特許第5916993号(P5916993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5916993
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】アミノ酸溶出抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20160422BHJP
   A61K 31/7008 20060101ALI20160422BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20160422BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   A61K8/60
   A61K31/7008
   A61P17/16
   A61Q19/10
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-265664(P2010-265664)
(22)【出願日】2010年11月29日
(65)【公開番号】特開2012-116769(P2012-116769A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年4月26日
【審判番号】不服2015-2155(P2015-2155/J1)
【審判請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】簗瀬 香織
(72)【発明者】
【氏名】韓 立坤
(72)【発明者】
【氏名】矢賀 浩子
(72)【発明者】
【氏名】林原 千恵子
【合議体】
【審判長】 松浦 新司
【審判官】 齊藤 光子
【審判官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−285397(JP,A)
【文献】 特開2010−285395(JP,A)
【文献】 特開2004−346041(JP,A)
【文献】 特開2001−2551(JP,A)
【文献】 特開2004−83435(JP,A)
【文献】 関根茂代表編集、新 化粧品ハンドブック、日光ケミカルズほか、平成18年、503〜517頁“1.肌荒れ防止剤”
【文献】 光井武夫編集、新化粧品学、南山堂、2001年、20〜22頁、“1−2−2.保湿作用”
【文献】 傳田光洋ほか、「界面活性剤によって惹起されたScaly skinにおけるスフィンゴ脂質および遊離アミノ酸の変化」、J.Soc.Cosmet.Chem.Japan(粧技誌)、1994年、27巻4号、589〜596頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤による洗浄における皮膚アミノ酸の溶出を抑制するアミノ酸溶出抑制剤であって、N−アセチルグルコサミンを有効成分として含有することを特徴とするアミノ酸溶出抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミノ酸溶出抑制剤に関し、詳細には、顔、体及び毛髪を洗浄したときの皮膚アミノ酸の溶出を抑制することにより、皮膚のバリア機能や保湿機能を保つことができ、健やかな肌を維持できるアミノ酸溶出抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の角質層には脂質や天然保湿因子(NMF)などの生体必須成分が存在し、バリア機能や保湿機能を保っているため、洗浄の際には、これらの成分を溶出させることなく保持することが重要である。角質層のNMFの主成分であるアミノ酸の量は、皮膚の保湿性や柔軟性と極めて高い相関性があることが知られており、潤いのある健やかな肌や頭皮を保つために重要な役割を担っている。
【0003】
皮膚洗浄料は、通常水性担体を媒体として、皮膚の汚れを溶解、可溶化又は分散して洗い流す為の化粧料である。これに対し、潤いのある健やかな肌や頭皮を保つために、汚れ以外の生体必須成分を過剰に洗い流さない機能(除去の選択性)も求められている。しかしながら、本来の機能が汚れを洗い流すものであるために、除去の選択性機能が十分に達成されていることは多くない。従って、皮膚洗浄料による水性洗浄を行った場合、NMFや脂質などの多くの生体必須成分が溶出し、生来バリア機能が低い人は、更に皮膚バリア機能を低下させかねない。
【0004】
水性洗浄における除去の選択性機能が求めたものとしては、例えば、泡立てネットなどで起泡性を高め、汚れを泡に吸着せしめ、皮膚と洗浄料との接触を制限する方法(例えば、特許文献1を参照。)、保湿性の高い生薬成分を含有せしめ、水分保持性の向上をはかる方法(例えば、特許文献2を参照。)等が提案されている。しかしながら、泡立てての使用は、洗浄料の皮膚への残留を防ぎ、残留洗浄料による炎症の誘起を防ぐことはできるが、生体必須成分の漏出は防ぎにくい。特に、皮膚バリア機能が低下している人は、このような生体必須成分の漏出に起因する炎症の誘起が時としてみられる。また、洗浄料においては、添加した保湿成分の皮膚上への残存量に限度があり、期待したほどには皮膚の保湿性が向上しないこともある。
【0005】
N−アセチルグルコサミンは、カニやエビなどの甲殻類の外殻中に含まれる高分子多糖類キチンを分解して得られる天然型アミノ糖の1種である。また、ムコ多糖や糖タンパク質、糖脂質の糖鎖部分の構成単位として生体中に普遍的に存在し、通常、生体内ではグルコースを出発物質として代謝により作り出されており、人にとっては安全性の高い生体成分のひとつである。そして、N−アセチルグルコサミンの生理機能としては、関節炎の症状改善やビフィズス菌の増殖促進効果等が知られており、皮膚においても保湿効果を奏することが知られている(例えば、特許文献3を参照。)。さらに、化粧料含浸積層体に用いる化粧料組成物にN−アセチルグルコサミンを配合すること(例えば、特許文献4を参照。)が行われている。しかしながら、N−アセチルグルコサミン自体に皮膚アミノ酸の溶出抑制効果があることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−12538号公報
