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特許5916871ドーピング物質を有する有機電子素子、ドーピング物質の使用、及び前記ドーピング物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916871
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】ドーピング物質を有する有機電子素子、ドーピング物質の使用、及び前記ドーピング物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20160422BHJP
   C07C 251/24 20060101ALI20160422BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20160422BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20160422BHJP
   C07F 1/08 20060101ALN20160422BHJP
   H01L 51/46 20060101ALN20160422BHJP
   G09F 9/30 20060101ALN20160422BHJP
   H01L 27/32 20060101ALN20160422BHJP
【FI】
   H05B33/22 D
   H05B33/14 A
   C07C251/24
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 220A
   H01L29/28 250H
   !C07F1/08 C
   !H01L31/04 162
   !G09F9/30 365
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-536213(P2014-536213)
(86)(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公表番号】特表2015-502653(P2015-502653A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】EP2012070537
(87)【国際公開番号】WO2013057130
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2014年6月17日
(31)【優先権主張番号】102011084639.5
(32)【優先日】2011年10月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514272140
【氏名又は名称】オスラム オーエルイーディー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OSRAM OLED GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス カーニツ
(72)【発明者】
【氏名】レナーテ ケラーマン
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト ヘンドリク ザントマン
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シュミート
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ハウケ ヴェムケン
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/066898(WO,A1)
【文献】 特開2002−083684(JP,A)
【文献】 特開2010−010691(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/102709(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/062578(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・基板(10)、
・前記基板(10)上の第一電極(20)、
・前記第一電極(20)上にある少なくとも1つの有機機能層(30)、
当該機能層は、p型ドーピング物質が導入されたマトリックス材料を含有するものであり、及び
・前記少なくとも1つの有機機能層(30)上にある第二電極(90)
を有する有機電子素子であって、
前記p型ドーピング物質が銅錯体を含有し、当該銅錯体は、下記一般式I又はIIのいずれか:
【化1】
を有し、
前記式中、R1、R1'、R2x、R2x'(ただし、x=a、b、c、又はd)は相互に独立して、非分枝状、分枝状、縮合された、環状の、非置換の及び置換されたアルキル基、置換された及び非置換の芳香族化合物、置換された及び非置換の複素環式芳香族化合物、電子求引性置換基、並びに水素を含む群から選択される、
前記有機電子素子。
【請求項2】
前記銅錯体が、酸化状態IIの銅カチオンを含有する、請求項に記載の有機電子素子。
【請求項3】
1とR1'、及びR2xとR2x'が、それぞれ同一である、請求項に記載の有機電子素子。
【請求項4】
1とR1'が相互に結合されている、請求項に記載の有機電子素子。
【請求項5】
1、R1'、R2x、及びR2x'のうち少なくとも1つが、電子求引性置換基を有する、請求項に記載の有機電子素子。
【請求項6】
前記少なくとも1つの有機機能層(30)が正孔伝導性である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の有機電子素子。
【請求項7】
前記マトリックス材料が、有機低分子、ポリマー、又はこれらの混合物を含有する正孔輸送材料である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の有機電子素子。
【請求項8】
前記p型ドーピング物質の分子がそれぞれ、前記マトリックス材料の少なくとも1つの分子によって配位している、請求項1からまでのいずれか1項に記載の有機電子素子。
【請求項9】
前記p型ドーピング物質が、前記マトリックス材料中に0.1〜50体積%の濃度で存在している、請求項1からまでのいずれか1項に記載の有機電子素子。
【請求項10】
電界効果トランジスタ、太陽電池、光検知器、光学電子素子、発光ダイオード、及びディスプレーを含む群から選択されている、請求項1からまでのいずれか1項に記載の有機電子素子。
