特許第5916811号(P5916811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916811
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】安全装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 29/02 20060101AFI20160422BHJP
   A62B 35/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   A63B29/02 Z
   A62B35/00 J
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-157971(P2014-157971)
(22)【出願日】2014年8月1日
(62)【分割の表示】特願2012-520113(P2012-520113)の分割
【原出願日】2010年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-6399(P2015-6399A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2014年8月27日
(31)【優先権主張番号】MI2009A001259
(32)【優先日】2009年7月15日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512011059
【氏名又は名称】アルデザイン ソチエタ ペル アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】カルロ パリオーリ
【審査官】 青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04667772(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0245611(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/035138(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0026011(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 27/00−35/12
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラビナを用いてロープ(10)を制動するビレー器具であって、複数の固定手段(4)(5)(6)(7)により、互いに固定された2つの平らなプレート(2)(3)により形成された本体(1)を備え、
前記平らなプレート(2)(3)は、それらの間で前記器具の本体(1)内部に挿入された前記ロープ(10)の入口および出口となるように寸法決めされた開いている部分(11)を設けるために、間隔を隔てて配置され、
前記本体(1)は、前記プレート(2)(3)のそれぞれに設けられている開口(8)を備え、
前記開口(8)は、前記本体(1)に前記開口(8)を通る前記カラビナ(15)を取り付けるために設けられ、
前記開口(8)は、互いに一直線上に配置され、かつ、前記取り付けられたカラビナ(15)が、前記開口(8)に沿って、前記ロープ(10)が移動しうるようになっている非制動位置と、前記ロープ(10)の移動を阻害する制動位置との間を移動しうるようになっており、
前記開口(8)のそれぞれは、前記開いている部分(11)に対して遠位にある部分と、前記開いている部分(11)に対して近位にある部分とを備え、
前記開口(8)の前記近位にある部分は、前記ロープ(10)の移動を阻止するための前記制動位置に向かって前記カラビナ(15)を案内するように寸法決めされており、
それぞれの前記プレート(2)(3)の前記開いている部分(11)側の縁部が、ロープの端部(10a)との間に摩擦を生成するための溝(50)を含むように形成されており、前記ロープの端部(10a)は自由端であることを特徴とするビレー器具。
【請求項2】
ロープ(10)を制動するビレー器具であって、複数の固定手段(4)(5)(6)(7)により、互いに固定された2つの平らなプレート(2)(3)により形成された本体(1)を備え、前記ロープ(10)は、2つのプレート(2)(3)の間で器具の本体(1)の内側に挿入されて取り付けられ、ビレー器具は、さらに、単一のカラビナ(15)を備え、前記カラビナ(15)は、ビレーヤーであるユーザーに器具を拘束する、ビレー器具において、
