【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によるコンロッドは、チタン合金から形成され、ロッド本体部と、前記ロッド本体部の一端に設けられた小端部と、前記ロッド本体部の他端に設けられた大端部と、を備えたコンロッドであって、少なくとも前記小端部の内周面に形成された窒化クロム層をさらに備える。
【0010】
ある実施形態では、前記窒化クロム層は、前記大端部の内周面にも形成されている。
【0011】
ある実施形態では、前記窒化クロム層は、前記大端部のスラスト面にも形成されている。
【0012】
ある実施形態では、前記小端部の内周面に形成された前記窒化クロム層は、前記コンロッドの長手方向において相対的に厚く、前記コンロッドの幅方向において相対的に薄い厚さ分布を有する。
【0013】
ある実施形態では、前記チタン合金は、Ti−5Al−1Fe合金である。
【0014】
本発明の実施形態による内燃機関は、上述した構成を有するコンロッドを備える。
【0015】
ある実施形態では、上述した構成を有する内燃機関は、前記コンロッドの前記小端部のピストンピン孔に挿入されたピストンピンであって、表面にダイヤモンドライクカーボン膜を有するピストンピンをさらに備える。
【0016】
本発明の実施形態による自動車両は、上述した構成を有する内燃機関を備える。
【0017】
本発明の実施形態によるコンロッドの製造方法は、ロッド本体部、前記ロッド本体部の一端に設けられた小端部および前記ロッド本体部の他端に設けられた大端部を備えたコンロッドをチタン合金から形成する工程(a)と、少なくとも前記小端部の内周面に窒化クロム層を形成する工程(b)と、を包含する。
【0018】
ある実施形態では、前記工程(b)において、前記窒化クロム層は、前記大端部の内周面にも形成される。
【0019】
ある実施形態では、前記工程(a)は、前記大端部の内周面に対して切削加工を行うことによって、前記大端部の内周面の十点平均粗さRzを6.3μm以下にする工程(c)を含む。
【0020】
ある実施形態では、前記工程(b)において、前記窒化クロム層は、前記大端部のスラスト面にも形成される。
【0021】
ある実施形態では、前記工程(b)において、前記窒化クロム層は、前記コンロッドの長手方向において相対的に厚く、前記コンロッドの幅方向において相対的に薄い厚さ分布を有するように、前記小端部の内周面に形成される。
【0022】
ある実施形態では、前記工程(a)は、チタン合金を鍛造により成形する工程(d)を含む。
【0023】
ある実施形態では、前記工程(a)は、前記工程(d)後に焼鈍処理を行う工程(e)を含む。
【0024】
ある実施形態では、前記工程(a)は、前記工程(d)後に、チタン合金の表面に生成したαケースをショットピーニングにより除去する工程(f)を含む。
【0025】
ある実施形態では、前記工程(b)は、前記コンロッドの表面の一部が鍛造肌のままの状態で実行される。
【0026】
ある実施形態では、前記コンロッドの前記大端部は、前記ロッド本体部の前記他端に連続するロッド部と、前記ロッド部に結合されるキャップ部とに分割されており、前記工程(b)は、前記キャップ部がボルトによって前記ロッド部に結合された状態で実行される。
【0027】
本発明の実施形態によるコンロッドでは、少なくとも小端部の内周面に窒化クロム層が形成されているので、小端部の耐焼き付き性を向上させることができる。そのため、小端部の内周面とピストンピンとの間に配置されるブッシュを省略することができるので、製造コストの低減を図ることができる。また、酸化処理のような高温での加熱も必要ないので、歪みに起因する焼き付きや摩耗を防止できる。
【0028】
窒化クロム層が大端部の内周面にも形成されていると、大端部の内周面の耐フレッティング性を向上させることができる。
【0029】
窒化クロム層が大端部のスラスト面にも形成されていると、スラスト面の耐焼き付き性を向上させることができる。
【0030】