【請求項11】
前記機能層が、正孔輸送層として、及び/又は電荷生成層の正孔伝導性部分層として成形されている、請求項1から10までのいずれか1項に記載の有機電子素子。
【請求項12】
下記一般式I又はIIのいずれか:
【化2】
[前記式中、R1、R1'、R2x、R2x'(ただし、x=a、b、c、又はd)は相互に独立して、非分枝状、分枝状、縮合された、環状の、非置換の及び置換されたアルキル基、置換された及び非置換の芳香族化合物、置換された及び非置換の複素環式芳香族化合物、電子求引性置換基、並びに水素を含む群から選択される]
を有する銅錯体を、正孔輸送材料においてp型ドーピング物質として用いる使用。
【請求項13】
アリールオキシ基とイミニウム基とを有する配位子を少なくとも1つ含有する銅錯体を備えるp型ドーピング物質の製造方法であって、前記配位子を少なくとも1つ合成し、同時に銅カチオンを錯体化し、
前記銅錯体が、下記一般式I又はIIのいずれか:
【化3】
を有し、
前記式中、R1、R1'、R2x、R2x'(ただし、x=a、b、c、又はd)は相互に独立して、非分枝状、分枝状、縮合された、環状の、非置換の及び置換されたアルキル基、置換された及び非置換の芳香族化合物、置換された及び非置換の複素環式芳香族化合物、電子求引性置換基、並びに水素を含む群から選択される、
前記製造方法。
【請求項14】
1、R1'、R2x、及びR2x'のうち少なくとも1つが、電子求引性置換基としてフッ素を有する、請求項1に記載の有機電子素子。
【請求項15】
前記銅錯体が、下記構造式:
【化4】
を有し、
前記式中、R及びR1は、請求項1におけるR1及びR2x(ただし、x=a、b、c、又はd)と同一である、請求項1に記載の有機電子素子。
【請求項16】
前記p型ドーピング物質が、電子受容体特性を有し、マトリックス材料上に正孔を生成させる、請求項1に記載の有機電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載するのは、ドーピング物質を有する有機電子素子、ドーピング物質の使用、及びドーピング物質の製造方法である。
【0002】
有機電子素子(例えば発光ダイオード)の効率性と寿命の長さは、特に電荷担体の注入品質と、電荷担体輸送性の品質に依存している。
【0003】
ドーピング物質を用いると、材料の導電性、ひいては電荷担体の輸送性を大幅に向上させることができる。電子受容体を有する有機材料のドーピングは例えば、電子輸送性層の導電性を向上させることができる。
【0004】
1つの実施形態の課題は、新規ドーピング物質を有する有機電子素子を提供することである。さらなる実施形態の課題は、新規ドーピング物質を、正孔輸送材料において用いる使用方法の提供である。さらなる課題は、ドーピング物質を製造する方法の提供である。
【0005】
これらの課題は、請求項1に記載の素子、請求項14に記載の使用、及び請求項15に記載の方法によって解決される。前記素子及び前記使用のさらなる実施形態は、従属請求項の対象である。
【0006】
本発明は、基板、前記基板上の第一電極、前記第一電極上にある少なくとも1つの有機機能層(当該機能層は、p型ドーピング物質が導入されたマトリックス材料を含有するものである)、及び前記少なくとも1つの有機機能層上にある第二電極を有する、有機電子素子に関する。ここでp型ドーピング物質は、アリールオキシ基とイミニウム基を有する配位子を少なくとも1種含有する銅錯体を備える。
【0007】
この関連で「p型ドーピング物質」とは、電子受容体特性を有するドーピング物質であると理解されるべきであり、このため特に正孔、つまり正の電荷担体若しくは欠損電子を、例えばマトリックス材料(この中にドーピング物質を埋め込み可能)上に生成できるものである。ドーピング物質は遊離電荷担体の数を増大させ、ひいては移動性と電荷担体の数の積である導電性を向上させる。移動性が変わらないと仮定すると、導電性はドーピング時に、荷電担体の数の向上によって向上する。
【0008】
素子要素の配置との関連で「上に」とは、直接配置すること、また間接的に配置することとも理解できる。従って2つの要素を連続して配置することにより、これら2つの要素が共通の境界面を有するか、又はさらに別の要素がこれら2つの要素の間に配置されていてよい。
【0009】
以下、「銅錯体」とは、中心原子として銅カチオンを有し、かつ配位子を少なくとも1つ有する有機金属錯体と理解されるべきである。
【0010】
銅錯体は特に、配位子を2つ有することができる。少なくとも1つの配位子のアリールオキシ基は、当該アリールオキシ基中に含まれる酸素原子によって、そしてイミニウム基は当該イミニウム基中に含まれる窒素原子によって、銅カチオンに配位又は結合していてよい。よって、銅錯体中に2つの配位子が存在する場合、銅カチオンは2つの酸素原子に、そして2つの窒素原子に配位又は結合されていてよい。
【0011】
このような素子は、最適化された正孔輸送性を有する機能層を有し、素子の他の部分と比較して電圧低下が低く保たれており、このため効率性が改善されている。
【0012】
有機電子素子が有機発光ダイオードである場合、p型ドーピング物質は少なくとも1つの機能層中で、さらに発光ダイオードの生成イメージが、スイッチオフの状態で(いわゆる「オフステート状態」)影響をもたらすことがある。p型ドーピング物質は、機能層(この中にp型ドーピング物質が導入される)の色が、p型ドーピング物質の濃度に応じて修正可能なように構成されており、これにより機能層の導電性が変わることはない。
【0013】
これまで有機発光ダイオードは、例えば赤っぽい正孔伝導層(例えば青い光と緑の光を吸収するもの)が光学的に補償され、これによりダイオードはスイッチが入った状態で心地よい白色光を出すように構成されている。新規のp型ドーピング物質によって発光ダイオードはスイッチが切れた状態でも、機能層が例えば透明な電極と接していれば、光学的な色調をもたらすことができる。
【0014】
さらなる構成によれば、配位子のアリールオキシ基とイミニウム基は、サリシルアルジミナト基である。サリシルアルジミナト基とは、サリシルアルデヒドと、芳香族のモノアミン若しくはジアミンから、又はサリシルアルデヒドと、オレフィン系モノアミン若しくはジアミンから形成されている配位子であると理解されるべきである。従ってこの配位子は、アミン縮合したサリシルアルデヒド基を有し、かつこの配位子は、アリールオキシ基と、イミニウム基(例えばアゾメチン基)の窒素との間で錯体化を行うことができる。このため、従来使用されていたp型ドーピング物質に比べて、低コストでp型ドーピング物質が作製される。
