特許第5916818号(P5916818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5916818チップ間の無線電力伝送のためのアンテナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916818
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】チップ間の無線電力伝送のためのアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
   H01F38/14
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-170307(P2014-170307)
(22)【出願日】2014年8月25日
(65)【公開番号】特開2015-43426(P2015-43426A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2014年8月25日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0101079
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513192683
【氏名又は名称】スンシル ユニバーシティー リサーチ コンソルティウム テクノ−パーク
【氏名又は名称原語表記】SOONGSIL UNIVERSITY RESEARCH CONSORTIUM TECHNO−PARK
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク チャン グン
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0289772(US,A1)
【文献】 特開2005−228981(JP,A)
【文献】 特開2013−021245(JP,A)
【文献】 特開2012−190882(JP,A)
【文献】 特開2013−141362(JP,A)
【文献】 特開昭61−119012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H02J 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元無線チップパッケージに含まれた受信アンテナにおいて、
前記3次元無線チップパッケージは、
送信アンテナを通じて交流電力を伝送する第1チップと、前記第1チップの上面または下面に順に積層されて、それぞれの前記受信アンテナを通じて前記第1チップから前記交流電力を受信する複数の第2チップと、を含み、
前記それぞれの受信アンテナは、
前記複数の第2チップに個別形成されるが、前記送信アンテナの上部または下部で互いに上下方向に重畳されない位置に区画されて形成されている3次元無線チップパッケージに含まれた受信アンテナ。
【請求項2】
前記それぞれの受信アンテナは、
前記送信アンテナとの離隔距離によって異なるサイズに形成された請求項1に記載の3次元無線チップパッケージに含まれた受信アンテナ。
【請求項3】
前記それぞれの受信アンテナは、
前記送信アンテナとの離隔距離が大きいほど大きなサイズに形成された請求項2に記載の3次元無線チップパッケージに含まれた受信アンテナ。
【請求項4】
前記それぞれの受信アンテナは、
前記送信アンテナとの離隔距離の二乗に比例するサイズに形成された請求項3に記載の3次元無線チップパッケージに含まれた受信アンテナ。
【請求項5】
前記それぞれの受信アンテナのサイズの和は、
前記送信アンテナのサイズと同一である請求項3に記載の3次元無線チップパッケージに含まれた受信アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ間の無線電力伝送のためのアンテナに係り、より詳細には、3次元無線チップパッケージでチップ間の無線電力伝送のためのアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、集積回路設計時に設計面積を減らすために、複数のチップを積層する技術が研究されている。そのうち、最近代表的に使われているTSV(Through Silicon Via)技術の場合、半導体基板材料であるシリコンに垂直に貫通する電極を形成し、これを通じて積層されたチップ間の信号伝達経路を提供する。
【0003】
TSV積層技術は、積層されるチップで電気接続のためのパッドが外部に露出されず、チップ間のパッドがビア(via)及びバンプ(bump)を通じて互いに連結されるので、ボンディングワイヤが除去され、PCB(Printed Circuit Board)のパターニングされた金属線が除去されうる。結果的に、TSV積層技術は、ボンディングワイヤ及びPCB金属線による寄生成分を除去し、チップ間の高速通信を行う長所がある。
【0004】
しかし、このようなTSV積層技術は、チップに物理的な穴を形成し、これを金属性物質で充填してビアを形成することによって、追加的な半導体工程による研究開発コストと、商用化コストとが増加する問題点がある。また、このように形成されたビアは、クラック(Crack)のような問題点によって収率を高めるための多くの努力が要求される短所がある。結局、TSV積層技術は、生産コストの上昇をもたらす。
【0005】
このような問題点を改善するために、最近、チップ間の無線通信技術が研究されている。チップ間の無線通信技術は、チップ間の通信を無線で行うので、TSV技術のように、チップを貫通するビアを形成する必要がないという長所がある。
【0006】