【特許文献2】特開2001−19994号公報
【特許文献3】特開2004−339139号公報
【特許文献4】特開2008−208031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記背景技術に鑑みなされたものであり、顔、体及び毛髪を洗浄したときの皮膚アミノ酸の溶出を抑制することにより、皮膚のバリア機能や保湿機能を保つことができ、健やかな肌を維持できるアミノ酸溶出抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題に鑑み鋭意研究した結果、洗浄料の使用によっても、N−アセチルグルコサミンが皮膚アミノ酸(NMF)の溶出を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、界面活性剤による洗浄における皮膚アミノ酸の溶出を抑制するアミノ酸溶出抑制剤であって、N−アセチルグルコサミンを有効成分として含有するアミノ酸溶出抑制剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアミノ酸溶出抑制剤によれば、顔、体及び毛髪を洗浄したときの皮膚アミノ酸の溶出を抑制することにより、皮膚のバリア機能や保湿機能を保つことができ、健やかな肌を維持できる。さらに、N−アセチルグルコサミンを有効成分とするアミノ酸溶出抑制剤を配合することにより、洗浄中のアミノ酸の溶出を低減させ、使用時及び使用後の肌の感触、且つ泡立ちや洗浄効果が良好な洗浄料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のアミノ酸溶出量の結果を示すグラフである。
図2】同TEWLの変化量の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の構成について説明する。
本発明に用いられるN−アセチルグルコサミンは、通常化粧料原料として用いられるものであれば良い。例えば、カニやエビなどの甲殻類の外殻を由来とする天然多糖類キチンを公知の方法、例えば酸及び酵素により加水分解して得られる。製法など特に限定されるものではない。例えば焼津水産化学工業株式会社製のマリンスウィートF、マリンスウィートYSKなどがこれに該当する。
【0013】
本発明のアミノ酸溶出抑制剤は、洗浄料に配合したときに特に有効である。この場合に洗浄料に配合される界面活性剤としては、洗浄料アニオン界面活性剤が最も好ましく、通常の皮膚、毛髪用洗浄料で用いられるアニオン性界面活性剤であれば何れでも良く、単独で配合しても2種以上の組み合わせでも良い。またアニオン性以外のの界面活性剤である非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤などから選ばれる1種以上を含んでいても良い。
【0014】
前記アニオン界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE−ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE−ラウリル硫酸ナトリウム等);N−アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリルメチルタウリンナトリウム等);リン酸エステル塩(POE−オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE−ステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポ
リプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N−アシルグルタミン酸塩(例えば、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POE−アルキルエーテルカルボン酸;POE−アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α−オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N−パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0015】
前記の洗浄料においては、例示した成分以外に、通常洗浄料で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プ
ルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ビス(N−ラウロイルグルタミン酸)リジン等のアシル(ポリ)アミノ酸及び/又はその塩;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0016】
前記洗浄料はボディー用および頭皮頭髪、顔等の皮膚の洗浄を目的としてこれら皮膚に適用されるものを指し、その剤型も水溶液系、乳化系、ゲル系など幅広い形態を取り得る。
【実施例】
【0017】
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。実施例で採用した試験法、評価法を説明する。
【0018】
in vivo洗浄試験