【0015】
銅錯体がこのような配位子を2種類有する場合、これらは自身の構造に基づき、銅錯体がシス構造又はトランス構造を有するように銅カチオンに配位されていてよい。シス構造を有する銅錯体は、トランス構造を有する銅錯体に変換できる。温度、圧力、及び溶剤の選択によって、銅錯体の合成は、好ましくは異性体、シス構造、又はトランス構造を形成するように制御できる。
【0016】
さらに、銅カチオンは銅錯体中で酸化状態IIで含まれていてよい。よって以下では、CuIIという記載法を用いることもある。
【0017】
さらなる実施態様によれば、銅錯体は、一般式I又はIIのいずれかの銅錯体を有することができる:
【化1】
【0018】
式(I)は、銅錯体のシス異性体を表し、式(II)はトランス異性体を表す。よってこのような銅錯体は、銅カチオンに配位又は結合している2種類の配位子を有する。
【0019】
前記式(I)及び(II)中、R1、R1'、R2x、R2x'(ただしxはそれぞれ、a、b、c、又はdである)は相互に独立して、非分枝状、分枝状、縮合された、環状の、非置換の、及び置換されたアルキル基、置換された、及び非置換の芳香族化合物、置換された、及び非置換の複素環式芳香族化合物を含む群から、相互に独立して選択される。
【0020】
このような置換基の例は、メチル基、エチル基、デカヒドロナフチル基、シクロヘキシル基、及びアルキル基であり、これらの基は部分的に置換されていてもよく、最大20個の炭素原子を有することができる。これらのアルキル基はさらに、エーテル基、例えばエトキシ基若しくはメトキシ基、エステル基、アミド基、カーボネート基、又はハロゲン(特にフッ素)を含有することができる。
【0021】
置換又は非置換の芳香族化合物の例は、フェニル、ジフェニル、ナフチル、フェナントリル、又はベンジルである。
【0022】
あり得る複素環式芳香族化合物の例が、以下の表1に挙げられている。簡略化のためにそれぞれ、複素環式芳香族化合物の骨格のみを記載している。これらの骨格は原則的に、別の基Rによって置換されていてもよく、これら別の基Rは、先に規定の基R1、R1'、R2x、及びR2x'と同様に構成されていてよい。配位子への結合は、結合可能な骨格のあらゆる箇所で行うことができる。
【表1】
【0023】
これらの置換基はさらに、一般式(I)及び(II)中で2つの配位子において同一であっても、異なっていてもよい。1つの実施態様によれば、R1とR1'、及びR2xとR2x'が、同一である。同じ置換基を選択すると、銅錯体の合成は特に容易に実施可能となり、このこともコスト削減につながる。
【0024】
さらにR1とR1'は、相互に結合されていてよい。従って、銅カチオンに配位又は結合している2つの配位子の間に架橋が形成されていてよい。このような実施態様は、一般式(Ia)と(IIa)に記載されている。
【化2】
【0025】
式(Ia)及び(IIa)はそれぞれ、架橋された銅錯体のシス異性体である。原則的に架橋は、R1とR1'との間に相応して長い架橋が選択されれば、トランス異性体の場合も考えられる。基R3、R3'、R4、及びR4'については、基R1、R1'、R2x、及びR2x'と同様の定義が当てはまる。
【0026】
一般式(I)、(Ia)、(II)、又は(IIa)のいずれかを有する銅錯体は、それらのルイス酸性に基づき、電子求引性配位子を有するので、p型ドーピング物質として良好に使用でき、このため電子受容体特性を強化できる。従って正孔伝導性は、有機電子素子の有機機能層において改善される。
【0027】
さらなる実施態様によれば、R1、R1'、R2x、及びR2x'のうち少なくとも1つ、またR3、R3'、R4、及びR4'が存在する場合には、これらのうち少なくとも1つは、電子求引性置換基を有することができる。
【0028】
電子求引性置換基(例えばフッ素原子F)は、結合炭素のところで直接、R1、R1'、R2x、及びR2x'のうち少なくとも1つ、またR3、R3'、R4、及びR4'が存在する場合には、これらのうち少なくとも1つによって含まれていてよい。このような基は例えば、一般式(IIIa)又は(IIIb)を有することができる:
【化3】
【0029】
式(IIIa)において、nは1〜20であり得、R10はフッ素原子Fであり得る。1つの変法によれば、nは2であり、R10はFである。R10はまた、R1、R2x、R3、及びR4の基のように選択できる。ここで特に好ましいのは、脂肪族の鎖状化合物と芳香族化合物である。
【0030】
式(IIIb)において、n、m、及びoは相互に独立して0〜20であり得、特にn=m=2であり、oは1〜5の範囲から選択できる。R10はFであり得、BはOであり得る。Bは代替的に、S、Se、NH、N−R、PH、及びP−Rから選択することができ、ここでRはR1、R2x、R3、及びR4に従い選択されていてよい。さもなくばR10は、R1、R2x、R3、及びR4のように選択できる。ここで特に好ましいのは、脂肪族の鎖状化合物と芳香族化合物である。
【0031】
電子吸引性置換基はさらに、芳香族基R1、R2x、R3、及びR4にも存在していてよい。このような基の例は、一般式(IIIc)及び(IIId)に示されている:
【化4】
【0032】
式(IIIc)及び(IIId)において、R11〜R17は相互に独立して、H、F、CF3、CN、及びNO2を含む群から選択されていてよい。さらにR11〜R17は、相互に独立して基R1、R2x、R3、及びR4のように選択できる。これらは特に、完全に又は部分的にフッ素化された系を含むことができる。
【0033】
基R1、R2xにおける、R3及びR4が存在する場合にはR3及びR4における電子吸引性置換基は、基の正孔輸送特性をさらに強化することができる。と言うのも、前記基は、配位子の電子吸引作用をさらに向上させ、これにより、配位子に電子求引性置換基を有するp型ドーピング物質は、機能層(ここに前記ドーピング物質が導入される)の導電性を特に良好に向上させる。
【0034】
少なくとも1つの有機機能層は、正孔輸送性であり得る。この有機機能層は例えば、正孔輸送層又は正孔注入層であり得る。
【0035】
機能層のマトリックス材料は、有機低分子、ポリマー、又はこれらの混合物を含有する正孔輸送材料であり得る。
【0036】