図1は、従来のチップ間の無線通信技術の概念図である。図1を参照すれば、積層構造で形成されたチップ間の無線電力伝送のために、それぞれのチップは、アンテナを備えている。図1の場合、各チップのアンテナを磁気的結合(Inductive Coupling)を誘導するインダクタで構成した例である。
【0007】
ここで、最上層または最下層チップに含まれたアンテナは、残りの層のチップに含まれたアンテナ側に電力を無線伝送しうる。ところが、チップ間の上下積層構造によれば、送信側アンテナから受信側アンテナまでの距離がいずれも異なる。それによれば、各層別に送信側アンテナとの距離による伝送効率の偏差が発生する問題点がある。
【0008】
本発明の背景となる技術は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2012−0040779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、3次元無線チップパッケージでアンテナの構造を改善して、チップ間の無線電力伝送の効率を高めうるチップ間の無線電力伝送のためのアンテナを提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、3次元無線チップパッケージでチップ間の無線電力伝送のためのアンテナにおいて、前記3次元無線チップパッケージは、送信アンテナを通じて交流電力を伝送する第1チップと、前記第1チップの上面または下面に順に積層されて、それぞれの受信アンテナを通じて前記第1チップから前記交流電力を受信する複数の第2チップと、を含み、前記それぞれの受信アンテナは、前記複数の第2チップに個別形成されるが、前記送信アンテナの上部または下部で互いに上下方向に重畳されない位置に区画されて形成されているチップ間の無線電力伝送のためのアンテナを提供する。
【0012】
ここで、前記それぞれの受信アンテナは、前記送信アンテナとの離隔距離によって異なるサイズに形成されうる。
【0013】
また、前記それぞれの受信アンテナは、前記送信アンテナとの離隔距離が大きいほど大きなサイズに形成されうる。
【0014】
ここで、前記それぞれの受信アンテナは、前記送信アンテナとの離隔距離の二乗に比例するサイズに形成されうる。
【0015】
また、前記それぞれの受信アンテナのサイズの和は、前記送信アンテナのサイズと同一であり得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるチップ間の無線電力伝送のためのアンテナによれば、無線電力を受信するチップ上に形成されるアンテナを上下方向に互いに重畳されない位置に形成することによって、チップ間の無線電力伝送の効率を高めうる利点がある。また、それぞれの受信チップ上のアンテナを、送信チップ上のアンテナとの離隔距離によって異なるサイズに形成することによって、チップ間の距離による受信電力の不均衡問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来のチップ間の無線通信技術の概念図である。
図2】本発明の第1実施形態によるチップ間の無線電力伝送のためのアンテナの構成図である。
図3図2に示された電気的結合によるアンテナを磁気的結合によるアンテナに代替した場合の実施形態である。
図4】本発明の第2実施形態によるチップ間の無線電力伝送のためのアンテナの構成図である。
図5】本発明の第2実施形態によるチップ間の無線電力伝送のためのアンテナの他の例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態について当業者が容易に実施できるように詳しく説明する。
【0019】
本発明は、3次元無線チップパッケージでチップ間の無線電力伝送のためのアンテナに関するものである。3次元無線チップパッケージは、送信アンテナを通じて交流電力を伝送する第1チップと、その第1チップの上面または下面に順に積層されて、それぞれの受信アンテナを通じて第1チップから交流電力を受信する複数の第2チップと、を含む。
【0020】
本発明の実施形態は、前記第1チップのアンテナから電力を無線受信する前記複数の第2チップ上のアンテナの構造を改善することによって、無線電力伝送の効率を高める。
【0021】
以下、説明の便宜上、第1チップの下部に複数の第2チップが積層された形態の3次元無線チップパッケージを例示とする。また、それぞれのチップに含まれた送信アンテナ及び受信アンテナの形状を図示して、本発明の実施形態を説明する。もちろん、本発明の実施形態は、第1チップの上部に複数の第2チップが積層された構造の場合にも適用が可能である。
【0022】
図2は、本発明の第1実施形態によるチップ間の無線電力伝送のためのアンテナの構成図である。図2には、第1チップに形成されるアンテナA1である送信アンテナ100と、第1チップ下部の3個の第2チップにそれぞれ形成されるアンテナB1〜B3である受信アンテナ210、220、230と、を図示している。ここで、もちろん、アンテナ間の間隔は、チップ間の間隔に対応する。
【0023】
図2は、送信アンテナ100と受信アンテナ210、220、230とが互いに電気的結合によって電力を無線送受信する例であって、それぞれのアンテナは、キャパシタの形態に形成されている。これは、互いに離隔したそれぞれのアンテナを金属板で構成したものに従う。
【0024】
ここで、電力を無線受信するそれぞれの第2チップは、第1チップとの距離によって電気的結合力に相対的な差が発生する。このような問題点を補完するために、図2は、送信アンテナ100との距離によって受信アンテナ210、220、230のサイズを異ならせている。すなわち、送信アンテナ100と遠くある受信アンテナであるほど大きなサイズに形成されている。その原理をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0025】