ヒトの前腕内側部を用い、ガラス製カップを装着し、界面活性剤溶液を適用し洗浄液状態を再現した。界面活性剤溶液に対し、N−アセチルグルコサミンの有無で、アミノ酸溶出量及びTEWL値を測定した。このとき、アニオン界面活性剤としてラウリン酸カリウムを用いた。アミノ酸溶出量の結果を図1に示す。また、TEWLの変化量の結果を図2に示す。いずれの図においても、LKはラウリン酸カリウム、NAGはN−アセチルグルコサミンを表す。アミノ酸溶出量は洗浄液中のアミノ酸量をHPLC(島津製作所製)を用いて測定した。カラムはWakopak Wakosil-PTC(4.0mm×20.0mm)(Wako社製)とし、移動層はPTC-Amino Acids Mobile Phase A、B(WAko社製)とした。TEWLは洗浄試験前後にそれぞれ22℃、RH50%条件下で肌を20分間馴化させた。TEWL測定装置(Courage + Khazaka Electronic GmbH「Tewameter TM210」)を用いて測定し、前後の差(ΔTEWL)を算出した。
【0019】
得られたデータはt−検定を用いデータの有意差検定を行った。有意水準5%にて*(p<0.05)行った。
【0020】
図1、2に示した結果から明らかなように、N−アセチルグルコサミンを共存させることにより、洗浄前後のTEWLの変化を抑制し、洗浄におけるアミノ酸の溶出を抑制していることが分かる。
【0021】
以下に、本発明のN−アセチルグルコサミンを含有する皮膚洗浄料の実施例を示す。組成はwt%で示す。
【0022】
実施例1(ボディシャンプー)
(%)・N−ラウロイル−L−グルタミン酸アルギニン[10/12] 5.0・ラウリン酸アルギニン 10.0・ミリスチン酸アルギニン 2.0・ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 3.0・ジメチルポリシロキサン(1,000,000 cSt;25℃) 1.0・ジメチルポリシロキサン(100cSt;25℃) 2.0・ジステアリン酸エチレングリコール 1.0・プロピレングリコール 1.0・N−アセチルグルコサミン 1.0・色素・香料 適 量・水 調 整
【0023】
実施例2(洗顔フォーム)
(%)・N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸アルギニン[10/22] 20.0・パルミチン酸アルギン 5.0・ミリスチン酸アルギニン 5.0・モノステアリン酸ポリエチレングリコール 1.0・ポリオキシエチレンセチルエーテル 1.0・新油型モノステアリン酸グリセリン 1.0・グリセリン 5.0・ソルビトール 5.0・ジステアリン酸エチレングリコール 3.0・ポリエチレングリコール 7.0・モモ葉エキス 0.3・l−メントール 0.1・ポリエチレン末 1.0・N−アセチルグルコサミン 1.0・香料 0.5・水 調 整
【0024】
実施例3(ハンドソープ)
(%)・N−ラウロイル−L−グルタミン酸アルギニン[10/20] 5.0・ミリスチン酸カリウム 6.0・パルミチン酸カリウム 2.0・POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 10.0・パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン 0.5
・ラウリルジメチルアミンオキシド 2.0・アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体液 5.0・塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液 1.0・ジステアリン酸エチレングリコール 1.5・ヒドロキシエチルセルロース 0.3・レモンエキス 0.3・ニンジンエキス 0.1・加水分解シルク液 0.1・グリセリン 5.0・1,3−ブチレングリコール 5.0・N−アセチルグルコサミン 1.0・EDTA 0.1・トリクロサン 0.1・色素・香料 適 量・水
【0025】
(比較例1〜3)
N−アセチルグルコサミンを配合しない以外は、実施例1〜3と同様にして、比較例1〜3のボディシャンプー、洗顔フォーム及びハンドソープを得た。実施例と比較例の洗浄料の使用性の評価を行った。
【0026】
「評価(1):感触評価」
洗浄後の感触の評価を専門パネラー10名により実使用試験を実施した。
◎…専門パネラー8名以上が、洗浄後の感触が良いと認めた。
○…専門パネラー6人以上8名未満が、洗浄後の感触が良いと認めた。
△…専門パネラー3人以上6名未満が、洗浄後の感触が良いと認めた。
×…専門パネラー3名未満が、洗浄後の感触が良いと認めた。
【0027】
「評価(2):洗浄効果」
洗浄後の洗浄効果感の有無を専門パネラー10名により実使用試験を実施した。
◎…専門パネラー8名以上が、洗浄後洗浄効果があると認めた。
○…専門パネラー6人以上8名未満が、洗浄後洗浄効果があると認めた。
△…専門パネラー3人以上6名未満が、洗浄後洗浄効果があると認めた。
×…専門パネラー3名未満が、洗浄後の洗浄効果があると認めた。
【0028】
「評価(3):洗浄中の泡立ち」
洗浄中の泡立ちの有無を専門パネラー10名により実使用試験を実施した。
◎…専門パネラー8名以上が、洗浄中泡立ち良好と認めた。
○…専門パネラー6人以上8名未満が、洗浄中泡立ち良好と認めた。
△…専門パネラー3人以上6名未満が、洗浄中泡立ち良好と認めた。
×…専門パネラー3名未満が、洗浄中泡立ち良好と認めた。
【0029】
N−アセチルグルコサミン配合の実施例1〜3と配合していない比較例1〜3の洗浄料を常法により製造し、上記の評価(1)(2)(3)について評価試験を行い、その結果を表1に示した。
【0030】
(表1)
【0031】
感触の評価は、洗い上がりのさっぱり感、しっとり感、ぱさつき、ツッパリ等の総合評価である。実施例に示す洗浄料では比較例に比べ、使用時の及び使用後に感触が良い結果であった。これは、界面活性剤による皮膚からのアミノ酸溶出量が低く、蛋白変性がなく、かつ洗浄後の皮膚の水分保持量が大きい性質、と考察される。
【0032】
洗浄力と泡立ちに関してはアミノ酸の溶出量は低いことは洗浄力の低下には働いていないもの、また、泡立ちの阻害には働いていないと考えられ、むしろ泡立ちは良好であると考察される。
図1
図2