと2−エトキシ−2’−エチル−5,4’−ジ−tert−ブチルオキサニリドとのその混合物、o−及びp−メトキシ−、並びにo−及びp−エトキシ−二置換オキサニリドの混合物などのオキサルアミド化合物;
2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ブチルオキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、及び2−[4−ドデシル/トリデシルオキシ−(2−ヒドロキシプロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどの2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物;
例えば、トリフェニルホスフィット、ジフェニルアルキルホスフィット、フェニルジアルキルホスフィット、トリス(ノニルフェニルホスフィット)、トリラウリルホスフィット、トリオクタデシルホスフィット、ジステアリルペンタエリスリチルジホスフィット、トリス−(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)ホスフィット、ジイソデシルペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,6−ジ−第三−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−イソデシルオキシペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス(2,4,6−トリ−第三−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、トリステアリルソルビチルトリホスフィット、テトラキス(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、6−イソオクチルオキシ−2,4,8,10−テトラ−第三ブチル−12H−ジベンゾ[d,g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、6−フルオロ−2,4,8,10−テトラ−第三−ブチル−12−メチルジベンゾ[d,g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスフィット及びビス(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスフィットなどのホスフィット化合物又はホスホナイト化合物等が挙げられる。
【0087】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
上記紫外線吸収剤を添加する場合には、モノマー(A)に対して、好ましくは10〜1,000ppm、より好ましくは100〜800ppm添加する。このように紫外線吸収剤を添加することにより、モノマーを含む液の着色が抑制され、モノマー自体の保存安定性が向上する傾向にある。
【0088】
その他成分の一例としては、さらに軟質剤、可塑剤が挙げられる。
上記軟質剤としては、例えば、天然ゴム、合成ゴムなどのゴム、熱可塑性エラストマーなどのエラストマーが挙げられる。このような軟質剤により硬組織補修用組成物の柔軟性を高めることができる。
【0089】
上記合成ゴムとしては、例えば、EPT(エチレン・プロピレン・ターポリマー)などが挙げられる。上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びウレタン系エラストマーなどが挙げられる。
【0090】
上記エラストマーの分子量は、通常1000〜100万、好ましくは2000〜50万である。また上記エラストマーのガラス転移点(Tg)は、通常20℃以下、好ましくは0℃以下である。
【0091】
上記可塑剤としては、クエン酸エステル、イソクエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、グリセリン酸エステル及びグリコール酸エステルなどのヒドロキシカルボン酸エステル;トリメリト酸トリメチル、ジ安息香酸ジエチレングリコール、マロン酸ジエチル、o−アセチルクエン酸トリエチル、フタル酸ベンジルブチル、ジ安息香酸ジプロピレングリコール、アジピン酸ジエチル、o−アセチルクエン酸トリブチル、セバシン酸ジメチル、並びにアルキレングリコールジエステル、などが挙げられる。
【0092】
上記軟質剤及び可塑剤の添加量は、材料の種類によって適宜選択されるが、通常、硬組織補修用組成物全体の中で、通常0〜30wt%、好ましくは0〜20wt%、より好ましくは0〜10wt%含有するように用いられる。
【0093】
その他成分の一例としては、さらに保存剤が挙げられる。
上記保存剤としては、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、エチルパラベン、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、ブチルパラベン;
クレゾール、クロロクレゾール;
レゾルシノール、4−n−ヘキシルレゾルシノール、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−2−((トリクロロメチル)チオ)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン;塩化ベンズザルコニウム、塩化ベンザルコニウムナトリウム、塩化ベンゼトニウム;