まず、送信アンテナ100と第1受信アンテナ210は、平行な金属板が互いに対向している形態であって、送信アンテナ100による金属板及び第1受信アンテナ210による金属板の間には、キャパシタンス成分が存在する。
【0026】
また、送信アンテナ100による金属板と第2受信アンテナ220による金属板との間にも、寄生キャパシタンス成分が存在する。しかし、この場合、第2受信アンテナ220は、第1受信アンテナ210に比べて、相対的に送信アンテナ100と遠い距離に位置していて、電気的結合が弱くなる恐れがある。それを補完するために、第2受信アンテナ220による金属板サイズを第1受信アンテナ210による金属板サイズよりも大きく形成する。このような原理で、送信アンテナ100と最も遠い距離に位置している第3受信アンテナ230とによる金属板は、第2受信アンテナ220による金属板よりも大きく形成する。このような構成によれば、送信アンテナとの距離による各受信チップでの電力受信率を比較的均一に調節することができる。
【0027】
以上のように、送信アンテナとの距離によって受信アンテナのサイズに変更を加える構成は、前記第1実施形態のような電気的結合によるアンテナ構成以外にも、磁気的結合によるアンテナの構成でも、同じ原理で適用が可能である。
【0028】
図3は、図2の電気的結合によるアンテナを磁気的結合によるアンテナに代替した場合の実施形態である。磁気的結合を利用する場合には、図2の送受信アンテナをいずれも螺旋状のインダクタ形態で具現すれば良い。
【0029】
図3には、第1チップに形成されるアンテナa1である送信アンテナ10と、第1チップ下部の3個の第2チップにそれぞれ形成されるアンテナb1〜b3である受信アンテナ20、30、40と、を図示している。この際、送信アンテナと遠い距離に位置した受信アンテナであるほどインダクタのサイズを増加させる。インダクタのサイズは、インダクタの巻回数、金属線の厚さ、線間間隔などを調節することによって可能である。
【0030】
図4は、本発明の第2実施形態によるチップ間の無線電力伝送のためのアンテナの構成図である。図4には、第1チップに形成されるアンテナC1である送信アンテナ101と、第1チップ下部の4個の第2チップにそれぞれ形成されるアンテナD1〜D4である受信アンテナ211、221、231、241と、を図示している。このような図4も、アンテナがキャパシタ形態に形成されて、互いに電気的結合によって無線電力を送受信する例である。
【0031】
ここで、前記それぞれの受信アンテナ211、221、231、241は、前記4個の第2チップに個別形成されるが、送信アンテナ101の下部で互いに上下方向に重畳されない位置に区画されて形成されている。それによれば、受信アンテナによる送信アンテナの遮蔽現象が発生しなくて、あらゆる受信アンテナ211、221、231、241が送信アンテナ101と直接対向するように配され、結果的に、無線電力伝送の効率を高めうる。
【0032】
ここで、無線電力を受信するそれぞれの第2チップは、第1チップとの距離によって電気的結合に相対的な差が発生する恐れがある。それを補完するために、本実施形態では、送信アンテナとの距離によって受信アンテナのサイズを異なるサイズに形成する。
【0033】
図5は、本発明の第2実施形態によるチップ間の無線電力伝送のためのアンテナの他の例を示す。図5の場合、第1チップに形成されるアンテナC1´である送信アンテナ102と、第1チップ下部の3個の第2チップにそれぞれ形成されるアンテナD1´〜D3´である受信アンテナ212、222、232と、を図示している。
【0034】
このような図5の場合は、図4のような原理で受信アンテナ212、222、232が送信アンテナ102の下部で互いに重畳されない位置に形成されているが、送信アンテナ102との距離によって受信アンテナ212、222、232のサイズを異なるように適用したものである。
【0035】
すなわち、それぞれの受信アンテナ212、222、232は、送信アンテナ102との離隔距離が大きいほど大きなサイズに形成されている。この際、それぞれの受信アンテナ212、222、232は、送信アンテナ102との離隔距離の二乗に比例するサイズに形成されうる。これは、一般的に無線信号の到達強度が距離の二乗に反比例するものを利用したものである。
【0036】
このような構成によれば、前記第1実施形態のように、各チップでの送信アンテナと受信アンテナとの間の電気的結合力が送受信アンテナ間の距離によって変わる問題を解決し、各チップに対する電力受信効率を均一に調節することができる。
【0037】
そして、図4及び図5の実施形態において、各受信アンテナのサイズの和は、前記送信アンテナのサイズと同一であることが分かる。それによれば、あらゆる受信アンテナは、相互干渉されずに送信アンテナと対向するように構成することができる。また、送信アンテナサイズの限度内で送信アンテナとの距離による個別受信アンテナサイズを調節することができて、結果的に、無線電力送受信の効率を高めうる。
【0038】
以上のような本発明によるチップ間の無線電力伝送のためのアンテナによれば、無線電力を受信するチップ上に形成されるアンテナを上下方向に互いに重畳されない位置に形成して、チップ間の無線電力伝送の効率を高めうる利点がある。また、付加的に送信チップ上のアンテナとの距離に対応して、受信チップ上のアンテナのサイズを異ならせて、チップ間の距離による受信電力の不均衡問題を解決することができる。
【0039】
本発明は、図面に示された実施形態を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、チップ間の無線電力伝送のためのアンテナに利用されうる。
図1
図2
図3
図4
図5