正孔輸送材料が低分子から選択される場合、この材料は例えば、以下のものを含む群から選択されていてよい:N,N’−ビス−(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9’−ジメチルフルオレン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニルフルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−2,2’−ジメチルベンジジン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、2,2’−7,7’−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン、N,N’−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9’−ジメチルフルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9’−スピロビフルオレン、ジ−[4−(N,N−ジトリルアミノ)−フェニル]シクロヘキサン、2,2’−7,7’−テトラ(N,N−ジトルイル)アミノ−スピロビフルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ビフェニル−4−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、2,2’−7,7’−テトラキス[N−ナフタレニル(フェニル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス[N,N−ビス(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、2,2’−ビス[N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、N,N’−ビス(フェナントレン−9−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラナフタレン−2−イル−ベンジジン、2,2’−ビス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビスナフタレン−2−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N,N’−ビス−ナフタレン−2−イル−N,N’−ビスフェニル−アミノ)−フェニル]−9H−フルオレン、酸化チタンフタロシアニン、銅フタロシアニン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノ−キノジメタン、4,4’−4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン、4,4’,4’’−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン、4,4’,4’’−トリス(N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)トリフェニルアミン、N,N’−ジ−[(1−ナフチル)−N,N−ジフェニル]−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントリン−2,3−ジカルボニトリル、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)ベンジジン、2,7−ビス[N,N−ビス(4−メトキシ−フェニル)アミノ]−9,9’−スピロビフルオレン、2,2’−ビス[N,N−ビス(4−メトキシ−フェニル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、N,N’−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンゼン−1,4−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−[4−(N,N−ジトルイル−アミノ)フェニル]ベンジジン、及びN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−[4−(N,N−ジフェニル−アミノ)フェニル]ベンジジン。
【0037】
ポリマーの正孔輸送材料は、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))、PVK(ポリ(9−ビニルカルバゾール))、PTPD(ポリ(N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン))、P3HT(ポリ(3−ヘキシルチオフェン))、及びPANI(ポリアニリン)を含む群から選択されていてよい。これら例示的なポリマー材料の繰り返し単位は、式(IVa)〜(IVe)に記載されている。
【化5】
【0038】
低分子とポリマーの正孔輸送材料との混合物が存在する場合、その混合比は0〜100%であり得る。
【0039】
上記p型ドーピング物質は、0.1〜50体積%の濃度、特に2〜30体積%の濃度で、マトリックス材料中に存在していてよい。
【0040】
有機機能層(例えば正孔輸送層)を製造する場合、材料、すなわちマトリックス材料(この中にp型ドーピング物質が埋め込まれる)は、気相又は液相から堆積できる。マトリックス材料が低分子を含む場合、堆積は液相から、又は気相から行うことができ、ポリマー材料を選択する場合、これらは液相から堆積できる。液相からの加工時における機能層の製造時での塗膜形成特性は、低分子とポリマー材料との混合物をマトリックス材料として使用すれば、改善できる。
【0041】
溶剤としては、液相から堆積させるために有機溶剤が使用でき、これは例えば、クロロベンゼン、クロロホルム、トルエン、THF、及びメトキシプロピルアセテートを含む群から選択されている。
【0042】
1つの実施態様によれば、p型ドーピング物質の分子はそれぞれ、マトリックス材料の少なくとも1つの分子によって配位していてよい。マトリックス材料のドーピングは例えば、1〜2個の正孔輸送材料分子が、銅錯体の軸の位置に配位していることによって行うことができる。このため、ドーピング物質の正方形の平面状の配位環境を、正方晶のピラミッド(マトリックス材料分子)によって、八面体(2つのマトリックス分子)に拡張できる。原則的には、2つのドーピング物質分子を、二官能性のマトリックス材料分子によって架橋することも可能である。
【0043】
