特許第5916865号(P5916865)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916865
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】塔状構造物の傾斜を求める方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/06 20060101AFI20160422BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20160422BHJP
   G01C 9/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   G01C9/06 E
   F03D11/04 A
   G01C9/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-528961(P2014-528961)
(86)(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公表番号】特表2014-531577(P2014-531577A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】EP2012067348
(87)【国際公開番号】WO2013034607
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2014年6月17日
(31)【優先権主張番号】102011053317.6
(32)【優先日】2011年9月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514056919
【氏名又は名称】ゲーエル ガラード ハッサン ドイチュラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイニング、ニルス
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−307864(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02133563(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0140761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/00−9/06
G01B 21/00−21/32
F03D 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力エネルギー設備(1)といった塔状構造物(2)の重力場に対する傾斜を、センサ測定軸方向の静的加速度を検知するために設けられた加速度センサ(7)からの出力信号を解析することによって求める方法であって、
前記加速度センサ(7)はメインフレームといった構成部材(4)に取り付けられており、前記構成部材は前記塔状構造物(2)の長手軸(3)周りに少なくとも180°の方位角範囲または360°の方位角範囲で回転可能であり、構成部材(4)を測定のたびに回転させながら各種の方位角において継時的に出力信号が測定されそして記録されて測定値群が得られ、
前記構成部材(4)の回転面に対するセンサ測定軸(8)の傾きが、前記測定値群から求められるか、または、前記センサ測定軸(8)の傾きにのみ起因する、重力加速度を単位としての時間平均加速度の値を表す軸におけるゼロ値に相当する線に対する前記測定値群のずれを表すオフセット(14)を算出することで求められ、
回転面に対するセンサ測定軸(8)の傾きを考慮しつつ前記測定値群を解析することにより傾斜が求められること
を特徴とする塔状構造物の傾斜を求める方法。
【請求項2】
構成部材(4)が一定の方位角ずつ回転させられること
を特徴とする請求項1に記載の塔状構造物の傾斜を求める方法。
【請求項3】
設定した各方位角において一連の出力信号が継時的に測定されそして記録された後、その一連の出力信号から平均値が求められそして記録され、その平均値が測定値群の要素となること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の塔状構造物の傾斜を求める方法。
【請求項4】
測定値の解析において、測定値群の最大値(9,12)および最小値(10,13)の選定と、前記最大値(9,12)と前記最小値(10,13)との差分の算出が行われること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の塔状構造物の傾斜を求める方法。
【請求項5】
センサ測定軸(8)が構成部材(4)の回転面と平行な場合に、傾斜が下記の数1を用いて算出されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の塔状構造物の傾斜を求める方法。
【数1】
ここで、αは傾斜角を表しており、gは重力加速度を表しており、amaxは測定値群の最大値を表しており、aminは測定値群の最小値を表している。
