【課題を解決するための手段】
【0026】
第1の態様では、本発明は、乳酸菌目の微生物若しくはそのアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せであって、該微生物若しくはそのアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せが少なくとも1つの病原微生物と共凝集することができ、該病原微生物が化膿連鎖球菌であるようなものである、乳酸菌目の微生物若しくはそのアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せに関する。化膿連鎖球菌に結合する微生物に乳酸菌が利用可能であったことは全くもって驚くべきことであった。特に好ましい実施の形態においては、微生物若しくはそのアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せがラクトバチルス属に属する。
【0027】
また、好ましい実施の形態において、微生物若しくはそのアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せに生物学的処理、化学的処理又は物理的処理の後であっても病原微生物との共凝集能が現れることは全くもって驚くべきことであった。病原微生物との共凝集能はおよそ3〜およそ8のpHでも現れる。微生物若しくはそのアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せが病原微生物の生物膜の形成を防ぐ能力を有することが好ましい。微生物若しくはそのアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せが、化膿連鎖球菌のフィブロネクチンへの結合を防ぐ能力を有することも好ましい。好ましい実施の形態において、微生物若しくはそのアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せは、皮膚又は粘膜の片利共生微生物と共凝集する能力を有しない。
【0028】
この微生物が、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillushelveticus)、ラクトバチルス・イエンセニイ(Lactobacillusjensenii)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillusbulgaricus)、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillusamylovorus)、ラクトバチルス・デルブリュッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacilluscasei)、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)、ラクトバチルス・ガゼリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillusjohnsonii)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillusparacasei)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillusrhamnosus)、ラクトバチルス・クルバトス(Lactobacilluscurvatus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillusbrevis)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillusbuchneri)、ラクトバチルス・フルクチボランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバチルス・ヒルガルディ(Lactobacillushilgardii)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ビリデセンス(Lactobacillusviridescens)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ラクトバチルス・イングルビエイ(Lactobacillusingluviei)、又はそれらのアナログ、誘導株、フラグメント若しくは変異株を含む群から選択されることが好ましい。
【0029】
微生物は有利には、DSM25972、DSM25987、DSM25988、DSM25989及びDSM25973という番号でドイツ微生物細胞培養物コレクションに寄託された微生物を含む群から選択される。
【0030】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの微生物若しくはそのアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せを含む組成物に関する。組成物は、好ましくは薬学上又は美容上許容可能な賦形剤又は補形薬を含むことができる。組成物が固体、液体若しくは粘性体であるか、又はエアロゾルであることが好ましい。組成物はペースト、軟質ゼラチンカプセル、硬質ゼラチンカプセル、粉末、顆粒、ビーズ、香錠、発泡錠、ロゼンジ、口腔錠、チュアブル錠、舌下錠、溶液、チンキ剤、エマルション、ジュース、濃縮液、シロップ、スプレー液、飲用アンプル、ゲル、洗口液、歯磨き粉、チューインガム、錠剤、コーティングピル又は糖菓の形態であることが好ましい。
【0031】
組成物は有利にはプロバイオティクス、防腐剤又は他の抗菌物質を含むことができ、及び/又は好ましくは酸化防止剤、ビタミン、補酵素、脂肪酸、アミノ酸及び補因子から選択される1つ又は複数の物質を更に含むこともできる。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態において、組成物は医薬組成物、獣医組成物若しくは化粧品組成物又は栄養補助食品若しくは栄養補助食品組成物である。組成物は1つ若しくは複数の増粘剤、1つ若しくは複数の甘味料、及び/又は1つ若しくは複数の人工甘味料を含むことが好ましく、増粘剤が、セルロースエーテル、キサンタンガム、ゼラチン、高分散二酸化ケイ素、デンプン、アルギン酸塩、トラガカントゴム、寒天、アラビアゴム、ペクチンを含む群から選択される多糖類及びポリビニルエステルから選択され、甘味料が、グルコース、フルクトース、スクロース及びグルコースシロップ、ソルビトール、マンニトール、キシリトール及びマルチトール、サッカリン、シクラミン酸ナトリウム、アセスルファムK及び/又はアスパルテームを含む群から選択されることが好ましい。
【0033】
本発明の意味における好ましい医薬品は、口腔部、咽喉部又は頸部における咳、咽喉痛、感冒又は感染用の鼻うがい液、洗口液及びデンタルリンス;うがい液、鼻用スプレー液、口腔スプレー液、咽喉スプレー液、点鼻薬、点滴薬、チンキ剤、ジュース、又はシロップ、咽喉症状又は咽喉痛用の咽喉錠、糖菓、チュアブル糖菓、コーティングピル及び香錠、並びにエアロゾルを含む。
【0034】
本発明の意味における好ましい医療品は、口腔部、頸部又は咽喉部における咳、咽喉痛、感冒又は感染用の鼻うがい液、洗口液及びデンタルリンス;うがい液、鼻用スプレー液、口腔スプレー液、咽喉スプレー液、点鼻薬、点滴薬、チンキ剤、ジュース、又はシロップ、咽喉症状又は咽喉痛用の咽喉錠、糖菓、チュアブル糖菓、コーティングピル及び香錠、並びにエアロゾルを含む。
【0035】
本発明の意味における好ましい化粧品は、歯磨き粉、ローション、振盪合剤、粉末、洗鼻液、洗口液及び洗歯液、うがい液、鼻用スプレー液、口腔スプレー液、咽喉スプレー液、チューインガム、ヒドロゲル、クリーム、クレサ(cresa)、軟膏、脂性軟膏又は皮膚表面への塗布用のペーストを含む。
【0036】
本発明の意味における好ましい食品及び栄養補助食品は、発泡錠、ビタミン錠、ミネラル錠、微量元素錠、飲用粉末、飲料、ジュース、乳飲料、ヨーグルト、ミネラル水、無炭酸水、糖菓、チュアブル糖菓、チューインガム、ジュース若しくはシロップ、咽喉錠、コーティングピル及び香錠、並びにエアロゾルを含む。さらに、組成物はビルダー、酵素、電解質、pH調整剤、増粘剤、防汚剤、蛍光増白剤、灰色化阻害剤、色移り阻害剤、整泡剤及び/又は着色剤を含有していてもよい。
【0037】
微生物は有利には、組成物中で生きている又は破壊した形態で存在することが好ましい。加えて、微生物は、好ましくは封入形態、噴霧乾燥形態及び/又は凍結乾燥形態で存在することができ、好ましくは細胞可溶化物の形態で存在することもできる。加えて、前記微生物が、組成物中に0.001wt%〜20wt%、好ましくは0.005wt%〜10wt%、特に好ましくは0.01wt%〜5wt%の量(重量による量)で存在することが好ましい。
【0038】
別の態様では、本発明は、化膿連鎖球菌と共凝集する特性を有する乳酸菌を特定及び/又は選択する方法であって、
a.生物膜を形成する病原微生物をインキュベーションする工程と、
b.試験対象の乳酸菌を添加するとともにインキュベーションして混合物を形成する工程であって、病原微生物と調査対象の乳酸菌との間で共凝集を起こす工程と、
c.上清を除去することによって結合していない乳酸菌を分離する工程と、
d.共凝集した乳酸菌に関して生物膜を測定する工程と、
を少なくとも含む、方法に関する。
【0039】