マトリックス材料としてのNBP(N,N’−ジ−[(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル]−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)の例と、図式により示される銅錯体の例(配位子に対する銅カチオンの2つの結合だけが、それぞれ示されている)について、図式1にこのような配位を示す:
【化6】
【0044】
配位は、NPBの窒素原子と、銅カチオンとの間の相互作用によって行い、これにより銅カチオンの正電荷を非局在化できる。別の正孔にも輸送可能な分子を移行可能なこの非局在化は、図式Iの4つの例示的な境界構造によって示されているが、形式的なものに過ぎないと理解されるべきである。
【0045】
上記態様に従う素子は、電界効果トランジスタ、太陽電池、光検知器、電子光学的素子、発光ダイオード、及びディスプレーを含む群から選択されていてよい。素子は特に、有機発光ダイオード(OLED)であり得る。機能層は、特にOLEDにおける正孔輸送層(電極、例えばアノードのそばに配置可能)として、及び/又は電荷発生層(Charge-Generation-Layer、CGL)の正孔伝導性部分層として、形成されていてよい。
【0046】
電荷生成層とは、隣接するn型及びp型の有機部分層の組み合わせであると理解できる。電荷生成層によって、相互に隣接する有機機能スタック(例えばそれぞれ機能層と発光層を有することができる)は相互に接続でき、ここで電荷生成層によって、隣接する有機機能スタックに電荷担体を注入できる。
【0047】
上記態様に従って素子がp型ドーピング物質を有することにより、電荷生成層はコスト的に有利に製造でき、かつ最適化された電荷輸送性を有する。このため素子は総体的に、改善された効率性と寿命を有することができる。OLEDの場合にはさらに、p型ドーピング物質を用いることにより、生成画像をスイッチオフの状態で変更することができ、これによりOLEDはもはや従来のように灰色に見えることなく、外部の観察者に色つきの印象を与える。
【0048】
さらに、アリールオキシ基とイミニウム基とを含有する少なくとも1つの配位子を有する銅錯体を、正孔輸送材料におけるp型ドーピング物質として用いる使用を記載する。この銅錯体は特に、一般式I又はIIを有することができる:
【化7】
前記式中、R1、R1'、R2x、及びR2x'(ただしxは、a、b、c、又はdである)は相互に独立して、非分枝状、分枝状、縮合された、環状の、非置換の、及び置換されたアルキル基、置換された、及び非置換の芳香族化合物、置換された、及び非置換の複素環式芳香族化合物を含む群から、相互に独立して選択される。
【0049】
さらなる態様において銅錯体は、p型ドーピング物質(有機電気素子内に存在する)に関する実施態様と同様に構成されていてよい。p型ドーピング物質を内部で使用可能な正孔輸送材料としては例えば、有機電子素子と関連して挙げた正孔輸送材料が選択できる。
【0050】
このような銅錯体をp型ドーピング物質として正孔輸送材料中で使用することにより、当該材料の伝導性が大幅に向上する。この作用は、少なくとも部分的にルイス酸特性によってもたらされる。さらに、このような銅錯体をp型ドーピング物質として用いることは、コスト的に有利である。と言うのも銅錯体は、コスト的に有利な出発材料から、単純に実施可能な方法によって製造できるからである。
【0051】
さらに、p型ドーピング物質(アリールオキシ基とイミニウム基とを有する少なくとも1つの配位子を含有する銅錯体を有するもの)の製造方法が記載され、この製造方法は、少なくとも1つの配位子を合成し、同時に銅カチオンを錯体化する工程を有する。このような方法は、使用する出発材料に基づきコスト的に有利であり、また特に単純に実施可能である。
配位子と錯体を同時に合成することは、テンプレート合成とも呼ばれることがある。これはつまり、配位子、及び配位子を有する錯体を製造するために、一段階の反応のみを行えばよいということである。同じことが、1つ以上の配位子を有する銅錯体の製造にも当てはまる。
【0052】
本方法の1つの実施態様によれば、フッ素化された若しくはフッ素化されていないサリシルアルデヒド、及びフッ素化された若しくはフッ素化されていないアミン(芳香族モノアミン、オレフィン性モノアミン、芳香族ジアミン、及びオレフィン性ジアミンを含む群から選択されたもの)を、銅の塩と反応させる。特に、銅(II)塩が使用できる。銅(II)塩の例は、CuCl2、CuBr2、又は酢酸銅である。精製のために、得られた化合物を昇華させることができる。
【0053】
図式2が示しているのは、サリシルアルデヒドと、オレフィン性ジアミン、及び銅の塩を反応させて、配位子がともに架橋されている銅錯体にする本方法の実施態様(経路1、反応矢印の上半分)、並びにサリシルアルデヒドを、オレフィン性モノアミン及び銅の塩と反応させて、架橋されていない2つの配位子を有する銅錯体にする本方法の実施態様である(経路2、反応矢印の下半分)。
【化8】
【0054】
上記式中、R及びR1は、有機電子素子のp型ドーピング物質との関連で先に記載した基R1、R2xと同様に、また存在する場合にはR3及びR4と同様に選択されていてよい。経路1及び経路2によって得られる生成物には、Aという記号を付す。CuII2は銅の塩を表し、これは例えばCuCl2、CuBr2、又は酢酸塩から選択されていてよい。
【0055】
前記反応は自発的に進行するため、容易に実施可能である。
【0056】
図と実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。図中、同じ要素には同じ符号を付す。図は、必ずしも縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1aは、有機発光ダイオードの三次元的な概略図であり、図1bは、有機発光ダイオードの側面からの概略図である。
図2】第一の実施態様による、ドーピングされた正孔輸送層のIV特性曲線を示す。
図3】第一の実施態様による、ドーピングされた正孔輸送層の伝導性を示す(横軸はドーピング物質の濃度)。
図4】第一の実施態様による、ドーピングされた正孔輸送層の吸収スペクトルを示す。
図5】第一の実施態様による、ドーピングされた正孔輸送層のフォトルミネセンススペクトルを示す。
図6】第一の実施態様による、ドーピングされた正孔輸送層の反射スペクトルを示す。
図7】第二の実施態様による、ドーピングされた正孔輸送層のIV特性曲線を示す。
図8】第二の実施態様による、ドーピングされた正孔輸送層の伝導性を示す(横軸はドーピング物質の濃度)。