前記本体(1)は、前記プレート(2)(3)のそれぞれに設けられている開口(8)を備え、前記開口(8)を通して器具の本体(1)に前記カラビナ(15)を取り付け、
前記単一のカラビナ(15)によってビレーヤーは拘束され、
前記開口(8)は、互いに一直線上に配置され、かつ、前記取り付けられたカラビナ(15)が、前記開口(8)に沿って、前記ロープが移動しうるようになっている非制動位置と、前記ロープ(10)の移動を阻害する制動位置との間を移動しうるようになっており、
前記カラビナ(15)の前記ロープ(10)の非制動位置から前記ロープ(10)の制動位置への移動は、前記ロープ(10)の張力によっておこり、
前記平らなプレート(2)(3)は、前記ロープ(10)の入口および出口となるように寸法決めされた開いている部分(11)を設けるために、間隔を隔てて配置され、
前記開口(8)のそれぞれは、前記開いている部分(11)に対して遠位にある部分と、前記開いている部分(11)に対して近位にある部分とを備え、
前記開口(8)の前記近位にある部分は、前記ロープ(10)の移動を阻止するための前記制動位置に向かって前記カラビナ(15)を案内するように寸法決めされており、
それぞれの前記プレート(2)(3)の前記開いている部分(11)側の縁部が、ロープの端部(10a)との間に摩擦を生成するための溝(50)を含むように形成されており、前記ロープの端部(10a)は自由端であることを特徴とするビレー器具。
【請求項3】
カラビナ(15)を補助し、必要とされる摩擦を生成する少なくとも1つのコントラスト要素(12)を備え、前記制動位置において、前記本体は、ロープ(10)の動きを制御するために、前記コントラスト要素(12)および前記カラビナ(15)によって前記ロープに与えられる摩擦を減少させるために手動により動かされる、請求項または記載のビレー器具。
【請求項4】
前記ロープの前記非制動位置から前記制動位置への、およびその逆、の前記カラビナ(15)の偶発的な(望ましくない)動きを防ぐ手段(13)を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のビレー器具。
【請求項5】
前記カラビナ(15)の偶然的な動きを防ぐ手段(13)は、可動レバー(13)とばねとを備え、前記レバーは、ばねにより、前記開口(8)の歯(20)に対して対置された位置に配置され、前記可動レバー(13)は、前記開口(8)の前記開いている部分(11)に対して遠位にある部分から前記開口(8)の前記開いている部分(11)に対して近位にある部分への、およびその逆の、前記カラビナ(15)の偶然的な動きを防ぐ、請求項4記載のビレー器具。
【請求項6】
少なくとも1つのコントラスト要素(12)を備え、前記カラビナ(15)がロープの前記制動位置の前記開口(8)の前記開いている部分(11)に対して近位にある部分に配置されているとき、前記ロープ(10)は、前記カラビナ(15)と前記コントラスト要素(12)との間に配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のビレー器具。
【請求項7】
前記少なくとも1つのコントラスト要素(12)には、溝(45)が設けられている、請求項6記載のビレー器具。
【請求項8】
請求項1記載のビレー器具を2つまたはそれ以上備え、前記プレートの少なくとも1つの近傍で互いに並んで拘束されることを特徴とするビレー器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身の内部を走行するロープを調節、制動するビレー器具に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、「ビレー器具」の語は、安全器具、主に登山用装置器具として用いられる安全器具を指すがこれに限られるものではなく、この器具により、第1のクライマーが、第2のクライマーを索止めに固定して安全確保をする(ビレーを与える)ために用いられるロープの調節、制動を行う。
【0003】
この器具は、登山の分野では「ビレー器具」として知られており、アウトドアの登山と練習用壁の双方に用いることができ、非常時には、クライマーの安全を確保することを可能にし、クライマーにビレーを与えるロープを調節、制動することにより、落下事故を防止することができる。
【0004】