安息香酸、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、デヒドロ酢酸、o−フェニルフェノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、チモール、ホウ酸フェニル水銀や硝酸フェニル水銀や酢酸フェニル水銀等のフェニル水銀化合物、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0094】
その他成分の一例としては、さらに抗感染剤、抗生物質、抗菌剤、抗ウィルス剤、鎮痛薬、鎮痛薬の配合物、食欲抑制薬、抗蠕虫薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗鬱薬、抗利尿薬、下痢止め薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗偏頭痛薬剤、制嘔吐剤、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、止痒薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経興奮剤、心臓血管用薬剤、抗不整脈薬、抗高血圧薬、利尿薬、血管拡張剤、免疫抑制薬、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、覚醒薬、鎮静剤、精神安定剤、コリン作用薬、化学療法薬、放射性医薬品、骨誘導性薬、膀胱静止性のヘパリン中和剤、凝血原、止血剤、キサンシン誘導体、ホルモン、天然由来又は遺伝子工学によって合成されたタンパク質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗原、バソプレシン、バソプレシン類似体、エピネフリン、セレクチン、凝血促進性の毒物、プラスミノゲン活性化因子阻害剤、血小板活性剤、骨形成因子、及び止血作用を有する合成ペプチドが挙げられる。なお、これら成分を含むことにより、本発明の組成物は、ドラッグ・デリバリー・システムや再生医療用途にも用いることができる。
【0095】
上記抗菌剤としては、元素ヨウ素、固体ポリビニルピロリドンヨウ素、ポリビニルピロリドンヨウ素;
トリブロモフェノール、トリクロロフェノール、テトラクロロフェノール、ニトロフェノール、3−メチル−4−クロロ−フェノール、3,5−ジメチル−4−クロロフェノール、フェノキシエタノール、ジクロロフェン、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、2,4−ジクロロ−3,5−ジメチルフェノール、4−クロロチモール、クロルフェン、トリクロサン、フェンチクロール、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、4−エチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−n−アミルフェノール、4−tert−アミルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−n−ヘプチルフェノール、モノアルキルハロフェノール、ポリアルキルハロフェノール、芳香族ハロフェノール、並びにそれらのアンモニウム塩、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩などのフェノール化合物;
硝酸銀、ヘキサクロロフェン、メルブロミン、テトラサイクリン・HCl、テトラサイクリン水和物及びエリスロマイシンなどが挙げられる。
【0096】
なお、上記硬組織補修用組成物には、さらに組織修復の促進等を目的として骨形成因子などを含ませてもよい。
上記その他成分の一例としては、さらに、レンジ油、グレープフルーツ油、レモン油、ライム油、丁子油、ウインターグリーン油、ペパーミント油、ペパーミントスピリット、バナナ留出物、キュウリ留出物、蜂蜜留出物、ローズウオータ、メントール、アネトール、サリチル酸アルキル、ベンズアルデヒド、グルタミン酸一ナトリウム、エチルバニリン、チモール、及びバニリンなどの香料が挙げられる。
【0097】
また、その他成分の一例としては、さらに、X線造影性の付与、接着強さ、圧縮強度等物性の強化のために無機充填剤、有機充填剤、有機複合フィラー、充填剤着色剤などが含まれていてもよい。
【0098】
無機充填材としては、例えば、ジルコニウム酸化物、ビスマス酸化物、チタン酸化物、酸化亜鉛、酸化アルミニウム粒子等の金属酸化物粉末;
炭酸ビスマス、リン酸ジルコニウム、硫酸バリウム等の金属塩粉末;
シリカガラス、アルミニウム含有ガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ジルコニウムシリケートガラス等のガラスフィラー;銀徐放性を有するフィラー、カルシウム徐放性を有するフィラー:及びフッ素徐放性を有するフィラーなどが挙げられる。
【0099】
なお、硬化後の無機充填材とモノマー(A)との間で強固な結合を形成する観点からは、シラン処理、ポリマーコートなどの表面処理を施した無機充填材を使用することが好ましい。
【0100】
これら無機充填材は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
また、その他成分の一例としては、X線造影剤などが挙げられる。上記X線造影剤としては、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸ビスマス、タングステン酸カルシウム、イットリビウム、ヨウ素化合物などが挙げられる。これらX線造影剤の中でも、硬組織用途、特に骨セメントとしての使用実績があり、また、同じく使用実績のある硫酸バリウムに比較して、より強いX線造影性、より高い分散性を示すという点からは、酸化ジルコニウムが好ましい。
【0101】
上記X線造影剤の添加量は、その目的などにより適宜選択されるが、X線造影剤を除く硬組織補修用組成物全重量100重量部に対して、通常10〜70量部、好ましくは15〜65重量部である。