図9】第二の実施態様による、ドーピングされた正孔輸送層の吸収スペクトルを示す。
図10】第二の実施態様による、ドーピングされた正孔輸送層のフォトルミネセンスを示す。
図11】第二の実施態様による、ドーピングされた正孔輸送層の反射スペクトルを示す。
【0058】
図1a)は、有機発光ダイオードの三次元的な概略図を示し、図1b)は、有機発光ダイオードの側面からの二次元的な概略図を示す。基板(10)上には、第一電極(20)が設けられている。図1a)には、これらの電極が構造化されていてよいことが示されている。第一電極(20)上には、正孔注入層(30)、その上に正孔輸送層(40)、放出層(50)(ホスト材料と放出材料とを有することができる)、正孔ブロック層(60)、電子輸送層(70)、及び電子注入層(80)が設けられている。
【0059】
最後に、第二電極(90)(この例ではカソードとして実施)が設けられている。簡略化のため、図1a)には全ての層が示されていない。OLEDはまた、第一及び第二の電極(20、90)の間の全ての層を含む必要もない。OLEDはさらに、図1a)及び1b)に従ってスタックされていてよく、電荷生成層によって相互に結合されていてよい(ここでは図示せず)。
【0060】
図1b)ではさらに、第一電極(20)と第二電極(90)との間に、電圧が印加される。これによって励起子の生成、ひいては電磁線放射につながり、この電磁線は特に、可視波長領域にある。図1b)における矢印は、光線が素子から放出される方向を示す。この場合、光線は基板(10)を通って放出される。第二電極(90)からの放出も、同様に考えられる。両面での放出もまた、実現可能である。
【0061】
図1a)及び1b)に示した層の材料例は、特に基板用のガラス(10)、ITO(錫インジウム酸化物)、又は第一電極(20)のためのケイ素、及び第二電極(90)用のアルミニウムである。OLEDの層中で使用可能なさらなる材料は当業者に公知であるため、ここでは詳述しない。
【0062】
以下、本発明による銅錯体の合成について幾つかの実施例を記載する:
1)銅II(N,N’−2,3−ブテン−1,4−ジニトリル−2,3−ジイル)−ジサリシルアルジミネート(以降、K1と呼ぶ)
Cu(CH3COO)2(0.04mol;7.99g)と、エタノール(300ml)との混合物を装入し、熱しながらCu(CH3COO)2が完全に溶解するまで撹拌する。第二の反応バッチに、原料のサリシルアルデヒド(0.021mol;2.63g)、ジアミノマレオニトリル(0.04ml;4.32g)、及びエタノール(150ml)を装入し、同様に溶解させる。これら2つの溶液を1つにまとめ一晩還流させた後に、赤黒い固体物質が分離し、これを濾別する(粗生成物の収率:5.65g、38%に相当)。この粗生成物を、DMF(300ml)で再結晶によって、続いてエタノール/ジエチルエーテルによる沈殿によって精製する。
【0063】
こうして得られた純粋物質を、再度EtOHで再結晶させ、乾燥させ、220℃(10-5mbar)で昇華させる。
【化9】
2)銅−II−(ビス−N,N’−4−トルイル)−ジ−サリシルアルジミネート(以降、K2と呼ぶ)
Cu(CH3COO)2(0.0233mol;4.66g)を、エタノール(120ml)中に溶解させる。別個の溶液として、p−トルイジン(0.047mol;5g)、及びサリシルアルデヒド(0.047mol;5.7g)、及びエタノール(120ml)を装入し、溶解させる。これら2つの混合物を1つにまとめ、一晩にわたって室温で撹拌する。この懸濁液を少し濃縮し、続いて茶色っぽい黒色の沈殿を濾別し、乾燥させた。粗生成物の収率は、9.95gである(87.5%に相当)。
【0064】
この物質(沸点205℃)を、180℃(10-5mbar)で、引き続き再度170℃(10-5mbar)で昇華した。
【化10】
3)銅−II−ビス(N,N’−4−ブチル)−ジサリシルアルジミネート(以降、K3と呼ぶ)
サリシルアルデヒド(S)とブチルアミン(B)を、エタノール溶液中の銅塩の存在下、プロトン性触媒を用いずに縮合してアルジミン誘導体にし、この誘導体を、形成後直ちに銅の配位子球面に導入する:
【化11】
【0065】
K3は融点が79℃であり、79〜81℃で昇華させる。収率は19.8gである(70%に相当)。
【0066】
以下の実施例により、p型ドーピング物質K1〜K3の様々な電気特性及び光学特性を示す。
【0067】
4)ITO電極(20)上に、熱による蒸発によって正孔伝導体1−TNATA(4,4’,4’’−トリス(N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン)の層を、厚さ200nmで堆積させる。対極(90)として、厚さ150nmのアルミニウム層を用いる。3つのさらなる実験においてドーピング物質K1を、1−TNATAにおける蒸発速度に対して2%(K1−2)、5%(K1−5)、及び10%(K1−10)という濃度で、マトリックス材料に添加供給した。
【0068】
4mm2の大きな素子により、それぞれ図2に示した電流−電圧特性曲線(IV特性曲線)が得られる。電流Iは[mA/cm2]で、電圧U[V]に対してプロットされている。ここで濃度が2%の素子により、K1−2の特性曲線が得られ、濃度が5%の素子により、K1−5の特性曲線が得られ、濃度が10%の素子により、K1−10の特性曲線が得られた。比較のため、純粋なマトリックス材料のIV特性曲線が、M1で示してある。
【0069】
全ての濃度について、ドーピングがIV特性曲線に影響を与えることを示せる。3つの濃度全てについて、比較例のM1に比べ、電流密度が上昇していることがわかる。ここではさらに、ドーピング効果はドーピング物質濃度に依存して、濃度が5%の場合に最大の電流密度に達することがわかる。確かに、特性曲線の理想的な対称性は見られないものの、負の電圧領域でも電流密度の上昇が大幅に達成されており、このことは正孔注入が、アルミニウムカソード(90)からも可能であることを示している。
【0070】
5)伝導性基板は、実施例4で言及した被ドーピング材料(M1、K1−2、K1−5、及びK1−10)によって被覆される。これらの伝導性基板から、形状が異なる部材を全部で9つ作製した。これによって伝導性測定のため、測定された効果が、素子の厚さと面積に依存しているということが排除される。これらの種類の基板にアルミニウム製の対極を設けることは、必ずしも必要では無い。
【0071】
こうして作製された素子によって層の伝導性が得られ、前記素子は、選択された添加濃度について以下の特性値を有する:
M1:9.10e−9S/m