実際、この器具は、「ビレーヤー」と呼ばれる地上の同行者が壁を登攀中の登山者にビレーを与えるために通常用いられ、登攀中に登山者がミスを犯して安全なつかみを失うような場合に、ビレー器具によりビレーされている登山者の自由落下を防止する。
【0005】
このテクニックは、「リードクライマーをビレーすること」として知られており、この場合、登攀中のリードクライマーは、援助され、ビレー器具によって地上の同行者、正確にはビレーヤーに(つながれて)ビレーされ、クライマーをつないでいる結束ロープを非常時に制止することができるようにし、クライマーは、少しずつ登っていく間に、登攀中の壁の上にある1つ以上のリングにロープを結ぶことができるようになる。
【0006】
さらに、非常の場合には特にビレーヤーが彼の役割を登攀中の壁上で実行できるよう、拘束ロープを制動するチャンスを利用する他のタイプのビレー器具が知られている。
【0007】
例えば、ビレー器具を、第2のクライマーをビレーするために用いてもよい。この場合には、登攀壁のリード・クライマーがビレーヤーとして、ビレー器具により、下から壁を攀じ登る第2のクライマーのロープを制御する。第2のクライマーが手を滑らせた際に、壁面の上のクライマーが、ビレー器具により、ロープを制動し、同僚の落下を防いでいる。
【0008】
更に、このような器具は、前に攀じ登った壁を降りる際にも使用される。実際、自身に装着された器具を持っているクライマーは、器具が備えている便利な手段やあるいは単に手動により、ビレー器具がロープにかける摩擦を変化させ、その内部を通るロープを制動し降下速度を調節することができるという、ビレー器具が有している能力を利用することができる。
【0009】
公知のビレー器具は、ロープに対する摩擦を増大させ、制動することにより、ロープの走行を制御するものである。走行を制御し、制動して、クライマーの落下を防いでいる。
【0010】
手動若しくは半自動のビレー器具も知られ、後者は、クライマーの落下によるロープの突然のテンションの後の緊急事態において、自動的に動いて、ロープを制動するものが知られている。
【0011】
反対に、手動の器具においては、落下の際に、壁面の同僚をビレーする装置を扱う人は、ロープの走行を制動する位置で、ロープを手で動かさなくてはならない。
【0012】
例えば、アルデシン・ソチエタ・ペル・アツィオーニ(Aludesign SpA)により販売されているビレー器具「ダブル・ヴイ・ロー」(DOBLE V-ROW)はスパウトよりなり、クライマーが落下した際に、ロープが通過するハウジングを備えている。特殊なハウジングの形状は、ロープに摩擦を与え、落下者の安全確保に必要な手の力に限界を与える。
【0013】
手動のビレー器具は安価であるが、安全確保レベルと制動の効率を、器具を取り扱うビレーヤーの経験と熟練に頼っている。更に、ロープが固定位置に到達した後に、使用者は、ロープを手でしっかりと抑え、ハウジングから飛び出さないようにしなくてはならない。
【0014】
半自動の自動制動ビレー器具としては、ペツル・カンパニー(Petzl company)で販売されているグリグリ(GRI-GRI)がある。
【0015】
このような器具は、偏心カムを備え、その周囲に牽引ロープが巻かれている。このカムは、回転可能で、緊急の場合、即ち、ビレーされるクライマーが落下した時、牽引ロープがカムの回転を、ブロック位置で止めるようになっている。この位置で、カムにより、カム自体と固定面の間で牽引ロープを締めるようになっている。グリグリは、ハンドルを備え、ロープがブロック位置に達した時に、ブレーキの程度を調節して、カムを若干、反対方向に回して、ロープを緩めるようになっている。ハンドルを操作して、例えば、クライマーが下る際の降下器具として用いると、部分的にロープを制動して、降下速度を調節する。
【0016】
このような半自動式のビレー器具は、手動式のものよりも安全性にすぐれ、落下するクライマーの体重により牽引ロープにテンションがかかると、ロープを自動的に制動するようになっている。
【0017】
手動と自動の両方の器具において、効果的な作動を保証するために、クライマーをビレーするビレーヤーは、ロープを所定の位置に保持しなくてはならない。
【0018】
器具に出入りするロープの両端は、ロープを制動位置に置く時に生ずる問題のすべてを解消するように、器具自体に対して、正確な位置に保持されなくてはならない。
【0019】
自動式のビレー器具は、ロープを部分的に解放する際に、ハンドルの操作において、信頼を置けないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、あらゆる条件で用いる場合に拘束ロープを制動する点で高い信頼度を保証し、一方で大きさ及び重量が調節されたビレー器具を提供することにある。