本発明の硬組織補修用組成物は、硬組織補修用剤としての操作性、即ち、塗布性、注入性に優れる。
【0102】
本発明においては、上記モノマー(A)、(メタ)アクリレート重合体(B)、重合開始剤組成物(C)及びその他必要に応じて含まれる成分を混合して硬組織補修用組成物を作製し、その組成物を患部に適用することにより使用できる。このようにして作製された組成物の発熱は、通常70℃以下であり、患部組織に対する損傷を与える危険性がより低くなる。
【0103】
なお、これら各成分を混合する際には、混合される順序は限定されないが、得られる硬組織補修用組成物の安定性がより優れるという点では、まずモノマー(A)及び重合開始剤組成物(C)を混合し、続いて重合体(B)が混合されることが好ましい。
【0104】
また、本発明の硬組織補修用組成物が重合禁止剤(D)を含む場合には、得られる組成物の安定性がより優れるという点では、モノマー(A)と重合禁止剤(D)との混合物、及び重合開始剤組成物(C)をまず混合し、続いて重合体(B)が混合されることが好ましい。
【0105】
上記硬組織補修用組成物を調製して24時間後の、該組成物から得られる厚み0.1μm以上、縦25mm以上かつ横2mm以上の硬化体は、試験速度2mm/分の条件で測定した際の曲げ弾性率が100MPa以上であることが好ましく、また、試験速度1mm/分の条件で測定した際の引張り強さは10MPa以上が好ましく、試験速度2mm/分の条件で測定した際の曲げ強さは10MPa以上が好ましい。
【0106】
また、上記硬化体の曲げ弾性率は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは200MPa以上であってもよい。
また、上記硬組織補修用組成物にX線造影剤が含まれる場合、上記硬組織補修用組成物を調製して24時間後の、上記硬組織補修用組成物から得られる厚み0.5mm、縦25mm、横2mmの硬化体は、試験速度2mm/分の条件で測定した際の曲げ弾性率が、好ましくは1800MPa以上、より好ましくは2000MPa以上、さらに好ましくは2200MPa以上であり、試験速度2mm/分の条件で測定した際の曲げ強さが好ましくは50MPa以上である。
【0107】
また、上記硬組織補修用組成物から得られる調製して24時間後の硬化物は、好ましくはせん断強度10MPa以上(試験速度2mm/分)を有する。さらに、上記硬化物は好ましくは圧縮強度10MPa以上(試験速度2mm/分)を有する。また、上記硬組織補修用組成物にX線造影剤が含まれる場合、上記硬組織補修用組成物を調製して24時間後の、上記硬組織補修用組成物から得られる厚み5mm、縦10mm、横10mmの硬化体は、試験速度2mm/分の条件で測定した際の圧縮強度が、好ましくは70MPa以上であり、より好ましくは75MPa以上である。
【0108】
上記硬組織補修用組成物は、歯科用途を除く、硬組織同士の接着、硬組織内への充填、硬組織とチタン、セラミックス、ステンレスなどの人工物との接着、硬組織と軟組織等の他の組織との接着性などに優れる。
【0109】
また、本発明の上記硬組織補修用組成物を調製して24時間後の、該組成物から得られる1μm以上、好ましくは1cm以下の厚みを有しかつ縦25mm以上かつ横2mm以上のフィルムでは、試験速度1mm/分の条件で測定した際の引張り伸びが、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上であってもよい。
【0110】
また、上記硬組織補修用組成物にX線造影剤が含まれる場合、上記硬組織補修用組成物を調製して24時間後の、上記硬組織補修用組成物から得られる厚み0.5mm、縦25mm、横2mmの硬化体は、試験速度1mm/分の条件で測定した際の引張強さが好ましくは30MPa以上、より好ましくは31MPa以上である。
【0111】
したがって本発明の組成物は、硬組織補修用に好適である。
本発明の硬組織補修用組成物は、上記(A)、(B)、(C)及び必要に応じて含まれる成分を混合後30秒以内の粘度が0.4〜2,000,000cpの範囲にあることが好ましい。
【0112】
粘度が上記範囲にあることにより、硬組織補修の際の塗布、骨組織内への充填のための注入がし易くなるなど、操作性に優れる。
上記粘度は、操作性、流動性の点から、好ましくは0.4〜500,000cpの範囲、より好ましくは1〜500,000cpの範囲にある。
【0113】
また、本発明の硬組織補修用組成物は、上記(A)、(B)、(C)及び必要に応じて含まれる成分を混合後60秒の粘度が1〜2,000,000cpの範囲にあることが好ましく、10〜2,000,000cpの範囲にあることがより好ましい。
【0114】
さらに、本発明の硬組織補修用組成物は、上記(A)、(B)、(C)及び必要に応じて含まれる成分を混合後540秒の粘度が10〜80,000,000cpの範囲にあることが好ましく、50〜50,000,000cpの範囲にあることがより好ましく、100〜20,000,000cpの範囲にあることがさらに好ましい。
【0115】
粘度が上記範囲にあることにより、硬組織補修の際の塗布、骨組織内への充填のためのセメントガンへの移液、骨への注入がし易くなるなど、操作性に優れる。
本発明の硬組織補修用組成物を硬化する前あるいは硬化中に、可視光、電離放射線(例えばγ線)、電子線等の電磁波をさらに照射して殺菌処理してもよい。なお、硬化条件を大きく変化させない観点からは、可視光照射が望ましい場合もある。また、ドライ・ヒート、スチーム、エチレンオキサイド(EO)、過酸化水素などのガス、濾過、液体などによる処理、オートクレーブ滅菌処理などにより、滅菌処理してもよい。
【0116】
また、本発明の硬組織補修用組成物を、患部に塗布する前に、予め患部表面をアルコールなどの消毒液で消毒してもよい。