K1−2:1.81e−6S/m
K1−5:1.86e−6S/m
Kl−10:2.15e−6S/m
【0072】
図3は、測定した導電性L(S/m)を、ドーピング物質濃度C(体積%)との関連で示す。ここに示された経過は、図2に示された特性曲線も実証している。伝導性は5%の濃度で最大値に達し、ここで測定された伝導性は、2〜10%の間で非常に似ており、ほぼ一定の伝導性であった。よって可能な適用のためには、ドーピング物質濃度について比較的大きな工程範囲が得られ、その電導性に影響は無い。
【0073】
6)実施例4で製造された材料(M1、K1−2、K1−5、及びK1−10)はそれぞれ、石英ガラス板上に堆積させる。これらの試料には電気的接触部がなく、各層の吸収スペクトル、放出スペクトル、及び反射スペクトルを測定するためだけに用いられる。
【0074】
図4に記載の吸収スペクトルからは(ここでは吸収性A(a.u.)が波長λ(nm)に対してプロットされている)、340nmの波長における吸収最大値での絶対的な吸収量が、ドーピングされた試料では、ドーピングされていない比較例M1と比べて低下していることが分かる。ここでこの絶対的な低下は、K1−2及びK1−10の場合ほぼ同一の水準にある一方、ドーピング物質濃度5%(K1−5)での低下は、比較的少なかった。
【0075】
つまりマトリックス材料である1−TNATAの、400nm未満における吸収性は、ドーピングされた層、及びこれと結合した電荷移動錯体が形成されたことにより低下する。
【0076】
しかしながら同時に、440nm〜600nmの間では吸収性の上昇につながる。このことは同様に、電荷移動錯体が形成されたこと、及びドーピングが奏功したことを示す。ここではさらに、この範囲における吸収性の上昇が、ドーピング物質濃度の上昇に伴い増加することが分かる。従って吸収スペクトルは、電導性測定とIV特性曲線の結果に非常に良好に適合し、このことは図3及び2に示されている。
【0077】
可視波長範囲400〜700nmについては、青〜緑の波長領域における吸収性が上昇しており、これによってp型ドーピング物質でドーピングされた層は、ヒトの眼には赤っぽく見える。
【0078】
図5は、上記試料のフォトルミネセンス(PL)スペクトルを示す。標準放出性Enが、波長λ[nm]に対してプロットされている。
【0079】
ドーピングされていない1−TNATA(M1)のPLスペクトルと、K1でドーピングされた1−TNATA(M1)のPLスペクトルとを比較することにより、487nmの波長で1−TNATAによる通常の放出が、2%のドーピング物質濃度についての477nmを経て、5%と10%については463nmに移行していることが分かる。放出性の経過は原則的に保たれるが、ここで1−TNATAの絶対的な放出性は、ドーピングされたK1によって減少する。
【0080】
図6における反射スペクトル(ここでは、波長λに対する反射性Rがnmでプロットされている)は、同様に既に図4で示した吸収スペクトルによって示された情報を示している。ドーピング物質濃度が上昇することにより、青〜緑の波長領域(440〜600nm)における反射性が低下し、赤い領域での反射性は保たれたままである。ここでもドーピング物質濃度への依存があり、青緑の領域における反射性は、ドーピング物質濃度が上昇するにつれて、常にさらに低下する。このことは光学的には、基板によるとも考えられる。基板の色調が、ヒトの眼にとっては濃度上昇に伴い常により暗く、また赤っぽくなるからである。
【0081】
7)ITO電極(10)上には、熱蒸発によって厚さ200nmの正孔伝導体HTM−014(Merck社製のトリアリールアミン誘導体)の層を堆積させる(M2)。対極(90)として、厚さ150nmのアルミニウム層を用いた。3つのさらなる実験においてドーピング物質K2を、蒸発速度に対して5%(K2−5)、15%(K2−15)、及び30%(K2−30)という濃度で、マトリックス材料にドーピングした。
【0082】
4mm2の大きな素子により、それぞれ図7に示した電流−電圧特性曲線(IV特性曲線)が得られた。ここで濃度が5%の素子により、K2−5の特性曲線が得られ、濃度が15%の素子により、K2−15の特性曲線が得られ、濃度が30%の素子により、K2−30の特性曲線が得られた。
【0083】
全ての濃度について、ドーピングがIV特性曲線に影響を与えることを示せる。
【0084】
3つの濃度全てについて、純粋なHTM014製の参照用素子M2に対して、電流密度が−5V〜1.5Vの範囲で上昇していることがわかる。ここではさらに、ドーピング効果はドーピング物質濃度に依存して、濃度が15%の場合に最大の電流密度に達することがわかる。確かに、特性曲線の理想的な対称性は見られないものの、負の電圧領域でも電流密度の上昇が大幅に達成されており、このことは電荷担体の注入が、アルミニウムカソード(90)からも可能であることを示している。
【0085】
最大電流密度は、参照用部材(M2)と比較して向上しないものの、特に0V〜1Vの領域における小さな電圧について、電圧の減少又は電流密度の向上につながる。
【0086】
8)実施例7で製造された材料(M2、K2−5、K2−15、及びK2−30)をそれぞれ、伝導性基板上に被覆する。これらの伝導性基板から、形状が異なる部材を全部で9つ作製した。これによって伝導性測定のため、測定された効果が、素子の厚さと面積に依存しているということが排除される。これらの種類の基板にアルミニウム製の対極を設けることは、必ずしも必要では無い。
【0087】
こうして作製された素子によって層の伝導性が得られ、前記素子は、選択された添加濃度について以下の特性値を有する:
K2−5:3.45e−6S/m
K2−15:1.06e−6S/m
K2−30:1.45e−6S/m
【0088】
図8は、測定した導電性L(S/m)を、ドーピング濃度C(体積%)との関連で示す。この経過は、1桁から2桁のオーダーで伝導性の改善を示す。ここで最大値は、5%の濃度にあり(K2−5)、ここで15%及び30%についての伝導性(K2−15、及びK2−30)は、プロセス変動及び測定変動を考慮すると非常に似ているため、ほぼ一定の伝導性が期待できる。よって可能な適用のためには、ドーピング物質濃度について比較的大きな工程範囲が得られ、その電導性に影響は無い。
【0089】
9)実施例7で製造された層(M2、K2−5、K3−15、及びK2−30)を、さらにそれぞれ石英ガラス板上に堆積する。これらの試料には電気的接触部がなく、各層の吸収スペクトル、放出スペクトル、及び反射スペクトルを測定するためだけに用いられる。このためさらに、純粋なK2(K2−100)製の厚さが同じ(200nm)試料を作製し、これからも光学的なデータを測定する。