さらに本方法は、
病原微生物の生物膜の阻害を調査する工程であって、調査対象の乳酸菌を、生物膜を形成する病原微生物のインキュベーション中に添加する工程及び/又は好ましくは、
試験対象の乳酸菌を添加していない対照と比較して、光学密度を測定することによって、結合していない細胞の除去後の生物膜の形成を定量化する工程、
を更に含み得る。
【0040】
加えて、本発明は、皮膚、粘膜及び口腔の微生物疾患の治療、予防及び/又は治療法用の調合薬、医療品又は化粧品の製造への組成物の使用に関する。
【0041】
好ましい組成物は、皮膚、粘膜及び口腔の微生物疾患又は炎症性疾患の局所予防及び/又は局所治療に使用することもできる。組成物が口腔の微生物疾患の予防及び/又は治療に使用され、1つ又は複数の香味物質を更に含むことが好ましい。加えて、組成物が微生物疾患又は炎症性疾患、好ましくは口腔の微生物疾患又は炎症性疾患の局所予防及び/又は局所治療に使用され、組成物が、チュアブル物、チューインガム、糖菓、香錠、歯磨き粉、スプレー液又は洗口液の形態で使用されることが好ましい。
【0042】
1つ又は複数の抗炎症物質又は抗微生物物質を組成物中で使用するのが有利であり得る。加えて、組成物を溶媒、賦形剤、補形薬、充填剤、香味物質、芳香物質及び/又は更なる成分と組み合わせて使用することが好ましい。好ましい実施の形態では、組成物を使用して、表面処理用の清浄剤又は消毒剤を調製することができる。組成物は医療品及び/又は予防の分野において使用される製品の製造に使用されるのも好ましい。組成物を使用して、経口摂取、舌下摂取、口腔摂取用の作用物質を調製することが好ましい。
【0043】
好ましい実施の形態では、組成物を使用して、口腔咽頭域内での炎症の局所治療、並びに上気道及び皮膚の感染用の抗微生物添加剤を作製することができる。好ましい組成物はとりわけ予防的に又は治癒的に使用される。組成物を経口で、舌下に又は口腔に適用することが好ましい。
【0044】
さらに本発明は、身体衛生機器若しくは器具、リンス及び/又はペーストに好ましい微生物又は好ましい組成物を含む衛生的な治療用キットに関する。キットは口腔部又は咽喉部での細菌感染症の治療に使用することができ、ここではとりわけ感染症は化膿連鎖球菌により引き起こされるか、又は少なくともこの種が感染症に関与している。
【0045】
本発明は好ましくは、とりわけ乳児、幼児、小児、健常者、高齢者、免疫が抑制された人、単発性若しくは再発性の化膿連鎖球菌感染症の人及び/又は咽喉及び扁桃腺の細菌感染症(咽頭炎)の人の治療又は予防に使用される新規な乳酸菌、そのアナログ、変異株、誘導株又はフラグメント、及びそれらを含有する組成物に関する。本発明は驚くべきことに、動物にも使用することができる。
【0046】
したがって、組成物を使用して、咽喉症状、咽喉痛、咽喉の発赤、並びに咽喉及び扁桃腺の化膿性炎症及び非化膿性炎症の治療又は予防に有益な調合薬を調製することが好ましい。ここでは、乳酸菌の投与が望ましい。好ましい組成物は、治癒的に又は予防的に、例えばプロバイオティクスとして使用することができる。
【0047】
好ましい微生物、すなわちとりわけ乳酸菌の属に属する微生物、又はそのアナログ、誘導株、変異株若しくはフラグメントには、化膿連鎖球菌との共凝集能、化膿連鎖球菌との特異的な結合能がある。好ましい乳酸菌が、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)等の片利共生微生物との共凝集又は結合を起こさないことは全くもって驚くべきことであった。ストレプトコッカス・サリバリウスは健常者の咽喉部の粘膜に見られ、健常な微生物均衡に寄与することから、本発明に関してはその凝集は好ましいものではない。
【0048】
換言すると、好ましい乳酸菌は病原性細菌である化膿連鎖球菌と特異的に共凝集する。これは従来技術で誘導することができるものではない。従来技術には、ヒト細胞株内での及び/又はヒト細胞株上での化膿連鎖球菌の浸潤及び複製を妨げる乳酸菌だけしか説明されていない。しかしながら、付着は細菌性発病に必須の第1段階であり、そのためこのアプローチは副作用なくしては使用することができなかった。これとは対照的に、好ましい乳酸菌は、化膿連鎖球菌の浮遊性細胞(例としてはATCC12344及びATCC19615というDSM番号の株が挙げられる)が宿主細胞に結合する前に、化膿連鎖球菌の浮遊性細胞と特異的に共凝集する。このため本発明は、従来技術に対して化膿連鎖球菌の上皮細胞への結合を低減する傾向にあることから、通例とは逸脱するものと見なすことができる。また、最初の段階で病原性細胞が上皮細胞と結合することができないように、乳酸菌が口腔内で病原性細胞と共凝集することができるという報告はなかった。これには、細胞凝集体が唾液とともに又は洗口液を用いて嚥下され、化膿連鎖球菌の細胞が胃腸管中で破壊されるという重要な利点もある。したがってこれは、例えば洗口液を吐き出すことが不快でかつ不便であると一般に認識されていることから、利用者に優しい適用でもある。これは好ましい使用に必要なものではない。
【0049】
当業者は、健常な皮膚及び/又は粘膜には、細菌及び真菌等の微生物が密集していることを認識しており、これは片利共生及び/又は相利共生と呼ばれる。これらの微生物は、皮膚表面の自然構成要素であり、特に皮膚微生物叢という用語と総称される。自生(autochthonic)微生物叢という用語に含められる微生物は、病原微生物から皮膚自体及び全身を保護するための重要な必須条件であり、ミクロビオーム(microbiome)の一部である。この点において、好ましい乳酸菌は、皮膚微生物叢内で不均衡状態を起こさず、単に病原性細菌である化膿連鎖球菌と結合し、及び/又は化膿連鎖球菌と共凝集することが特に有利である。
【0050】
最後になるが、本発明による微生物は化膿連鎖球菌のフィブロネクチンへの結合を防ぐことによって、細胞の浸潤が妨げられる。好ましい乳酸菌は化膿連鎖球菌と共凝集し、及び/又はこれらの細菌との付着特性を有することから、これによってとりわけ病原性因子のマスキング、ひいては不顕在化がもたらされ、次いで咽喉部での細菌数の低減及び/又は化膿連鎖球菌のフィブロネクチン及び/又は細胞への結合阻害が起こる。
【0051】
本発明はとりわけ乳酸菌の群に関するものであるが、本願による教示には一貫性がある。特許請求の範囲に係る微生物には共通の特性又は効果がある。構造又は機能の共通性をまとめることで、化膿連鎖球菌との共凝集と、皮膚及び/又は粘膜の片利共生微生物との非結合と、化膿連鎖球菌のフィブロネクチンへの結合の阻止との機能的関係性が導かれる。また共通する特色は、特色の任意の総和を表すものではないが、特許請求の範囲に係る微生物の共通する特質(fingerprint)を構成するものであり、言い換えるならばこの特質によって有益には、これらの微生物がこの目的に適したものとなるともに、この目的に適したものであることが明らかになる。さらに、驚くべきことに本発明による微生物の驚くべき特性、すなわち化膿連鎖球菌との共凝集は、唾液中又は糖の存在下でも阻害されないことが見出されている。これは、とりわけ微生物及び組成物の好ましい使用部位が口腔内であり、一般的に共凝集プロセスは高い糖濃度によって阻害されることが従来技術から認識されていることから有益である。しかしながら試験によって、本発明による微生物、とりわけ乳酸菌は、高い糖濃度(例えば唾液中、並びに発泡錠、ビタミン錠、ミネラル錠、微量元素錠、飲用粉末、飲料、ジュース、乳飲料、ヨーグルト、糖菓、チュアブル糖菓、チューインガム、ジュース若しくはシロップ、咽喉錠、コーティングピル及びエアロゾル等の可能な剤形内で見られるようなもの)であっても化膿連鎖球菌と共凝集することから、このことは本発明による微生物、とりわけ乳酸菌には当てはまらないことが分かっている。
【0052】
さらに、好ましい微生物は皮膚上でも使用することができ、そこでも該微生物が化膿連鎖球菌と共凝集することは驚くべきことであった。当業者は、化膿連鎖球菌が病原性創傷生物としても知られており、そのため好ましい微生物の共凝集能が口腔に限定されず、皮膚領域にも適用することができることが特に有利であることを認識している。
【0053】
このため本発明は、とりわけ乳児、幼児、小児、健常者、高齢者、免疫が抑制された人、病理的皮膚変化(とりわけブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、伝染性膿痂疹、表在性毛嚢炎、膿痂疹化、皮膚膿瘍、フルンケル(せつ腫症)、癰(膿瘍)、蜂窩織炎、乾燥皮膚、皮膚掻痒、皮膚発赤、皮膚の刺激、極めて脂性の皮膚、座瘡、糖尿病足、褥瘡潰瘍、神経皮膚炎、急性リンパ節炎、毛巣洞(毛巣瘻、毛巣嚢胞、尾骨瘻、尾骨洞を含む)、皮膚及び皮下組織の他の局部感染(例えば、膿皮症、化膿性皮膚炎、敗血症性皮膚炎、膿瘍性皮膚炎)の人での治療又は予防に使用される、微生物、とりわけ乳酸菌、そのアナログ、変異株、誘導株又はフラグメント、及びこれらを含有する組成物にも関する。これらは、ヒト又は商用動物及びペットにおける様々な形態の皮膚炎及び湿疹(例えばアトピー性湿疹、脂漏性湿疹、おむつかぶれ若しくは皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、剥脱性皮膚炎、毒性接触皮膚炎、慢性単純性苔癬、痒疹、掻痒症及び他の形態の皮膚炎)、更に丘疹落屑性皮膚疾患(乾癬、類乾癬)、外皮付属器の疾患(例えば脱毛性毛包炎を含む瘢痕化を伴う脱毛症)、並びに皮膚及び皮下組織の他の疾患(例えば下腿潰瘍)、既往の皮膚損傷(例えば乾燥皮膚)、皮膚外傷(例えば疥癬、事故又は手術によるものを含む創傷)を治療するのにも使用することができる。