【0021】
とりわけ、本発明にしたがったビレー器具は、マニュアル制動または自己制動タイプであり、ビレーされたクライマーの落下に起因する突然の張力増加の後、ロープの自動制動(ブロッキング)を可能にし、この場合、ユーザー(ビレーヤー)は、ロープの自由端を片方の手で保持している。
【0022】
さらに、本発明の目的は、半自動式の器具の欠点を解消して、ロープの制動において、また、それに続くロープの部分的な解放の際、例えば、クライマーの方へロープを伸ばしたり、クライマーが降下する際に、安全性と信頼性を高めたビレー器具を提供することにある。
【0023】
さらに、本発明の目的は、ビレーヤーが誤って、ロープを不適切に挿入した時にも、ロープを的確に制動するビレー器具を提供することにある。
【0024】
さらに、本発明の目的は、ロープを制動しうるビレー器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明による、ロープをブロックするビレー器具は、好ましくは4つのスペースピンから成る複数の拘束手段の手段により、好ましくは2つの平行な平面で互いに拘束された2つの平らなプレートによって形成された本体を備える。
【0026】
ロープは、さらにカラビナを備える器具本体の内部に挿入され、カラビナは、器具本体の開口を通して本体に取り付けられている。
【0027】
カラビナにより、ビレー器具がユーザーに拘束され、カラビナは、通常の使用状態であるロープの非ブロック位置と、ロープがブロックされる非常位置との間、およびその逆、で動くことができる。
【0028】
開口アウトラインは、少なくとも1つの突出歯により、第1開口部と第2開口部とに分けられ、カラビナが第1部分に配置されているときは、器具はロープの非ブロック位置にあり、一方カラビナが第2部分に配置されているときは、器具はロープがブロックされる非常位置にある。
【0029】
器具は、開口に沿ったカラビナの偶然的な動きを防止する手段も備え、この手段は、好ましくは可動レバーを含み、可動レバーは、ばねにより、開口アウトラインに設けられた歯に対して対置された位置に配置される。このため、可動レバーは、開口の第1部分から開口の第2部分への、およびその逆の、偶然的な動きを防止する。
【0030】
非常位置においてロープをブロックするため、器具は、少なくとも1つのコントラスト要素を備え、コントラスト要素は、カラビナを補助し、必要とされる摩擦を生成する。
【0031】
実際、カラビナが第2開口部に配置されているとき、ロープは、カラビナとコントラスト要素との間の摩擦により、ブロックされる。
【0032】
器具本体を定めるプレートの開口アウトラインの特有の形状、特に突出歯があることにより、通常の動作の間、全く偶発的で望まれない仕方で、器具が、ロープのブロック位置、すなわち非常位置に到達するのが防止される。
【0033】
実際、器具に設けられた可動レバーにより、カラビナの開口に沿った動きが防止され、
ロープの非ブロック位置から、ロープがブロックされる非常位置への、およびその逆の、偶発的通過のリスクが除かれる。
【0034】
さらに、言及したように、本ビレー器具は、ディセンダーとしても働き、この使用方法においても、高い信頼性と安全性とを保証する。
【0035】
従来の自動ビレー器具とは異なり、例えば壁を降りる間ロープのブロックを制御するよう設計された、ハンドルまたは同様の手段は存在しない。実際、ロープの部分的な解放は、手で器具本体を動かすことによってのみ生じ、従って、例えばハンドルにおける作動上の問題が避けられる。
【0036】
本発明のさらなる特徴および利点は、説明のため付した図を引用した以下の記載により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明によるビレー器具の斜視図を示す。
図2】本発明によるビレー器具の内部への抑えロープの挿入を示す。
図3】本発明によるビレー器具へのカラビナの取り付けを示す。
図4】抑えロープの非ブロック位置における本発明によるビレー器具の斜視図を示す。
図5】抑えロープの非常位置、すなわちブロック位置における本発明によるビレー器具の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に示されるように、図示された好適な実施形態のビレー器具は、本体1を備え、本体1は、複数の拘束手段4〜7により互いに拘束される2つの平らなプレート2、3から成る。
【0039】