小端部の内周面に形成された窒化クロム層が、コンロッドの長手方向において相対的に厚く、コンロッドの幅方向において相対的に薄い厚さ分布を有していると、小端部の内周面とピストンピンとの間に潤滑油を入れ易くなるので、焼き付き(かじり)をより確実に防止することができる。
【0031】
コンロッドの材料であるチタン合金は、例えば、Ti−5Al−1Fe合金を好適に用いることができる。Ti−5Al−1Fe合金は比較的安価であるので、コンロッドの材料としてTi−5Al−1Fe合金を用いることにより、製造コストの低減を図ることができる。また、Ti−5Al−1Fe合金は、加工性と強度とのバランスに優れる。
【0032】
本発明の実施形態によるコンロッドは、小端部の耐焼き付き性を好適に向上させ得るので、自動車両用や機械用の各種の内燃機関(エンジン)に好適に用いられる。
【0033】
内燃機関のピストンピンが、その表面にダイヤモンドライクカーボン膜を有していると、低フリクション化が可能となり、内燃機関の性能向上および燃費向上を図ることができる。
【0034】
本発明の実施形態によるコンロッドの製造方法は、ロッド本体部、小端部および大端部を備えたコンロッドをチタン合金から形成する工程(a)と、少なくとも小端部の内周面に窒化クロム層を形成する工程(b)とを包含するので、小端部の耐焼き付き性を向上させることができる。そのため、小端部の内周面とピストンピンとの間に配置されるブッシュを省略することができるので、製造コストの低減を図ることができる。また、酸化処理のような高温での加熱も必要ないので、歪みに起因する焼き付きや摩耗を防止できる。
【0035】
工程(b)において、窒化クロム層が大端部の内周面にも形成されると、大端部の内周面の耐フレッティング性を向上させることができる。
【0036】
工程(a)は、大端部の内周面に対して切削加工を行うことによって大端部の内周面の十点平均粗さRzを6.3μm以下にする工程(c)を含んでいてもよい。大端部の内周面の十点平均粗さRzが上記範囲内にある状態で窒化クロム層を形成することにより、摩擦係数を適切な範囲とすることができるので、軸受けメタルの供回りを防止することができる。また、表面硬度を高くして耐フレッティング性をいっそう高くすることができる。
【0037】
工程(b)において、窒化クロム層が大端部のスラスト面にも形成されると、スラスト面の耐焼き付き性を向上させることができる。
【0038】
工程(b)において、窒化クロム層が、コンロッドの長手方向において相対的に厚く、コンロッドの幅方向において相対的に薄い厚さ分布を有するように小端部の内周面に形成されると、小端部の内周面とピストンピンとの間に潤滑油を入れ易くなるので、焼き付き(かじり)をより確実に防止することができる。
【0039】
工程(a)は、チタン合金を鍛造により成形する工程(d)を含んでいてもよい。チタン合金を鍛造により成形することにより、機械的性質に優れたコンロッドが得られる。
【0040】
工程(a)は、工程(d)後に焼鈍処理を行う工程(e)を含んでいてもよい。焼鈍処理を行うことにより、工程(d)において生じた残留応力(寸法精度に悪影響を及ぼす残留応力)を取り除くことができる。
【0041】
工程(a)は、工程(d)後に、チタン合金の表面に生成したαケースをショットピーニングにより除去する工程(f)を含んでいてもよい。αケースは、加工性や延性、疲労特性などに悪影響を及ぼす酸素濃化層であるので、工程(f)によって除去することが好ましい。また、ショットピーニングにより、コンロッドに残留応力を付与してコンロッドの強度を向上させることができる。
【0042】
工程(b)は、コンロッドの表面の一部が鍛造肌のままの状態で実行されてもよい。
【0043】
コンロッドの大端部が、ロッド部とキャップ部とに分割されている場合、工程(b)は、キャップ部がボルトによってロッド部に結合された状態で実行されてもよい。このような状態で工程(b)が実行されると、ボルトによって座面およびねじ面をマスキングすることができる。