【0054】
好ましい実施の形態において、本発明の意味における皮膚は、とりわけ外部から内部を隔てることを担う、ヒト又は動物の身体の外側器官であると理解される。好ましい実施の形態において、本発明の意味における皮膚領域には、皮膚の最上層、革質部若しくは真皮、又は皮下組織という構成要素が含まれる。また、皮膚の最上層(表皮)は、本発明によれば、上皮角質層(stratum corneum)(角質層)、淡明層(stratum lucidum)(透明層)、果粒層(stratum granulosum)(顆粒層)、有棘細胞層(stratumspinosum)(有棘層)及び/又は基底細胞層(stratum basale)(基底層)という層で構成される。この領域での細胞の各修飾は、本発明の意味においては皮膚領域における細胞修飾からなる。本発明によれば、皮膚領域の構成要素でもあり得る真皮(dermis)又は革質部は好ましくは、結合組織線維で構成され、栄養及び表皮のための支えを提供するものである。表皮との境界帯域における毛細血管系も本発明の意味では皮膚領域に属し、皮脂腺及び汗分泌腺(sudoriporous glands)すなわち汗腺(sweat glands)も同様である。本発明の意味における真皮は、乳頭層と網状層とに細分類することができる。加えて、本発明の意味における皮膚領域は、皮下組織(皮下)又は身体内部の組織中又はその上のいずれの領域、すなわちいずれの位置も、又はいずれの器官若しくは器官要素でもあり得る。周辺構造から器官を隔てる組織障壁は、本発明の意味における皮膚とすることができる。加えて、皮膚領域の発明概念には、髪、皮脂腺、立毛筋、爪、角、並びに汗分泌腺、とりわけエクリン汗分泌腺及びアポクリン汗分泌腺、また乳腺等の外皮付属器も含まれると理解される。任意の細胞修飾、とりわけ、正常状態から逸脱する細胞成長は、本発明による作用物質を用いて、好ましくは皮膚の外部領域に限定されることなく処理することができる。しかしながら、本発明の意味における皮膚領域には、足の指若しくは足裏の真皮等といった真皮、又はそれに関連する皮膚(meshed skin)及び皮膚付属器も含まれ得る。
【0055】
好ましい組成物は、とりわけセッケン、ローション、粉末、合成洗剤、泡沫、スティック、エマルション、スプレー、クリーム、ゲル、シャンプー、液体セッケン又は消臭剤中に含めることができる。また、組成物を、とりわけ、洗浄剤、リンス剤、清浄剤又は消毒剤(例えば、セッケン、粉末、ペースト、溶液、エマルション、ローション)、掃除用及び/又は消毒用の布巾又はタオル、シャンプー、リンス、又は皮膚、髪及び/又は頭皮用の塗り薬、クリーム、軟膏、皮膚清浄用ローション及び/又はスキンケアローション、目、耳、口、鼻又は喉の中又はそれらの上に使用される溶液(例えば、滴剤、スプレー、リンス)として添加することができ、及び/又は、包帯又は創傷被覆材中に組み込んで病原微生物の形成を抑制し、病原微生物と結合させ、凝集体として病原微生物を除去し及び/又は病原微生物を阻害するか若しくは病原微生物を破壊することによって、病原微生物の数を低減させることができるプロバイオティクスとして使用することが好ましい。
【0056】
本発明による組成物を上述の医薬品形態に組み込むことによって、本発明による組成物の利点をもう一段階改善することができたことは、全く驚くべきことであった。当業者は、本発明による組成物を賦形剤物質、例えば、エマルション、又は皮膚塗布用の他の製品、例えば、好ましくは含水物又は無水物であってもよく、本発明によれば水性形態を単一相系及び多相系に分類することができる液体形態等の中に導入するという他の配合概念に精通している。加えて、無水物又は含水物である半固体形態を使用してもよく、これもまた単一相系、及び水を含有する半固体形態も可能な多相系に分類することが可能である。親油性又は親水性である固体形態も使用することができるのが好ましい。かかる形態の例としては、上記で既に述べたそれらの形態に加えて、例えば、脂性軟膏、泡沫、粉末、スティック、ゲルクリーム、水分散ゲル、薄い(非粘性)エマルション、ローション、軟膏、スプレー及びクリームが挙げられる。ここで当業者は、かかる賦形剤物質をまず、皮膚上の感触に基づき、リッチ/高品質なものと、新鮮で軽いものとに区別することができ、次に、粘度の観点から低粘度のものと、高粘度のものとに区別することができ、ヒドロゲル若しくはハイドロクリーム、及び/又はO/W型エマルション若しくはW/O型エマルションは高粘度を有することを認識している。液体塗布形態を使用する場合、それらは、上記に説明したように、含水物系と無水物系とに細分類することができる。無水物系の中でも、無極性系、乳化剤を含まない極性系、及び乳化剤を含む極性系が特に好ましい。含水物系の中では、溶液及びマイクロエマルション等の単一相系が好ましく、多相系の中では、多重エマルションであるW/O型エマルション若しくはO/W型エマルションが好ましい。固体/液体系の中では、好ましい形態として、懸濁液、又は懸濁液系/エマルション系等の液体/固体/液体系が挙げられる。当業者は、かかる賦形剤を供給するための様々な可能性を認識している。O/W型エマルションでは、好ましい主な医薬物質には、O/W型乳化剤、W/O型乳化剤、親水性液体成分及び親油性液体成分が含まれる。W/O型エマルションでは、好ましい主な医薬物質には、W/O型乳化剤、O/W型乳化剤、液体及び半固体の親油性成分、ゲル形成剤、親水性液体成分及び/又は塩が含まれる。
【0057】
好ましい半固体賦形剤物質の中では、含水物系及び無水物系が様々な用途に好ましい。無水物系は、乳化剤を含まない極性系又は無極性系、例えば、リポゲル、オレオゲル又はポリエチレングリコールゲルからなっていてもよく、及び/又は、O/W型吸収性基剤若しくはW/O型吸収性基剤における、乳化剤を含む無極性系からなっていてもよい。含水物系は好ましくは、ヒドロゲル若しくはマイクロエマルションゲル等の単一相系、又はO/W型クリーム、W/O型クリーム若しくは両親媒性系等の多相系からなっていてもよい。好ましい半固体製剤は、室温と皮膚温度との間の温度範囲で皮膚に塗布するために、又は粘膜に塗布するために、塗り広げることができる製剤であり、該製剤は局所的な効果を有するか、有効成分を輸送するか又は皮膚に対する軟化効果又は保護効果を有する。好ましい製剤としては、狭義の軟膏、クリーム、ゲル及び/又はペーストが挙げられる。軟膏、クリーム、ゲル及びペーストに加えて、オレオゲルも透明な半固体単一相系として使用することができる。当業者は、米国特許第6,187,323号又はAiache et al. 2001により、半固体系を配合するための様々な無水物化合物を認識しており、これらとしては、例えば、本発明によりバイオゲル(biogel)と称され得る、オレオゲル(oleogel)及びヒドロゲルの化合物が挙げられる。加えて、水分散ゲル又は様々な脂質は、本発明による賦形剤物質をもたらすのに使用することができる。脂質を使用する場合、有機ケイ素化合物及び有機炭素化合物を使用して、分散系に脂質相を供給することができ、ここで、有機炭素化合物は、例えば、非加水分解性脂質若しくは加水分解性脂質(グリセロール)又はワックスエステルを用いて供給することができる。かかる系の利点としては、皮膚の柔軟性の改善及び弾性の増大、並びに脂質組成物に応じて、物質の放出及び侵入を増大させる作用を有する能力が挙げられる。当業者は、例えば、時間パラメータ内における侵入を増大又は減少させるのに使用する必要のある脂質がどれかを知っているであろう。
【0058】
付加的な好ましい賦形剤物質としては、例えば、水分散ゲル及び/又はマイクロカプセル、微小球(microspherules)若しくはペレット剤(マクロビーズ)が挙げられる。既述した賦形剤は、安定性を増大させて、皮膚への最低限の塗布時間を確保するのに役立つ。好ましい半固体単一相系は、親水性液体成分、とりわけ水及び(多価)アルコール、親水性ゲル形成物質、塩形成物質及びW/O型乳化剤、O/W型乳化剤、液体、半固体及び固体の親油性成分、並びに親油性ゲル形成物質及びビルダーという主な医薬物質を用いて調製することができる。当業者は、或る特定の効果を達成するためにこれらの物質をどのように組み合わせるべきかを知っているであろう。
【0059】
また、当業者は、皮膚製品用の他の医薬製剤についても知っているであろう。本特許出願によれば、例えば、医薬化合物は全て、JDDG; 2007, 5:367-383においてDaniels及びKnieによる引例に開示されている。当業者は、種々の医薬製剤が、皮膚において種々の効果を有することを認識しており、生薬(galenical)組成物を種々の量で皮膚に塗布するであろう。JDDG; 2007,5:367-383の内容は、引用することにより特許出願による教示の開示内容の一部をなすものとする。本発明による好ましい製品としては、例えば、親油性若しくは親水性の溶液、親油性若しくは親水性のエマルション、親油性若しくは親水性の懸濁液、特別な液体製剤、疎水性若しくは親水性の軟膏、水乳化軟膏、親油性、親水性若しくは両親媒性のクリーム、ヒドロゲル、疎水性若しくは親水性のペースト、及び/又は粉末が挙げられる。
【0060】