より詳細には、平らなプレート2、3は、互いに同様であり、高い機械的特性を有する軽量の金属材料から成る。
【0040】
プレートは、器具の内部を通るロープが取り付けられるスペースが間に設けられるように、互いに拘束されている。
【0041】
図示される形態では、プレートは、対向し対応する位置で拘束されている。すなわち、金属材料から成るスペースピン4〜7により、好ましくは平行の2つの平面を形成するようになっている。本発明によるビレー器具を示す図1に見られるように、器具の本体には、特定のアウトラインを定めるように形成された開口8が設けられ、後によりよく記載されるように、器具は、ロープが自由に動くロープの第1非ブロック位置と、第2ブロック位置、すなわち非常位置に達する。
【0042】
2つのプレート2、3の両方における開口アウトライン8には、歯20で定義される突出領域が設けられている。歯20は、開口8を2つの連続する部分21、22に分け、第1部分21は、歯20の下方にあり、第2部分22は、歯20の上方にある。
【0043】
2つのプレートは、互いに拘束され、器具の本体1を定め、器具は、プラスチックカバー部分9により、側面に沿って部分的に閉じられている。プラスチックカバー部分9は、2つのプレート間のスペースをカバーできるように、器具本体の側面に収まるよう都合よく形成されている。
【0044】
図1に見られるように、器具の側面の部分11は開いており、抑えロープ10が、2つのプレート2、3間のスペースにおいて器具本体に挿入され得るようになっている。
【0045】
図2は、ロープ10の器具への挿入動作を示している。特に、器具本体の外側側面の開いている部分11を通して、図3に示されるように器具本体の下部分に到達するまで挿入するため、抑えロープは“U”状に折られている。
【0046】
端部10a、すなわちピン4を通る端部は、結び付けられるクライマーに拘束され、一方、ピン5、6を通る端部10bは、クライマーが壁を登る間、器具中に少しずつ動くロープの自由端に対応するように、ロープ10は、器具に正確に挿入されなければならない。
【0047】
本発明によるビレー器具の正しい操作は、カラビナ15、または同等のコネクタを使用する。カラビナ15、または同等のコネクタは、先の図2に関しての記載のように抑えロープが挿入された後、器具に取り付けられる。
【0048】
図3に示されるように、従来のタイプのカラビナ15は、器具の本体1に取り付けられ、開いているカラビナが、器具本体の両方の開口8を通じて、器具を通過している。
【0049】
カラビナ15は、器具と協働してロープのブロッキングを実行することに加えて、器具を、落下の場合に第2クライマーをビレーするユーザー(ビレーヤー)に拘束するという、2つの機能を奏する。
【0050】
言い換えると、本発明による器具を、仲間をビレーするユーザーに拘束するのに、追加のカラビナ、または同等の手段は不必要である。
【0051】
器具の作動の記述により後に特に明らかになるように、開口8の中を通ることにより器具に取り付けられたカラビナ15は、第1部分21と第2部分22との間、およびその逆、で開口の内部を動くことができる。カラビナが、図4に示される開口8の第1部分21にあるとき、器具は、ロープのブロック位置にあり、言い換えると、ロープが器具の本体内部を自由に動く通常の使用位置にある。
【0052】
カラビナが、図5に示される位置である、開口8の第2部分22にあるとき、器具は非常位置にあり、ロープは、動かないようにブロックされる。
【0053】
ビレー器具は、ユーザーが、緩んだロープ、すなわちロープの自由端を片手につかんでさえいれば、半自動タイプである。ビレーされたクライマーが落下した場合、ユーザー(ビレーヤー)は、片手にロープの自由端をつかみ、カラビナ15は、自動的にブロック位置にスナップされる。実際、落下の場合、ロープ10aに関わる端部は、張力を受け、カラビナに張力が加わり、開口8に沿った第1部分から第2部分への動きが引き起こされる。カラビナが第2部分にあるとき、器具は非常位置にあり、ロープのさらなる動きが避けられる。
【0054】
ビレー器具の本体1の内部、すなわち2つのプレート2、3によって定められる空間の内部は、コントラスト要素12と、カラビナ15の偶然的変位を防ぐ手段とが配置される。カラビナ15の偶然的変位を防ぐ手段は、ロープの非ブロック位置から非常位置への、およびその逆の、偶然的変位を防ぐ。
【0055】