【請求項6】
傾斜が下記の数2を用いて算出されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の塔状構造物の傾斜を求める方法。
【数2】
ここで、βは前記回転面に対するセンサ測定軸(8)の傾きを表している。
【請求項7】
測定値群の最大値(9,12)と測定値群の最小値(10,13)を合計した和を2で除算することで前記オフセット(14)が算出されること
を特徴とする請求項1に記載の塔状構造物の傾斜を求める方法。
【請求項8】
傾きが、下記の数3を用いてオフセット(14)から求められることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項、または請求項6、または請求項7に記載の塔状構造物の傾斜を求める方法。
【数3】
ここで、βは傾きを表しており、gは重力加速度を表しており、aは測定値群のオフセット(14)を表している。
【請求項9】
構成部材(4)に第2の加速度センサが取り付けられており、そのセンサ測定軸が前記構成部材(4)の前記回転面と実質的に平行かつ第1の前記加速度センサ(7)のセンサ測定軸と垂直に向けられており、第1の前記加速度センサ(7)からの出力信号に加えて前記第2の加速度センサからの出力信号が測定されそして記録されて、こうして得られた第2の測定値群を解析することにより傾斜が付加的に求められること
を特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の塔状構造物の傾斜を求める方法。
【請求項10】
構成部材(4)に更なる加速度センサが取り付けられており、そのセンサ測定軸は前記構成部材(4)の前記回転面と実質的に垂直に向けられており、第1の前記加速度センサ(7)からの出力信号に加えて前記更なる加速度センサからの出力信号が測定されそして記録されて、こうして得られた更なる測定値群を解析することにより傾斜が付加的に求められること
を特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の塔状構造物の傾斜を求める方法。
【請求項11】
各出力信号について方位角が特定され、測定値群、第2の測定値群、および/または更なる測定値群が、複数の順序対からなる関数グラフを生成して傾斜の方向を算出するために出力信号のそれぞれと関連付けて方位角を記録することにより補完されること
を特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の塔状構造物の傾斜を求める方法。
【請求項12】
風力エネルギー設備(1)といった塔状構造物(2)のメインフレームといった構成部材(4)が前記塔状構造物(2)の長手軸(3)周りに少なくとも180°の方位角範囲または360°の方位角範囲で回転可能となっていて、センサ測定軸方向の静的加速度を検知するために設けられた加速度センサ(7)が前記構成部材(4)に取り付けられている前記塔状構造物(2)の、重力場に対する傾斜を、前記加速度センサ(7)からの出力信号を解析することによって求める、塔状構造物の傾斜を求める方法を実行する装置であって
記装置は、解析ユニット、および、前記加速度センサ(7)からの出力信号を読み取るための手段を備えており、
前記解析ユニットは、
測定のたびに回転させられる前記構成部材(4)の各種の方位角について継時的に前記加速度センサ(7)の出力信号を測定してそして記録して測定値群を得て、
前記構成部材(4)の回転面に対するセンサ測定軸(8)の傾きを、前記測定値群から求めるか、または、前記センサ測定軸(8)の傾きにのみ起因する、重力加速度を単位としての時間平均加速度の値を表す軸におけるゼロ値に相当する線に対する前記測定値群のずれを表すオフセット(14)を算出することで求め、
回転面に対するセンサ測定軸(8)の傾きを考慮しつつ前記測定値群を解析することにより傾斜を求めること
を特徴とする塔状構造物の傾斜を求める方法を実行する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ測定軸方向の静的加速度を検知するために設けられた加速度センサからの出力信号を解析することによって塔状構造物、特に風力エネルギー設備の重力場に対する傾斜を求める方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力エネルギー設備の建築物、特に沖合いのものにおいては、その基礎部がずれを起こしてしまうという問題が発生する。長尺の風力エネルギー設備に特有の、揺れの可能性は風力エネルギー設備のずれの問題をさらに大きくする。軸受けに不均一な負荷がかかるなどの、風力エネルギー設備において望ましくない様々な影響が生じるこうした望ましくないずれを発見するために、傾斜を求める方法全般についての要望がある。
【0003】
風力エネルギー設備は測定が行われる最中にも揺れてしまうことがよくあるため、記録中に生じる測定信号の振幅を大幅に越えて加速度センサの測定信号に影響を及ぼす加速度に関連付けた測定を行うことは困難である。
【0004】
特許文献1にはこの種の方法が開示されており、複数の工程を踏んで風車のナセル内の加速度センサからの測定値に基づいて信号の解析をした結果としてナセルの加速度、速度、位置、傾斜を求めている。