好ましい微生物、とりわけ乳酸菌は、ラクトバチルス・ラクチス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・イエンセニイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・デルブリュッキイ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・ガゼリ、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ペントーサス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・クルバトス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・フルクチボランス、ラクトバチルス・ヒルガルディ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ビリデセンス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ラクトバチルス・イングルビエイ、又はそれらのアナログ、誘導株、フラグメント若しくは変異株を含む群から選択される。これらの微生物は、機能的関連性により互いに関連付けられ、本発明の画一的な概念を為すため、それらは特性及び/又は効果を共有している、すなわち、特に病原性細菌である化膿連鎖球菌と特異的に共凝集し、皮膚及び/又は粘膜の任意の片利共生微生物には結合せず、更に化膿連鎖球菌のフィブロネクチンへの結合を防ぎ、及び/又はフィブロネクチンに結合する化膿連鎖球菌細胞を破壊する。これらの乳酸菌としては、とりわけ、DSM25972、DSM25987、DSM25988、DSM25989、DSM25973というコード番号でドイツ微生物細胞培養物コレクションに寄託された微生物を含む群から選択される、微生物若しくはそのアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せが挙げられる。同一の有利な特性を有する乳酸菌の群を特定することができたことは全くもって驚くべきことであった。これらの特性を全て併せ持つ一方で、非病原性でもあるとともに、皮膚の自然微生物叢に何ら損傷も影響も生じさせない細菌、とりわけ乳酸菌はこれまでに説明されてこなかった。また、組成物又はその他のものとして好ましい乳酸菌を適用することにより、化膿連鎖球菌の宿主細胞への結合及び浸潤が妨げられることも見出された。この原因は、今までのところ知られていないが、更なる実験によって特定されるはずである。
【0061】
好ましい微生物、とりわけ乳酸菌の別の驚くべき利点は、それらが予防的にも使用することができる点である。これは、乳酸菌及び/又はそれを含む組成物を、口腔及び咽喉の粘膜又は自生微生物叢を損傷させることなく予防的に(好ましくはロゼンジ又は糖菓の形態で)適用することができることを意味する。
【0062】
好ましい実施の形態において、本発明の意味における皮膚及び/又は粘膜は、とりわけ、外部から内部を隔てることを担う、ヒト又は動物の身体の外側器官を指すものと理解される。好ましい実施の形態において、本発明の意味における皮膚領域には粘膜の構成要素が含まれる。
【0063】
皮膚及び粘膜での乳酸菌の忍容性は、連鎖球菌の群の微生物による咽喉部での細菌による炎症、感染、疾患又は症状の治療の成功に必須のものである。好ましい組成物は、とりわけロゼンジ、糖菓若しくはコーティングピル、ジュース若しくはシロップ、リンス、スプレー液、又はエアロゾルの形態のプロバイオティクスとして導入され、主となる病原微生物の形成及び宿主細胞への結合を抑制し、これらの病原体と結合し、凝集体として取り除き、及び/又はこれらの病原体を阻害及び/又は破壊することにより、その数を低減させるものとする。
【0064】
本発明による組成物は、糖菓、ロゼンジ又はコーティングピルとして使用することが好ましい。第1に、糖菓、ロゼンジ又はコーティングピルとして配合することで、(糖、代替糖、香料の添加を含む)殆どの場合で口当たりの良いレシピが可能となり、患者及び消費者において広く受け入れられるようになる。第2に、ロゼンジを舐める際にも分泌される唾液が粘膜を湿らせることで、咽喉痛又は扁桃炎の症状がある場合に、或る程度の緩和をもたらす。本発明による組成物は糖菓、ロゼンジ又はコーティングピルを舐めることで長時間にわたってゆっくりと放出され、このことは適用の側面において有利なものである。さらに、本発明による組成物を糖菓、ロゼンジ又はコーティングピル用の組成物に組み込むことは技術的に極めて簡単である。この点に関して、体温では活性があるが、熱処理後であっても好ましい能力、とりわけ化膿連鎖球菌との共凝集能を有するように70℃〜90℃での熱処理を耐えることができる微生物を利用可能にすることが可能であったことは全くもって驚くべきことであった。これはとりわけ、微生物が糖菓の製造後であっても共凝集能を有することが、糖菓の形態での微生物又は組成物の使用にとって有利であり、糖菓の製造の際に70℃の温度が頻発することから有利なことである。このことは従来技術では知られていない。このため、好ましい微生物には、既知の微生物と全く異なる能力がある。加えて、微生物を含む組成物を有する糖菓は、口腔内でよりゆっくりと溶解することで、該糖菓がより良好かつより長期的な効果を示すことは驚くべきことであった。このことは本発明者らにとっても全くもって驚くべきことであった。さらに実験から、とりわけ微生物の徐放によって、口腔内の本質的に全ての化膿連鎖球菌細胞を共凝集することができることが分かっている。
【0065】
当業者は、「体温」という用語に含まれるもの及びどのようにして体温を測定することができるかについて認識している。本明細書での体温は本質的に、ヒト及び動物に関するものである。当業者は、「糖菓」という用語にも精通しており、どの標準文献から糖菓の調製のための成分又は方法を探し出すのかも認識している。本発明は、単一の糖菓に限定されるものではなく、本発明では基本的に、当業者が精通している全ての糖菓を組み合わせることができる。糖菓及びその製造は、対応する自由にアクセス可能な技術文献、例えばCandy Ind. 27, 161 (1996)、H. Hoffmann, W. Mauch, W. Untze, Sugar and Sugar Products, 2
ndedition,Behr's: Hamburg (2002)、R. Lees,B. Jackson, Sugar Confectionery and Chocolate Manufacture,Leonard Hill Books:Plymouth (1999)、FederalAssociation of the German Confectionery Industry (BDSI), editors, Confectioner's Handbook,Molberg, Bonn (2001)、Handbookfor the Food Chemist, FoodLeader, Thieme, Stuttgart (1995)において当業者に開示されている。
【0066】
多様な形状、味指向性、稠度及び色の糖菓が好ましい。糖菓は通常、一口サイズである。糖菓は固体、又は充填された形で(filled)、丸型、卵型、直方体型又は立方体型であり得る。残存水分含量に応じて、糖菓は硬質(硬質キャラメル)又は軟質で咀嚼可能なもの(軟質キャラメル)となる。添加剤に応じて、とりわけ咽喉糖菓と、咳用糖菓と、フルーツ糖菓と、キャラメル糖菓と、清涼糖菓とに分けられる。糖菓の効果及び味は、ハーブエキス、エッセンシャルオイル(例えばユーカリ)及びメントール等の有効成分を使用することで確定させることができる。フルーツ糖菓の場合、香味物質及び酸成分によって個々の味が生じ得る。天然の果汁エキス及び植物エキス又は食用色素を添加して、糖菓に色を付加することもできる。キャラメル糖菓は、とりわけコンデンスミルク、バター及びクリーム等の乳製品から調製される。様々な添加剤及び香料を添加することによって、ナッツ、アーモンド、蜂蜜、ココア、ココナッツ等の多様な味が可能となる。さらに、チュアブル糖菓、カットされた糖菓、エンボス加工された糖菓、キャスティングされた糖菓又はラミネート加工された糖菓が好ましい。有利なことに糖菓に、多様な成分、例えばビタミン、アミノ酸、オイル、ハーブ、脂質、様々な糖質若しくは代替糖、味増強剤及び/又は乳化剤を与えることができる。硬質糖菓には、とりわけスクロース及びグルコースが含まれ、硬質糖菓は、着香物質及び着味物質、着色物質、及び糖質の特性に影響を与える物質を使用して製造することが好ましい。残存水分含量が1%〜3%と低いことから、硬質キャラメルは硬く、また多くの場合で光沢/稠度を有する。硬質キャラメルは、糖ではなく甘味料及び代替糖を使用して作製することもできる。
【0067】
軟質キャラメルは、とりわけ硬質キャラメルとは対照的に咀嚼可能な稠度を有し、バッチ式又は連続式の蒸解によって主成分としてスクロース、他のタイプの糖、甘味料及び/又は糖アルコール、並びにグルコースシロップから6%〜10%の水分含量で作製される菓子製品群を指す。軟質キャラメルは好ましくは、添加剤として脂質、乳成分、増粘剤、乳化剤、着香物質及び着味物質を更に含有する。軟質キャラメルは、充填してまた充填することなく多種多様な形状及び色で作製することもできる。
【0068】
加えて、糖菓がビタミン又は他の補因子が或るチャンバ内に存在し、好ましい微生物又は組成物が1つ又は複数の更なるチャンバ内に存在するようなマルチチャンバシステムを備えることが有益であることも証明されている。このチャンバシステムによって、微生物を最適な時点で、また任意で様々な用量で放出させることが可能となる。ビタミン又は他の補因子は微生物の活性を促進することもできる。例えば、驚くべきことにクランベリーには生物膜の発生を抑える効果があり、そのためクランベリーは好ましい微生物に最適な補助物質であることが見出されている。試験によって、クランベリーの成分又は溶液が存在する場合に化膿連鎖球菌の共凝集が50%より効率的になることが分かっている。