コントラスト要素12は、ピン5、6で固定されて拘束され、ビレーされたクライマーの落下と、ユーザー(ビレーヤー)がロープの10aの自由端をつかんだこととにより引き起こされた、ロープの伸長に続いて、カラビナ15が開口8の第2部分22に配置されたときに、カラビナ15と協働し、ロープのブロッキングを定める要素を構成する。図1に示されるように、コントラスト要素12には、ロープに生成される摩擦を向上させてブロッキングをより効率的にするために、ロープとの接触面にV字状の溝45、または同等の手段が設けられている。
【0056】
特に図5に示されるように、器具がロープ10のブロック位置にあるとき、ロープは、コントラスト要素12と、開口8の第2部分22に配置されたカラビナ15との間に、挟まれている。ロープの動きはカラビナ15の摩擦によりブロックされ、カラビナ15は、ロープ10の張力効果の下で、コントラスト要素12に押し付けられている。
【0057】
カラビナ15の偶然的変位を防ぐ手段は、コントラスト要素12の端部分に回動可能に拘束された可動レバー13を含む。より詳細には、レバーは、図示されないばねによって、コントラスト要素12に拘束される。
【0058】
ばねは、可動レバーが開口8の歯20に対して対置された位置に配置されるように、負荷が与えられる。
【0059】
つまり、ばねの前負荷は、レバー13が器具の中央部分に向かって配置されるように、レバー13の回転を定める。
【0060】
レバーは、カラビナ15の、開口8の第1部分から第2部分への動き、およびその逆の動きを防ぎ、ロープのみ、またはカラビナにのみ作用する。
【0061】
実際、器具がロープ10の非ブロック位置にあり、カラビナ15が開口8の第1部分にあるとき(図4で示される位置)、可動レバー13は、カラビナ15が歯20の下に留まり、開口8に沿った動きが防がれるように、ばねの前負荷により、ロープ10cの部分、そしてカラビナ15に押し付けられる。
【0062】
そうすることにより、拘束器具を携える人は、カラビナ15が誤って第2部分22内に動き、ロープのブロック位置へ望ましくなく到達するというリスクを伴わずに、ロープを器具の内部で動いた状態にし得る。
【0063】
ばねの前負荷は、通常の使用状態では、カラビナ15の偶然的変位を防ぐことができるほどである。
【0064】
緊急状態では、張力のかかったロープ10によりカラビナ15に加わる力は、ばねの前負荷によりもたらされるコントラストに打ち勝つことができ、可動レバー13を動かし、カラビナ15は、第2部分22のロープのロック位置に到達するまで(図5)、開口8に沿って動く。
【0065】
カラビナが、ロープのブロッキングを定める第2部分22に到達すると、可動レバー13は、開口8の歯20に対置される位置に、自由に戻ることができる。従って、器具をロープのブロック位置に戻すことが必要なときは、ユーザーは、カラビナ15を、開口8に沿って第1部分から第2部分に動かして、器具を手動で配置しなければならない。
【0066】
その操作を行うために、一時的な動きを引き起こして歯20においてカラビナ15が通過するように、可動レバーのばねの前負荷に打ち勝つ力が与えられる必要がある。カラビナ15がロープの非ブロック位置の第1部分に戻ると、新しい使用ステップの間、カラビナのブロック位置への偶然的変位を防止するため、レバーは、歯20に対置された位置に戻る。
【0067】
図2、3に関して先に記載したように、ロープ10は、器具の内部に正確に挿入されなければならない。ロープが誤って間違った方向で挿入された場合、すなわちピン5、6で通る端部10bがビレーされるクライマーに拘束され、端部10aが自由であるとき、本発明によるビレー器具は、ロープのブロッキングと、ビレーされたクライマーの落下を防ぐことを、保証することができる。
【0068】
実際、図に示されるように、ピン4において、プレート2、3の上部分は、ロープが器具の内部に間違った方向で挿入された場合におけるロープブロッキングを確実にするため、それぞれに溝50を備えるように形成されている。
【0069】
ビレーされたクライマーが落下した場合、不正確に拘束された端部10bは、張力がかかるが、器具は、間違った方法で使用され、非常位置にスナップせず、すなわちロープブロッキングをする摩擦を生じさせることはできない。
【0070】
ロープの自由端10aは、落下したクライマーの重さにより生じる張力の影響下で、独自に、または仲間をビレーするユーザーにより強制的に、2つの溝50のうちの1つの内部を通るように配置され、ロープに摩擦が生じ、従ってブロッキングが引き起こされる。溝50は、ロープの端部10aがその内側に配置され、そこでのブロッキングを定めるのに十分な摩擦を与えるように、都合よく成形される。