【0005】
実際に用いられている他の方法としては、ビデオカメラを介して読み取られる水準器の気泡に基づき風力エネルギー設備の傾斜を求めるという方法がある。この方法では、どんな場合でも測定条件が満足される、というわけにはいかない。測定される傾斜が小さいと、測定に用いられる加速度センサの、塔状構造物の垂直軸に対する傾きが、許容範囲を越えて測定結果を歪曲してしまうことがある、という更なる問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2133563号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、冒頭に述べた種類の塔状構造物の傾斜を求めるための、使用が簡便でそしてどんな風力エネルギー設備でも実施できる方法、例えば定期検査の枠組み内において、測定担当者が携帯式の測定器具を用いるなどして行える方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、冒頭に述べた種類の塔状構造物の傾斜を求めるための方法に係る本発明によって達成することができ、この方法においては、加速度センサは構成部材、好ましくはメインフレームに取り付けられており、この構成部材は塔状構造物の長手軸の周りに少なくとも180°、好ましくは360°の方位角範囲で回転することができ、様々な方位角において出力信号が継時的に測定、記録され、構成部材は測定と測定の間に回転させられ、こうして得られた測定値群を解析することにより傾斜が求められる。この発明においては、加速度センサは例えば他の理由で既に設けられているもの、大抵は風力エネルギー設備の揺れを測定するためのものを用いることができる。加速度センサを用いて傾斜を測定するための既知の方法と比べると、様々なナセルの方位角における出力信号を記録することで、必要とされる測定値と関数的に関連する多数のデータ点を得ることができるという利点があり、測定値の統計的平均を良好になすことができる。このことは、測定対象が通常は直立している場合の冒頭に述べた揺れについて非常に好都合である。本発明においては、重力加速度とその方向を検知できるようにするために、静的加速度も測定可能な既知の加速度センサ全般が好適な加速度センサとなる。例えば、最も単純な形式としては、可動の試験質量体を備えた装置を用いることができる。ただし、柔軟な石英ロッドや磁気的に安定化された質量体を用いたシステムも考慮の内であり、究極的には、傾斜用の微小電気機械システム(mikroelektromechanische Systeme、MIMS)が適切である。いずれにせよ、装置が一つの測定軸に沿った加速度のみを出力することが重要である。本発明における加速度センサは、回転可能な機械室の塔軸周りに嵌め合わせるのが特によい。一連の測定は、理想的には構成部材の全回転に応じて360°の範囲における各種の方位角に対して行われる。このことは、方位角が180°までの場合に比べて測定信号を2倍にできるという特別の利点がある。360°の全回転が行われる場合には、対称性により角度範囲0°から180°の測定について余剰の測定値群が得られ、これにより測定値の統計がより良いものとなる。
【0009】
傾斜を求める目的のための測定値群の解析を単純化するために、構成部材は一定の方位角ずつ回転させるのがよい。例えば、36個の値からなる測定値群を得るために、方位角10°ごとに測定を行うとよい。
【0010】
設定した各方位角において一連の出力信号が継時的に測定されそして記録された後、その一連の出力信号から平均値が求められそして記録され、その平均値が測定値群の要素として用いられる、という場合には、塔状構造物の揺れに起因する測定誤差の除去が促進される。例えば、測定が行われる際に設定されるいずれの方位角についても高サンプリングレートで3分以上の測定を行うとよい。平均化をすることにより、加速度の測定値のうち時間依存性のある部分の大半が取り除かれる。
【0011】
本発明の発展形態として、この方法における解析に、測定値群からの最大値・最小値の選定、および、前記最大値と前記最小値との差分の算出が含まれているとよい。ここで、加速度信号の最大値は、最大の方向成分が垂直に配向されるように加速度センサがその測定軸を配向されているときの値であることが期待される。これと関連する最小値は、測定値群のうち方位角を180°ずらせた対応する測定値が該当する。
【0012】
本発明においては特に、センサの測定軸が構成部材の回転面と実質的に平行に向けられている場合に、傾斜が下記の数1を用いて算出されるとよい。
【数1】
【0013】
αは傾斜角を表しており、gは重力加速度を表しており、amaxは測定値群の最大値を表しており、aminは測定値群の最小値を表している。図面を参照しながら後述においてより詳しく説明する幾何学的な考察によれば、回転可能な構成部材の全回転、0°から360°にわたる方位角範囲に属する測定点についての一連の測定値のうち最大加速度および最小加速度の値が選定されると、求めようとしている塔状構造物の鉛直線方向に対する傾斜角度はこの式で算出されることがわかる。ここで、最大値は、センサ測定軸の垂直成分が垂直線と下向き平行に配向されているときの、回転可能な構成部材の方位角姿勢に対応する。これに対し、最小値は、センサ測定軸の垂直成分が垂直上向き、すなわち重力と反対向きになっているときの、回転可能な構成部材の方位角度値に対応する。