さらに、本発明の硬組織補修用組成物を、患部に塗布する前に、患部との接着性を改善すること等を目的として、前処理を行ってもよい。上記前処理用の液としては、例えば、1〜15重量%のクエン酸と、1〜5重量%の塩化鉄(III)とを含む水溶液などが挙げられる。
【0117】
本発明の硬組織補修用組成物が長期にわたり形態や性能が変化し、本発明の効果を損なう恐れがある場合には、モノマー(A)、(メタ)アクリレート重合体(B)、重合開始剤組成物(C)及びその他必要に応じて含まれる成分からなる硬組織補修に用いる全成分を、単独であるいは任意の組合せで分割して2つ以上の部材に収納した硬組織補修用キットとして保存し、使用前に混合して上記硬組織補修用組成物とすることができる。上記収納用の部材としては、モノマー(A)や重合開始剤組成物(C)の揮散、飛散を防ぐために、例えば、ガスバリヤー性がある密閉可能な樹脂容器、あるいはガラスシリンジなどがある。重合体(B)の収納用の部材としては、吸湿を防ぐための密閉の良好な樹脂及びガラス製容器が挙げられる。その収納する量については、一回で使い切る使用量を容器に収納する場合と複数回使用する量を収納する場合とがある。
【0118】
上記成分を保存する方法としては、例えば、(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物の3つに分割して保存する方法、(A)、(B)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、(C)との2つに分割して保存する方法、(A)及び(B)の混合物と、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)、(B)、及びその他必要に応じて含まれる成分の一部の混合物と、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の残りの部分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、(B)及び(C)の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)と、(B)、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の一部の混合物と、(B)、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の残りの部分の混合物との2つに分割して保存する方法などが挙げられる。
【0119】
また、重合禁止剤(D)を含む場合には、例えば、(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物の3つに分割して保存する方法、(A)、(B)、(D)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、(C)との2つに分割して保存する方法、(A)、(B)、及び(D)の混合物と、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)、(B)、(D)、及びその他必要に応じて含まれる成分の一部の混合物と、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の残りの部分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)、(D)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、(B)及び(C)の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)及び(D)の混合物と、(B)、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)、(D)及びその他必要に応じて含まれる成分の一部の混合物と、(B)、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の残りの部分の混合物との2つに分割して保存する方法などが挙げられる。
【0120】
なお、モノマー(A)として、酸性基を有するモノマーと酸性基を有さないモノマーとを含む混合物を使用する場合には、上述の保存方法に加えて、酸性基を有するモノマーと重合開始剤組成物とが接触しない状態で保存する方法、例えば、酸性基を有するモノマー、(B)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、酸性基を有さないモノマー及び(C)の混合物との2つに分けて保存する方法、酸性基を有するモノマー、及び(B)の混合物と、酸性基を有さないモノマー、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分けて保存する方法、酸性基を有するモノマー、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、酸性基を有さないモノマー、(B)、及び(C)の混合物との2つに分けて保存する方法、酸性基を有するモノマーと、酸性基を有さないモノマー、(B)、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分けて保存する方法などにより、保存してもよい。
【0121】
これら2つに分けられた物は別々の部材、例えばシリンジ等の容器などに入れられ、硬組織補修用キットに収容されて製品として提供できる。