【0071】
溝50は、器具の間違った使用状態でのロープのブロッキングを保証するよう定められる必要はあるが、ピン4を通るロープの端部10aがビレーされるクライマーに拘束される端部であるという、図に示される状況より好ましくはない。
【0072】
本発明によるビレー器具の操作ステップは、説明のため、ロープでつながれたパーティーの第1クライマーをビレーする場合について記載される。先に記載したように、この技術は、地上にいる人、または壁を登る人が、カラビナ15により拘束された器具を有し、壁を登る第1クライマーをビレーすることを想定している。
【0073】
最初に、先に図2、3に関して記載したように、地上にいる人が、器具にロープを挿入し、開口8を通してカラビナ15を取り付ける必要がある。
【0074】
その後、地上にいる人が、ハーネス、または登山用具で通常用いられる特有のベルトに、カラビナ15を取り付けることにより、非ブロック位置で器具を自身に拘束する。
【0075】
地上にいる人の役割は、クライマーが登るときに、器具の内部で抑えロープを少しずつ動いたままにすることであり、言い換えれば、端部10aに拘束されたクライマーに提供するために、自由なロープ10bを器具の内部で動かすことである。
【0076】
地上にいる人は、周知の方法を用いてクライマーにロープを提供し、ビレー器具を片手に持たずに、自由端10bとビレーされたクライマーにより占められた端部10aのそれぞれのロープの部分を器具の上方および下方に制御するために手を使う。
【0077】
緊急事態、すなわちビレーされたクライマーが落下した場合、地上にいる人は、緩んだロープ、すなわちロープ10bの自由端をつかみ、器具は、張力のかかったロープによってカラビナに与えられた力による、開口8に沿った器具15の動きにより、ロープのブロック位置に自動的に動く。
【0078】
実際、クライマーがつかまるところを失って落下したとき、クライマーの重さにより、ロープ10aの占められた端部は張力を受ける。
【0079】
張力下のロープにより与えられる力は、可動レバー13のばねの対抗力に打ち勝つほどであり、カラビナ15がロープのブロック位置の第2部分に入る。特に、ロープは、コントラスト要素12とカラビナ15との間で、挟まれる。
【0080】
そうすることにより、ロープは、まずコントラスト要素12とカラビナ15との間の摩擦によりブロックされる。
【0081】
非常位置では、ロープの部分的な解放のため、カラビナ15とコントラスト要素12との間の摩擦は、減少される。このような操作を行うために、従来の器具においては使用される、ハンドルや同様の手段は、不必要である。
【0082】
ユーザーは、プラスチック材料9の部分の溝30において手動で、図5の矢印Fで示されるように、器具の本体1を動かす。
【0083】
溝30は、つかみを補助する必要があることに注意されるべきである。しかしながら、器具がブロック位置にあるときにロープの摩擦を減少させるためには、器具本体を、実質的に矢印Fで示される方向、またはコントラスト要素12とカラビナ15との間に配置されたロープに生成される摩擦を制限するように、手動で動かせば十分である。溝30において手動で押すことにより、ロープ10bの自由端に向かう回転が実質的に定められ(図5)、コントラスト要素12とカラビナ15とによる、ロープに与えられる摩擦の減少が引き起こされる。
【0084】
器具がブロック位置にあるときのロープの動きの制御は、例えば、つかまるところを新たにつかんだ後の落下したクライマーに、ロープを提供することが望まれる場合や、器具がディセンダーとして使用される場合に、行われる。
【0085】
器具本体に対するユーザーの手動による作動は、実際、カラビナ15に対する、拘束されたコントラスト要素12の動きを引き起こし、一方、実質的に静止していれば、ロープの張力の影響を受ける。そして、カラビナ15に対してのコントラスト要素12の回転は、ロープに与えられる摩擦を変化させ、従って動きがもたらされる。
【0086】
ユーザーによる器具本体の動きによって、制御されたロープの動きを得ることができる。
【0087】
明らかに、本発明によれば、1つのプレートにおいて並んで配置されるように、追加の器具を拘束できる。
【符号の説明】
【0088】
1 本体
2,3 プレート
4,5,6,7 拘束手段
8 開口
9 プラスチック材料
10 ロープ
10a 端部
10b 自由端
11 開いている部分
12 コントラスト要素
13 可動レバー
15 カラビナ
20 歯
21 第1部分
22 第2部分
30,50 溝
図1
図2
図3
図4
図5