【0014】
下記の数2で傾斜を算出するようにすると、この方法はかなり向上したものとなる。
【数2】
【0015】
βは回転面に対するセンサ測定軸の傾きを表している。図面中の描写と関連して説明する幾何学的考察の通り、構成部材の回転面に対するセンサ測定軸の傾きが生じる可能性についての検討は、こうした関数的関係によって留意される。これにより、本発明では、傾き角βがわかっていれば、その影響は、傾斜角度αを算出するための測定値群の解析において、正確に算定することができる。
【0016】
本発明に係る方法の好ましい形態においては、回転面に対するセンサ測定軸の傾きが測定値群から求められ、好ましくは、測定値群の変動部分のオフセットを算出することで求められ、傾斜を求める際に傾きが考慮される。図面を参照しながら後述においてより詳しく説明する幾何学的な考察によれば、回転面に対するセンサ測定軸の傾きβがゼロにならない場合、構成部材の回転面に対して傾いているセンサ測定軸による測定結果の、方位角とともに変化する部分は、ゼロ点に対するオフセットの形で変化するということがわかる。測定値群からオフセットを求めることは、それ自体は既知の、曲線描画についての通例の手法を用いた従来の信号処理によって十分に可能である。
【0017】
本発明においては特に、最大値と最小値を合計し、その和を2で除算してオフセットを求めるのがよい。幾何学的な理由から、回転の間に測定信号が方位角に依存して正弦曲線的に変動するとみなせる場合には、ゼロ点を通過する傾き角βとともに変動する方位角の部分は水平軸について対称であり、そのため最大値と最小値の合計はゼロとなる。
【0018】
本発明に係る方法の好ましい形態においては、下記の数3を用いてオフセットから傾きを求める。
【数3】
【0019】
βは傾きを表しており、gは重力加速度を表しており、aは測定値群の変動部分のオフセットを表している。本発明に係る測定方法について図面を参照しながら後述においてより詳しく説明する幾何学的考察によれば、傾きをなくすためセンサ測定軸の垂直方向の傾斜がないようにするべくセンサ測定軸を向けるように方位角が設定された場合に得られる値によって、測定した加速度のオフセット値が特定される。
【0020】
本発明に係る方法の信頼区間を改善するため、第2の加速度センサを、そのセンサ測定軸が構成部材の回転面と実質的に平行かつ第1の加速度センサのセンサ測定軸と直角に向くように構成部材へ取り付けて、第1の加速度センサの出力信号だけでなく第2の加速度センサの出力信号も測定されそして記録されるようにして、こうして得られた第2の測定値群を形成することにより傾斜を付加的に求めるようにしてもよい。測定方法に関する幾何学的考察によれば、第2の加速度センサによる測定値群は、第1の測定値群を方位角について90°変位させたものに対応することがわかる。本発明において、第1の加速度センサと交差した第2の加速度センサの測定値群を解析することは冗長性を生み、これは得られた傾斜度の統計的平均を取る際に有利に働く。また、多くの風力エネルギー設備は交差した複数の加速度センサや一体型の二軸加速度センサを予め備えている。そのため、本発明に係る方法は、この種の風力エネルギー設備において、機械室の回転の際にこれら二つの加速度センサからの出力信号が解析されるという点について良好に実施することができる。回転面に対する第2の加速度センサの傾きに関する検討については、上述した第1の加速度センサについての検討と同様に、本発明において測定値群からの算出について検討されるのと類似のことおよび類似の方法が適用される。
【0021】
更なる加速度センサを、そのセンサ測定軸が構成部材の回転面と実質的に垂直に向くように構成部材へ取り付け、第1の加速度センサの出力信号だけでなく更なる加速度センサの出力信号も測定されそして記録され、こうして得られた更なる測定値群を形成することにより傾斜を付加的に求めるようにすると、本発明に係る方法がさらに改良される。本発明において、この更なる加速度センサは、第1の加速度センサとは垂直に配向されるとともに、第2の加速度センサが用いられている場合にはそれとも垂直に配向される。この更なる加速度センサからの出力信号は、合力の考え方からすると理論上は方位角の変化に対して不変であり、そのため他の加速度センサの測定値群についての基準値として用いることができる。特に、センサに高い交差感受性があるときには、精度を高めるべく、交差感受性の影響を低減するために垂直の加速度センサを用いることができる。交差感受性というのは、加速度センサが、センサ測定軸と直角に発生する加速度をも感知するという意味として理解されたい。
【0022】
最後に、本発明に係る方法の好適な形態においては、出力信号について方位角が決定され、出力信号のそれぞれと関連付けて方位角を記録することにより複数の順序対からなる関数グラフを生成して測定値群、第2の測定値群および/または更なる測定値群を補完して、傾斜の方向を算出するようにするとよい。ここで、解析においては最大値および最小値ならびにオフセットのみが用いられるので、本発明に係る方法の基本原理としては方位角の絶対値を記録する必要はないが、方位角を算出しておくとセンサ測定軸の向きを確実に特性化するのに用いることができる。これにより傾斜の向きを求めることができる。