上記硬組織補修用キットは、保管により形態や性能が変化し、本発明の効果を損なう恐れがない限りその構成に特に制限はないが、モノマー(A)、重合体(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納されており、モノマー(A)と有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)とがまず混合され、続いて重合体(B)が混合される構成を有することが好ましい。このような構成とすることで、より安定した性能を有する硬組織補修用組成物が得られやすい。
【0122】
上記硬組織補修用キットとしては、例えば、モノマー(A)、重合体(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納された部材(例えば、容器、シリンジなど)と、これらを収納された部材から取り出し混合するための部材(例えば、混合容器、混合皿など)とを有するキット、
モノマー(A)、重合体(B)、及び重合開始剤組成物(C)が、一つの容器内の隔壁により3以上に分離されたチャンバーにそれぞれ別個に収納され、隔壁の破壊、又は、隔壁の移動によりシリンジに予め設置されたバイパスをモノマー(A)及び重合開始剤組成物(C)が通過し、重合体(B)と混合する攪拌ユニットを有するキットなどが挙げられる。
【0123】
また、上記キットに重合禁止剤(D)が含まれている場合には、モノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物、重合体(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納されており、モノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物と有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)とがまず混合され、続いて重合体(B)が混合される構成を有していることが好ましい。このような構成とすることで、より安定した性能を有する組成物が得られやすい。
【0124】
上記キットとしては、例えば、モノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物、重合体(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納された部材(例えば、容器、シリンジなど)と、これらを収納された部材から取り出し混合するための部材(例えば、混合容器、混合皿など)とを有するキット、
モノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物、重合体(B)、及び重合開始剤組成物(C)が、一つの容器内の隔壁により3以上に分離されたチャンバーにそれぞれ別個に収納され、隔壁の破壊、又は、隔壁の移動によりシリンジに予め設置されたバイパスをモノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物及び重合開始剤組成物(C)が通過し、重合体(B)と混合する攪拌ユニットを有するキットなどが挙げられる。
【0125】
上記3以上に分離されたチャンバー内に各成分が収納された一つの容器からなるキットは、本発明の組成物を二つ以上の部材、典型的には容器に分割して使用直前に混合して使用する方法に比較して、手間が省け、また、容器から直接組成物を必要量だけスポンジ等の治具に接触させることによって、混合容器などを用いずに経済的に使用できる。
【0126】
また、重合開始剤組成物(C)成分の一部ないしは全部を、あらかじめ、硬組織補修用組成物を骨、軟骨等の硬組織などの患部や軟組織、その他チタン、セラミックス、ステンレスなどの人工物に塗布する際に使用する治具に含有させ、使用直前にモノマー(A)又はモノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物、重合体(B)、及びその他必要に応じて含まれる成分と治具とを接触させて、本発明の硬組織補修用組成物をその場で調製し、そのまま患部に塗布することもできる。
【0127】
患部に塗布する治具としては、例えば、筆、繊維球、布、スポンジ球、スポンジ片などが挙げられる。
なお、上述の硬組織補修用キットなどには、上述したアルコールなどの消毒液、接着性を改善すること等を目的とした前処理用のための溶液などが含まれていてもよい。
【0128】
さらに上述のキットなどで保存する場合には、好ましくは各成分が変質しない(例えば、モノマーが硬化しない)条件で、可視光等の電磁波などにより滅菌処理してもよい。
本発明の硬組織補修用組成物は、硬組織同士の接着、硬組織内への充填、硬組織とチタン、セラミックス、ステンレスなどの人工物との接着、硬組織と軟組織等の他の組織との接着、骨、軟骨などの硬組織と人工関節との固定用などに用いる骨セメント、骨の欠損部への充填材、骨補填材、人工骨などに用いることができる。
【実施例】
【0129】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔参考例1A〜4A、実施例5A〜6A、参考例7A、実施例8A、参考性9A〜10A、比較例1A、2A〕
(試薬)
実施例、参考例および比較例では、モノマー(A)、重合体(B)、及び重合開始剤組成物(C)として以下のものを使用した。
モノマー(A):4−META/MMA:4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物のメタクリル酸メチル溶液(重量比約5%)
重合体(B):3種類の下記PMMA(ポリメチルメタクリレート)(b1)〜(b3)と顔料との混合物。各々の重量比は、上記3種類のPMMAと顔料の合計100重量部に対して、(b1)20.03重量部、(b2)62.5重量部、(b3)12.5重量部であり、残余は顔料である。
PMMA(b1)〜(b3)の分子量、性状は以下のとおりである。
(b1) 重量平均分子量:45万、体積平均粒径:26.7μm、