【0069】
試験によって、好ましい乳酸菌、とりわけラクトバチルス細胞が化膿連鎖球菌細胞と接触することで共凝集体を形成することが分かっている。共凝集体の形成によって、化膿連鎖球菌が定着し、とりわけ咽喉部の細胞を浸潤するのが妨げられる。化膿連鎖球菌細胞が選択的に皮膚及び粘膜の上皮細胞へと結合することができなくなるように、化膿連鎖球菌細胞、とりわけその細胞表面は乳酸菌、とりわけラクトバチルス細胞によってマスキングされる。炎症反応は化膿連鎖球菌の皮膚及び粘膜の上皮細胞への結合の阻害によって妨げられる。極めて初期の段階で化膿連鎖球菌と共凝集し、それにより最初の段階から化膿連鎖球菌の上皮細胞への結合を防ぐ微生物を供給することが可能であることは全くもって驚くべきことであった。これは全くもって驚くべきことであり、従来技術では知られていない。このため、好ましい微生物は口腔内で既に化膿連鎖球菌と共凝集することができる。さらに、唾液中に存在する酵素又は他の因子によっては好ましい微生物が阻害されない、すなわち好ましい微生物の化膿連鎖球菌との共凝集能が阻害されないことは全くもって驚くべきことであった。
【0070】
天然の唾液には、特に細菌に対する防御として作用し、とりわけグラム陽性細菌の細胞壁を直接攻撃することができる、リゾチーム等の抗微生物物質が含まれている。しかしながら、好ましい微生物は、天然の唾液が存在し、またその中に抗微生物物質が含まれていても、化膿連鎖球菌との特異的な共凝集が可能であるという特徴がある。これは全くもって驚くべきことであり、従来技術に対するかなりの利点である。
【0071】
本発明の意味において、プロバイオティクス微生物は、ヒト及び/又は動物の身体に有利な効果を有する細胞を含む。好ましい組成物は、プロバイオティクス組成物として使用され、また、ヒト及び/又は動物の身体に有利な効果を有する乳酸菌を含有する。有利な効果とは、とりわけ頸部及び咽喉部の化膿連鎖球菌に起因する微生物数の低減にあり得る。特に、自生微生物叢内の化膿連鎖球菌等の望ましくない微生物を、プロバイオティクス微生物と望ましくない微生物との間接的な相互作用によって、とりわけプロバイオティクス微生物の発現産物による望ましくない微生物の代謝の阻害に基づく間接的な相互作用によって阻害することができる。試験によって、好ましい乳酸菌との共凝集後には病原性の化膿連鎖球菌微生物が成長を示さない、すなわち細胞塊は更に繁殖することなく、とりわけ細胞がマスキング及び/又は破壊されることが分かっている。
【0072】
本発明の別の態様は、とりわけ乳酸菌の生物学的処理、化学的処理又は物理的処理によって生産され、驚くべきことに処理後であっても有利な特性を示す、本明細書に記載の乳酸菌のアナログ、変異株、誘導株若しくはアナログ、又はフラグメントに関する。乳酸菌は有利には、ラクトバチルス・ラクチス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・イエンセニイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・デルブリュッキイ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・ガゼリ、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ペントーサス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・クルバトス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・フルクチボランス、ラクトバチルス・ヒルガルディ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ビリデセンス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ラクトバチルス・イングルビエイを含む群から選択され、好ましくはDSM25972、DSM25987、DSM25988、DSM25989、DSM25973という番号でドイツ微生物細胞培養物コレクションに寄託された微生物を含む群から選択される。
【0073】
さらに、乳酸菌、そのフラグメント、誘導株、変異株、アナログ又はそれらの組合せが、物理的、化学的及び/又は生物学的に破壊した後であっても有利な特性を有し得ることは驚くべきことであった。例えば、好ましい株、すなわちDSM25972、DSM25987、DSM25988、DSM25989及びDSM25973は、病原体との共凝集を起こし、病原体のフィブロネクチンとの結合を妨げ、更に70℃での20分間の熱処理又は超音波による処理後であっても片利共生微生物との結合を示さない。このため、乳酸菌、そのフラグメント、誘導株、変異株、アナログ又はそれらの組合せは有利には、組成物の好ましい実施の形態では破壊した形態で存在していてもよい。このようにして、組成物の安定性及び有用性を大幅に延ばすことができる。さらに、熱的破壊又は凍結乾燥によって、とりわけ生物学的、化学的又は物理的な破壊方法によって作製された組成物を、生微生物を使用することができない更なる適用範囲に使用することができ、アナログ又はフラグメントは、破壊又は噴霧乾燥後であっても化膿連鎖球菌の群から選択される病原微生物に特異的に結合する能力を有する。乳酸菌が生きている又は非生存(死滅)形態で組成物中に存在し、それにかかわらず病原微生物に特異的に結合し、及び/又は病原微生物と共凝集することは全くもって驚くべきことであった。
【0074】
さらに本発明は、上記の病原微生物に特異的に結合する能力を有し、とりわけ食品、食品添加剤、動物飼料又は飲料として使用される、本発明による微生物又はそのアナログ若しくはフラグメント若しくは誘導株を含有する組成物にも関する。好ましい組成物には、化膿連鎖球菌の群の少なくとも1つの病原微生物に特異的に結合し、及び/又は該病原微生物と共凝集する能力を有する本発明による乳酸菌、又はそのアナログ、フラグメント、変異株若しくは誘導株が含まれ、組成物は感冒の治療又は(or)予防に使用される。
【0075】
本発明による好ましい微生物は、乳酸菌属、すなわちグルコースの発酵によって乳酸を生成するグラム陽性細菌に代表される。一方で本発明による微生物は、化膿連鎖球菌の群から選択される少なくとも1つの病原微生物に特異的に結合する、すなわち該病原微生物と共凝集する能力を有することを特徴とする。この結合により、本発明による微生物と、特異的に結合する病原微生物との凝集体の形成が起こる。凝集体の形成により、後者、すなわち病原微生物は、例えば標的化する簡単な手法で凝集体を洗い流すことによって機械的に除去することができ、これはこれまでに知られる手段では不可能なことであった。
【0076】
本発明の意味において、並びに通常微生物学及び衛生学、とりわけヒト微生物学及び身体衛生学の分野において、「特異的結合」又は「共凝集」という用語は、遺伝学的に異なるタイプの細胞に属する細胞同士の相互認識及び付着を指すものと理解される。本発明の意味において、共凝集はとりわけ、付着、相互作用、結合、特異的結合、親和性又は相互作用と理解され、とりわけ好ましい微生物の化膿連鎖球菌との集塊を形成する能力を指す。その細胞表面上で細菌は、細胞間の付着に使用される、他の細胞型への付着因子に対する受容体及び構造体を発現する。この付着は、病原性微生物及び片利共生微生物の定着に優れた役割を果たし、そのため付着への介入によって広範囲にわたる結果が生じ得る。本発明による微生物が化膿連鎖球菌の群の少なくとも1つの病原微生物に特異的に結合する、とりわけ該病原微生物と共凝集する能力を有することから、本発明による微生物と病原微生物との凝集体が形成される。得られる共凝集体は、例えば表面、皮膚、組織及び/又は幾つかの他の定着部位若しくは定着受容部を洗い流すことによって容易に除去することができ、そうすることで病原微生物数が確実に低減する。加えて、表面、皮膚、組織及び/又は他の定着部位若しくは定着受容部への最初の及び/又は再発する付着は、病原微生物の表面構造をマスキングすることによって阻止及び/又は低減される。細胞が互いに結合して凝集体を形成する場合に、このプロセスはとりわけ凝集と称される。1つの細胞種のみが凝集体の形成に関与する場合、そのプロセスは自発凝集(autoaggregation)又は自己凝集(self-aggregation)と称される。少なくとも2つの異なる細胞種が凝集体の形成に関与する場合、このプロセスはとりわけ共凝集として知られている。
【0077】
本発明の意味において、「少なくとも1つの病原微生物の特異的結合」は、とりわけ、化膿連鎖球菌の群に由来する少なくとも1つの細菌に結合する、本発明による微生物の特性を指すものと理解される。
【0078】
本発明による微生物の好ましい実施の形態によれば、本発明による微生物はまた、生物学的、化学的又は物理的な処理、例えば最低70℃の熱処理の後であっても、少なくとも1つの病原微生物に対する特異的結合能が存在することを特徴とする。言い換えれば、病原性細菌、とりわけ化膿連鎖球菌との特異的な相互作用能又は結合能が影響を受けないことから、結合又は相互作用を構築することができるため、好ましい乳酸菌が好ましい組成物中に破壊された形態で存在し得ることが好ましい。
【0079】