【0023】
最終的に、本発明の目的は、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に係る発明の方法を実行する装置により達成される。この装置は、解析ユニット、および、加速度センサからの出力信号を読み取るための手段を備えており、加速度センサは、測定対象の風力エネルギー設備の一部として元々備えられているものか、あるいは本発明に係る装置の一部として測定対象の風力エネルギー設備に取り付けられるものである。解析ユニットは、方法についての請求項に記載された解析を実行するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、好ましい実施形態については図面を参照しながら例示的に説明されており、さらなる利点の詳細については図面中の各図より読み取れる。
機能的に同一の部分には同一の符号を付している。
図面中の各図は詳しくは以下のことを示している。
図1】傾斜した風力エネルギー設備の概略側面図であり、機械室は0°の方位角姿勢に合わされている。
図2図1と同様のものを示しているが、機械室は180°の方位角姿勢に回転させられている。
図3図1図2と同様のものを示しているが、機械室は90°の方位角姿勢である。
図4図1図2図3と同様のものを示しているが、270°の方位角姿勢である。
図5】方位縦軸に対して傾いていない加速度センサについての測定値群のグラフを例示的に描図したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は風力エネルギー設備1の側面図であり、この風力エネルギー設備は塔状構造物2と機械室4を備えており、機械室は塔状構造物2の上端において、塔状構造物2の長手軸3周りに様々な方位角γで回転することができる。説明のために、機械室4脇の回転体5を概略的に図示している。塔状構造物2はその長手軸3を、垂直線6に対してそして重力の働く方向に対して、角度αの傾斜となるように向けている。機械室4には加速度センサ7が取り付けられており、その測定軸8は矢印で表されている。測定軸8は機械室4の回転面に対して傾き角度βで傾くように配向されており、ここで、回転面は機械室4の上縁で表されている。
【0026】
図2図1と同様の図示規約で風力エネルギー設備を示している。ただし、図1に示した状態とは異なり、機械室4が図1の姿勢と比べて塔状構造物2の長手軸3周りに180°回転させられている。このことは、側面図において回転体5が機械室4の右手側に図示されていることから認識できる。加速度センサ7とその測定軸8は、垂直軸6に対して図1に示す姿勢とは異なる角度をとっていることがわかる。この実施形態においては、風力エネルギー設備ではよく行われているように、塔状構造物2の長手軸3周りに機械室4が回転できるようになっており、その回転面が塔状構造物2の長手軸3と垂直に位置するようになっている。ただし、信号解析に適切な調整をすることにより、機械室4の回転軸が塔状構造物2の長手軸3と一致していない場合でも、本発明に係る方法を用いることができる。そして、図1図2に係る風力エネルギー設備1は図1図2と同様の図示規約で図3に図示されている。ここで、図1図2と異なり、機械室4は、図1と比べて塔状構造物2の長手軸3周りに90°だけ回転させられている。このことは、図示している面の裏側に回転体5があるように模式的に示されていることから認識できる。この姿勢においては、加速度センサ7の測定軸8は、交差線で示している通り、図示している面に対して直角に向いている。図3に図示されたγ=90°の方位角姿勢においては、加速度センサ測定軸8は図示している面と平行な成分を持たない。
【0027】
そして、図4においては、図1図2図3に係る風力エネルギー設備1が270°の方位角姿勢で図示されている。この方位角姿勢は、回転体5がここでは図示している面について機械室4の手前にあるという形で模式的に図示されている。したがって、この姿勢では、加速度センサ7の測定軸8は、点で示している通り、図示している面から飛び出る方向に向いている。
【0028】
本発明に係る方法を実施するため、機械室4、そしてこれに取り付けられる加速度センサ7は、図1に係るγ=0°の方位角姿勢から一定の増分で回転させられてゆき、図3に係る90°の方位角姿勢、図2に係る180°の方位角姿勢、図4に係る270°の方位角姿勢を経て、図1に係る初期姿勢に戻る。加速度センサ7からの出力信号は、方位角γの各姿勢において記録される。出力信号の時間依存部分をできるだけ効果的に除去するため、比較的高いサンプリングレートで例えば3分間の時間間隔で測定が行われる。そして時系列データから平均値が求められ、その平均値が、測定値群のうちの、対応する方位角と関連付いた測定値としてまとめられる。
【0029】