比表面積:2.913m2/g
(b2) 重量平均分子量:14万、体積平均粒径:8.2μm、
比表面積:0.827m2/g
(b3) 重量平均分子量:14万、体積平均粒径:24.6μm、
比表面積:0.371m2/g
【0130】
なお、PMMA(屈折率1.49)の体積平均粒径は、分散溶媒として試薬特級メタノール(屈折率1.33)(和光純薬工業社製)を使用し、装置内臓超音波ホモジナイザーで5分間(出力25W)にて分散させ、装置Loading Index適量範囲内の濃度条件において、循環速度50%(100%時、65ml/sec)で、Microtrac MT3300EXII(Microtrac社製 粒度分布計)を用いて測定した。また、比表面積は、オートソーブ3(カンタクローム社製)を使用し、液体窒素温度下(77K)における窒素ガス吸着によって求めた、BET法での測定値である。
重合開始剤組成物(C):TBB Aタイプ、即ち、部分酸化トリブチルホウ素80重量部、ヘキサン19重量部、エタノール1重量部
【0131】
(粘度の評価)
下記表1の参考例1A〜4A、実施例5A〜6A、比較例1Aに記載される配合比に従って、重合体(B)をサンプル管に秤量し、同じく下記表1の参考例1A〜4A、実施例5A〜6A、比較例1に記載の配合比に従い、別途、サンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を、重合体(B)を秤量したサンプル管に注入し、25℃で混合して本発明の接着剤組成物を調製し、調製後30秒以内の粘度を測定した。なお、粘度は、調製時には0.4cp以上であり、経時的に上昇していることを確認している。粘度は、E型粘度計(東京計器(株)製、EHP型)を用い、25℃で測定した。評価結果を表1に示した。
【0132】
(塗布性の評価)
下記表1の参考例1A〜4A、実施例5A〜6A、比較例1Aに記載される配合比に従って、重合体(B)をルアー部にキャップを付けたシリンジに秤量し、同じく下記表1の参考例1A〜4A、実施例5A〜6A、比較例1Aに記載の配合比に従いサンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記シリンジ内に注入し、25℃で混合した。その後、シリンジのキャップを取り外し、幅1cm、厚み1mmのノズルを装着し、混合した組成物1mlをポリエチレン製シートの上に長さ4cm塗布した。評価は1〜5までの5段階、即ち、塗布物の幅が1cm以上1.2cm未満は5、1.2cm以上1.4cm未満は4、1.4cm以上1.6cm未満は3、1.6cm以上は2、塗布不可は1とし、評価結果を表1に示した。
【0133】
(容器からの押出しの評価)
下記表1の参考例1A〜4A、実施例5A〜6A、比較例1Aに記載される配合比に従って、重合体(B)を吐出口にキャップを付けて閉鎖したシリンジに秤量し、同じく下記表1の参考例1A〜4A、実施例5A〜6A、比較例1Aに記載の配合比に従いサンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を、上記重合体(B)を入れたシリンジ内に注入し、25℃で混合した。その後、(A)(B)(C)の3成分の入ったシリンジのキャップを取り外し、11Gの針を装着し、混合した組成物1mlをポリエチレン製シートの上に押出した。評価は1〜3までの3段階、即ち、50kPaの圧力で20秒以内に組成物が全量押出された場合は3、20秒以上60秒未満で組成物が全量押出された場合は2、60秒以上でも組成物が全量押出されない場合は1とし、評価結果を表1に示した。
【0134】
【表1】
【0135】
(曲げ弾性率、引張り強さ、曲げ強さの評価)
下記表2の参考例7A、実施例8A、参考性9Aに記載される配合比に従って、5mlサンプル管に重合体(B)を秤量し、同じく下記表2の参考例7A、実施例8A、参考性9Aに記載される配合比に従って、1mlサンプル管にて別途調製したモノマー液(A)と重合開始剤組成物(C)との混合液を、上記、重合体(B)を秤量したサンプル管に加えたのち、ガラス棒を用いて均一になるよう25℃で5秒程度混和した。
【0136】
得られた組成物を注射器に注入し、図1に例示される様に、以下の手順に従って、直ちに型枠に充填し試料硬化物を作製した。ガラス板の上に、PE製ルミラー(商標)のシート、厚さ0.5mmのフッ素樹脂製型枠(型枠内の大きさ:縦25mm×横2mm)の順に重ねて置いた。この型枠内に作製した硬組織補修用組成物を充填した。充填の際には気泡が入らないよう注意して作業を行った。充填終了後、その上にさらにPE製ルミラー(商標)のシート、ガラス板の順に重ねて置き、外側の2枚のガラス板の4隅をクリップで固定した。その後、25℃(室温)で24時間静置した後、型枠から硬化体を取り出した。得られた硬化物の表面に凹凸がある場合には、耐水研磨紙#600で表面を研磨して凹凸を除去し、硬化体状硬化物を作製した。得られた硬化物の大きさは、縦25mm、横2mm、厚み0.5mmであった。
調製して24時間後の上記硬化物の曲げ弾性率(試験速度2mm/分)、引張り強さ(試験速度1mm/分)、曲げ強さ(試験速度2mm/分)を島津製作所社製EzTest/CEにより求めた。値は4回測定した平均値である。評価結果を表2に示した。
【0137】
(圧縮強さの評価)
下記表2の参考例7A、実施例8A、参考性9Aに記載される配合比に従って、5mlサンプル管に重合体(B)を秤量し、同じく下記表2の参考例7A、実施例8A、参考性9Aに記載される配合比に従って、1mlサンプル管にて別途調製したモノマー液(A)と重合開始剤組成物(C)との混合液を、上記、重合体(B)を秤量したサンプル管に加えたのち、ガラス棒を用いて均一になるよう25℃で5秒程度混和した。
【0138】