上述の熱処理及び/又は「熱処理に対する耐性」又は「熱安定性」は、70℃以上の高温での少なくとも30分間という或る特定の期間後であっても、化膿連鎖球菌の群から選択される少なくとも1つの病原微生物との特異的な結合を始めることが可能であるという細菌の特性を指すものと理解される。死滅した又は破壊された乳酸菌細胞は、該乳酸菌細胞が代謝活性を誘起することができないことから特に有利であり得る。とりわけ本発明の意味において、「死滅した」又は「破壊された」形態は、これらの形態の本発明による微生物に分裂能がなく、例えば該微生物は生体(live living)染料で染色されることがなく、代謝活性がなく、DNA複製又はタンパク質生合成又は例えば代謝産物の分泌を示さないことを特徴とする。
【0080】
乳酸菌の別の好ましい特性によれば、本発明による微生物は、上記の特性、すなわち、化膿連鎖球菌群から選択される少なくとも1つの病原微生物との特異的結合能に加えて熱安定性も特徴としてもよく、また本発明の微生物は、高温、好ましくは少なくともおよそ60℃、より好ましくは少なくとも65℃、更に好ましくは少なくとも70℃における少なくとも20分間、好ましくは25分間、より好ましくは少なくともおよそ30分間の処理に耐えることができるとともに、上記病原微生物の特異的結合の共凝集能に関しては変わらないままである。
【0081】
組成物の好ましい実施の形態では、生きている若しくは破壊された乳酸菌、又はこれらの細菌の一部及びフラグメント、例えば酵素による又は機械的な切断産物(例えばフレンチプレス等)若しくは代謝産物は、依然として共凝集能及び/又はフィブロネクチンとの結合防止能を有することから好ましい。また、乳酸菌は、封入形態、噴霧乾燥形態及び/又は凍結乾燥形態で用いられる、すなわち、好ましい組成物中に封入形態、噴霧乾燥形態及び/又は凍結乾燥形態で存在することが好ましい。さらに、乳酸菌を消化細胞の形態で使用することが有利であり得る。
【0082】
さらに、病原微生物への特異的結合に関する本発明による乳酸菌の能力がおよそ3〜8のpHにおいても持続する場合が好ましい。これは、乳酸菌が3〜8のpHの媒体中存在するとともに、化膿連鎖球菌との結合能を依然として有し得ることを意味する。好ましい乳酸菌は広範なpH範囲で有利に使用することができ、及び/又は好ましい範囲内で好ましい特性を有する。このため好ましい乳酸菌は身体の様々な領域に普遍的に使用することができる。本発明による乳酸菌は驚くべきことに、とりわけ、およそ25℃〜42℃の広い温度範囲において、化膿連鎖球菌との共凝集特性を示す。それ故、「約」又は「およそ」といった用語によって特徴付けられる、本明細書において及び本発明において挙げられる範囲の記述全てにおいて、正確な数値範囲は、「約」又は「およそ("approx." or "approximately")」という表現を伴って示す必要はないが、その代わり、示される数に関する上下のほんの僅かな偏差も本発明の範囲内にあることは、当業者にとって明らかであろう。好ましくは挙げられる病原微生物への本発明による乳酸菌の結合は、これらの病原微生物の成長の阻害をもたらす。
【0083】
病原微生物と本発明による乳酸菌との結合によって、凝集体が形成され、これをとりわけ好ましくは300×gの遠心力で10秒間遠心し、次いでとりわけ撹拌せずに室温での10分間のインキュベーションによって沈殿物として存在させることができることは驚くべきことであった。
【0084】
別の好ましい実施の形態によれば、本発明による乳酸菌は、とりわけ皮膚の微生物叢の至って凡庸な片利共生菌であるストレプトコッカス・サリバリウス等の片利共生的な口腔咽頭微生物叢に結合する能力を有しない。皮膚内又は皮膚上に存在する様々な微生物の相互作用下で、この菌種は、多くの哺乳動物の健常な皮膚微生物叢内に存在し、少なくとも健常な皮膚上ではそれらと微生物平衡状態にある。標的とされる目的のために、例えば凝集によるこの細菌に対する影響、ひいては身体衛生中に存在し得る他の微生物に対する影響は、本発明の範囲内において好ましいものではない。
【0085】
好ましい実施の形態では、本発明は、乳酸菌、そのアナログ、フラグメント又は誘導株であって、好ましい実施の形態では該乳酸菌は、a)熱安定性若しくは生物学的処理及び/又は化学的処理及び/又は物理的処理後の安定性、又はb)化膿連鎖球菌の宿主細胞への付着を阻害する能力という特色の少なくとも1つを有する、アナログ、フラグメント、変異株、誘導株、又はそれらの組合せを有する、乳酸菌、そのアナログ、フラグメント又は誘導株に関する。本発明による乳酸菌が生物学的処理及び/又は化学的処理及び/又は物理的処理後であっても化膿連鎖球菌に特異的に結合することが可能であることは全くもって驚くべきことであった。
【0086】
本発明による乳酸菌の別の特性は、化膿連鎖球菌の宿主細胞への結合の阻害能であり、これらの化膿連鎖球菌細胞は既に浮遊形態で存在し、特異的に共凝集した後、凝集体として洗い流される。これらの病原性細菌はこの共凝集に起因して、生体表面に定着/侵入しなくなるため、疾患を引き起こすこともなくなる。
【0087】
ここで本発明の意味において、「化膿連鎖球菌の宿主細胞(口腔咽頭細胞)への結合を阻害する」という語句は、とりわけ化膿連鎖球菌が口腔咽頭細胞に結合することができなくなるように、化膿連鎖球菌と相互作用する、すなわち化膿連鎖球菌に結合する、又はそれ以外の方法で化膿連鎖球菌に影響を与えるという本発明による乳酸菌の特性を指すものとして理解される。
【0088】
したがって好ましい実施の形態では、本発明による微生物は、上述の特性、すなわち生物学的処理、化学的処理及び/又は物理的処理に対する耐性、耐熱性、化膿連鎖球菌との特異的結合能、化膿連鎖球菌との共凝集能の少なくとも1つを有し得る。特性の好ましい組合せとしては、例えば2つ又は3つの特性、すなわち例えば生物学的処理、化学的処理及び/又は物理的処理に対する耐性、耐熱性及び化膿連鎖球菌との結合能、又は生物学的処理、化学的処理及び/又は物理的処理に対する耐性、耐熱性及び化膿連鎖球菌の口腔咽頭細胞への結合の阻害が挙げられる。
【0089】
本事例では、既に述べられるように、「乳酸菌属に属する微生物」という表現も、本明細書に記載される本発明による微生物の特徴及び/又は特色又は特性を依然として有するそれらの誘導株、変異株、アナログ又はフラグメントを含むと理解される。本発明による乳酸菌は、ラクトバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ種、ラクトバチルス・プランタルム種、ラクトバチルス・クリスパータス種及びラクトバチルス・イングルビエイ種の細菌であることが好ましい。
【0090】
したがって、乳酸菌属に属する上述の微生物の「変異株又は誘導株」、とりわけ本願の一部としてDSMZコレクションによる寄託を受けたラクトバチルス種の変異株又は誘導株は、本事例において本発明による乳酸菌、とりわけDSMZによる寄託を受けたものと同じ株について特許請求の範囲に記載されるものと同じ特徴を有する。この特徴は少なくとも、化膿連鎖球菌の群から選択される少なくとも1つの病原微生物との特異的な結合能、共凝集能を指すものと考えられる。加えて、以下の特色:(i)生物学的処理、化学的処理及び/又は物理的処理、とりわけ少なくとも30分間の70℃を超える熱処理に対する特異的結合能の耐性;(ii)ストレプトコッカス・サリバリウスと結合しないこと;(iii)化膿連鎖球菌との特異的結合能;(iv)化膿連鎖球菌の口腔咽頭細胞への結合阻害能;(v)pH3〜8における特異的結合の存在;(vi)天然の唾液中での特異的結合能の少なくとも1つを有することが好ましい。このような好ましい誘導株は、例えば遺伝子操作によって生産することができる。本発明の意味において、「遺伝子操作によって生産される」という用語はとりわけ、組換えDNA技術によって遺伝子修飾を引き起こして遺伝子を修飾し得るように、遺伝子操作分野におけるin vitro及びin vivoでの核酸の修飾について当業者が精通しているあらゆる方法を含む。
【0091】
したがって、本発明はとりわけ、本発明による乳酸菌の特性を依然として有する、本発明による乳酸菌のフラグメントも含む。本発明の意味において、「フラグメント」はとりわけ、本発明による微生物の細胞成分、及び好ましくは細胞膜の一部である。当業者は、従来技術から細胞膜画分を得る方法に適切に精通していると考えられる。
【0092】
本発明による微生物は好ましくは単離形態又は精製形態であり、ここで、「単離」という用語はとりわけ、乳酸菌がその培地(例えばその天然培地を含む)に由来することを意味する。「精製」という用語は絶対純度に制限されるものではない。
【0093】
生存可能な形態の本発明による微生物に加えて、本発明による微生物の破壊された形態も本発明の範囲内に含まれることが好ましい。好適な破壊方法(例えば生物学的、化学的又は物理的な破壊方法)に当業者は十分精通している。しかしながら、本事例では、凍結乾燥形態の微生物を使用してもよい。凍結乾燥細胞は、液体培地又は固体培地中での好適な培養後に再度、成長させることができる。このことが新規性及び進歩性に関するものであることは全くもって驚くべきことであった。従来技術には、例えば胞子を含む表面のクリーニング溶液が含まれるが、細菌は、胞子が対応する基質に接触すると再び活性化する。このことは好ましい微生物及び組成物に必要なものではない。さらに、好ましい微生物は活性があり、すなわち化膿連鎖球菌と共凝集し、上記した他の特性も有するが、代謝活性を有しておらず、微生物学の当業者にとって「死滅(dead)」しているものと見なされる。このため該微生物はもはや成長、分裂、複製又は代謝産物の分泌が不可能であることから、その使用範囲が大幅に拡大する。
【0094】