図5は、本発明に係る上述の方法により得られた2つの測定値群のグラフについての理想的な描図である。これに関して、上下軸は、装置内で計算された、重力加速度gの時間平均加速度値aを表している。これに対して左右軸は、方位角γの角度値、すなわち風力エネルギー設備1の塔状構造物2の長手軸3周りでの機械室4の回転角度を表している。ここで、本方法において左右軸上にγの角度数値を書き入れることは原理的には必ずしも必要ではない。むしろ、測定値群が方位角γの増分を一定としてプロットされていることが保証されていれば十分である。
【0030】
菱形で示される図5の下側の測定値群は、機械室4の回転面に対する加速度センサ測定軸の傾き角度βがゼロ、つまり傾きがない場合に得られる、理想的な測定値群の曲線を示している。この場合には、関数グラフの推移がゼロラインに関して対称となることがわかる。測定値群の解析にあたり、ここでは本発明にしたがって最大値9と最小値10を選定するとよい。そして、最大値9と最小値10との差分11を算出するとよい。求めるべき傾斜角度αは、この差分から、下記の数4を用いて求めることができる。
【数4】
【0031】
そして、センサ軸が回転面に対してゼロとならない角度βの向きになっている加速度センサについての理想的な測定値群である、正方形で示される図5の上側の測定値群の場合には、下記のことが行われる。解析においては、ここでも最大値12と最小値13が選定される。ただし、これに加えて、ゼロラインに対する測定値群のオフセット14が算出される。このオフセットは、測定信号の、γと共に変動する部分の、ゼロラインに対するずれを表している。ここで、図5に係る上側の測定値群の解析にあたっては、求めるべき傾斜角度αは下記の数5を用いて求められる。
【数5】
【0032】
ここで、上記の数5における角度βは、オフセット14と下記の数6を用いて事前に求められる。
【数6】
【0033】
これの背景には、図1ないし図4における基礎的幾何学要素に基づく幾何学的考察によれば、測定値は、傾斜角αと角度βを示す測定センサの傾きに対して、asensor=g・sin(β+αcosγ)の関数的関係があることが示される、ということがある。こうした数式および図1ないし図4によれば、図1に示すようなγ=0およびγ=360°のときに最大値9,12が得られ、センサ7の傾きβは測定される加速度値の増加をもたらすことがわかる。同様に、最小値10,13は、図2に図示されている方位角180°の姿勢に対応する。理解のために、加速度センサはいつでも加速度センサ軸8の方向を向いた加速度成分のみを測定するということを常に留意されたい。オフセット14の算出およびその重要性については、図3および図4を参照しながら解説する。方位角90°および270°の姿勢においては、傾斜角度αは加速度センサ軸8方向の加速度成分には寄与しない。
【0034】
したがって、方位角のこれらの姿勢においては、加速度センサのゼロからの変化値は、角度βの傾きにのみ起因している。
【0035】
ここで、図5を参照して解説すると、最大値9,12と最小値10,13のみが、左右軸におけるそれらの位置に関わらず解析されるべきであるので、測定値群の解析は方位角γの絶対値についての正確な情報に基づくものではない。最も単純な場合では、オフセット14は、最大値12から最小値13を減算してから、その差分の半分を最大値12から減算することで求められる。
【0036】
ここでの説明は理想的な条件から得られたものであることを理解されたい。実際には、当業者に知られている方法による、信号の適切な補整が最初に必要な場合もある。
【0037】
図5には図示しないが、図面からきわめて明らかなこととして、実質的に機械室4の回転面内にあるが加速度センサ7に対しては90°向きを変えてある第2の加速度センサを追加すると、同様の、ただし左右に90°ずらした曲線が描かれる。こうした類の第2の加速度センサの解析は同様の方法で行うことができ、第1の加速度センサの傾きとは異なることもある傾き角についても同様に検討することができる。加速度センサの交差感受性によって生じ得る影響を調べるため、機械室4の長手軸の方向に取り付けられかつ回転面とは垂直に取り付けられた更なる加速度センサを用いるのもよい。
【0038】
以上のように、本発明は、センサ測定軸の方向における静的加速度を検知するために設けられた加速度センサからの出力信号を解析することで塔状構造物、特に風車の、重力場に対する傾斜を測定するための方法を提供するものであり、この方法は、加速度センサの取り付けにあたって特に精度を要求されないので使いやすい。塔状構造物2の長手軸3周りの機械室4の回転は、風に対して最適な方向を向くために、従来のあらゆる風力エネルギー設備1においてなされる。よって、本発明に係る測定方法は、風力エネルギー設備に改造を施すことなく実施できるという利点がある。冒頭においても述べた通り、多くの風力エネルギー設備は加速度センサ7を元々備えており、場合によっては複数の加速度センサを備えているので、いずれにせよ多くの場合で本発明の実施にあたり加速度センサの取り付けをしなくてよい。代わりに必要なのは、実装済みの加速度センサからの信号を検出することだけである。
【符号の説明】
【0039】
1 風力エネルギー設備
2 塔状構造物
3 長手軸
4 機械室
5 回転体
6 垂直線
7 加速度センサ
8 加速度センサ測定軸
9 最大値、傾きなし
10 最小値、傾きなし
11 差分、傾きなし
12 最大値、傾きあり
13 最小値、傾きあり
14 オフセット
図1
図2
図3
図4
図5