得られた組成物から4.0mm×4.0mm×3.0mmおよび直径6mm×長さ8mmの硬化物を調整し、調製して24時間後に、オートグラフ((株)島津製作所製DSS500)にて圧縮強度(試験速度2mm/分)を測定した。その結果を表2に示した。
【0139】
【表2】
【0140】
(発熱性)
30mlサンプル管に参考例10に記載される配合比に従って、重合体(B)および硫酸バリウム(和光純薬工業(株)製)を秤量し、同じく実施例10に記載される配合比に従って、10mlサンプル管にモノマー液(A)及び重合開始剤組成物(C)を秤量して混合し、上記、重合体(B)を秤量したサンプル管に加えたのち、ガラス棒を用いて均一になるよう25℃で1分間混合した。その後、直径30mm高さ15mmの円筒状容器に入れ、中心部に温度計を挿入して、温度を測定した。
【0141】
また、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(和光純薬工業(株)製)を使用した場合の例を比較例2示した。即ち、比較例2に記載される配合比に従って、100mlのビーカーに重合体(B)、硫酸バリウムおよび過酸化ベンゾイルを秤量し、モノマー液(A)を秤量して、上記ビーカーに加え、ガラス棒を用いて均一になるよう25℃で1分間混合した。その後、直径30mm高さ15mmの円筒状容器に入れ、中心部に温度計を挿入して、温度を測定した。
【0142】
その結果を表3に示す。モノマー(A)、重合体(B)および重合開始剤組成物(C)により作製された組成物は、混合直後から温度が徐々に上昇し始め、比較的最高温度は低かった。一方、過酸化ベンゾイルを重合開始剤として用いた場合、温度上昇まで比較的長時間を要し、一旦、温度上昇が始まると短時間で急激な温度上昇を示し、最高温度もモノマー(A)、重合体(B)および重合開始剤組成物(C)により作製された組成物に比較して高かった。
【0143】
【表3】
【0144】
(接着強さの評価)
イヌ大腿骨の骨皮質面に直径5mmのアクリル樹脂棒を、参考例10Aに記載される配合比に従って混合した組成物を用いて、アクリル樹脂棒と骨を直角に固定し、37℃で24時間水中浸漬後、オートグラフ((株)島津製作所製DSS500)にて、アクリル樹脂棒と骨との引き離し試験を行った。その結果、接着強さは10MPaであった。
【0145】
〔実施例1B〜13B、比較例1B〜13B〕
以下の実施例および比較例では上記実施例と同様のモノマー(A)、重合開始剤組成物(C)を用いた。重合体(B)としては、上述の重合体(b1)、(b2)、(b3)を下記表4〜11に記載の配合で混合したものを用いた。また、X線造影剤として、第一希元素化学工業(株)社製の酸化ジルコニウムを用いた。重合体(b1)、(b2)、(b3)、及び酸化ジルコニウムとの混合は、30分間23±1℃でターブラーシェーカー(Willy A Bachofen AG社製T2C型)により行った。
【0146】
(均一分散性の評価)
下記表4〜11に記載される実施例1B〜13B、および比較例1B〜13Bの配合比に従って、重合体(B)および酸化ジルコニウムを内径2.5cm、深さ1cmのポリプロピレン製容器に秤量し、同じく下記表4〜11に記載される実施例1B〜13B、および比較例1B〜13Bの配合比に従い10mlガラス製サンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記プラスチック製容器に注入し、25℃で、ポリプロピレン製のヘラで20秒間、混合した。その後、容器内の混合物の状態を目視により確認した。評価は、重合体(B)の粉末が混ざらない場合は0、粉ダマがある場合は1、流動性がなく粘土状に溶解する場合は2、流動性がある状態に溶解する場合は3とし、評価結果を表7に示した。なお、0の場合は、試験サンプルを作製できないためその他の評価は実施しなかった。評価結果を表4〜11に示した。
【0147】
(X線造影剤の均一分散性)
同じく下記表4〜11に記載される実施例1B〜13B、および比較例1B〜13Bの配合比に従って、重合体(B)および酸化ジルコニウムを内径2.5cm、深さ1cmのポリプロピレン製容器に秤量し、同じく下記表4〜11に記載される実施例1B〜13B、および比較例1B〜13Bの配合比に従い10mlガラス製サンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記プラスチック製容器に注入し、25℃で、ポリプロピレン製のヘラで20秒間、混合した。その後、更に、ヘラによる混合及びピペッティングにより容器内の混合物の状態を目視により確認した。評価は、重合体(B)中のX線造影剤の沈殿が確認される場合は0、X線造影剤の沈殿が確認されるが、ヘラによる20秒間の攪拌中に沈殿が確認されなくなる場合は1、攪拌時からX線造影剤の沈殿が確認されない場合は2とした。評価結果を表4〜11に示した。
【0148】
(初期粘度の評価)
下記表4〜11に記載される実施例1B〜13B、および比較例1B〜13Bの配合比に従って、重合体(B)および酸化ジルコニウムを内径2.5cm、深さ1cmのポリプロピレン製容器に秤量し、同じく下記表4〜11に記載される実施例1B〜13B、および比較例1B〜13Bの配合比に従い10mlガラス製サンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記プラスチック製容器に注入し、25℃で、ポリプロピレン製のヘラで20秒間混合した。レオメーター(HAAKE社製、RS150)にて、混合調整60秒後の粘度を25℃で測定した。なお、粘度は、経時的に上昇していることを確認している。評価結果を表4〜11に示した。
【0149】
(操作性の評価)