また、「破壊された形態」又は「死滅形態」及び「誘導株」又は「アナログ」又は「変異株」という用語は、本事例において、本発明による微生物の細胞上清及び/又は発酵上清、溶解産物、画分又は抽出物を含み、これらの溶解産物、画分又は抽出物は好ましくは、乳酸菌の特性を有し、「溶解産物」(及び「抽出物」という用語)はとりわけ、本発明による微生物の細胞の水性媒体中における溶液又は懸濁液を指し、例えば、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物等及び細胞破片(cell detritus)等の巨大分子を含む。また好ましくは溶解産物が細胞壁又は細胞壁構成要素を含む。溶解産物を生産する方法は、当業者に十分に既知であり、例えば、「フレンチプレス」又は酵素溶解、ガラスビーズ若しくは鉄ビーズを用いたボールミルの使用を含む。細胞は、酵素による方法、物理的又は化学的な方法によって開裂することができる。酵素による細胞溶解の例としては、個々の酵素並びに酵素カクテル、例えば、プロテアーゼ、プロテイナーゼK、リパーゼ、グリコシダーゼを挙げることができ;化学的溶解は、イオノフォア、SDS等の洗浄剤、酸又は塩基によって誘起することができ;また物理的方法は、フレンチプレス等の高圧、浸透圧、温度、すなわち高温と低温とを交互に切り替えることによって実施することができる。さらに、化学的方法、物理的方法及び酵素による方法は当然のことながら併用してもよい。本発明による微生物の「破壊された形態」又は「死滅形態」及び「誘導株」又は「アナログ」又は「変異株」は好ましくは、上述の株と同様の特性を有する。「破壊された形態」又は「死滅形態」及び「誘導株」又は「アナログ」は好ましくはもはや全く代謝活性を有しない。本発明による微生物のアナログは、溶解産物又はフラグメントの形態である。本発明による微生物のフラグメントは、細胞膜、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物等の巨大分子、及び細胞破片等の細胞の一部である。変異株及び/又は遺伝子組換え変異株、又は誘導株は、例えば、組換えDNA技術(クローニング、シーケンシング、組換え核酸の形質転換)、並びに例えば紫外線放射による物理的な変異誘発によって遺伝子組換えが行われるが、エチルメタンスルホネート(EMS)等の化学薬品によっても遺伝子組換えが行われる。陽性特性の変更は選択することができる。遺伝子が組換えられた変異株は、本発明による微生物の細胞を含有し、その細菌染色体及び/又はプラスミド中に組換え核酸を含む。また、点突然変異に起因する修飾は、発現/転写/翻訳、並びに直接的な遺伝子操作を何ら行わない自然突然変異に作用を及ぼすことができる。アナログ又はフラグメントは、本発明による微生物の、熱によって破壊された(死滅)形態又は凍結乾燥形態であってもよく、これらは、それらの発明特性を保持するか又は例えば表面積を増大させることによって改善させる。凍結乾燥(フリーズドライ)後であっても、細胞は環境によっては依然生存可能であり得る。これらの細胞は、種々の温度における特別な貯蔵プロセスにより不活化された状態であってもよい。死滅細胞は、例えば、無傷の又は破裂した細胞膜を有していてもよいが、死滅細胞は、如何なる代謝活性も有することができない。不活化細胞を得る方法は、それらをガラスビーズで処理すること、例えば、細胞とガラスビーズとの間の剪断力の作用によって細胞が破裂することを含み得る。フレンチプレス、高圧均質化、ボールミル又は凍結融解プロセス及び加圧滅菌等の他の物理的方法も、細胞の破壊を引き起こし、本発明による微生物のフラグメント、並びにUV照射、自己溶解プロセス、又は種々の温度における特別な貯蔵プロセスをもたらす。
【0095】
本発明による特性を有する乳酸菌属に属する微生物であれば、例えば本明細書の下記の試験に基づき、当業者によって試験及び検証することができる。本発明の意味において、「ラクトバチルス細胞」という用語は、乳酸菌又はラクトバチルスを含むものとして使用することができ、また、乳酸の発酵に、糖質、とりわけグルコース及びラクトースを必要とするとともに、通常エムデンマイヤーホフ生合成経路を利用する微生物を含む。ラクトバチルス細胞は、乳酸菌科に分類学的に分類される。それらは、グラム陽性で非胞子形成性かつ一般的に静止性のものである。ラクトバチルス細胞は嫌気性であるが、ヘミン(シトクロム、カタラーゼ)を含有しないものの酸素耐性である(Schleifer et al., System. Appl. Microb. 18, 461-467 (1995)、又はLudwiq et al., System. Appl.Microb.15, 487-501 (1992))。ラクトバチルス細胞及び/又はその細胞種は、糖質の利用パターンに基づき、とりわけAPI試験(Biomerieux社製)を用いて求めることができる。本発明によれば、これらはとりわけ、同種発酵性の乳酸発酵又は異種発酵性の乳酸発酵に好適な細胞種を含む。またかかるラクトバチルス細胞は好ましくは、ラクトバチルス・ラクチス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・イエンセニイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・デルブリュッキイ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・ガゼリ、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ペントーサス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・クルバトス及びラクトバチルス・プランタルム(全て同種発酵性)、またラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・フルクチボランス、ラクトバチルス・ヒルガルディ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ビリデセンス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、及びラクトバチルス・イングルビエイ(全て異種発酵性)を含む群から選択される。例として好適であり、出願人が寄託を受けたラクトバチルス細胞には、ラクトバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ(DSM25972)、ラクトバチルス・クリスパータス(DSM25987、DSM25988)、ラクトバチルス・プランタルム(DSM25989)、ラクトバチルス・イングルビエイ(DSM25973)が含まれ、それら全てが本発明にとって好ましい。
【0096】
本発明の好ましい実施の形態において、本発明による微生物は、各々ドイツ微生物細胞培養物コレクション(DSMZ)(所在Braunschweig)により寄託番号DSM25972、DSM25987、DSM25988、DSM25989、DSM25973として寄託された、ラクトバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・イングルビエイから選択される。上述のDSMZの寄託は、特許手続上の寄託を目的として、微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約に従って為されたものである。
【0097】
上述のように、本発明は、微生物、好ましくは生きている微生物又はそのアナログ、変異株、誘導株若しくはフラグメントと、好ましくは、美容上許容可能な賦形剤若しくは補形薬、薬学上許容可能な賦形剤若しくは補形薬、又は皮膚科学上許容可能な賦形剤若しくは補形薬の少なくとも1つから選択される、少なくとも1つの賦形剤又は補形薬とを含有する組成物にも関する。
【0098】
本発明の意味において、「組成物」という用語はとりわけ、本発明による少なくとも1つの微生物、又はそれらのフラグメント、誘導株、アナログ若しくは変異株と、任意に、賦形剤若しくは補形薬等の他の成分、又は任意に他の有効成分及び塩とを有する任意の組成物を含むと理解される。美容上、薬学上又は皮膚科学上許容可能な補形薬、賦形剤又は添加剤は、有効成分又は組成物、すなわち、本事例では少なくとも1つの微生物、又はそれらのアナログ若しくは誘導株若しくは変異株若しくはフラグメントを美容上又は薬学上使用するか、投与するか又は効果的に適用するために、美容分野、薬学分野又は歯科分野で一般的な任意の物質を含むと理解される。
【0099】
本発明及び特許請求の範囲の意味において、「粘膜("mucosa" or"mucous membrane")」という用語は、腺分泌物によって保湿される中空器官の内壁の(lining)内層を指すものとして理解される。とりわけこれは口腔及び鼻腔の粘膜、結合組織、胃腸管の粘膜、並びに化学分野の粘膜を指す。
【0100】