【0090】
吸収スペクトル(図9、吸収A性(a.u.)が波長λ(nm)に対してプロットされている)からは、波長380nmにおける吸収最大値での絶対的な吸収量Aが、低下していることが分かる。ここでこの絶対的な低下は、濃度が5%(K2−5)及び15%(K2−15)の場合にほぼ同一の水準にあり、ドーピング濃度30%(K2−30)での低下は、比較的大きかった。純粋な100%の層(K2−100)はここでも、比較的濃度が低い。
【0091】
つまり純粋なマトリックス材料(M2)の、400nm未満における吸収性は、ドーピングされた層、及びこれと結合した電荷移動錯体が形成されたことにより低下する。しかしながら同時に、ドーピングされた層については440nm〜550nmの間で、吸収性Aの上昇につながる。このことは同様に、電荷移動錯体が形成されたこと、及びドーピングが奏功したことを示す。ここではさらに、この範囲における吸収性の上昇が、ドーピング物質濃度の上昇に伴い増加することが分かる。従って吸収スペクトルは、電導性測定と、図8及び7に記載のIV特性曲線の結果に非常に良好に適合している。
【0092】
可視波長範囲400〜700nmについては、青〜緑の波長領域における吸収性が上昇しており、これによってこの層は、ヒトの眼には赤っぽく見える。純粋なK2層(K2−100)の吸収性は、可視の波長範囲全体にわたって、ドーピングされた層、及びドーピングされていない層よりも高い。
【0093】
図10に記載のフォトルミネセンススペクトル(標準化された放出Enが、波長λ(nm)に対してプロットされている)について、ドーピングされていないマトリックス材料(M2)と、K2でドーピングしたマトリックス材料とを比較することにより、マトリックス材料による、432nmの波長での通常の放出性は、ドーピングされた全ての層について、406〜408nmに移行している。放出性の経過は原則的に保たれるが、ここでHTM−014の絶対的な放出性は、ドーピングされたK2によって減少する。さらに肩部(ショルダー)は432nmにおいて、ドーピングされた全ての層について形成される。ここで480〜700nmの範囲における試料K2−30の性能は材料の特性ではなく、この試料の総放出性が僅かなことに基づく、人為的な測定誤差である。ここで層の絶対的な放出性は考慮しておらず、全ての放出スペクトルは、それ自体が標準化されている。
【0094】
純粋なK2層(K2−100)は、423nmに放出最大値を有し、次点の最大値は、485nmである。
【0095】
図11に示された反射スペクトル(波長λに対する反射性Rがnmでプロットされている)は、同様に既に図9で示した吸収スペクトルによって示された情報を示している。ドーピング物質濃度が上昇することにより、青〜緑の波長領域(400〜580nm)における反射性が低下し、赤い領域での反射性は保たれたままである。ここでもドーピング物質濃度への依存があり、青緑の領域における反射性は、ドーピング物質濃度が上昇するにつれて、常にさらに低下する。このことは光学的には、基板によるとも考えられる。基板の色調が、ヒトの眼にとっては濃度上昇により常により暗くなるからである。同様に、純粋なp型ドーピング物質層(K2−100)は、400nm未満の波長において吸収性Aが比較的低く、このため反射性Rが比較的高いことが実証されている。波長領域全体において、特に450nm〜630nmの範囲では反射性が、ドーピングされた層よりも明らかに低い。
【0096】
以下の実施例10)〜13)は、p型ドーピング物質についてのさらなる実施例を示す:
10)上記方法に従い、3,5−ジフルオロサリシルアルデヒドと、ペンタフルオロアニリンとから製造可能なp型ドーピング物質のさらなる実施例は、式Va及びVbに示したシス型及びトランス型である:
【化12】
【0097】
11)実施例13)におけるペンタフルオロアニリンに代えて、テトラフルオロアニリン誘導体である2,3,4,5−テトラフルオロアニリン、2,3,4,6−テトラフルオロアニリン、又は2,3,5,6−テトラフルオロアニリン、又はトリフルオロアニリン誘導体、ジフルオロアニリン誘導体、若しくはモノフルオロアニリン誘導体が使用できる。
【0098】
12)上記方法で使用可能なさらなるアニリン誘導体は、トリフルオロメチル基、又はさらにフッ素置換基を有する誘導体であり、例えば2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)アニリン、2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)アニリン、2−フルオロ−5−トリフルオロメチルアニリン、2−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)アニリン、3−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)アニリン、3−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)アニリン、3−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)アニリン、4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)アニリン、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)アニリン、5−フルオロ−2−トリフルオロメチルアニリンである。
【0099】
13)p型ドーピング物質を製造するためのサリシルアルデヒドとしては、4−(トリフルオロメチル)サリシルアルデヒド、又は4−(トリフルオロメトキシ)サリシルアルデヒドも使用できる。
【0100】
本発明は、実施例による説明に制限されることなく、むしろ本発明はそれぞれの新規特徴、またそのような特徴の各組み合わせを包含する。特に特徴の各組み合わせについては、仮に請求項又は実施例にこうした特徴又は組み合わせが明示的には記載されていなかったとしても、請求項の対象に含まれている。
【符号の説明】
【0101】
10 基板、 20 第一電極、 30 正孔注入層、 40 正孔輸送層、 50 放出層、 60 正孔ブロック層、 70 電子輸送層、 80 電子注入層、 90 第二電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11