下記表4〜11に記載される実施例1B〜13B、および比較例1B〜13Bの配合比に従って、重合体(B)および酸化ジルコニウムを内径2.5cm、深さ1cmのポリプロピレン製容器に秤量し、同じく下記表4〜11に記載される実施例1B〜13B、および比較例1B〜13Bの配合比に従い10mlガラス製サンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記プラスチック製容器に注入し、25℃で、ポリプロピレン製のヘラで20秒間混合した。レオメーター(HAAKE社製、RS150)にて、混合調整540秒後の粘度を25℃で測定した。なお、粘度は、経時的に上昇していることを確認している。評価は、粘度が80000×103cP以上の場合は0、80000×103cP〜50000×103cPの場合は1、50000×103cP〜20000×103cPの場合は2、20000×103cP以下の場合は3とした。評価結果を表4〜11に示した。
【0150】
(機械物性の評価)
(1) 曲げ弾性率、曲げ強さ及び引張り強さ
下記表4〜11に記載される実施例1B、実施例2B、実施例8Bおよび比較例1B、比較例2B、比較例4B、比較例6B〜9Bの配合比に従って、重合体(B)および酸化ジルコニウムを内径2.5cm、深さ1cmのポリプロピレン製容器に秤量し、同じく下記表4〜11に記載される上記実施例および比較例の配合比に従い10mlガラス製サンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記プラスチック製容器に注入し、25℃で、ポリプロピレン製のヘラで20秒間混合した。得られた混合物を、図1に例示される様に、以下の手順に従って、直ちに型枠に充填し試料硬化物を作製した。ガラス板の上に、PE製ルミラー(商標)のシート、厚さ0.5mmのフッ素樹脂製型枠(型枠内の大きさ:縦25mm×横2mm)の順に重ねて置いた。この型枠内に作製した硬組織補修用組成物を充填した。充填の際には気泡が入らないよう注意して作業を行った。充填終了後、その上にさらにPE製ルミラー(商標)のシート、ガラス板の順に重ねて置き、外側の2枚のガラス板の4隅をクリップで固定した。その後、25℃(室温)で24時間静置した後、型枠から硬化体を取り出した。得られた硬化物の表面に凹凸がある場合には、耐水研磨紙#600で表面を研磨して凹凸を除去し、硬化体状硬化物を作製した。得られた硬化物の大きさは、縦25mm、横2mm、厚み0.5mmであった。
【0151】
調製して24時間後の上記硬化物の曲げ弾性率(試験速度2mm/分)、曲げ強さ(試験速度2mm/分)、引張り強さ(試験速度1mm/分)をオートグラフ(島津製作所社製EZ−S)により求めた。値は4回測定した平均値である。評価結果を表4〜11に示した。
【0152】
評価は、曲げ弾性率が1800MPa以上、曲げ強さが50MPa以上、引張り強さが30MPa以上を合格とした。なお、あまりにX線造影剤が均一に分散せず、均質な硬化物の試験片が得られなかった場合は測定不可とした。評価結果を表4〜11に示した。
【0153】
(2)圧縮強さの評価
図2に例示するように下記表4〜11に記載される実施例2B、実施例8B、および比較例1B、実施例2B、実施例6Bに記載される配合比に従って、重合体(B)および酸化ジルコニウムを内径2.5cm、深さ1cmのポリプロピレン製容器に秤量し、同じく下記表4〜11に記載される上記実施例および比較例の配合比に従い10mlガラス製サンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記プラスチック製容器に注入し、25℃で、ポリプロピレン製のヘラで20秒間混合した。ガラス板の上に、PE製ルミラー(商標)のシート、厚さ5mmのシリコン樹脂製型枠(型枠内の大きさ:縦10mm×横10mm)の順に重ねて置いた。この型枠内に作製した硬組織補修用組成物を充填した。充填の際には気泡が入らないよう注意して作業を行った。充填終了後、その上にさらにPE製ルミラー(商標)のシート、ガラス板の順に重ねて置き、最上部に200gの重りを乗せた。その後、25℃(室温)で24時間静置した後、型枠から硬化体を取り出し、硬化物を調整した。得られた硬化物の表面に凹凸がある場合には、耐水研磨紙#600で表面を研磨して凹凸を除去し、調整24時間後に精密万能材料試験機((株)インテスコ製2100型)にて、試験速度2mm/分、23±1℃で測定した。評価は、圧縮強度が70MPa以上を合格とした。なお、降伏点が確認されない場合は測定不可とした。評価結果を表4〜11に示した。
【0154】
(総合評価)
均一分散性が2以上、X線造影剤の均一分散性が1以上、初期粘度即ち、60秒後の粘度が10〜2,000,000cP以内、操作性3、機械物性合格の場合はAA、溶解性が1以上、溶解の均一性が1以上、60秒後の粘度が10〜2,000,000cP以内、操作性2以上、機械物性合格の場合はA、溶解性が1以上、溶解の均一性が1以上、60秒後の粘度が10〜2,000,000cP以内、操作性1以上、機械物性合格の場合はB、溶解性が0もしくは溶解の均一性が0、もしくは60秒後の粘度が10〜2,000,000cP以外、もしくは操作性0、もしくは機械物性不合格の場合はCとした。評価結果を表4〜11に示した。
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
【表6】
【0158】
【表7】
【0159】
【表8】
【0160】
【表9】
【0161】
【表10】
【0162】
【表11】
【符号の説明】
【0163】
11:ガラス板 12:ルミラー(商標) 13:フッ素樹脂型枠(中央の白色部分は縦25mm×横2mmの空間を示し、ここにモノマー液(A)、重合体(B)および重合開始剤組成物(C)の混合液を充填)
21:ガラス板 22:ルミラー(商標) 23:シリコン樹脂型枠(中央の白色部分は縦10mm×横10mm×厚さ5mmの空間を示し、ここにモノマー液(A)、重合体(B)および重合開始剤組成物(C)の混合液を充填)
図1
図2