「炎症性疾患」は、本明細書及び本特許請求の範囲内において、皮膚、粘膜又は口腔に関与する急性、亜急性、慢性の再発する(relaxing)疾患状態、又は慢性の持続する疾患状態を伴う疾患を指すものとして理解される。炎症性疾患は臨床的に、発赤、腫脹、疼痛、掻痒、滲出、水疱形成(vesiculation)、過角化、過鱗状化(hypersquamation)、糜爛、潰瘍及び他の物質欠乏及び疥癬、小水疱、並びに他の発疹を特徴とする。組織学的には炎症細胞は真皮及び/又は表皮に見ることができる。本発明及び本特許請求の範囲の意味において、「炎症性疾患」又は「炎症状態」は、とりわけ例えば(限定するものではないが)湿疹、アトピー性湿疹、脂漏性湿疹、アレルギー性接触湿疹若しくは毒性接触湿疹)、乾癬及び他の過角化性炎症、急性及び慢性の創傷、痒疹性皮膚疾患、並びに扁平紅色苔癬、肉芽腫性皮膚及び錯乾癬性の(parapsoriatic)皮膚の変化等の珍しい炎症、並びに皮膚兆候を伴う大きな自己免疫疾患群等の疾患及び病態を指すものとして理解される。「予防法(prophylaxis)」又は「予防(prevention)」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲ではあらゆるタイプの予防、すなわち健常な利用者及び/又は患者の予防的治療と、皮膚、粘膜若しくは口腔の微生物疾患に罹りやすい利用者及び/又は患者又は炎症性疾患に罹りやすい利用者及び/又は患者(いわゆる「素因」がある人)の予防的治療との両方を含むものとして理解される。さらに予防は、皮膚、粘膜若しくは口腔の微生物疾患又は炎症性疾患に過去に1度でも罹患したことがあり、例えば本明細書及び特許請求の範囲に提示された治療等の有効な治療によって該疾患を克服した利用者及び/又は患者の予防的治療(いわゆる「再発予防」)を含むものとしても理解される。さらに本明細書及び特許請求の意味において予防は、刺激を起こしやすい皮膚の化粧品による処置並びに治癒的及び修復的な処置を含むものとしても理解される。
【0101】
組成物は、本発明による微生物又はそのアナログ、変異株、誘導株若しくはフラグメントの1つだけではなく、本発明による微生物の混合物、又はアナログ、誘導株、変異株若しくはフラグメントの混合物、又は本発明による微生物とそのフラグメント、誘導株、変異株若しくはアナログとの混合物も含有し得ることが好ましい。
【0102】
組成物は好ましくは、固体又は液体又は粘性体又はエアロゾルであってもよく、例えば粉末、錠剤、溶液、顆粒、懸濁液、エマルション、カプセル、ペースト、ゲル、スプレー液等の形態、すなわち投与に適した任意の形態で使用することができる。組成物が更なるプロバイオティクス、防腐剤又は他の抗菌物質と、好ましくは任意であるが、サッカリド及び防腐剤、香料、甘味料、ビタミン、ミネラル、芳香剤等とを含むことも好ましい。欧州特許出願公開第2133414号には、好ましい組成物に使用される多くの成分が挙げられており、これらは本公報にはっきりと言及されている。さらに、充填剤、流量制御剤、レオロジー改質剤、軟化剤、安定化剤、又は反応性架橋モノマー、例えばメタクリレートが、好ましい組成物中に存在し得る。これに関しては、組成物がEDTA、マグネシウム、カルシウム、SDS若しくはそれらの塩、又は類似の塩等の物質を含有することが好ましい。これらの物質が初めに、化膿連鎖球菌による生物膜の形成を阻害するだけでなく、好ましい微生物の共凝集能を促進することは全くもって驚くべきことであった。本発明による組成物は、とりわけ身体衛生、治療及び予防に使用され、本発明による少なくとも1つの微生物、又はその誘導株、変異株、フラグメント若しくはアナログを含有する。
【0103】
プロバイオティクスとして、すなわち経口摂取することができる、生きている微生物を含有し、プロバイオティクスを摂取する人及び/又はプロバイオティクスが投与される人に対する健康増進効果を有する製剤として組成物を使用することが好ましい。かかる製剤は、食品若しくは食品添加剤又は動物飼料若しくは飼料添加剤又は薬剤であり得る。本発明によれば、組成物は、ヒトだけでなくあらゆる商用動物及びペット、すなわちイヌ、ネコ、ウマ、ラクダ、タカ等に使用することができる。微生物及び/又はそれを含有する組成物を様々な方法で使用して、これを達成することができる。例えば、この組成物をチュアブル棒、板ガム、動物用スナック、動物飼料、ペレット、齧ったり舐めたりする商品又は動物用玩具等に適用することが好ましい。とりわけ微生物又は組成物を、動物及びヒトの咽喉部でとりわけ化膿連鎖球菌により引き起こされる細菌感染症の治療及び/又は予防に使用することが好ましい。
【0104】
本発明による組成物に使用される投与量及び投与自体は、特定の使用及び特定の患者、とりわけ年齢、体重、全身状態等によって様々であり、この組成物を使用する当業者の能力及び評価の範囲内である。
【0105】
本発明による組成物は化粧品、医療品又は医薬品とすることができる。組成物は、0.001wt%〜20wt%、好ましくは0.005wt%〜10wt%、特に好ましくは0.01wt%〜5wt%の量で乳酸菌を含有することが好ましい。とりわけ0.001wt%〜20wt%の量を使用することで、組成物(composition)がより長期間有用となる、すなわち安定性を維持するようになることは全くもって驚くべきことであった。乳酸菌が0.005wt%〜10wt%の量で使用される場合、これによって、組成物のレオロジー特性にプラスの効果が得られるとともに、粘性が低く、そのため皮膚上でより良好に分散するか又は口腔により容易に導入される組成物がもたらされることは驚くべきことであった。0.01wt%〜5wt%の量での乳酸菌の使用によって驚くべきことに、互いにより良好に結合する組成物の構成要素がもたらされ、作業時間を短縮して均質な組成物を供給することができ、それにより生産コストが削減される。しかしながら、本明細書に明記したものとは異なる他の量も特定の用途に使用することができるは自明のことである。本発明による乳酸菌がヒトの唾液中で極めて高い共凝集活性を有することは特に驚くべきことであった。生じた化膿連鎖球菌との凝集体は、極めて良好な安定性を有し、そのため洗い流すか、又は嚥下することによって非常に良好かつ効率的に除去することができる。
【0106】
驚くべきことに共凝集効率は、補因子(EDTA、MgCl
2、CaCl
2、SDS)の存在下で大幅に増大することができる。とりわけEDTAが本発明による乳酸菌と化膿連鎖球菌との共凝集に強いプラスの効果を有することは絶対に予期することができないものであった。更に上述のように、好ましい実施の形態によれば、組成物及び/又は微生物を咽喉及び扁桃腺の感染症の予防及び治療の分野に使用することで、上述の病原微生物と共凝集し、すなわち上述の病原微生物に結合させることができる。この共凝集体(coaggregate)は、嚥下する若しくは洗い流すことによって容易に除去することができ、及び/又はとりわけ懸濁液の場合は洗い流すことができ、それにより有利に病原体数の低減が達成される。乳酸菌及び/又はそれを含有する組成物をこの目的のために多様な方法で使用することができる。例えば、これらをスプレー液、うがい液又は洗口液中で、ロゼンジ若しくは咽喉錠、香錠、コーティングピル、エアロゾル、歯磨き粉、ジュース、シロップとして、又は食品中の添加剤として及び/又は栄養補助食品として使用することができる。そのため、本発明は、身体衛生及び医療品及び予防法の分野で使用され、かつ本発明による乳酸菌を含有するあらゆる製品にも関する。したがって上記の実施の形態は、哺乳動物の治療、治療法及び予防の分野で考慮されるものである。したがって微生物及び/又はそれを含有する組成物は様々な方法で使用することができる。
【0107】
とりわけ本発明による組成物及び/又は本発明による微生物を使用して、咽喉症状、萎縮性乾燥咽頭炎(Pharyngitisatrophicans et sicca)、乾燥性咽頭炎、外側口峡炎(Angina lateralis)、化膿連鎖球菌によって引き起こされる扁桃炎の治療又は予防用の調合薬を作製することができることが好ましい(preferable)。本発明による微生物及びそれを含有する組成物は、これらの疾患を有利に治療及び/又は予防することができる作用物質を提供する。微生物及び/又はそれを含有する組成物は、人間医学及び獣医学の両方に、とりわけ先に示したようにイヌ、ネコ、ウマ、ラクダ及びタカに使用することができる。本発明による組成物及び/又は微生物、若しくはそのフラグメント、誘導株若しくは変異株を、とりわけ食品添加剤、衛生製品及び/又は微生物を含有する衛生製品として、若しくは医薬製剤として使用することができる。
【0108】
本発明は、本発明による特性を有するラクトバチルス属の種の微生物を特定及び/又は選択する方法であって、少なくともa)フィブロネクチンに結合する化膿連鎖球菌から選択される病原微生物の集団をインキュベーションする工程と、b)調査対象のラクトバチルス属の微生物を添加するとともに集団をインキュベーションする工程であって、病原微生物と調査対象のラクトバチルス属の微生物との間で特異的な結合を形成する工程と、c)上清を除去することによって結合していないラクトバチルス属の微生物を分離する工程と、d)結合及び凝集したラクトバチルス属の微生物に関してフィブロネクチンの結合を測定する工程とを含む、方法にも関する。
【0109】
好ましい実施の形態では、本発明による方法は、化膿連鎖球菌のフィブロネクチンへの結合の阻止を調査する工程も含む。ここでは調査対象のラクトバチルス属の微生物を、フィブロネクチンに結合する蛍光標識した病原微生物のインキュベーション中に添加する。結合していない細胞を除去した後、フィブロネクチンとの結合の特異的な定量化は、試験対象の微生物を添加することによって蛍光を対照と比較して測定することで行うのが好ましい。
【0110】
上述の特色及び以下にこれから記載する特色は、特定の組合せで使用することができるのみならず、本発明の範囲を超えない範囲内では単独でも使用することができることは自明である。
【0111】
更なる利点は添付の図面及びこれに関して行われる実験、並びに例示的な実施形態から導かれるものである。実験は全ての好ましい乳酸菌を用いて行われるが、ここでは幾つかの実験だけを示している。当業者は実施例を基に本発明を再現することができる。